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<アーク傭兵隊>一騎当千

●馬中の赤兎、人中の……
 形の無かった何かが、人の姿に固まり始める。
 その何かに向かって、馬のような生き物は懐かしげに嘶きを発した。
「久しいな、赤兎」
 そう言って人の姿をしたそれは鬣を撫でた後、体躯に見合わぬ機敏な動きでひらりと馬の背へと飛び乗る。
 逞しい軍馬に跨った名のある武人……時代さえ合っていれば、誰もがそう信じた事だろう。
 まるでそれを事実であると示すかのように、人馬の後ろに騎馬に乗った兵士の一隊が姿を現した。
「今宵、我等が武を以て再び天地を震わそうぞ!!」
 軍馬に跨った偉丈夫がそう叫び、手に持った戟を天へと掲げる。
 それに応えるように、兵士の一団は一斉に、無言のまま天へと武器を掲げた。


●武人
「……すげえなぁ、ホントにあんたら」
 本当に感心したようすで、男はリベリスタ達の姿を何度も見た。
 肌は浅黒く、髪も髭も黒々と無造作に伸ばしたその姿は、武骨で恐ろしげではある……が、同じく黒い眼はどこか無邪気で澄んでおり、裏表の無さそうな態度と相まって不思議な愛嬌を漂わせる。
 野生動物のような、とでも言うべきか。
「おいらぁ、『黒旋風』ってんだ。この斧2本ありゃ、そんじょそこらの奴にゃ負けねえって思ってたんだけどよ」
 そう言って男はアークのリベリスタ達を見ると、また感嘆したように息を吐いた。
「あんたらぁ、ホントすげえなあ……俺ぁ、空港に虎でも迷い込んだんかって思ったよ」
 そう言って、うんうんと頷いてみせる。
「兄貴たちが協力を頼んだなんつってたけど、俺は渋々だったんだ。けどよ……あんたらみないな人なら納得するよ」
 そう言ってから黒旋風と名乗った男は、今回梁山泊がアークに協力を頼んだ依頼のことについて話し始めた。

 E・フォースらしき存在に率いられた騎馬隊の撃破というのが、今回の梁山泊の目的である。
 騎馬隊の馬はアザーバイドで兵士たちは能力によって生み出されている者らしいが、馬たちの主らしき巨躯の軍馬に乗った者だけは、武人のような姿をした強力なE・フォースなのだという。
「呂奉先って言やあ俺だって知ってるけどよ……それへの皆の恐れとか憧れとかが形になったらしいぜ? それだけじゃないって兄貴たちは色々言ってるが、俺ぁ難しいことは分かんねえ。分かんのは、すげえ強えって事だけだ」
 軍馬に跨り戟を手に、梁山泊の数人を相手に互角以上に戦ったのだそうだ。
「本気で全力で打ちかかった奴はその隙を狙うみたいに打ち倒されてよ? それから警戒しながら戦ったんだが、それでも躱し切れねえしこっちの攻撃は避けられるしで、徐々に追い詰められる感じだったなぁ……動きもすげえ……ホントに馬に乗ってんのかってくらいに動く上に、馬の方も気持ちを読んでるみてえに縦横無尽よ! 人馬一体ってなぁ、ああいう事を言うんだろうぜ」
 俺も一緒に戦ったんだが呆気なく斬られちまったと言って、男は服をはだけて傷痕を見せた。
「斬撃もすげえが、ホントに凄えのは突きだったね! まあ、どっちも凄えって事じゃ変わりねえけど。一対一で対峙したら絶対に敵わねえよ。何人かで囲んで気を散らして、一度に相手させて、それでもあれだけやってくるんだからよぉ……」
 馬に吹き飛ばされるように前衛が突き崩され、後衛が一突きで倒されたりという事もあったのだそうだ。
 離れた相手にも衝撃波のような突きを繰り出して攻撃してきたりもしたらしい。
 そして対処に多数が対峙した結果、他の騎兵たちに動き回られて撤退することになったんだ、と……黒旋風は悔しそうに話を締めくくった。

「まあ、今回はそうは成らねえ! おいらとしては最初はあんたらに部下の騎兵を任せて俺たちはあいつと決着を、って思ったんだけどよ……まあ、あんたらみたいなのが代わりってんなら任せてもいいやって思ったよ」
 兄貴たちの目に狂いはねえなと言って、男はもう一度、黒い無邪気な目でリベリスタ達を見回した。
「それによ、あんたらとあいつの戦いを見てみてえってのもある! すげえ戦いになりそうだな、ってよ?」

