● 「私は……碧色がいいです」 「かしこまりました。では、この魔法の氷をどうぞ」 透明な氷を受け取って、心に好きな色を思い描けば自分だけのアイスブロックが出来上がる。 中にはゆっくりと炎の様に揺れる光の魔法。 「これをどうするんですか?」 目の前に居る七面鳥の顔をしたアザーバイドはつぶらな瞳をにっこり細めて、いつの間にか出現した『かまくら』を指さした。 中に入ると案外温かい。けれど、一つだけぽっかりと空いた穴から冷たい風が吹き付けているのが分かった。 「その穴に、あなたの魔法の氷を入れてごらんなさい」 言われるまま押し込んだアイスブロック。途端に広がるイングリッシュフローライトの優雅な煌き。 「わあ! 綺麗ですね」 少しだけ薄暗いアイスドームの中に、魔法の氷で出来た光がゆらゆらと揺れている。 一つだけでも美しいが二つや三つ合わせれば万華鏡の様に色取り取りの光が見れるだろう。 こんな場所で、クリスマスの一時を過ごせるのなら幸せなのだが、生憎と日々を過ごすだけで精一杯だと思ってしまうのだ。 だって、こんな夢を見てしまうぐらいなのだから。 自身ではどうする事も出来ない環境への憤りなど何もなかった事に、見なかった事にしてしまう方が良い。夢見がちな少女でもいい。 「さあ、美味しい物を食べて、しょんぼりな気分を吹き飛ばしてしまいましょう!」 そうだ。おいしいものは正義である。 考えても仕方のない事を考えるよりも、お腹を満たした方が有意義だ。 しかしである。 「あ、あの……」 「はい、何か?」 この七面鳥の顔をしたアザーバイド、顔が怖い。近づかれると尚の事。赤色の顔面はゴツゴツしていて鳥の様には見えない。 「い、いえ!」 「ああ、申し遅れました。私、ターキー・レッドと申します。……何、マンボウと栗ですか? ふふふ、あれは弟達ですよ」 差し出されたメニュー表を見てみると、クリスマスの装飾が施されて可愛らしい。 しかも、全てイラストで描かれた丁寧なものである。その代わり文字が書かれていない。 ふと、目に止まった橙色のそれは、海色の瞳を大きく惹きつけた。 「あの、これお願いします!」 指差された絵を見て、ぱちくりと瞬いたターキー・レッドの瞳。 「調理方法はどういたしますか?」 「もちろん、焼きでお願いします!!!」 満面の笑顔で待つ頬の色はオパール・ピーチに染まっている。まだかまだかと待ち続けて。 サクサクとアザーバイドが雪を踏む音に待ちきれなく、アイスドームの入り口まで駆け寄った。 けれど、自分の足を踏みつけて世界が反転する。 「あぁ……!!!」 落ちる瞬間、焼きみかんの美味しそうな橙色が、涙で滲んで見えなくなって行った。 ● 「クリスマスに光のアイスドームに行きませんか?」 にっこりと海色の瞳で微笑んだ『碧色の便り』海音寺 なぎさ (nBNE000244) は一枚のカードを差し出した。そこに書かれているのは赤、緑、青、黄色等に塗られたアイスドーム。 「自分の心に思った色でドーム内を照らしてくれるんですよ」 それは、アザーバイドの能力であるのだろう。クリスマス仕様で何だかわくわくしてしまう。 ドームの大きさは1人用から用意されていて、大きなものだと数十名入る事が出来る。 受け取ったアイスブロックをドームの穴に差し込めば、ランプ代わりにゆっくりと照らしてくれるのだ。 もちろん、美味しいものだって用意されている。 オードブルやブッシュドノエル、クリームシチューにローストターキーもあるのだ。 ロマンティックにカクテルやワイン何かで恋人同士の一時を過ごしてもいいだろう。 温かい格好をして寄り添い合えば、ほんの少しの寒さなんて何処かへ行ってしまう。 