「ねぇ、もう無理だよぉ……」 「もうちょっとだから、頑張って! 私も頑張るから!」 外のうだるような暑さと隔離された、クーラーの利いた涼しい室内。 2人の少女はこの涼しさの中で、お茶を飲みながらスイーツをパクパク……と『必死に』口に運んでいる。 「ねぇ、スイーツが一杯ってのは良いんだけど……」 しかし、あまりにも量が多い。 「期限が切れるのはわかるけど、ある程度捨てちゃったほうが良いんじゃないかな。これじゃ太っちゃう……!」 テーブルの上に乗り切らず、床の上にまで並んだスイーツを見て、1人の少女が深い深いため息をついた。 どのスイーツも驚くほどに美味しい、これは事実だ。 が、これだけの量を食べれば確実に体重がレッドゾーンを振り切って行くことだろう。 「そんなもったいない事、出来るわけないでしょう……!」 捨てるなんて出来ない。そう言いながら視線を外した部屋主の少女は、ここである1つの嘘をついていた。 もし並んだスイーツを1つでも捨てれば、部屋に隠してある箱からまたスイーツが出現してしまうのだ……! 下手をすれば、また増えているかもしれない。 (あぁ、もうどうしよう、誰か、誰か助けて……!) 終わらないスイーツ地獄。彼女はその地獄から抜け出すことは出来るのか――? 「スイーツを食べる時は至高の時間ですが……多すぎるのも困り者ですね」 軽いため息をついた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はカレイドスコープを通して見た情景に、少し胸焼けがしているようだった。 「これはアーティファクトか?」 「えぇ、そうです。所有者の望むがままにスイーツを出現させるアーティファクトですね」 彼女の説明によれば、1人の少女が部屋に隠してある箱がスイーツを無限に出現させるアーティファクトだという事らしい。 所有者の東野美紀は学校の終業式の帰り道にこの箱を拾い、スイーツを食べたいなと考えた事からスイーツ地獄は始まってしまったようだ。 見た目はスイーツをお持ち帰りする時の箱なのだが、そう考えた後に箱を見ると望んだスイーツが中に入っていたと言う。 「問題は……このスイーツは24時間以内に食べきらなければならない、と言う事でしょうか」 状況説明を終えた和泉の最後の言葉に、『何かあるのか?』と一斉に視線を向けるリベリスタ達。 「このスイーツボックス、時間以内に出現したスイーツを食べきらないと倍の量で、お代わりが出ちゃうんですよ」 1なら2に。2なら4に。それが積み重なって……。 「うわ……恐ろしい」 気がつけば、とんでもない量にまで膨れ上がったスイーツ。想像に難くない情景に、話を聞いていた誰もがゴクリと生唾を飲んだ。 「それにスイーツはとても美味しいんですが、通常のものよりも高カロリーでして……」 このまま食べ続けると、体重がやばい事になる。その先を和泉は口にしなかったものの、どうなるかは皆理解しているようだった。 「美紀さんはその情況から逃げ出すように、今は家から出て近くの公園にいます。そこにスイーツを食べたいなどと口にして歩いていれば、彼女から声をかけてくれるでしょう」 接触は容易。現場への侵入も容易。 後はリベリスタ達の胃袋が、この大量のスイーツを納めきれるかどうか――全てはそこにかかっている。 「あ、このアーティファクトの回収によって増えた体重は、皆さんで頑張ってどうにかしてくださいね」 だが、最も重要なのは回収した後のダイエットとなる可能性が高いのかもしれない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月09日(火)23:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●スイーツ、あげます 「暑くて溶けそう……。家のスイーツもこの暑さで溶けちゃえば良いのに……」 美紀は現実から逃げるように、このうだるような炎天下の中、公園をとぼとぼと歩いていた。 思えばあの妙なスイーツボックスを拾ったのが、運の尽きだったのか。 「最初は美味しかったし、すごく良い拾い物をしたと思ったのに……はぁ」 増え続けたスイーツは部屋を埋め尽くす程に溢れかえっている。