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<クリスマス2013>梅子の極楽プレゼント大作戦!


 クリスマスソングが流れる頃に、街の飾りの輝かしさは最高潮になる。
 着飾るように色とりどりのイルミネーションを纏ったビル群は、己を最も美しく魅せる夜を待っている。
 その喧騒の中を、正月飾りを抱え込んだ『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)が小走りに過ぎようとしていた。総務部に足りないものや、今年にしか使えない飾りの買い足しを頼まれたのだ。まったく慌ただしいものだ。10日もしない間にこうも街の雰囲気を変える必要はあるのかと唸りたくもなる。
「――協力をお願いします!」
「します!」
 その中で、ふと立ち止まったのは靴紐が解けたからだったが――耳に届いた声は、子供のものだった。
「なに……って、わきゃ!?」
 声のする方を伺って――ひもを結ぶのを忘れたまま足を出した梅子は梅子はそれを自分で踏んで転びそうになったのを、羽を伸ばしてバランスを取り、無理矢理持ち直す。
「……うわあ、なにそれコスプレ?」
 へ、と間の抜けた表情を浮かべて顔を上げた梅子の前で、ひとりの少年が目を丸くしていた。
 しまった、羽を隠しそびれたか、と考えた梅子の脳裏をふと、疑問がよぎる。
 幻視、つかってるのに。どうして。
「カラスみたい」
「誰がカラスよ!」
 見た目は10歳くらいだろうか。振り返って睨みつけた少年は、確かに革醒しているが――これは。
 梅子はわざと羽を広げる。少年が驚きと好奇心に目を見張るのを見て、確信する。彼は革醒したばかりでまだ神秘のことをよく知らないのだと。そこまで考えて、ようやく彼が持っていた箱の存在に気がついた。
「何よソレ?」
「募金だよ。ごきょーりょく、お願いします」
 箱を抱え上げて少年は笑う。その箱には、とある児童養護施設の名前が書かれていた。


「……てことで、だ。養護施設、ぶっちゃけ孤児院だな。そこに行ってプレゼントを配るぞ」
 いつにもまして投げやりな『まやかし占い』揚羽 菫(nBNE000243)に、いやいやいやいや、とリベリスタがツッコミを入れた。それとコレとがどうつながるというのだ。
「革醒したばかりのやつが道を違えないように、革醒するとはどういうことかを教えるのもアークの仕事の一つだろ。それだけなら少年を三高平に連れてくるのが早いんだろうが、どうもすぐにフェイトを得たわけじゃないようでね。いくつかの小物やらの革醒が確認されてる」
 なんとなく読めてきたリベリスタが、菫に話を続けるように促した。
「クリスマス会があるのは、こういった施設では不自然な話じゃない。そしてたまに気が向いた気まぐれな企業がそれに手伝いを申し出ることも、な。
 乗り込むのに調度良い口実がある以上、それを利用しない手はない。
 ノーフェイス化した子供とかはいない。その辺り、クリスマス生まれの誰かさんもまだ、救いの手とやらを差し伸べているつもりなのかもな」
 菫は妙に乱暴にがしがしと頭をかくと、眉間にしわをよせた。
「ともかくだ。革醒した物の破壊に向かう実働班と、子どもたちを集める陽動班にわかれてくれ。
 原則、その二班は別行動だ。いいな?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月10日(金)23:47
ももんがです。
クリスマスにやることって行ったらチキン買いに行くことです。

●一行でわかるオープニング概要
エリューション退治のついでに子どもたちにプレゼント配りに行こうぜ!

