●蛇のアザーバイド その日、Dホールから四体のアザーバイドが現れた。 「ここがボトムチャンネルか?」 蛇のようにしなる武器を手にした男が、ホールから現れる。鞭には刃がつけられており、その凶悪さが増している。 「……はい。なんでもここの連中が……『セリエバ』を折ったみたいです」 背の低い女が途切れ途切れに答える。手に何も持っていないが、その構えから素手でもかなり戦えることは予想できた。 「おやおや。だったらかなりやれそうじゃない? 美味しそうな子がいればいいけどねぇ」 舌で唇を舐めながら、一人の女性が笑みを浮かべる。上半身はボトムチャンネルの女性だが、下半身は蛇そのものだ。 「皆さん、無駄な殺生は控えてくださいね。あとこの世界に入れる時間は長くないんですから」 蛇が絡んだ杖を持った男が、嗜めるように言う。自分がこの世界に受け入れられていないのは、感覚で分かる。長居すればこのチャンネルにダメージを与えることになるだろう。 「先生は固いなぁ。一日二日でどうにかなるもんじゃないだろう?」 「ですが……この地域はかなりダメージが入ってます……危険です」 「私は可愛い子がいればそれでいいわ。一人ぐらい持ち帰っていいかしら?」 「ダメです。強者を求める姿勢は立派ですが、礼節を忘れてはただの略奪者ですからね」 先生、と呼ばれた蛇が絡んだ杖の男の言葉に他のアザーバイドはしぶしぶ同意する。 「……とはいえ、手がかりがないのは事実です。とりあえずあそこの集落に行ってみましょう」 そして四体のアザーバイドは近くの街に歩き出す。 ●アーク 「残念だが、彼らの冒険はそこでエンドだ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は集まったリベリスタ達に向かって、そんなセリフをはいた。 「武装したり下半身が蛇だったり。そんな連中が街中に入れば混乱は必至だ。コスプレで誤魔化すには無理があるし、何より連中にこちらの常識があるかも疑わしい。即刻お帰り願うのがお互いにとってベストだ」 話が通じそうなアザーバイドもいるが、やはり神秘を知らない一般人との接触は避けるに越したことはない。 「まずはこの邪骨剣使い。こちらの世界で言うところのデュランダルだ。パワーファイターだが剣の性質もあって、厄介な相手ではある」 トリッキーな動きのパワーファイター。いささか変則的ではある。 「次がこの拳士。毒使いだ。殴打されれば毒が体に回る。動きも素早く、相手をするときは注意が必要だ」 蛇のような動きを思わせる立ち様に、強い毒。油断できない相手だ。 「そしてこの蛇女。尻尾と爪で攻撃すると同時に、こちらの動きも止めてくる。なかなか面倒なレディだぜ」 攻撃力は低いが、放置すれば厄介なことになる。そんな蛇女か。 「最後は蛇の杖を持つ医者。死者を蘇らせることはできないが、かなり有能な先生だ。何気に攻撃もしてくる」 おとなしそうに見えて、なかなか過激な医者のようだ。 「連中は戦闘狂(バトルマニア)かつ、戦士(ウォーモンガー)だ。口で言うよりは実力を示して帰っていい。向こうさんもそれを望んでいるしな」 物騒だなぁ。思いながらも反論するリベリスタはいなかった。曲がり無しにも好戦的なアザーバイドだ。性質はどうあれ、放置する選択肢はない。 「巳年の締めにはちょうどいいだろう。景気良く年を越せるように頼んだぜ、お前達」 伸暁の声に背中を押されるように、リベリスタはブリーフィングルームを出た。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月31日(火)22:42 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「ちょい待ち! そちらの責任者の方とかいないかな? 少し話したい事があるんだけどよ」 歩き出したアザーバイドを止めたのは『タクティカルアドバイザー』ジェイク・オールドマン(BNE004393)の声だった。その言葉に足を止めるアザーバイドたち。責任者、と言われて前に出たのは蛇剣使いの者だった。 「なんだ? ……あー、俺達は旅人みたいなもので少し変な格好してるが変な人じゃないぜ」 カザマは異世界人という単語を使わずに、自分達のことを怪しまれないように説明する。