●ミッドみどり アマゾン熱帯雨林。南アメリカ・アマゾン川流域に大きく広がる、世界最大面積を誇る熱帯雨林である。 傭兵としてやってきたアークリベリスタはその真っ只中に居た。詳細に言うならば、ジャングルの奥深くに拓かれた――といってもほぼ自然と同一化していると言って差し支えないが――小さな集落の中。現代から隔絶された古めかしい部族の村。 そこは代々森の平和を護ってきた革醒者部族『緑の民』の集落だ。彼等は若者が町に出てしまったり高齢化が進んだりとかなり勢力は小さくなっており、そして前回の依頼でアークリベリスタが見事にそれをこなした事も相俟って、緑の民はアークの来訪をとても快く思っているようだ。 「きたよー! ハコの人達きたー!」 案内役に連れられてやって来れば見張りの者が嬉しそうに声を張り上げる。そんなリベリスタを迎えたのは、呪術的装飾を身に纏ったシャーマンにして緑の民の族長、フォーチュナのルピタロッタだった。 「おぉ、おぉ……良く来てくれた、箱なる舟の民。嬉しく思う。感謝する」 謎の生物の頭骨を被っており顔は見えないが、朗らかに笑っているようだ。 さて、挨拶もそこそこに。ルピタロッタは本題を口にする。 「箱なる民。頼みがある。我々困ってる。大きな『絶望』が森にいる。動物暴れる。絶望の所為だ。我々立ち向かった。だが、戦士、返り討ちに遭った。絶望、目で見えない。戦士、見えないと戦えない。とても厄介。助けて欲しい。絶望倒して欲しい」 ルピタロッタは手にした呪杖で地面に絵を描く。それは6本のケダモノの脚に蟻の様な頭部をした不気味な異形だった。 「絶望、水の様に透明。幻を殺す目、深淵を見る目、優れた狩人の鼻と耳、心を感じる魂、様々な力で見える出来る。ジャガーの様に素早いぞ。隠れる上手い。気をつけろ。潜んでいる。 絶望、愚かな密猟者の成れの果て二つと、絶望に墜ちた動物を二つ連れてる。密猟者は武器あるぞ。鉄砲だ。動物は、一つはトゲトゲしていてとても堅い。丸くなっている時はまるで攻撃が利かないぞ。もう一つは箱なる民のマネをする。飛んでいる。気を付けろ、気を付けろ」 敵情報を話し終えたルピタロッタに、リベリスタは問いかけてみる。確か10月辺りにもアマゾン熱帯雨林に似たようなEフォース――周囲の非エリューション生物を凶暴にする異形だ――が出現した筈だ、と。 ああ、とルピタロッタは首を振る。あれから、時折だが似たようなEフォースが絶える事は無く出没している事を彼は告げた。だが森は広く、緑の民は少ない。調査も進めているが、未だ詳細は分かっていないとの事だ。 一先ず今回は敵性エリューションの討伐である。調査の方は緑の民も励むとの事なので、今は目の前の任務に全力で打ち込むとしよう。 「それでは任せたぞ、箱なる民よ。大いなる森の加護があらん事を」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月28日(火)22:46 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 6人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●てれててーん 深い深い、深い深い森の中。そこは既に人間の領域などではないのだと、木々のざわめきの中で思う。 「ガラムマサラ」 挨拶の魔法。魔法の言葉で楽しい仲間がぽぽぽぽぽ。大きなカレー皿に盛った制圧型防弾カレールーをもぐもぐしながら、『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)がご挨拶。ナマステない。インド臭をぷんぷん撒き散らしながらカレーを咀嚼し「ガンダーラの方から来ました」と言ったら緑の民はマジで信じた。因みに他のリベリスタがちゃんと訂正しておきました。 しかしカレー臭い。