●2013/05/20 「あ、危なかった……」 少女が一人、視界の悪い雑木林を歩いていた。 魔法使いの如き三角帽子を被り、何か巫女のような装束を纏っている。 足元もぬかるみ、ふらふらした足取りを、さらに重くしてゆっくりと歩み進めるも、力尽きて木に背中を預けた。 「ちくしょう、あいつら」 その少女の顔半分は砕けていた。 断面に本来あるはずの肉も脳も鮮血も無く、真っ黒な闇に、蛍光の緑で0と1が無数に並んでいた。 「……私が、何をしたっていうんだよ、うんこたれども!」 見れば、指先も頭の断面と同様に、0と1と化して消えていっている。長くは持たない。 持たないが、アテはない。 「羊羹を食べたい。お茶を飲みたい。もっと遊びたい。それから、それから、のんびり暮らせれば」 少女の正体は、エリューション・フォースであった。 0と1、コンピュータ・ゲームから生じた者であり。敵対者から逃れ、やがてフェーズ3の境界を踏み越えたのであったが、その敵対者との交戦により力を大きく落とし、自らの維持すらままならない程に消耗したのである。 『――――ir anijura on imay uratn natna 『VAPMOR』 os』 少女はここで、雑木林の全方位から奇妙な声を聞いた。たちまち、胸が跳ねる。四肢が痙攣を起こす。 「ぐ、ぐえ。な、なんだよ! 誰だ! 私に入ってくるなよ! 何だよお前! 私は! 泣く子ももっと泣かすアマリムス=ミョム様なんだぞー!」 欠けた頭も辞さすに、抱え込むような姿勢で首を左右に大きく振るも、やがて力なく崩れ落ちる。 次に目を開けた時。瞳には六角形の幾何学模様が生じていた。 ●2014/05/31 「やったあ! 限定ミッションをてにいれたぞー! これは一秒でも長く敵を狩らねばなりません」 『如何わしくない』朱鷺子・コールドマン (nBNE000275)は、8人のリベリスタ達を連れて、ある遊園地へと来ていた。 「じゃ、適当に廻ってくる」 ――と、各々好きなところへ巡るべく解散する。 「はーい」 手を振る朱鷺子であったが、元はフィクサードである。 フィクサードらしい待遇で、軟禁状態であったが、積極的な情報提供やリベリスタへの協力的な姿勢から行動範囲がそれなりに広がってきたのである。 軟禁で後れをとった分を挽回しなければならないと、それと一人で行くのが嫌だったのか、何人かを巻き込んで此処に至る。 近くで、ゲーム上に登場する四足獣が如き恐竜めいたオブジェクトが、轟く様な声を発して、ちびっこたちは大喜びをしているが、朱鷺子は気にも留めない。 ゲームを再起動する。雄大なBGMだとかをボタン連打ですっ飛ばす。 「はよ! はよ!」 ぺちぺちと両手でテーブルを叩く。 テーブルの上で食いかけのデカイ肉が揺れる。いざ冥府魔道。廃人過ぎて損だらけの心意気で覚悟を完了した途端、液晶に奇妙なものが生じた。 『イラアニジュラオンイマイ。やぁ、愉快な下等生物達。私はアマリムス・フォース・ヴァプマ』 魔法使いめいた三角帽子に、フリルをあしらった巫女の衣装。黒髪に真紅の瞳。一見にしてコスプレそのもの言える風体の少女が表示された。 「なんじゃらほいさっさ?」 朱鷺子が混乱する。普段のゲーム画面ではない。 本来は汗臭そうで肉肉しい猛者達が、重厚な鉄に身を包み、異形の獣達と爪と鉄をぶつけ合う硬派なゲームなのだ。 『いんたーねっとというものは面白いものだ。このボトムチャンネルのあらゆる所に繋がっている。あらゆる世界を見てきた我等だが、"個"しか持たない生物が、自ら"全"を作り出すなど、前例を見たことが無いわけだ。素晴らしい創意工夫だと思う』 見れば、周囲のちびっこや大きいお友達の画面にも表示されている様に見られた。 