「よかったら、どうぞ」 イングリッシュフローライトの髪を揺らして、笑顔で去っていくフォーチュナ。 小さな声で「焼きみかん」と聞こえたのは気のせいだろう。 今夜は少しだけ冷たい風が吹くけれど、ゆったりと自分の好きな色にランプを照らして。 美味しいものを楽しむのもいいかもしれません。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:もみじ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月07日(火)22:58 |
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●Ice flower garden 外の空気はインディゴ・ブルーの空から振る白い雪のお陰で、肌に突き刺さるほどに冷たいものだった。稜線の向こう側にオレンジ色の太陽が消えてからより一層寒さが増している。 けれど、温かなかまくらの中に入ってしまえばそれも和らぐだろう。親しい者と楽しい時間を過ごすのなら尚の事。ターキー・レッドの魔法のアイスドームでの一時はどの様なものだろう。 生成り色の絨毯が敷き詰められたアイスドームへと足を踏み入れたのは杏樹と慧架だった。 ベールを外した杏樹のクラン・ゴールドの髪が揺れている。慧架は赤いドレスを身にまとい杏樹へと声を掛けた。 「杏樹さんは成人してるのでアルコールでのむでしょうか?」 「いや、遠慮しておくよ」 「あ、ブランケット頼みます? 氷の中って寒くかんじちゃいますよねー」 「ふふ、そうだな。風がないとはいえ、冷えると後が辛いしな」 次々と出てくる言葉に微笑みを浮かべる杏樹。戦いの日々を思い描けば、彼女とこうしてかまくらで食事をしている事は夢の中に居るような物なのだろう。 ソフリットに僅かなポルチーニを香らせたボロネーゼスパゲッティを二人で分け合うこの時間さえも、氷の中に揺らめく光の様に繊細。 「杏樹さん、あーん」 差し出されたブッシュ・ド・ノエルをぱくりと口に頬張った杏樹。 「ここのケーキは美味いな。来年もまた来れるといいけど」 慧架は彼女の言葉にそうですねと笑顔を見せた。 雷音とそあらはソファがあるかまくらの中で、魔法の氷をころんと穴に入れた。 マラカイトグリーンとストロベリーの光が揺らめいてアイスドームを照らす。 「わぁ……綺麗だな」 「絵本の中に来たようなのです」 ドームの中で揺らめく二色はクリスマスカラー。緑と赤の二重奏。 「七面鳥さんのアザーバイドはちょっと顔はこわかったけど、この魔法は、クリスマスらしくてすてきなのだ」 柔らかなソファに座ってターキー・レッドが持ってきたブッシュ・ド・ノエルを二人で頂く。 「こんなゆっくりした時間がいつまでも続けばいいのにと、思ってしまうな」 彼女たちは前線に立ち続けるリベリスタだ。戦闘という非日常を日常に変えてまで戦い続ける戦士である。世界の人々の笑顔を守るために。平和な事が幸せであるのを知っているが故に。 親友と共に過ごすクリスマス。普通であれば当たり前の時間。 ほんのひと時、この一瞬がかけがえの無い時間だと認識しているのだ。 「メリークリスマス、そあら。次の年もいっぱい、一緒に楽しむのだ」 「メリークリスマスですっ」 ウィンター・ベル紅茶のホワイトチョコレートフレーバーが二人を包み込んだ。 そあらと雷音はお互いの魔法の光を見つめて想う。 親友とのクリスマスが幸せだから――この魔法がずっととけないといいな、と。 アンティークのテーブルと椅子。どちらもケルティックのレリーフが施された逸品。その中で、ほぅとため息をついたのはミュゼーヌと旭だった。 