●きっと相手によっては喜ばれた 都会からは離れた少しばかり田舎の地域。 毎年この時期になれば雪が積もるこの地では、夜になると人の気配はほとんど無くなる。 雪の夜道が危険だということもあるだろうが、単純に遊ぶ場所がないためというのが最たる理由だった。 けれど、そういうスポットこそ望まれるケースはあるものだ。 例えば、家族や友人達に知られずひっそり密会したいと考える者達に、ここはうってつけだと言えた。 「あったかいね、アキ君……」 「ああ、そうだな」 町内では最も広い公園のベンチで隣り合って座り、自動販売機で買った缶コーヒーを両手で握る学生のカップル。 どこかたどたどしくも、互いが互いを意識しているのがはっきりとわかる。 穏やかながら沈黙の時間は過ぎていく。 緊張の中、それでも意を決したアキ少年は、缶を握る彼女の手元へと自分の片手をゆっくり伸ばしていく。 こうした方がもっと温かいよ。と、告げるために。 手袋越しとはいえ自分の手を取ってくれるだろうか、期待と不安をないまぜにした少年がちらりと彼女を覗き見ると、少女は驚いた様子で彼の方を向いていた。 しかし、その視線は遠い。見ているのは少年よりさらに後方だ。 何があったのかと少年も彼女の視線を追う。 そこにあったのは、 「雪玉……?」 かなり大きめの雪玉が、そこに転がっていた。つい先程までは無かった塊に少年も困惑する。 すると、次の変化はすぐに訪れた。 さらに後方よりもう一つの雪玉が高速回転で突進。いきなり跳び上がると『ガキィ――ン!』と言うあり得ない落下音で前方の雪玉の真上に着雪した。 尚も回転を続ける雪玉が『ギュインッ』と音を立てて停止すると、そこには黒くて丸い目が二つと長方形の口。そして新たにニンジンの鼻が『ギシュン』と突き刺さった。 続けて『キュオオオオ!』と二つの接合部に赤いマフラーが巻かれる。 さらにやや太めな木の棒が『ギュルルルン』と横回転で下の雪玉の左右に突き刺さり、『ガシュン』と手袋がその先に被せられた。 最後に『ドシュ――ウウウン!』と鉄製のバケツが頭に乗って、そいつの合体は終了したのだった。 その姿はまさに――雪だるま! 少年少女は呆然とした目で一連の流れを凝視していた。 「逃げよう!」 我に返った少年が少女の手を取って走りだす。皮肉なことに手を繋ぐという少年の目的はそこで叶い、同時に少女と共にあり続けたいという願いは崩れた。 二人が雪だるまから背を向けた瞬間、雪だるまのつぶらな口から放たれたビームが二人の肉体を貫き鮮血が舞い散る。 その場に崩れ落ちた二人の命と恋心は、儚く雪に埋もれていくのだった。 ●エリューションだってたまには合体したい本能をもった奴がいる 「二人の淡い恋愛事情を垣間見ていたら、いきなり番組が変わった気分だったわ」 空気を読まないとはこのことね、と悲劇を語り終えたのは『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)だった。 「今回の敵は、合体して人を襲うE・ゴーレムのユキダルマーンよ」 いつもの無表情で合体雪だるまの正体を説明する。 また濃いのがきたなぁという雰囲気の中、名付け親は? というリベリスタからの質問が入る。 「わたしよ」 ツッコミ不在というより、なんか突っ込んでいいのかわからない空気だった。 「雪だるまとしての本能かしら、人を襲うだけでなく自分の姿を見てほしいという意識もあるようね」 それであの合体シーンなのかとリベリスタ達は呆れる。というか雪だるまとしての方向性が完全に迷子である。 「あの効果音が鳴るのは何故?」 という質問にもあくまで表情を崩さないイヴは明瞭簡潔に一言。 「神秘よ」 神秘なら仕方ないね。 「ユキダルマーンは一体だけど、パーツの一つ一つがエリューション。いわばゴーレムの集合体ね」 敵がパーツごととなると、単体では小型ながらそれなりの数になると思っていいだろう。 「あのカップルが来るのはかなり遅い時間だから、あの二人より先にきて夜の公園を歩きまわっていれば、見られたいユキダルマーンは自分から現れる」 そして合体する。