●王様 「だーれだ?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月09日(木)22:28 |
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■メイン参加者 24人■ | |||||
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●闇のゲーム ~始動編~ 「ハーイ、ロイヤーさん御機嫌よう!」 炭酸飲料を手に亘が移った席では、ロイヤーはじめ女性陣が盛り上がっていた。 宴もたけなわ、あちこちで酔っ払いが増殖している。ステージでは陽菜と祥子が気持ちよく流行の歌を披露して。 今日は楽しい忘年会。たまにはこういうのもよいと目を細め。 「ふふ、盛り上がってますね」 周囲に会釈しお酌しようと手に取れば、横からひょいと取り上げられた。 「ワタシもオトナの仲間入り……お酒飲めちゃうヨ!」 アーハァンと声をあげたプルリアがのんでのんでとビールを傾ける。 「自分はまだ飲めないので……」 「じゃああたしが貰うね」 たじたじの亘の横から救いの手。ステージから戻ってきた祥子が柔らかく微笑んでくいと飲み干し。 「お返しに何か作ってあげるわよ。これでもスナックやってるのよ?」 「とりあえず生チュー! これ言ってみたかったの!」 皆が楽しく盛り上がっている会場。亘がふと隅でごそごそやっている2人を見つけた。 「でーきたっと!」 ロイヤーと頭を突き合わせていた陽菜が大声を出して立ち上がる。 手にしているのはゲーム用のくじに、即席の簡単な王冠。経験はなくとも誰もがピンとくるだろう。 「もしかして王様ゲーム?」 あらと口に手を当てた祥子の横からずいっと身を乗り出し。 「ワオ! 王様ゲーム聞いたことあるわ! ワタシ合コンって初めて!」 「いや忘年会です……でも王様ゲームって一度やってみたかったのですよね」 プルリアや亘のみならず、酔いの浸透した会場に広がる興味と悪ふざけ。 「モノマネとか面白いことやってとか言われたら困るなー」 そう口にしつつも祥子もまんざらではない様子。 「OK.よくわからないケドYesYes! Come on Baby!」 よく通るプルリアの声がいつしか周囲に人を集めれば、にっこり笑って陽菜が中央にくじを置いた。 「面白ければなんでもOK! さぁ……王様だ~れだ!」 「まずは俺からだね」 王冠をかぶった快がまずは軽いところでと顎に手を当て。 「58番が89番の頭の上のりんごを撃つってのはどうかな?」 「あら、89番はあたしだわ」 出てきた祥子が素直にひょいとりんごを載せる。 「俺が日野原を撃つのか? 逆の方がいいんじゃないか?」 「うーん、確かに女の子に何かあるとなぁ」 58番を掲げた影継に快も頷くが…… 「あら平気よ。あたし、これでも結構頑丈なのよ? それに影継さんなら大丈夫だと思うし」 ねっ? と祥子に柔らかく微笑まれれば、それ以上の言葉は必要ない。 「日野原にそう言われちゃあな。よし、やってやろうじゃないか」 テーブルに置かれた防寒用のカイロの隣、暴漢用のトンファーを取って指先でくるくる弄び。 「さあ、斜堂流(トンファー)を見せてやるぜ!」 静まり返った会場に一陣の風が吹く。その結果は続く賞賛の拍手が物語り。 「ふにゃっく……私? いいでしょう、民が望むならこの力を王として振るいましょう!」 変な酔っ払い方してるユウがぱんぱんと手を叩いた。 「13番!」 「お、あたいっすね」 呼ばれて出てきた夕奈を頭の先から足先までじろじろ眺め。 「では今からお開きまでオリジナル語尾を使用しましょう」 「急にハードル高いっすね!?」 ――しばらく相談中。 「じゃあお約束っぽくこんな感じでいくユナ」 これもう誰かわかんね。 「えー次、49番」 「それ俺! 俺俺俺だー! ムッハハハー!」 この時点ですでに誰これ。べろんべろんに酔っ払ってる守生(場酔い)です。 「お開きまで反語で喋りましょうか」 「こんな運命でも従うべきなのか……従ってたまるかよ! なんつってムハハハ!」 酔っ払いだから変でもご愛嬌。 「キャラ付け崩壊! 