「何だか妖精のお家みたいで、ロマンチックで素敵な雰囲気ね」 ミュゼーヌの声に満面の笑みを返す旭は嬉しげに頷く。 「魔法の氷をどうぞ」 顔の怖い招待主に渡された透明な氷に想いを込めて描く色――灯火のオレンジレッドと高貴なネイビーブルー。二つの穴に差し込めば二人の色が重なりあう。 「わぁあ、きれい……!」 「うん……私達が合わさると、こんな色に交わるのね。とても綺麗……」 二人の色が重なった部分、そこに生まれたのはライラック・パープル。 ライラックの花言葉は「友情」、二人の親しさを表すミュゼーヌと旭の色だ。 「めりーくりすまーす♪」 「ふふ、メリークリスマス」 シェフおすすめメニューを注文した二人はまずは乾杯とグラスを鳴らす。 「えへへ、かまくらってわくわくするよねぇ。ミュゼーヌさんは作ったことある?」 「そうね、何だか童心に帰った気分でワクワクしちゃう……子供の頃に家族と一緒に作ったわね」 「……わ、そなんだ。ちっちゃいミュゼーヌさんもかわいかったんだろーなぁ」 「ね、今度一緒に作らない?」 「うんっ。今度雪積もったら一緒につくろ。ふたりで入れるくらい、こーんなおっきいの!」 手を広げた旭の姿にミュゼーヌは笑みを零す。 この時間が心地良いから来年も幸せな思い出を作る約束をするのだ。 柔らかなソファに腰掛けて、なぎさを後ろから抱きしめているのは那由他だった。 「あ、あの……」 「今年最後のなぎさ分を補給するのですよ」 オペラ・モーヴに染まるなぎさの頬。それでも蜜柑は手から離れないのは執念だろう。 「那由他さんの好きな色は何ですか?」 「好きな色ですか? 勿論、く……いえ緑です」 「え?」 「緑なんです。聞き返さなくて良いです」 エメラルドグリーンに染まるランプはアイスドームの中を優しく照らしていた。 ――以前の、なぎささんの姿を見て気付いた事があります。うん、私は貴女の事を労らないといけなかったんですね。 家族が居なくなって悲しくない訳がない。仕事とはいえ、人の不幸を見て辛くない訳がない。それは、分かっていたんです。 「分かってなかったのは、貴女が自分の勤めを頑張って果たしていると言う事」 「え? 勤めですか?」 意を得ないなぎさは振り向いて、那由他と視線をあわせる。 「だから、まあ、つまりですね……」 一瞬の静謐がアイスドームと二人の間に流れ込んだ。 「よく頑張ったね、なぎさ。貴女は、とてもえらくて良い子だよ?」 吸い込まれるようなエメラルドの瞳が其処にはあった。 褒められた事への嬉しさと、抱きしめられている事への気恥ずかしさ。 そして、いつもとは違う口調。きっと、それは反則。 「あぁぁ、ありが、とうございますっ!」 那由他の顔が見れなくて、なぎさは彼女の肩口に顔をうずめた。りんごの様に真っ赤な顔を。 タイガー・リリーとカメリアの暖色がマーブル模様をかまくらの中を彩っている。 久々の再会に胸を躍らせるのは椿と鼎だった。かつての思い出を紡ぐように会話も弾む。 「ほんわか暖かい光に包まれて……でも、色の変化あった方が素敵やない?」 メニューはイラスト仕立ての可愛らしいクリスマス仕様。 「あ、うちカルパッチョとムニエル、後メインで煮込みハンバーグな! ドリンクは……樹霜で!」 リキュールベースの優しいカクテル。ヨーグルトの風味が甘く爽やかなフローズンスタイルの様だ。 注文した椿は鼎に向き直る。 「いやぁ……ほんとかなちゃん久しぶりやわぁ。」 「ふふ……このように過ごすのも久しぶりですね」 「実家には何度か出向いたんやけど、革醒してこんな姿になっとるやん? 今までお姉ちゃんやって慕ってくれとったから、なんかわざわざ忍び込んで遊びに行くんが申し訳なくなってまってやね……ごめんな?」 「いいえ。