下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






対決・ブラックからあげ団!


「ひとぉーつ! 唐揚げには無断でレモンかける!」
「「唐揚げには無断でレモンをかける!」」
「ひとぉーつ! ついでにマヨネーズもかけてやる!」
「「ついでにマヨネーズもかけてやる!」」
「ひとぉーつ! 夜中に限って唐揚げを見せつける!」
「「夜中に限って唐揚げを見せつける!」」
「ひとぉーつ! 山ほど注文しておいて結局残す!」
「「山ほど注文しておいて結局残す!」」
「我々はぁー! ブラックからあげ団! 我々の目的はなんだ!」
「「唐揚げで、世界崩界!」」

 薄暗く、そして広い部屋の中。
 三角ずきんを被った男たちが無数のろうそくに照らされていた。
 昨今重宝されるLEDろうそくである。団の上にあがっていたずきん男が光が照明リモコンを操作し、部屋をホテルラウンジのごとく明るくした。
「諸君、今宵もよく集まってくれた。今も動画サイトなどへ『美味しい唐揚げを揚げてみた』や『唐揚げを好き放題食いまくってみた』などの動画を絶えずアップロードしている最中だ。生放送も行なっている。この動画を見た世界中の愚民どもが飢えて暴れる光景が目に浮かぶようでは無いか!」
「「ゲーッゲッゲッゲ!!」」
 一様に腹を抱えて肩を上下に揺らすずきん男たち。なんか知らんが笑っているらしい。
「そんな我らだが、今宵は新たな作戦が提案された。提案者、前へ」
「ハッ!」
 新たなずきん男が壇上に上がり、右手を高く掲げた。
「ジークカラアゲ!」
「「ジークカラアゲ!」」
 同様に手を高く掲げる男たち。
 壇上のずきん男は興奮した様子でマイクを握った。
「諸君にはまず、この男を紹介したい。さあ連れてこい!」
「ハッ、こっちへ来い!」
「おーおーよしおさん、もうご飯の時間かね」
 なんかよぼよぼのおじいちゃんが壇上に引っ張られてきた。
 その姿を見て、一同が低く唸った。
「唐揚げに精通した我が同胞たちなら分かるだろう。そう、創業六十五年の老舗『からあげばるかん』店長、原唐・揚蔵だ! 彼を今宵、拉致することに成功した!」
「「おおおおおおおおおお!(重低音)」」
「彼がつい最近開発したという新メニュー『ふぁらんくす改二』……これを店舗販売前に入手することに成功した」
「「おおおおおおおおおお!(重低音)」」
「これのレシピを一般公開すると共に、動画サイトで食べているシーンを放送しまくり、平行して安くて油っぽい唐揚げを全国で販売しまくる。これによって人々の生活に安っぽい油ものが増え低所得者の肥満率が増加し誰も彼もが日常的にイライラしはじめるという劣悪な社会環境が構築できるのだ。そして目指すは――!」
「「唐揚げで世界崩界!!」」