それは分かってる、と声をかけてジェイクは話を続けた。 「この世界じゃ俺等や兄さん達みたいな見た目の人って見つかると大問題みたいでよ……って事で腕試ししない?」 「腕試し?」 「貴方達も、ただ無機質な殺し合いをしたいのでは無いんでしょう?」 言葉を続けたのは『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)だ。『万華鏡』の予知を見るに、彼らは殺しではなく戦いを好むタイプだ。そしてそれはセラフィーナが嫌悪する類ではない。 「だったら、楽しくやりましょう。きっと、そのほうが素敵です」 「実際のところ、あの集落には貴方達が満足する相手はいない」 『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)がセラフィーナの説明を告ぐ。戦闘狂なのはいいが、彼らがあの街に行って一般人に迷惑をかけるのはよろしくない。彼らの欲望を満たし、お帰りいただこう。 「やるなら当然、全力でやる。だが殺すところまで行くつもりはない」 「ふむ。クリーンな殴り合いを求めるというところですか?」 「そうですね。手加減をするつもりはありません。ですが殺しあうのはナシということです」 レオーナルの言葉に『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)が応じる。飄々とした笑顔だが、その裏には皆を幸せにしたいという思いがある。誰も死ぬことなく、そしてお互いが満足ならそれでいい。そんな笑顔だ。 「自分達も含め疑問もあるでしょうが、こちらの要求するのは先ずそれです」 「俺はお前達の目的も知りたいな。ただの戦闘狂なのか、それとも何かを探しに来たのか」 『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)が眼鏡のブリッジを押し上げながら、条件を追加する。『万華鏡』の会話を聞くに、彼らは何かを探している節がある。 「貴様らが満足したら、話してもらうぞ」 「……それは、貴方達次第……半端な強さなら……下がったほうが、いい」 「半端かどうかは、戦ってみないとわからないぜ」 ぼそぼそと喋るユファの言葉に緋色の槍を構え、『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)が笑みを浮かべる。相手は実力の伴ったバトルマニア。だがこちらも実戦を積んできた革醒者だ。その自信がフツにはあった。 「そいつは口ではなく、戦いで証明してやるよ」 「戦闘狂……強者と戦う為に、わざわざボトムにやってきたんか。物好きやなぁ」 タバコをくわえて『十三代目紅椿』依代 椿(BNE000728)がアザーバイドたちを見る。その欲求は理解できるとは言わないが、その心意気には共感するところがある。こちらの世界に迷惑をかけない配慮があるのも、椿は好感が持てた。 「その欲求、うちらで満たしてお帰り願おか!」 (きゃーん! 噂の十三代目紅椿様とご一緒できるなんて感激だわぁ! ちまっこくて素敵……♪) 啖呵を切る椿を見ながら『黒き風車と共に在りし告死天使』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)が心の中で声を上げる。軽く咳払いして意識を戻し、アザーバイドたちを見た。奇妙な剣に下半身蛇。改めてみると街中に入れてはいけない連中だ。 「わざわざ遠いところからご苦労さん、ってところだね。私たちとしてはすぐに帰って欲しいのよ」 「ふーん。そういわれておとなしく帰ると思うのかしら?」 フランシスカの挑発に乗るようにウネが舌を出しながら答える。それをレオーナルが手で制し、言葉を続けた。 「つまり君達の要望は私たちの帰還とこちらの目的。殺害はなし。これでいいのかな?」 「こちらが負けたら、無理の無い範囲で貴方達のお願いを聞いてあげます」 セラフィーナの追加条件に、アザーバイドはカザマに視線を向ける。逡巡は一秒もなかった。 「いいぜ。戦いで決めるって言うのは分かりやすい。殺しに関しちゃ努力するが、加減はしねぇからな」 「それはこっちも同じや」 カザマの承諾の言葉に椿が笑みを浮かべる。