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【The signs of the zodiac】Ⅹ Capricorn


 ワシの名はアルゲディ、牧畜で生活を営む者じゃ。
 しかし、どうしたことかのう。牧場にいるはずの動物達が、妙な穴を通って別の世界に行ってしまったのじゃ……。

 大きく、大きくため息をつくアルゲディ。
 牧場で育てていた動物達が、牧場の中に出現した次元の穴を通ってこの世界に降り立ったのは少し前の話。
 気付いたアルゲディが慌てて後を追ってきたものの、穴の周辺に既に動物達の姿はなく。
『……こんな見知らぬ世界で、どうすれば良いんじゃろうかのぅ』
 見上げれば、自分の世界との違いはあるものの輝く星空。
 周囲を見渡せば、木々が見渡せる林の中だとはわかる。

 動物達はどこへ行ってしまったのか?
 無事に全ての動物を連れ、元の世界へ戻る事が出来るのか?

 途方に暮れるアルゲディは知らない。
 この世界は、弱者に優しくはない事を。そんな世界の中で、誰かのために動く者達がいる事を。

「……珍しい動物だな。捕まえて売れば高値がつくか?」
「じゃあ、捕まえない手はないですね、兄貴」
 東の方では、アルゲディの動物を見たフィクサードがそれを捕まえようと、
『ギギ、ギィ……』
 西の方では、同様に遭遇したE・ビーストがそれを糧にしようと、襲い掛かる気配を見せている。
 北に向かった動物の群れの進む先には、街。
 唯一、南にだけは動物が進んでいない事は幸運か。

『……やれやれ、どうしたものかのぅ』
 ため息の収まらぬ中、それでもアルゲディは立ち上がった。手にした笛の音を聞かせれば、動物達は彼の言う事を聞くだろう。
 故に彼は、動物達を探そうと考えたのだ。
 ――全ては、無事に元の世界へと帰るために。


「今回はお手伝い、かしらね?」
 好き勝手に色々な所へ突き進む動物を捕まえる。桜花 美咲 (nBNE000239)の言うとおり、確かにお手伝いの意味合いは強い。
 しかしアルゲディの笛の音が届かない位置にまで散り散りになってしまっているため、リベリスタ達も戦力を分断させる必要があるだろう。

 東にはフィクサード。
 西にはE・ビースト。
 北には、街。

 この点を考えれば三手に分かれるのがベストかもしれない。
 アルゲディと接触し彼に動いてもらえれば、そのどれかは彼に対処してもらう事も、可能かもしれないが。
「まぁ、フィクサードもE・ビーストもそう大して強くはないわ。問題があるとすれば……」
 美咲のいう問題は、2つ。
 食われるなり、撃たれるなりして動物達が数を減らす事。そして、動物達が街に下りてしまうこと。
 状況が状況だけに、多少の犠牲も仕方がないとアルゲティは考えてくれるだろうが、それでも彼は失意に沈んでしまうだろう。
 そして動物達が街に下りれば、何かしらの騒ぎになる事は間違いない。
「出来るだけ犠牲を出さずに、可能な限り動物達を集めてくれるかしら?」
 結局のところ、リベリスタも万能ではない。全部の動物を無事に保護する事は、やはり難しいはずだ。
 故に美咲は言う。
 出来る限り、可能な限り――と。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:雪乃静流  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年02月03日(月)22:30
雪乃です。
星座シリーズ第10弾、やぎ座をお届けします。

成功条件:7匹以上の動物を保護する事
北に進んだ動物が街に下りてしまった場合、人目について騒ぎとなるので失敗となります。
東西については保護状況が成功、失敗を左右するでしょう。

動物達の戦闘力については、フェーズ1のエリューションより弱いと考えてください。攻撃は行わず、逃げ惑うのみの存在です。
リベリスタ側は最初から広範囲に戦力を展開可能。
穴は東西南北の中心辺りに位置するため、アルゲディに接触する場合は数ターンを要します。
東西北の動物達においては、フィクサードとE・ビーストが行動を起こす辺りで割り込めます。

東側詳細
進んでいる動物の数:4
フィクサードの数:3
Rank2までのスキルを使うデュランダル、マグメイガス、スターサジタリーです。
動物の捕獲を考えていますが、戦闘になった場合は動物達も攻撃対象にいれてしまうようです。

西側詳細
進んでいる動物の数:3
E・ビーストの数:3
フェーズ1の狼型E・ビーストで、動物達を食べようとしています。
噛み付き攻撃のほか、咆哮は全体にショックをばら撒くようです。