このまま放置すればさらに増えたスイーツが家の外にまで溢れ……。 ――この世に神はいないのだろうか。 もう正義の味方でも何でも良い。部屋に溢れたスイーツを平らげてくれるなら、なんだって良い。 「まさか休みとはなぁ……」 「店が定休日なんて運が無いぜ。せっかく朝食を抜いて来たのに」 だが近くを歩いていた井上・輝紀(BNE001784)と『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール(BNE002787)の言葉に、美紀はハッとその声がした方向へと目を向ける。 見れば年齢も体格もばらばらな8人の男女が、残念そうな表情を浮かべて公園の入り口近くをうろうろしていた。 「うううう……ケーキバイキング楽しみにしてたのに……神様はひどいのですよ」 さらに聞き耳を立てると、『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)の発言を聞いている限り、今の自分を助けてくれるかもしれない集団らしい。 彼等の存在は、美紀にとっては神の使いにも見えたのだろう。気がつけば、足が自然と8人の方へと進み始めていた。 「あの……甘いもの、食べたいですか?」 「ん? あぁ、食べたいですね。仕事で疲れたからなぁ……でも、スイーツバイキングの店が定休日だったんですよ」 おずおずと話しかけてきた美紀に応えたのは、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)だ。 「せっかく祭雅先輩の奢りだったのにな、まったく残念だぜ」 肩をすくめた疾風の隣で『紅翼』越野・闇心(BNE002723)がそう言えば、8人から一斉に出る深いため息。 だがそんな8人の様子に、逆に美紀の目には希望の光が灯っていた。家にあるスイーツを彼等が全て食べきれるとは思えない。だが、今の彼女には頼れるのが彼等だけしかいないのも事実。 「うちに沢山、スイーツあるんですけど……良かったらいかがですか?」 「え、でもこの人数では……」 話しかけてきた少女の提案は嬉しいが、普通に考えてこの人数が満足できるだけの量を彼女が出せるはずもないだろう。 そう答えたと同時に周囲の仲間を見渡した雪白 桐(BNE000185) には、自分達が美紀の置かれた現実を知っているような素振りを見せないためにと言う思惑もあるようだ。 「大丈夫です、皆さんのお腹が一杯になっても、無くなる事はないでしょうから……」 だが美紀から返って来る答は、この1つ以外にありえるはずもない。桐の一言に、美紀はすがるような視線で『助けて』とアイコンタクトしてくるのをリベリスタ達は見逃しはしなかった。 「いきましょうか。スイーツを食べるために、ご飯を抜いてきたので……」 その言葉に頷き、移動を促すと同時に『幻惑剣華人形』リンシード・フラックス(BNE002684)のお腹が軽く鳴ったのは、桐のソレとは違い演技ではないだろう。 「スイーツ楽しみでござるな……それも女子の部屋で、でござる! テンションあがってきたでござるよぉぉぉ!」 一方で李 腕鍛(BNE002775)は、なにやら別の意味でテンションが上がっているようだったが。 「なんだか凄い人ですね」 「空腹感を今だけ忘れるためだろ……」 何か1つの事に意識を向ければ、その間くらいは空腹感を忘れる事は出来るだろう。 やたらとハイテンションな腕鍛の様子に『大丈夫かな』と首を傾げる美紀へとそう言ったラヴィアンは、額の汗を軽く拭うと、待ち受けるスイーツに腕ならぬ腹が鳴るのを感じるのだった――。 ●並びに並んだスイーツの…… 「……うわぁ」 その光景に、リンシードがごくりと生唾を飲む。 「これは……すさまじいですね」 隣では光があまりにもの量を目の当たりにし、目を白黒させている。 確かに大小様々なスイーツが、美紀の部屋に溢れ返っている事はカレイドスコープからの情報として知ってはいた。 しかし聞いていたとしても、実際に見ればここまでの量になるものなのか。 「まさか、これほどとはな」 唸る腹に念のために胃薬を放り込んでいた輝紀は、備えておいて良かったかもしれないと苦笑いを浮かべた。 「でも皆で分けると普通……ですよね?」 