そのままリベリスタとアザーバイドは距離を取り、臨戦態勢に入った。 「このコインが地面に落ちたら開始だ」 杏樹がアザーバイドの了承を得てから、コインを指で弾く。くるくるとコインが回転しながら宙に舞い、重力に引かれて落ちていく。 地にコインが着くと同時に、互いの戦意が膨れ上がった。 ● 「さぁ。行きますよ」 最初に動いたのは亘だ。銀の短刀を手に、翼を広げてユファに迫る。突撃の速度を殺すことなく刃に乗せて、横なぎに払われる。鋭く振るわれた刀身は光の軌跡を残し、アザーバイドの目を奪う。 「貴方の拳が誰かを殺すなら、自分は全力で守ります」 ユファの体液は毒。アザーバイドの肌を裂いた刃はその体液を浴び、それを掴む亘にもダメージを与える。だがここで引くつもりはない。ここで彼女を足止めすることは、仲間を守ることに繋がるのだから。 「異界の蛇……食いごたえを期待しよう」 ほぼ同時の速度で鷲祐がカザマに迫る。呼吸を整え、自らの意識を切り替える。速度を求める。速度を求め、その速度こそが鷲祐の武器。切り替えた意識が肉体を強化する。ただ速度のみを求めた獣へと。 「……貴様の相手は俺だ」 鷲祐はカザマに向かって言い放ち、カザマが振るう蛇の刃を見据える。複雑怪奇な動きをとるが、けして見切れぬ速度ではない。迫る剣先を刃で弾く。この程度か、と指で相手を挑発した。 「あなたの相手は私ですよ」 セラフィーナが二枚の白い羽根を広げてウネに迫る。腰に構えた刀を抜き、真上から振り下ろした。七色の光が刀の軌跡となって走る。両手を交差したウネが痛みで顔を歪め、その後で笑みを浮かべた。 「いい戦士の顔ね。その顔を怯えで崩してあげるわ」 「やれるもなら!」 地上からわずかに浮いた状態でセラフィーナがウネの挑発を返す。白い羽根が羽ばたき、ウネの攻撃を回避する。翼による瞬発的な加速と、姉から受け継いだ刀技による攻撃。それがアザーバイドを翻弄する。 「じゃあまあ、こっちもいくわよ!」 フランシスカは異世界の戦士から受け継いだ武器を手に、自らのオーラを解放する。体内に渦巻く闇のオーラ。自らを苛み傷つける黒の波動をコントロールし、自らの身にまとう。六枚の黒い翼を広げ、フランシスカの意識は戦闘の方に切り替わる。 「さぁ、舞踏の開演だ! ばら撒く闇に恐れおののけ!」 手にした破界器をアザーバイドに向け、体内の闇を解放する。闇は鋭い錐となって三方向に伸びる。その先にはアザーバイド。フランシスカの意志に従い、黒の錐はリベリスタを裂け、アザーバイドたちを襲う。 「残念やけど、自分等のボトム訪問は此処で一旦ストップや」 椿が『Retribution』をウネに向ける。それはとある銃をベースに作られた破界器だが、弾丸は入っていない。リベリスタのスキルを直接撃ち出す一品だ。椿はグリップを握りながら、放たれる弾丸の形をイメージする。 「……出来れば生きて帰ってもらえるとえぇんやけどな」 放たれる弾丸は断罪の弾丸。罪を問い、その枷を背負わせる一撃。それはウネの胸に命中する。その一撃は撃たれた者に深く潜り込み、回復の神秘を受け付けぬ呪いと化す。その様子を見て、椿は笑みを浮かべた。 「1の知将と100の弱将は1000を超える勇将すらも退ける」 ジェイクは仲間に指示を出しながら、自らも瞳に神秘の力を集中させる。戦場を見据える為の神秘。一箇所を鋭く見るのではなく、全体を俯瞰するような瞳。盤上を見る棋士の如く、冷静勝つ勝利に貪欲な戦術者。 「戦術助言者としての戦い方をみせてやるよ」 盾を手にジェイクは戦場を駆ける。手が足りないところへの補助と、全体を見据えての指揮。それが役目だ。過去の記憶は喪失しているが、だからこそ今の仲間を守るためにジェイクは自らの知識を総動員する。 「わかってるよ、深緋。戦闘後は元の世界に戻るとは言え、手心を加えようなもんなら負けるのはオレ達だ」 フツは語りかけてくる少女の声にこたえる。それはフツが持つ槍からの声。槍という武器に化したからか、あるいはその少女の神秘的な感知か。目の前の相手を侮るなと持ち手に語りかけていた。 「最初から全力で行くぜ!」 印を組み、呪を紡ぐ。イメージするのは赤き羽根。紅蓮の羽根を広げる赤の聖獣。四神の一角と呼ばれた獣を招来し、戦場に放つ。