今こうして会い、話すことができること。それだけで十分です」 「そっか、それなら良かったわ」 「はい。このような日がいつか来ることをかなえはずっと信じ、待っていました。でも……これからは、ずっと一緒に居られるのですよね。何より、お姉様と再会しすぐこのような催しがあること そのことにも運命を感じます……♪ ああ……かなえは、かなえは幸せ者です……!」 捲し立てた鼎の言葉には長い間会えなかった諸々の感情が込められているのだろう。 その様子に椿は愛おしさを感じながら再会の宴を楽しむのだ。 紺色の夜空から雪が舞う音の様にユーヌと彩香のアイスドームも静謐に満ちていた。 時々聞こえるナイフとスプーンが置かれる音と小さな吐息。けれど、心の中では魔法の氷に感嘆する声も聞こえるのだ。たまにはこういうのも良いのかもしれないと。 「良い味、期待以上だ。よく煮込んでるだけあるな、このビーフシチュー」 スプーンに震える牛肉は、つつくだけでほろほろと崩れそうになる程柔らかい。 「……あ、これ美味いな。それはどんな味なんだ……?」 首を傾げた彩香の瞳につられてユーヌも同じように傾ける。 「ふむ、気になるのか?」 差し出されたユーヌのスプーンは彩香の口に吸い込まれていった。 赤ワインでコトコトと煮こまれた牛肉が、舌の上でとろける。 「ん……ふむ、なるほど……ん? こっちも食べてみるかい?」 「ああ、そっちのも美味しそうだ」 ぱくり、とお互いに分け与える動作が可愛らしいのは女の子同士の特権であろう。ある種、秘密めいた花園の様な、絵になる美しさがそこにはあった。 しばらくのメインディッシュを楽しんだ後、再びメニューを見つめる二人。 「しかし、残念だな。デザートだけでも目移りするが……半分ずつ分けるか? 月姫はどれが気になるのあるか?」 「気になるもの……そうだな……どれも気になるな」 「私はパネトーネが気になるけれど」 色々な物を頼んで少しずつ分け合えるのも女の子らしい。 「「かんぱーい」」 同時にドームいっぱいに声を響かせたのは木蓮と海依音だった。 「へへー、こっちはジュースで悪いけど……やっぱ乾杯っていいもんだなぁ」 こくりとお酒とジュースを飲み干した後は美味しい料理を堪能しよう。 「グラタンにピザに…ダイエットは明日からでいいですよね。カロリーたべましょ! カロリー! カロリーは美味しいもの」 「ぬぬ、カロリー高そうだけどチーズやマヨネーズの匂いがッ……んむッ! ダイエットは明日からだな、それに俺様達には別腹がある!!!」 料理を一通り食べ終わった後に木蓮が差し出したのは赤いシルクのリボン。 「トーナメント優勝おめっと、海依音ちゃん! 祝いにゃ役者不足かもしれないけど、よければ貰ってくれ♪」 「あら、嬉しい。今度一緒にでましょうよ。三高平の女子は強いって男子のみなさんにアピールしないと」 「おう! 今度は一緒に。腕磨いて楽しみにしてるぜ!」 いい感じにほろ酔いな海依音は木蓮との女子トークを楽しんで居るようだ。 「クリスマスなんてねー! 爆発しろー! 彼氏ほしぃよぅ! 木蓮ちゃんはそのおっぱいでたらしこんだの?!」 「たっ、たたたらしこんでは……! 海依音ちゃんもすぐ出来るって、美人なんだしさ!」 木蓮の胸をつんつんする海依音。お酒も相まって女子同士だから出来るスキンシップだろう。 「とにかく、今年は素敵な年だったわね。来年もいろいろ出かけましょ」 「来年の楽しみが増えたぜ、また素敵な年にしようなっ」 アイスドームの中に響く二人の笑い声はいつまでも続いていた。 碧色の光がアイスドームを優しく照らしている。中に居るのはシエルとなぎさだ。 「私も好きです」 ――恋人の瞳の色/ホリゾン・ブルー。