●倍返し 中学校の校庭に突然爆音が鳴り響いた。 暴走したバイクの隊列が一気に校庭に突っ込んでくる。 放課後で帰宅しようとしていた生徒たちが次々に跳ね飛ばされた。 バイクに乗っている若者たちは特攻服に身を包んでいる。白地の襷には赤字で夜露死苦喧嘩上等と書かれていた。彼らはこの辺りで暴れている極めつけの不良たちだ。 リーゼントの金髪をしたリーダーが手榴弾を投げつけて辺りを爆破する。 黒刃陰之は一人残らず殺害する気でいた。黒刃はもともとこの名門中学校を挫折して中退した経験を持っていた。それからの黒刃の人生は暗黒だった。 こういった勉強ばかりしている奴らが将来の日本を駄目にしている。そう考えた黒刃は中学校を仲間の不良たちとともにぶち壊す計画を建てた。 「今日はお礼参りの日だ。俺を苦しめた先公やこの学校に倍返ししてやる」 爆発に巻き込まれて校舎の壁が吹き飛んだ。さらに今どきは滅多にいないスカートの長いスケバンがマシンガンをぶっ放して次々に生徒たちを撃ち殺していった。 生徒たちは不良から必死に逃げ出した。 阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されて辺りはすぐに血の海と化そうとしていた。 ●お礼参り 「中学校の校庭にフィクサードが現れて生徒たちを無差別に襲っている。このままでは大量の犠牲者が出る恐れがあるわ。その前に何とかして彼らを撃退してきてほしい」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)が焦った口調で事態を告げた。急いでブリーフィングルームに集まったリベリスタに説明を加えて行く。 暴走族のリーダーである黒刃が仲間の不良とともに出身中学を襲った。彼らは中学校に恨みを持っている元優等生たちだった。先輩からイジメを受けたり先生に体罰を受けたり勉強に挫折した経験から中退した者達だった。その後の人生は彼らにとって全く納得のいくものではなくその人生の失敗の原因を彼らはすべて中学校時代のせいにしている。 「彼らの恨みは全く分からないものではないわ。でもだからといって無関係な生徒たちを巻き込むわけにはいかない。現場にはすでにE・アンデッドになった者達もいるから気をつけて行ってきてね。無事に彼らの横暴を食い止められるように祈っているわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月16日(木)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●躓いた逆恨み 校庭で大型バイクに乗った黒刃達が生徒に襲いかかっている。アメリカンネイキッドタイプのツアラーだ。ステップをガリガリ削りながら乱暴な運転をしている。 車体を大きくバンクさせて華麗な高速殺人スラロームを披露してくる。『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)はバイクを止めるべく正面から両手斧を振り回して突っ込んだ。 「挫折したのはテメェらが弱いからだ。力を手に入れてやってる事が、自分が躓いた逆恨みと来た。断言してもいいがテメーらここで躓かなくとも失敗してたさ」 赤髪を逆立たせたランディは黒刃達に叫んで挑発した。鋭い眼光で睨んでこちらに注意を向けさせる。無茶苦茶な運転で盗んできた単車を痛めつけるのもランディにとっては許せなかった。ジャミングを展開させて仲間が自分から離れないように喚起する。 突っ込んできたランディの攻撃をいきなり受けて黒刃達は後退した。 「阿呆くせえ話だぜ、ったく……本当の餓鬼が力なんて持ったら碌な事にならねえな」 『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)は拳を握り締めた。不良たちの姿を見て自分にも昔に似たような時期があったと微妙に顔を顰める。だが、ここまでひどくはなかった。