アマゾン熱帯雨林の中に居るのにこれは如何にとツァイン・ウォーレス(BNE001520)何とも言えない顔をする。猟犬の如きその嗅覚はカレー臭に包まれながらもしかし、鈍る事はなく周囲を警戒する。 「それにしても蒸す……いや脱がねぇぞ、これは意地だっ」 がっちゃがっちゃ。厚い鎧がとても熱い。BS汗疹に要注意。 そう、移動だけでグッタリだなんて言えない。もごご、と五十川 夜桜(BNE004729)は出かかった言葉を飲み込んだ。あまぞんまで来ちゃった。虫が一杯いそうでちょっとイヤかも。一応虫除けスプレーを沢山振ってきたつもりだけども、うぅ。 「でも困っているみたいだし助けなくっちゃ!」 正義感の強い夜桜は気を入れ替えて前を向く。しかし緑の民のフォーチュナ、ルピタロッタが被っていたのは何なんだろう? なんて、集中した次の拍子に雑念が沸いちゃう辺り年齢相応なのである。 「傭兵隊というより探検隊の気分だ。アマゾンに赴く機会があるとは思わなかったな」 『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)と夜桜の性根は似ている。即ち、正義を尊び悪を赦さぬ。困っている人が居るのなら見過ごせない。尤も、密猟者に関しては自業自得だけれども。 「しっかし、こう木にばっか囲まれてると雑然とした日本の街並みが恋しくなるねぇ……不思議」 適当な軽口を叩きつつも『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は熱を感じる力を発動しながら周囲を警戒する。事前に緑の民に聴いた事によれば、エリューション達が出たのはこの辺りだ。 斯くして、『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)の全てを見通すマシンアイがEビーストとノーフェイスを捕捉したのと、喜平の熱感知が不穏な熱源を察知したのと、ツァインが妙なケダモノ臭さとノーフェイスが持つ銃の火薬の臭いを嗅ぎ取ったのは同時だった。 「見えました。2時の方向。Eビーストとノーフェイスが2つずつ」 「デカイ熱源があるが……アレが絶望の影っぽいな」 「ああ、5つ分の変な臭いがしやがる。さ~て、おいでなすったぜぇ~」 各々が構える戦闘態勢。 それと同時に。5つの不気味な気配が葉擦れの音を立てながら早急に接近してきた――! ●視覚的ボッシュート ガサガサ、ガサガサガサガサ。 見えない何かが這い寄って来たのは、何となくわかった。その影を熱と臭いで捉えられたのは喜平とツァインのみ。 「くるぞ!」 その声の直後。絶望の影の鋭利な爪付きの多腕が、小梢と疾風に襲い掛かった。 「!?」 見えない故に上手く防御体制が取れない。二人の身体から、ぶばっと鮮血が迸った。蒼い森の中に血の鉄臭さが広がる。 暗所に対応する装備で絶望の影の姿を捉える事は出来なさそうだ。不可視のそれは確かに手痛い一撃だった。が、たった一撃で沈むほどリベリスタは柔じゃない。踏み止まった疾風は右の拳を胸の前に構えた。 「見えないのは厄介だが――絶望は終わらせる! 変身!」 アークフォン3Rが輝いた。光と共に纏う、正義の武装。脚に渾身の気力を込めて大きく前に踏み出した。同様に喜平、ツァイン、夜桜もエンチャントによって自己強化しながらエリューション達を迎え撃つ。 トゲだらけのアルマジロが転がりながら襲い掛かり、密猟者だった者が持つショットガンが火を吹いた。同刻に、キーッとオウムがけたたましく鳴き叫ぶ。 「はい、赤信号」 すぐさまそれにねらいを定めたのはあばただ。マクスウェル、シュレーディンガー、バケモノを殺す為のバケモノ銃。引き金を引けば絡め捕る糸の弾丸がオウムに直撃した。クリーンヒットだ。が…… 「……げぇ」 ツァインの聖骸闘衣を模倣したのだ。状態異常を、受け付けない。あばたは舌打ちと共に表記出来ないほどの汚い悪態を吐いた。 「止めれないなら――思いっきりぶっ飛ばすだけだよっ!」 