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メメント・モリの追走者

●夢見た瞬間
 違和感なく現実を直視したのはいつぐらいぶりだろう? と彼は思案する。
 否、考えるまでもなかった。
 あいつか死んだ日だ。かつて親友と呼んだ者が死んだあの時からだ。
 二人で夢を語り合った。
 どちらが先に未来を手にするか競い合った。
 一緒に泣いて笑って、ガキの頃からそうしてきたのだ。
 だから信じられない。信じたくない。
 けど、現実がそれを許すはずもなかった。
 一人で生きても、二人で生きても、時の進みは平等だ。生きていくためには金が必要で、そのためには夢ではなく妥協を選択せねばならない。
 過去ではなく現在を見るための儀式として、彼は毎日ここへ来ていた。友人だった男が眠るこの墓場へ。
 頭ではわかっている。友人はもういない。彼はある日突然心臓発作で死に、自分の前で骨と灰になった姿を晒した。
 ――けれど、いつか、またひょっこりあいつは俺の現れるんじゃ……。
 他人からすれば馬鹿馬鹿しい妄想が、ある意味では彼の支えでもあったのだ。
 そんなあり得もしない幻想でも抱かなければ、彼は立ち直った振りさえできず、廃人になっていただろう。
 今だってそうだ。
 彼の直面している今があまりに非現実的だからこそ、数年ぶりに彼は現実を受け入れた。
「迎えに……来てくれたんだな」
 涙を浮かべて微笑む彼に救いの手が伸びる。
 ああ、それは彼にとっては開放なのだ。
 肉が腐り落ち、内の骨さえひび割れた骸の腕が彼を抱きしめる。
 そして、もはや人語さえ語ることのない口が開き、彼の首を食い千切り血飛沫が上がった。
 彼は泣き笑いだった。

●救いってなんだろう?
「夜の墓場で男性がアンデッドに襲われるわ」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はブリーフィングルームに集まった者達へ簡潔にそう告げた。
「襲われる彼は、アンデッドを親友と思っているようで、抵抗もせず死を受け入れるわ」
 彼がアンデッドを心から親友と信じ切っているのか、現実から逃げるために思い込んでいるのかはわからない。
 それが彼にとって果たして本当に救済なのかも決めるは個々の考え次第だ。
「皆が乱入するのは彼が襲われるところになるわ。目的はアンデッドの撃破。彼の生死は……問わない」
 リベリスタ達ならば彼を救助しアンデッドを倒すことも不可能ではないだろう。
 それも含めた上で、イヴは問わないと言ったのだ。
 戦う者達に結末を託し、彼女は話を終えた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:上履太郎  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月04日(土)22:40
どうも、上履太郎です。
今回はアンデッド退治をお願いいたします。

●任務達成条件:
アンデッドの全滅。
アンデッドは特に逃走はしません。

●被害者について
被害者の男性は襲われる所を助けても、そのままでは戦場から動こうとしません。とはいえ、彼自身はなんてことない一般人ですが。
アンデッド達は男性がいる場合、そちらを優先して攻撃してきます。

●敵について
フェーズ2✕1
フェーズ1☓5

A:羽交い締め[近単]……捕まるとダメージの他に攻撃の回避力-30の補正を受ける。追加効果『麻痺』。
A:噛み付き[近単]……羽交い締めにされているものを優先する。出血効果あり。
A:毒液[遠複]……体内から液体を吐き出しばら撒く。毒効果あり。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
フライダークマグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
ハイジーニアスマグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
フライダークナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ヴァンパイアクリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
ギガントフレームプロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ジーニアスソードミラージュ
中山 真咲(BNE004687)
ジーニアスナイトクリーク
常盤・青(BNE004763)
ヴァンパイアソードミラージュ
ルイリス・ストロフィア(BNE004848)