●成功条件
どちらにも最低ひとり向かうこと

●養護施設
クリスマスパーティーに乱入する段取りです。
ここには5歳から15歳くらいまでの子どもたちがいます。
革醒したのは10歳の少年ひとりだけです。
最近ずっと猫耳つけてる、という理由で周囲から浮き気味のようです。

●プレイングの書式について
【A】陽動班
子どもたちにプレゼントを配る人はこちら。
プレゼントについてはある程度好きに言ってくださって構いませんが、高級品は不可です。
3000円くらいまでを目安に。
サンタの格好をしたりするのも楽しいかもしれません。
革醒した少年にちょっかいをかける場合も、こちらでお願いします。

【B】実働班
こっそり忍び込み、革醒した物品を破壊するお仕事をしてくださる方はこちら。
E・ゴーレムですが、自力移動はできず、攻撃はせいぜい噛み付く程度。
噛まれた痛みは足の小指をタンスの角にぶつけたくらいです。
何が革醒したのかは適当にでっち上げてかまいません。
無関係な物の盗難等、目的達成のため以外の犯罪行為はマスタリング対象になります。

【その他】
 この状況で可能そうな、上記に当てはまらないものはこちら。
 (描写されない可能性が最も高い選択肢です)

以上3点からプレイング内容に近しいものを選択し、プレイングの一行目に【】部分をコピー&ペーストするようにして下さい。
また、どの場合でも公序良俗に反する内容は描写しません。
プレイングは下記の書式に従って記述をお願いします。

(書式)
一行目:行動選択
二行目:絡みたいキャラクターの指定、グループタグ(プレイング内に【】でくくってグループを作成した場合、同様のタグのついたキャラクター同士は個別の記述を行わなくてOKです――が、愛称等は相手が誰かわかるレベルにおさえていただけるとありがたいです)等
三行目以降:自由記入

(記入例)
【A】
Bさん(BNEXXXXXX) ※NPCの場合はIDは不要です。
子どもたちに見つからないようプレゼントを包装する。


●参加NPC
・梅子・エインズワース
・揚羽 菫 ←貸し出されたサンタ服着用
梅子は基本Bにいますが、Aにも顔を出す可能性はあります。
菫はAにしか参加できません。
NPCは全て、誰も触れなければ描写がない場合もあります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 
参加NPC
揚羽 菫 (nBNE000243)


■メイン参加者 28人■
アークエンジェインヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ハーフムーンホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスデュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ハーフムーンナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
アークエンジェソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ジーニアス覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
アウトサイドソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ビーストハーフクロスイージス
ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ノワールオルールホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
メタルフレームプロアデプト
エリエリ・L・裁谷(BNE003177)
ハイジーニアスクリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
フライエンジェダークナイト
朝町 美伊奈(BNE003548)
ビーストハーフナイトクリーク
蛇穴 タヱ(BNE003574)
ナイトバロン覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
フライエンジェホーリーメイガス
丸田 富江(BNE004309)
フライエンジェスターサジタリー
鴻上 聖(BNE004512)
メタルフレームレイザータクト
岡崎 時生(BNE004545)
メタルフレームクロスイージス
焔藤 鉄平(nBNE000010)
フライエンジェホーリーメイガス
桃子・エインズワース(nBNE000014)


「めりーくりすまーすっ♪ 今日はよいこのみんなにプレゼントを渡しにきました。
 さて、わたしはだれでしょー? 分かった子から手ぇあげて!」
 少し大きめの部屋に集まってささやかなクリスマスパーティー中の子どもたちの前に、朗らかな声をあげてミニスカサンタガール旭が飛びこんだ。驚いた様子の幼い子供に、いくらか年上の子がくすくすと笑って、いっといでと背中を押す。
「――さんた?」
「ぴんぽーん♪ 正解だよ、しょうたくん」
 事前に頑張って覚えてきた名前を呼んで、包装した袋を渡してやる。ちょっと手の込んだクッキーとテディベアストラップはどうしても数を用意できなかったけれど、小さい子らに行き渡る数には足りそうだ。
「はぁい、メリークリスマス♪ ふふ、かわいい子たちが多くてテンションが上がってしまうわ♪
 ふふ、お姉さんたちからのプレゼント、欲しい人?」
 ティアリアはスカートが膝丈なのを除けば旭と揃いの服。配る袋の中身は二人に似たサンタガール人形。
「余り短くても、ねぇ? ……年のことを言ったら殺すわ。ふふっ」
 二十代が何を言っているのかげっ歯類にはよくわからない。
「……それにしてもかわいいわ。抱きしめたいけれど……」
 いわゆる『事例が発生』になっちゃうので、ティアリア、そこは自制。