 そうニヤリと笑って話を終え、道案内を続ける男の背を追いながら……
 リベリスタ達は、これから始まる戦いについて……想いを馳せた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年06月21日(土)22:48
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は軍馬のアザーバイドに騎乗した武人のようなE・フォースとの戦いとなります。
E・フォースは騎馬隊のような小集団を率いていますが、そちらは梁山泊のリベリスタ達が相手をしますので、皆さんはE・フォースと騎乗する軍馬に専念して頂きます。


■戦場
舞台は中国。
都市部から離れた、農地にもならない開けた荒地です。
見通しが良く、戦闘の障害となるものは存在しません。
梁山泊の者達が手配しているようで、一般人についての配慮も必要ありません。


■E・フォース
戟を持ち具足を身に着けた逞しい偉丈夫という外見のE・フォース。
知性は高く会話や意思の疎通は出来ますが、戦いを避けることは出来ません。
フェーズは3.
高い能力を持ち、特に単体への攻撃は極めて強力です。
複数人への攻撃はやや精度や攻撃力で劣るようですが、それでも十分強力です。
BSはダメージを与える物はありませんが、戦闘能力を減少させる物などを幾つか使いこなすようです。
守りについても、本来の耐久力等に加え相手の動きを読んで直撃を受けない技術に優れているようです。


■軍馬のアザーバイド
E・フォースを背に乗せた軍馬のような姿をしたアザーバイドです。
高い知性を持ち、部下の軍馬たちを操りますが、今回は部下たちの参戦はありません。
(梁山泊のリベリスタが介入を阻止します)
身体能力が高く個体としても高い戦闘能力を持つほか、負傷を徐々に再生する力や異常を受け難い力を持つようです。
また、自らに騎乗する者に力を賦与する能力も持っているようです。


相手が軍馬に乗った人型という部分を考えて戦う必要がある依頼となるでしょう。
E・フォースを撃破できれば依頼成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
アウトサイドクロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ギガントフレームクロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ノワールオルールクロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
アークエンジェソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)

●伝承との邂逅
「赤い馬……アザーバイド、ですか」
 迫る騎馬の一隊を眺めながら、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は呟いた。
 凡そ1800年彼方の伝説に名を遺す『馬中の赤兎』
(そのものかは兎も角として……)
 それを駆る、戟を手にした武人となれば思い当たるどころではない。
(飛将――中国での思念想念の実体化か)
「E・フォースは厄介だけれど、だからこそ……面白くもある」
 彼の武将の別名を呟きながら、彼女はその騎馬隊の先頭を駆ける逞しい軍馬と、それに騎乗する益荒男に瞳を向けた。
「呂布と赤兎馬……組むべくして組んだ最強タッグじゃねぇか……」
 同じようにその姿を眺めながら、『陰月に哭く』ツァイン・ウォーレス(BNE001520)が独白する。
「私、殺し合いは嫌いでも、戦いそのものは好きみたいです」
『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)も、武人の姿を眺めながら呟いた。
(鍛えた技をぶつけ合い、互いに高みを目指して切磋琢磨していく)
「素晴らしい事だと思います」
(そして、私の望む強さと高潔さを持った英雄が目の前にいる……)
「これもまた、運命かもしれません」
 この戦いに勝利し、さらなる高みへ。
(いつか、この手でミラーミスを倒すために!)
「私はアークのセラフィーナ! この東雲に斬れないものはありません!」
 通る声で名乗りを上げると、少女は姉より受け継いだ刀を軍勢へと向けた。
「いざ、勝負です!」
 彼女の言葉に応じるかのように、夜明けの刃が陽光に閃く。
「同じタイプ……と言ってはみたものの、お前みたいなのがゴロゴロいて堪るかよ」
 そう呟くとツァインも、かつて見(まみ)えた軍馬のアザーバイドへと剣を掲げてみせた。
「あの時の奴なんだろ? さぁ、続きをおっ始めようぜぇ!」