ある意味先にしかけられる心配は皆無だ。 「合体中に奇襲を仕掛けてもいいけど、そうなると合体をやめて個別で襲いかかってくる。ユキダルマーンは特性上、バラバラに戦った方が遥かに強いから気を付けてね」 最後の補足に、リベリスタの一部はああこの雪だるま馬鹿なんだ……と心の中で突っ込んだという。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:上履太郎 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月22日(水)22:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●合体する雪だるま しんしんと雪が降り積もる静かな夜。 人気がなければどこか侘びしさすら感じる公園に、けれども今は八人のリベリスタが集い周囲を散策している。 「他人の恋愛の邪魔になるとは、野暮な雪だるまだ」 放置すれば件のカップル以外にも被害者出てしまう。ならばここで確実に退治しなければならない。 と迷惑な雪だるまを駆逐するため、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)がARK・ENVG3Rの暗視機能をオンにしながら周囲を探る。 「ほんの一瞬の暇が大切な思い出になるのに、こんな所で終わるなんて悲しすぎるの」 『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)は、襲われるカップルが現在抱いている『淡い思い』の時期に大切な人を守るため剣を取った。 彼らの姿と自分を重ねながら、ルアは戦うための決意を抱く。 「友達以上恋人未満の儚い一瞬の青春を潰すなんて許せないわ!」 「(お父様、お母様。どうかわたし達を護って)」 行動を起こす前にいつものお祈りを済ませた『約束のスノウ・ライラック』浅雛・淑子(BNE004204)は、安全靴で雪の積もる足場を安定させながら、暗視で周囲を探る。 雪玉は未だ姿を現さないが、別の意味で登場を期待されていることもあった。 「九体合体か……いいね」 コンビニで買ってきたおでんを食べながら『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)も周囲を見渡している。 氷点下の寒空の下、いざという時のために暖を取るのは大切なことだ。そういうことなのだ。 それに周囲の索的だけでなくしっかりと真っ先に結界も展開している。若干暢気に見える言動と姿とは裏腹に、抜け目ない人物と言えるだろう。 雪だるまを探しながら喜平の言葉を聞いて一人小首を傾げるのは『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)だ。 「雪だるまなのか、ロボットなのか……うーん……どちらなのかしら?」 ガキンガキン擬音を上げながら合体するこれは、生命体と判別すべきなのだろうか? だが雪だるまというからには燃やすと溶けそうな気もする。一体どっちなのか彼女はかなり気にしているようだった。 しかし、どちらにせよ、だ。 「エリューションですし……ましてや敵性ですもの、早々に倒してしまわないといけませんね」 雪だるまの素性や合体を何気に楽しみにしている者達は比較的多いが、彼らの気持ちが今ひとつ理解できずにいるのが如月・真人(BNE003358)である。 合体するのはいいが、目からビーム撃って少年少女を殺害している。むしろスプラッター映画にでも出てきそうな敵だ。むしろ畏怖すべき対象ではなかろうか。 「は、早く任務を終わらせましょう!」 そう言って偶然後ろを振り返ったその先、 「雪玉……!」 巨大な雪玉が一つ、ゆっくりとした速度で彼に向かい転がって来ていた。 真人は急ぎ全員に連絡を入れると残るリベリスタ達は即座に集合する。 そんな中で雪玉の合体が始まった。 