「三高平の純白ヒロイン・ももこさんのサンタですよー!」
 不穏をはらんだ優しい声に、警戒心を持った者は幸いである。
「梅子! うめこ! ウメコ! UMEKOぅぅうううわぁああああああああああああああああああああん!!!」
 発狂。白系ミニスカサンタな桃子が騒ぎ立てる先には、ミニスカ黒サンタ梅子がいた。
「じゃあ、あとヨロシクなのだわ」
 桃子の様子に『何故か』まったく気が付かない鈍感カラスは小声で鉄平にそう耳打ちすると、こそりと物陰に向かう。
「あぁあああ……ああ……あっあっー! あぁああああ!!! 梅子梅子梅子ぅううぁわぁああああ!!!」
 梅子のいつもの帽子を確保して超エキサイティンッする桃子に、あのおねえちゃんダイジョウブ? と指さした幼子の目を、何かを察したもう少し大きいお兄ちゃんがそっと隠している。ただ、そうして耳目を集めた結果、梅子を含む実働班が施設の中にまぎれていったことには、人々は誰も気が付かずに済んでいた。それを確認して、鉄平はひときわ大きく手を叩いて場の意識を集める。
「メリークリスマスだ! 子供達! さぁ受け取ってくれ!! さぁ!!」
 アークから借りたそれっぽい袋からお菓子詰め合わせ(三百円相当)を取り出し子どもたちに着き付けるように両腕を広げた鉄平に、今度は大きめの子どもたちが警戒心を抱いてちっちゃい子たちを離さない。
「きっと喜んでもらえるさ! そう、こういうものは気持ちだ! 気持ちが大事なんだっ!
 メリークリスマスの気持ちさえあればっ!! さぁ配るぜっ! さぁっ!!」
 あの、鉄平くん? 子どもたち、怖がらせないでもらえます?
 見かねたか、正統派赤系ミニスカサンタなそあらが鉄平のプレゼントをひょいと取り上げると子供たちと目線が合うよう少しかがんで配り始める。
「かわいいおねいさんからのプレゼントだときっと子供達もよろこぶはずなのです!」
「でも、さんたって、おひげのおじーさんだよね? おねーちゃんは、にせもの?」
 さっきからお兄ちゃんにかばわれっぱなしだった少年が、おずおずとそあらにそう問うた。
「え……?」
 サンタといえば少女だ。
 とか言いだすのは神秘に触れた人間だけだったことを思い出し、そあらは少しだけ思考を巡らせる。ついでに犬耳がぴこり、と動いてそれを見たお兄ちゃんの方はなんだかぎょっとしていたりする。
「――あれなのです。どこぞの国ではサンタさんのお手伝いをするかわいらしい妖精さんがいるのですよ。
 おねいさんはその妖精さんなのですよ!」
 サンタの絵本で手伝う小人の絵が載っているものも少なくない。少年は納得したように笑う。