真っ直ぐ往ってぶっ飛ばす。シンプルにして最強の戦法。裂帛の気合を腹の底から張り上げて、剣を構える夜桜がオウムへと間合いを詰めた。有りっ丈の力を込めて、一閃。 「こっちは任せて! 絶望の影の方、お願いっ」 「はいよ承り」 再度剣を構えながらの夜桜の声に喜平が応える。見えないが熱で感じる、絶望の影。 「喰らえメイドインジャパン!」 投げ付けるカラーボール。腕にほんの掠めただけだが、それは確かに――絶望の影の透明な身体に、色を着ける。じわじわと薄くなっているので着色が効果を発揮するのは時限式のようだが、しめたものだ。 「ナイス! よっしゃ往くぜぇ~っ!」 ツァインはオウムへと踏み込んだ。よくも俺の技をパクリやがって。剣に込めるは一点の悪も赦さぬ裁きの光。白銀の剣閃。それはオウムを大きく切り裂くと共に、それが纏った効果すらも打ち破る。 すかさずあばたの網弾が発射された。今度こそ、オウムの身体の自由を封じる。そして動けぬそれに振り抜かれたのは、流星を思わせる軌跡を描いた疾風のアームブレード。隙無き零の武舞。一刀両断。 「作戦通り、次はノーフェイスを仕留めるぞ!」 「らじゃーとりあえず目に見えるやつからどうにかするんですね。まぁ私は壁してますが~」 応える小梢がもう空になったカレー皿を構える。そこに降り頻る密猟者達の散弾雨。 「不滅のちから~みせるーときー絶望なんかへっちゃらさーインドぱわーいまここに光臨!」 聖骸闘衣<カレーのオーラ>。弱体化だって怖くない。もう何も怖くない。 「銃撃戦か。受けて立つぜ」 「右に同じ」 銃を構えるノーフェイス二人に、受けて立つのは銃を構えるリベリスタ二人。喜平の打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」、あばたの双銃。火線が迸る。銃火が吼える。火薬の臭い。硝煙が渦巻く。 チュイン、と疾風の耳元に弾丸が掠めた。交差する弾丸の渦の中を彼は駆ける。正義のマフラーが戦場に靡く。 「はぁッ!」 昂ぶるエナジー、纏う稲妻、SVアームブレードが光り輝き火花を散らす。壱なる迅き雷光。一閃、二閃、容赦せずノーフェイス達を纏めて切り裂く。深く切り裂く。 喜平とあばたの猛射撃を食らっていた密猟者達にとってそれは致命的な一撃となる。蹌踉めき、ふらつくそれがもう一押しで倒れるだろう事は明白だった。それほどまでにリベリスタの攻撃は、苛烈にして熾烈。 だがやられてばかりの異形達ではない――何度目か、ノーフェイスのショットガンが広範囲に火を噴いた。 それに素早く反応して動いたのは夜桜。あばたを護る様にその身体で斜線を塞ぎながら、防御の為に剣を構え、振るう。 「いててててっ……ふぅ、剣で弾をはじけたらかっこよかったんだけどね」 面で襲い掛かる散弾の全てを防ぐ事は流石に厳しかったが、それでも幾つかを剣で防げたのもまた事実。 「さって、と。あたしに出来るのは身体を張ること、ならがんばるしかないよね!」 攻勢に出る。間合いを詰める。構える剣に、荒れ狂う闘気を有りっ丈。剣戟、というよりは砲撃に近い一撃。重く強いその攻撃にノーフェイスの一人が勢い良く吹き飛ばされた。そのまま立派な巨木にぶち当たり、バラバラと砕けながら散らばり落ちて沈黙する。 だがその同刻にリベリスタの苦痛の声が響いた。小梢が全身から血を流しながら片膝を突いている。絶望の影だ。不可視の避け辛い攻撃が彼女の堅牢な防御の合間を縫う様に的確な一撃を加えてくる。カラーボールの着色はその神秘の力場によって、一時的には着くも徐々に掠れてやがては見えなくなってしまう。 血反吐を吐き、運命を燃やしながら。小梢は持ってきたカレーで絶望の影に着色してやろうかと思っていた。だが「食べ物を粗末にしちゃダメ」と言われたし、そもそも勿体ないし、そんなカレーがあったら私が食べたい。 傷を負っているのは彼女だけではない。大小あれど、完全無傷の者は居ない。 