なぎさの髪の色/イングリッシュフローライト。親戚の髪の色/水縹。大切な人達を彩る色。 「お蜜柑、種類豊富ですよね」 「はい!」 テーブルに並んでいるのは晩白柚、デコポン、ポンカン、八朔、甘夏の各種みかん。 「そして……しんぷるいずべすと! やはり焼き蜜柑ですよね……お供致しますとも」 「わぁ! ありがとうございます」 冬の蜜柑は格別だ。フレッシュな甘酸っぱさは堪らない。身体にも良い。最高である。 シエルはなぎさの心情を慮った。倫敦での報告書はもう読んだであろう。それに起因する血縁の所在と複雑な心境を。しかし、其れは其れ。楽しむ時には楽しまなければ健康にも影響する。 「蜜柑の皮をイモムシみたいに剥いてみました!」 「おお~、凄いのです」 意外と綺麗に剥けてしまうので面白い。様々なバリエーションがあるようだ。 「なぎさ様……お友達になって頂けますか?」 突然のシエルの言葉に海色の瞳を大きくしたなぎさ。 「唐突でびっくりさせちゃったらごめんなさい。ただ、これからも美味しいものを食べる時、なぎさ様とご一緒したいと思う次第でございます」 「はい! 私なんかでよければ喜んで」 なぎさは蜜柑を半分に割ってシエルに渡したのだ。 ホリゾン・ブルーの光が降り注いでいる。優しい蒼色のアイスドームに居るのは光介となぎさ。 料理は絶品ロブスタービスク。イーオスの朱色は香り高く鮮やかだ。 「難しいんですよね、ビスク。この味どうやって……」 濃厚だが臭みなく、滋味深いスープ。 手作り目線で考えてしまうのは木漏れ日の喫茶店をやっているからなのか。それとも。 「ふふ、昔はこの時期大変だったんですよ」 光介の記憶に残る聖夜の思い出。家族3人のクリスマスーパーティー。 よく、「クリスマスにふさわしいBGMは何か」とオーディオの主導権争いが勃発していた。 料理は光介の担当だったのだろう。少しだけ頬が緩んでいく。 「楽しかったですけどね。大切な人のための料理」 そう、呟いた光介の心情が少しだけ憂いを帯びた。楽しい思い出であるからこそ、喪失を識ってしまう。 なぎさもそれは同じで、光介と近い環境だから同調して心が揺らぐ。 思い出は何にも代えがたいもので。美しい宝石だけど。でも――。 「……ね、今度」 「はい」 「作らせてもらえませんか? なぎささんの好きなもの」 新しい光が、絆が。そこに見えている気もするんです。 それは、輝かしい宝石ではないけれど、原石の様な――『これから』を予感する光。 「蜜柑ですか?」 「ふふ、焼きます?」 「はい! ……でも、今度カレーを作ってくれませんか。『家族4人』で作ったのそれぐらいしか覚えてないんです」 たんぽぽ園の家族ではない。本当の家族。――倫敦の報告書の中に見た家族の姿。 記憶の中の父親より幾分草臥れて見えた立ち姿。それに寄り添う母親の『外装』。 探し求めた両親は彼岸に行ってしまったのだと心が大きく揺れたのだ。 でも、これ以上は考えたくない。今日は――聖なる夜なのだから。 ●Winter Bloom 【黒蝶】の少女達は広めのアイスドームでその美しい羽を休ませて……否、揚々と羽ばたかせている。 「へー……これがかまくらねぇ」 フランシスカが見上げるかまくらの天井は透明の氷と白い雪で覆われていた。想像していたよりも広くてなんだか壮観だとティール・ブルーの瞳が細められる。 氷璃は受け取った魔法の氷を手に情景を思い浮かべる。鱗粉を仄かに落としながらふわりと優雅に舞う紫の蝶の姿を。 「綺麗な色だね」 「ええ、糾華にとてもよく似合う優雅な紫色よ。透き通るような水色との相性も抜群でしょう?」 フランシスカと氷璃が覗き込んだランプ代わりのアイテムは美しい紫だった。 