●メメント・モリの割込み者達
 夜の墓場で迫るアンデッドの群れを前に、青年は涙を流した。
 嬉しいのか悲しいのか、引きつった笑顔はどちらとも言えず、どちらともとれた。
 アンデッドの腕が彼にかかる――それよりも先に、何者かが横合いから彼の元へと走り込む。
「ヤダー、超こわーい☆」
 調子外れな叫びと共に『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)が抱きつきながら青年を庇い、結果としてアンデッドの腕は空をきった。
「悪いけど、ここから先は行かせないよ」
 そこへ小柄な少女、『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)がアンデッドと青年の間に身体を差込み突き離しながら、自身の動きを戦場に適応させていく。
 しかし歩き回る死体は一体だけではない。群がる別のアンデッドが青年を獲物とし標的とする。
 そうはさせないと、周囲に魔力シールドを発動させた『現の月』風宮 悠月(BNE001450)が、噛み付こうと突撃するアンデッドの前に立ち逆にはじき返した。彼を守ろうとする者が彼女ら二人だけではないのもまた同様なのだ。
「言うなれば……半身を失ったようなもの、という所ですか」
 その挙句が儚い夢想に縋って通う墓地でアンデッドとの接触である。死んだ方が楽になれると思う心持になってしまったとして、それは不運と言うべきなのかもしれない。
 とにかくまずは青年を敵から引き離すために彼女はあえて前に出ていく。
「チェインライトニング!」
 雷光の快音が響き、青年へと向おうとするアンデッド達を焼き払う。されど、それを放った『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)の表情は晴れない。
 こういう割切りにくい仕事はどうにも碌でも無い事――明るくない先ばかり考えてしまうためだ。
 雷で一瞬動きの止まった者達に、ギガントフレームの『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)による急所を狙った早撃ちが次々と叩き込まれていく。
「まあまあ、死ぬのはいつだってできます」
 それに死んでしまったら、解放されたという気持ちすら味わうことはできなくなる。
 生きたならば生きたなりの未来があるものだろう。少なくとも彼女からすれば、ここで死なれるよりはいい。
「職業柄、ご勝手にどうぞというわけにはいかないんですよ、見つけちまった以上はさ」
 ある意味これ以上なくシンプルな理由が、青年を助けるあばたの動機だった。
「(メメント・モリ……死を忘れるな、か)」
 そう心の中で呟き、『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)は冷静になおも青年へ近付こうとするアンデッド一体の額を撃ち抜いた。流石に元々が死体だけにこれだけでは仕留め切れないものの、着実にダメージは与えている。
 結唯と同じく『ロストワン』常盤・青(BNE004763)もまた沈黙を守り前線へと出る。しかしその理由は結唯と大きく異なっていた。
 青年の気持ちが自分と多く重なる青は、苦しむ彼を見ていられなかったのだ。
 生きる気力がないからこそ、無駄な抵抗もなく青年が連れて行かれているお陰で、すぐさま用意したスタンガンを使うこともなかった。
 被害者を一番身近に感じているだろう彼にとっては小さな幸運だったのかもしれない。
 行動に余裕ができた分、暗視ゴーグルで視界を確保し青年を追おうとするアンドデット達を身軽な動きで切り裂いていく。
 救いってなんでしょう? と、自問しながら青の範囲外から迫るアンデッドを『桃楼の斧』ルイリス・ストロフィア(BNE004848)が抑える。
 親友の死を乗り越え前向きに生きる。例えばこんな綺麗事。
 親友は貴方の死なんか望まない。例えばそんなお為ごかし。
 そういう言葉を青年にかける気にはなれない。そんな必要は感じられない。
 既に自分達から離されつつある彼を見て、彼女はそんなことを思うのだった。

