● 『生きる』って、何だ? 心臓が跳ね、血が流れ、息をし、見て、聞いて、触れて。そんなものだ。実感の欠片もない。 じゃあ、『死ぬ』って、何だ? これは簡単。首が飛んでも、溶けても、焼けても、天明を全うしたって。 どんな形だって生命活動が、細胞の脈動が、全てが止まれば、いい。 『生きる』の反対が『死ぬ』事なら。 今、お前が『死ぬ』事が出来るなら、それはその瞬間まで『生きていた』事になるだろう。 どんな屑でも塵でも、生きていた事を実感できる。実感した頃には、意識なんてありはしないけれど。 これって、凄いと思わないか、本当に。 だからさ、お前。生きてみないか。 だからさ、お前。死んでみないか。 振るう右の手、いとも簡単に彼は命を手放して。 生を示す鮮血は、何時の世も異様に綺麗に舞うのだった。 ● 「……一刻を争いますので、手短に説明します」 集まるリベリスタ一同に手早く配られる資料。乾いた靴の音を奏でブリーフィングを始めたのは、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)。 慣れた手付きで彼女が端末を叩けば、大型のディスプレイに灯が入る。ぶん、と軽い電子音の後に画面に映し出されていたのは、薄暗い室内に浮かぶ『影』と、血を流し倒れる人の姿だった。 「深夜の市街地に出現したアザーバイドを、討伐してください」 開始されるのは作戦概要の羅列。映像から目を落とし資料の項を開くと、間もなく和泉は作戦の概要を説明し始めた。今回の討伐目標は平行世界の他チャンネルよりの来訪者。 その姿は此方の世界で所謂『影』と呼称される物に酷似する。しかし、実体が無い様で確りと物理現象に従い、実体を持つ様に振舞うとのこと。 「現時点で崩界を齎す状態ではありませんが、後回しに放置出来る個体でもありません。ですから、早急に対処して頂きたいのです」 曰く、人類側に既に被害が出る事が『万華鏡』により観測され、至極無作為に選ばれた一般人が『殺害される』様なのだ。 行動原理や、目的意識等々が不明な事の多いアザーバイド。しかし今回は、少なくとも友好的な種では無いのだ。 「儀式、とでもいうのでしょうか。彼らは“生きたいか”等と被害者に言葉を投げかけてから、その手を振るいます」 言葉と共に和泉が叩く端末。切り替わった映像の奥で、『影』は何かを呟き、罪のない男性を深々と貫くのだった。 目を覆いたくなる程の鮮血が床を、壁を染めて。男性の身体は糸の切れた人形の様に力なく、呆気なく地に伏せる。 「尚、この殺害方法を用いた場合――」 戸惑う様子もなく、淡々と言葉を並べる和泉であったが、ふと言葉を止め目線を画面へと向けて。 不意に切れた言葉の列。資料より目を上げ画面を見詰めるリベリスタの目の前で、倒れた男性は何処からともなく沸いた『影』へと、飲まれていく。 じわりと男性の身体を覆うその黒は、何処かこの世の物ではない不気味さを孕んでいた。声を上げる事も出来ず、見詰める一同。 男性の身体はあっという間に包まれたかと思うと、すう、と糸を引かれる様に起き上がった。然しその姿は、まるで。 「――殺害された人物は一定期間の後、『影』となって、復活します」 同じ姿、同じ個体。過去の姿を捨てて、その儘朽ちる選択肢も与えられず、再び動き出すのだという。 それは蘇りもう一度生きる『蘇生』では無く、再び活動を開始する、強制的な『復活』に他ならなかった。 「死者に鞭打つつもりはありませんが、この状態になった場合……アザーバイドと同様、討伐対象とします」 この過程を挟めば、彼らはあらゆるモノが同じ物となるのだ。姿形も、能力も、行動原理も。 