● 口に含んだ空気が漏れて、笑いと成る。 何日何時間と費やした結果が今、形と成って生まれたのだ。其れが達成感と嬉しさに成らないはずが無い。 産み落としたのは紛れも無く、此の元六道研究員『陸奥御 楼』だ。 もはや静岡に巣食う箱舟という名の獣の、忍び寄る影に脅えなくても良いのだ。 嗚呼。あの忌々しいリベリスタ共に何人の同胞が倒されたり、捕縛されたりしてきたのを影から見て来た事か。そう、影から、影からびくびくと。 「見ていろ、箱舟。お前等全員動物にしてやるからなァ……!!」 機械が開き、怪しい煙の中から一つの歪な銃が現れた――名を、『アンチサピエンス』。 此の世で唯一、楼が箱舟に対抗できる揺ぎ無い力其の物であるのだ!! ――……完成しているのかは、別として。 ● 「戦っても無いのに、逆恨みしている馬鹿を倒しに行くのよね」 『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)は護送車の中のリベリスタ達へと言った。 「なのにこんなに戦力揃える必要、あるのかしら?」 「……如何やら、若干だけれども危険なアーティファクトみたいよ」 『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)は静かに彼女の質問に答えてみたものの、マリアは首を斜めにしてワカラナイと示していた。 「動物になるアーティファクトだとかで……未完成だからそれ程怖くはないらしいぜ!」 続けて、『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)はマリアの頭を撫でながら言った。ふと、此処で木蓮が全員に質問を投げる。 「な! 動物になるなら、何が良いんだ? 俺は……やっぱり鹿も良いが、狼もいいな!」 「ハイハイハーイ! マリアねマリアねマリアねマリアね、ハイエナがいいわ!!」 頬を紅潮させて言った木蓮と両手を挙げてはしゃいだマリア。 『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)は愛用の武器を撫でながら、質問に続いた。 「そうだなァ、俺はカッコいい獅子とかいいかもしれんな! そっちはどうだい?」 フツの視線は『以心断心嫉妬心』蛇目 愛美(BNE003231)へと続く。 「妬ましいわね……質問がリレーしているじゃないの。まあ、そうね、私は蛇かしら」 閉じた瞳をゆっくりと開けた愛美は、其の侭『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)へと目線で貴方は?と問うた。 「ボ……ボクは……やっぱり犬かな。できれば大型犬の」 学生帽子からはみ出た彼の耳がぴこぴこと動いた。ふと、壱和の目線が糾華とぴったり合う。彼女は質問リレーが己に回って来たかと少し考えてから。 「そうね……白くて綺麗な鳥とか素敵ね」 再び目線が動き――最後に『名無し』ジュリー・モーガン(BNE004849)が答える番と成った。 「ふむ……猫とかなら良さそうかしら。さて、そろそろ着くみたいだよ。準備はいいかしら?」 ある意味フラグを立てたリベリスタ達。 彼等が如何なるのかは、――まだ、誰も知らない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月18日(土)22:53 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 機械音と共に、『らしい』煙が吹き上がりながら研究所の扉は開かれた。 一礼したアークの補佐員が来た道を帰っていくのを見送りながら、七人は扉の奥へと進んでいく。 言うまでもない当たり前の事だが、突然作動させてもいない……もっと言えば厳重な電子ロックを敷いている扉が自動で開いたとなれば、中に居るフィクサードとやらが驚かない訳は無かった。 「―――……何故、此の場所がバレたんだ!?」 