●午前のおはなし 「このたまごは、危険」 「……たまご?」 リベリスタたちを緊急に呼び出した『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)。 彼女が真剣な面持ちで指さすモニターには、楽しそうな遊園地の風景がぐるぐると映っているのみ。 「たまご」 こくりと頷くイヴに、リベリスタたちは顔を見合わせた。 「ともかく、説明を頼める?」 今度はイヴがこくりと頷き、モニターに近寄る。 「ここ」 リベリスタには何も見えない場所を指し示し、イヴが説明を始める。 「ここに、たまごがある。 モニターには映っていない……というより、視認できない。 リベリスタでも、普通の視覚頼みだと見えないと思う。 これはアザーバイドのたまご。 夜の間に産み落としたみたい――今日が終わるころに孵化するから、それまでに何とかして欲しい。 たぶん壊せるけど、最悪回収でも構わない」 たぶん、と来た。 訝しげなリベリスタたちに、申し訳なさそうな表情でイヴが答える。 「これ、多分、叩いて壊れるものじゃない。 神秘的な力でなら、なんとかなると思うんだけど…… 画面がどうしてこんなにぐるぐる動いているか、わかる? ……跳ねてるの。 空気がいっぱい入ってるゴムのボールみたいに」 叩けば跳ねる。 形状はたまごといわれて想像する一般的な鶏卵と似ている。ただしラグビーボール大。 それはつまり。 「下手に叩けば、どこに飛んでいってしまうかわからない。 この遊園地から出ることがなさそうなのが、不幸中の幸い。 でも、ぶつかった子どもがもう蹴っ飛ばしてしまった――今はどこにあるのかわからない。 時々人にぶつかったり、アトラクションにぶつかったりして跳ね回ってる」 うわあ、という表情をするリベリスタたちに、イヴは一番大事な注意をした。 「孵化すると、周囲のものを何でも食べ出す。 人間の幼児くらいまでの大きさや知能なら食べ物に見えるみたいだから、注意して」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月05日(金)22:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●かくかたりき 「遊園地というのは子供達の夢の世界だ。 日常から外れた世界で娯楽と夢を与える場所だ。 夢があるから子供達は大きく育ち、未来の宇宙開発へとその志は繋がっていくのだ。 子供達は未来の希望だ。ワタシも遊園地と同じく夢を与える手伝いをしなくては。 さあ任務を始めよう。未来の地球の希望達を守る為に」 ――『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315) ●カレーと布団 21世紀になって『遊園地』という言葉を聞くことが、随分減ってきた。 遊び方の多様化、家族サービスというもののあり方――原因なんてものはそのあたりにこじつけてもらうとして、コンセプトも明確でわかりやすいテーマパークに取って変わられつつある中、それでも遊園地は意外と頑張っている。 今回の任務は、そんな感じで頑張ってる遊園地であり。 そして今はまさに夏休みであり。 ――リベリスタたちがちょっぴりハメを外しても、それはきっと許される出来事。 「わーい、遊園地だ。さあ、遊ぶぞ」 「おー、なの!」 テンションが高いのか低いのかわからない歓声を上げる『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)と、こちらは歳相応にテンションの高い『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)の二人。 「せっかくの遊園地、どうせならさおりんといっしょに来たかったのです」 あまり表情に出していない、つもりのはずがいろいろだだ漏れな『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)のしっぽは低い位置でゆーらゆーらと揺れている。 