●麓の村で 雪が降る。全てを包む込むように。 雪国の道路がこの時期に使えなくなることは良くあることだ。道路凍結による走行の危険性の高さ。視界の悪さ。雪崩などの雪災害。 人類の文明が自然を克服したように思えても、それはほんの一部。人事ではどうしようもないことがある。 例えば―― 「車さえ出せれば……!」 江藤八郎は拳を叩いて車を叩く。中には荒い呼吸の妻。急な病魔により身を苛まれている。 ガソリンは十分にある。病院まで村を出て一時間の距離。道だってわかっている。だが、それでもこの雪では車を出すのは危ういだろう。無理に出れば途中で立ち往生か、あるいは道を滑って大事故になりかねない。 妻の容態は刻一刻と悪くなる。下手をすれば命に関わるかもしれない。早急な治療が必要なのに。 雪が降る。自然の牙は容赦ない。 だがこの雪は、自然のものとは異なっていた。 ●アーク 「こいつが今から十八時間後の予知だ。このままレディは衰弱し、長期入院の流れになる」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は集まったリベリスタ達に向かって、説明を開始する。 「これを見せてどうしろって言うんだ? この家に行って雪が降る前に拉致って病院に叩き込むのか?」 「そいつも悪くないアイデアだが、それはお前達じゃなくてもできる。頼みたいのはリベリスタにしかできないこと。要するにこいつは、神秘事件なのさ。アンダスタン?」 伸暁が集まったリベリスタを指差し告げる。モニターには一体のエリューションが現れる。白い着物を着た女性だ。雪の中立つその姿は、ある妖怪を思わせる。 「Eフォース『雪女』……昔々に雪山で遭難した乙女の霊だとか、山に生贄にささげられた恨みだとかあるが、まぁ曰くはどうでもいい。この雪はこのEフォースが起こしている。 正確には寒気を増幅して水蒸気を発生させている程度なのだが、このタイミングでこの山でこの寒冷風が吹くときにやられたので豪雪になるとか」 詳しいことはよくわからん、と説明を放棄するフォーチュナ。気象学的なことはともかく、このEフォースがそこに発生したのがこの豪雪の原因のようだ。ゼロから天候を操作しているのではなく、天候悪化の引き金となっているといところか。 「つまり夜になる前にこのエリューションを倒せば……?」 「イエス。この吹雪は起きない。多少キツイ雪風になるが、ミスタ江藤が車が出せないほどじゃない。レディも早期に病院で治療できるって寸法だ」 吹雪さえ止めれば、そこから先は神秘に関わらない事件だ。関わる必要はない。 「今から出れば早朝に麓につける。そこから現場に向かえば雪が本降りになる前に下山できる。しっかり決めてきてくれよ、お前たち」 伸暁の気楽な声に送り出され、リベリスタたちはブリーフィングルームを出た。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月01日(土)22:21 |
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■メイン参加者 5人■ | |||||
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● 早朝、朝日が差し込む山道を五人の革醒者が歩いていた。冷たい空気が体を震わせる。足元は昨晩から積もった雪がまだ残っていた。 「日本って思ったより過酷ねー」 防寒用にコートを着込んだ『大樹の枝葉』ティオ・アンス(BNE004725)が体を震わせながら歩を進める。ティオの故郷ではここまでの雪を経験したことがないのだろうか。冷たい空気に興味津々と言う顔をしていた。 