● 此処最近、雪が降っても積もらない。 冬なのに、冬なのに、とマリアは窓越しに空を見上げて嘆いていた。 其処で現る救世主。 「マリアさん、ボトムに対して友好的なアザーバイドが来訪して三高平に大雪を降らせてくれるみたいですよ」 「神キタ!!」 ●数日後 という訳で。 「降った!」 ので、やりましょうか、アレ。 ……マリアの羽大きすぎて本当に雪が降ったか見えないよ。 もっとカメラから遠ざかって遠ざかって。 「やだ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月02日(日)23:17 |
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■メイン参加者 29人■ | |||||
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● へいわなせかい()に生きている竜一は、争わない。 はい。 「……というわけで、まきのんにベったん」 「はい?」 「なによ」 竜一曰く、お兄ちゃんは見守っているので二人は元気に合戦して楽しんでほしいというもの。 だがマリアは何時も以上に寒そうに見える。こんなに雪が積もっているのに……確かにその恰好は場違いにも程があった。 大丈夫、竜一が用意しました。流石箱舟一のデュランダル。 「まあ、悪くないわね」 耳の着いたフード付ダウンを着せられたマリアはもこもこに包まれた! 因みに此れ、竜一と杏理とマリアとペアルック。 杏理は恥ずかしそうに両手で顔を覆った。序に用意された手袋がやたらと愛らしい模様。 「寒くなったら俺の所に来ればあっためてあげるよ」 撫でられる杏理。 「よーしよしよし、べったんは良い子だなあ」 「ぎゃー!!」 はすられるマリア。まるでいつも通りの光景であった。 で。 旗の位置について大変異議があるそうなので聞いてあげてください。 「旗の位置を変えてはならんとは書いていない」 神妙な顔つきで鷲祐は白色の旗を己が家からもぎ取った。因みに赤色の旗は宣言が相談で無かったので、なんと公園の端っこでございます。ルールなので、ルールなので! ともあれ再び家を燃やされたり荒らされる訳にはいかない。何があったかは前回の雪合戦を検索検索ゥ! あれから八か月、ようやく彼の家は完成したのだ。冬の寒さはまだ厳しい、こんな二月序盤に壊される訳にはいかない。 ――きこえますかしゅうすけ、あなたのこころにかたりかけています。大丈夫、また時間をかけて元に戻せばいい。 「あわわ……おにーさんハウスは、この『可愛い義妹!!』が守りますので……」 「ああ、すまない頼む……」 火が風に晒されているかの如く、影が薄くなった鷲祐へスピカが言った。今日の運び屋わたここと、スピカはおにーさんハウスの安全をお届けである。 ジー……という音と共に、義衛郎はカメラの撮影を開始した。 さあ、今年も始まりました! 血を血で洗う雪合戦! 前回は混乱の渦の中、美少女が旗をもぎ取ったが今年はどうなる事か。 とりあえず平和に終われば良いと義衛郎は、腕の腕章の『撮影係』という文字に安全を望んだ。 ● 「自分が深鴇さんなん?」 「うん、僕だね。詳しくは『其の名は規格外』とか黄泉ヶ辻シナリオを読んでね!」 「誰に向かって話してん……?」 椿が話しかけた人物は紛れも無く深鴇である。薄いピンク色の短髪に、サンバイザーをしてツナギ服を着た黒羽フライエンジェ。 「じゃ、そういう事で」 「ちょっと待ち」 くるり、深鴇はその場から離れようと椿に背を向けたが、やたらと力が入っている片手に肩を掴まれ逃走できず。 