「バレバレなのよ。アークの眼を掻い潜れる……だなんて思っていたの?」 『名無し』ジュリー・モーガン(BNE004849)が双界の杖を、室内奥の壁に背中を張り付けている陸奥御 楼へと向けた。 まだ戦闘さえ開始されていないものの、楼の引き攣った顔は追い詰められた被捕食者の様。 それもそうか、アークを代表するとも言える『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)や、『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)、『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)が揃ってきたのであれば。 「アークめ……此の俺を殺しに来やがったな……、善の皮を被った人殺し共め!!」 「妬ましいわね。まだ自分が戦った事無いくせに其の意気込みが……」 長い髪を払った『以心断心嫉妬心』蛇目 愛美(BNE003231)は其の侭腕を滑らせて弓の弦を引いていく。 しかし敵とて、彼女の矢を無抵抗で受ける心算は皆無。壁の一部、やたら都合いい場所にある隠し扉を引けば中にあったのは、うっかり押したくなるような丸くて赤いボタン。 「そォォォォォオれ!! ポチっとなー!!」 「言ってる事は案外古臭いな!?」 楼がピコっとボタンを押せば、木蓮の声さえ掻き消される程の轟音。 「な……なんですか、何が、始まるっていうんかですか……っ」 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は己が頭についている耳を両手で抑えながら、周囲へ視界を行き届かせる。 見えたのは――壱和は目を丸くした。 「ロボ!? エリューションゴーレムだというんですか!」 「いや、普通のロボだ」 楼、普通にツッコミをいれた。 部屋の何処にそんな仕掛けがあったのか、むしろ襲撃者に万全に備えていたと言わんばかりに部屋の彼方此方から扉が開き、奥から機械兵器がすっ飛んできたのだ。 「出来そこないのSFなら見飽きたわよぅ」 『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)は翼を広げ、他六人より目線を少し高くした。 成程。状況は機械に囲まれたか。 「ククク……機械の檻で、死に去らせ。箱舟の犬共ォォ!!」 楼が雄叫びを上げ、腕に不格好な銃を装備した。 ――さあ、皆殺しを始めよう。 ● 「気を付けてください!! あの銃に当たると……」 壱和は大戦旗を振り上げながら、状況を解説した。其れはAF回線を通って仲間の耳へと送られていくのだが。 刹那、壱和の身体に光線のようなものが貫通した。さすれば彼の姿はみるみるうちに―― 『……こうなります!!』 ――シェパードの姿に。 うずっ。 今から攻撃を仕掛けんとしていた、ジュリーの身体が揺れた。 嗚呼、嗚呼、あれは、あれはもふもふというやつなのか。 ジュリーの瞳が楼とシェパードの間を行き来する。 「うお!? ガチで動物になってんぞ!!」 キッと壱和の瞳が一点を、楼を睨んだ。 「フゥーーーーハハハハハハ!! 見たか!! 此れが我が、新なる最終兵器アンチサピェェェエンスゥゥウ!!」 「ファンシーよね……ロマン溢れるわね……。はっきり言えば、ファンタジックね」 糾華は冷静に楼の言葉を流した。 『自分で最終って言っちゃいましたよ彼。奥の手見せるの早いですね……』 「言うな!」 フツがシェパード化した壱和を抱え、楼の護衛機から放たれた弾丸を跳躍して避ける。其の侭敵の攻撃をすり抜けながら、有耶無耶に走るフツ。 『今からオフェンサードクトリンかけますね』 「お、おう、何を言ってるかよく解らないが、なんとなく解るぜ。頼んだ!!」 しかしだ。逃げてばかりというのはリベリスタにはあるまじき姿だ。片手に尻尾を振る壱和を抱え、もう片手に深緋を持った彼。 ――今、重要な事に気づいた。フツの額から汗が流れる。 彼は仲間が動物になっている皆の姿を撮るべくデジカメを持ってきたのだが、こうも両手が塞がっていては何ひとつ映像として残せないのだ。失態、不覚。かくなる上は壱和を腕から解放してやった。 「さあ、行くぜ深緋!!」 『機械多過ぎぃー殺すのよ、せめて男一人だけでも』 深緋でトンと地面を叩けば、叩いた点から燃え上がる炎。フツを主として見ているのだろう、炎は朱雀たる雄々しき姿に豹変し高音の鳴き声を響かせた刹那、機械達は盛大に燃え膨れた。 火花は舞塵、蛍の様に美しく儚い。 其の中を糾華は跳躍し、踊る。いざ、胡蝶の夢に抱かれて眠れ。 糾華の両の腕から放たれる、殺傷能力ありきの蝶達は炎の中へと飛び込んでいく。護衛機の腕を跳ね、穴を空け、ショートさせていくそれらは紛う事無き『蝶の様に舞い蜂の様に刺す』。 「あれには当たらなかったかしら……」 地面に着いた糾華の足。死角の方から鈍器で殴りかかって来た護衛機の腕をひらりとかわしながら、楼を見た。 「マリア殺る!!」 「……マリアさんも、無茶し過ぎないようにね?」 「うん!!」 黒き閃光が周囲を包んだ――其の攻撃は燃えている機械さえ飲み込んでは、地面に繋ぎ止めていく石化。 閃光の風に、ぽてっと落ちたマリアを受け止めた糾華は其の侭楼へと問う。 「貴方の研究しているものは知っているわ。なかなか面白い研究だと思うけれど……どうしてアークを目の敵にしてるの?」 「俺は元六道研究員だ……つまり紫安さまの配下……のそれまた配下だった! だが……お前等のせいでキマイラも研究所もパーだ!」 「ああ、そう……貴方、キマイラ作れるのかしら?」 「……お、俺は下っ端だから……複雑怪奇で怖過ぎるあんな研究、言われた事をやっていただけで……」 「落ちこぼれの逆恨みじゃないの」 糾華の口から溜息しか出なかった。ともあれ、彼等キマイラ研究員が三ツ池でどうなったかといえば、残酷な光景を思い出せる。彼が三ツ池に居なかったのは幸運だったかもしれない。 それとこれは別とし。 紛れて、愛美が放つ炎の矢の一本が、楼の顔をかすり壁へとめり込んだ。 「……っ、こんな所で殺されてたまるか……っ」 「それは貴方次第よ。所で同胞が居たの? ……他の研究員は何処に行ったのよ」 愛美は次の矢を弓に仕込み、其の刃先を楼へと向けた。けしてこの場からは逃がさぬ心算だ。何処までも矢にて追尾をせんと。 「だから!! 同胞なら、お前等リベリスタに殺されたと聞いた!! 許さん、許さないぞ!!」 そして再び放たれた矢が、楼の肩に命中。そして燃え上がるのは嫉妬の焔とでもいうのか。 「寒い嫉妬ね。貴方がしている嫉妬は、己の弱さに対してでなくて……? それより意図は不明だけど、もふもふの動物に囲まれる可能性があるのよね……そっちの方が妬ましいわ」 愛美の目線は動く。 ――其の頃。 駆ける、駆ける。我が姿は今まさに―――狼(木蓮)。 恋人の因子でもある狼に成っているのは、彼女の心の中でどうとも言えない、温かい気持ちがこみ上げて来る。辛うじて木蓮だと証明できるのは狼の鼻の上にある眼鏡だろうか。 彼女は機械の間を駆けていくままに、楼へと吼えた。 『やってる事はアレだけど、こんなAFを作れるってことは天才には違いない訳だろ。その才能、もっと良い事に活かしてくれよ。なっ!』 「うるさい! 狼になってまでも説教してくんな!」 「ガルルルrrr……」 「ひっ!?」 喉を鳴らし、独特の威嚇を放つ木蓮。今こそ攻撃を―――しかし。 「戦場では冷静な者が勝つわ。多少姿が変わった所で動じないで」 ジュリーが木蓮の胴に飛び込み、其の侭床を回転しながら勢いを止め、木蓮兼狼の頭をヨーーーーーーシヨシヨシヨシヨシヨシヨシ。 フツは嬉しそうな顔をしながらカメラを其方の方へと向ける。此の男、抜かりない。 「おお! これよくテレビでも見るムツゴ(自主規制)に似てるな!!」 「呼んだ?」