「でもこのコート本当にあったかいわ」 「しっかり準備して寒さ退散して頑張りましょー、えいえいおーっ」 同じくコート着て安全靴を履いたシーヴ・ビルト(BNE004713)が元気よく手を上げた。ラ・ル・カーナに雪は降らないが、ボトム・チャンネルの教育の一環で雪自体は知っている。冷たく白く美しい雪。これもまた自然の脅威となることも。 「わー、雪綺麗っ。でもさむいっ」 「山の中腹にある祠か。地元に信仰でもあるのかもしれねぇな」 コートとゴーグルで雪対策を施した夜兎守 太亮(BNE004631)がうんうんと頷きながら山道を歩く。舗装されているとはいえ、山道はデコボコした箇所がある。それを前もって見つけ、仲間にそれを伝えながら山道を進む。 「おっと、そこ危ないぜ」 「ありがとう。助かりますわ~」 若干間延びしたような口調で『致死性シンデレラ』更科・鎖々女(BNE004865)が頭を下げる。防寒具が動きを妨げるなら戦闘中は脱ごうかと考えていたが、何とかなりそうだ。ふと標的のエリューションのことを思う。 「どんな存在理由で雪女さんは現れたんでしょうか?」 「そうだね。それは僕も気になるよ」 字代 菊理(BNE004445)が鎖々女の言葉に頷きを返す。急ぎの任務だった為、悠長に調べる余裕はなかったのが悔やまれる。何はともあれ人命救助が最優先だ。山の祠にいる雪女を倒すこと。これを為さないと、町は雪で閉じ込められて病人搬送が滞る。 「さてそろそろ着きそうだけど……どうするかな?」 中腹にある祠が見えてくる。そこには三匹の猿型Eビーストと、白い肌を持つ白無垢の着物を着た女性。あの幽霊(Eフォース)が雪女だろう。こちらに気づいている様子はない。上手く隠れて動けば初撃は奪えそうだ。 「……前準備だな。俺は闇を解放しておくぜ」 太亮は瞑目し、自らの心の中にある闇に接触する。獣の心臓が脈打ち、闘争本能が湧き上がる。体の反射神経を増し、闇の力が体を癒していく。唇が笑みの形に曲がり、扇を持つ手に力が篭る。 「では私も」 菊理も呼吸を整え、背筋を伸ばす。体内を循環するマナと呼ばれるエネルギーを、一定の間隔で回転させるように意識する。体内にもう一つの世界を作るように。そんな意識を持ってマナを回す。開戦するマナが、菊理の魔力を増していく。 「日本の妖怪かー」 ティオは雪女たちを見ながら意識を集中する。ティオもあのエリューションが生まれた曰くに、興味はある。伝承なのか、怨念なのか、それともただの偶然か。だけどそこに何かがあるのなら、それを知りたい。 「んー。ああ行ってこう行って……」 シーヴは二丁の拳銃を手にしながら、頭の中で自分達と相手の動きをイメージしていた。もちろん想像通りに相手が動かないこともあるが、そこは臨機応変だ。何とかなる、と楽観的にシーヴは頷く。 「あはぁ、大きなお猿さんですね~。逞しくて素敵。こんなの三体も従えてるなんてハーレムうらやまです」 野性味あふれた存在に囲まれた雪女を見ながら、鎖々女が呟く。鎖々女の発想は、自分が誰かに愛されたいと思うが故の発言。あの雪女も愛されているのだと思うことで、世界は愛に満ちているのだと思える。 付与や集中に時間をかければ、エリューションたちもこちらに気づく。敵意と共に叩きつけられた冷気が、リベリスタの頬をなでる。 寒空の祠の前で、リベリスタと雪の怪物たちとの戦いの火蓋がきって落とされた。 ● かつて、この地には山のヌシと呼ばれる妖怪がいた。 それは現代の知識に当てはめれば異世界からDホールを通ってきたアザーバイドなのだが、当時の人々がそれを知るはずもない。麓の村は荒れ、人々は暴威に慄いたという。その恐怖から逃れる為に供物を捧げ、生贄をささげたという。雪のように白い肌を持つ女性。 やがて噂を聞きつけてやってきた革醒者が妖を葬り、Dホールを封じる。生贄の少女は既に事切れていた。地元の人たちは鎮魂の為に、彼女を村を救った者として祠を建てたという。 