皆が持つ、紫色のスパークがゲーム機から生じる。ばちり、ばちり、とその紫電は大きくなっていく。 『だからな、欲しくなった訳だ』 次には、皆が持つ携帯ゲーム機から電流が一直線に伸びて、遊園地に飾られている、ゲーム上の怪物そのもののオブジェクトに集中した途端。 オブジェクトだったものが、カシン、カシンと歯を鳴らす。ウロロロと唸り声を上げる。 ――――ギャオオオオオオオアアアア!! たちまちぬらぬらと光る鱗を携えて。生身としてそこに生じた。 「いら あにじゅら おんいまい♪ かかれー黄色いトカゲ! そうすれば愉快な連中が来るだろう! 遊ぶぞーアソンじゃうぞー」 付近には、いつの間にいたのやら、液晶画面と同じ格好の少女がけらけらけらと笑っている。 朱鷺子が即座、携帯電話にて一緒に来ていたリベリスタ達にメールを飛ばす。 『黄色いトカゲがエリューションになったwwwww すげー! でけー! うるせー! やばいwww』 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年06月16日(月)23:01 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●万有のなる施設@日本! 『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)は、限定キャンディを物色する。 朱鷺子メールを受信して、睨むように液晶を見て返信する。 『ちょwwwwwっをまwwwwwww写真うp希望wwwwwwwwwww』 同時刻に、ゲーセンコーナーにいた緒形 腥(BNE004852)と『アカシック・セクレタリー』サマエル・サーペンタリウス(BNE002537)にもメールが届く。 腥の携帯電話からトランスともハウスともつかない、やはりシューティングゲームのBGMが流れる。 「『写真うp!早よ。』っと」 返信をする横で『終わりだ! 死ぬがよい!』と曰う裏ボス最終形態まで来たのに、仕方がないと席を立つ。 横でサマエルはため息を吐く。 「……せっかくいいところだったのに」 デカイぬいぐるみをゲットした所だったのだ。 腥が肩をすくめている。頷き返してぬいぐるみを抱きかかえて駆け出した。 ――――ギャオオオオオオオオアアアア! 場は既に始まっていた。 「逃げるんだよー!」 朱鷺子が、食いかけの肉を投げてトカゲを挑発する。トカゲはダンダンダンと突進をしてくる。 「ぐはー!」 朱鷺子が跳ね飛ばされて、血反吐を吐く。 この様子に一般人はパニックを起こし逃げ出した。 『咢』二十六木 華(BNE004943)が人の群れをかき分けて抜剣する。黄色いトカゲに吶喊する。 「やばいww黄色いトカゲがエリューションなっとるwwでけえwwww怖いwwwwかっこいいwwwwやばい」 トカゲの頭に剣を叩きつけると、トカゲは怯む。 いや、やばいだろ。と華はピタっと止まり、朱鷺子の背をポンポン叩く。 「大丈夫か?」 「華さんは神喰う派なのですか!?」 朱鷺子が立ち上がる。まあ大丈夫そうである。 少し離れた所から、『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)が、銃をくるりと回し発砲する。 「朱鷺子よ、一般人の避難誘導を頼むのじゃ。どうも恐怖で動けぬ者もおるらしい。そこはアッパーでのぅ」 発砲したマーキング弾に導かれる様にフィアキィが翔け抜けると、その軌道上が線が如く爆ぜる。煙幕が生じる。黄色いトカゲがまた怯む。 煙幕の向こうから、少女がひらりと飛び出す。 『我等はヴァプマ。暗澹たる闇の主にして、かくかく万象を統べるしかじかー』 「久しいのぅ。侵食凶星よ。