分別のつかない奴は所詮ガキに過ぎないと気合を入れて拳を叩く。 「よぉ、どうも随分派手に暴れてるみてえじゃねえか。──俺もその喧嘩に混ぜてくれやぁ!」 慌てて校内への侵入を阻止しようと横から空手と柔道部員が束になってやってくる。猛は圧倒的な速度を武器にして式舞を展開し次々に部員たちに強烈な電撃を炸裂させた。 『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)も猛とともに真正面から突っ込んでいく。すぐに黒刃が現れて殺人バイクで体当りしてきた。銀次は血を噴きながら後方へと吹き飛ばされてしまう。続いて仲間の剣道部員が銀次に集まって嬲りかかってきた。 すでに校庭内は敵味方混じった乱戦に突入している。 「神聖なる学び舎を襲撃するなんて……絶対に許せません! 学ぶ事で得る物の大切さをきちんとわかっていただく必要がありますね」 離宮院 三郎太(BNE003381)は突っ込んでいく仲間に翼の加護を施す。後衛の位置から仲間のリベリスタ達が見渡せる場所で支援をする。絶対に今回は自分が倒されるわけにはいかなかった。特に黒刃には一度戦って敗れている。今度こそはリベンジをするために耐久性を高めて準備を万全に整えていた。 「だいじょうぶ。たすけにきたよ!」 『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)はよく通る声で叫んだ。逃げ惑う生徒に声をかけて避難するべき場所を支持する。アッパーを放って敵を挑発しながら反対側に引き寄せてその間に生徒を逃がす。旭は笑顔で落ち着いて、と励ました。マイナスイオンで気持ちを穏やかにさせて安心させる。 「アンタ達ボサっとしてると死ぬワヨ。アタシらが守ってあげるからこっち来なさいナ」 異様な威圧感を誇る『二丁目の女王』マダム・フォンティーヌ(BNE004755)が前線に立っていまだに腰を抜かして逃げれない生徒たちに手を差し伸べた。 ようやく起きだした生徒たちはマダムによって誘導されるが、すでに乱戦模様で辺りに逃げ場は残されていなかった。マダムは生徒に二人一組で窓ガラスを割らせる。体当りして校舎内に逃げこむ作戦を生徒たちに指示した。 「近くの教室に集まって出入り口を塞いどきなさいな。外出ちゃ駄目よォン。その内警察が迎えに来てくれるから」 怖い笑みを浮かべて生徒たちに言い含める。その時、後ろから剣道部員達が後ろから竹刀を振りかぶってきた。マダムは背中で代わりに攻撃を受けた。歯を食いしばりながら必死になって防御する。激しい攻撃に晒されながらマダムは耐え続けた。 ●誰も殺さないで 校舎の端から敵に気が付かれないように気配を遮断した『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が校舎を駆け登っていく。弓矢を構えて校庭にいるリベリスタを狙い撃とうとしていた敵に大鎌を振りかぶる。 慌ててアンジェリカの存在に気がついた弓道部員が一斉に矢を放ってきた。アンジェリカは飛んできた矢を大鎌で一閃して叩き割る。 後ろから飛んできた矢をアンジェリカは華麗に跳躍して交わした。短いスカートの裾がふわりと翻るのと同時に大鎌を大きく振り上げる。 恐怖に陥った敵の頭に刃を叩きつけた。五重の残像を残して敵は落下した。地面に叩きつけられた弓道部員はそのまま動かなくなる。アンジェリカは敵の断末魔を聞き届ける暇もなく次なる敵に向かって壁を駆け巡りながら大鎌で襲いかかっていった。 大きな翼を広げて舞い上がった『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)は一気にアーチェリー部員のいる三階まで到達した。短く鋭い矢を放ってくるアーチェリー部員に対して、セラフィーナは回転しながら上昇して矢を軽やかに交わしていく。 右足を振り上げて勢いを付けると敵に急降下した。 柳眉な東雲の刃を操って敵の懐に飛び込む。光の飛沫が飛び散るような刺突を繰り出す。