●京都炎上編、最終章 「珍客来たるか――隠密御庭番衆御頭、蒼乃宮静馬」 鬼蜘蛛江壬志は部下に連れられて来た背の高い大男を見て薄ら嗤いを浮かべた。鬼蜘蛛の部下たちはいつでも静馬を攻撃できるように武器を突きつけていた。対して静馬の方は一切動揺することなく鋭い視線を江壬志に向けている。 「勘違いするな。俺は貴様と仲間になったわけではない。あくまで亡き部下の仇を撃つためにこの機会を利用させてもらうだけだ。俺は単独で行動する」 静馬は鬼蜘蛛に向かって冷徹な口調で言い放つ。 フィクサード組織の『隠密御庭番衆』と『鬼蜘蛛一派』は京都の覇権を狙う本来は敵同士の関係だった。だが、度重なるアークとの戦いによってどちらも戦力を削られて弱体化していた。鬼蜘蛛は最期の決死の闘いを挑むことで形成逆転を狙うことを思いつく。 鬼蜘蛛は蒼乃宮静馬に連絡して一緒に共闘してアークを潰す提案をした。鬼蜘蛛は静馬がこれまでにアークとの対戦で大切な部下を失っていたことを知っていた。 予想通りに静馬は鬼蜘蛛と共闘することを受諾した。静馬は最凶の名に拘っており、リベリスタたちを倒すことで自分達が最凶であることを証明しようとしていた。その心の中を読み取って鬼蜘蛛は巧みに静馬を仲間に引き入れることに成功したのである。 「鬼蜘蛛江壬志、久しぶりだな。相変わらず反吐の出るような顔をしてやがる」 その時だった。扉の向こうから別の警官姿の大男が現れた。同じく部下に厳重に警備されながら鬼蜘蛛の書庫に入ってきた。 「新選組三番隊組長斎藤一か――局長はどうした? 俺は今日ここに来るように言ったのは局長の近藤だったはずだが」 「近藤さんは来ない。今はN時以来の因縁の決闘に備えて京都の山奥に籠もっている。最後の奥義を取得する為に師匠と修行中だ。貴様とのこのこ遊んでる暇はない」 フィクサード『新選組』の三番隊組長の斎藤一だった。後ろには覆面を被った彼の部下である陰陽師の姿をした謎の男が付き添っていた。 「あの近藤がそこまでして本気を出すとは一体どんな奴だ。まあいい、それでお前たち『新選組』は俺達と共闘してアークを倒すのか?」 「俺達、壬生ノ狼は誰とも与しない。中立を保ちながら戦況を見て優勢な方に加担して劣勢者を悪即斬の元に片付ける。もし貴様らが劣勢であれば鬼蜘蛛――貴様を斬る」 斉藤の激しい口調に思わず部下が剣を突き出してきた。それを見て鬼蜘蛛は部下に命令してやんわりと剣を引っ込めさせた。余裕の表情で斉藤に向き直る。 「いいだろう。最後に勝つのは俺達だ。その時は是非助太刀を宜しく頼むぜ」 鬼蜘蛛江壬志はニヤリと嗤って書庫を後にして行った。 ●誇り高き剣士の魂を胸に 「京都のフィクサード組織『鬼蜘蛛一派』から挑戦状が届いたわ」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームに集まったリベリスタたちを前にして厳しい表情を向けた。すぐに資料を元に状況を述べていく。 挑戦状を叩きつけてきたのは京都にアジトを構えているフィクサード組織の『鬼蜘蛛一派』だった。彼らは幕末の攘夷派維新志士の末裔を自称する剣士たちだ。 鬼蜘蛛達は京都で覇権を取っていずれは世界を牛耳る野望を持っていた。これまでに何度かアークが京都へ討伐隊を送って戦果をあげていたが、未だに頭領である鬼蜘蛛江壬志の首を取ることには成功していなかった。対して鬼蜘蛛たちも残り少なくなった戦力を動員してアジトにリベリスタを迎え撃ち一網打尽にする最期の闘いを挑むことに決意する。 少ない戦力を補うために鬼蜘蛛は別のフィクサード組織『隠密御庭番衆』御頭蒼乃宮静馬を引き入れることに成功し、『新選組』とは条件付きで中立協定を結んだ。 「鬼蜘蛛は後で京都を炎上させる気でいるみたい。これ以上、彼らを野放しにしておくことはできないわ。貴方達には鬼蜘蛛江壬志の首を何としても取ってきて欲しい。彼らも盤石の体制を整えて迎え撃つから決して油断しないでね。この闘いに勝てれば一気に京都の治安を守ることができるからくれぐれも宜しく頼んだわよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月07日(金)22:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●世界を乱す者 「鬼蜘蛛一派、ウチのから話は聞いてたが最後の勝負に出たかい。