「十三代目紅椿。いやだよ止めてよ。君の噂は怖すぎて僕……性的な白いものが下半身から漏れちゃうよ」 「汚ッ!?」 手を話した椿は其の侭ハンカチで手を拭いた。 「噂で深鴇が三高平に来たとは聞きましたが本当でしたか」 「おやあ? ロマネちゃん久しぶり。最後会えなくて僕、結構寂しかったんだよ?」 幾度も敵として相対した人物が仲間となった、と成ると不思議な気分でもあろう。ロマネの両の眼にしかと映された深鴇は笑顔で手を振った。 「三高平は何時でもお祭りだね。何時も何時も忙しそうに皆動いているよ。じゃ、そういう事で」 「ちょっと待ち」←二回目 「そうね、そういう所よ」 「ま、個性だらけだしな」 「運命狂に、ザミエルの弾丸ちゃんだっけ」 ロマネに続いて氷璃と瀬恋が来た。あれ、何故だろうか深鴇が四人に囲まれている気がする。 「おかしくない? 配置おかしくない? これあれじゃない? 単体フィクサードを討伐するための配置じゃない?」 「そういえば、墓をお一つ掘ってから来ました」 「止めてよロマネちゃん! 僕の未来にフラグ建築しないでよ!!」 「何故、埋められるのか――? 自分の胸に聞いて心当たりが無いとでも……?」 「無い無い! 運命狂、傘の先端こっちに向けるのやめて!」 「先日、マリアがお世話になったようやね……その点に関してはありがとなぁ」 「あぁ……僕のお金が全損した記念日の事かい?」 「なんかいっぱい奢って貰ったみたいで、その点に関しては申し訳ないと思うわぁ」 その点に関しては(大事な事だからry) 「三高平に来て早々、うちの子に手ぇ出すとか良い度胸しとるよな自分。本職さんに手伝って貰ったうちらの歓迎、存分に味わってってな?」 椿の後ろから顔を出したマリアがニタァと笑っていた。 一息ついた瀬恋。諦めろという目線で深鴇を見た。それを見て深鴇は顔を全力で横に振るしか無く。 「つまりだ、マリアをナンパしたから埋めるってこった」 「ザミエルちゃん聞きたくなかった解説をありがとう、僕何処で道間違えたかなぁ」 「こえーよアンタら」 チーン。 しばらくして、頭だけ地面よりはいえている深鴇が発生した。未だロマネは深鴇が掘り起こされない、這い出ないように彼の首回りの土をこれでもかと固めている。 「ううっ、リベリスタ怖いよぉ。怖くてぞくぞくするからよがっちゃうよぉぉ」 「てめー気持ち悪いな」 だから言ったじゃないか、諦めろと。瀬恋は埋まった深鴇の隣に腰掛ながらココアを啜る。 ともあれフィクサードあがりのリベリスタなんて此の世には沢山いる。瀬恋もそうだが、瀬恋が撫でているマリアもそうだ。 深鴇を心配してか瀬恋は、 「くだらねえ根回しなんざいらねぇから好きにやんな」 と労いの言葉をかけてみるのだが、その間氷璃がマリアにハンマーを持たせ、目隠しさせ、人間スイカ割りを始めていた。 「自称・墓掘りの首から下を埋めてスイカ割りは如何かしら?」 「あばばばばばばば」 「それじゃあ、架枢深鴇。三高平へようこそ、歓迎してあげるわ」 成程。此れが宵咲風のお、も、て、な、し。おもてなし。深鴇目線から言えば100倍返しされているように見えなくもないが。 「僕まだ許されてないのかな!!? 僕どうすれば許されるかなあ!!? ぐふっ」 「オイ? 聞いてんのか? 勝手に気ぃ失ってんじゃねぇぞコラ」 こうして深鴇の少ないフェイトがまたマイナス2されたのであった。 ● やっと本編である。メインである。 快は積まれていた木材からとびっきり太い丸太を担いだ。カメラ目線に。 「皆、丸太は持ったか!」 