悪い子、私ってば悪い子ですー!」 会場にユウの高笑いが響き渡った。 「まさかリア充のリア充によるリア充のためのゲーム、王様ゲームを僕が生きている内に体験できるとは……」 王冠を握り締めたぼっち体質の萵苣、無表情だが内心興奮しているらしい。 「ただ飯食いに忘年会に来た甲斐がありました」 なんか女の辞典に載ってそうな発言を残しつつ、ごそごそとパーティグッズを漁る萵苣。 「ありました。じゃあ60番の方にこれをつけて貰いましょう」 ちょこんと頭に装着すれば……猫耳仕様竜一の誕生だ! 「あははいいですね。そのまま猫のモノマネでもして貰いましょうか」 あ、それは竜一に対して迂闊な発言であると言わざるを得ない。 「にゃーん! ご主人様の膝の上で丸くなるにゃー!」 「ひっ……伏せ、ハウス」 それは犬だ。 「俺は奪われる側より奪う側になりてえんだよ! ゲェーッニャッハッハ!」 「トンファー隊の出番ですよ。急いで」 暴徒鎮圧部隊出動の憂き目。 「フフフ……我は渾沌の坩堝より冥王の刻印を得たる者! 我が託宣により新たなる盟約を下さん!(訳:あ、私が王様です。これから命令言いますねーミ☆)」 何か始まった。周囲の視線をよそに、王冠をかぶった影継は「どうした?」という表情で。 「今のが命令の例な。終了時まで邪気眼的な喋り方で通してもらう」 まさかの命令に誰かが唾を飲み込んだ。 「まず……2番」 「じ、自分はそういうのは……」 亘が青ざめて言うが。 「やれ」 「……内に響く叫びも殻を破るに至らない。運命とはかくも残酷なものなのか……(訳:はい、わかりました)」 両手で顔を覆って亘が呟いた。 「それと99番な」 「えーやだよ!」 同じく夏栖斗。 「do it(いいからやれ)」 「……極上の甘露よ潤して欲しい。囀りすら許されぬ我が喉奥を(訳:恥ずかしいよ!)」 ではゲームを続けようかと顎で示し。 「聖剣よ示せ! 孰れが王の器を持つ者たるや!(訳:王様だーれだ☆)」 「王様わーれだ」 刃紅郎でした。 「王が誰と問われれば我で片がついてしまうわけだが」 空気を読んでやったぞと語る王様こと刃紅郎の周囲に次々機材が運ばれ。瞬く間に作られた簡易コロシアム。 「8番と17番は今よりこの中で拳闘試合をしてもらう」 用意された玉座に座り、ワインを片手に指で示した。 「我を楽しませよ」 「え゛」 8番の快が「ほんとうに?」と視線を向けるが、骨付き肉を喰らう王の表情に変化はない。 「参ったな……相手は誰かな?」 困り顔で対角に立つ相手を確認すれば。 「私は遂行してみせる! 月鍵(25)の頑張りを皆に見てもらうのよっ!」 シャアァァァァッッッッ! と雄叫び上げ音速ブロー(秒間1.2発)を繰り出す世恋が目に映った。 ふんすと鼻息荒い世恋にデコピン一つ繰り出せば頭蓋の中身が重傷確定。 快がぬりかべという名のサンドバックになったことは言うまでもない。 「ムッハハハー! 余こそ王か? いや王だ!」 守生、絶賛酔っ払い(場酔い)にして反語中。 「この王位は俺のものだ! 王位を誰かに渡せというのか? だが断る!」 いいから命令しろ。 「30番70番99番の3人でヒーローごっこをやるべきではない? いややってもらうぞ!」 ということで。 「助けてくれー(棒)」 「大丈夫、天井のしみを数えてればすぐだよ(意味深)」 ヒロインを襲う怪人登場。台本の台詞に意味はない。 そこに颯爽と現れるエプロンフライパン寸胴鍋。 「料理は愛情、愛情ことこと膨らませる調理戦士富江だよ! アタシに料理されたい悪い子は誰だい!」 「え? ボク料理されちゃうの?(意味深)」 愛の調理戦士富江と無自覚怪人メイがバトルを繰り広げる、その裏で。 「……なんで、俺がヒロイン役なんだろう」 数史だからかな。 「おっとーアタシに王様が回ってきたよー」 マイク片手にずっと実況を行っていた陽菜が王冠を手にうーんと唸る。 「じゃあ、1番の人が50番の人をお姫様抱っこして外を歩いて一周してくる! ね」 「ワオ! お姫様抱っこ! girlなら誰でも憧れるアレね!」 50番を掲げキュンとしちゃうと興奮するプルリア。その身体がふっと浮き上がった。 「おう、意外と言っちゃあ失礼か? 