それから長く時が過ぎ去り、その伝承は忘れられていた。 ● 「うーん、この雪女が生まれた曰くの方にも興味はあるのだけれど……」 ティオは雪女を見ながらそんなことを口にする。エリューションが生まれる条件は様々だ。発生に意味があるときもあれば、ないときもある。だがティオは何かがあるように思えた。それは自然と親しい民族である彼女の感性がそう感じさせるのか。 「この状況じゃ仕方がないわね。リベリスタとしての仕事を始めようかしら」 魔力を手のひらに集め、稲妻を生む。発生した稲光はティオの手の中で踊り、蛇のようにうねる。手のひらを天に掲げ、稲妻を解放する。展開される雷の網が、EビーストとEフォースを捕らえる。魔力によって生み出された電圧が体力を奪っていく。よく狙った一撃はエリューションの体力を奪い、稲妻が絡まるように帯電した。 「おねーさんっ、あっそびましょーっ」 シーヴが両手に拳銃を持って、戦場を駆ける。硬い安全靴が雪を踏み抜き、足を滑らせることなくEビーストに接近する。シーヴが闘気を高めていく。子供っぽい口調と性格だが、戦士としての経験はけして浅くはない。それはその瞳と放たれる気迫から推測できる。 「ふふふ。一気に巻き込んで、どっかーんっ!」 闘気が渦を巻き、旋風を生む。その旋風と一緒に、シーヴは回る。それはあたかも風と踊るように。回転しながら二丁拳銃を構え、そのトリガーを引いた。風は弾丸に纏わり、疾風となってEビーストを吹き飛ばす。そのまま地面を転がるEビースト。回転を終えたシーヴは、いつもと変わらぬ笑みを浮かべていた。 「さて、コントロールにはあまり自信が無いのだけれどね」 仲間のダメージの浅い今なら、回復に専念しようとしていた菊理でも攻撃ができる。いや、今を逃せば攻撃する機会はない。『ミスティコア』と呼ばれる金属塊を手にし、意識を集中する。体内の魔力を鋭く研ぎ澄ましていく。 「挨拶代わりと思ってくれ」 金属塊に魔力が集う。自然にたゆたっているマナと呼ばれるエネルギーが集い、一本の矢を生み出す。撃ち出す弓は菊理の魔力自身。強く引き絞り、最速で相手にぶつけるように意識する。魔術とは想像力だ、イメージのままに矢は飛び、Eビーストの腹部に突き刺さる。Eビーストの痛そうな声が、戦場に響いた。 「世界の為なら例え火の中雪山の中~。というわけで行きましょうか~」 鎖々女がダガーを手にEビーストのほうに迫る。紫の瞳で相手を睨む。視線に混じった魔力がEビーストの視線と絡まる。どこにでもいそうな少女の視線。しかしその視線には鎖々女の心の内が篭められていた。 「ん~。やっぱり仲間を巻き込むように氷柱を放ったりしないみたいですね~」 鎖々女の狙い通り、EフォースはEビーストを巻き込むように範囲攻撃をしてはこない。それが如何なる理由なのかは分からないが、鎖々女はそれを『愛』だと篭った。彼らもこの雪女に必要とされているのだ、と。 「一気に削る! ……と言いたい所だが、取り巻きでけぇな」 太亮はEビーストの大きさに悩みながら、扇を振るう。敵の居場所は概ね把握してる。若干視界が遮られた程度では問題ない。闇のオーラが体を苛む。激痛に眉をひそめながら、扇の上に漆黒の刃を生み出す。 「吹雪く前にカタをつけさせてもらうぜ!」 裂帛と共に闇の刃が放たれる。円弧を描きながら三体のEビーストを傷つけた。闇は呪いとなって纏わりつき、ツキと呼ばれる不可視の因子に作用する。傷も深く、太亮を一番油断ならないと認識されたようだ。 「現れたまえ、助けたまえ。流るる水と豊かな緑の神々よ」 「次はこっちですね」 菊理の神秘を含んだ祝詞がリベリスタたちの傷を癒し、ティオの魔力がEビーストの足を止める。 「うふふ。一匹撃破~」 「次はあいつねっ。がんばるぞーっ!」 「悪いな。