三度と敗北してなお動けるってのはなかなか面白ェな。だがまァ、これで終わりだなァ?」 鍾乳洞に入るなり『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)が問いかけた。不気味な松明の明が複数浮かび上がっている。敵の潜む気配が近くではっきりと感じられた。 「鬼蜘蛛一派もまた、新撰組と同じく世界を乱す集団です。日本は平和になったのに、争いなんて起こさせません!」 『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)も霊刀東雲を鞘から抜き取り、切っ先を敵に突きつけて威嚇した。 鬼蜘蛛一派の部下が銀次たちの挑発に乗って不意に斬りかかる。『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は熱で感知して素早く敵の情報を仲間に伝える。 銀次は快の示した方向に真っ直ぐに刀で突っ込んだ。敵の刀を真正面で受け止めてにじり寄る。敵も負けじと間合いを詰めて押してくるが銀次は歯を食いしばる。 力で押しこむように刀を押し出した。バランスが崩れた所を狙って銀次は容赦無く敵の鳩尾を抉る。血を撒き散らしながら敵は刀を放って崩れた。 銀次は戦線を切り開くために鍾乳洞を突き抜けて仏間堂に侵入した。 銀次の横から敵のデュランダルが刀を振りかぶってきて斬られる。標的になった銀次にさらに別の敵が槍で突き刺してきたが『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)が間に入って敵を弾き飛ばす。火を放って逃げようとするが、そうは絶対にさせないと『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)が松明ごと敵を掻き切った。 見事な二人の連携によって瞬く間に敵が地面へと突っ伏す。傷ついた銀次に『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)が駆け寄って回復を施した。 手当をしている寿々貴をまず潰すために他の敵の魔の手が忍び寄ってくる。 「ふん……いけ好かない奴でござる。そういう奴にはこちらもそれ相応の対応をするだけでござる」 『家族想いの破壊者』鬼蔭 『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は奇襲攻撃を狙う敵を睨みつけた。凄みのある目つきに敵も怯んで近づけない。 だが、意を決して刀を上から振りかぶって果敢にも突っ込んできた。 虎鐵は鞘に手をかけて重心を低くすると一気に抜刀する。 渾身の一撃が敵の顔面の骨を打ち砕いた。 次々に隠れていた場所から鬼蜘蛛の手下たちが迫ってきた。手には松明を持っていて火をいつでも放つことが出来ると威嚇しながら攻撃を仕掛けてくる。 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)は名乗りを上げるとすかさず敵の群れに向かって両手を掲げる。 「紅き血の織り成す黒鎖の響き、其が奏でし葬送曲。我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」 両手から放たれた血の黒鎖たちが部下の頭上を襲う。激しい濁流の海に飲み込まれた敵はうめき声を上げながら悶え苦しんだ。 リベリスタ一行は鍾乳洞と仏間堂の敵を蹴散らしてついに敵の本部内へと入る。 ●臆病者 「またお会いしましたね、寿々貴さん。随分派手にやってくれたみたいじゃないですか」 大客間で待ち構えていたのは長曽根虎次郎だった。屈託のないまだあどけない表情で笑みすら浮かべていた。これまで何度も顔を合わせてきた寿々貴を名指しで声を掛ける。 まだ少年の容姿をしているが油断は禁物だ。虎次郎は鬼蜘蛛江壬志の右腕であり一派の中でも県の実力はずば抜けていた。 「安心しください。この希有な貴方達との邂逅も今日で終わりです。僕の瞬撃殺は痛みを感じずに一瞬で死ぬことができますから――それでは行きますよ」 虎次郎が抜刀術の構えを見せた時だった。 不意に虎次郎の姿がリベリスタたちの前から消える。気がついた時には天井から虎次郎の刀の切っ先が寿々貴の頭上を襲う。 