結構細いんだな」 朗らかに笑うフツに抱えられ、「oh 痺れちゃう……」と乙女モード。 「よし、じゃあ行ってくるぜ!」 「オーイェスカモン! アイムプリンセス! FOOO!」 そのままお姫様抱っこで会場を去っていったフツたちの背中を見送って。 「相変わらず爽やかだよね……」 陽菜の言葉に誰もが頷いた。 「天から吹く風を待った道化に掲げられたクラウンは、指先だけを朱に染める者の約束(訳:あ、キング天風だ)」 亘です。 「4と27の宿命を背負う者、野生と官能の狭間で情熱を示すがいい。アルパカで(訳:4番と27番の方はアルパカの顔真似をしながらスタイリッシュな決めポーズをお願いします)」 アルパカで。 「むう、大衆の面前でぼっちの僕に対しなんという恥辱ですか」 無表情ながら内心ぷりぷりしているご様子。萵苣が余った袖をふりふり荒ぶるヴァンピーのポーズを決めた。アルパカで。 (あはは、いいですね王様ゲーム。無茶振り楽しいです) 悪魔の囁きを受け入れてしまった亘、4番は誰かなと振り返れば。 「我だ」 表情が凍った。 「王たる我にアルパカになれと。いや構わん、そういうゲームなのだからな。ただし」 ――相応の責任は果たしてもらうぞ。 威風堂々アルパカ王のポーズを決めた刃紅郎の視線の先で、亘はすでに王様ゲームを後悔していた。 「我はこのゲームを別の国の王になりきるものとして解釈している。そうすると貴様は他国の王にアルパカになることを強要したというわけだ。そうだな?」 「まぁまぁ忘年会ですから。今年も一年お疲れ様でしたってやつですね!」 他国の王を正座させている刃紅郎にお酌して、ギロチンはあちこちふらふらと回っていた。飲みすぎると寝るんで相手に先に飲ませるとギロチン、いつも通りといえばいつも通り。 視界に1人黙々と食事を取る萵苣が映った。 「いかがです? ジュースですけど」 「お構いなく。お腹一杯になったら早々に帰る予定です」 騒がしい周囲も何処吹く風、空気に溶け込んでもぐもぐとごちそうを食べる萵苣。 「僕は真の意味でぼっちなので、誰かと喋る必要も無いですし」 「じゃあぼくとお喋りしましょう」 萵苣がご自由にと口にすれば、どこまでも自由に語り続ける男。 「しかし、奥地さん一人いるだけで『会社の忘年会』っぽくなりますね」 くたびれたおじさん(ヒロイン)を指差したり。 「その横に睦蔵さん来ると何の集まりだか分からなくなりますけど」 「何か言ったかね君ぃ!」 八雲を罵ったり。 「まったく満貫小魔道八雲だとか人のことをなんだと思っているのかね」 「言ってませんよ。思ってますけど」 「ならばよい!」 あ、すでにガチ酔いしてる。 「しかし王様ゲーム! 王様ゲームかねハハハ! 実に宜しい! 面白そうだ受けて立とうではないか!」 なんだか気分が良いぞと大笑いを続ける八雲。その周囲で妙に取られている距離感。「あれが真のぼっちですよ」と言われれば萵苣も頷かざるを得ない。注がれたジュースをいつものステイストローで飲み干して、次の料理に手をつけた。 「では王とアルパカの関連性はなんだ? 具体的に言ってみせろ。アルパカで」 刃紅郎はまだやっている。 ●闇のゲーム ~暗黒編~ 「皆さん、いつもお疲れ様ですー」 周囲にお酌して回っていたユウの瞳がきらりと光る。 「奥地さーん! いっしょに鶏ナンコツ揚げをコリコリしましょーよー!」 左右の手にビールと鶏軟骨を持って近づくユウに「あー、うん、鶏軟骨唐揚げおいしいよね」と口にしつつ。 「ずいぶん酔っ払ってるな。大丈夫か」 ざるで常識的な飲み方しかしない数史から見たらほとんどが酔っ払いではあるが、その中でもユウはちょっと変な酔い方をしている。 「全然大丈夫ですよー。あー、奥地さんはまた無精ひげ散らかしてますねー? 剃り倒しますよー?」 「いや、少し落ち着こう。な?」 水なんか飲ませる数史とユウの状況がどう見ても『会社の後輩の面倒を見る世話好きの先輩in忘年会』だったのはともかく。それらを眺めてやっぱり大人の集まりだなぁと思う少年が1人。 大人な見た目を持っていようと13歳、日明にとってこの忘年会の空気はどうにも慣れるものではない。 