その後ろで咳払いをひとつして、3人にこれが仕事であるということを思い出させた『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)はそのまま少し考えこんでから言葉を続けた。 「たまごは能動的に動いているようだから絶対とは言えないけれど……ぶつかると飛び跳ねる性質から、人の多すぎる場所や回転するアトラクションの付近にあるとは考えづらいね」 ふむふむ、と頷く小梢たち。 「なんでもひとはね30メートルとか。すごいですね!」 「うん。軽そうなので、飛び上がった際に風に流される事も考えられる。 たまごの情報が得られた場所があれば、そこから風下の吹き溜まりになりそうな場所の近辺を探してみるのが良さそうだね」 「こう見えても反射神経は超いいのです。かっこいいところを見せるよ。 ……あ、カレーが食べたい。ちょっとあそこのお店で食べて行こうぜー」 そういってルーメリアとそあらを引き連れていく小梢。 のんびりした様子だが、彼女はこれで通常運行のようである。 「遊びながら、お仕事も出来るなんて幸せなんじゃよー! ふぉっふぉ」 つるりとしたもち肌の頭皮に反射する夏の正午の日差しにも負ける様子のない『布団妖怪』御布団 翁(BNE002526)も、これはこれでテンションが高い。 ところで彼の荷物は、人よりかさばっている。 カラーボール、捕虫網、遊園地の地図。 そして布団。 もし布団なんてかぶりながら遊園地に来園、なんてことになったら通報されたりしたかもしれないけどアクセスファンタズムに収納しているから大丈夫! なんて便利。眠たくなったら布団なんですね。地球の男に飽きたところですか。 「……頑張って、いこー……」 その横で小さく拳を上げるのは『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)である。 「お爺ちゃん1人とか心配……介護、頑張る」 それはそれで力強く頷いた羽音に、おじいちゃんが思い出したように質問をした。 「のう、蘭殿。ごはんはまだかのう」 「お爺ちゃん……ご飯はさっき、食べたでしょ?」 ●リア充の風景:1 ぽーん。 ぽーん。 ぼこんっ。 遊園地は、時折鳴り響く妙な音以外、概ね普段通りである。 奇妙な音にしても、近くで聞いても何かのアトラクションの音だろうかと聞き流してしまえるし、遠くであれば耳が余程良くなければ喧騒に紛れてまず聞こえなかっただろうが、 「あ、時々聞こえますね」 雪白 桐(BNE000185)の集音装置のような耳にはよく聞き取れているのだった。 あっちこっちと飛び跳ねる音を見失う(聞き失う?)ことはないように注意しつつ、 ふむ、とひとつ頷きつつ『素兎』天月・光(BNE000490)は手にしていた荷を解く。 ――自作サンドゥイッチ イン ザ バスケット。 「腹が減ってはなんとやら、野菜たっぷりなのら。桐ぽんはタンドリィーをあげやう」 桐の耳に頼って捜索したところ、2人はびっくりするぐらいすぐにたまごを発見することができた。 もちろんその時は慌てて捕まえようとはしたものの、取り逃がし――しかしそのへんのおっちゃんとかにぶつかってる様子見ても、全然痛そうには見えなかったのである。 孵化したら危険なたまごは、孵化するまではかなり無害にポンポン跳ねてるだけっぽいのであった。 ぽーん。 「お昼を食べて、たまごを捕まえたら遊ぶのだよ。もちろん乗るのは、ジェットコースだ!」 びしっ! と、ジェットコースターを指さしテンションあがりまくりの光。 「ジェットコースターの後はお化け屋敷でもいきましょうか?」 もらったサンドをぱくつきながら、桐も賛同する。 「あ、これおいしいですね。ではお返しに紅茶をどうぞですよ?」 のどか。 ●リア充の風景:2 「アークに所属して初めての依頼だなっ。そのたまごって、孵化すると何が出てくるんだろー?」 『1年3組26番』山科・圭介(BNE002774)が胸の前で掌に拳を打ち、気合充分といった様相である。 「みえないたまごって理不尽。 