だがその一方で、けろりと言い放ったのは桐だ。 「そうだな、それにいざとなれば……」 同意した闇心はそっとカバンの中に忍ばせているあずきの缶詰に軽く触れ、あずきも用いればこれくらいならばいけると確信しているらしい。 それにもたもたしていたら、さらにスイーツが追加され――。 「早く食べようぜ、時間がもったいない」 スイーツが増殖した光景を想像したラヴィアンは、そそくさとフォークを片手に部屋の隅へと陣取っていく。 いそいそと座るリベリスタ達を見ながら、美紀は『大丈夫だろうか』という不安と『食べきってほしい』という期待を胸に軽く天井を仰いだ。 早くこの情況から解放されたい。 少女が願うのは、たった1つの小さな願い。彼等ならばやってくれるかもしれない。頑張って――と。 「にしても、これが女子の部屋でござるか! 拙者、もう感激でござるよぉぉっ!」 が、別の意味でテンションMAXな腕鍛に軽く引いていたのは内緒の話。 「落ち着きましょう。これもあの子の手作りケーキだと考えると、さらに燃えますよね?」 疾風は腕鍛のそのテンションを、別のベクトルに持っていこうと考えたのだろう。美紀に聞こえないように軽く耳打ちをすると、思惑通りに目を輝かせる腕鍛の姿がそこにはあった。 「それは燃えるでござるな! 拙者、全力で食べきって見せるでござるよっ! それに女性の誰かがあーんしてくれれば、そこから100個くらいは食べてみせるでござる!」 「あ、あはは、私はお茶いれてきますね……♪」 とりあえず食べられるだけ食べてもらおう。なんだか変な集団(多分約1名だけだが)を招き入れてしまったかもしれないと感じた美紀は、お茶を入れると言い残してそそくさと部屋を出て行く。 そして一般人である美紀が部屋を出た事を確認すると、全身の反応速度を上げて少しでも早く食べようと試みるリンシード。 「これで落ち着いて食べられますね……?」 この場合の落ち着いてというのは、美紀がいない事でリベリスタとして能力を使ったとしても問題はなくなったという事だろう。 「そうですね、では頂くとしましょう。等分すればすぐ……ですよ」 「それに、せっかくスイーツ食べ放題という、良い仕事なんですし……」 ならば時間が経過してスイーツがさらに増える前に食べてしまえ。静かに近くにあったシュークリームを桐がひょいと口に運ぶと、負けじとホールケーキを1つ自分の手元へと置くリンシード。 それを皮切りに、皆がほぼ一斉に山のようなスイーツに飛びついていくのであった――。 後に輝紀は当時を振り返りこう語るかもしれない。 「最初は楽勝だと思っていたんだ……そう、最初はな」 確かに最初は誰もが空腹なのだから、楽勝ムードはあっただろう。 「よし、このモンブランケーキは誰にも譲らないからな。これは私が食べる」 大好物であるらしいモンブランケーキをそそくさとかき集めた闇心は、まずは好きなものから食べつくそうという作戦でいくらしい。 他の7人は別にどれから食べても良いらしく、手近にあるものから手を付け始めていた。 「なるほど、確かに美味しいですね」 「色々食ってきたけどここまでとは……、流石はアーティファクト!」 どのスイーツも最初に聞き及んでいた通りに良い味をしており、ほんのりとした甘さが口内に広がると感嘆の声を漏らしたのは疾風と輝紀だ。 「普段なら物足りなくてさらに買い足しに走るところですが、これだけあればその必要もないですし……」 序盤の激しい食べっぷりにも負けず、残るスイーツはまだ山とある。ショートケーキを頬張りながら、桐の表情はどこか幸せそうですらあった。 「こんなアーティファクトを作り上げてくれた世界に感謝なのです!!」 むしろ光はこのアーティファクトの存在に感謝すらしてた。 「だがコレだけの量、全て食べると確実に太るでござるな」 それでもこのスイーツ達は相当なカロリーを持っている。腕鍛が後の事を考えるのも、無理はないだろう。 「俺は成長期だから、ダイエットなんて必要ないさ。むしろ、たくさん栄養が必要だぜ!」 が、ラヴィアンにとってはそんな事お構いなし。体重がレッドゾーンを振り切るような事など、考えてもいない。 というより、太らないと思っているような風であった。 「それを言われたら話が続かないでござる。