●闘武激突
「武人、か。相手にとって不足なし!」
 緋色の長槍を手に、『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)も騎馬隊の先頭へと瞳を向けた。
「天下を震わせるわけにはいかない。人々の、平穏の為にもね」
 漂わせる何かとは裏腹の落ち着きのある響きが『剣龍帝』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)の口から零れる。
「馬の依頼ですね、ひひーん」
 何処かおどけた調子で『本気なんか出すもんじゃない』春津見・小梢(BNE000805)は口にした。
 あえて空気を変えようとしている訳では無い。
 普段の調子を崩していないというだけの事である
「こう見えても私、スレイプニルなのでかの北欧神話にでてくるオーディンを載せたことがあったりなかったり……ねーよ! 身も心もインド人な私があんな寒いとこにいくわけないじゃーん」
 ちなみにカレーが好きだからインド人を自称している訳では無い。
 スレイプニルを自称するのは……彼女の内に存在する幻想種の因子故である。
「と、とりあえず馬っぽいところを見せて馬の矜持というものをはっきりと 分からせてやる必要が……特に無いね」
(私特に足が早いわけでもないしー脚八本もないし)
「とりあえず、馬だよね馬」
 自分に何か言い聞かせでもするかのように呟いてから、彼女は馬ではなく其に騎乗する武人の方に視線を向けた。
 突進してくる騎馬隊の勢いを止めるように、梁山泊の者たちが陣形を整える。
 それを諸共吹き飛ばそうとでもするかのように……巨躯の汗血馬は身を低くし、速度を上げた。
 背に跨る武人は既に手綱を離し両腿で馬胴を締め、両の手で戟を握り締めている。
(武威を以て天下を制する時代は、疾うに終わりを告げましたが……)
「……現世に未練が、未だあるのですね」
 静かに呟きながら、ユーディスはカルディアをE・フォースへと向けた。
「天地を震わされるのは天下万民の為に困ります――故に、此処で貴方を討たせていただきます」
 騎馬に乗った幻影の兵士たちが剣を振るい、梁山泊の者たちが槍や戟を突き上げ、術を揮う。
 そして……全速力で中央へと突き込んできた軍馬、赤兎の背上で、幻の武人が戟を薙ぎ払った。
 騎馬の勢いを封じるように動いていた4人に、強烈な一閃が襲い掛かる。
 ユーディスやセラフィーナですら回避し切れず威力を減ずるだけで精一杯の斬撃は、威力の方も圧倒的だった。
 4人を同時に薙いだその一撃ですら、未熟なリベリスタであれば二度と立ち上がれないほどの威力を持っている。
 充分な修練を積んでいる6人であっても、回復を受けなければ数撃で打ち倒されるほどの力なのだ。

 その攻撃に耐えながら……先ず、騎馬を打ち倒す事ができるのか?
 迷う余裕は無かった。
 それは即座に敗北へと繋がるものだ。
 敵の攻撃によって陣形が乱されることも考慮して動きながら、セラフィーナは全身を雷光で包み込み、更に自身を加速させた。
「多勢に無勢失礼――と、言いたい所ですが……」
(4人で包囲した程度では小揺るぎもしないでしょうね)
「尤も――それでこそ、ですが」
 包囲の一角を担うように動いたユーディスも、魔力によって生み出した刃に神気を宿し十字の斬撃を放つ。
 包囲を行う4人をいつでもフォローできるようにと後衛に位置を取りながら、フツは符術によって四神の朱雀を創り上げた。
 朱雀の力が周囲を炎で満たし、対峙する人馬を火と熱で包み込む。
 距離を取ってはいても、彼は警戒を怠ってはいなかった。
 衝撃波によって離れた対象を攻撃したという情報もある以上、油断はできない。
 だが逆に、その攻撃を反射するという反撃もできる筈だ。
 自身の力を活かすべく、フツは敵の動きを観察しながら頭を働かせる。
 続いたツァインが仲間たちの為に、ラグナロクを発動させた。
 6人の身に神の加護が、尽きる事のない力が注ぎ込まれ……失われた力が湧き出し、傷付いた体が癒されてゆく。
「騎馬の強みは機動力! ならば、まずはその足を止める事!」
 包囲を行う1人として前衛に就いた竜一は、限界を超えた力で肉体を稼働させ、宝刀露草による一撃を叩き込んだ。
「……ほぅ……皆、只の歩兵ではない、という事か。ならば如何程耐えられるか、見せてもらおう!」
 竜一の斬撃を受けた武人は眉を動かしリベリスタ達を見渡すと、戟を頭上に掲げ高速で回転させてみせる。
 攻撃はともかく、耐えるという事であれば。
「カレーの神よ我に力を、これで異常なんか怖くない」
 英霊の魂を加護として身に纏った小梢も、同じように、包囲を固めるように赤兎の前へと立ち塞がった。
(馬に愛情注いでそうっぽい)
 ちらりと視線を馬上の武人に向ける。
(馬好きなのかな、いやん照れちゃう)
「でも負けてもいらんない」
 髪と尾を鬣のように靡かせると、小梢は馬っぽく鼻息をふふんと吐きながら、息巻いた。
「ここから先は通さないよ」