「あれれ?? まおーだけいしょうがちがうっΣ」
「……は? 皆なにその赤い服、え、サンタ?
 サタンじゃ……あれ、だからボク呼ばれたんじゃ……あっ違う?」
「サンタとサタン、サタンとサンタ……。……にてるからだいじょぶっ!」
 一張羅のサタン服(?)着てきたのに、とが軽くのの字を書き始めたノアノアの勘違いに、付け髭もしっかりなミーノが頑張ってフォローを入れている。おやおや、と富江が笑う。
「よくわからないけど面白そうなことをやるみたいじゃないかっ。
 それじゃぁアタシも混ぜてもらおうかねぇ。まずはサンタのコスプレだね」
 そう言いながら幻想纏に取り込んだ大装甲の下――既に、富江はサンタだった。
「なんだい、サイズがちょっと小さいんじゃないかい? ピチピチじゃないかっ。まぁしょうがないねっ」
 ダイジョウブ、背中びりーっとか言ってないし! それ以上はノーコメントでっ。
 彼女の手にした袋の中身は、野菜をしっかり練りこんだ栄養たっぷり手作りクッキー。
「さぁさ! 子供達! サンタさんからのプレゼントだよっ! HAHAHA! メリークリスマース!!」
「ふぉっふぉっふぉ~きょうはミーノもくばるがわっ!
 みんなにクリスマスのたのしさをおすそわけなの~~っ」
「サンタさんが? 子供達の前に? 来るぅ~~~~~~~~~!!
 行くぞミーノちゃん! 合体だ! 超 合 体 キ ン グ サ ン タ !!」
 ミーノと同じ衣装サイズ違いな時生が、いつものテンションでミーノを肩車ドッキング。
「ちょうくばりまくるよっ!」
 プレゼントを投げるように配り始めるミーノ。ただしちゃっかり自分の分を確保していたりする。
「テレビゲームとかも楽しいけど皆でワイワイやるのも楽しいよ!! って散らばるゥウ~!?」
 肩車しながら非電源系ゲームを配るのは、ちょっとむずかしそうだと思うんだ。
「未だ闇を知らぬ哀れな子羊達よ……昏き闇の底より出でし宝具を受け取るがいい」
 訳:純粋無垢な子供たちにプレゼントだよ!!
 ノアノアが配るのは、タトゥーシール付きガムだったり、厨二デザインの安物シルバーアクセサリーだったりする。あれか。修学旅行で立ち寄る売店で何故か売ってる竜が巻き付いてる剣のネックレスとかか。
「はっ!? いけない魔王ちゃん! 君のプレゼントは子供にはまだ早い!」
(そう、ボクの目的はただ一つ。
 今のうちから英才教育を施し、厨二病を発症させこの世を満たすこと!!)
 肩車なう時生ザキオカの制止(?)も聞かず、計画通り……! な表情でほくそ笑むノアノア。

 雷音のサンタ姿は、もふ付け髭付き正統派。小柄な彼女だけに、それはそれで趣がある。
「メリークリスマスなのだ」
 手作りクッキーを添えたぬいぐるみを配っていた雷音は、見覚えのある顔に声をかけた。
「グオオオオ! サンタだぞーー! よい子にしてないとプレゼントをやらんぞー!
 まずは挨拶からだ! こんにちは! ――ん、お前は確か……カズトの妹だったか」
「……風斗も、三高平の孤児院の皆さんにこんなふうにプレゼントを渡したのかな?」
 サンタのはずの衣装がなまはげに見えなくもない風斗が、雷音の顔を見て記憶を確認した。
「お前もこれに参加してたのか。そういえば、ゆっくり話す機会は無かったな」
 さっきまで風斗に怯えていた少年が、急におとなしくなった緑の目のなまはげ()が手にしていたサッカーボールを奪取して抱え込んだのを見て笑うと、どうした、と小柄な少女に声をかけた。
「えっと、兄がよく君のことを口にするのだ。
 だから、どんな人か気になっていた――いつも兄がお世話になっているのだ。ありがとうございます。
 これは手作りのクッキーなのだ、よろしければおひとつどうぞ」
「お前の兄にはいつも世話にな……っていなくもなくもないかもしれん」
 ついさっきまで馬鹿話をしていた彼女の兄を思い出し、そういえばあいつは、と周囲を見回してから梅子たちについて行ったのだと思いだした。変な意地を張る必要はなかったか。
「ええと、まあ、これからもよろしくな」