元々、得体の知れない来訪者の手に掛かったのだ。元に戻して遣れる手立ての当てなど、在る筈もない。 「身勝手に人を殺めるこの敵を、許す事はできま――否、許してはなりません」 リベリスタの存在意義が世界の秩序を守る事である以上、その秩序を乱す因子を、危険な来訪者を残して置く所以は何処にも無かった。 それからひとつ息を吸うと、身に付けた制服に刻まれた『箱舟』の一員たる印に目線を投げてから。 「人の死に場所を決めるのは何時の世も、神様と裁判長と司令官と……己だけですから」 作戦開始はマルフタサンマル。強く言い放った和泉の眼には、珍しく強く鋭い感情が宿っていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ぐれん | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月07日(火)23:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 月の、綺麗な夜だった。突き刺す様な寒さと、時折過ぎていく北風が冬の本番を告げる。 そんな夜、非日常は男の目の前にあった。べしゃりと水音を立てて、床に倒れる人。湧き上がる『影』に、自らの鼻先に突きつけられる、刃。ゆっくりとゆっくりと近付いて、それから―― 「――呼ばれて飛び出て~、ばばばば~ん、っと」 あと一歩で更なる被害者が出る処。緊迫した空気を突如割ったのは、ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)の間延びした掛け声だった。 『万華鏡』により予め判明していた出来事の舞台、町のはずれの大きな倉庫。その窓をぶち割り侵入する彼女は、持ち前の身軽さを以て一挙に肉薄。一般人の眼前に立つ敵方に一撃を叩き込む。 間に合ってよかったですぅ、と舞い降りるユーフォリアに続いて、他のリベリスタ達も次々に倉庫内へと歩を進め、戦線を整えていくのだった。 「……誰だ、オマエ等?」 「……何だ、オマエ等?」 静寂を崩し現れるリベリスタの姿に、来訪者と“一般人だったモノ”は無機質に言葉を並べ、首を傾げる動きを見せる。 「こんばんは! 此方リベリスタ一同、皆様の抹殺と殲滅に参りましたっ!」 人懐っこく軽快に、恐ろしい言葉で応えてみせたのは『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)。先程人が死んだ場所に居るというのに、敵方が目の前に居るというのに真咲は極めて冷静だった。 ぴしりと真っ直ぐに伸ばした右手、挙手をするようにして応えた体勢の儘。その手には『幻想纏い』より呼び出す大戦斧。大の大人が両腕で操る其れをくるりと回転。小型のナイフでも扱う様に戯れてから構えて、続ける。 「生きる事を最も実感出来るのが死ぬ瞬間、っていうそれ、ボクも結構わかるかも」 物心ついた時から戦闘の日々。様々な因果が混ざり合った真咲の価値観を語りながら、うんうん、と大袈裟に頷いてみせて、邪悪なロリは微笑む。それから、一息おいて。 「だからさぁ――貴方の命で試してごらんよ」 満面の笑みでそう告げる。生きろと、詰まる処――死んでみろと。その言葉に悪意も、一寸の冗談も込められてはいなかった。 真咲は言葉と共に地を蹴り加速、何の前触れも無く振るわれた一撃は、影を裂きびしゃりと飛び散るどす黒い血の様な其れで、深々を壁を染めていた。 来訪者との戦闘の火蓋は、そんな風に唐突に切って落とされることとなる。 ――時は幾らか遡って。 ユーフォリアが派手に窓をぶち破ってから少し後。