●八武の誇り
 前衛の4人に対して、呂奉先は薙ぎ払うような攻撃を幾度も繰り返した。
 其々の斬撃は微妙に異なり、対するリベリスタ達の反応を確かめているような処がある。
 値踏みという事なのだろう。
 その攻撃に対して、小梢は只管身を固めて耐え続けていた。
 試すように攻撃を行ってみたものの、人馬は一体となったように大きさに見合わぬ軽妙な動きで彼女の攻撃を躱し、あるいは逸らしてしまう。
 そして隙を突くようにして反撃が襲い掛かってくるのだ。
 人馬を切り離せない以上、とにかく馬が倒されるまで耐え凌ぐ……吹き飛ばされても即座に戻れるように、包囲の維持を第一として小梢は位置取りを行っていた。
 その間にセラフィーナは、E・フォースへの効果が薄いと判断し攻撃を赤兎へと変更する。
 無駄のない流れるような動きで、光の飛沫を迸らせながら……少女は高速の連撃を放ち続けた。
 華麗な舞うような動きとは裏腹に必殺の威力が込められた刺突と斬撃は、軍馬を確実に追い詰めてゆく。
 ユーディスも包囲を崩さぬようにと立ち回りながら、攻撃を軍馬へと集中させた。
 常に4人で包囲を維持し、残りの者がそれを支援する。
 そして、先にアザーバイドへと攻撃を集中させ撃破を狙う。
 それが6人の立てた作戦である。
 フツが強力な符術に依って擬似的に創りあげた朱雀は炎の力を周囲に拡げ、ツァインは英霊たちの力の一部を前衛たちに与える事で傷を癒し、異常を浄化させた。
 武人と軍馬の連携した攻撃は強力で、神と英霊の加護を以てしても……直接対峙する者たちの負傷は蓄積してゆく。
 それでも、まだ全員が動けるのは彼の施した加護ゆえと言えるだろう。
 闘気を放って動きを鈍らせたり攻撃の手を委縮させたりといった技も、奉先はリベリスタ達へと向けてくるのだ。
 ツァインの放つ邪気を払う光が無ければ、戦力が低下したままの戦いを余儀なくされていた可能性は高い。