先日のMMOは悪くない趣向だったのじゃ」 『『牙』と『魔王』をやったやつかー』 少女の幾何学模様の瞳が、赤から緑へと変色し、瑠琵へ人差し指を向ける。緑色の針のようなものが浮かび上がり、弾幕のように飛来する。 瑠琵の肩に一本刺さる。そこから不吉不運凶運と呪詛が広がる。 発砲音が鳴り響き、その他の針が跳ね上がる。 「もう三度目の遭遇だから分かります、ヴァプ公」 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が、硝煙を吹き消す。新しいマガジンへと取り替えて、切り返す様に敵へ銃を向ける。 「お前、次はアポ取れっつったろ。下等生物にだって都合があんだよ」 『うっせー! 我等には我等の都合があるのさー。戦力を増やして送ってあげないとな!』 別の何処かで何者かと戦っている――そう評するには十分な返事である。 ここで、向こう側にあった雄飛竜と雌飛竜の像が四散する。この遊園地をよく知るサマエルが瓦礫からくるりと飛び降りる。 「これでよし。さぁ、僕達が相手だよ。普通の人なんてつまらないでしょ」 再動。黄色いトカゲの背へと飛び移る。 「早く逃げて。特に携帯ゲームをプレイしている人は」 サマエルがトカゲの背中にザクザクと剣を突き立てる。 ――――ギャオオオオオア! 黄色いトカゲが狂った様に暴れ、一般人の悲鳴が巻き起こる。 悲鳴の中を『大樹の枝葉』ティオ・アンス(BNE004725)が、残っていた家族連れへと走る。 「アトラクションじゃないっていうのは、落ち着いて考えればわかるわよね」 ティオが手を引いて逃げ道をゆく。 『騎士(の駄目な方)』エレイン・グリーンウッド(BNE005006)も、研究者風の服装に自らを幻視して誘導を行う。 「遺伝子組み換えの実験中に逃げ出した、突然変異の生物が暴れています」 神秘秘匿も兼ねてのものである。 「安全は確保してありますので、皆さん落ち着いてこちらに」 ふと一般人に追いかけられている朱鷺子が目に入る。 「ちょっとドクトリンかけますんで、戦闘は任せた!」 何やら未解明スキルによる強化が、ティオとエレインに降って来た。 「久しぶりだなアマリムス。妙な進化を遂げたようだな」 福松が駆けつける。懐から銃を抜き、黄色いトカゲの口中に弾丸を叩き込む。 『進化? 違うなあ。食ったという方が正しいね。言語諸々手に入って僥倖だったぞ。英語で言うなら超ラッキー』 かく福松は、昨年の5月。かの者を瀕死まで追い込んだうちの一人であった。 腥が強結界を施す。 「お宅らはインターネットが、如何いうシロモノかを知っててやってるかね?」 『あん?』 一般人が強結界により退いていく。 「それとも、ボッチだからかね? 前者だったら失笑を禁じ得無いし、後者なら可哀想と言っておこう」 『何が言いたいのだ。ヘルメットおとこ。額に肉って書くぞ』 「どっちも混ざって言動がヤバ……いや、面白いからいいや」 少女の形をした者が首を傾げる。 腥が続ける。 「なんだ……お前馬鹿だろ?」 少女は『ぶちぃぃっ』と肉声で言う。たちまち周囲は、つややかな薄闇に変じる。 己と敵の存在が明瞭に見える奇妙な中、蛍光緑の0と1が無数に並ぶ。 ●牙を剥く黄色いトカゲ 「失敗か!」 サマエルがトカゲの背中から放り出される。 ――――ギャオオオオオア! 黄色いトカゲの専用BGMが響いてくる。 「舐められっぱなしは趣味じゃない、コンティニューさせてもらう」 「なるほどスリーサイズは上からもごもごでオマージュ元はげほげほ、参考になります」 福松とあばたがエネミースキャンで見る風景。何やら、敵の後ろに背後霊の様に、敵の色違いの様な少女が薄く見えた。 「アマリムス?」 福松が呟く。 背後霊はフっと笑う。