吸血鬼はいれど、鬼はいないので落ち着け。ハァハァしている快は旗のすぐ隣に陣を取った。 されど……やる気がある快とは裏腹に悠里は苦い顔をしていた。 「えっと……ちょっと待って」 悠里は利き手の腕を天高く上げた。 「おかしくない? だって既に人数差がさぁ」 赤組→十二人。 白組→九人。 「惜しい!! 人数差って割と物言うよね!? ちょっと赤から何人かこっちおいでよ」 「無理なのです。負けを認めるのです。それとそあらさんを狙ったら殺すです」 「ひっ」 「そあらさんに言われたから、諦めるんじゃ」 レイラインが悠里の肩をポンと叩いた。何、数より質である。赤組の質も割とえぐいものがあるが。 「しっかりしてよね、先輩」 外がレイラインとは別の方の悠里の肩を叩いた。外にとっては先輩方が頑張ってくれなくては困るのだ。 「大丈夫です、この和泉がしっかり皆さんの事、サポートさせていただきますね」←超良い笑顔 「え、なんだろう凄く恐ろしい」 陽菜は本日ツッコミ役に徹して貰います。 和泉の最終兵器が今年も火を噴くらしい。和泉が組み立てた雪玉専用バズーカ(連射機能付)は、和泉持参の品である。 「そんなもの持参できるものなの!!?」 陽菜の手の甲が和泉の胸を叩いた。恥ずかしそうに、照れ臭そうにしている和泉は拳に親指を立ててサムズアップ。 「皆さん、私が乱射して敵を陽動している間に旗を狙って下さい!」 先程も説明した通りですが、旗の位置は白組が司馬ハウスの屋根。赤組が公園の端になります。 それでは前触れも無く、雪合戦開始。 刹那、工場の機械が盛大に稼働するかのような音が響いた。 「うふふ……メンテナンス完璧ですね」 笑っている和泉が動かすバズーカが、まるでこれはハニーコムガトリング。 雪の弾丸は空を駆けた。回避のある赤組の猛者は雪の軌道を計算していくが――もちろん数撃てば当たるので無慈悲である。 「また、またこの悲劇がおこるので、ござぁぁぁあー!!」 虎鐵、和泉のハニーコムガトリングに直撃した為、吹き飛ばされていった。 「和泉さん。虎鐵さんの身体って筋肉で結構重いんですよ」←風斗、何故か敬語 「そうですよね、バズーカが頑張って下さいました」 「あ、うん」 風斗は自ら思考停止した。 「外くん外くん外くん外くん外くん外くん外くん外くん!!!!」 「うわ」 満面の笑みで走って来た魅零。狙うはただ一つ、外である。 察するに、魅零は例えハチマキを奪ったとしても留まる事は無いであろう。身の危険を最優先にした外は魅零に背を向け逃走。 「遊ぼうよ!! お人形さんごっこだね!!」 「そんなお人形さんごっこは無いよ先輩」 魅零、雪に此の世の呪いを込めていく。つまり奈落剣である。序に解放された漆黒が禍々しくカオス。 「パンダありがとう、クロンちゃん大事にしてるんだよ!!」 公園から逃げていった外に奈落が直撃したかは知れない――が、二人程フェードアウトしていった。 ハチマキをぎゅっと頭に着けた夏栖斗は隣のいちるへと声をかけた。 「よし! いちる、ブースターはまかせた! 腕力でなげまくってやるから行くぞ!」 「おっけー任せて御厨ちゃん、せっせと作るからどんどこ投げてねー」 いちるは雪を掻き集め、丸い弾丸を作る作業に徹する。其れを夏栖斗の手に渡し―― 「あ!? 旗の位置ずらされて……わしすけぇぇてめ!!」 「あの蒼い人から落とすよ御厨ちゃん!」 旗位置を工作しようとしていた鷲祐に夏栖斗の『いちる製雪玉』が炸裂。鷲祐ハウスより駄々落ちて行った鷲祐の安否は知れず。 お供え物のようにさり気無く、そあらは沈んだ彼のところへイチゴタルトを置いた。 