 それでも……戦力を維持したままでも、攻撃は前衛たちを追い込んでいく。
 鋭い突き上げを受けた竜一が、咳き込むように口から血を噴き出した。
 力が失われようとした身体を運命の加護で支え、青年は両膝に、腕に、力を籠める。
 攻撃後の隙を狙ったセラフィーナの斬撃が武人を捉えた直後、赤兎の巨躯が少女の華奢な身体を弾き飛ばした。
 限界を運命の力で超えた少女は、そのまま弾むように身を起し体勢を立て直す。
 その隙を、開きそうになった包囲の間を埋めるように、フツが魔槍深緋を手に前進した。
 自分たちの包囲を崩さぬように、その上で相手の態勢を崩せるように。
 高低を意識するようにして、彼は斜め上からの突き下ろしと低い姿勢からの突き上げという2種類の攻撃を意識して、赤兎の胴を狙い槍を振るう。
 それを耐え抜いた武人の一閃が再び前衛たちを薙ぎ払った。
 限界に近付いたユーディスが一時的に後退し、代わるようにツァインが前に出る。
 ユーディスはそのまま傷付いた仲間の回復を行うために英霊たちの魂へと呼びかけ、前衛となったツァインも負傷した仲間を癒す事を最優先に考えながら攻撃を開始した。
 もっとも、回復の事を考えてしまうと……攻撃を行う機会というのは殆んど無い。
「史実通りの馬鹿力か……!」
 歯を喰い縛るようにして攻撃に耐えながら、彼は敵の動きを観察し続けた。
 赤兎馬の攻撃に対しては、とにかく動きを覚える。
 呂布の攻撃は特に突きに注意し、薙ぎ払いに関しては予備動作で何とか判断する。
 体勢はわざと低めに取る事で、相手の攻撃方向を絞らせるように試みた。
 時には馬体に張り付くようにして、死角を作り出す。
 動きを読まれる可能性も高いが、齟齬を無くすことを優先して声も掛け合うようにした。
 相手が人並の知性を持ち此方が目的を隠そうとしていない以上、既に戦い方は察されているだろう。
 それを利用して、赤兎が倒れる前にリベリスタ達を討ち果たすというのが、呂奉先の狙いである筈だ。
 前衛たちが交代するという戦線維持の手段も、実際に目で見て確認されている。
 6人と人馬、八つの武と心がぶつかり合い……
 前線を交代した2人の内で狙われる事になったのは、フツの方だった。
 薙ぎ払うような斬撃に耐えて反撃を行った直後……空気が抉られ、何かが切断されたような轟音と共に、鋭い刺突が青年へと襲い掛かる。
 力だけでなく正確さにも優れた、竜一の全力すらも超える程のその一撃を……フツは運命の加護で堪えながら、強引にバリアシステムを起動させ、 攻撃の一部を反射させた。
 赤兎とは異なり、奉先の側には傷を癒す力はないのだ。
 僅かであろうともその蓄積が、ギリギリで勝敗を決する事がある。

 武人へのダメージは確実に蓄積している。
 そして攻撃を集中された赤兎は、既にその身を己の血で染めつつあった。
(本当はお前を送り返してやりたかったが……戦場の習いだ、すまねぇな)
 ツァインがそう思った時、だった。
「……もう良い、赤兎」
 漢の声が響きに、それに反対するように軍馬が微かに耳を震わせる。
「俺を、友を盾にして生き延びるような男にさせるな」
 短く静かに口にし、武人は再び戟で一閃を放った。
「今生の別れ。そう想い定めても、再会はあった……ならば、三度まみえる事もあろう」
 その言葉を受けて半瞬の後、武人が跳躍するのと同時に、軍馬は正面にいたツァインを吹き飛ばすように突撃した。
 ユーディスは駆け抜けてゆく赤兎を目だけで追い、吹き飛ばされたツァインも微かに頷きながら武人を再包囲する為に前進する。
 他の者たちも、あえてそれを止めようとはしなかった。
 目的はあくまで、武人一人。
 一つ追い詰めたとはいえ、本当の勝負は……此処からなのだ。