だが、まだ倒れる時ではないと奮い立たせる声無き声がそこに在る。ツァインが英霊達に呼びかければ、その誇りと力がリベリスタに降り注ぐ。聖骸凱歌。不屈にして不滅の力をここに。 「まだいけるよな? ガンガン往こうぜ、皆!」 張り上げるその声に応える様に、喜平が構える『散弾銃の様なもの』が火を噴いた。打ち据え、撃ち当て、討ち破り、全ての果てに墓標となるモノ。重く剛くありふれた、それは正しく、『武器』。速射の弾丸に上半身を吹っ飛ばされたノーフェイスが、跪く様に頽れる。 その弾丸はノーフェイスだけではなく、アルマジロにも襲い掛かった。だがぐるっと丸くなったそれは弾丸を弾き飛ばし、周りのリベリスタに兆弾させる。堅牢な防御姿勢。 「うわ、面倒臭いな……」 「俺に任せろ!」 顔を顰めた喜平の代わりに、アルマジロへ間合いを詰めたのはツァインだった。光り輝く法の剣を、振り上げる。 「そうやってじっとしてたら、躱せるもんも躱せねぇだろ! 喰らえッ」 一閃、振りぬく。その刃は強化をも砕き去る。衝撃に薙がれたアルマジロの防御姿勢が強制的に解除された。 そしてポーンと吹っ飛ばされた異形を正確無比に撃ち抜いたのはあばたの弾丸だ。盲点のない機械の目玉は一切の標的を、有象無象のターゲットを、ピコ単位で逃さない。放たれた弾丸はまるで誘導弾の如く正確にそして執拗にアルマジロの弱そうな所――即ち腹部や装甲の隙間を、狙い撃つ。何度でも。 ひっくり返ったアルマジロを取り囲むのは他のリベリスタ達だった。雪崩る様な超弩級の攻撃の雨に、成す術も無く撃破される。 戦況はリベリスタの圧倒的優勢――誰かが想定外にぶち当たっても、誰かが機転を利かせてそれを突破する。被害も少ない。残るは絶望の影のみ。この調子でいけば。 だがその時だった。絶望の影の装甲の合間を突く様な攻撃に、遂に小梢が倒れてしまう。カラーボールの効果が切れた不可視のそれは、視界を不明瞭にするスモッグを発しながらリベリスタを撹乱する様にその周囲を動き回った。 ガサガサ、ガサガサガサ。危機感を煽る葉擦れの音。胡乱な気配。 「そこかっ! どこだっ! こっちか!」 千里を果てなく見渡せど、見えなければどうしようもない。故にあばたは完全なる直感で撃ちまくる。下手な鉄砲百撃ちゃ当たる。どうせ見えないなら当たれば儲けものでぶっ放す。ガサガサばんガサばんばんばんガサガサガサばァん。銃声を最後にシンと静まり返る。硝煙。 「やったか!?」 あ、自分でも若干フラグ臭いな、とは思った。刹那。喜平が「後ろだ!」と叫んだ声、あばたの背中を大きく切り裂く見えない爪。飛び散る鮮血。 「うぐっ!?」 ズキンと走る激痛に、運命の燃えた嫌な感覚。自分がバケモノ<人類の敵>なんだと辟易するほど再認識する。 「いっ……たいじゃないですか、このスケスケ野郎!」 顔を顰めながら機械の手を伸ばす。掴んだ。見えないけれど、おそらく爪の先辺り。逃すものかと更にもう一本の手で力一杯掴んだ。 透明な獣――どうしたらいいんだろう、と夜桜は思っていた。 「見えない獣とか厄介だよねー、どこから来るのかわからないとかこわっ! でも――」 あばたが掴んでいるのであれば、『そこ』に居るのだろう。見えなくとも、居るのが分かれば……斬れる。 「そこだ!」 切り裂く。殴り付ける様に叩き付ける。手応えがあった。それと同時に熱感知で絶望の影を捉えた喜平がカラーボールを再びエリューションにぶちまける。これでまたしばらくは完全不可視状態ではなくなった。 しかし、と喜平は思う。前にアマゾンに訪れた時と傾向が似ているエリューション。何か、裏が無ければ良いのだが。 (……まぁ考えても仕方ないか) それよりも折角頼りにされて呼ばれたんだし、 「期待には応えてあげないとな。俺としても応えてあげたいし」 自分だって人間だ、常識的で良識ある人間だ。好意には好意を。やられたらやり返す、おもてなしだ。それがクールジャパン。 