スっと消えては現れて、リベリスタ達の肩をぽんぽんぽんと叩いていく。 「ぶっ!?」 福松だけは何故かグーパンで殴られる。 避難誘導から踵を返してきたティオが、気付けのように首を左右に振る。 「……代わりに倒してって感じに思えたけれど」 深淵ヲ覗ク目から見た様子を呟き、木杖で地面を小突く。 「――魔曲」 ティオの背後に魔方陣が浮かんだ。 深淵を覗く目は、ヴァプマへのの特効。アークの精鋭の内、最も魔力に特化した者の如き奔流が溢れだして、敵を突き刺す。 『あぶねーじゃんかよ! げげ!』 かのアザーバイドの障壁が、辛うじてコレを止めるも終わらない。四色が敵に束縛をもたらす。 「よしトカゲだ! ……って、でけええwwwwww」 華は強敵を前に完全にはしゃぎながらトカゲの後方、尻尾を狙う。 一刀を叩きつけて見上げると、黄色いトカゲは両前足をついて、仁王立ちのような姿勢になっている。 「っと、不味いな」 腥が身構える。 ――――ギャオオオオオオオアアア!!! 大音量にふっとばされる。遠くの面々も、あまりの音量に両耳を塞いでしゃがみ込む。 「では、ここです」 同時に、範囲外に居たエレインが全員を含んだ位置へと駆ける。 どういう訳か大幅な速度増加を身に感じながら、手を掲げて破邪の光を放つ。もう一発。 初めての任務に引き締めた心を乗せた騎士の輝きは、全員の怯みや麻痺を消し、瑠琵の不吉不運呪詛を消滅させる。 「……なん、だと」 エレインは結構びっくりして自らの手を見る。 「朱鷺子め。ドクトリンをつかうなら、全員にじゃろ」 瑠琵がフラフラしながら立つ。一緒に耳を押さえていたフィアキィをぺしぺしとする。 「こやつの攻略パターンなど身体が覚えておる」 フィアキィが弾丸のごとく突進する。 敵が張る障壁が砕け散り、黄色いトカゲも爆発に怯む。怯んだトカゲは壁際に。サマエルがスッと躍り出る。 「もう一回やればコツをつかめるかもしれない」 ベンチに足をかけて、怯んだ黄色いトカゲの背へ跳躍する。剣を突き立てる。 「んっ。あっ、あははっ楽しいっ。かもっ」 刺す刺す刺す刺す。堪らず黄色いトカゲが横転する。 かくハイバランサー。マスタードライブ程の威力も成功率も無いが、一度成功すれば確実に有利に導ける一手である。 「ふむ、オーライか」 腥が傾げた首を正し、先ほどふっ飛ばされたお返しとばかりに脚部をまっすぐに出す。 蹴りという名の斬撃が、黄色いトカゲの眉間を突き刺し、頭部を破壊する。 「蹴り裂いて潰す」 刃と化した足を引き抜き、それを天へ向ける。少しの空白の後、下される一刀がトカゲの鼻先から顎にかけてを真っ二つに割る。 怒りの咆哮を上げる黄色いトカゲであったが、その後は福松の弾丸の雨。瑠琵や華による怯み攻撃。サマエルの拘束が好感触に成立し、仕損じた咆哮による拘束等はエレインが立処に消滅させる。 ティオの魔曲や腥の蹴りがトカゲに突き刺されば、トカゲは明後日の方向を見て足を引きずる。 『前よりスゲー強くなってね? 君ら?』 少女がティオの拘束を振り切って飄然と曰い、スっと溶けるように背景へ消える。 「逃げたか?」 福松が弾丸をリロードして周囲を見る。 「空間は消えていない――今のうちに仕留める!」 華が黄色いトカゲに溜3を見舞う。尻尾が切断するや、突如黄色いトカゲが眠る様に場に伏せた。 「きょーりゅー化じゃ。今の内に回線は切っておくのじゃ」 瑠琵が、回線ケーブルや電線を撃ち、フィアキィも一生懸命切っていく。 直ぐに黄色いトカゲが目を覚ます。 トカゲの全身は毒々しい色へ変色し、その頭部の鼻先と顎からびきびきと裂けていく。眼球はアマリムスのモノと同様に、六角形の幾何学模様に変わり、緑色に発光する。 