「なんということ……唐揚げは世界平和のためにあるもの。それを……許せません」
 壁に背を突け、リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は強く銃を握りしめていた。
 その横で目頭を押さえる新田・快(BNE000439)。
「すまない。俺が留守にしていた間にこんな事態になっていたとは……」
「シュゴシンのせいじゃないよ。あのおじいさんが日課の散歩をしているところでナンパされたんだ。あまりの平和的会話に誰も拉致の手口だと思わなかったらしい。してやられたね……」
 同じく目頭を押さえる御厨・夏栖斗(BNE000004)。
 その向かい側で、紫野崎・結名(BNE002720)が伊呂波 壱和(BNE003773)の肘を小突いた。
「あのー、みなさん、なぜこんなにしんけんそうなのですか? からあげ、たべたいんですか?」「ボ、ボクに言われても……その……」
 ちらちらと視線を向ける壱和。その視線を受けて、喜多川・旭(BNE004015)はこほんと咳払いした。
「えっとね、日本唐揚協会っていうのがあって、そこの理念は『唐揚で世界平和』なのね。なんでも美味しい唐揚げを食べてる間はみんな幸せになるから、世界でみんな同時に唐揚げを食べる日を作れば、その日だけでも世界が平和になるだろうっていうアレで……その、この人たちは真逆のことをしようしてるってこと、なんじゃないかな」
「説明してるようで何も説明してませんよっ」
「しょ、しょうがないでしょ! なりゆきなんだもん!」
 頭を抱える旭。
「新田さんが『飲みに行こうぜ』っていうからついていったらこんな事態に」
「ボクたち八割未成年なのに、なんであんな誘い文句に応じたんでしょうね」
「だって唐揚げ食べ放題だっていうから」
「なのっ!」
 テテロ ミーノ(BNE000011)が変なポーズで応じた。
 詳しく説明せねばならない。
 親指と人差し指と小指を立てて顔の前へもっていき、☆が出るほどのウィンクと共にきゅっと身体を縮めたかんじのポーズで、テテロ ミーノ(BNE000011)が立っていた。
 あれ、このシーン前にもどっかで書いたな。
「それより、ひよこちゃんが飛び込んでいっちゃったの」
「え……」
 くいっと指さすテテロ。
 一斉にその方向を見ると、両腕を広げてずきん男たちに飛びかかる閑古鳥 比翼子(BNE000587)の姿があった。
「お、おまおまえらあああああああああうわああああああああああああ! からぁ、からあげは、おか、おかああさ、あああああ! それっ、のこっ、のこすって、あああっ! いうのは! ぼう! ぼうとく! ぼっ! ぎゃああああああ! ああああああああ! すて、すてるなあ! からあげをすてるなあああああ! うあああああああ!」
「暴走……!?」
「落ちたからあげを喰ってる?」
「うっ……」
「汎用人型決戦ごっこしてる場合じゃない! 俺たちも行くぞ!」
「はい!」
 身を潜めていた通路から、集会場へと飛び込んでいく。
 その先頭で、リリは銃の安全装置を外した。
「さあ、唐揚(おいのり)をはじめましょう」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ リクエストシナリオ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月16日(木)23:36
八重紅友禅でございます
日本唐揚協会ってなによと思った方はれっつぐぐり。深夜に見たらダメダメよ。

このシナリオをすごくざっくり説明すると、フィクサード集団をこらしめてとらわれの一般人を救い出す話です。
懲らしめ方、救い方、それらは皆さんなりの解釈で構いません。やり方もお任せします。
ちなみにおじいさん腹唐・揚蔵(はらから・あげぞう)さんは完全にボケたじいさんですが唐揚げに関することだけは急にキリッとしだす職人肌の人です。それだけです。

フィクサードは二十人くらいいますが、そのうち十五人くらいは雑魚の集まりです。
そんな(二層しかない)ピラミッドの頂点に君臨する闇唐揚五天王というやつがやたら強いので、この部分だけ激戦を繰り広げることになるでしょう。
ジョブ構成はぶっちゃけよくわかっていません。なりゆきなので。何が来てもいいように備えておきましょう。

それでは、楽しいひとときをご堪能ください。

※相談期間1日目が実質数時間程度のため相談日数が希望より1日増えています
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ビーストハーフソードミラージュ
閑古鳥 比翼子(BNE000587)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
フライエンジェホーリーメイガス
紫野崎・結名(BNE002720)
ビーストハーフレイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
ナイトバロン覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)

●それでは本編をダイジェストでお楽しみください
「きばのないけものどもよ――」
 舞い散る羽根と乱反射。
 闇を裂いて走る黄金色。
 所詮この世は弱肉強食。
 されど許せぬ暴食の徒。
「あたしが一匹のけものとして、きさまらをくらってやる!」
 くれないの双眸が炎よりも燃え、けものは飛んだ。
 それは空を飛ばぬ鳥。
 それは人ならざる女。
 彼女が翼を振るたびに、鋭い羽根が命を狩らんと飛び荒んだ。
 誰かが自分を抑えている。
 やめろと知った誰かが言う。
 死は悲しみを生むのだと、ひとは言った。
「ヒトの記憶など、三歩前に捨ててきた」
 彼女は言って、風となった。
 父よ母よ。世界を憎んだ悪魔の徒よ。
 怒りと悲しみがゆえ、彼女は飛んだ。
「あいつらをさばいて、小麦粉つけて揚げてやるんだ! 命に感謝して食らってやるんだ! それを邪魔するな、きみもからあげにしてやろうか!」
 光に包まれ、彼女はとりとなった。
 それは空を飛ばぬ鳥。
 それは人ならざる女。
 世界で最も弱く、最も輝かしいもの。
「ひよこ――いくりぷす――!」
 ヒーローになりたかった。
 哀しみから誰かを守りたかった。
 ただそれだけだったのに。
「キイイイイイイイイイイック!!」