北側詳細
進んでいる動物の数:3
のんびり草をもしゃもしゃ食べながら、ゆっくり前進しています。
しばらくの後、街にたどり着いてしまうでしょう。


アザーバイド詳細
アルゲディ
やぎ座のアザーバイド。
牧畜する人なので、戦闘力はあまりありません。
一応レベルでしかありませんが、鋤を持っての近接戦闘、角ミサイルによる遠距離戦闘は可能です。
笛の音の届く範囲は30mと考えてください。

それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
アークエンジェホーリーメイガス
来栖・小夜香(BNE000038)
ノワールオルールナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
フライエンジェホーリーメイガス
ルーシア・クリストファ(BNE001540)
ジーニアスデュランダル
ルー・ガルー(BNE003931)
ジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)

●憂鬱のアルゲディ
『……ううむ』
 アルゲディは自分がどう動くかを判断しきれずにいた。
 地面についた足跡は3方向に広がり、既に動物達の姿は見えない。
 どれか1つの方向を選んで進めば数匹を捕まえる事は出来るだろうが、アルゲディにとってもこの世界は見知らぬ世界である。
『どうするべきかのぅ』
 迷う可能性、トラブルに遭う可能性、自分がこの場を離れた後で穴が消える可能性。考えられる不運は今のところ3つ。
 故にアルゲディは、その場に立ち往生するしかなかった。
 ――故にアルゲディは、深いため息をついて空を見上げるしかなかった。

 しかし彼は知らない。
 この世界の住人が、動物達を彼の元へ返そうと奔走している事を。
 見知らぬ世界で、新たな良き出会いが待っている事を。

●北方捕獲戦
 今回のミッションにおいて、最も簡単に動物達を保護出来るのは北側である事は事実だ。
 もしゃり、もしゃりとそこらに生えている草や葉を食べる動物達は、今のところ警戒心のかけらもないように見える。
「ルー、ドウブツ、ミツケタ!」
「では捕獲といこうか、ルー」
 町のある方向へ向かいながらも草を食べるその姿は、ルー・ガルー(BNE003931)や『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)がすぐに見つけられる程に夜闇の中でも目立っていた。
 簡単に捕まってくれるのか?
 そんな疑問は動物達を前にしても脳裏を過ぎるが、ともかく今はやれる限りの全てを尽くして捕まえなければならない。
「君達を探してる人が居るから、その人の所に行って欲しいんだけど」
 まず最初に動物達でも理解可能な言語をもって、普段とはまったく違う流暢な言葉遣いで話しかけたルーが会話を試みる。
 素直に聞いてくれればよし。
 そうでなくば、
(……素直に聞いてくれると良いんだがね)
 法衣の袖の下、いつでも呪印を放てるようにと準備を済ませているフツの様子からもわかるように、強制連行するだけの話。
 もっしゃもっしゃ。
 もっしゃもっしゃ。
 ……もっしゃもっしゃ……。
「……聞いてる?」
 しばらく待っても返事はなく、およそ無視を決め込んだかのように草を食べ続ける動物達に対し、再びルーが問う。
『聞いてる聞いてる。アルゲディだろー?』
『あいつのくれる草より、こっちの草のが断然うめぇから、しばらく食ってくって言っといてくれよ!』
 ようやく答えてくれたかと思えば、そんなこと知るかと言わんばかりに草を動物達は食べ続け、動く気配を見せはしない。
 他の方面で戦いが発生しなかったなら、それを聞き入れて先にアルゲディと接触する選択も可能だっただろう。
 だが穴を中心に見た東西では、仲間達が戦いに入っているはずだ。
「なんだって?」
「コノコタチ、クサ、タベルッテ!」
「……強制連行だな」
 状況を把握したフツの動きは、相当にすばやかった。
 印を描き念を込め、この世界では山羊に近い外見の動物の周囲に呪印を巡らせ、あっという間に一体を縛り上げれば、
「じゃあ連れて行ってくるぜ。ルーはそいつ等の足止めを頼んだ」
「ガウ、ルー、アシトメル! イケソウナラ、ツレテイク!」
 ずるずると動きを封じた1匹をフツが引きずっていく間、ルーが牧羊犬のように残る2匹を追い掛け回している限り、街に動物が入り込む事はない。
 やり方次第では、ルーが残る2匹を追い込んでアルゲディの元へ連れて行くことだろう。
 とすると残る問題は、東西の戦いの行方か――。

