●完熟スイカ 白い砂浜。透き通るような青い海に、突き抜けるような青い空。 照り付ける太陽は身体に容赦無く襲いかかるが、それを癒すように爽やかな潮風が吹き抜ける。 まさに絶好の海水浴日和――。 そんな中、砂浜を進むのは純白のビキニを纏った1人の美女。 ばいんばいん。 その足取りは赤絨毯を幻視させ、 ばいんばいん。 その柔肌は陽光を照り返す程に白く、 ばいんばいん。 その豊満な肉体は気品さと妖艶さを兼ね備えている。 だが特筆すべきはやはり、たわわに揺れる2つの……スイカだった。 縞模様でおなじみの、あのスイカである。 胸に2つの大きなスイカを実らせ、美女は砂浜を行く――ばいんばいん。 ●海、開いてますよ 「今回、皆さんに向かっていただくのはこちらです」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)がモニターに出した映像を見たリベリスタ達から、歓声があがる。 それもそのはず、そこに映し出されたのは、まるでどこかの旅行パンフレットから持ってきたかのような海辺の風景だったからだ。 和泉が示した場所は、とある海水浴場。三高平市からそう遠くない所にある上に一般にもあまり知られていないため、ほとんど貸し切り状態で楽しめる。いわゆる穴場だ。 「ですが、観光に行ってもらうわけにはいかないんです。実は、この場所にエリューションが出現しています。 まだ被害は出ていませんが、だからといって放置することはできません」 敵の詳細はこちらに記載してあります、と和泉は若干テンションの下がったリベリスタ達にファイルを手渡した。 「対象はエリューション・ビースト。外見はボンキュッボン、ナイスバディのパツキン美女……」 ―――イェア!! 中腰気味に立ち上がりつつ、一気にボルテージが上がる一部の紳士淑女の皆さん。 「『注記:ああ、オレも行きたかったなあチクショウ!』……誰ですか、この資料を作成したのは。時村室長にクレームを出せば良いのでしょうか……」 真面目な彼女らしいと言えばらしいが、しっかりと読み上げる和泉も和泉だった。そしてサッと着席する一部の以下略。 「こほん……ただ、ビーストの名が示す通り『彼女』はエリューション化した人間ではありません。革醒したのは――スイカです」 「スイカ? あの、縞模様の?」 「そうです。ウリ科のつる性一年草、学名Citrullus lanatusのスイカです」 リベリスタの疑問に答えるように和泉がリモコンを操作すると、モニターの映像が切り替わった。そこには金色のロングヘアーを潮風になびかせる美女の姿がある。 だが純白の水着に覆われた2つの胸の大きなふくらみは、よく見ると緑と黒の縞模様で、 「……スイカだな」 どう見てもスイカでした。 「さらに一点、注意して頂きたいことがあります」 和泉が言うには、このエリューションはスイカが本体ゆえ、スイカ以外の場所、つまり胸部以外を攻撃してもほとんどダメージを与えることが出来ないらしい。うわーてごわいなー。 「裏を返せば、スイカが弱点だとも言えますね」 要するに、スイカを2つ共割ってしまえば、エリューションを倒せるということだ。 「人型のエリューションのため、戦いにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが平和な海水浴場を守るため、頑張ってください。吉報をお待ちしています」 激励するように微笑む和泉を目の前にして、 ――いや、苦労するのは多分そこじゃないと思う。 リベリスタ達のツッコミが、虚しく彼らの胸中に響いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:力水 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月07日(日)21:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夏だ! 「「海だ!」」 「スイカ割りだ!」「水着だ!」 惜しいっ。 『ガンナーアイドル』襲・ハル(BNE001977)と『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)の三拍子は最後で道を違えてしまった。