「なんだか違和感あるな――いや、木蓮は似合っているが、UMAの角猫みたいだな?」
「ゆ、UMAの角猫……そんなのが居るのか……!? じゃあ俺様は今から角猫のコスプレ中ってことで!」
 ユーヌは、頭に付けた猫耳の飾りの位置を直してから木蓮をみた。木蓮の発案で猫耳を付けてはみたものの、角と耳が一緒に、しかも獣耳に至っては計4つあるのはどうにも違和感がある。
「革醒した子って耳のせいでちょっと浮いてるんだろ?
 クリスマスくらいこれで皆と溶け込んでほしいんだ。見た目で周りから浮くのは俺様も経験したしな……」
「可愛いポーチに子供用コスメ、あとほら、猫耳ヘアバンド! コレで革醒した男のコとお揃いになるよね?」
 革醒して間がない者が隠し方を知らないまま外観の違いを気にしたりというのは、ままある事態なのだ。真独楽もまた獣の因子をもって革醒したひとりとして、木蓮たちと同じように考えたのだろう。
「大事なお友達でしょ、浮いてるなんて寂しいコト言わないで……ほら、付けてみなよ、超カワイイよっ♪」
 豹柄サンタミニから自前の尻尾をのぞかせて、真独楽はほらほら、と率先して女の子たちにプレゼントを配り始めた。元から猫耳の少年には、木蓮が自分のものに似た角を渡してやる。
「特別だぞ。ほら、俺様も付けてるからお揃いだぜ!」
「おそろいだー。トナカイ?」
「予算の都合上動く猫耳ではないが。
 ああ、あっちのお姉さんの猫耳付けても角は生えないぞ? 胸は大きくなるかも知れないが」
「トナカイと間違えちゃいけな……い……ふおっ!? い、一体何を教えて……!?」
 訂正しようとした木蓮がユーヌの唐突な言葉に尻尾をぶわりとさせて、その尾を他の子供にひっぱられてさらに混乱したりしているのを見ながらユーヌは少し考える。愛らしい猫耳は、女の子にはただカワイイと喜ぶ子もいたが、覚悟を決めた表情の男の子たちの多くは即座につけた。真独楽の方の様子を見ても、どうやら様子は同じようだ。思っていたよりもこの施設の子どもたちは仲が良かったということだろう。
 少し口の端が緩む。ついでに、にゃーんと鳴いてみた。
「児童養護施設……ねぇ? 生きてりゃ良い事ある……良い事があった。って、そんな風に思える日が年に一日くらい降って沸いても悪かぁねぇべ」
「火車、衣装もおっけーかなっ? サンタさんだもん、着なきゃ!」
「おっけーだ……サンタ服を着て……着たか……オレが……まあいい!
 良い子にしてっかクソガキ共ぉ! 人様に迷惑かけてねぇならプレゼントをくれてやらぁ!」
 真独楽に言われるがまま着用している火車のサンタ服だが、それは多分本人が思っているよりずっと似合っている。しかし残念ながら言動は二体目のなまはげなのはどうしたものか。
「よぅし……男共には闘争の元、メンコにベーゴマ さらにビー玉だ! ……何?
 古臭い……? ……知らねぇ? うるせぇな! 遊び方教えったるから興味持ったらこい!」
 廃れた、と言っても言いすぎていないような気さえするラインナップだが、「こうだ! こう!」と実演を始めた火車のまわりにはすぐに少年たちの輪ができた。
「負けたくなかったら考えろ! 工夫しろ! んで勝つんだよぉ!」
 子供をどやす様子も、なんだかんだで面倒見の良い火車である。