●東方防衛戦
 北が捕獲を主軸としているなら、東は動物達を食べようとするE・ビーストから守る戦いが主軸である。
 唸る狼にとって、草食の生き物は基本的には獲物でしかない。
「アルゲディさんの大事な動物達、いなくなったらアルゲディさん、とっても悲しむよね」
 一足飛びで狼が動物に食いつかないようにと間に割り込みつつ、『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は地獄の女王の名を関した大鎌を構え、眼前の敵を鋭い視線で射抜く。
「全部は難しいかもしれませんが、動物達を無事に帰してあげたいところです」
 近くで同じように動物を庇う『生真面目シスター』ルーシア・クリストファ(BNE001540)の言葉は、2人と言う戦力に加え、彼女自身が攻撃を不得手としている点から来たものだろう。
 だが、目標は常に高く。
「なるべく多く、ううん、それじゃダメ。目標は高く、皆無事に連れ戻せるよう全力を尽くすよ!」
「……わかりました!」
 全てを守る、その意思を持って2人が臨む戦い。
 数の上では相手のほうが僅かに多いが、こと守る事においては、彼女達の最も得意とするところでもある。
「お腹が空いたら食べたくなるよね……それはわかるよ」
「ここから先は、通しません!」
 飛び掛ると同時に食らいつこうとする牙を大鎌の柄で受け止め、返す刃で斬り返すアンジェリカ。
 一方でルーシアは、文字通りの壁となって1匹の進軍を防いでいる。
 ともすれば残る1匹は彼女達を乗り越える余裕があるのだが、
「させません!」
 噛み付いた傍からルーシアの息吹が獲物の傷を癒してしまえば、それは決して致命傷には至らない。
 アタッカーと回復手、2名ながら理想的な編成の前には、フェーズ1のE・ビーストが望みを果たすためには、速攻が肝要だったのだろう。
「君達も生きるのに必死なんだろうけど、この子達を食べさせる訳にはいかないんだ。可哀想だけど倒させてもらうよ!」
 眼前の狼の咆哮が轟く中、怯むことなく攻め立てるアンジェリカの大鎌がついに1匹目の胴を裂く。
 食うか食われるかの弱肉強食の世界において、フェーズ1のエリューション3匹よりも、手練のリベリスタ2人の方が実力は上ということか。
 これで残るは2匹。
「アンジェリカさん、次はあっちの狼を!」
 懸命に襲われる動物を癒すルーシアは、この1匹は抑えてみせるからと自分達のガードが及んでいない狼への攻撃を提案し、
「……その方が良いね」
 頷いたアンジェリカも同意見だと、すぐさまそちらの方へと向かっていく。
 幸いだったのは、彼女の発するマイナスイオンが動物達を多少なりとも落ち着かせ、安心感を与えていた点かもしれない。
「もう少しですからね。落ち着いて、ゆっくり逃げてください」
 ルーシアの言葉は動物達にとっては理解出来ない言葉ではある。
 が、彼女達の動きは自分達に危害を与えないものだとは理解できている。マイナスイオンの影響もあり、敵ではないのだと認識できる。
『……メェ!』
 決して慌てず、混乱せず。庇う2人のリベリスタへと逃げる動物の動き具合は、彼女達への信頼感の表れ。
「見た目はちょっと違うけど、やっぱり山羊みたいだね」
「そのようですね……アルゲディさんの眷属なのでしょうか」
 およそこの世界の山羊とは似ていないが、鳴き声と飼い主から判断すれば、この動物はきっと山羊のようなものかもしれない。
「ともかく、この子達は食べさせないよ……!」
 再び大鎌を構えなおし、アンジェリカが舞う。
 迅速に確実に、1匹ずつを仕留める2人の戦い。それはこの防衛戦においては、最も効果的な戦法だったようだ。