鱗はメタリックな金属質に変わり、裂けた頭部の中央から、ずるりと裸体の少女が生えてくる。少女の周囲から触手めいたものが飛び出して蠢いている。 「しょ、触手だと」 エレインが警戒する。短き時をかつ短く色々考えて後ずさる。 あばたが背負ったバックパックから、ノズルを銃に装着する。 「ここから本番ってトコですか。ヴァプ公」 裂けた頭部の中央から生えてきた少女が目を開いて口を開き。 『ir anijura on imai』 ●電脳凶星 -Hunting Action Shooting- 敵の3つの頭部から、キンと煌きが生じた。 「伏せろ!」 腥がエレインを抑えつける様に庇う。途端に太い光が三方向に迸った。 「3wayマスタープリズンか」 福松の半身が焼かれながら、光が通った向こうを見ると、幾何学模様が描かれた球体が浮かんでいる。光がこれに反射する。 ティオは咄嗟の方陣を描いて、反射してきた光を防御する。 「ヴァプマ――種として最も効率的な形の一つね。指揮系統の概念がなく、同種での争いもない」 半減の半減で済んだものの、直撃は喰らいたくない威力である。 「けれど、知性が上がれば利点であった種としての統制ができなくなる」 進化が行き詰まっている事を指摘すると、ノイズ混じりの応答が来る。 『大ies解でahワイ旅行だ! onos通りad。故に我等は外に求めat』 何処かに中枢が在るのだろうが。ただこの塊は依代の人格に影響を受けている様だった。 思索や瞑想を破る様に、あばたが大声で悪態をついてくる。 「クソ娘を食っても、一皮剥けばコレか。クソ虫が!」 悪態の意味は直ぐに降ってくる。いつの間に作ったのか。つややかな黒い球体がいくつも頭上にある。たちまち、黒い球体が場に降り注ぎ破裂していく。 あばたの脳裏に、『牙』を殺った記憶が掠める。黒い球体を撃ちながら、敵へ発砲する。敵は巨体に似合わずひらりとコレをかわす。 「く……ミスった」 「インターネットなんて勝手に使えばいいじゃん。なんでわざわざ窮屈な現実に足を置くのかな」 サマエルが、爆発を掻い潜る様に駆け抜けながら一刀を下す。手応えは硬い。 「物理か」 成程、手が出せない。再動するも集中に注ぐ。 「退くのじゃ!」「俺の方が速い!」 瑠琵が弾丸を打ち込まんとした刹那に、華が走る。 「よお、歯ァ食いしばれや!!!」 裂けた頭部の中央の少女へ渾身の一撃を見舞う。不可視の障壁が砕け散る。 「狩ってやる。何か言う事はあるか!」 『ayett見るがii。下等どom』 瑠琵がゆびをくるくる回す。 「ほむ、ならば回復じゃな。しかし勉強不足じゃよ。侵食凶星。"個"すら持てぬ"塊"には判らぬじゃろう」 『何agだ』 「後で教えてしんぜよう」 以心伝心、式のフィアキィが緑色の光を放って、皆に活力を与える。 「っ……どんなゲームであれ、システムには限界がある筈。たとえば典型的なRPGでは盗賊が出ても交渉はできないし」 エレインの思索。 黒い球体――痛覚激増。おそらく、一撃で自分は倒れるだろう。その上で、この激痛の中で触手に掴まれてはコトだ。手に光を込める。 「二次元シューティングでは本来あるべき、3つめの次元で避けることはできない。少し、上からの攻撃も防御も甘い様に見えます」 観察した結果からである。 瑠琵のグリーンノアでも払いきれなかった異常を、腥から祓い去る。 腥が頭を左右に振ってコキコキと鳴らす。鳴らして瞬息に上から間合いを詰めて蹴り刺す。 「貫通3wayからのランダム炸裂弾か。シューティングだな」 中央の少女が悲鳴を上げる中で、しかと刃を抉る。抉って即座に離脱する。 「チートコマンドとは言うなよ? これはデバッグだ」 腥が離脱した所へ、福松が放った弾丸が走り抜けてくる。 弾丸は煌きとともに剣へと変じて、刺さった部分を貫き周囲の肉を消し飛ばす。 