「同じ孤児院出身として、革醒者の先輩として。正しく後輩をみちびく必要があるとです」
 ずいぶんと真剣な様相で、エリエリは白手袋越しに自分の掌をさわると猫耳少年の服の裾を引っ張って、ずりずりと部屋の隅に連れて行く。
「……もう、姉さんってば相変わらず優しいんだから」
「ミー姉の言う通りだぜ。ったくしょうがねェ……」
 自称邪悪ロリの背に美伊奈がどこか嬉しそうに呟くと、タヱも同じような表情で同意する。
「――世界にはこういう不思議なことが事実としてあるとです。わたしたちも、仲間なのです」
「なんか、ラノベみたい」
「見せる変化部位はレイライン姉さんのを最初に見せるのが良いと思うわ。
 ……正直、エリ姉さんのは『仲間』だと納得して貰えない気がするの。翼は梅子さんがもう見せてるし」
 白手袋を外して掌の空洞を見せながら語るエリエリを、美伊奈は少しなだめてから、少年に対し半身をずらす。その背後には、猫耳・尻尾を隠さないレイラインがドヤ顔で立っていた。
「ふふ、同年代かつ同じ立場じゃから、子供達皆やる気になってるようじゃのう。
 ほれ、わらわも猫耳なのじゃよ! 尻尾は二股じゃけどのう……これこれ、引っ張るでない」
「尻尾もあるんだ、本物?」
 (´・ω・`)風味のエリエリの横で、美伊奈が別の子供に羽を引っ張られる。
「動物のコスプレ、最近はやってるの? そっちの尻尾とかも、すごいリアル……」
 美伊奈と同じ年くらいに見える少女が、羽をしげしげと見つめて不思議そうな顔をしていた。最近は脳波で動くネコミミとかもあるらしいし、尻尾もあるってことなのかな、と神秘と無関係な少女は首を傾げる。
「――ほら、お茶を淹れて上げるから、あっちで一緒にお菓子を食べましょう?」
 周囲に目配せして、美伊奈はその少女を他の陽動班の方へと誘導していく。
 それを見送りながら、タヱが猫耳くんに向き直った。
「アタシの右目のこれ……鱗になってるよな。でも、アタシはコスプレ扱いされてない」
 言われて初めて、さっきの少女がタヱには何も言わなかった事に気がついたのか、少年はきょとんとした表情を浮かべる。彼から見れば、タヱだってずいぶん派手なメイクをしているようにも見えるのに。
「それはなーんでだ? 答えはかんたん、隠してるから。コツを教えてやる。簡単さ!
 アタシが教える通りにやりながら、友達に見せてみな。『やっと猫耳取ったのかよ』ってなるはずだぜ」
「これで外を歩いても変な顔されなくて済むぞよ!」
 便乗して、レイラインも力強く頷く。
「猫耳隠す方法、力を上手く使う方法、教えられます。
 悪用するとここに来たような人達が飛んでくるです。困ったことあったら、アークに連絡するのですよ?」
 何故か今日は片言気味なエリエリが、さっき「どこかのラノベの設定?」と流されてしまった『世界の神秘』の存在についての説明を始めたのだった。


 騒がしいのが聞こえてくるのは、向こうがうまくいっている証拠だ。
 シュスタイナは唇の端だけで笑う。
「子供って煩いし言う事聞かないから苦手なんだけれどね?
 今日みたいな日に賑やかにしているのを見るのは、嫌いじゃないわ」
「子供は少々苦手ですが……」
 言葉少なに、それでも「聖誕祭を祝う子供達が楽しく過ごせるよう」と続けて、革醒した鉛筆をぱきりと折った聖は部屋を見回す。
「破壊をするのは良いですが……壊したままも問題ですね。
 破壊物を報告して、アークで代わりの物を用意できるようにしましょう」
 梅子がいわゆるサンタ袋的なものを抱えてうろうろしているのが目に入った。壊したE・ゴーレムを回収しているのだというが、中には残骸を残さず消えてしまうものもあった。出来る限り、覚えていった方が良さそうだ。もう一度、意識して部屋を見回す。聖の義眼ではない右の目は、幻想を見破る目。
「代わりのものを用意して貰うって言うのはいい案ね。
 ここの子が工作した物とかは……ちょっと壊すのは忍びないって思ってたど」
 幸いにして、少なくともこの部屋にはそう言ったものはなさそうだ。
「人手が必要ということで、何度か依頼でご一緒したシュスタイナさんを誘ってみたんですが……。
大人びていたので失念していましたが……せっかくのクリスマスにこんなことを頼んですみませんでした。
 お詫びと言ってはなんですが、帰りにクリスマスケーキでも……。
 一緒にお店で、というのは抵抗があるでしょう、何か希望の物があればお土産として用意しますよ」
 自分たちの割り当てはひと通り終わったと判断して、聖はシュスタイナにそう声をかける。
 彼女は、13歳だ。今あちらの部屋で子供として扱われている中には彼女より年上の子もいるというのに。
「ん? どうして謝るの?
 クリスマスとはいえ特にやる事もなかったし、楽しかったわ。お詫びも要らないし、抵抗も特にないわよ?」
 不思議そうにそう口にしたシュスタイナだったが、それこそ彼女は頭を下げる大人を無下にするほど子供ではない。
「まだ時間もあるし、鴻上さんが嫌じゃないなら、だけど……。一緒にケーキくらい食べましょ?」