●西方迎撃戦
「一戦やってもいいけども、長引けば援軍も来る。そうなってからじゃ後には退けないわよ?」
 回避できるならば、戦いは避けたい。
 撤退を促す『ANZUD』来栖・小夜香(BNE000038)ではあるが、やはりフィクサード達は素直に聞き入れてなどくれはしない。
「ははは、面白い事を言うお嬢ちゃんだ」
「アークと遭遇して何もせずに逃げたとあっちゃあ、俺達はいい物笑いの種になるんだよ!」
 彼等にとって捨てられないものは、プライドと周囲からの評価。
 故に彼等はこの場から逃げる事を選ばない。その噂が周りに漏れれば、自分達の評価が下がる事に繋がるのだから。
「動物かぁ。あたし典型的なインドア派なせいか、普段動物を直接見たりする事ってほとんどないんだよね」
 守るべき山羊(のような動物)を間近で見た『マジカルナード』六城 雛乃(BNE004267)は、不慣れであるせいか触ろうとはしないが、それでも嫌いではなく可愛いと感じていた。
 それを捕まえようとし、下手をすれば殺そうとするフィクサードは、やはり彼女にとっては追い払うべき存在にすぎない。
「ま、せっかくの機会だしね。たまにはパソコンの向こうの人間以外の存在とも接してみるのも、悪くないよね」
 二次元ではない、三次元の存在と触れ合う機会を得んがため、彼女は双界の杖を振るう。
 ――しかし。
「ハッハー! 散開!」
「了解!」
 東側に現れたE・ビーストと違い、彼女達が対峙しているのは知能のある人間なのだ。
「これじゃ全員は巻き込めない……か」
 少々長めの詠唱を要する葬操曲・黒を放とうとしていた彼女にとって、それは最も望まない展開だったことだろう。
 ――が、全員を巻き込めないならば、それはそれで構わない。
(彼等はあなた達に危害を加えようとしているわ。出来るだけ遠くに逃げて。私達とは反対側に、ね)
 雛乃が詠唱を済ませて織り成した魔力を放つ一方、小夜香はテレパスを通じて逃げるようにと伝えていた。
 惜しむらくはルーのように会話のキャッチボールが出来なかった点と、アンジェリカのマイナスイオンのように落ち着かせる雰囲気を持っていなかった点。
 そしてこの場にいる敵が知能のあるフィクサードであり、雛乃の葬送曲が直撃せず、1人の足を止められなかった点――。
「おい、獣が逃げるぞ!」
「ち、珍しい見た目だから捕まえりゃ金になると思ったんだが……逃がすくらいなら殺してしまえ!」
 動物達にとっては、この場においてリベリスタ達も簡単に信じられる存在ではなかった。故に彼等はばらばらに逃げ始め、それがフィクサード達がそちらに狙いを向ける要因となったのだろう。
「!? させないわよ!」
 咄嗟に1人のフィクサードとの間に小夜香が割り込み壁となるものの、それでも残る2人が自由に動く事は1人では防ぎようがない。
 放たれるのは降り注ぐ炎の矢と、迸る雷。
『……メェ!?』
『メェェ!!』
 フェーズ1のエリューションよりも劣る存在である動物達など、フィクサード達にとっては単なる的のようなものだ。
 運良くこの2連撃に耐えたとしても、
「あんた等はあれを守ろうとしてるんだよな。じゃあ先にそっちを倒せば、あんた等の鼻はあかせるわけだ!」
 残るデュランダルの撃った真空刃は的の命を奪うトドメとなった。
「救いよ、あれ!」
 もちろん小夜香の祈るような回復魔術も動物達に対して向けられるが、どう頑張ったとしても1匹か2匹が仕留められるのは仕方のない話でもある。
「あたし達よりも動物を狙うわけ? やる事が小さいね……!」
「だがアークを出し抜いたのは事実だろ。自慢話のネタにはなったぜ!」
 歯噛みする雛乃に対し、1人のフィクサードがしてやったりといった顔でニヤニヤと笑う。
 しかし彼等は気付いていない。
 それがリベリスタ達の怒りを買う行為に過ぎなかった事を――。

●西方制圧戦
「こちらフツだ。北側の動物は確保した。……あぁ東側も終わったようだ、アンジェリカも合流してきた」
 西の苦戦は動物を引き連れ、アルゲディのもとへと辿り着いたフツやルー、そして加勢のためにと移動してきたアンジェリカがすぐに知る事となっていた。
 どうやらルーシアは動物を伴った移動のために行軍が遅く、アンジェリカだけが先に合流してきたらしい。
 千里眼を用いて状況を確認し、西側が戦闘中であるためにテレパスでそう伝え、すぐに加勢するからもうしばらく耐えろと小夜香や雛乃に伝えるフツ。
「苦戦してるの?」
「らしいな、早く行かないと動物が全滅しかねない」
 問うアンジェリカに対して答えるフツの様子を見れば、一刻を争う状況である事は明らかである。
「ルー、ニシ、イク!」
「早く行こう……1匹でも多く助けないと!」
 頷きあう3人が急いで加勢に向かおうとする中、
『ワシも行くぞ!』
 黙ってみていられないと同行を志願したアルゲディも交え、加勢部隊は西へと進路を取る。