宴会から1歩引いた立ち位置で、遠巻きから喧噪を眺める。内向的な自身の自覚はある。彼らへの憧憬も理解している。それはそれとして正直、カオスの巻き添えが怖い。 「ねぇ楽しんでるかしら? ダメなのよ楽しまないと」 と、横から子供な見た目を持つ25歳、世恋が声をかけてきた。というかのしかかってきた。 「一生懸命に遊ぶのよ。はしゃいで見せるのよ」 「月鍵さん、もしかして酔っ払ってますか?」 中身が大人である以上問題ないのだが、やはり違和感がある。 「どう思う? ねぇねぇ私飲んでると思う?」 (あ、面倒な人に捕まった) 延々と語り続ける世恋の話を聞き流し、達観して曖昧に頷く日明。 「物まねなら任せてね! セイウチとかカバとかの物まね得意よっ、月鍵世恋(25)は頑張って遂行してみせる」 「年齢に何か思うところでもあるのですか」 白目むいて熱く語る美少女()を、諦めたような面持ちで世話を焼いていた。 「よっしゃー! 俺が王様だ!」 いつでも全力なツァインの雄叫び。よしと腕を組み。 「じゃあ2番はNOBUの真似な!」 「ほう……懐かしいものだな」 僅かな時間の後に、ワックスで髪を固め下へ伸ばした刃紅郎が将門伸暁の衣装を纏い進み出た。かつてNOBUリッシュコンテストで刃紅郎が着こなしたものである。 「――滾るネイキッドソウルは常在戦場。溢れ出す王威でエンドオブソロウ――」 刃紅郎、マイクスタンドを手に威風を吹かせ。 「おーさすがっ! じゃあもう1人……99番はロイヤーの真似な!」 「裸の心はいざ知らず、纏う闇はこの身を蝕み剥がせぬ呪詛(訳:どうやってだよ!)」 夏栖斗は邪気眼発症中です。 「あーそうか。じゃあ衣装だけでいいわ」 「悪鬼羅刹!(訳:鬼か!)」 まぁ都合よく衣装なんて。 「あるヨ。ブーツ以外なら」 「僕にビキニ付けろって言うのかよ!?(素)」 以後、夏栖斗はウェスタン邪気眼ヒーロー(ビキニ)になりました。 「王様だーれだ! ……あたしなのだわ!」 梅子、王冠を掴み勝利の決めポーズ。 「……そうねえ、んー……12番と27番であっちむいてホイ真剣勝負とかどう?」 そうして集められた2人は日明と萵苣。年若い対決となった。 「こういうの苦手なんですけど……ともあれ、折角なので参加させて貰います」 手抜きなし、スキルありの本気の勝負なのだわ! とうるさい梅子に言われずとも、フォーチュナ有利に違いないだろう。内心の高揚を隠し、日明が勝負に臨む! 「あっちむいて――」 ――見え……ない? 全く読み取れない未来。焦る日明の眼前で、ふっと小さく萵苣が笑った。 「フォーチュナは特別な神秘・未来を読み取る力と聞きます。ぼっちの中のぼっち、『奴は我らヴァンパイアの中でも最弱』と言われるヒエルラキーの最低辺、ヴァンピーたる僕に反応するとでも?」 何故かドヤ顔の萵苣の指先が、その勝利を示し―― 「よーっし、キング・オブ・キングスが命じるぞ!」 王冠をかぶった狄龍がテーブルに置かれた暴漢用トンファーを手に取った。 「55番と77番は、トンファーを使った一発ギャグを披露せよ!」 「おやおや困ったねぇ」 無茶振りを受け富江は思案顔だ。 「どう使ってもいいぞ! 広がる可能性は無限大だな!」 「うーん、アタシは料理人だからね。出来るのはこれくらいかねぇ」 富江は取り出したキャベツにトンファーを押し当て……トトトトトトトンッ! 「千切りにするくらいかねぇ」 「ってそれすごくねっ!? 料理人は包丁を選ばずということか!」 そういう問題か? 「よーしでは次! ハードルはいくらでも上げてやるぞ! ふはははは余の寛容さにひれ伏すが良いわーーー!」 「任せろ! トンファーキック!」 ――どごぉ! 「うぼあ! み、見事だ……」 影継と狄龍、トンファー合戦開始。 「王様だーれだ! ……やったね僕!」 ガッツポーズの夏栖斗に飛ぶリテイク指示。 「……孤独を愛しすぎた宝石は誰の手にあっても他の物にならず嘘を囁き続けた(訳:僕の番だね)」 この子可哀想。ビキニだし。 「とーにーかーく! 7番と25番はアークにきて初依頼の経験談を報告して!」 あるよね初めての依頼とかの恥ずかしい出来事と語る夏栖斗に。 「今の夏栖斗の状態ほど恥ずかしいことはないと思うよ」 「やめて! ほんとにやめて!」 