←陸奥御楼が反応 何故、リベリスタは仲間同士で足を引っ張り合うのか。その答えは未だ見えない。 「フィクサード一人如きに、私達は負けないわ」 ジュリー、超真剣な顔で木蓮をもふる。頭と顎下、そして手は降りていき顔の左右をわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ。 かと思えば、別の手は背中をよしよしよしよししながら其の毛並の質感を確かめ、その後耳をたふたふたふたふたふたふ。 「ジュリー!? くすぐったいんだぜ、や、やめっ、あっ!!」 「大丈夫。もふもふは世界を救う」 「何を言っているんだぜー!?」 強引に木蓮はひっくりかえされ、おなかわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ。木蓮南無。 力を失くし、ぐったりとした木蓮の上でジュリーは口角が少し上にあがった。 成程。アンチサピエンス、恐ろしい武器め。 成程。アンチサピエンス、此処まで人を豹変させてしまうとは。 ジュリーの瞳が右に平行移動していく。光った彼女の目の中に捕らわれたシェパード(壱和)の身体が、第六感が―― きこえますか、きこえますかいちは あなたのこころにちょくせつはなしかけています きこえますか、にげるのです、ちょうにげるのです ――と騒いだ。 『ジュリーさん、敵は、こっちじゃないですっ!?』 「問答無用」 毛を逆立てた壱和は反射的にジュリーから距離を取った。しかし、猛ダッシュで駆けてきたジュリーの眼が完全にイっている。 狩られるというのか、此のシェパードたる御身が!! 「いいぜ! 楽しくなってきたぜ!!」 フツ。まだカメラを回し続ける。 ● 「駄目ね。木蓮と壱和、ジュリーが使い物にならないわ」 「いいよいいよ、オレは楽しいよ。バッチリカメラに収めてるぜ安心しろ」 「フツ、妬ましいわね。フィクサードは……これも計算の内って事なのかしら?」 「お前等、濡れ衣って言葉を知ってるか……?」 機械はほぼ、機能停止している頃。 糾華と愛美の遥か後方側では木蓮と壱和がぐったりしていた。その手前くらいの場所でジュリーが次の獲物を探している。 護衛機という壁がいなくなったのは、後衛たる楼には痛い現状でもあるが。敵へと射線が稼げるという点ではいくらか楼に有利であった。 というのも、彼の攻撃は射線あってこその攻撃。 「お前等全員、動物になっちまえ―――!!」 やけくそでもあっただろう、彼の意志であったが奇跡的にも全弾がリベリスタに命中してしまう。 ワンワンキャンキャンキューキュー、その場は言わば動物園状態。 「ククク……皆動物になった。これで俺に怖いものは無い!!」 ――はずだったのだが。 もぞ。 (白くてふわふわしてて……って、これアザラシの子供の姿よね?) もぞもぞ。 (子供扱いってことかしら……妬ましいわ) もぞもぞもぞもぞ。 (……本当に妬ましいわね……) もぞもぞもぞもぞもぞもぞ、ぺちん。 「は?」 あざらし――もとい愛美の愛らしい腕が地面を叩いたときであった。空中に野球ボール大の炎が発生。 「はぁぁぁぁあ!!!?」 それら全てが楼目掛けて直進していく。追って、燃ゆる彼の頬に痛みが走った。 「みゃぁ」 長い爪を出し、ふんわりとした毛並を持った白猫(糾華)が楼の目の前に、そして彼の頬を蹴って後方へと着地した。 研究所の頭上から羽音がけたたましく。フツが珍しくも赤色の雀と成り、飛んでいたのだ。自分の力で飛べる、それはなんとも不思議な気分か。 『ところで俺等、動物になっている間は裸なのか!? いや……この後は言えないな』 フツ曰く、動物の姿から人間の姿へ戻るときえっちな事になるのではないかと―――それは大丈夫だ、其処ら辺は服は何故か出現するからあんまり深く考えちゃ駄目だ! 朱雀招来。此処での朱雀とはフツの姿そのものであろう。 彼の赤は、緋の赤。舞う羽は焔と成りて、弾丸となりて――楼へと降り注ぐ。 「うう。