「ハハハハ、どうしたどうした!」
「動物は逃げちまったぜ、適当に流して帰ったほうがよくねぇか?」
 如何に知能のある人間とはいえ、戦いを楽しむフィクサードはこの時、引き際を完全に見誤っていた。
「……1匹は仕方なかったわね。でも、あなた達も消耗しているんじゃなくて?」
「チェックメイトっていうやつかな?」
 動物が離れていった今、耐えるだけならば小夜香と雛乃の2人でも十分に戦線を維持する事は可能だ。
 そうして時間を稼いでいれば、その内――否、もうすぐそこまでか。
「そこまでだな。悪いが後ろは取らせてもらったぞ」
「あそこに倒れてるのは……君達がやったのかな?」
 前には小夜香と雛乃、後ろにはアルゲディを伴ったフツとルー、そして1匹が倒れている事実に怒気を孕んだ声で問うアンジェリカ。
「じゃあ、俺達はこれで!」
「トンズラさせてもらおうか!」
 前後からの挟撃では流石に不利と感じたフィクサード達は撤退を図るが、
『逃がすと思うたか! そこに倒れるロクロウの仇じゃー!』
 ロクロウ――おそらく倒された動物の名前らしいの仇だと、鍬を振り上げた真っ先に突っ込んでいくアルゲディ。
 事故に近い状況でこの世界に迷い込んだ事は、不幸な事だ。その結果、1匹が命を落とした事実は覆らない。
『ワシの怒りを思い知れぃ!』
 だがそれでも、怒りに任せて仕掛けるアルゲディの勢いはフィクサードだけでなく、リベリスタ達すら呆気に取られる程のものだった。
「アルゲディ、タスケル、シナイ?」
「あ? ……あぁ、全力で援護しよう」
 とはいえアルゲディだけではフィクサードの撃破は困難である。援護を提案したルーに、はっとしたようにフツが答えれば、制圧戦が迅速に展開されていく。
 最初に小夜香はフィクサード達に撤退を促した。
 が、数の有利と鼻をあかすという小さなプライドを優先した結果――。
『フン! 思い知ったか、馬鹿者どもめ!』
 リベリスタ達の集中砲火に加え、アルゲディにすらのされた彼等はそのまま捕縛されてしまうのだった。

●牧神の帰還
 1匹は失ったものの、残る9匹は生存。その結果はアルゲディも不幸の中に幸いを感じるものであり、1匹の死も事故のようなものだと認識しているらしい。
「……と、少しだけ動物触らせてもらったりしてもいいかな?」
『む? 構わんぞ! 好きなだけ撫でてやってくれ!』
 その証拠は、触りたいという雛乃の希望に気前よく答え明るく振舞う様からも見て取れるだろう。
 彼は確かに感謝しているのだ。本来ならばもっと多くを失っていただろうはずが、最小限の犠牲にとどまったのだから。
「あの子は、残念だったね……」
『気にするな、これも天命じゃ。仕方のない事ばかりは、どうにもならんよ』
 1匹も死なせないと決めていたアンジェリカは流石に沈んでいたが、アルゲディは気にするなと彼女の頭を軽く撫でて励ましている。
 もしゃりもしゃりと再び草を食べ始めた動物達は、雛乃やアンジェリカが触ったり抱きついたりしてもまったく気にする様子もない。
 助けてくれた事は、彼等とて理解しているのだ。
「お墓……どうしましょうか?」
 ふと、ルーシアがそんな事を口にした。
 倒れたロクロウを、この世界に埋葬するか、アルゲディの世界に埋葬するか――。
「向こうの方が良いんじゃないかな? お墓にしても元の世界に作ってあげたほうがいいだろうし……」
『そうじゃのう。骨を埋めるなら自分の生きた世界が一番じゃ』
 その答は、雛乃とアルゲディの言葉で決まった。
 物言わぬロクロウを抱え、次元の穴を背にアルゲディはリベリスタ達の顔を順に見る。
『お主達がいなければ、もっと惨事になっておったことじゃろう。感謝するぞ!』
 感謝の言葉とともに、彼は帰還の途についていく。
「あの……最後に。あなたは牧神と呼ばれていたりしますか?」
『そういう奴もおる。まったくそんなつもりはないがな! ハハハハ!』
 去り際、ルーシアの問いに答えた牧神アルゲディの姿はそのまま次元の穴の向こうへと消えた。

 2つの世界をつなぐ穴が引き起こした、世界を跨ぐ動物捕獲作戦。
 全力を尽くしたリベリスタ達が得たのは、新たな友との出会いだった――。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
人数面を考えれば、1匹の犠牲で済んだ点は上々といえるでしょう。
こればかりは『仕方ない』と考えて頂ければ幸いです。

星座シリーズも次回、うお座でラスト。
双子の魚が星座になった……らしいのですが、地面でピチピチさせるのもどうかと思いますね(・w・;;
では、また機会がございましたら。
ご参加ありがとうございました。