拙者、考えてみたのでござるよ。太らない方法を!」 その方法とは! 「腹筋しながら食べれば良いでござるよ! どうでござる、この完璧な理論!」 真面目に腹筋しながら食べ始めました、この人。 「食べにくそう……」 その完璧な理論に基づいた作戦だが、黙々とシュークリームを口に運んでいたリンシードから、さっそく突っ込みが入ったのは言うまでも無い。 さらに言えば、この作戦には致命的な欠陥が存在していたのだ……。 「すっごい横っ腹痛いでござる!」 「駄目だろ」 食べやすい食べにくい以前に、体のほうが先に悲鳴をあげた腕鍛。やれやれとため息をついたラヴィアンが周囲を見渡すと、まだまだスイーツは大量に鎮座していた。 「あの、お茶が入りましたけど……置いておきますね?」 一方でお茶を淹れた美紀が『邪魔してはいけない』とこっそり部屋を出たのだが……それについては、誰も気付きもしなかった。 「スイーツは甘くても、このアーティファクトはそう甘くはありませんでしたね」 少し思い出すような仕草をとった後、スイーツとの戦いを振り返った疾風はこう語った……かもしれない。 「ま、まだまだ大丈夫だっての、辛い奴はこっちにまわしてくれていいぜ」 などと余裕ぶってショートケーキを口に運び続ける輝紀だが、実際には相当辛いらしく額には汗が吹き出ているのが見て取れた。 「うっ、く……ぱくぱく……」 無言で食べ続けるリンシードは既に限界が近いらしく、無表情な顔に苦しいと言う気配がはっきりと浮かんでいる。 (誰ですか、今回のお仕事はとってもいいなんて言ったのは……) その胸の内では、地獄の様相を呈してきたスイーツ食べ尽くし大会への恨み言がぽつり。 「それはリンシード殿自身でござる。だが、拙者も甘く見ていたでござるよ……」 「……そうでした」 思わぬところから腕鍛のツッコミが飛んでくるあたり、思っていたことが知らないうちに口に出ていたのだろうか。 突っ込んだ腕鍛も、まだまだ残っているスイーツにげんなりしているようではあったが、それでも目の前のスイーツを減らさなければ終わりは来ない。 その前に彼等の胃袋が先に限界を上げそうだが、今は食べつくす事だけを考えて戦うしかないのだ。 「ほら、李。あーんして、あーん」 一方ではラヴィアンがその腕鍛に『あーんして』と言いつつ、強引に食べさせようと動いていた。 「ラヴィアン殿も乙女でござるな、体重が気になるんでござるね?」 「私は覚えてるぜ。李が言っていた言葉を。『女性の誰かが『あーん』してくれればそこから100個食べる事が可能でござるよ』だったよな。さあ、さあ!」 何を勘違いしているんだと言いつつ、げんなりした表情の腕鍛の口に強引にケーキを突っ込むラヴィアン。 「ボクもあーんしてあげるのですよ!」 さらには光も参戦すれば、腕鍛の口は瞬く間にスイーツで膨らんでしまっていた。 「頑張れ腕鍛、後で私もあーんしてやるからなっ、他がやったからとか、そんなんじゃないからなっ!」 暑くなってきたのかジャージを脱いで体操服姿になった闇心からも『あーん宣言』をもらった腕鍛は、最後まで立ち続けることが出来るのだろうか? 「まぁ、頑張ってくださいね」 我関せずと黙々とマカロンを口に運んでいた疾風は、やはり我関せずのスタンスを取るつもりのようだった。 下手に関わってもし『あーん』されれば……嗚呼、恐ろしい。 だが、この状況にあってもまだ猛者はいた。いたんだよ、凄い子が! 「余りそうですか? というかもう限界っぽいですか? というかください」 辛そうな仲間達からさらに強奪してまで食べている桐は、底抜けの胃袋を持っているのかもしれない……。 「拙者、天国と地獄を同時に見たのでござるよ」 腕鍛はきっと、この戦いを思い出した時にこう言うだろう。 「もう限界でござる!」 「まだ、食べられますよね……あーん……。あーん……」 限界だ。そう言っても、リンシードの若干威圧的なあーんを止める術を腕鍛は持ってはいなかった。 「わ、私の『あーん』ではやっぱり駄目か?」 加えて『あーん』を断られて落ち込んだ闇心を見れば、断ってしまうのは男じゃない! 「拙者、やりきってみせるでござるよぉぉぉ!」 「食べてくれたら安心して全開の笑みを見せるぞ。