前衛の皆が一般人と『影』との間に入る間、別途に動くのはリベリスタのうちの半分。 一般人の避難を最優先に置いた四名は、皆が時間を稼ぐ間に彼らの救出を試みていた。 「大丈夫ですか?」 その先頭、迷いなく一般人の下へ駆け声を掛けたのは『ホリゾン・ブルーの光』綿谷 光介(BNE003658)。幾らか荒れた呼吸を整えながら、はっきりとした声色で一般人の不安を拭う様に告げる。が、余りの非日常を目の当たりにした男性は恐慌状態にあり、その言葉が届くことは無い。 「そっちはどうだ、此方の女はダメダメだぜ」 「……此方も、少々移動には手間が掛かりそうです」 同じく一般人の救出に向かった『人斬り』城山 銀次(BNE004850)、『魔術師』風見 七花(BNE003013)の両名も、慌てふためく彼等を抑えて居るので精一杯な様子だった。 「――……っ」 その最中。ばちん、と神秘によるものではなく、極めて人工的な電撃の音を発したのは『蒼碧』汐崎・沙希(BNE001579)の握る救出用のスタンガン。 掛ける言葉への反応が薄く、今直ぐにでも敵方の目の前に逃げていきそうだから、と判断しての結果だった。 「少々面倒だが、仕方ねェか……」 「失礼します、少し痛いくらいですから」 「此の戦いが終われば、必ず救護班の治療を受けられますからね」 口々におやすみの言葉を述べると、手早く一般人を動揺に処置、四人は気絶し脱力した身体を直ぐ様離脱させる手筈へと移していく。 殴って黙らせりゃ済むだろうが、と文句を垂れる銀次の握る其れは、『薄明』東雲 未明(BNE000340)が不足時の為にと貸し出した物であった。 ――場所は戻って、最前線。 「生きるか死ぬかの問答を、僕にも説いてみせてよ!」 何処か愉しげな少年の様に、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が紡いだ言葉は来訪者達への挑発の音色。 どうせわっかんないだろうけどさ、何てお茶目な笑顔で告げながら、光介達の救助活動から離れる方向へと誘導していく。 「ナラば、オマエ等に問おう」 「ソレを、オマエ等に問おう」 緩慢とした動きで距離を詰める影が同時に放つ邪気に、一挙に押し返される陣形。しかし、間髪を入れず再度肉薄、包囲を崩されぬようにリベリスタ達は動いていた。 「そうね、彼らに問うよりはいい結果が得られるんじゃないかしら」 一般人を一瞥してからそう告げて、距離を詰めると未明は言う。一突きで倒れ、簡単に命の灯が尽きる彼等の様に、只死ぬことで貴方達が求める答えは得られるのか、と問う。それから答えを待たずに振るうは、全力全開のその一歩先。呼吸を短く止めて放つ、“120%”。 轟、と地を割る勢いで振るわれる其れは、深々と来訪者を袈裟懸けに抉り取った。それから巻き上がる砂埃に混じり何処か不敵に浮かべた笑顔で、未明は告げる。 「最も、貴方達の身体に訊いた方が早いかしら?」 ● それから、ぐるりと手番を幾つか回して。 一般人から敵方を遠ざける一心で目を惹く夏栖斗の動きは、確実に影の動きを阻害していた。 そして攻撃対象の固定化も相まって、未明、真咲、ユーフォリアの三人は各々に攻撃対象を選定、確実に耐久力を削る事ができていた。それでも。 「あんまりモテるって、辛い事だねッ……!」 回復手の居ない戦場。減り続ける体力と反比例して必要となる集中力。敵方が少ないとはいえ、その身一つで攻撃を捌く夏栖斗の負担は、次第に彼の持ち得る重みを超え始めていた。 それでも、彼は自分の仕事を全うした。多少の無理は承知の上。“正義の味方”になると決めた彼が、此処で止まる選択肢は無かった。そして。 