「わぁ! すごい! カッコイイ!」 ルアが一番間近でキラキラとした眼差しを向け、楽しそうに雪玉の合体を見守っている。しかしただ見ているだけなわけは当然なく、自己強化を発動させており彼女のキラキラが増して行く。 他のリベリスタ達も同様。合体の邪魔は一切せずに見学と強化を同時にこなしていた。 「なるほど。聞くのと見るのじゃ大違いだな」 音にまで拘った渾身の合体シーンである。ロボ好きの『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)としては、その熱意に唸るしかない。 これが本物のロボだったならばテンションも更に急上昇だが、それは贅沢というものだろう。 それにロボでも雪玉でも、これからやるべきことは戦闘なのだから。 「合体……だとか、変身している間は手を出さないのが鉄則だったかしら……?」 ヒーローものについて淑子は詳しくないが、物語的な約束事の美学は理解できる。それに今回は合体することでこちらが有利になるのだから、あえて邪魔する理由がない。 それにしても何故機械音なのだろう? という疑問はあるのだが。 「まあ、合体シーンを待つのもお約束だな」 神秘だし仕方ないねって顔で、疾風は両腕を組みつつ合体が終わるまで見届ける態勢だ。 「何か惜しいんだよな、もっとこうガキーンガキガキーンとしてる方が……仕方ないか雪だるまだし」 その擬音や合体について、最後まで残しておいたお気に入りのはんぺんをモキュモキュしながら喜平が感想を零した。 それが原因なのか、雪だるまの合体音がより臨場のあるものにレベルアップした。 その戦闘に全く関係ないグレードアップに、「おおっ」と『鋼仁義侠 百万扇壁』加賀乃 魅ヶ利(BNE004225)が気分を高揚させる。 そうして最後まで合体を終え、背後に『ピシャーン』と雷が落ちるエフェクトまで追加して雪玉はユキダルマーンとなったのだった。 「天晴! やはり合体は浪漫じゃな」 この見られたいからこその頑張りようは認めてもいいと彼女は拍手する。されど相手は討伐すべき敵であるエリューション。 久方ぶりの戦闘ではあるが、情けない格好は見せられない。 気分を戦闘に切り替え、魅ヶ利はユキダルマーンに対し構えをとった。 「加賀乃、推して参る」 ●たたかう雪だるま 合体が終わり敵も味方も満足したところで、ルアが動いた。 「私は雪風と共に舞う花。雪だるまなんかに負けたりしない!」 超高速で作られていく動きに純白の魔術機甲Gypsophilaが美しく煌く。 「閃光は白く速く高みへ――L'area Bianca(白の領域)」 彼女は白刃の霧で包みユキダルマーンを切り刻んだ。 オープニングヒットは奪えたが、白のヴェールを吹き飛ばす二本のレーザーが放たれる。幸い、戦闘開始と同時に皆がそれぞれの持場へ散っていたため射線上には誰もいない。 「此方も変身!」 ビームをやり過ごした疾風は幻想纏いを起動させ、蒼の鎧を身に纏う。 そうして手にしたK10C[陽炎]にて、マフラーへと物理弾を撃ち込まれていく。 「俺も続こうかな」 巨銃、打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を高速旋回させることのより発生させた烈風をユキダルマーンへと叩き付ける。 揺らぐ雪塊から二つの手袋が飛んだ。けれどそれは旋風によって外れたものではなく、自らの意志で射出されたものだ。 双手が襲いかかる相手は、クロスジハードを発動させて一瞬無防備となっていた晃だ。左右から連続で叩く打撃を交差した両腕で受けるが、その下から除く表情には笑みが浮かんでいる。 「見た目よりも厄介な相手だが……もう遅い」 十字の加護はすでに仲間達へと届いていた。ユキダルマーンの背後から淑子の大戦斧が振り上げられている。 せっかく見事に作られた雪の人形を壊してしまうのはなんだか勿体無い気もするが、人に害を為すのならば話は別だ。 ユキダルマーンのマフラーがはためき背後へと回るが、それこそが彼女の狙いだ。