やめてあげて陽菜。 「うーん何かあるかな」 初依頼、初依頼と思い返せば。 「……ロケットランチャー抱えて猪鍋を食べてた気がする」 「どうして!?」 そんな思い出話。 さてもう1人はと言えば。 「俺に聞かれても、困らないかな……いや困る」 守生だった。 「うーん、最初の頃か……」 暫し考えて出た結論。 「病弱設定がまだ前面に出ていた気がする」 「怒られるよ!?」 誰が誰にとは言わない。 「……あー、俺が王様みたいだ」 こーいうの苦手なんだけどなぁと呟いた数史が、そうだなぁと顎に手を当てる。 「じゃあ、35番」 「あ、俺だ」 げげっと声を出したツァイン。額に手を置きつつ、だがまぁと考える。 他人様に無茶振りをした手前、自分だけ安全地帯にいるのもらしくない。 ……よし! 全力でいじられてやるぜ! 「35番は好きな人とか言わなくていいから好きなおつまみ食っててくれ」 「……は?」 間の抜けたツァインの言葉を意に介さず。 「好きなのないか? じゃあ注文していいぞ」 「……」 まぁ飲みなとビール注いだり。 「今年も大変だったろ。忘年会だし発散していけ」 なんだこの流れ。 「俺もな。人からやれ大魔道だ、やれイケメンだと言われてなんなんだろうと思うことがあってな……」 「あー……俺も身に覚えのない称号で呼ばれたりしてるわ……」 ……ここは放置していこう。 「そうです、私が神様です! あ、神様関係ない? そう……」 遠い目をした世恋が気を取り直し、号令開始! 「14番と57番の人が『師匠』が今適当に浮かんだ動物の物まねをするのよ」 「あ、ぼくですね。弱ったなぁ」 まったく弱ってなさそうなギロチン。相手が世恋ならさほど酷いことにはならないという確信。 「ところで師匠ってどなたです」 「ワタシだ」 ロイヤーの顔を見て弱った。 「では師匠お願いします」 「ハイエナで」 「それ絶対動物のつもりで言ってないでしょう」 どうやって演技しろというのか。他の方も無理でしょうと目を向ければ。 「VUEAAXA! ワタシはサバンナの掃除人! 獲物は逃がさないヨ Oh Yeah! Come on Come on Come on!」 残念なことにプルリアだった。 「ぼくもハイエナですから。共食いとかそういうの違いますから。あ、待って」 ――VUEAAXA! 会場を狭しと走り回るプルリアハイエナによってサバンナの厳しさを知りました。 「ああ、僕ですね」 日明が受け取った王冠を頭にかぶってみせ、少しだけ考えて口を開いた。 「61番と62番のお二人で、お互いの嫌いな食べ物をひたすら食べさせ合ってください。笑顔で」 付け加えた。 というわけで。 先食――狄龍。 「ハハハ、さあ嫌いな物を教えたまえ。笑顔で食べさせてあげよう」 八雲の言葉に考える素振りを見せて。 「鰻の蒲焼が嫌いだな。冬が旬だって知ってた? あ、山椒はたっぷり振ってくれ」 「本当に嫌いなのかね!?」 「ああ嫌いだとも。古代ローマでも食べられてたって知ってた?」 後食――八雲。 「よし、私は饅頭と熱いお茶が嫌いだ」 「任せろ。ちょうどサルミアッキ持ってた」 「話を聞きたまえよ!?」 結果。 「ええと……すみませんでした」 日明がねぎにまみれて倒れ伏すぼろ雑巾の八雲に謝罪の言葉を投げかけた。 「坊様だーれだ!」 フツしかいない。 「オレ! んじゃあ50番と51番」 「あ、あたしなのだわ」 「そして私ですー」 出てきた梅子とユウを見た時の、フツのいつにない瞳の輝きをご覧ください。 「『ごきげんよう、お姉さま』ごっこをやってください!」 「は?」 は? 「お願いします! 成仏しきれない霊がいるんです!」 「え?」 え? で、お嬢様学校の制服です。 「ごきげんようなのだわ、ユウお姉さま」 「ごきげんよう、梅子ちゃん。タイが曲がっていてよ」 「ん、くすぐったいのだわ……」 「ふふ、しっかりなさい。いけない子ね」 女子高をなんだと思っているのか小一時間問い詰めたくなるが、2人を見つめるフツは泣いていた。 「ありがとう……ありがとう……」 「きょ、今日のフツは怖いのだわ」 土下座するフツに周りは引いていた。