「嫌な、事件だったのです(´・ω・`)。そしてこれからも悪夢は続くのです」 其れを見ていた二人。 「……今回は何かしら無いといいな、司馬さんの家に」 望み薄。 苦笑いを決めた拓真の隣、 「雪か……」 悠月は踏みしめた雪の感触を楽しんでいた。たまに降るから良いものを、雪国で毎年見ていたら嫌になりそうだと心中思いながら。 「まあ、今回流石に燃えたりは……?」 「うーむ」 時間差で拓真に言葉を返してみたものの、やはり望薄。 そこで剛速球で投げられてきたのは雪玉。石化の呪いを乗せて――其れを刹那、AFから取り出した剣で切り払った拓真は穏やかでは無い事を実感した。 金髪を靡かせながら、少女が一人浮いていたからだ。 「今回も随分張り切っているな、少しの間顔を見ていなかったが元気そうで何より……でも無関係に雪投げちゃ駄目さ」 「ベル! ――楽しそうですね。此処の所、中途半端に積もらない雪ばかりでしたし」 「お二人様は何時もお二人様ね! 楽しいわ、なんで二人とも参加しないの? マリアが雪で埋めてあげたのに!」 「俺は今回は観戦側だからな……此処で見て応援をしているから、その活躍をしっかり見させて貰うよ」 「むー」 嫌がられるかと恐る恐る伸ばした拓真の手が、マリアの頭に到達した。まだ幼い綺麗な髪をぐしゃぐしゃにしない程度に優しく撫でた。マリアも嫌な気はしていないらしい。 「雪合戦……去年もしましたね。懐かしい」 惨劇でしたね。 冷えた悠月の手にマリアが竜一から貰った手袋を着せかえた。 「あら、ありがとうございます。気の利く子ですね」 「うーうん、マリアその手袋いらなーい。からあげるわ!」 マリアフリーダム。 思い出したように拓真はマリアの頭から手を離した。 「そういえば、ベルだったか? 問題が無ければ俺も今後はそう呼ばせて貰うか」 「ベル! ベルーシュのベル! いいわよ、拓真になら呼ばせてあげる。じゃあね!」 背を向け、両手をぶんぶん振ったマリアに二人は優しく微笑みながら手を振り返した。 「いってらっしゃい、ベル。遊べる時は遊んでおいで」 「観ていますよ。――存分に楽しんでらっしゃい、ベル」 「なによーなんだかすっごいくすぐったいわねー」 「ミーノ! リュミエール! オレの肩に乗れ!!」 「いっくよーーーちょうたかいところからうちおろしゆきだまこーげきっ!」 「人がゴミのようダゼ」 フツの身体に乗ったミーノとリュミエール。まるでフツの背から十八の尾がはえているようにも見える。 フツは千里眼を発動、今の彼に死角というものは存在しない――人間レーダーである。そして十八の尾が雪を器用に掴んで、投げて投げて投げるのであった。 「三時の方向に敵いるぜ! ミーノ、リュミエールいけー!!」 「まかせてがってんっ!」 「オウ」 一斉に撃ちだされる弾丸の数は十八。数撃てばあたるのはそうだが、雪にぶつかった杏理は勢いで地面の雪にダイブした。 が、其処に杏理の身体を守る影ひとつ。フツは新手をいち早く察知していた、一度ミーノリュミエール砲を止めて敵の出方を伺う。 「この鉄壁の守りある限りアタシはやられはしない!」 「陽菜さん!?」 両手を広げ、陽菜は杏理に向かう弾丸を守る盾となった。 ジョブこそスターサジタリー。されど今は勇敢なるクロスイージス、陽菜。 「陽菜さん、杏理……足手纏いですいません……」 「いいんだ、あとであいつら(赤組)全員雪に沈めるからね!!」 「陽菜さん……後ろ、後ろー!!」 再び攻勢したスリーマンセルの攻撃に陽菜は雪に沈んだのであった。 が、その時。