それを天井の真ん中にある穴に差し込むふたり。 「あ、これもお願いします」 真下にいるリンシードがフランシスカに向けて投げたのは夕暮れ時の暖かで眩しい太陽の色をしたアイスランプ。冷たいアイスカラーに明かりが灯っていく。 ふふっ――。さぁ、パーティーを始めましょう。 「Joyeux Noel」 音頭とるのは純白の六枚羽を広げた氷璃お姉様。 「――――メリークリスマス!!!」 一斉に少女達の声がかまくらの中で響き渡った。それと同時にクラッカーの音も盛大に鳴らされる。 ドームの天井にステンドグラスの様に揺れているのは、氷璃の思い描いた紫蝶の色、アメジスト・パープル。それにリンシードが創りだしたアプリコット・オレンジ。優雅なアメジストと暖かなアプリコットがアイスドームのペールブルーを「ふゆのにぎわい」へと変えていく。 蝶達の目の前に並べられるのは、小海老カクテル、白身魚のカルパッチョ、コーンとラビットのパイシチューにローストターキーやボンゴレビアンコ、タラバ蟹と帆立貝のグラタン等の華やかな料理。 この日の為のパーティ料理はターキー・レッドが腕に撚りをかけた逸品ばかり。 「結構な数ねこの料理……。美味しそう」 フランシスカも存分に楽しむつもりなのだ。準備お疲れ様と言いながら笑顔を向ける彼女の周りには少女達の賑やかな声が広がっている。 ――まあ、たまにはこういう賑やかなのもいいものね。いつまで経っても慣れないものだけど。 「さあ、皆、楽しみましょう!」 糾華が笑顔で言えば、みんなの笑顔がきらめいていく。 並ぶどれもこれもおいしそう。見た目も花や食べれる飾り、盛り付けがかわいくって。 「あ、これ作れそう」 シュスタイナは花型に飾り付けられたサラダを見つめてつぶやいた。 それにしても……。リンシードは思うのだ。 ――今回もメニューにある、みかん……な、なぜみかん……なぜそうもみかん推しなのか… 「とりあえず、焼けばいいんでしょうか……焼いたのを全員に配っていきましょう……うん、美味しい」 みかんは美味しいものである。ビタミンも豊富で甘酸っぱくてジューシー。最高である。 啄むような小さな一口さえ6人居れば次々と料理が綺麗になっていく。それだけ楽しい宴なのだ。 「デザート。クリスマスでお祝いと言えばケーキですよね。別腹!!!」 セラフィーナが選んだのは苺のショートケーキだった。フレッシュな苺は福岡の苺農家から仕入れたものだ。甘くて美味しい苺とクリームのコンビネーションはセラフィーナの口の中でとろけていく。 「はふぅ……美味しいです。これはぜひ、皆さんにも食べて欲しいですね」 セラフィーナは皆の持ってる食べ物を一口貰って、苺ショートを口に入れていった。 「なんだかんだで皆で集まるのも結構な回数になってきたわね。パーティーなんて数える程もしたことがなかったのに不思議な感じ。皆が一緒に遊んでくれる事がとても嬉しい。来年もいっぱい一緒に遊んでちょうだいね?」 「やはりみなさんと集まるのは、いいですね……お姉様の笑顔も一段と輝く気がします」 糾華が微笑めばリンシードがそれに答える。 「準備も大変だけれど頑張るものね、リンシード」 「来年もこうして集まれるといいですね……来年もよろしくお願いします」 ミル・ホワイトとミスト・ブルーの髪がふわふわと揺れていた。 ふかふかなソファに身を委ねて、洒落たお酒でも飲めば気分は上がるであろうが。今宵は愛し合う可愛い妹達に酔うことにした氷璃。 年相応にはしゃぐ姿を愛でる至福の一時。けれど、はしゃぎ過ぎてうつらうつらしだした黒蝶。 「糾華、いらっしゃい」 もたれかかる糾華を純白の翼で優しく包み込み、聖なる夜に相応しい子守唄を氷璃は歌うのだ。 