が、本人は気にかけてもいない。 「よーし宴会の払いはオレが持つ! 心配するな、マネーならある!」 爽やか……かなぁ。 「よーしフツの奢りだ! かんぱーい!」 何度目かの音頭を取って、快が酒を回していく。 率先して飲み、率先して注ぐ。盛り上げながら面倒も見る。実にそつのない男である。 「宵越しの金、もとい、年越しの金は持たない主義だ!」 今決めた! と叫ぶフツ。酔っ払っているのだろうか……いや子供ビールだあれ。 「多分参加者の中で、新田や御厨に続いて3番目くらいに金持ってるはずだから!」 誰か彼に爽やかさを返してください。 「で? で? おまえら、どの子狙い?」 ビールぐびぐび飲んではいやらしい笑みを浮かべ。酒の入った竜一は酷いありさまだ。普段との比率的には1.1倍くらい。 「胸の大きい方? 小さい方? ……やっぱり愛でるならばロリだよねー」 「なになに? 何の話なのだわ?」 日本酒をくいっとあおり熱く語る竜一に、聞きつけた梅子が顔を出せば。 「なに、君の話さ。まぁ飲みな」 「ビール? ……うえっ、苦いのだわ……」 一応成人の梅子、まだまだお子様舌である。 舌がじんじんと麻痺したような感覚。どうしてこれが美味しいと思えるのか……まだまだ自分はジンジャエールでいいと誓った、梅子の鼻に届く揚げたての匂い! 「あ、フライドポテト! 食べる! あたしにもちょーらい!」 やっぱりまだまだお子様である。 「さあ食えさあ飲め! そして脱げ!」 「おう任せろ! マネーならいくらでもある!」 悪酔いしてるなこいつら。 そんな宴会の様子を眺め、快が笑っていた。 「盛り上がってるね。まるで悪魔のゲームだ!」 罰ゲームも宴会の余興。さあ年を忘れて楽しもう! 「さあ酒の席でのこと、何があってもノーカンだノーカン」 飲んで笑って楽しんで。それらを沢山した者が勝ちなのだから。 ●闇のゲーム ~崩壊編~ 「ねーねー俺のメカ眼帯の下がどうなってるか見たい? 見たい? 見せたげよっか? ねえ見せたげよっかあああ!?」 「ムッハッハー! 楽しいなぁ! 楽しいよなぁ! いや楽しいだろぉ! 楽しいって言えよおおお!」 黒歴史になりそうな酔っ払いが増加し始めた辺り終盤も近い。狄龍は素直に酔っ払いの有り様を示しすぎた。なお、忘年会明けに守生の記憶は都合よく無くなっているそうです。 「フフフ……程良いカオスの大気が場に満ちているじゃないか」 場の隅っこで厨二病をこじらせる影継。いよいよ末期。 一方個々人の都合により、遅くなっちゃったわねと今から参加を始める人間もいる。忘年会ゆえに胸元を開けたラフな服装。身につけた派手ではない程度のアクセサリー。普段と大きく違う格好ながら、トレードマークのピンクのアフロは健在。 「アフロデンジャラスちゃん、こっちこっち」 声のした方に目を向ければ、夏栖斗が笑って手を振っていた。 「お疲れ様。年の瀬だねー」 チューハイを手渡して空けた隣に座ったこの2人、アフロが繋げたメル友関係である。 「こうやってみんなでバカ騒ぎできるのも、元気だからってやつ?」 ジュースから口を離し夏栖斗が周囲を見渡した。皆笑っている。それが嬉しいと笑う少年に―― 「あたしとしては、あんたのその格好が気になってしょうがないんだけど」 「うん、出来たら気にしないでもらえるかな……」 夏栖斗、絶賛ウェスタンヒーロー中。 「やっべこれすごくねっ? トンファーをさ、こうして指に挟んで挟んで……六刀流!」 「ムハハハハ! すっげやっべ! まじ六刀流すっげー!」 酔っ払いが致命傷。 「くっ、俺が今まで保ってきたキャラクター性が……!」 そして手遅れ感。 「44番が、82番の人間椅子にな~れっ!」 わかるだろう? 竜一だ。 「ある意味、罰ゲームになる可能性もあり、ご褒美となる可能性もある。俺が変わりたいくらいだな!」 勿論女性限定の椅子なとぐへへ笑い。 さて、結果は罰ゲームかあるいはご褒美か…… ……非常にぷるぷるしている。乗っているのは華奢で小柄なメイではあるが、四つん這いで椅子になる梅子の身体がバンビのようにぷるぷるしている。梅子だし。 「お尻の下で椅子が動いて気持ちいいね」 メイの発言は遊園地的な意味であって別に変な意味ではない。 