両手を前でガードして全力で刀の切っ先から身を守ろうとした。あまりの早さに全ては防ぎきれずに半身を切られて後退する。 流石の早さに初見では対応出来なかったリベリスたちは驚きを隠せない。寿々貴はこれまでの経験から自分が先に狙われることを予測していた。 「うん、知ってた」 「おかしいですね。ちゃんと仕留めたと思ったんですが――次はちゃんと首を飛ばします」 虎次郎は息をつく暇もなく再び視界から消えた。あまりのスピードに目がついていけない。それでも快は仲間に円陣を組むように指示を出して中に寿々貴を囲んだ。 虎次郎は双葉の頭上に現れていきなり斬りつける。防御が間に合わずに双葉は地面に崩れ落ちてしまうが何とか寿々貴が立ち上がらせる。 縦横無尽に動いて的を絞らせない虎次郎はさらに虎鐵を狙う。快が反応して何とか代わりに前に出て攻撃を食い止めた。 「正々堂々とすら戦えないなんてとんだ臆病ものでござるな?」 虎鐵は刀を鞘から抜いて力一杯に風を巻き起こして横に斬りつける。体の回転を利用した威力のある怒涛の一撃が襲う。 虎次郎は攻撃した後の隙を付かれて切り刻まれた。威力のあるすさまじい攻撃を受けて虎次郎は口から血を吐いた。再び攻撃を受けては堪らないとすぐに体勢を立て直しに後退する。ようやく早さに目の慣れてきたリセリアとセラフィーナが協力して追走する。 壁越しを透過しようとした所をリセリアが背中から襲いかかる。頭上に跳躍したリセリアは虎次郎の下から突き上げてきた刀を剣で受け止めた。力ずくで押し込もうとするがリセリアは軽やかに身をこなしてその反転を生かして鳩尾に剣を突き刺す。 セラフィーナが斜め上から翼を翻して飛び込んだ。東雲を流れるように操りながらついに首元を掻き切った。大量の鮮血とともに虎次郎が畳の上で散った。 ●背負った業 長い廊下の途中に巨大書庫室の扉があった。この先は鬼蜘蛛江壬志が待つ格闘技場が存在している。リベリスタたちは一刻も早く江壬志の元へ急いでいる途中だった。 拓真が不意に足を止めた。何かの気配に気がついて一気に扉を開ける。 「待っていたぞ、新城拓真――貴様をこの手で仕留める時を」 暗闇に佇んでいたのは蒼い眼光を光らせた男だった。 「蒼乃宮静馬……一騎討ちだ。いざ、尋常に!」 拓真は鞘から双剣を抜き取って突きつける。仲間のリベリスタ達に目配せして一人で夜大書庫室の奥へと歩を進める。 対して静馬も二刀小太刀を手前で十字に交差させて構えた。すでに二人は戦闘態勢に入っていた。互いの間合いギリギリのライン上に位置を取って頃合いを見図る。 先に動いたのは静馬だった。大胆に小太刀を交互に素早く出し入れしながら斬りかかる。拓真は双剣で代わる代わる剣筋を食い止めた。次々に繰り出される小太刀に防戦一方になりながら徐々に後ろへと本棚の角へと追い込まれていく。 「貴様を倒して俺が最凶になる。それが死んでいった仲間たちへの最高の餞だ!」 静馬は二刀小太刀の剣先で執拗に拓真の喉元を狙ってきた。 激しい剣戟の応酬に拓真は押されて腹を抉られた。静馬の執念のような剣撃を受けて拓真も血を撒き散らしながら懸命に堪える。拓真の防戦一方の状況に思わず見守っていた快が重苦しい空気を破って口にした。 「やはり、この狭い場所ではより小回りの効く小太刀の方が有利だ」 戦況は徐々に快が分析する通りに静馬が優勢になってきた。 静馬は小太刀で拓真を狭い所に押し込みながらついに喉元に剣先を突きつける。一気に突き殺そうと前傾姿勢で体重を乗せてきた。 「最凶だと? 祖父も、貴様の師もそんな物を目指させる為に命を助け、何かを伝えた訳では無い!」 拓真は言い放った。強引に踏み込むと静馬に頭突きを食らわす。突然頭をかち割られた静馬は苦悶の表情を浮かべて後退した。 「誠の双剣の名が背負った業はその様な物ではない」 拓真はようやく体勢を立て直して狭い場所から脱出する。 「祖父は最凶でも、最強でも無かった。だが……己の信じた正義だけは決して曲げなかった」 痛みを堪えて拓真は再び正面から静馬に双剣を突きつけて激しく剣を組み合う。弦真の名前を出されて明らかに静馬の表情が変わった。 「俺が新城弦真の正当な後継者であることを自らの手で証明する!」 拓真の剣が押されて本棚にあたってしまい、その隙を狙って静馬が小太刀を高速に回転させながら流れる水の如く剣を操った。 