鋭い一閃が既に傷んでいる赤い布を切り裂いた。 まず一つ。淑子が確かな手応えを感じたその時、ユキダルマーンの木の枝から二本のビームサーベルが生え、スピンする。 巨大な武器を振りぬいたばかりの状態からの反撃に回避は間に合わず、連斬にその身を裂かれる。 「っ痛!」 そこに追撃のニンジンが身を抉り、流血が伴う。 焼かれるような痛みと共に弾き飛ばされた先に、櫻子が癒しの息吹を飛ばす。 「痛みを癒し、その枷を外しましょう……」 「ありがとう、助かるわ」 「思ったより隙がありませんね」 ユキダルマーンはE・ゴーレムの集合体。それ故、バラバラに動かれるよりはずっと各部位を狙いやすい。 しかし言い換えるならばそのパーツ一つ一つに個別の意志があり、全てが戦力となるのだ。 続け様にバケツから火球が連続発射されリベリスタ達に降り注ぐ。 半分以上は当たることなく雪面へと落ちるが、一部はリベリスタ達の身を焼く。 真人は火球が直撃した者達に急ぎ回復を施していく。 「むぅ……やはり体が鈍っておるのぅ。巧く動かん」 「一箇所に固まらず広がりながら戦っていきましょう」 「そうだのぅ、だがまずはお返しじゃあ」 火球を避け損ねていた魅ヶ利は、このままやられっぱなしは御免だと言わんばかりに、今度は自分が燃え盛る拳でバケツを殴り付ける。 中程から凹んだバケツを被った雪だるまは、再度手袋を射出。 「させるか!」 襲いくる手袋二つを叩き落とてやろうと壱式迅雷で疾風が舞う。 伸びた蹴り足に右手は弾き飛ばされるが、連続の打撃を素早く潜り抜けた左手が背中を打つ。 「ぐぅ……がはっ」 背後からの衝撃にぐらついたその隙を突くように、またも射撃されたニンジンがドリルのように脇腹を抉り鮮血が舞う。 次々と連携を放つその姿は見かけとは裏腹に戦闘マシーンと呼ぶに相応しい姿だった。 されどユキダルマーンはまだ知らない。自分の敵対する者達が想像もし得ない修羅場を生き抜いていたことに……。 ●アフター・スノーマン 戦況の変化は少しずつ始まった。 ユキダルマーンの武装が当たらなくなってきたのだ。 元々は九つのパーツから構成されていた彼の武装は決して少なくない。しかしながら、その種類と射程はある程度限られてくる。 リベリスタ達はそれらの動きや距離を読み、互いに近寄り過ぎずユキダルマーンの攻撃に対応していく。 「残った手はもらうわ」 先程近距離で迎撃された淑子は、エアリアルフェザードの旋風で枝の穂先に残っている左の手袋を八つ裂きにした。 ユキダルマーンには回復手段がなくパーツごとの耐久力はそこまで高くない。長期戦になればなるほどこの事実が仇になった。 攻撃手段として一番自由度の高い手袋を失ったことで、ユキダルマーンの連携力は落ちる。 ならばと、今度は頭部を一度切り離してその胴体を大外から回り込むように突撃させた。そこへ疾風が真っ向から躍り出る。 貫かれた脇は、櫻子が真っ先に治癒していた。彼女は常に暗視で周りの状況を正確に把握し、後衛として正確な援護に徹しているのだ。 ユキダルマーンは一番巨大な身体パーツを囮にするように、横合いからニンジンを発射。 「二度も同じ手は食わない」 ニンジンだけに。とは付け加えなかったが、疾風は既にそれを読んでいた。 「そこだ!」 先の攻撃を外した分、集中力を高められている。突撃するニンジンはSVアームブレードの刃が真っ二つに切り裂き、力を失ったそれは回転を止めて音もなく雪面へと落ちた。 パーツの一つは破壊したものの、それで雪玉が止まるわけではない。 ビームサーベル二本を展開させ敵を薙ぎ払おうと疾走する前方に、ルアが突貫する。 「雪だるまは小さくて可愛いのが良いのよ! 勝手に動きまわって他人の命を奪うとかダメなの!」 ビームサーベルの動きはわかってしまえば単調だ。ユキダルマーンのスピンを始めるが、ルアは回転する脇を走り抜けることを選ぶ。 掴む二刀が悪の浄化作用を持つ輝く粒子を帯び、白の風――吹き抜けていく風のように自由な軌道で左の枝を刻んだ。 武器の一つを破壊され軌道を変えようとスピードを落とした刹那、すれ違い様に晃の鉄扇がもう片割れの枝を切り落とした。 