フツの実力ではその力全てを顕現できないが、それでも生み出した炎はアザーバイドを焼いていく。 「ちょうどいい腕試しの機会になりそうだ」 銃を構え、杏樹が戦場を走る。本来後衛で銃を撃つのが杏樹の立ち居地だが、彼女はあえて前に出た。ウネの尻尾を警戒しての行動だ。ウネを通さないように立ちはだかると、銃を撃ち放った。一度にばら撒かれる弾丸は、意志を持つように戦場を飛び交う。 「一気に攻める」 まるで生物のように縦横無尽に弾丸は戦場を舞う。それは杏樹という女王の元に動く蜂の如く。真正面から、死角から、あらゆる角度からアザーバイドを襲う。点ではなく面の制圧。 「やはり、そう簡単には押し切れないか」 「いや。今のはかなり効きましたよ」 リベリスタの猛攻を称えるようにレオーナルが言葉を返す。回復を仲間に施し、体勢を整えなおす。 「なかなかやるなぁ。だがこっちも負けちゃいねぇぜ」 「……押し通す、よ」 「ねぇ、レオ。やっぱり持ち帰り禁止? この人達持ち帰りたーい」 「ダメです」 アザーバイドもまだ余裕のある会話を飛ばしている。 「彼らは侮れません。気を抜かないでください」 レオナールの言葉に、当然とばかりにアザーバイドの戦意が膨れ上がる。それに応じるようにリベリスタも気合を入れた。 湧き上がる互いの声。戦いは、激化していく。 ● 「……むー。目がチカチカするー」 ウネはセラフィーナの剣技に翻弄されていた。レオーナルの治癒が間に合わないときは、味方のアザーバイドを睨んでしまうこともある。 「ここからが本番です。ついて来れますか?」 神経に神秘の力を宿らせ、セラフィーナは刀を振るう。ウネの動きを見据え、その先を制するように刃を振るう。相手の先を読み、その先に相手を制する。先の先。そう呼ばれる技法。 「ここが攻め時だね」 ジェイクは機を見切り、攻勢の陣を敷く。間違っているかもしれない。正しいかもしれない。脳内で幾度となく思考を繰り返し、今が時期だと判断する。その指揮に従い、リベリスタが攻勢に出た。 「こりゃ押されるな。先生!」 「仕方ありません」 カザマの一言で今まで回復に徹していたレオーナルも攻撃に転じた。フツを中心とした広域に蛇の形をしたオーラが叩き込まれる。 「……ちっ。厄介だな」 フツは少女の魂が宿った槍を持つために、運の流れに見放されがちだ。絡みつく蛇はその不運をさらに強くする。それは技の発動に影響し、幾度か招来に不具合が出た。戦いながらカザマとユファの動きに目を向け、その動きを仲間に伝える。 「カザマは手首を見て避けろ! ユファは足運びだ!」 「見た目は派手だが……威力は自己申告で頼む」 鷲祐は防御に徹してカザマの攻撃を避けていた。時折生まれる余裕で集中し、相手に一撃を見舞う。速度を生かした多角度からの斬撃がカザマを襲う。だが、 「よく狙えば、当てれない速度じゃねぇぜ」 (向こうも集中してるのか……!) 相手が防御に徹しこちらに危害を加えないと分かれば、狙う余裕は十分に生まれる。集中を重ね狙いを定めた蛇骨剣の動きが鷲祐を襲う。引き裂くような一撃が、鷲祐の運命を削るほどの怪我を負わせた。 「予想はしていましたが、相性は最悪ですね」 亘もまた追い込まれていた。自らの速度に翻弄されず、的確にユファが拳を叩きこんでくるのだ。しかもその一撃は毒を含んでいる。流れるような連撃に亘も運命を燃やすことになった。 「これで……終わり」 「いいえ、終わりませんよ。諦めの悪さに関しては……半端ないですよ自分」 燃やした運命が体内の毒を消す。まだ倒れないと破界器を構えた。 「一気に攻めるぞ」 杏樹の銃がウネに向けられる。両腕を交差させて自分を守るウネ。その腕の隙を通すように弾丸が放たれる。弾道が少しでもずれれば、鱗で衝撃が拡散できただろう。だが弾丸は的確に隙間を通り、ウネの体内に叩きつけられる。くの字に体を曲げ、ウネが倒れた。 「そっちがもう一人ぐらい倒れたところで負け認めておとなしく帰ってくんない?」 「その程度で負けを認めるほど、私達は腰抜けではないのですよ」 フランシスカの降伏勧告をレオーナルは一蹴する。まぁ予想通りね、と思いながらフランシスカは闇の錐をアザーバイドたちに向かって放つ。異世界の赤き戦士達とは違うが、彼らもまた戦士。 