跳ね回ってるのに見えないとか、ずるい」 その横で『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)は、どこか拗ねてるようにも見えた。 「生まれたものを倒すほうがおもしろいけど、そうともいっていられないのがアーク。理不尽」 そう言ってニット帽から覗く耳をぴぴっと振るルカルカ。 「そういや、どっか行きたい所あったりする?」 「圭介、ルカ、あれ食べる」 「ああ、こーゆー場所の食いモンってチープだけど妙に美味く感じるよな。 バイト代入ったし奢るわー……ってちょ、食いすぎ!」 奢ると言われた途端に、ルカルカは売店の食品を次々と指さし出した。 ポテチ、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、ジュース、クレープ、かき氷。 売店だけにアルコールもあったのだが、それはさすがに最初からアウトオブ眼中の模様。 お酒はハタチになってから。 「あいよー」 明らかに圭介の財布には大ダメージが飛んでいるというのに、売店のおばちゃんはにこにこと商品を準備するばかりで止めようとはしない。諦めろ圭介、仕事となれば時に人は非道な鬼となるのだ。 「もぐもぐしていいっていわれた。圭介いいひと」 「そのほっそい体のどこにそんな入るんだよ……いいけど、や、もう好きなだけ食って下さい」 うれしそうにコナモンその他を抱え込むルカルカを見てむしろ幸せにさえなってきている圭介の頭上から、きゃー! という悲鳴が聞こえ、かじりかけのたこ焼きをほおばってルカルカは身構えた。 ごうっ、と。 風を裂くような轟音が響き、2人の頭上を去っていく。 ルカルカの視線を追い、それが脅威ではなかったことに胸をなで下ろす圭介。 「ああ……。 あれはジェットコースター。ここのはすっごいみたい」 「ジェットコースター? すっごい? ……あれのりたい。こわくないよね」 「ゼンゼンコワクナイヨー俺好きだし。先頭乗ろうぜ先頭!」 ああ、まさに羊と狼の図。 ――え? ジーニアス? 何言ってるんですか、昔から言うでしょう? 男は狼。 ~しばらくお待ちください~ 「圭介のうそつき……なんであんな高いところから3回ひねりしつつ落ちるの?」 ひどくあたり前の、しかしある意味意外な結末。 涙目で、耳も全力でぴるぴるしまくってるルカルカがそこにいた。 「あのぎゅわーってなるとこ楽しかったー!」 「ルカ3回死ぬかとおもった」 「だいじょーぶ死なない死なない」 そう言って圭介がよしよし、とルカルカをなだめる。 ……ええい、このリア充どもめ。 ●自由落下 「こちら御布団、景色がとても綺麗じゃよ、どうぞ」 『こちら春津見。真面目にたまご探してますよ。 みんなでペイントボールを準備してます。 ……よし、私も持っていこう。あ、落としちゃった』 通信の向こう、その後ろでうわあ! とかひゃあ! とか、突然散らばった色つきの液体に驚いているのだろう声が聞こえてくる。 『大丈夫、予備がある。みんなで投げつければどれかは当たるよね』 「ふぉっふぉ。今まさにぶつかられた人が、ジェットコースター近辺にいるようじゃ。 うぅむ、よく見えるのぅ。今、この遊園地で一番高いところから見ておるのじゃよ」 『一番、高いところ……?』 がこんっ。 「ひょーーーーーー!!!!」 フリーフォールに乗るおじいちゃんの図。 翁曰く、「決して乗りたかったというわけでは(略)」とのことだが、介護するかのごとくずっとついてまわってた羽音に言わせると、「真っ先に地図に丸つけて飛んでいって並んでた」のだそうである。 ハイカラ(?)。 ●まじめなひとたち 「そこの君、ちょっと聞きたいのだが。 誰かに追突されたようなことはなかったかね? いや、ないならいいのだが、ちょっと探し物をしていてね」 突然声をかけてきた宇宙服の男、キャプテン・ガガーリン。その姿に少年は少しの間思考停止していた。 「……あれか? おっちゃん、ここの従業員なんか? 暑ない?」 「ふむ、良いところに気がついた、少年。この船外活動服、つまりよく言われる宇宙服だが。 見た目は暑そうに見えるものだが実際はそうでもないものなのだよ。 何故なら宇宙というのはとても寒い。