「此方の手筈、完了しましたーっ!」 響くは光介の声。合流する救助組の姿に、戦場は一瞬の安堵を帯びる。が。返事替わりにと響いたのは『影』の放つ呪いの言葉。 言葉、と形容されるがそれは、唸りとも絶叫とも取れる不協和音。不気味な響きとなって前衛連中の動きを止める。 (御厨さん……っ!) そして、突如届いたのは、沙希の送る脳内念波。危ないと告げる言葉に夏栖斗が上げた目線は、ふと自らの胸元へ。 その瞳に映るのは、精悍な胸元に深々と突き立てられた刃だった。ごぼりと突如唇を割り零れる鉄の味に、自らの状態が知らされ、死のイメージが脳裏を叩く。 「オマエ、生きてみないか?」 一瞬遅れて、鼓膜を揺らすのは彼の問い掛け。呼び掛けに上げた目線の先は、目も瞳も無い影の闇。ぐりん、と抉る様に捩じられながら引き抜く刃。夏栖斗の意識を瞬時に消し飛ばす、が。 「――てめーの生き死には、自分で決めるんだ」 ぐらりと揺らぐ身を、脚を張って支えて。運命を差し出し踏み止まった夏栖斗は、咥内を満たす血液を“痛ってぇ”と地に吐くと先程迄の子供じみた口調を崩して、告げる。 「他人に決められて……はい、そうですかって従える程、人間は諦め良くねェんだ、よォッ!」 一拍置いて放たれる蹴撃。眼前に浮いていた闇を跳ね上げ、鮮血の代わりにと穢れた闇で華を咲かせる。それを皮切りに、再度戦場は動き出して。 「同感です、他人に与えられる実感なんかじゃ、結果なんかじゃ……足りないんですっ!」 光介が言葉と共に練り上げた神秘。力強く中空に描いた術式に応え体現するのは、癒しの神たる聖神の息吹。怖がりで繊細で臆病な彼が、此の戦場に見出した自分の価値の形。 自分が立っているこの場所だけでも、必ず救う。誰かの為に生きる彼が、自分の為に生きても言い様に、肯定される何かを探して此処にいる。 その光介の隣、静かに魔力を練り上げたのは七花。彼女も弱気な自分と抗って戦って、此の場を選んでいた。他人に与えられる場所に、甘んじてはいなかった。攻撃に備える彼女に呼応する様に、身に宿す魔術回路が唸りを上げる。 水妖の名を冠す魔導書から流れる神秘を増幅して、彼女が放つは呪いの四重奏。すうと一つ息を吸って、言い放つ。 「大体、他人の世界にお邪魔しといて人殺し何て……図々し過ぎるんですよーっ!」 「……ッてェ訳だ、バッサリ逝かせて貰うぜェー!!」 放たれる魔光を追い掛ける様、既にその身を“触れられぬ”程に強化した銀次が駆ける。その輪郭を歪ませる程に被害を受ける『影』の後ろ首を、手にした刃で盛大に叩き斬る。 怒涛とも云える連撃。圧倒的な手数に加え、仕上げにと沙希が放つ癒しの息吹が、リベリスタの戦列を元通りに立て直し、戦況を危なげなく進めていく。 「ここからが~、本領発揮~♪」 「さぁさ、反撃タイム。すっごくいい声で啼いてねー?」 その先頭、先程迄足止め役に徹していたユーフォリアと真咲は、回復支援も相まって息を吹き返した様に疾走。一挙に肉薄すると速度に任せた連撃で敵方を文字通り魅了し、掻き回す様に立ち回っていた。そしてその、一歩後方。 「――貴方達、未だ彼の問いの答え、気になるかしら?」 小柄な身に似合わぬ大剣を携えた儘、未明は戦火の中、尋ねる。それは誘う様で、優しく響いて。 縋る様にも見える動きで、迷いなく二つの影は彼女の傍へと寄り、訊く。先程と不気味な程に同じ言葉で、同じ声で。生きてみたいか、と。 ええ、生きたいわ。そう答える未明の胸元を、言葉を遮る程の勢いで貫くのは血塗られた二つの刃。吸い込まれる様に叩き込まれるそれを、誰もが止める事は出来なかった。それでも。 「……けれど残念、死んであげる事は出来ないわ」 二、三歩後ろによろける様にして、刃を引き抜くと未明は告げる。