なんだっていうんだ……」 瀕死の楼は地べたをはいずりながら、そして顔を上げた。狼。其れは木蓮。 『っていうか憎きリベリスタを動物さんに、って発想可愛すぎだろ……お前フィクサード向いてないぜ、うん』 「ぐうう」 世界がオカシイ。最近のあざらしや猫や雀は炎弾やら刃やらを形成し、的目掛けて確実に撃ってくるとでもいうのか。 否、あの動物たちはリベリスタであり、なんだかよく解らないがスキルはちゃっかり使えちゃっている模様。此処らへんはあんまり深くツッコんだから負けだ、STとの約束だ! それまでジュリーという一少女が、動物に成ってしまったリベリスタの攻撃という攻撃を妨害、もとい無意識に愛玩的に止めてしまっていた為に此処の此処まで楼が『アーティファクトの効果が動物の姿になるだけ』という事に気づかなかったのだ。 「俺の研究は失敗だったのか……ぐすん」 全身黒焦げになっている楼は床に伏せ、瞳の端の方から光るものが床を濡らした。 ――が、そうであるのならばこんな場所にはいられない。すぐにスタートダッシュした楼は、駆ける――そう、出口へ。 ほぼ同時。壱和が四本の足で駆けた。精神力的なもので構成した弾を口に咥え、そして其れを楼の進行方向へと投げれば白く眩い光が室内を染め上げたのだ。 ▽ろうは まわりを かこまれてしまった! 『逃がすと思ってますか! 此処から先には行かせませんよ!!』 そう言っているのだろうが、愛らしいチワワの姿になってしまっている壱和。 『逃げ場はないわ。大人しくした方が、命を落とさずに済むわよ』 楼の背後、猫の姿になった糾華と彼女のAFである蝶がひらりと舞う。 『これじゃあカメラで撮れないな……早くなおんねえかな。でもそれも勿体無い気もするぜ』 ばさりと、赤い羽根が舞う。珍しくも赤色の雀が楼の頭上を旋回していた。 『ガルルルルルルルルrrrr』 恐らく彼女が一番怖い。真っ白な毛並を逆立て、顔を強張らせた狼である木蓮が楼のズボンを噛む。 『妬ましいわね……私だけこんなに動きづらいわ』 ころころころころ――愛美、もといアザラシは匍匐前進は遅いので、横にころがって楼へと迫る。何此れ可愛い。 『マリア!! おまえ!! まるかじり!!』 ハイエナ化したマリアは何故だか楽しそうだ。 『ふむ……これで終わりとは呆気なかったな』 最後に、金色の猫と成ったジュリーが残念そうに耳を下へ向けた。 「ひ、ひぃい」 もはや逃げ場は無い――覚悟の時間だ。が、ここでチキンぶりを露わにしたか。 「ひぎゃああああああああああ!!」 木蓮の咆哮一つで意識を飛ばしたフィクサードにこれ以上の仕打ちはいらないだろう。 ● 「ん……んん……」 楼が瞳を開ければ光は漏れた。 今まで闇に慣れてしまっていた目だ、見上げている天井はまだボヤけており霞んで何も見えない。 「な、なんだ……今のは、夢だったのか……」 悪い夢を視た。突如アークのリベリスタが此の研究所に乗り込んで来て、自分を……そうだ、あの後はきっと無残な死体で殺されたに違い無い。 「よ! 目が覚めちまったか! 今から撮影するんだぜ」 「……は?」 フツの声。いや、そんなはずは無い。 「俺様の咆哮で倒れちまったんだぜ! フィクサードにこんなの言うのもアレだが、まあ大丈夫か?」 木蓮の声。やめろ、やめてくれ、そうかあれは、あれは――夢じゃないというのか。 「暴れたら、焼鳥にしちゃいますよ? なんて」 楼の顔の前に、アンチサピエンスの銃口を向けた壱和。 「あんまりいじめると、心臓発作起こされるかもしれないけれど……」 糾華がトリガーを引くのを止めようとしたが。 ガァン!! 「……あら、遅かったわね」 ――銃声と断末魔が、響いたのであった。 その後、意識の無い鶏を、ずっとジュリーは胸に抱えていたとかなんとか……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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