後方より投げられてきた雪玉がフツの肩に乗っていたリュミエールのハチマキを的確に弾き飛ばしていったのであった。 「三体一は、ちょっと見過ごせないかな」 「悠里さん……ありがとうございます」 「いや、若いってのは良いねえ」 折り畳み式の椅子に腰を掛け、烏は煙草を吸いながら優雅に観戦していた。煙草吸うときは其のマスクは捲り上がるのだろうか、分からないので彼が吸う動作をしたら顔にモザイクかけておこう。 傍らに置いた珈琲からは上質な豆の香りが上る。嗚呼、今日もなんて平和か。平和か? 珈琲を啜るときはマスクは捲り上がるのだろうか、これも答えが見えないのでモザイクかけておきますね。 「所で一杯如何かな?」 「どうもダゼ」 彼は飲み物支給係りか何か。脱落したリュミエールに温かい飲み物を配る良心的なおじさまです。 「能ある虎はたとえ兎だろうが全力で狩るのでござる!」 雪に埋まっていた虎鐵が勢いよく起き上った。破壊神の目覚めである。 「ふ……息子の前でいい所を見せてやるでござぁ」 虎鐵が目についたのは、此方へ向かってくる特大サイズの雪玉だ。風斗が投げたものだが、虎鐵はこれを利き手拳の一振りで木端へと返した。 「今爆発でもあったかのような音がしたが……!?」 「現実でござる!!」 すかさず虎鐵の反撃。風斗とは対照的に小さな玉を力に任せて投げた。其れは所謂、拳銃から放たれた弾にも匹敵する、否、もしかすればだがもしかしなくてもそれ以上の威力を持っている。 次の大玉の為に行動していた風斗は此れを避けられず、頭の丁度中心に穴が空いたとか空いてないとか。 「よう、相棒。ここでは敵同士だなだな!」 「何時かこうなる日が来るとは思っていた」 3DT……もとい、御三家を脱却した快だ。夏栖斗が妬みが無いとは言えばそんな事は無いだろうがそんな事は無いだろう。 「いちる! いまだ! 奪え!」 「えっ、ここでボクなの!? すごい! なんて無茶ぶりだ!」 夏栖斗の声に雪玉を作っていたいちるの手が止まり、駆けだした。狙うは旗――快がいちるに伸ばそうとした手を夏栖斗は掴んで止めた。 「僕のブロック力がどれ程か知ってるだろ!!」 「ふ……俺のリーガルブレードが止められると本気で思っているのか?」 快、足下の丸太を持ち上げ叩く(遠距離物理攻撃)。丸太はいちるの足下を崩し、その場が大破していった。断っておくが、あくまで人の家の屋根で戦っているのだ。それでだなリベリスタ、何故そんな過激的なの。快たちは裏野部一二三と会い過ぎてなんか駄目な病気貰っちゃったの? 裏野部病なの? がらりと落ちていく足下、いちるは其の侭重力に従っていく。夏栖斗が伸ばした手は――届きやしない。 「御厨ちゃん、残念だけどボクはここまでみたいだ……」 「いちるー!!? 快、おまえ……!!」 「俺の力は旗を守る為の力なんだ」 夏栖斗の拳が快の肉壁を射抜く――その前に。快の影より風斗が血眼――否、顔面から血を流しながら巨大なる雪を持って現れたのだ。 「貴様には、この特大雪玉(当社比3倍)を食らわせてやる! 死ねェェ!!!」 彼も裏野部病をこじらせようとしていた。 「僕なんか悪い事したっけ!?」 「おい、待て。その大雪だと俺も一緒に直撃食らうっていうのは考えなかったのか」 風斗の大雪が重力に従ってその場にいた二人を飲み込まんとしている。 雪の大きな影が広がっていくその直前。何処からか飛び出してきた悠里が風斗の腕を掴み、投げさせまいとした。 「離せ!! 俺はあいつをォォ!!」 「そう、何度も鷲祐さんの家を壊させるわけにはいかないんだ!! 泣いている人だっているんだよ、見てみてよ鷲祐さんの表情を!」 