崩れかけた膝は、差し出す運命の糸で引かれる様に保たれていた。茫然と立ち尽くす影の視界の先。すらりと高く掲げた剣。まるで、来訪者へ無力だと伝える様に。尋ねるその音を、断ち切る様に。 「さぁ今度は、貴方達の番。せいぜい実感すること……ねっ!」 再び振るわれた全力の一撃。『影』の一つの、右手を見事に斬って落として。 「アア……、嗚呼……」 べちゃりと、生々しい音を立てて彼の黒が溜まりを作って。絞り出す様に唸る彼らの視界の中、沙希は優しく微笑んでいた。その日見せたどの表情よりも、慈愛に満ちたその顔の儘で。 (生死の哲学をしたいなら……、きっと自分で体感するのが一番よ?) 彼らに届くのかは解らない、けれど、念波に乗せて囁いて遣る。これは必要な仕置き。誰かの命をいたずらに奪う彼らは、きっと自分で知るべきなのだ。 その沙希の視界で揺れるのは、影にも似た漆黒の髪。真咲は彼らの隣で佇み、囁く。生きてる事って、凄い事なんだ。だから簡単に、命を奪っちゃいけないんだ。だからせめて、感謝して。 「それじゃあ影サン。貴方の御命――イタダキマス」 一閃、二閃、三閃。幾重にも刻まれた来訪者の一つが、風に吹かれた砂山の様に、その生命を閉じる。 ゴチソウサマ、と小さく結び、自虐にも似た台詞を“なんてね”等と茶化してみせて。そんな真咲の脇をすり抜けて、突如残された影はその動きを変える。同族が逝った故か明確に、逃げる素振りを見せて。 「オマエも……オマエも、生きたいか?」 「ンなッ!?」 然し、追撃だと肉薄する銀次を待っていたのは、再度繰り返される唐突な彼への“問い掛け”だった。 風を切り振るわれた刃は、夏栖斗や未明を貫いた時と同様に容易く深々と、その身を貫く。幻とも思われる程に唐突な物事を事実を裏付ける様に、夥しい血液がその場を血溜りと化していく。 だらりと、銀次の四肢から力が抜ける。確かに、来訪者の一撃は彼の命を刈り取った、かに思われたが。 「――自分の窮地に保身と逃亡だってな……。ヌルいなァ、御前」 尽きたかに思われた命の灯であったが、“異端の王”たる彼の身は、此処で朽ちる筈が無かった。その運命を差し出すのでは無く、毟り取る様に引き寄せて。 下方に垂れたその右手が、刃を握る『影』を確りと掴んでいた。その紅色の髪を掻き上げながら、緩慢とした動きで体勢を起こして、告げる。 「何だ、俺を殺すんじゃなかったのか、生かすんじゃなかったのか」 肩を上下に震わせ、けらけらと笑い混じりに告げる銀次の二つの瞳は確りと来訪者の姿を捉えていた。その奥に宿すは、他とは一線を画す圧倒的な、暴力の焔。 問い掛ける口調で繰り返しながら、此方の番だと引き抜く無銘の刃。それから嗚呼、と合点のいった様にもう一度目線を向けて。 「なァ御前……生きたいか?」 山彦の様に繰り返す彼の言葉を最後に、『影』の意識は終わりを遂げていた。 その瞬間の前にも後にも、消えゆく来訪者の意識が“生の実感”を拾うことは無かった。 ● ――救護班を待ち、一般人を引き渡すとリベリスタは各々に帰路へと着いた。 いつしか夜は明け、朝日が顔を見せて。夜風に冷えた町を、じわりと温めていく。 疲れた、と大きく伸びをして、深ぁく零す溜め息ひとつ。白く色付くその息でさえ、人が温いと示していて。 「やっぱ人間、生きててなんぼだろー!」 誰かが零したそんな言葉も、朝焼けの中に溶けていくのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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