この地で生きてる奴らが苦しめられるのをほっとく事はできねぇ」 鎖々女、シーヴ、太亮の集中攻撃が功をなし、Eビーストが一体、また一体と倒れていく。 そして最後のEビーストが倒れ、雪女のEフォースのみとなる。それでも彼女の戦意は尽きない。 リベリスタもここで手を抜くつもりはない。ここで引けば、不幸な事故が一つ発生してしまうからだ。 ● 生贄になること事態は怖かったが、拒否はしなかった。これで村が守られるのなら、それでよかった。戦えば村は滅びる。それは一度抵抗して身に染みてわかっている。だから仕方ないのだ。 皆が泣いていた。ごめんね、ごめんね。そう言っていた。父と母は最期まで拳を握っていた。助かった人たちは、安堵と共に私を『売る』罪悪感で苦しんでいた。 皆を守れるのなら、それでよかった。 だけどこの献身は、自己満足だったのだろうか? 皆に余計な負担を与えたのだろうか? 例え力は弱くとも、私は最後まで抵抗すべきだったのだろうか? そんな力の渇望。 それは崩界度の進行により、時を経て顕現する。 ● 「雪女さん。貴女がその在り方を受容れる理由は何です?」 鎖々女は雪女の首筋に噛み付き、その耳元で問いかける。エリューション。世界の敵。成っててしまったから、という理由なら用はないと冷たく視線を向ける。 「力が、欲しかったから」 「力?」 「どうしようもない暴力に対抗するだけの、力。それがあれば、皆が笑ってられたから」 吹き荒れる吹雪が鎖々女の足を止める。その冷気に震えながら、言葉を続ける。 「力がなくて愛する人を泣かせたんですか~? それは悲しいですよね~」 皆に愛されたが故の涙。愛されたい、という渇望を持つ鎖々女はその悲しみを知ってどう思っただろうか。 「君が憂いているのは、生贄にされて殺されたことではないのだね」 菊理が祝詞を唱えながら、問いかける。雪女の素性は彼女の口から知れた。過去に起きた悲劇。もはや覆らない出来事。 「死ぬのは、怖くなかった」 「だけど、後悔はある。その思いがエリューションとして君をこの祠に顕現させた。そういうことだね」 菊理の言葉に雪女は頷く。アザーバイドに殺され、儚く消えてしまった命。そしてその命が抱いていた悲しみ。それは死によって消えてしまうものかもしれない。 だけどそれは時を経て、蘇った。思いは消えず、残り続けた。 「残念だけど、そのことで僕達にできることは何一つない」 菊理は静かに結論付ける。もはやそのアザーバイドは滅び、彼女の死は覆らない。何一つできることは、ない。 雪女もそれは分かっているのだろう。憂いを含んだ表情で首を縦に振る。 「それでも、僕は興味があるんだ。君たちエリューションが何を思い存在して、何を思い消されて行くのか」 雪女の抱いた思いは、彼女の死により消える。エリューションと成って蘇っても、世界の敵として討伐されるものだ。 だけど今、消え行く思いを知るものがいた。興味を持ち、探索するものがいた。 ただ儚く消える思いからすれば、それは救いなのかもしれない。 「そうね。もう悲しむ必要はないわ」 ティオは体内のマナを活性化させ、雪女を見る。戦闘中なのに、その心は非常に穏やかなものだ。自分自身の心臓の音が心地よく響く。そのリズムに合わせてティオは魔力を増幅させていく。 それは魔力を攻撃的に扱うことに長けた、マグメイガスのみが使える魔術。異なる四つの魔力を一つに束ねる魔弾。四種類の魔はそれぞれ異なる力で突き進む為、それを束ねることは容易ではない。だけど、 「私が赦してあげる」 優しい口調でティオが告げる。この静かな心こそが、魔力を束ねる事のできた大きな要因。四種の魔弾が雪女に向けて解き放たれる。四の矢は互いにぶつかり合い、そして螺旋状に束なり一矢となってエリューションを貫いた。 「雪合戦は楽しいけどっ、ちょっときついかもっ」 雪女の攻撃を受けながらシーヴが走る。雪女が纏う冷たい風。それがさらに仲間を傷つけている。