「……しぶといな」 福松が飴をガリリと砕く。 消失部分に触手が絡まりって少女を形成していく。再形成していく最中に、ティオの魔力の奔流が突き刺さる。 『oooooOOOOOO!!!!』 刺さった途端に、周囲の0と1の空間が砕け散る。 自己再生の様な景であったが効いている。それだけでも十分な士気を齎す。 再び敵が動く。障壁を張った後に、再びキン、と光の奔流を放ってくる。 「クローズド・サークルと相成りました。BGMはもちろん。“U.N.オーエンは……なのか?”」 あばたが光に焼かれながら、狙いを定める。 「レイド・ミラーミスは、即サイレントデス」 1発、2発。弾丸が障壁を砕く。 「く……っ!」 反射した光に回避が及ばず、エレインがいよいよ膝をつく中。 「三次元だったな。俺等は勝つ。俺が勝たせる!」 華が踏み込み、跳躍する。 「最終鬼畜兵器にすらパターンはある。やっぱりあったな! 安地ってやつがよ!」 福松が光をかわして『剣』を装填。二発目を放つ。 華の剣と福松の剣が交差して、続き集中攻撃が注ぎ込まれる。 とかくこの空間の特性を得た者の攻撃は、敵の身体を攻撃の度に消し去っていく。 「現実にある血と傷と痛み。その身と、僕を見て覚えればいいよ。今ここで――」 サマエルが、更に削り裂く。 およそ黄色いトカゲの心臓部分まで掘り進んだ所に、脈動するかのように明滅する球体を捉える。 「きみの署名を省く」 渾身の力で突き刺す。黄色いトカゲの裂けていた双頭が咆哮を上げる。 腥もここで脈動する球体に刃を突き立てる。トンと静かな音と共に。 「死ぬがよい……ってな」 次に荒々しく足を上げて、球体を真っ二つにすると、そこから黒いモヤの如きものが立ち昇る。 「最近のゲームは魔王すら仲間に加え、黒幕を倒すのが流行らしくてのぅ――皆の衆! あれが本体じゃ!」 瑠琵のフィアキィが黒いモヤに向かってガイドする。バーストブレイクの爆発が花火の様にモヤを削る。 「首を洗って待っている事じゃ。侵食凶星」 「科学は人が作ったこの世界の神秘。あげないわよ」 ティオの最大火力が一直線に空へと走り抜けて、モヤはあっけなく消滅した。 ●戦後 「羨ましくはないわ」 ティオは、既に消えた黒いモヤに語りかけるように言った。 「神秘があっても個体同士が理解し合わない、愚かな人類はあなた達のようにならないからね」 束の間の会話の中で、自分の考えが的を射ていた事を確信しながら。 「因みにこれって上手にやけましたできんのか?」 華は、切った黄色いトカゲの尻尾を眺める。強敵には真っ直ぐに好奇心と一緒に闘争心を。 まあ楽しくやれたのではないだろうかと頷いて焼いてみる。 「さてー、おっさんはゲームの続きでもな」 腥がひらひらと遠ざかる。 「ぬいぐるみがもっと欲しいからな」 サマエルも腥にトコトコついていく。 「後は職員に任せて撤退しますか」 あばたが伸びをする。 事前にアークに連絡をしていたが故に、通信機からもう近くまで職員が来ている旨を受信する。 「くっ……殺せ!」 エレインががばっと起き上がる。果たして何の夢をみていたのか。 「朱鷺子はどこじゃ?」 瑠琵が周囲を眺めるも姿はない。 一般人にボコられて、早々に逃げたと怪しまれた。 「結局、あの支援は、お前の力だったのかね? アマリムス」 福松は新しい飴を頬張った。 エネミースキャンには何も映っていない。 ――――Next. Silent border『Iydilice』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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