「御庭番式、回転舞剣撃・九連!」 次々に襲いかかる剣先を浴びて拓真は本棚に激しく叩きつけられた。真っ二つに割れた本棚の壁が倒れてきて拓真を下敷きにしてしまう。 拓真は血だらけになって突っ伏していた。 「新城さん! 今助けに……!」 これ以上は見ていられないとリセリアが助太刀に駆け込もうとする。その時後ろから快が既の所でリセリアの肩を掴んで静止させた。 「まだ、負けちゃいない――」 快が口にした時、拓真が崩れ落ちた本棚から身を起こした。全身に傷を追いながらそれでもまだ立っていた。静馬の必殺技を受けてすでに倒されていてもおかしくないはずだ。 だが、今までかつて見たことのない程の目を拓真は静馬に向けている。先程よりも殺気とオーラーがより激しく渦巻いていた。 「今の彼は新城拓真ではなくあの時代最強と謳われた新城弦真だ――もうこうなっては誰も止められない。二人は今、ND時の動乱の京都の中で戦っているんだ」 快は息を呑んだ。凄みを増しているのは静馬もだった。消耗の激しい必殺技を使って静馬も相当ダメージを負っているはずだった。それなのに彼らは今、お互いの意地とプライドをかけて相手を倒そうと気迫を漲らせている。 固唾を飲んで見守っていた寿々貴が後ろから回復を施して支援する。拓真に声をかけて絶対に勝つように力強く送り出した。 「行く先が闇に満ちていようとも、道無きを道を切り拓く鋼の意志。それこそが我が祖父、弦真が誠の双剣と呼ばれた所以」 拓真は双剣を地面に向けたままふらふらと不死鳥のように歩み寄る。静馬は一気に地面を蹴ると隙だらけの拓真に再び回転舞剣撃を放つ。 「仇を討つと言うなら、それも良い。だが──最凶、それを捨てん限り貴様に俺は倒せん」 回転舞剣撃に巻き込まれてしまう直前だった。拓真はしっかりと立つと素早く双剣を構えて流れてくる小太刀を同じように水の動きで受け流す。 そのまま流れに乗るように拓真は身をこなしながら静馬の元へと迫る。相手よりも一歩早く動き強烈な一撃で静馬の身体を横から双剣で撃ち込んだ。 宙に舞った静馬はそのまま本棚に激突してそのままついに動かなくなった。 ●ただ消えてしまうより 「やぁ。包帯のおっちゃん。すずきさん、最後まで付き合いに来たよ」 寿々貴の目先には鬼蜘蛛江壬志が不敵な嗤いを浮かべて待っていた。蒼乃宮静馬を倒したリベリスタ達はついに格闘技場に足を踏み入れた。 「久しぶりだな。軍艦の次は、お前の野望も沈めに来たぜ」 快もその包帯を巻いた異様な江壬志に言葉を向けて抑えに向かう。 「随分時間が掛かったようじゃないか。てめぇらを地獄に叩き落すことができると思うとゾクゾクするぜ。これまでの借りをきっちり返させて貰う」 江壬志は傍らに自分の女と伊集院と忠実な部下の黒澤を携えていた。すぐに後退させて快と正面からぶつかって戦闘が始まる。 「精々どちらも身を削り合うといい」 格闘技場の隅にはタバコを吹かしている新選組の斎藤一と陰陽師の姿があった。状況を見ながらいつでも攻撃できるように周りに影人を展開させている。 鬼蜘蛛の残りの部下たちが持つ松明のせいで熱気がすごかった。じっと立っているだけで汗が吹き出しそうなほどだった。 不意に手下たちが一斉にリベリスタたちに斬り込んでくる。セラフィーナは飛び上がってすぐにアッパーで群れてきた敵を纏めて惹きつける。 躍りかかってくる敵を次々に華麗に魅了しながら突き刺していく。そのまま伊集院のいる所まで迫って一気に突き殺しにかかった。 「この炎を以って浄化せん。紅蓮の華よ、咲き誇れ!」 双葉も後ろから火炎を放って支援する。巻き込まれた伊集院たちは逃げ場を失ってセラフィーナの攻撃をまともに受けてブレイクされてしまう。 「江壬志さんとはたとえ地獄に落ちてもこの私が守ってみせる」 伊集院は何とかして江壬志への攻撃をブロックするために前に出て立ちはだかった。 「……何をしても愛するでござるか……その感情否定はしないでござるがすまないがねじ伏せさせてもらうでござる」 虎鐵は意を決して刀を振りかざすと重心を低くして伊集院を切り飛ばした。渾身の一撃で腹を抉られて伊集院は地面に横たわった。 銀次も突っ込んでいって派手に暴れた。周りの全てのものを巻き込んでまるで殺意に狂う大蛇のように傍若無人に破壊し尽くす。快もろとも攻撃に巻き込まれた鬼蜘蛛達は予想以上の激しいリベリスタの攻撃に押され気味になった。 