「革醒したのは……クリスマスケーキ、か」
 快が覗きこんだのはキッチン。クリスマスケーキなら、代替の手配も難しくないだろう。今のうちに食べてしまえば、それで済む――健啖家はそう考えた。
「――よし、完食。ちょっと胸焼けするからコーヒーで人心地……」
 と、思う間もなく。
「ぐおおおお、腹が! 腹が痛い!!!」
 確かに、足の小指を(略)な痛みが腹の内側から来たら、耐えるのは難しそうである。
「こいつがエリューション化して得た能力ってもしかしてこれか!
 食った人に猛烈な腹痛を与えるこの能力なのか!
 って桃子さん今俺をバリアにするのやめてお腹痛いのマジ勘弁ギャー!」
 ※腹痛+幻覚で、新田・快、リタイア。

「んじゃま、いっちー、革醒したゴーレムをこっそり退治するか」
「こっそりだよ、騒がしくしないでね?」
 気楽な様子の夏栖斗に、壱也が人差し指を立てて注意を促す。
 よく見れば、細かい物がたまに物理的に牙を向いたりと、明らかに革醒しているのがわかる。
「たまにはこんな楽な仕事もいいよね」
「そうそう、たまには楽なお仕事も回して欲しいよね。
 こんな楽しいばっかだと体がなまっちゃいそうでもあるけど」
 足元のスリッパに噛み付かれそうになったのをひょいと避けて踏み潰し、破壊を確認しようとベッドに手を付いてかがんだ夏栖斗がうお! と小さく叫んだ。
「枕が革醒してる! あっぶないなー」
 噛み付かれてちょっと涙目になりつつも、枕をぼふり。
「でもまあ、子供たちがノーフェイス化しないなら、いいことだよね。
 ――あ、いっちー靴下にお尻噛まれてるよ。ってうそうそ。後ろのおもちゃ箱も革醒してるみたいだから、そっち頼んだ」
「え!? やだおしりとか……ってうそなの! 枕投げるよ! 全くもー……。
 って、うわっ! 御厨くんの後ろからなんか飛んできたんだけど!? そっちも覚醒してない!?」
「どうしたの、何か騒がし――って、何この部屋いっぱい革醒してるのだわ!?」
 覗きこんだ梅子が、ぎょっと目を剥く。なんだかずいぶん『多い』部屋だったらしい。
「梅子! 雑にフレアバーストとかなしな!」
「わたし熱いのいやだし巻き込むなら御厨くんだけにしてねっ」
「やんないけどっ、ちまいっ! なんかこう、イライラするのだわっ!! 耐えるけどっ! むきー!!」