これが男女の差なのか。でも水着とはいっても、翔太は女の子の水着がどうのこうのとは言っていないし、セーフかもしれない。あ、目を逸らした。 その横では『素兎』天月・光(BNE000490)と『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)が、きゃっきゃっとはしゃぎながらサンオイルの塗り合いっこをしている。 「日焼けすると大変だもんね~」 「あはは、くすぐったいよっ」 スク水姿の健康的な光と純白ビキニ姿の女性らしいレイチェルの姿は、同い年ながら違いはあれど、それぞれとても魅力的だ。もちろん、画面には謎の光やらぼかしやらで全年齢対象の処理は済ませてありますのでご心配なく。 「私も塗った方がいいのかしら……」 そんな2人の様子を小首を傾げて窺っていたのは『月光花』イルゼ・ユングフラウ(BNE002261)。腰に巻き付けたパレオから、かすかに透けて見える黒いビキニが大人の色気を醸し出している。そして、おっきい。 「負けてない負けてない……!」 「ぐぬぬ……」 「けしからんっ!」 「いや、リルと比べられても困るっス」 「え……私も比較対象?」 以上、女性陣(ハル、レイチェル、光)+『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)+『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)の一言コメントでした。 その後、光のサンオイル攻撃によりリルとキリエを含めた女性陣(+α)はきちんと日焼け対策を終えたのだった。 「とにかく、まずはスイカさんを探そう」 そう言って感情探査を始めるキリエ。サンオイルを念入りに塗られたのか、少々テカテカしている。 説明しよう! 感情探査とは、半径200メートル以内に存在する【強い感情】と【その種類】、更には【概ねの位置】を感知する能力である! ~キリエ's脳内~ 強い感情:『おっぱい! スイカップ! おっぱい! スイ(以下エンドレス)』 その種類:『だんしちゅうがくせい』 概ねの位置:『スグソコ』 「……ぐはっ」 「キリエー!?」 ある意味強い感情をもろに受け、ふらりと体勢を崩したキリエに翔太が駆け寄る。 「ど、どうした!?」 「…………」 ふるふると腕を震わせながらキリエが指差した先には、 「スイカップおねーさーんっ!!」 白い砂浜を疾走する『平常運転』御厨・夏栖斗(BNE000004)の姿があった。 ~しばらくお待ち下さい~ 「……あれじゃない?」 ハルの連絡を受け集まったリベリスタ達が見たものは、確かに聞いた通りの姿。ほわほわとした雰囲気を纏いつつ波打ち際を散歩する姿は、およそエリューションとは思えない。 しかしその胸部に実った2つの果実は、 「スイカっスね……」 ぽつりと呟いたリルの頭の中では、すでにスイカとの戦いが繰り広げられているのだろうか。 「それじゃ、行きましょうか」 イルゼの言葉に全員(-気絶している夏栖斗)が頷き、戦場へと駆け出す。 お待たせしました、出番ですよスイカさん。 ●スイカップじゃなくてスイカです。 「ってスイカかよ! 聞いてねえよ! スイカップってのしか見えてねえよ! どうやってスイカップに飛び込むかとかばっかりでブリーフィングなんか聞いてねえよ!」 目を覚ました夏栖斗の雄叫びが水平線の向こうへと抜けていく。透き通る青空に、フォーチュナの泣き顔が見えた気がした。 それはともかく。 「お嬢さん、ご機嫌麗しゅう! 散歩たのしい?」 夏栖斗がイケメン顔でナンパよろしくスイカさんに声をかける。 「……?」 金色の髪を翻し、くるりと振り返るスイカさん。仕草を含めたその可愛らしい姿は、場所が場所ならば引く手数多であろうことは容易に想像できる。 しかし皆の目線はやはりある一点に集中してしまうわけで。 「あれがスイカップ! ……本当にスイカだからなぁ」 光の視線(集中使用)に気付いたのか、慌てて胸を――ああ、いえ、スイカです――スイカを抱くように腕で隠すスイカさん。だが当然のようにスイカは腕に収まるはずもなく、はわわんっ、とスイカにあるまじき弾力をもってこぼれ落ちている。 