●わかりやすい敵と暗中の意志
「世界は本当に残酷で意地悪だね」
 言葉と共に真咲は思う。
 わざわざこの人が居る時に覚醒したのでなければ、覚醒したのが死んだ親友でなければ、青年はただの動く死体を親友と錯覚して現実を放棄するような真似はしなかったのかもしれない。
「動く死体を見ても驚かない……というより、目に見えている通りに物が見えていない辺り、相当に参っているようですね」
 青年の友人は既に火葬されている。墓参りにきている青年は当然そのことを理解しているはずだ。それでもアンデッドを友人だと錯覚している彼の精神は相当に参っているのだろうと悠月は推測する。
 そのレベルまで精神的に病んでいるとしたら、それはもうリベリスタがどうこうするという話でもない。
 悠月の言葉を聞き、あるいはこの死体達を覚醒せしめたのは青年の想いそのものなのだろうか? などとも真咲は考えるが、まあいいや、と自分の考えを切り捨てた。
 結局は殺し直すだけ。ならば、その後悔や思い出ごと全て……。
「イタダキマス」
 命を奪う宣言と共に、少女は高速の連撃で向かい合うフェーズ2のアンデッドに斬りかかった。
 悠月もまた、青年の非難はとらに任せてチェインライトニングでアンデッド全てを雷で撃ち攻めていく。
「とりあえず一般人の救出は成否には含まないのよね」
 こぼした杏の言葉に反応する者はいない。皆、戦闘に集中しているためだ。そして、それでいい。
 彼女達はあくまで神秘に関わる事件のために出動するのであり人命救助が全てではない。青年が死にたいと思うのは彼の勝手であり、絶対に止めなければならないはないのだ。
 何より、ここで彼を助けても数日後にはまた自殺している可能性すらある。
 それでも迷わず助けることを選ぶリベリスタはいるものだ。死にそうな人が居る! 助けなきゃ! っとシナプスが直結している者達。
 その甘さは杏の理解を超えている。けれど、
「……ま、嫌じゃないけどね、そういうのも」
 煙草の煙と共にそんな想いも呑み込んで、彼女は行く。仕事だと割りきって、なすべきことをなしその報酬を受けとって終わらせよう。
「さっさと片付けて、旨い酒飲むわよ!」
 自分を鼓舞しながら放った四色の魔光がアンデッドの一体を打ち砕き仕留めた。
 リベリスタ達の中だと、結唯の感性も杏に近い。正確にはもっとシビアでさえある。
 メメント・モリ――死を想うということは、同時に生を自覚せよという意味でもある。
 けれど、神秘に襲われていた青年は死を想い自ら追いかけようとしている風にさえ見えた。死にたがりならば放っておけばいいだろうに……。
 青年を安全な場所まで連れて行ったとら。
 真っ先に身を挺して飛び込んだ真咲と悠月。
 そんな彼女らをお人好しだと思いながらも、結唯は黙したまま愚直に前進を続けるアンデッド一体の背後をとり、首ごと掻っ切り絶命させた。
 誰がどのような意見を唱えようとも、エリューションを全滅させるという目的は変わらないのだ。
 そういう意味でなら、あばたはある意味最も達観している立場にいるのかもしれない。
「ネクロマンサーが指揮する死体に比べれば全然マシですね」
 あばたには、他のメンバー程青年そのものに強い執着はない。思うことはあれど、想うことはない。
 だからこそ、根が真面目な彼女はアンデッドを倒すという責務を誰よりも的確にこなしていると言えた。
 青年側へと進もうとするアンデッド達へ立ち塞がって、自分より後ろへ行こうとするものを的確に妨害、ピンポイントに急所を狙い射殺する。日常内では幻視の下に隠されている機械的な身体も合わさり、文字通り戦闘マシーンのように映っている者もいることだろう。
「おっと」
 敵を撃ち抜いている内に忍び寄った別の個体が、背後からあばたを抑えにきた。肉体のリミッターが外れた力が厄介だと判断するや否や、彼女は速やかに救援を求める。
 その要請に応えたのはルイリスだ。
「やらせませんよ」
 意識を集中して場を把握することを意識していた彼女は、いち早くあばたを捕縛するアンデッドへ接近し横合いから大戦斧を叩き付ける。
 アンデッドがその腕を離そうが構わず連打を入れ重い刃で次々と腐った肉体を切り飛ばしていく。その動きは敵が完全に停止するまで止まることはなかった。
 彼女の激情めいた心はアンデッドのみに向けられたものではない。ルイリスには現実から逃げ、死による解放を望む青年が気に食わなかった。
 そして、彼女の憤りと全く真逆の立場にいるのは青だ。
 青年に同情する者。彼の弱さを認めようと思わない者。彼に対し物申したいリベリスタは複数名いても、青年対して感情移入しているのは青だけだった。
 青年と同じく自分に近しい者を失い、己のいるべき場所や生きるための足場が完全に崩壊した青にとって、親友を失って死を享受しようとする青年の姿は否応なしに自分と重なる。
 逃げ場のない命にシンパシーを感じながら、彼はリベリスタという非日常の中にいる。
 ギャロッププレイで敵を絡めとって縛り上げているこの行為もまた、青にとっては逃避に他ならないのだ。
 個々の意志が介在し回る戦場は、しかしリベリスタ達の手により沈静化されつつあった。