「小物が覚醒か! それは捨て置けない!
 だが、破壊されたことを知れば、少年少女たちは悲しむ事だろう。
 だから、そこも気遣うのが大人の仕事!」
 サンタの格好をして忍び込んだ竜一の、その心意気やよし。
「そう! 下着が覚醒していれば破壊し、代わりにシマパンを!
 靴下が覚醒していれば破壊し、代わりにシマニーソを!
 おもちゃが覚醒していれば破壊し、代わりに俺の手製のプラモデルを!」
「それ革醒したのが男児用だったらどうするつもりなのだわ」
 回収に来た梅子が、イライラで憔悴したのを頑張って隠しつつ竜一にツッコミを入れる。
「ああ、そうだった。
 ハロウィンの時は、すまなかったな、梅子。邪魔をする気はなかったんだが……すまない」
「え……そ、そんなの、別に……」
「お詫びと、君とのこの聖夜に。メリークリスマス」
 頬を赤らめた梅子が、差し出された袋を受け取り、中を確認し、次の瞬間には袋を(例によって汚れないよう位置を選びつつ)床に投げつけた。
 中身は縞パン@クリスマス2013限定バージョン。
 梅子の心のなかに芽生えかけていた淡い何かはこの瞬間、あえなく砕け散ったとの噂。

「御機嫌ようプラム嬢。穏便かつ高速で壊す事ならお任せを!」
 亘はその実、彼女が心配でこっちについてきていたわけだが。今この瞬間の梅子は、来ておいて良かったと本気で思わせるほどぐったりした様子を見せていた。
 何やら聞くのも憚られるような様子の梅子に、少しの休憩を促して手近な部屋で椅子に座らせる。
「もう大丈夫なのだわ。さあ、次に行かなきゃね。……あ、この熊よく見ると鮭が可愛いのだわ」
 ふと梅子が、飾ってあった熊の木彫りに目を向ける。憔悴しすぎて何かがおかしくなっているのはともかくとして、亘は慌てて梅子の前に手を出した。木彫の熊が、がりっと亘の腕をひっかく。
「え、あ! ごめん、大丈夫?」
 しょうきにもどった梅子が、慌てて熊を壊しにかかる。
「……クリスマスですし何よりこういうのは見過ごせませんから」
「この部屋には――他には、ないみたいね」
「……せっかくのクリスマス会です。プラム嬢もあちらで楽しむの良いんじゃないですか?」
 疲れ過ぎの梅子を気遣ってか、亘は言葉を選ぶ。
(もっと一緒に、は少々贅沢過ぎますね)

 拓真はべしべしと叩かれながら苦い顔をした。
 目の前のクマのぬいぐるみはその解れ具合からいっても子供が大事にしている物に違いない。
「済まんな、子供達の為だ」
 此処で倒さねばより酷い事になる――余計な事を考えるのは俺の悪い癖だ、と内心で苦笑しながらも、そのぬいぐるみを輝けぬ栄光で切り裂く。その時、背後で物音がした気がした。
 持ち主に見られたか――!?
 慌てて振り向いた拓真の前にいたのは、涼子だった。
「それだね。あっちに伝えておいて、ちょっと長めに陽動しといてよって」
「待ってくれ」
 涼子はぬいぐるみを見てひとつ頷くと、踵を返そうとする。それを、拓真は呼び止めた。
「……こんな日に、しかもこんな場所で、ただ壊して帰るのも、しゅみじゃない気がしないこともない。
 ここの子たちの人生に、責任なんて全く持てないけど。たまには、運のいい日があってもいいでしょう?」
 理由を聞かれたと思ってか、涼子はそう答えた。拓真は少し微笑んで、そうじゃないと首を振る。
「メッセージカードをつけてくれるよう、頼まれてほしい。
 文面は、『メリークリスマス、傷が酷い様だったから儂が直しておいた』――で」


 数日後、地方面の小さな記事が話題になった。
 クリスマスに児童養護施設で盗難が起きたが、すぐに全部綺麗になって帰ってきたという記事だった。
 ケーキだけは御節になって帰ってきたらしいが――それはまあ、よしとしておこう。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ご参加有難うございました、楽しんでいただけたなら幸いです。

……世界的有名人誰かさんの本当の誕生日っていつなんだろう。