「ま、申し訳ないけど消滅しへもらふんはけほね」 キリッ、と夏栖斗が決めようとしたが途中から鼻血がオーバーフロー。もはやBS流血のレベルである。 「……!」 そしてやっと自分が取り囲まれていることに気付いたスイカさん。わたわたと慌てながら何故かファイティングポーズ。ぷるるん。 「ふっ、遅いわ! 御厨夏栖斗、いっきまーす!」 スイカさんのスイカ目がけて、物理防御無効の掌打が撃ち込まれる! もにゅん。 ふにゃん。 むにむにっ。 わーお。 「……ひぁ、ぅ」 「エッチなこと禁止ーっ!」 「ばすとっ!?」 ちっ。 夏栖斗の脳天に見事に突き刺さる光のフラグブレイカー。 「ち、違う! 触りたいわけじゃなくて少しでもダメージを与えようという努力なのであって! 努力の僕かっこいい!」 そうだそうだー! 「しゃらっぷ」 レイチェルさんのよくわかる英会話教室。マジックアローがスイカさんのスイカを穿ちつつ、スイカさんを挟んで反対側にいるはずの夏栖斗の頬を掠める……すごい威力だ。 「……はい」 はい。 「しかしまぁ、マジでデカイな」 そして何気にしっかり見ている翔太。しかし労せず眼福とは感心しませんな。 「え、少しは見たっていいだろう……って、あいたたた!?」 夏栖斗の魔の手から逃れたスイカさんが2つの大きなスイカを震わせると同時に、浮き上がるように現れた黒い種が翔太へと射出された。 反応速度を高めて追撃から逃れつつ、反撃とばかりに翔太が幻影剣をスイカへと叩き込む。 「……ぅんっ」 攻撃を受ける度に何故か悩ましげな声をあげるスイカさん。 「め、めんどくせぇなー……」 戦闘開始からわずかな時間しか経っていないのにもかかわらず、すでに翔太は疲れ切った表情になっている。 「みんな、これを!」 そこにイルゼの守護結界が発動。防御の力を有した結界が仲間達に展開される。 「そう簡単にはやらせないわ」 「ありがとう、イルゼさん!」 新たに与えられた力によって自信を強めたハルが、二丁のオートマチック拳銃を構える。 ……が。 「……僕らだけ結界の位置おかしくない?」 夏栖斗と翔太に展開された結界は、何故か下半身メインに張られていた。そしてほんのりボカシが入る2人の下半身。 「全年齢対象だから……」 イルゼさんナイスです。 「俺達どんだけ節操ないと思われてんだ!?」 全年齢対象なので。 そんなこんなで戦闘は続いているが、スイカさんにたじたじな男性陣とは違って、女性陣はきちんとお仕事をしていた。 「BBQの為にもきちんと割るわよ!」 ハルの二丁拳銃から弾丸が放たれる! 「……っ!」 「あなた、あたしとちょっとかぶってるのよ!」 レイチェルがマジックアローを射る! 「ん……」 「あれはスイカスイカスイカ……」 リルによるブラックジャックが伸びる! 「……はぅっ」 キリエのダガーが空を駆ける! あ、キリエさんは一応女性陣サイドでお願いします。 「まあ……いいけどね」 「ぁ……♪」 リベリスタ達の連続攻撃により確実に傷ついていくスイカさん。スイカから滴る赤い果汁が、白い柔肌を伝って砂浜に染みをつくる。 改めて言うが皆が攻撃しているのは純然たるスイカであり、赤い果汁とは比喩でもなんでもなくただの果汁である。多分、甘くて美味しい。 そしてスイカさんが徐々に高まっているような……何がとは言わないが。 「なんだか様子おかしくない?」 「確かに変な声出してるし、妙にくねくねしてるような……」 若干引き気味のハルと、何とも言えない心境のレイチェル。 「説明しよう」 そこに現れたのは、強い陽光に照らされながらも涼しげな表情のキリエ。水着は着ていないようだが、足元はサンダル姿でしっかり海仕様になっている。 「彼女はね……いわゆるMでむっつりなんだよ」 な、なんだってー!? 今明かされるスイカさんの秘密。そう、戦闘前にキリエが使用した感情探査。確かにあのときは夏栖斗の強い感情に乱されたものの、その後しっかりと彼女の感情も掴んでいたのだ。 「そっかー、Mでむっつりなのかー」 ほほう、と頷くリベリスタの皆さん。 「※◎×△!?」 声にならない声をあげ、ごまかすように種をばらまくスイカさん。 「スイカから種を出すな! 卑猥だぞ!」 光はバールで器用に種を跳ね返しつつ、スイカさんに急接近する。 