 ……という夢を、見ていた。
「あ、あたしメロンソーダで」
 彼女の名は『D-ブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)。
 出落ちで出番を使い切った女である。

●本編を流すと言ったな? ……あれは嘘だ。
「挨拶は抜きだ、略式かんぱい!」
「「かんぱーい!」」
 掲げたグラスを光の速さでカラにした『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は、風の如くビール瓶を持って席を回りはじめた。
「やーどーもどーも。からあげ食べてるかい?」
「ああどうもどうも」
 ビール瓶を傾けられたなら空のグラスを出さねばならない。
 それは天地開闢より定められた掟である。
「お、この唐揚げビールに合うねえ」
「さすがは老舗が完成させた『ふぁらんくす改二』というべきか」
「あの時夏栖斗がコーチンを持ってこなければどうなっていたかな」
 三角頭巾の男と快は回想シーンを展開した。もわんもわん。

「じいちゃん、しっかりして! この名古屋コーチンを美味しく唐揚げにしてほしいんだ! じーちゃんだけにしかできないんだ!」
「なに、コーチンだと?」
 捌く前のとりを献上する『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)。
 それを見て、唐揚職人・原唐揚蔵は瞳をギラリと光らせた。
「どうしたのおじいちゃん」
 揚蔵の服の裾を、『歪な純白』紫野崎・結名(BNE002720)がぐいぐいと引いた。
 しょぼしょぼした目になって振り返る揚蔵。
「……おじょうちゃんは誰じゃ?」
「孫のゆいなだよ!」
「わしには息子すらおらんのじゃが……」
「メガシンカしたんだよ」
「そうかそうかめがしんかか」
「ゆいなおじいちゃんの唐揚げだーいすき。だからこっちに行こ」
 結名は『一般人通ります』の旗を振りながら荒ぶる戦場を横切った。主に荒ぶってたのはトリだったし、もっというとトリしか荒ぶってなかったが、些細なことである。
「一般人でーす、道開けてくださーい」
「そこの前衛よけて! あ、すいません今どけますんで!」
「射撃一旦やめてー、銃下向けてー!」
 綺麗にサッと避けたブラック唐揚げ団の中をゆうゆう抜けていくと、そこには業務用のフライヤーがあった。既に加熱済みである。
 揚蔵老人は急に職人の目つきになると、油をひとさじ取り上げて臭いをかいだ。
「油は悪くない。衣は薄く、塩は多く、ただしあえて薄味で整える。小僧、鶏はさばけるか?」
「ごめんいまヒヨコなだめるので精一杯! とり、いいな! あとで美味しいおかあさん食えるからな!」
「その台詞だけ聞くと猟奇的なんてものじゃないな」
「せわしない小僧だ。小娘、ゆいなと言ったな?」
「え、うん……」
 ぎろりとにらみ付けられ、結名は若干肩をこわばらせた。
 そんな彼女めがけて飛んでくるスローイングナイフ。
 咄嗟に振り向いて弾き上げる結名。
「ばっ……あなたたちばかですか! 流れ弾がこの人にあたったら計画もぱあですよ! わかってるんですか! もう!」
「わめくな小娘」
 跳ね上がったナイフを見もせずにキャッチする揚蔵老人。
「貴様の素性は問わん。わしの孫を名乗りたいなら、よく見ておけ」
 そうとだけ言うと、揚蔵老人は投擲用のナイフで鶏の首を切り落とし、凄まじい速さで捌いてしまった。手際だけで言えば熟練のリベリスタのナイフさばきを凌駕するほどである。
 適切な部位に分け、手早くしかし正確に混ぜ合わせた衣をまぶし、フライヤーに滑り落としていく。
 その姿、まさに職人のそれであった。