鋭い刃が敵の体に突き刺さった。 アーチェリー部員は落下して地面に叩きつけられた。 三階の敵はアンジェリカとセラフィーナの華麗な攻撃によって着実に数を減らした。縦横無尽に動き回る彼女たちに自慢の弓矢が当たらない。ついにセラフィーナとアンジェリカが敵を挟み撃ちにして残りの部員を駆逐した。 校庭では大型バイクをぶっ放していた黒刃が表情を強張らせていた。セラフィーナとアンジェリカの存在に気がついていたが、目の前の敵を対処するので精一杯だ。 「お前らよくも俺達の喧嘩に手を出したな。ぜってえタダじゃおかねえぞ。ここから生きて帰れると思うな。全員まとめてぶっ殺してやる!」 黒刃は部下の桜庭や岬達に指示を出した。桜庭はアッパーを放ってリベリスタ達の注意を引きつけるとその隙に岬が強烈な閃光を放ってくる。巻き込まれたランディや猛達は顔をしかめる。一時的にその場を後退せざるを得ない。 三郎太は傷ついた仲間を癒すために後ろから奮闘した。 「大丈夫ですっ。フォンティーヌさんとボクとで回復は切らしませんっ!!」 マダムと背中合わせになりながらお互いの領域をカバーし合う。傷ついたランディと猛にすかさず走り寄って回復を施した。 三郎太に援護を受けたランディは激しい敵の攻撃を凌ぎ切った。周りの味方に注意しながら両手斧を振り回して岬を巻き込んだ。リーディングで心を読み取ろうとするがジャミングで妨害されてしまい、代わりに容赦なく切り刻まれて岬が倒れる。 ランディは三階に行っていたアンジェリカとコンタクトを取った。一般人が避難し終えたのを見計らって電子の妖精を飛ばした。校内のセキュリティに侵入してシャッターや防火扉を閉めさせる。アンジェリカとセラフィーナが協力して中の生徒を保護する。 「力を持ってるのがお前らだけだと思ってたのか? だったら、お生憎様だな。前世から出直して来いや、阿呆共! 手加減なんざしてやらねえ、全員纏めて来い!」 ようやく一般人を避難させて本気が出せると猛は吠えた。まずは挑発に乗った剣道部員が竹刀を片手に一斉に襲ってきた。 猛はまっすぐに突っ込んでいって振り下ろされた竹刀を掴みとった。そのまま敵の身体を掴み取ると一気に力を入れて地面に叩きつける。 「おねがい――もうだれも、ころさないで」 旭は向かってくる剣道部員に優しく問いかけた。だが、敵は聞く耳を持たず眼の色を変えて竹刀を振り回してくる。旭は仕方なく腕に業火を纏った。突っ込んでくる敵に思いっきり振りかぶると一気に炎に巻いた腕を叩き込んだ。 剣道部員は炎の中に絶叫しながら崩れ落ちた。 ●人を傷つける痛み 「あのサァ、良い齢して餓鬼ぶンのも大概になさいな」 マダムが人質に変装していた吾妻の奇襲を受けて思わず言った。 敵は縦横無尽に銃を操って攻撃を仕掛けてきた。人質をすべて逃したマダムは奇襲を受けながらも敵の苛烈な攻撃を凌ぎ切った。ランディも気がついて何とか注意を逸そうと渾身の一撃を吾妻に食らわしてマダムへの攻撃を止めさせる。 「あいつが悪いこいつが悪い時代の所為学校の所為、誰かの所為にばかりしてりゃそりゃァ楽でしょうけどネェ。そういうの、すンげェ格好悪いワよ?」 「説教なんて大キライ! このバアア、八つ裂きにしてやるわ」 過激な弾幕に巻き込まれて流石のマダムも立っていられない。その時、三階の敵を倒したセラフィーナが急降下してきて敵の背後を突く。 「人を殺すのなら、自分も殺される覚悟を持つべきです」 罪には相応の罰を与えるためにセラフィーナは鋭い東雲の切っ先で抉る。 「人を傷つける痛み、その身で知りなさい!」 切り裂かれた吾妻が血を吐いて崩れる。その隙に三郎太が間に入ってそれまで懸命に耐え続けていたマダムに回復を施して後ろに下がらせた。 「今回ボクは回復に専念しますので攻撃、よろしくお願いします!」 三郎太が勇ましく叫ぶと呼応したかのようにアンジェリカが壁を駆け下りてきて吾妻の背後から大鎌を一閃して切り伏せた。 「君達が学校で辛い目にあった、その事を否定する気はない。