そしてスイカに向かってバールを振り下ろした光だったが、スイカさんは上半身をひねってそれを回避。 さらにスイカさんはひねった身体の反動を利用して、たわわな2つのスイカを横薙ぎに光にぶつけようとする。 「スイカ揺れるからって自慢か! オイ!」 光はすぐさまバク転で回避したが、その代わりスイカの軌道上にいた夏栖斗にツインスイカが直撃した。 「なんで!?」 鼻血を噴きながら、空高く宙を舞う夏栖斗。 「…………」 精神的ダメージのあまり、若干涙目のスイカさん。ふと視線を前に移した彼女と目が合ったのは、翔太だった。 「あ……」 翔太は思わず声をあげる。 紅潮した頬。うっすらと涙を湛えた瞳。ほどよく潤んだ唇。そう、スイカさえなければ、スイカさんはかなりの美人なのだ。 見つめ合ったまま、2人の間に沈黙が流れる。周囲に漂う謎のキラキラ粒子。 先に根負けしたのは、翔太。普段は無表情な彼だが、スイカさんの視線に思わず優しい微笑みを浮かべる。 途端、ぱぁと表情を明るくし、両手を広げて翔太の元へと駆け出すスイカさん。無駄にスローモーションがかかっているのは、きっと演出です。 そして砂浜を蹴り、スイカさんが翔太の胸に飛び込もうと――。 「あ、ちょっと抱きつきは遠慮なんで」 空から落ちてきた夏栖斗を中段回し蹴りで蹴り飛ばす翔太。 地面と水平に射出される夏栖斗。 「さあ僕を抱きしめろおおおお!!」 そして夏栖斗はスイカに顔面から激突した。 「モグファ!?」 スイカの弾力はその衝撃を限界まで吸収したが、すでに幾分かの攻撃を受けて傷ついた身で耐えきることはできず。 ぱきゃっ。 そんな小気味良い音と共に、スイカさんの正面から見て右側のスイカが砕け散った。 真っ赤な果汁と果肉を周囲にまき散らしながら後方にひっくり返るスイカさんと、上半身を真っ赤に染めて砂浜に突き刺さり沈黙する夏栖斗。 「…………」 そしてそれを黙して見守るリベリスタ一同。 蝉の声が遠くに聞こえる。不意に吹いた潮風に髪をなびかせ、レイチェルはそっと視線を逸らした。 うわーてごわいなー。 ●どうしてこうなった。 だがまだ終わりではない。スイカさんにはもう1つスイカが残っているのだ。 スイカさんが弱々しく立ちあがるのを見たリベリスタ達が、我に返ったように武器を構えなおす。 「って、怖っ!?」 だがその姿を見て、思わずリルが声をあげた。 それもそのはず、真っ赤に染まり(果汁で)、着衣も乱れたスイカさんのその姿はもはやホラーであり、色々残念なことになっていた。主にスイカが潰れてぺたんこになった胸とか。 「!?」 そして周囲の視線から、ようやく自分の状況に気がつくスイカさん。 すっかり緩んだ胸の水着を直そうとわたわたしていたが、何を思ったのか急に海へと駆け出した。 「あっ、逃げた……って、あれ?」 スイカさんの行動を阻止しようとハルやキリエが構えたが、どうもスイカさんは逃げたわけではないらしい。浅瀬の方で何やらごそごそと動いている。 そして数分後。 「……ふ」 何やら自慢げに帰ってきたスイカさん。身体の汚れは海中ですっかり落とし、水着も元の白さを取り戻している。……とはいえ、海水浴場で汚れを流すのは迷惑行為なので止めよう。 だが、何より注目すべきはその胸部。 「スイカが、元通りになってる?」 イルゼの目が捉えたものは、戦闘前と変わらぬ2つの大きな膨らみ。しかも確かにスイカである。 「でも片方がやけにテカテカしてるような……」 ものすごく疑いの眼差しを向ける光。 ぎく、とスイカさんの頬が引き攣る。と同時に、周囲に響く空気が抜ける音。ふと見ると、スイカさんのスイカ(右)がみるみるしぼんでいく。 「これ、スイカ柄のビーチボールっス」 リルの手が、しぼんでいくスイカの下部にあてがわれている。そこには、ビーチボールにお馴染みの吹き込み口があった。 「発想はよかったっスけど、惜しかったっスねー」 がくりと膝をつくスイカさん。 ~数秒後~ すっくと立ち上がるスイカさん。意外とタフなのかもしれない。 そしておもむろに胸の水着に手をかけると、躊躇いもなくそれを取り。 投げ捨てた。 「え!?」 それは全員の驚きであっただろう。さらにスイカから光が漏れだし、周囲を明るく染める。 