「……ふぅ。変われば変わるものね……ほんと。ま、その変化も良い変化ではあるのだけど」 楽しげな少女達を見渡してフランシスカは一人、静かな夜に呟いた。 ●Ice Suite garden さみしがり屋さんのいっちーをエスコート。しているのは竜一だ。 「さ、寂しくなんかないよっ! ないもん……」 彼女にも思う所は色々あるのだろう。しかし、今日はクリスマス、祝いの席に悲しみは似合わない。 「魔法の氷、なにこれすごい! きれい!! えっとねー赤がいいけど、ちょっと強すぎるからピンクにしよう」 氷の中に色づいたのはアップル・ブロッサムの優しいピンク色。 もふもふのソファに沈み込んだ壱也はくるりと振り返り、竜一が手にしたシャンパンを受け取る。 「めりーくりすまーす!」 チリンとグラスの音がアイスドームの中に響いて、中のシャンパン・ゴールドにピンクの光が反射する。 ターキー・レッドが運んでくる料理、前菜は、ハム&アボガドのグリーンサラダに白身魚のカルパッチョ。新鮮なサラダに、口の中でトロトロのアボガドと一緒に溶けてゆく程柔らかな生ハム、その塩気が良く合う。 「うわ、なにこれおいしい! サラダも魚のカルパッチョもうまいほっぺ落ちる~」 「うん、カルパッチョも酸味が食欲をそそるね。こういう前菜には、軽めの白ワインがいい、さあさあいっちー」 「……これ飲みやすいっ」 前菜、メインディッシュの合間にも竜一は壱也にワインを進め続ける。 「さあさあ! いっちー! どんどんお飲みよ!」 ビーフシチューとステーキを頬張り壱也は大きな瞳を爛々と輝かせた。 「肉だーっ! わあい、お肉おいしい!」 肉のパンチには、強い赤じゃないと。と竜一は赤ワインを壱也に注いでいく。 「あかわいんもおいちいな~えへへ~。――ぱんちら?」 大丈夫、この位置からは見えてない。 酔いつぶれてもにょもにょ言い出した壱也を竜一は「仕方ないなあ」とおんぶして帰路についた。 少しだけ肌寒い肩にふわりとブランケットを掛けたのは夏栖斗だ。掛けられたのはティアリア。 「ふふ、さすが紳士ね。ありがとう、気が利くわ」 「先生っていうか今日はお姫様で!」 口が上手いんだからと笑ったティアリアと、夏栖斗の手の中にあるのは魔法の氷。 「おー、なんか不思議な感じ!」 輝きを帯びる夏栖斗の氷は銀色。ティアリアの髪の様に繊細に揺れ動いている。 その光を少し目を大きくして見た彼女はもう一度笑みを返した。 「ふふ、ありがとう。とても綺麗よ」 ティアリアが思い描いた色は輝く黄色。夏栖斗のダンディライアン・ゴールドの瞳にかき消されてしまわないように強い色だ。 ブルーチーズ、ミモレットにゴーダにコンテ。黒胡椒を散らしたカマンベール。薄切りのカリカリバケット。小さなグラスにはたっぷりのはちみつとグレープフルーツのジュレが付き添うチーズプレート。 甘酸っぱく暖かなグリューワインとスパイシーなヴァージン・マリーを揺らして。 「クリスマスに乾杯!」 「ふふ……乾杯」 「クリスマス爆破しろーとかおもってたけど、先生と一緒なら爆破しなくてよかったって思うよ!」 「こうして夏栖斗からお誘いがあるなんて。それに、こんなにお世辞が上手だったなんて」 「や、お世辞じゃないって、僕は幸せものです。美人のお姉さんと一緒にクリスマス過ごせるんだしね!」 にっかり笑った夏栖斗の笑顔は清々しく太陽の様な暖かさを放っている。 「いつも光輝く貴方とこんな場で独占するなんて贅沢ね。これからも素敵な貴方でいて頂戴。わたくしはずっと見守っていくわ」 アイスドームの中に太陽を閉じ込めて――ティアリアは一時の素敵な時間を過ごしたのだ。 杏は大好きなまこにゃんと共にかまくらの中に足を踏み入れた。 