その寒さを遮断するためにも分厚くなり、下着も含めて14層にもなってしまったために今度は着用する人間の体温をこもらせてしまうという問題が(以下略)」 「……ごめんおっちゃん、おれ途中で意識飛んでたわ……。 あ、ぶつかったって、あれか? さっき、どっかでワーキャー言ってたの聞いたけど」 「にはは。連絡あったのもこっちの方だし、まだ遠くないやも~」 キャプテンの後ろで『さすらいの猫憑き旅人』桜 望(BNE000713)がにぱーと笑う。 「おっし、いつ卵が現れても大丈夫なように神経を研ぎ澄ませておくんやよっ」 「天気予報の風向きはこうで……今の情報が、ここ。ということは……」 入り口でもらった遊園地の地図に書き込みをしながら、キリエが呟く。 「……よし、間違いない。 たまごを捕まえるのに最適なのは、ここだ」 自信に満ちた声を上げ、地図にきゅっ、と丸をつける。 ――野外劇場。一番奥まった場所にありながら、今は何も公演していない時間帯だった。 ●人生色々(色彩的な意味で) 元々ジェットコースター付近にいたルカルカと圭介である。翁が見つけた騒ぎの中に、この2人もいた。 最も近かったこともあり、連絡を受けていち早く野外劇場に陣取っていた。 「あー、しまった! カラーボール、持ってくるの忘れた! 最後にどこにおいたっけ、ああそうだ、必要そうなもの全部並べて机の上だ!」 アクセスファンタズムを確認し、圭介が叫ぶ。 さすがにカラーボールはどこか適当なコンビニで買うのも難しい。遊園地の中で代替品を探すとなればもう一つ骨だろう。 「ん。ルカの、ひとつ貸す。もぐもぐのお礼」 「すまんっ」 ルカが差し出したカラーボールを受け取って投げようとした圭介の頭を一瞬だけ、確保するよりも気糸で精密に撃ちぬいた方が早いだろうかという思いがよぎる。 擬似的な物質として紡がれる糸は、物理的な影響を持たない。たまごを破壊するには「神秘的な」攻撃と言われていたのだから、一発当ててみれば気の糸だけで壊せるかもしれない。 いや、中途半端に壊れて孵化がはやまることもありうるか――? その一瞬の躊躇の間に、ルカルカが金色の目を細めて街路樹を見据える。 「あの木、ぶつかった」 「え!?」 一言告げてカラーボールを投げつける、ルカルカ。 「そこっ!」 キャプテン・キリエ・望の3人は、比較的すぐに野外劇場にたどり着いた。 その時である。 「そこっ!」 聞き覚えのある声がしたと同時に、キャプテンが真っピンクに染まった。 ――その腕の中の、地球が人々を抱きとめるかのように優しく受け止められた丸い物体とともに。 なんだかんだで、確保成功。 ●夜の来ない昼はなく、朝の来ない夜もなく たまごの破壊には、時間を要しなかった。 跳ねて行かないように慎重に固定し一斉に物理手段以外の攻撃をすることで、あっけなく見えないたまごは割れてしまった。ピンク色に染まった殻に守られていたのは、どことなく犬のような姿のアザーバイド。 「これがこのせかいにきちゃった不条理」 「すまぬのう、出来れば元の世界に帰してやりたかったんじゃが……」 ルカルカが呟き、翁が少し申し訳なさそうにアザーバイドの亡骸に言葉をかける。 割と早く終わった仕事に、空を見上げればまだ夕方にさしかかろうとする程度である。 「あーし、残ってのんびり夜の遊園地、散策してみるかな~♪ 遊園地なんて久々だから……いいよね?」 望が伸びをしてそう言い出す。 「閉園後の遊園地は異様に静かだろうね。 でも悪くはないかも。 ……ほんとは、プラネタリウムでも見てみたかったけど、天然の夜空でいいか」 同意するキリエ。いいですけど、残業代は出ませんよ? 「ああ、カレーが食べたい。ルーメリアさん、奢ってー。奢ってくれたら尊敬するから」 「え。ルメのこと、奢ったら尊敬って……」 「あたしはいちごパフェがいいです」 「えええ!?」 世はなべて事もなし。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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