●終局、霧散
(最強に対し、まともに向かえば押し切られる)
 攻撃は出来るだけ衝撃を受け流すように、逆に自分の攻撃は他へ攻撃した隙を狙うように。
 限界を超えた力を爆発させながらも、頭の中は冷静に……竜一はそうやって、懸命に勝利への道を模索していた。
 一人となった事で逆に戦い易くなった部分も、敵にはある。
 今までは騎兵に対する歩兵という立ち回りで、竜一は身を低くし攻撃の来る方向を制限するという戦法を取っていた。
 頭上からの攻撃というのは対処し難いが、それを意識していれば凌ぐ手段もある。
 今はそれが無いのだ。
 今の呂布の攻撃は変幻だった。
 薙ぎ払うような斬撃は足元を払うように飛んできたかと思えば、胴を薙ぐような軌跡を描く。
 身を引くように避ければ、次に放たれるのは鋭い突きだ。
 その上を往くようにして、セラフィーナは翼を羽ばたかせた。
 相手の目が下に向けられているならば、その外からの攻撃が有効となる。
 体勢を崩すほど高くは飛ばない。
 それでも、他の仲間たちと比べれば高さの違いは大きいと言えた。
 相手が自分に対処しようとすれば、それだけ注意が分散される事になるのだ。
 狙われれば危険だが、その分だけ皆の援護にもなる。
 皆が傷つき半数ほどが酷い傷を負ってはいたが、包囲は崩されていなかった。
 小梢は最初から変わらず4人の1人として前衛を務め、ユーディスはツァインと位置を交代しながら回復を攻撃の両面でチームを支える。
 ツァインの方はというと、ほぼ回復に専念する形になっていた。
 そしてフツと竜一の2人は……ひたすら攻撃に専念する。
 その2人を援護するように、セラフィーナは呼吸を合わせて連携攻撃を繰り出し、あるいは回避を封じるように移動先を狙って斬撃を繰り出した。
「私の刀は古代の英雄にだって負けませんよ!」
 自分への注意が減じていると思えば全力で攻め、自分が警戒されていればその隙に仲間たちに攻撃してもらう。
「相手の動きを読めるようだが、こう囲まれてたら、読めても避けれねえだろ!」
 後衛からは凶を呼ぶ無数の鳥を符で創りあげ、前に出た時は緋の槍を振るって、フツも奉先を責め立てた。
 それでも、武人の揮う戟には欠片の乱れもない。
 圧倒的な力と闘気に溢れていながら、鋭く、しかも早い。
 突きを受けたセラフィーナが立ち上がろうとして……その姿勢のまま、崩れ落ちる。
 彼女の上下へと意識を分けさせる戦法が、脅威と感じられたという事だろう。
 眼光がそのまま穂先となってでもいるかのような圧迫感を感じながらも、一撃に身を抉られながらも……
「確かにこの突きはすげえ」
 フツの口から零れたのは、感嘆の言葉だった。
(オレが深緋でこの突きを放てるようになるまでに、何年、何十年修行すればいいんだろう?)
 攻撃に耐えながら……青年は束の間、そんな事を考える。
 呂布という人物への思念によって生み出されたのなら……それこそ千年以上も昔から……そういう事になるのだろうか?
(オレひとりだったら、生きている間にゃ無理だな)
「だが、オレ達にならできる」
 前に出ていたフツは、緋色の槍を振りかぶった。
(千の攻撃を積み重ね、お前に、お前の千年に対抗する!)
「穿て、深緋!」
 繰り出された鋭い突きを、飛将は上体を横に動かす事で直撃を回避する。
 それでも穂先は肩口をかすめるようにして、武人の身体を傷付けた。
 それに続くように、竜一も限界を迎えかけた身に更に力を籠める。

 耐え抜いた武人の戟が一閃され、魔槍深緋を構えた姿勢のまま……フツの身体が、前のめりに倒れた。
「……個の武に憧れないわけじゃない」
(だが、一個の武だけで天下の趨勢は変えられないのは、他でもないこの男が示した)
 だから、自分は皆との連携で戦い抜こう。
 限界を超えた肉体が悲鳴を上げる。
 それを厭わず、青年は全身の力を爆発させるようにして斬撃を叩き込んだ。
「この天下に、お前らが駆ける場所はない」
 いつか……愛馬と共に天に昇り、存分に駆け抜けろ。
「お前の武は、すでに伝説さ。この俺が、憧れるほどに」

 放たれた一撃が、奉先の動きを止める。
 同時に、限界を超えて動いていた竜一の身体も……動きを止めた。
 青年の身体は大地へと伏し、武人の身体は……形を失うように、揺らぎ始める。
「……此処までか……」
 充足と寂寥が入り混じったような口調と表情で呟くと、男は……一人一人、リベリスタ達へと視線を向けた。
「……俺達はお前が満足するような戦いができてたか……?」
 視線に真っ向から対するようにして、ツァインが問いかける。

 それに応えるかのように唇を動かそうとした時……
 武人の身体は完全に消え失せ、霞のように残った何かは……吹き抜けた風に運ばれるようにして、舞い散った。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
アザーバイドを撤退させ、E・フォースの撃破に成功という結果となりました。
攻撃を集中させた事、騎乗する相手に下からの攻撃を意識した事もそうですが、低空飛行による上からの攻撃も加える事で敵の意識を完全に集中させなかった事等も大きかったと思います。
回復は不足気味で厳しくなりましたが、元々の皆の耐久力や防御力の高さ、支援のスキルの充実によってそれらは敗北には繫がりませんでした。
全員に反の能力が賦与され、それによって地道に蓄積されていったダメージというのも勝因の1つになっていたと思います。
常に包囲する事で攻撃力を完全には活かせない状況を維持し続けられたのも、有効だったと言えるでしょう。
相手に方針を読まれてでも堅実に、真っ向から押し切るという形で、任務を見事に達成しました。

御参加ありがとうございました。
それではまた、御縁ありましたら。