其の頃、鷲祐。膝を抱えて体育座りで心此処に非ず。 「ほらみろ、死にそうだよ」 「それでも俺は――!!」 葛藤する二人であったが、高い声が静止を求めた。 「そ、それ以上はおにーさんハウスが!!」 スピカである。司馬邸への進撃をなんとかして食い止めようとしていたが、彼女一人の手では些か力及ばずか。それでも彼女は屋根の上で戦う四人を吹き飛ばさんとしていた――の、だけど。 鈍い音ひとつ。 遂に雪の重みと人四人の重さに耐えられなくなった屋根が崩壊した。四名が大雪ごと司馬ハウスに沈んだので脱落。 「おにーさんハウスの屋根があわわわ」 一気に挙動不審になったスピカはとりあえず家の持ち主が死んでいないか確かめに行った。 「あそこに近づかなくて良かったのです」 そあらは再びさり気無く、雪玉で沈んだ四人(夏栖斗、快、風斗、悠里)のハチマキを回収し、窒息しないように四人を掘り上げていた。誰も、誰も戦場に返り咲く事は無い。ある意味司馬邸は守られたと言ってもいいだろう。 しかし何故だか嵐が去ったかのように静かだ。傍では外が脱落した四人の背中に雪を詰め込んでいく。 「手先がとっても冷たいのです(´・ω・`)」 雪を掻くそあらの指先は、苺のそれのように赤くなってしまっている。そう、再び事件は起きてしまった。 家の持ち主が哀れに思えたので、またもう一個イチゴタルトをくれてやろうと心中、そあらは思ったのであった。 そんな一部始終を記録していた義衛郎は笑いを堪えるのに必死であった。 「いやあ、良い絵が撮れました。おや、ベルーシュさん元気そうですね。バッチリ撮ってますよ」 「ほんと!? マリアいっぱい撮られてる!!」 嬉しそうに手をあげたマリアであったが、義衛郎は気づいていた。マリアの背後の――影。 「うふふ」 ヒートアップした雪合戦を横目に珍粘は我が道を行く。 寒いが苦手なのに、更に冷たいものを投げたり当てられるなんてやってられるか! である。それよりも―― 「マッリアさーん!」 「ぎゃあああああああ!?」 おい。今寒いの苦手とか言ってたよね。 まさかの珍粘、雪だるまの中から空より舞い降りたマリアに奇襲をかけたのであった。 ぎゅっぎゅはすはすすりすりくんくん。女の子を抱きしめられるチャンスがあるのなら、寒さなんて関係無い。彼女の熱い思いは物理現象でさえ凌駕するのだ。 「ふふふ、抵抗せず大人しく…‥いえ、むしろ抵抗してくれた方が燃えるかも」 「怖いわ!! 那由多怖いわ!!」 「ああ、可愛いなあ可愛いなあ、連れてっちゃ駄目ですか?」 「駄目よ!」 「駄目ですか……残念」 頬すりしていた珍粘がマリアの攻撃で石化……しないのだった。もはやマリアに打つ手無かった。もうどうしようもない。 「これではマリアさんも脱落、でしょうかね」 「まだまだー!!」 義衛郎は珍粘に抱かれるマリアの一部始終も撮っていた。 「おばーちゃんアタック!!」 「あふん!」 珍粘の後ろから来たレイラインが、珍粘の後頭部にチョップしたのであった。 「ちょっとまだ戦争の途中じゃて、ベルを借りるのじゃー!」 「いってらっしゃい」 手を振る義衛郎の見送りに手を振り返したレイラインが行く手は――敵の旗のもとであった。 「というわけでタロちゃん、我々にケーキ買って下さい」 「絶対嫌かなぁ」 ぐるぐが深鴇の臭いを辿って来てみた。ぐるぐは周辺を見回すが、肝心の深鴇の姿が見当たらない。 「こっちこっち、ぐるぐちゃん」 「おお、何故埋まっているのですか?」 「助けてよ」 先程埋められた深鴇は、頭だけ地面から生えていた。