 回想終了。
「いやあ、まさか『歯ごたえのみに特化した唐揚げ』なんてものを作るなんてなあ」
「ビールはのどで飲む酒。味覚障害者ですら美味しく感じる飲み物だ。だからこそ歯ごたえと塩味だけが強烈に欲しくなる」
「特にこの唐揚げは外側がぱりっとしているだけで内側は純粋に弾力の強い鶏肉。油は軽く、ただ噛むことだけを意識している」
「名古屋コーチンという素材があったからこそ完成した唐揚げというべきか……」
「おじいちゃん、はい唐揚げー」
「おおありがとうケイコちゃん」
「ゆいなだよー」
「そうじゃったのう」
「あのおじいちゃん、唐揚げ作ってないときはずっとボケてるんだね……」
 ミルクティーのはいったマグカップを両手で覆い、『さいきょー(略)さぽーたー』テテロ ミーノ(BNE000011)はほふーと息を吐いた。
「おとなはあっちでかんぱいしてるけど、ミーノたちはこっちでごごはんべてようね」
「白ご飯は沢山あるから、どんどん食べてね!」
 業務用の大型電子ジャーからご飯を盛る『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)。
 (余談として書くが、電気炊飯器を電子機器にカテゴライズするのは相当無理があったので今回の炊飯器は借り物と思って頂きたい)
「こっちの唐揚げは向こうと違うの?」
「『ばるかんヲ級』だって」
「ふうん……」
 旭とテテロは同時に唐揚げを食べてみた。
 外側をカリッとさせたところは『ふぁらんくす』と同じだが、衣はやや厚めだった。
 熱を内側に残しておりまだ熱々い。歯を差し込めば先端に強い熱を感じる程にだ。
 慌ててほふほふとさせると、口の中にじゅわりと肉汁が広がるのが分かる。それも液体としてではなく気体としてだ。
 舌で香りを感じると言うと語弊があるが、香草やによって巧妙に香り付けされた鶏肉から、香りの凝縮された肉汁が噴き出しているのだ。それが内部の熱によってじんわりと気化し、やがて鼻から抜けていく。そこに唐揚げにありがちな肉っぽさや油っぽさは無く、上質な日本酒を飲んだときのような清楚感とフルーティーな甘みを感じた。むろん未成年の彼女たちが日本酒のうまさを知っているわけではないが。
「…………」
「あ、テテロさんがすごい真顔になってる」
 テテロは軋むような動きで振り向くと、ロボットみたいな口パクを始めた。
「隠された素材の旨味が溢れ芳醇な香りと刺激的な驚きに包まれる」
「え、いまのテテロさんが言ったの? 腹話術で誰かが言ったの?」
「次はお塩やレモンでたべるのー! あとはケチャップだよね!」
「あっ、戻った」
 その様子を見ていた『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は、湯飲み片手にちょっとだけ遠くを見た。
「なんだろう。ボク、ちょっとだけ方向性を間違えたような……決して何も間違えてないはずなのに」
 頭上にほわんほわんとした雲が浮かんだ。
 再び回想シーンである。

「みなさん……唐揚げは、好きですか?」
 至極真面目に戦いながら、壱和は三角ずきんの男たちに向かって言い放った。
「折角作られた唐揚げを残し、粗末にする。そんなこと、唐揚げにも料理人にも失礼です! そんな人に唐揚げを語る資格はありません!」
 大きな旗を掲げ、壱和は続けた。
「美味しい唐揚げを噛みしめて……唐揚げと出会った頃の気持ちを思いだしてください!」
「ごちゃごちゃ五月蠅いぞ小僧! そのようなきれい事で生きてゆけるものかあ!」
 三角ずきんを被った巨漢がおもむろに襲いかかってくる。
 咄嗟に身構えた壱和と巨漢……二人の間に青い影が割り込んだ。
 影は巨漢の顎に銃口を突きつけると、いとも簡単に彼の動きを制してしまった。
「殺しはしません。からあげは、優しいもの」
 流し目で語る『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)。
 そして――。

 回想終了。
「どうぞご賞味ください」
「いただきます」
 巨漢は正座して手を合わせていた。
 向かいの席で同じく正座し、重箱から唐揚げを取り出すリリ。
 その様子を横で見つめる壱和。
「……なぜ、あの流れから?」
 こう、暴徒を力で鎮圧したあと美味しい唐揚げを振る舞いその味に感涙した集団をご老公様みたいに諭して一件落着みたいな、そういう流れだと思ったが。
「……なぜ、試食会に?」
 時代劇みたいな勧善懲悪がいかに難しいものか。
 さておき。
「からあげに何をかけてもいいよ。どれもきっとおいしいよ」
 壱和の横で、なぜか悲しみをたたえた目で呟く旭。
「でもね、食べ物を粗末にしちゃだめ。命を犠牲にしているんだから……だから、ね、とりさん。落ちた唐揚げたべちゃだめ。コンポストにいれて。肥料にして大事に育てればにわとりさんが生えてくるから」
 地面に落ちた唐揚げを泣きながら食べてる比翼子。その肩を叩く旭。
 比翼子はうるんだ目で彼女を見た。
「生えて……くるかな?」
「くるよ」
「こないですよ」
 今日はほとんど飲み会のムードなんだなって思った壱和は、大人しくお茶を飲むことにした。