まずはあれを除去しなければならない。二丁の拳銃を手にし、雪を蹴る。迫る吹雪を横に跳んでかわし、そのまま懐に飛び込んだ。 風がシーヴの体を包む。雪女の纏う冷たい風ではなく、この山にある本来の空気。エリューションが生んだ不自然ではない風を受けて、シーヴの長髪がふわりと舞った。頬をなでる風に優しく微笑むシーヴ。 「張り付いて逃さないっ。一気に決めますよっ」 シーヴはいきなりしゃがみこんで、足を払う。突然の足払いによろめく雪女。倒すには至らないが、一瞬崩れたバランスを逃すことなくシーヴが二つの銃口を雪女に向ける。ここが好機とばかりに連続で引き金を引いた。交互に、同時に、同じ場所に、違う場所に。弾丸が纏った風が、エリューションが纏う雪風を吹き飛ばす。 「別に雪が嫌いで倒しに来たって訳じゃねぇんだけどな」 太亮が闇の刃を形成しながら呟く。冷気は植物を傷つけることもあるが、それも自然の営みだ。雪はその重量で森林を押しつぶすこともあるが、冬の寒さから植物を守ってくれる。はらはらと降る雪の美しさに、魅了された事だってある。 「けどお前らは本来在る筈の無いものなんだ。その為にこの地で生きてる奴らが苦しめられるのをほっとく事はできねぇ」 雪女の経緯は理解できた。だけどその存在は許してはいけないものだ。この地を守るために生贄になった彼女が、この地に住むものを傷つけるようになるとはなんと言う皮肉か。その在り様は、正さなければならない。 練り上げた闇が太亮を傷つける。その痛みに耐えながら、太亮は刃を放った。漆黒が白の大地を走り、雪女の胸に突き刺さる。あ、という表情をして雪女が脱力した。 「悪いが消えてくれ。また静かに山を見守っててくれよ」 まるで雪が溶けるように、雪女は世界に溶けていった。 ● 「うふふ。貴方の想い、いただきましたわ~」 鎖々女が口元をなぞりながら、雪女がいた場所を見る。愛するものを守りたいが故に生贄になった魂の果て。その血は自分の中で生き続けるのだ。心臓に手をやり、血液の流れを確認する。とくんとくんと、心地よいリズム。 「さて僕達の任務はこれで終わったわけだが」 菊理が戦闘でずれたメガネの位置を直しながら、仲間に告げる。アークからの依頼は『雪女の打破』だ。迎えの車も待たせてある。早急に三高平に帰ってもいいだろう。 「皆は先に帰ってくれ。僕は一般人の無事を確認したいと思う」 『万華鏡』が予知した江藤夫婦。菊理はこれを見届けたかった。神秘事件とは関係ないが、その無事を確認して初めて終わりだろう。 「私も見に行きまーすっ。影からこっそりとっ」 元気よくシーヴが手を上げる。彼女も夫婦の無事は気になっていたようだ。予定時間まではまだあるが、それまでは雪で遊んでいるつもりだった。 「そうね。待っている間、祠の曰くでも調べておこうかしら」 ティオも同意し、靴についていた雪を払いながら下山の準備を始める。優先順位はエリューション退治だが、それが終わって時間があるならそちらを調べるのもいいだろう。案外調査は楽そうだ。何せ『本人』の言葉があったのだから。 「乱暴して悪かったな」 太亮が持っていた饅頭を祠に捧げる。倒すしか選択肢がなかったとはいえ、乱暴を働いたのは事実だ。それを謝罪し、敬意を示す。それが自然に生きる獣人の礼節だ。 そして五人のリベリスタは山を下りる。 祠に温かな風が、吹き抜けていった。 江藤夫婦を乗せた車が、無事村を出る。雪による交通の影響はないと、交通情報も告げていた。 遠く離れていく、江藤夫婦を乗せた車のテイルランプ。 それを見ながら、リベリスタを乗せた車も村を出た。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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