このままでは遊べないので、ぐるぐはせっせと彼を収穫した。 しばらくして。 「助かったよ。で、なんだっけ」 「グリムハウンドは競う以上遊びだろうが全力です」 キランと瞳が光ったぐるぐは拳を握る。因みに上記の事柄は四秒前に作ったらしい。 「全力で!」 拳を上に上げ。 「楽しむ!」 得物を取り出し深鴇の首にそれを着けた。 「そして殺す」 「うん、とりあえず物騒なものは仕舞おうか」 上空より灯璃の声が響いた。 「グリムハウンドの新人歓迎会を兼ねての雪合戦だよ! やるからには勝つよ」 「上からだとパンツ見えちゃうね――ガフッ」 顔を上げた深鴇の顔に、灯璃が放った雪が直撃した。 ともあれ、未だ訪問さえしていないがグリムハウンドに来た(予定)のであれば深鴇は彼女らの白組に入らなければいけないというもの。 渋々白いハチマキをポケットから出した深鴇。 「で、マリアにはケーキ奢ったんでしょ?」 「君も同じ事言うんだね」 「灯璃達に奢るのは当然だよね」 「……ちょっと今無理ですね」 上から注がれる灯璃の目線が痛い、凄く痛い。終いにはジャンプしてみろなんて言われるので、再び渋々ジャンプ――では無くそのまま灯璃のもとまで飛んできた。 「今度ちゃんと奢るから……勘弁してね。ところであれまずいんじゃないの?」 深鴇が指をさした方向――レイラインとマリアが旗を取りに来ていた。 「超やばい」 「超やばいよね」 レイラインの回避が高い事が幸いしてか、マリアを脇腹に抱えてひょいひょいと雪玉を避けて公園の端まで来たという。 マリアもマリアで堕天落とし(遠距離石化ダメ0)をかましながら来ていた。途中で魅零を沈めて来た外もレイラインと合流。なんて事だ、白組大半はもう生き残っていないというのか。 「魔球! オニギリボール! 深鴇シールド!!」 「ガハッ、規格外だこんなシナリオ!!」 その石化を深鴇の盾で回避したぐるぐは、雪玉を一つ投げてはレイラインの頬を掠める。 「お婆ちゃんシールドしながら旗へ突進じゃー!」 「おー!」 極めてマリアとレイラインの二人は好調である。此のままでは旗まで進軍させらてしまう――しかし其処に。 「この先に行きたければ、オレたちを超えるんだな!」 「みーのたちさいきょう!」 フツ&ミーノがギリギリで旗の前に立つ事が出来たのだ。 「先輩二人がかりはちょっと荷が重すぎるよ」 フツとミーノが行動する前にと、外は極縛陣を放った。 レイラインから見れば敵は五人。対して此方は三人。絶望しかけた――其の時であった。 バルルルルrrrと響く轟音。バゴ!と雪の中から這い出て来た陽菜。 「言ったじゃないですか、私に任せておきなさい――と」 「赤組の! 皆が! 倒れるまで! 投げるのを止めない!」 此処で和泉と陽菜が出て来た。サジタリーの攻勢に、バズーカ砲が赤組の盾を撃ち落とし撃ち飛ばしていく。陽菜に至っては血眼と悪戯を秘めて笑った口元がフィクサードっぽい。 「さあ、行ってください!!」 「おらおらおらおらおらおらー!! 旗? そんなことより攻撃だ!!」 「あ、ありがとうなのじゃ……」 かくして、赤組の旗はレイラインの腕へと収まった。 なお、白組の旗は大体風斗のせいで雪に埋もれて行方不明である。 「今年も波乱万丈。皆さん元気ですよね」 カメラの録画を止めた義衛郎は、不敵な笑みを魅せながら公園の出入り口へと消えて行った――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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