「な、何だ……」 そして徐々に収まっていく光の中、キリエが見たものは。 「んっ♪」 胸を露わにしたスイカさんのウインク姿だった。しかもスイカであるはずの部分は、人間のそれに変わっている。 「なっ……これ、全年齢対応じゃないのか?」 説明しましょう。 先程の光はスイカさんの奥の手、胸部具現化『スイカだから恥ずかしくないもんっ!』である。これを受けた者はある種の魅了状態になり、もれなくスイカが本物の胸に見えてしまうのだ。しかも破壊されたスイカもきっちり補完されているぞ! ちなみにキリエ、ハル、翔太、イルゼがかかりました。 「スタイル……良す、ぎ」 「すごく、柔らかい……」 「くっ、私の方が!」 詳しくは言えないが、各々なんかすごいことになっているようだ。 「一体、みんな何が見えてるっスかね?」 「わからないけど、放っておくのは危なそうだよ!」 「スイカの色仕掛けなんて認め不!」 一方こちらはかからなかった3人。彼らの目には、スイカさんを見て仲間がウンウン唸っているようにしか見えていない。 「とりあえず動きを止めるっス!」 キリエに歩み寄るスイカさんを見たリルが全身から気で編まれた糸を放ち、スイカさんを束縛する。 「柔らかそうっスけど、取れてぺたんこになるようなのは偽物じゃないっスか。第一、柔らかさならもっと上の本物を知ってるっス」 今何と申したかこの子。最近の子はおませさんなのだろうか。マジ許すまじ。 それはさておき、リルの気糸はうまく麻痺を与えたようだ。しかし傍目には目の毒になりそうな光景である。 柔肌に食い込む糸。麻痺によって息は荒くなり、汗ばむ身体。 「「「「うわあああああっ!!」」」」 何故か魅了された4人が同時に叫んだ。彼らの目にはスイカさんがどう映ったのだろうか。だが私は描写しない。 「とにかく、これでみんな戻ってきてっ!」 戦場を、レイチェルのブレイクフィアーの神々しい光が照らし出す。 「くうぅっ……って、あら?」 我に返るイルゼ。何故か彼女は悩ましいセクシーポーズをとっていた。何かに対抗していたのだろうか。だが私は描写しない。 他の3人も次々と魅了状態から回復し、我に返っていく。 そしてスイカさんはというと、力を使い果たしたのか、それとも麻痺のせいなのか、ぐったりと座り込んでいた。 しかし、そこに太陽の光を遮るように覆いかぶさる複数の人影。 恐る恐る仰ぎ見たスイカさんが最初に目にしたものは、光の満面の笑みだった。 「砕 け ろ !」 ぱきゃっ。 ――ああ、今年も夏が、過ぎていく。 ●夏とスイカとBBQ 「焼けたぞー」 陽が水平線に沈み始めた頃、海岸に翔太の気だるそうにも聞こえる声が響く。 スイカさん撃破後、リベリスタ達は思い思いの時間を過ごしていた。 海で泳いだり、スイカさんのまき散らした種や果肉を片づけたり、拾ったそのスイカを味見してみたり。味はごく普通のスイカだったようだが。 そして、最後のイベントはバーベキュー。各々が持ち寄った色とりどりの食材が網の上に並べられ、食べ頃と感じられる良い香りを漂わせている。 「はい、それでは――」 いただきまーすっ! その後、争奪戦ともいえる激しい戦いが網の上で繰り広げられたが、最後はやっぱり笑顔に落ち着くわけで。皆でわいわいと騒ぎながら食べる食事は格別なものなのだ。 片付けが終わり、帰還前の一休み。 遊び疲れた子達は、レジャーシートの上で寝息を立てている。 沈みゆく夕陽を眺めていたキリエは、イルゼが持参したジュースを一口含む。 「スイカの原産地はアフリカなのだとか。遠い故郷が懐かしかったのだろうか。それとも、単に海辺の楽しげな雰囲気に誘われてやって来たのかな」 正直なところ、わからないというのが本音ではあるが、それでは面白くない。 たとえわからないとしても、考えを巡らせることはきっと次の戦いに何か繋がるはずだ。 「美人薄命、だね。毎年夏の涼をありがとう」 ……まあ、ちょっと変り種だったけれど。 少しの笑みを含めて呟いた言葉は夜風に乗って。 戦いの日々は、これからも続いていく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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