口を開く余裕もなくぷるぷるしている梅子。それを感慨深げに眺め―― 「……なんか、そういうの似合うね」 「どういう意味なのだわ!?」 竜一の発言に同意意見を求む。 「やぁ諸君、私が王様だよ」 はしょりたいが八雲。 「よし96番と69番。君らには今から……ほうらアレだアレ。サイコロ振って出た色に手や足を付けて行く……あれをやってもらおうか」 というわけなのですが…… 「奥地さんー! 一緒に頑張りましょうね」 「……え、ほんとに?」 ほんとだよ。ユウと数史のペアでリア充ゲームである。 ――右手を赤。 「はいー」 ――左足を黄色。 「っと、おっ」 のんびりと余裕を持って動かすユウ。おっかなびっくりですでに危ない数史。なんだかほんわかする。 それを両の手を叩いて急かすのが八雲。 「そうら右の足を青に! さぁ急ぎたまえハリーハリーハリー! アッ、まて私は色ではなッ……ぐぼぁっ」 「あ、ごめんなさい八雲さんー」 天罰。 「あたしが王様になったら、是非やって貰いたかったことがあるのよね」 ふふと笑った祥子が12番と24番を引っ張って楽屋裏。 「え、ええ……?」 「まったく問題ないのよ!」 そんな声が響いた、一寸の後。 「……あの、世恋さん」 出てきた2人は日明と世恋。どちらも少し大人メイク。 「なあに? 日明さん」 「こうして偶然再会出来て……あの、当時は何も伝えることができなかったけど……」 顔を赤くしてたどたどしく言葉を紡ぐ日明に、世恋は余裕の笑みを浮かべ。 「伝えたいことって、なあに?」 そう、会場の中心で突然始まった寸劇。 伝え損ねた言葉はとげとなって今もなお。過ぎ去った青春を手繰り寄せて、舞い上がりたいほどの嬉しさを抱いて。 自分が演技指導した台詞も実物を見れば心ときめくラブロマンス。祥子がにっこりと微笑んだ。 「あたし、爽やかなラブストーリーが見たかったのよ」 「アタシがお富様、もとい王様だよ!」 あははと笑った富江が「さてと……じゃあ5番に」と口にした途端上がった歓声。 「僕ですやったー」 「アタシはまだ何も命令しちゃいないよ?」 ギロチンの言葉にそう返すも、指で示されれば笑って観念して。 「それじゃあ丸富食堂特製の特盛カツどんを食べてもらおうかねっ」 極上の匂いをただよわせ、出汁に輝く黄金色の米。ふんわり卵にとじられた、衣と肉の黄金比! お1人限定の幸運にありつき舌鼓を打つギロチンに周囲の憎しみが集まっている。 「お次は6番の子」 「アタシだ! なになに?」 期待に満ちた陽菜の笑顔に。 「学園に行って100人に好みの定食メニューを聞いてきておくれっ」 「結構しんどい!」 これも運。 「最後に13番の子」 「お、あたいユナー」 語尾が変更されている夕奈。天国か地獄かとどきどきして待てば、富江がにっこり笑顔を浮かべ。 「肩でもたたいてくれないかい?」 「フーイズザキング? イッツミー!」 ワオとウィンク一つ、プルリアが王冠を掲げてLet's order! 「じゃあいくヨ! 41番と61番は赤ちゃんプレイ!」 よく響く声が過ぎ去った後、会場は沈黙に包まれた…… 「……ばぶー……」 「……ちゃーん……」 赤ちゃんプレイを強要された男たち。名をツァイン・ウォーレス、結城 ”Dragon” 竜一という。共に二十歳。ふて腐れ、死んだ魚の目で呟き続けている。 「この間雑誌読んだら書いてあったワ! 男は赤ちゃんプレイが好きだって!」 好きなんでショ! と興奮するプルリアに返す言葉は。 「……あぶー……」 「……ハーイ……」 やる気がない。 「ああ好きさ……相手が女の子ならな!」 「それはお互い様だろ! いや俺は好きじゃないけど!」 「ちょっとアナタたち! もっと素直にさらけ出していいのよ! トシワスレだから!」 Hey! Big Baby! Oh Yeah! ――恥辱は続く。 「やったーぼく王様」 王冠をかぶってギロチンはいつも通りの笑顔を見せて。 「65番の人を85番の人が膝枕とかそんなのですかね」 「85番? じゃああたしよ」 祥子が進み出れば、その後ろからドヤ顔で現れる男1人。 「ようやく私にも運が回ってきたのではないかね! よろしく頼むよ君!」 