う、うん。では次はこれだ!」 倒れそうな身体に鞭を打って気合を入れ直し、リンシードと闇心からの『あーん』を観念して受ける腕鍛。しかし気合でも、越えられない壁はあるものだ。 「あ、あーん……ごふっ、もう駄目でござる」 腕鍛、撃沈。 「あぁ、腕鍛さん! これはボクが頑張らないと……勇者は最後まで立ってなくてはならないのですよ……でも……」 勇者ならば立ち続けなければならない。だが、勇者にも限界はある。最後に口に運んだシュークリームを飲み込むと同時に、光もスイーツ達の前に倒れていく。 否、彼女だけではない。 「まだだ、まだ……この俺が! スイーツを前にしてお残しだなんて! できるもんかっ!」 「そうですよね、お仕事、ですから……う゛っ……」 ギリギリのラインでなんとか踏みとどまったラヴィアンとリンシードも、やはり光と同じくその場に崩れ落ちていった。しばらくは満腹感にさいなまれて動く事は出来ないだろう。 「ここは小豆をかけてなんとか……」 「うぷ、まだあんのかよ……!」 残った4人の内、闇心と輝紀も、もう口に運ぶ手は止まってしまっている。 小豆をかければ大丈夫。そう考えていた闇心だが、事態は小豆で収められるほどの甘くはないのも事実。 「大丈夫ですよ、私達が倒れても……彼なら大丈夫そうですから」 そう言った疾風が視線を移した先には、珈琲を片手にまだまだ余裕と食べ続ける桐の姿があった。 「なんて頼もしいんだ……!」 「ふ……後はおまかせするとしましょうか」 桐の胃袋に限界はあるのだろうか。疑問は浮かぶが、今はもう桐を信じるしかない。 『後は任せた』 そんな表情を浮かべ、疾風が、闇心が、そして輝紀までもがダウンしていく。 「はい、任せられました」 あぐあぐと食べ続ける桐は、その後残ったスイーツを1人で全て食べつくすのだった――。 ●もう、スイーツなんて…… 部屋に戻った美紀が見たのは、食べつくされたスイーツの山と、倒れこんだ7人のリベリスタ達。 そして、『まだまだいけますよ』と余裕の表情を浮かべる桐の姿だった。 「それにしても、よくこれだけのスイーツがありましたね。私にとっては幸せすぎる時間でしたよ」 まだ食べられる。そんな桐の言葉に、美紀が軽くめまいを覚えたのは言うまでも無い。 「変な箱から、いっぱい出ちゃうんです……よかったら差し上げますよ。あなた達なら、増えても食べつくせるみたいですし……!」 地獄から解放されるなら、こんな物はいらない。むしろ持っていってください、全力で。 美紀は口にこそしなかったものの、表情がそう物語っているのを桐は見逃しはしなかった。 こうして、リベリスタ達は無事に目的を果たす事に成功した。代償は、高カロリーによる体重の増加か。 「別に増えませんよ。これくらい普通です」 そう言った桐だけは別格だと考えるのが、普通なのだろう。 「もうしばらくケーキは見なくてよいのです。さて、帰りにプリンとヨーグルトかっていくですよ」 まだ食べるんですか、光さん! 「プリンとヨーグルトは別腹なのです」 「女子は凄いでござるな……うぷ」 最後まで男を貫き通した腕鍛にとっては、その女子力は未知の世界なのかもしれない。 「……まだ、食べられるんですか……私は、もうしばらく……デザートは、みたくないです……」 (それが普通ですよね。さて、帰ったら栄養バランスに気をつけてトレーニングに精を出すか) リンシードの言葉に軽く同意を覚えた疾風も、手を尽くして増えた体重を減らす心算のようだ。 彼だけではない。 「超重武器を振り回すのにも体力がいるからな、この程度は問題ない。後は……」 その隣で朝のランニングの距離を増やせば良いだろうと考える闇心だが、体重計に乗る事だけは……それだけは、しばらく避けようと彼女は心に誓う。 「まぁ、早く帰ろう」 「そうだな、家でゆっくりしたいぜ……」 もうしばらくスイーツは食べたくもないし見たくもない。 帰路を急ごうと促す輝紀とラヴィアンの気持ちは、桐以外の7人ときっと同じなのだろう――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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