「ほなら手加減せぇへんで。死んでも恨むなや!」 最大火力で攻めていた椿は、エネルギー回復のためにレオーナルの精気を奪い取る。死んで欲しくないと思うが、手加減の余裕はない。 リベリスタの矛先は回復支援を行うレオーナルに向く。多少の体術の教えはあるのだろうが、リベリスタの攻撃を捌き切れるほどではない。撃破に時間は掛からないだろう。 「……レオ……今助けに、行く」 だがその前にユファを押さえていた亘が力尽きる。それを遮る為、椿がユファに近づき拳を振るう。交差する椿とユファの腕。その接触部分から椿の腕に毒が回る。 「……『ルゴ・アムレス』……なんやこれ、あんたらのチャンネル名?」 ユファと交戦する際に椿が覗いたイメージ。それは異世界の光景。簡素な石造りの家と闘技の広場。そして天を衝くほどの巨大な黒い塔―― 「……限界ですね」 セラフィーナの一刀で、レオーナルが膝を突く。呼吸は荒いが、生命の危機は無い様に見えた。 「ここまでか……! 後は任せたぞ」 カザマの攻撃に鷲祐が力尽きる。戦線離脱に不満などない。仲間を信じているからだ。それもまた戦い。 「悪いね。俺が相手させてもらうよ」 フツが倒れた鷲祐の代わりとばかりに立ち塞がる。蛇の呪いは既にない。緋の槍を構え、カザマに立ち向かう。蛇のような刃がフツを襲った。 「こらあかん!」 ユファの攻撃に椿が運命を燃やす。近遠ともに戦える椿だが、近距離戦ではユファが勝る。技量の差が出た形だ。だが、 「今日はいつになく、翼が軽いんです!」 この戦いは悪意も殺意もない戦い。ただ自らの技量を高める戦いだ。姉と技量を高めていたころを思い出す。まるで姉と共に戦っている様。その一閃が、ユファを地に伏す。 残るはカザマ一人。だが降伏の意思は見えない。むしろ逆境に嬉々としていた。 「さすがにやるな!」 フツは緋の槍を振るい、カザマと切り結んでいた。槍の一撃で相手の動きを拘束しながら、しかしカザマも変則的な武器の動きでフツの死角から刃を突き立てる。運命を燃やしてその一撃に耐えながら、蛇の刃を押さえた。 「今だ、やれ!」 「素直に言うと、あんたたちとの戦いは楽しかったわ」 バトルマニア且つウォーモンガー。気を抜けば押し切られただろう戦闘の緊張感。フランシスカはアザーバイドたちに笑みを浮かべながら闇のオーラを練り上げた。そのオーラに負けず劣らずの黒い剣にオーラが集う。 「食らいなさい、これが黒き風車よ!」 鉈に似た巨大な剣をフランシスカが振るう。闇が風の如くカザマを襲い、突き抜けた。黒の風が体力を奪っていく。 手から蛇骨剣が落ち、カザマが倒れる。その音が戦闘終了を告げた。 ● あれだけの激闘だったが、アザーバイドたちは全員生きていた。 「……タフやなー」 椿が戦闘不能になった鷲祐と亘を応急処置をしながら、アザーバイドのタフネスに呆れていた。 「ところでさ、あんた達セリエバって化け物の樹の事知ってるみたいだけど……あれ、あんた達のとこの?」 「いや。あれの根元は『ガ・ファーヌ』……だったか? ともあれ俺達とは別チャンネルだ。あれを折るほどの相手がいると聞いてココにやってきたんだが……噂に違わぬ戦士達だったな」 フランシスカの問いかけに、カザマが答える。察するに主目的は『強いアザーバイドを折ったほどの戦士と戦う』ことだったらしい。 「御相手感謝だぜ、本当に良い経験になった」 「縁があれば、また手合わせしような」 ジェイクと杏樹が感謝と再戦を望み、アザーバイドたちを見送る。他のリベリスタもそれぞれの友好の言葉を交わす。 「次に会うときゃ、蛇が大蛇にでもなってるのかね。オレも修行を積まないとな」 ホールが閉じた後にフツが感慨深く口にした。再会があるかのような、そんな台詞。 ああいった連中となら再戦もいいかもしれない。そんな笑みを浮かべながら、リベリスタたちはこの場を離れた。 ルゴ・アムレス。 そこは多種多様の戦士達が集う修羅のチャンネル。 『万華鏡』がそこに続くDホールを捕捉することになろうとは、このとき誰も予想できなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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