●逃げ場なき者の行き先
 強結界で人避けを行いながら、とらは青年を連れて避難させる。暗視を発動させているため彼女の足取りに迷いはない。
 ここまでくれば大丈夫だろうと足を止め、とらが改めて青年に向き合った。
「超怖こわかった~なんてねぇ、突然だったけど~。ボナセーラ☆皆のエンジェルとらだよ。夜のお墓とか寒いし恐怖すぎっしょ。兄さんも早く帰んなよ」
「けれど、さっきのは……」
 流石にあの流れから帰れと言われて、はいそうですかと青年も納得はできない。
「友情っていいものだよね。兄さんがいつもココ来てるの知ってるし、大事な人を失った喪失感って辛いものだよねぇ。でもそれを言い訳にして、色々目を塞いじゃダメだよ?」
「君はあいつのことを?」
「ああいう誤作動たまにあるんだけど、不具合だから。お友達が俺の意思と違うから、キニスンナってさ」
「あれはあいつじゃ……そうだよな。だってあいつはもう、いないんだ。俺を置いていっちまったんだ」
 目に涙を溜めながら、青年は近くのちょっとした段差に座り込んだ。頭を垂れているため表情はうかがい知れないが、小さな嗚咽はとらの耳に届く。
 それきり彼に反応はなくなった。こっちから話しかけようと返事はこない。
 少なくともアンデッドが親友だという思い込みは解けているし、放っておいてもまた殺されようと走って戻ってくるような気力もなさそうだ。
「それじゃ、とらは仲間達のとこへ戻るから~☆」
 一先ず青年の安全は確保できたと判断したとらは、また急いで戦場へと戻るのだった。
 アンデッドの吐く酸性の体液を躱し、よどみない足取りで懐へと入り込んだ青は刻み込んだ死の刻印を反撃とし戦闘不能へと追いやった。
 最期に残ったフェーズ2のアンデッドが、ずっと自分の前に立ち道を塞ぐ真咲の両肩を掴み噛み付こうとする。彼女はこの攻撃を予め予測していたように斧を自分とアンデッドの間に挿し込み、テコの原理で空間を作った。
 それでもアンデッドの牙が彼女に突き刺さる。狙った首元ではなく肩に刺さり、ダメージは軽減されていた。
 とはいえ、ずっと率先して狙われやすい位置で戦っていたため彼女の損耗は増えてきている。
「あいたたた……」
 口ではそう言う少女の表情はしかし、今の窮地と戦いを楽しむように口角を上げている。
 こうなれば我慢比べ……という体をなしてきたところへ悠月から流れてくる癒やしの美風が真咲を癒やす。
 更にこのタイミングでとらが戻り合流。
「はい、そう言う事だから今日はお開きって事で~♪」
 早々に魔力の突風を巻き起こしアンデッドを吹き飛ばす。転がった先に結唯の射撃が襲う。
 弱った分を穿たれよろめくアンデッドが態勢を立て直すより先に、お返しとばかりに振り切られた真咲の斧が無駄のない高速の連続斬撃によって敵を切り刻んだ。
 動く死体は再びその生命を闇へと手放した。
「……ゴチソウサマ」
 告げた一言が戦闘の終了と重なった。