 時は流れて三次会。
 ブラック唐揚団地下集会場から歩いて三分のところにある『からあげばるかん』前フードコートエリアにて。
「現場近っ……!」
「これ、浚われたんじゃなくて散歩のついでだったんじゃね?」
「よく考えたらこの集団、一行に武力行使する気配ないしね」
 快は割り箸に唐揚げを突き刺していき、いわゆる唐揚げ棒みたいなもんを作っていた。
「リリさん。俺のこれくわえてみない?(意味深)」
「はい、謹んでいただきます」
「騙されちゃだめだリリ! 酔っ払いの罠だ! 唐揚げ部分にモザイクかけてピンナップにされるよ!」
「言わなきゃ誰も気づかなかったようなことを……」
「いいから咥えろよ俺のふぁらんくすを!」
「カイ! それ敵に言ってるんだよね!? リリに言ってるんじゃないよね!?」
「それとも違う棒で口を塞いでやろうか!? このうまくない棒(意味深)でな!」
「おちついてカイ! 字面だけだともう犯罪者だから! ほら、お酒だよ! お酒飲んで!
「おれはしょうきにもどった!」
 快は絶対正気に戻ってない発言をして、ビール瓶片手に去って行った。
 そんな彼を横目にリリと揚蔵老人は向かい合っていた。
 ちなみにさっきの巨漢はリリの唐揚げを食ってむせび泣いていた。ここぞとばかりに壱和が勧善懲悪プレイに走っていたが、それはあえて描かないこととする。あとスリーサイズ上から90・90・90の巨乳女が夏栖斗を小脇に抱えて持ち帰ろうとした所も描かないでおく。闇唐揚五天王、まさかの描写カットである。全く描かなかったので気持ち程度に補足しておくが、闇唐揚五天王の容姿はラーメン三銃士にM子デラックスを足した感じのメンバーである。五天王なのに四人しかいない不具合。
「よしえさん、ひさしぶりじゃのう」
「リリですお爺様。さあ、これを」
「ふむ……」
 リリの差し出した唐揚げ(ついにレベル11達成)と、揚蔵の『ファランクス改二』が交わされた。
 まるでサッカー選手のユニフォーム交換の如く、それは粛粛と行なわれた。
 両者箸を割り、そっとひとつだけつまみ上げ、ひと囓りする。
「……また、腕を上げたな」
「お爺様こそ」
「我らは唐揚げに絶望した身。ゆえに地下組織となった……」
 存在を消されかけていた五天王のうち一人がナチュラルに会話へ混ざってきた。
「唐揚げ。それは一般的に素材を衣につけて油で加熱しただけのもの。素材によって豚肉や牛肉、魚などを使う場合もあるがやはり鶏肉がメインと言わざるを得ない。そして一般的には唐揚げイコール安い鶏肉のフライと思われがちだ。フライドチキンのなり損ない。そう述べるものも居る。唐揚げは所詮その程度の存在なのだ。安く、粗い、低所得者の食べ物……そう悟ってしまった我らは、人類そのもののランクを下げることで唐揚げの地位を上げようと試みた。だがそれは、総計だったのだな……」
「あっ、なんか勝手にいい話に纏めようとしてる」
「そっとしておきましょう」
 唐揚げ串を手に通り過ぎる結名と壱和。
「だが我々にも意地がある。揚蔵氏を超える唐揚げを必ずや作り上げ、人類を屈服させてみせる。ゆめゆめ改心させたなどと思わせないことだな」
 そこまで言うと、五天王の人は連絡先を書いた名刺をリリへ差し出してきた。
「ということで五天王に入りませんか。幹部待遇なので福利厚生いいですよ!」
「いえ、結構です」
「リベリスタ勧誘してる時点で悪の組織としてもう……」
「そっとしてあげて」
 唐揚げボックス片手に通り過ぎる旭とテテロ。
 揚蔵、リリ、そして五天王の人(名前不明)は共に空を見上げた。
 アーケードの天井に設置されたレールを右から左へシャーっと通りかかる比翼子。
 比翼子はカッとカメラ目線になると。
 美味しいオチだけかっさらうかのように言った。

「唐揚げの進歩は、止まらない!」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 この世界における唐揚げ業界の分布って、今どうなってるんでしょうね。