辛い目に遭わせた人は謝罪すべきだとも思う。でも不良という今の姿になる事を選んだのは君達自身 でしょ? それが辛いっていうなら間違っていたのは君達自身じゃない。自分が間違っていた事を何かのせいにするんじゃないよ!」 アンジェリカは残った桜庭と黒刃に全身のエネルギーを解き放った呪力の月で呪った。二人は逃げることができずに攻撃を受けて眉間を歪ませる。 「つべこべうるせえ。俺達は間違っていない。この拳で証明してやる!」 黒刃はそう言い放つと手榴弾を投げてきた。辺りに爆発が巻き起こってアンジェリカ達は後ろに吹き飛ばされるが、猛が後ろに回って彼女を何とか受け止めた。 「他人に非がないなんて言わない。悪意を持って傷つけるひともいるし、そのつもりがなくてもすれ違っちゃうことだって、世の中にはいっぱいあるよ。でもね――ほんとに全部、他人のせい?」 旭は桜庭の目を見て問いかける。キャンパスグリーンの澄んだ目でじっと見つめられて桜庭は思わず視線を逸らしてしまった。 「あなた達自身は、なにも選ばなかった? 目を逸らして、関係ないいまの在校生まで巻き込んでそんなの、ただの八つ当たり。子供の癇癪だよ。だから、止めるね」 旭が言い終わらないうちに目にも留まらぬ早さで飛び込む。 動揺していた桜庭は一瞬判断が遅れた。 旭はグラデーショショコラの髪を乱して迫る。ブーツを履いたスレンダーの足で回し蹴りを食らわした。顔面を砕かれた桜庭は呻きながらその場に崩れ落ちる。 ●下らない喧嘩 残ったリーダーの黒刃は大型バイクで一足早く逃げ出そうとした。爆音を奏でながら入り口の方へと駆けていこうとする。このまま逃げすわけには行かないと、猛が前に立ちはだかってバイクに鉄拳を叩きつけた。 「因果応報って奴だ。てめえのした事は、てめえに返ってくンのさ!」 バイクが転倒してて黒刃は反動で地面に叩きつけられる。そこへランディがやってきて容赦なく両手斧を黒刃に向かって突きつけた。 「その力があんならこの界隈でも成り上がれたろ? それもしないで粋がって過去に八つ当たり、それがテメェらの器。お前ら俺の一番嫌いな弱者だぜ。そこらの震えながら生徒やダチ守ろうとしてた連中の方が余程強い」 「お前に言われる筋合いわねえ。いいだろう俺の技を喰らえ!」 黒刃は超幻影を使用して自身を大量に作って撹乱してきた。それでもランディは全く動じずに斧を振りかぶって言い放つ。 「抗う事が出来る幸運を手にしてそれじゃあ流石に同情出来ん。殺してやる、死ね」 激しい斧の刃で幻影諸共引き裂かれた黒刃は血を噴いて倒れた。 黒刃達が討伐されて無事に校舎に避難していた生徒たちはようやく解放された。幸いにも迅速にマダム達が避難誘導をしたお陰で命に別状はなかった。 「ったく、しょーもねえ喧嘩しちまったぜ……。面白くもねえ」 猛はアークへと事を済ませた、と連絡を入れて去り際に独りごちた。聞く耳を持たない黒刃達はそれだけに強力だった。リベリスタたちも無傷ではいられなかった。 「皆さんともあれ無事で本当に良かったです!」 三郎太は傷ついた仲間をマダムとともに癒して回った。最後まで倒れずに戦い抜けたからこそ誰も死なずに済んだと安心した。 アンジェリカも倒れて動かなくなった黒刃たちを見て思う。もし彼らにボクの神父様のような人がいれば道を踏み外さずに済んだのだろうかと。 たまたま運良くボクはいい人に巡り会えただけなのかもしれない。一つの些細なことがその後の歩みをガラリと変えてしまったならそれこそ運命とは残酷なものだ。 いつの間にか神父様のことを考えているうちに少女の頬から熱いものが迸っていた。亡くなった一般人やそして黒刃達が安らかに眠りにつけるように祈りを込めて歌を捧げる。 凛とした音色が無残な戦場の亡骸を包み込むように響いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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