●戻れぬ過去とまだ来ない未来の狭間で
 無事アンデッドを全滅させそれぞれが傷の確認や応急処置をしている最中、被害者の青年が精気のない顔で現場へと戻ってきた。
 殺されに来たわけでも、親友に別れを告げにきたわけでもない。
 全てが終わった現場をどうしていいのかわからないようにただ見つめている。
 ここにはもう何も残っていないのだ。彼の親友も、彼を殺すエリューションも。彼はそれを理解してしまった。
「ありがとうございました」
 感情の見えない感謝の言葉が、青年の唇から発された。
「きっと、あなたがここで見たものは夢だったのだと思います」
 リベリスタとなっても自分の存在意義を見出せていない青は、もし彼の死んだ両親が同じ道へ自分を誘いにきたとしたら抗うことはできないだろう。この青年も同じ立ち位置にいるのだ。
 ならば最初から何もなかった。そう思った方が神秘の秘匿という意味では勿論、これから生きていく彼のためになると思った。
 ただ、それに納得できない者もいる。
「ぜんぜん見て無いじゃん、現実。こんなただの死体に殺されたら、それこそ親友さんに怒られちゃうよ?」
 それが結果的に前を向けていない青年に対する真咲の感想だった。
「ずるいなあ」
 ルイリスは青年に向けてそう言った。
「私ならきっとそう言いますよ。親友さんの事馬鹿にしてるんですか? ふざけないで下さい。夢半ばに死ぬ事がどんなに悔しいかなんて、貴方にだって私にだって、絶対に絶対に分からないのに」
 自分にはもう何も残っておらず、誰かが欲しがったものを安易に投げ捨ててしまったかのような態度が彼女には許容できない。
「生あるものはいずれ死ぬ」
 この男もそうだし発言した結唯自身もそう。男の親友も例外ではなかった訳だ。本当はこの青年もそれは解っていた筈だ。
「それなのに現実を受け入れず泣くとは、生への命への冒涜だ。そして親友に対する侮辱だ」
 本来ならば、親友が生きているうちから、いつか来る終わりを受け入れ向き合わなければならなかった。
「そうやって立ち止まるのはお前の勝手だが、侮辱ではないというなら、どうすればいいのか解らないというのなら、立って歩け。お前には立派な足があるじゃないか」
「あんたが拾った命、ちょっとは使い方考えなさい。よくわかんないけど、償いとかそういうんじゃなくてさ」
 杏も他のリベリスタと同じく、短い言葉だが彼へと声をかけた。少なくともそうしてくれた方が、自分達が助けた意味もある。
 彼の気持ちも仲間達の気持ちも理解できる悠月は、積極的に声をかけることはなく皆の様子を見守ることを回答とした。最後に自分の道を選ぶのは青年なのだから。
「ねえ、どうせ死んじゃえる気分なら、死んじゃうくらい頑張って、将来笑い話いっぱいお友達に持ってきなよ」
 そうしたら、そうできたならば、
「お友達も、このくたばり損ないのクソ爺! 早くお前の面白い失敗談聞かせてくれよって、笑ってお出迎えできるっしょ」
 せいぜい幸せになって、命日の墓参りすら時々忘れちまえ。それがとらが望む青年の未来だった。
 それらの叱咤が彼の心にどれだけ響いたのかはわからない。
 リベリスタ達のように立ち向かえる心の強さは、少なくとも今の彼は持ち合わせていない。
 答えを持たない青年に、あばたは直接彼にプライベートの携帯番号を教える。私用と言ってもビジネスでのそれだ。
「生きるのが嫌になったらこちらにご連絡ください。できるだけ優しい方法をご提示させていただきます」
 彼女にしてみればここで勝手に死なれるより、業務として請け負う方が後腐れもなければ純然たる収益という名のプラスになる。
 あばたの行為を受け入れ難いものとして捉えるリベリスタも中にはいるだろうが、それもプロとして一つの死の向き合い方と言えるだろう。
「さーて」
 青年に背を向け、あばたは仕事人としての目線でアンデッド達の残骸を一瞥する。
「死体の掃除だ。こっちが本業だからな」
 一度は死を受け入れようとした青年に対する向き合い方はそれぞれだ。
 それらは死を身近なものとしている彼らの、感受性や倫理観が作り上げた生き方そのものである。
 故に必ず一致させるべきものではないし、示した道もそれぞれだった。
 リベリスタ達と出会い、示された道のどれを青年が選ぶかはわからない。
 永遠に苦しみながら生きることになるのか、その先に輝かしい明日があるのか、それとも再び自ら死の道を行くか。それは青年にもわからないだろう。
 しかし、それらを選ぶことができるのも、彼が生きているからだ。
 少なくともリベリスタ達は、青年に己の救いを選択できる未来を与えることができたのだった……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
リベリスタ達の言葉を聞いた彼の行末はまだ未知数ですが、無事明日という日を拝めることはできました。

皆様、お疲れ様でした。