黒澤が状況を打開しようと不可視の刃で反撃をしてくる。近くに構えていた双葉と銀次が巻き込まれてしまってすぐにリセリアが助けに入った。 剣を薙いで背中に突き刺すと黒澤が苦悶する。 「鬼蜘蛛様は無敵! たとえこの黒澤が倒れても必ず天下を――」 リセリアが喉元を突き刺すとついに黒澤が息の音を止めた。 すでに残ったのは鬼蜘蛛江壬志だけになった。快に攻撃をブロックされ続けて江壬志は苦戦していた。快もすでに消耗が激しくなってきている。 「俺が怖くて攻撃できないようだな」 快がなかなか攻撃し来ない所を見て江壬志は動揺を誘おうとする。だが、快は心の中に問いかけてきた言葉を無視した。 「どうやら焦っているようだな、そんなに天下がほしいのか?」 快は巧みに江壬志の心を察して言い返した。すでに仲間を失って一人だけになってしまった江壬志は早く勝負を決めたがっているようだった。ついに炎で纏った剣を抜いて快に剣先を向けて容赦無く薙ぎ払う。 「炎で焼かれながら斬られる初めての痛みを思い知れ!」 江壬志が邪王炎殺剣で快もろとも辺りのものを焼き尽くしに掛かった。何とか快を支援しようとリセリアが間に入って剣を繰り出す。 「死合い故に無粋とは言いませんが、剣先以外に気の多い人ですね」 何も考えずに己の信じた剣だけを念じて江壬志を切りにかかる。一瞬相手の思考が読めなかった江壬志はリセリアの剣に背中を切り裂かれて呻いた。 「もしも力だけで勝負が決まるのなら、私達はバロックナイツに負け、ここにはいなかったでしょう」 セラフィーナは江壬志の死角に回りこんで東雲を繰り出す。 「勝利を掴むのは意思の強さ、正義の心……そして、絆の力です!」 今度は真正面から攻撃を受けて江壬志は地面に伏した。だが、江壬志は雄叫びを上げながら再び這い上がってきた 「限界の一つや二つ超えて貴様らを倒し、この天下を俺の手中に収める!」 江壬志は刀を振りかぶってきた。虎鐵が刀で受け止める。先ほどまでよりさらに威力の増した火力による斬撃に虎鐵も苦虫を潰した。それでも虎鐵が押し返して鳩尾に叩きこむと壁に激突する。そこを狙いすまして快が縦からナイフを繰り出した。 「バカが! そんな攻撃が俺に通用するとでも思ったか」 江壬志が雄叫びを上げながら刀で快のナイフを受け止めた。すぐに刀を振り上げて邪王炎殺剣の大勢に入ろうとする。だが、快は全く動じずにそのままナイフを横薙ぎに変換させて脇腹を抉るようにナイフの軌道を修正した。 「二段構えの極みアアア――――ツ!!」 隙のない二つ目の刃が江壬志の身体を引き裂いた。その時、衝撃で背後の壁が崩れて二人はもみくちゃになりながら場外の崖へと放り出された。 「新田ああああ―――!」 それまで後ろで仲間に支えられて気絶していた拓真が起きて叫んだ。もう誰もが間に合わないと思った時だった。 陰陽師がすんでの所で快の手を掴んでいた。 「安倍くん……?」 覆面が一瞬捲れてそこに現れた素顔は安倍行哉に間違いなかった。影人に手伝わせて何とか快を引きずり上げることに成功する。 すでに鬼蜘蛛のアジトは火に包まれていた。残っていた部下の誰かが最後に放って辺り地面は火の海に包まれている。すでに新選組の三番隊が巻き込まれるより早く撤退をして残っていたのは再び覆面を纏った陰陽師と斉藤一だけだった。 「そういえば今日はあの女はどうした? 妹を寄越して自分は来ないとは余程俺に怖気づいて勝てる気がしないからか――今この場にいたらぶっ殺してやるのに」 斉藤は傍らにいる陰陽師に向かって嗤った。 「よせ、俺の女に手を出すな!」 「そうだったな。だがきちんと今度はお前の手で始末しろよ」 斉藤と陰陽師は煙の中へと消えていった。 「行哉さん、待っていてください。次に会う時、絶対に助けます!」 セラフィーナの決意の叫びが崩れ落ちる廃墟にこだまする。リベリスタたちも傷ついてうごけない拓真たちを背負って脱出を試みる。 「どう? 力で押し通るキミらを、わりと邪魔できたかな。誰も殴れないすずきさんが、さ」 寿々貴は鬼蜘蛛の残した包帯を強く握り締める。 散り際を見届けて目に焼き付けるように最後まで眺めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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