こちらこそと微笑んで祥子が膝を下ろせば、ワンピースから覗かせる白い肌。八雲は早速後頭部から倒れこみ…… 「あ、待った」 その頭を掴み、膝から軌道を逸らせば床にギガクラッシュ。 「ぐおあー! 何をするのかね!」 「祥子さん恋人いますし。あと八雲さんがいい目にあうのって駄目だと思うんですよね」 言いながらコップを八雲に乗せるギロチン。 「というわけで水の入ったコップを乗せ続けるに変更です」 「駄目って何……熱っ! これ水じゃない絶対熱湯……熱っぅつぅぉぁ!」 断末魔響く会場で。 「あはは、八雲さんの表情面白いわね」 祥子はのんきに笑ってた。 「あたいが王様っすね……ユナ」 夕奈が盛り上げてみせるっすよと考えて。 「2番はそこで目を閉じて待ってて欲しいユナ。1番はこっちユナよ」 命令を受け、怪訝な顔で快が目を閉じる。突如周囲に響いた笑い声にびくりとしたが、まだ我慢。 「1番は2番を口説き落とし、跪きその手を取って手の甲に接吻するユナ」 え、俺が口説かれるのか。もういいユナと合図され、快が目を開けば。 ――三千世界の底が見えた。 「よっ、新田。お前さんにはいつも感謝してるんだぜ。一緒に念仏を唱えないか? 朝まで。宇宙まで」 夜の街を渡る黒いスーツ姿のフツ。そのまま硬直する快の手を取って――サンサーラと呟いて手の甲にくちづけた。 「伊達ワル仕様ユナよ」 ドヤっと夕奈が口にした言葉も、快には届いていないだろう。 「あ、ボクだよ」 王冠を受け取ったメイが思案顔を見せて。 「3番の人が61番の人をお姫様抱っこしてそれっぽい台詞を囁く、でいいよね」 「ほう、俺がお姫様抱っこされるとな」 それもいいだろうと狄龍がカモンと示した先。 「じ、自分がするのですか……」 亘がなにやら踏ん切りがつかない様子。 「別に『キスしろ』とか言われたじゃないんだぜ」 「ちゅっちゅだけはご勘弁を! それは捧げたい方がいますので……」 未経験を自己申告した亘がわかりましたと気合を入れ、翼を広げふるふると必死に狄龍の身体を持ち上げた。 ――いきます! 「このまま何処へでも連れて行ってあげましょう」 決まった――ほっと息を吐く亘に、抱っこされたまま狄龍がにっこり笑った。 「でもやり直しだぜ」 え? 疑問も束の間、設定忘れてるぜとウィンクを返され。 take2。 「――自由を忘れた鳥に境界を飛び越える翼を与える。約束の地へと」 「そら、次の料理が上がったよ!」 「はーい、持って行くユナよー」 忘年会はまだまだ続く。折角だからと富江がその料理の腕を振るえば、夕奈が給仕に駆け回る。 笑い、騒ぎ、飲む中で、それらを手助けする人たちもいる。料理を作り、お酒を運び、笑顔を届けるそんな役目。 「皆育ち盛りなんだからね。夕奈もちゃんと食べるんだよ!」 「運びながら食べてるユナよ」 料理を運び、お酌をし。食べながらでも常に周囲に気を配る辺りは職業病だろう。料理を小皿に取り分けながら、味見する料理の美味しいこと! 「役得も兼ねてるユナ」 そう笑って駆け回る。 「う、うう……」 一方頭を抱える『big Baby』ツァイン。生き恥中。 「確かに何でもするって言ったけど……いやぁぁぁあああッ!」 頭でリフレインするばぶーはーい。 「の、飲んで忘れよう……いや、この場の全員記憶が飛ぶまで飲ませなければ……ッ!」 「ねぇ大丈夫?」 そんな声をかけられ、平気だと振り返れば――メイが目に入った。正確には、メイの手にあるビデオカメラが。 「それ撮ってるのぉ!?」 「うん。みんなの思い出だし、全部録画したよ」 いつかみんなで見ようと笑えば、ツァインはがっくりうなだれるだけ。その姿すら、メイはしっかり記録に収めていた。 それも一幕。あちこちでいろんなドラマが繰り広げられている。 今日は忘年会。笑って飲んで楽しもう。 その様子を目を細めて眺めていた夕奈にかけられた声。 「楽しんでるかい?」 富江の言葉に振り返り、笑った。 「勿論、楽しんでるユナ」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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