「うぜぇ~! 富永さん、烈風陣でなんとかなんねぇかッ?」 そんな彼にツァインが声をかける。周囲のスモッグに咳き込み、盾で何とか吹き払えないか悪戦苦闘しながら。「ゴメン今日は品切れなのよね」と喜平は肩を竦める。その代わり、アルティメットキャノンを絶望の影へ。 やるっきゃないか。ツァインは剣を握り直し、嗅覚便りにあばたを振り払った絶望の影へと向いた。 (周囲の生物を凶暴化させる……ねぇ) ツァインの脳裏に過ぎるのは、悪夢めいた赤い翼。不和の悪魔。地獄の大公爵。知っている。『そういうの』が反吐が出るほど得意な奴を。 (まさか、ねぇ……) アレが勝手に動くとは思えない。のに、自分は気になってアマゾンにまで来てしまった。不安は拭えない。あの忌々しい羽音が、耳障りな哄笑と共に今にも聞こえてきそうで。 どっちにしても、だ。ソレが関与していなくとも、放っておける事案ではない。 「――じゃ、気合入れて片付けるとしますかい!」 踏み込み行く仲間達の背を、魔を砕く光を以て強く押し出した。 駆けるリベリスタ。その中には、疾風も居る。カラーボールを着けたとは言え、絶望の影の姿がまるっとお見通しと言う事は無い。網を投げるもそれは易々と引き千切られるか躱される。となれば当然、捕捉出来ない者はその命中精度が落ちてしまう。決定打を与えにくい。 であるからこそ、疾風は黙々と集中を重ねていたのだ。確実に、早急に、終わらせる為に。 「この一撃に全力を懸ける――正義の刃を、受けてみろ!!」 零式羅刹。羅刹の如き闘気を纏う刃で気弾で、叩き込むのは圧倒的な無双連打。叩き潰す。磨り潰す。捻り潰して乱れ斬る。 それは強烈に絶望の影を捉え、大きな大きな被害を与えた。飛び退いたらしいエリューションが多数の腕を素早く振るう。肌を裂かれたリベリスタ達の鮮血が舞い散った。だが、その攻撃に倒れた者は居ない。 へへ、と先の一撃を盾で見事に受け流したツァインは不敵に笑った。臭いと、目印。それを頼りに踏み込んで。 「つ~っかまえっ……たーっとぉぉー!」 振りぬく一撃、聖なる攻撃。 絶望の影が蹌踉めいた。直後、鋭く地を蹴った疾風が飛び掛る。逃がすまいと絶望の影に組み付いた。当然ながら異形は暴れる。ならばとあばたが再度、動き回って手当たり次第に振り回されている腕に――己の肌を浅く裂いたそれに、手を伸ばし。引っ掴む。抑えこむ。 今だ。 そのときにはもう、夜桜が助走を付けて飛び出していた。跳躍。重力と速度と力と力と力と力を全て込めて。 「これで……終わりだぁーーーーっ!!」 斬。気合一閃。夜桜の剣が、抑えられ動けぬ絶望の影を一刀両断、斬り捨てる。 そして静寂が、平和と共に訪れた。 ●あまぞんぞん 森を傷つけない事もキチンと考えていたリベリスタ達のお陰で、森が大きく傷つく事もなかった。 が、あばたは出来る限り修復や掃除を行っている。直感撃ちをした自分による『被害』も大きいだろうし、そしてなによりも。 「『綺麗に片づける』のは、掃除屋たるわたしの生業ですから」 ですからアークの方、ボーナスください。そうもちかけた彼女が日本に戻ってからメルクリィに「頑張りましたね~」と飴玉を貰ったのはまた別のお話。 一方でツァインは時間の許す限り、森の散策を行っていた。もう胡乱な気配はしない、けれども。 (鳥野郎の臭いなんてする訳ねぇ……よなぁ……?) 地獄の悪魔は暇潰しに己の行動を見ているかもしれない。そんな一抹の、不安。 さて緑の民の集落に戻れば、彼等は任務達成と無事の帰還を大いに喜んでくれた。 そんな彼等に、喜平は和菓子を渡して「今後とも御贔屓に」と握手を交わす。営業努力は大切だ。が、そういったビジネスな考えの全く無い緑の民は大喜びで「お礼に」と彼やアークリベリスタ達に森で採れた果物やら木の実やらを沢山お土産に持たせてくれたとさ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|