「これで両腕は完全に死んだな」 両腕に半分近いパーツを使用しているユキダルマーンにとって、このダメージは甚大だ。 とにかく雪玉は加速を優先し、頭部と再合体する。顔を俯かせ起死回生のために放たれるのはバケツのビーム砲。 それに対して真っ向から挑むのは魅ヶ利だった。 できるだけ身を低く下げて、砲撃の下を疾走する。身体も十分温まり勘も取り戻してきた。ならば後は行くだけだ。 「せいやぁぁぁ!」 彼女がユキダルマーンに辿り着いくのとビームが途切れたのは同時。紅蓮と名付けられた炎の拳が突き上げられ再度打ち抜く。今度こそバケツは歪にへし折れ破壊されたのだった。 「後もう少しです!」 真人はずっとユキダルマーンの攻撃射程を計算しながら行動しており、できるだけ敵の範囲外から味方の援護に回って、インスタントチャージで喜平に自らの力を分け与える。 ここまでの戦いで他のパーツを失い、取り残された頭部と胴体だけでは使える武装もあまり残されていない。 少ない選択肢から選ばれたのは一番攻撃力を持った口部分から射撃技。そのタイミングを読んでいたように喜平は一気に距離を詰める。 「悪いな。それが狙いだ」 エネルギーが収束されていくその部位に、喜平の銃口が突きつけられ弾丸が撃ち込まれる。 行き場の失った力は暴発し、頭部の一部が砕け黒い煙が上がった。 一番余力のあった頭部さえも深手を負ってしまう。さらに銃弾と自爆の反動で揺らぐ胴体に、淑子が放つ二発目のエアリアルフェザードが直撃する。 「これで決めるぞ!」 「おう!」 疾風の掛け声に晃が応える。二人はまるでヒーロー物のような連携で同時に駆け出し、胴体を晃の両鉄扇が、頭部を疾風のブレードがそれぞれ断ち切った。 本体とも言える部分を破壊されたユキダルマーンは、その場で炎を吹き上げる。それは戦いの続行ではなく、有終の美を飾るための爆破四散だった。 「雪だるまが爆発した……」 だから雪だるまが何で? という意味を込めた真人の言葉に、魅ヶ利は知ってか知らずかうんうんと頷く。 「やられる時までロボットの矜持を貫くその姿勢だけは、最後まで天晴なやつじゃった!」 燃え盛る炎を見据え、晃はぽつりと呟く。 「今度生まれてくる時は普通の雪ダルマにな」 合体はロマンだ。だけど迷惑かけて暴れるぐらいならば、誰かに組み立ててもらった方がきっと雪だるまも幸せになれるはずだろう……。 所詮は演出用のためか、炎はすぐに収まり辺りには静寂が戻った。 「カップルが来る前に退散しよう。恋愛の邪魔はしたくないからな」 ユキダルマーンの撃破を見届けた疾風が第一声を上げる。ルアもそれに同意したように頷く。元々一番彼らを気にしていた彼女からすれば自然な選択だろう。 戦闘で付いた服の汚れをハンカチで払っていた櫻子も、穏やかに微笑み仲間達に一礼する。 「ん、無事に終わりましたね。では、私はこれで」 「ねぇ、ちょっと待って」 解散の空気だった流れをそこで止めたのは意外にも淑子だった。彼女は爆破する前にユキダルマーンが鎮座していた場所を一瞥してから皆へ視線を投げかける。 「わたしに提案があるのだけど……」 その後、再び穏やかな日常を取り戻した公園に、一組の男女がやって来る。まだ幼さの残る顔立ちの二人は幸せそうな雰囲気を漂わせつつ、どこか浮き足立っているようにも見えた。 微妙な距離感を意識し合いながら歩く中で、少女はそれを見つける。 「ねぇ、アキ君。あれ見て!」 「あれって……」 少女は思わず無邪気にそれへと駆け寄る。嬉しそうな少女の微笑みに釣られて少年もまた顔を綻ばせる。それを見るために並ぶ二人の距離は自然と近付いていた。 「可愛いねー。誰が作ったのかな?」 そこにあるのは、二人の幸せを祝福するように満面の笑みをした雪だるまだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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