受け取った透明な魔法の氷に色を思えば、ライトグリーンとピンクに変わっていく。 「ピンクとライトグリーン……。淡いクリスマスカラーみたいになるわね」 その氷を穴に差し込めばふたりのクリスマスパーティのスタートである。 「ドームの中、結構あったかいんだねぇ。コタツあればもっとイイのに……あ、でも、ソファーと毛布があるよ」 並んで座って。毛布を上から掛ければコタツ気分も味わえるだろう。杏が感じた肌寒さも二人で寄り添えば和らいでいく。 「メニューいっぱいで迷っちゃうね、色々頼んでふたりで分けっこして食べよっ」 真独楽の存在を間近に感じて、杏は思い出と妄想のアルバムを引っ張りだした。 (絡み合う手)(絡み合う足)(絡み合う視線)(絡み合う吐息)……。いけないそれ以上は。 クリスマスプレゼントは……える……ぴー……が。 「…ふにゃ?杏、ぼーっとしてどぉしたの?」 正気と狂気の間を彷徨っていた杏の意識が真独楽の声で呼び起こされる。 「えと、そうね、食べましょうか! まこにゃんが好きなもの頼んでいいわよ」 「わーい♪白身魚と牛は絶対食べるー! ブッシュドノエルも半分こだよ。折角だからローソク立てて、せーので一緒に吹き消そう!」 「いいわね」 メリークリスマス。今年も遊んでくれてありがとう。来年も一緒に居ようねと約束を交わす杏と真独楽。 マリーゴールドとローズダストに彩られているのは義衛郎と嶺のアイスドームだった。 「それじゃあ準備も整った事だし、早速食事といこう」 「何から食べましょうかねぇ」 「どれも美味しそうで、目移りしてしまうね」 前菜にシーザーサラダ、ウニのクリームリングイネとオニオングラタンスープ、ペンネジュノベーゼ。 メインディッシュは100時間ビーフシチューをチョイスする義衛郎。 じっくりとバターで飴色に炒められたオニオンの甘みと香ばしさ、カリカリのパンにとろけるチーズの風味がじんわりと胸の奥に染みわたる。 「お酒のアテに浅漬けオリーブとジャーキープレートもお願いします。食べ物は2人で分けて食べれば、色々楽しめますね」 ボンゴレビアンコやロブスターのビスクも美味しそうだと嶺。ついでにアイスヴァインも。 「ワインは極甘口のアイスワインですよー」 トロリと、葡萄の甘さを贅沢に詰め込んだアイスワイン。 「じゃあ、甘口のシャンパンを。辛口のお酒は苦手なんだよね、子供舌なもので」 「私も、辛口はダメなんですよねぇ……」 温かみのある光に包まれて、二人は静かな夜を過ごしていく。テーブルに並ぶ料理に舌鼓を打ちながら義衛郎ははたと顔を上げた。忘れていたものがあったのだ。 「れーちゃん、メリークリスマス」 「はい、義衛郎さんもメリークリスマスです」 優しげな表情を浮かべた嶺と義衛郎。そして、二人の視線は――次の料理へと向かうのだった。 二人用の小さなアイスドームに並んで座っているのは涼とアリステア。揺らめく光の輪舞曲は可愛らしいアリステアの髪にキラキラと反射していた。 涼はシャンパン、アリステアはサンドリオン。手にしたグラスがチリンと合わさる。 「大人になったらワインとか一緒に飲みたいね」 アリステアが大人になるのは7年後。その時までに彼と釣り合う素敵な女性になれたらいいなと。 「どんな素敵なレディになってるだろうね。勿論、今でも可愛らしい女の子だけれどもね?」 隣に座る涼の笑顔と言葉に少女の頬が桃色に染まる。 クリスマスディナーを楽しみながらふと思い出したのは初めて食事を共にした日の事。 「最初に一緒に食べたのって、焼肉だったんだよね。あれから1年かな?」 「そうだね。一番最初に一緒に食べたのは焼き肉だね」 当初はこんな風に甘い時間を過ごす事になるなんて思ってなかった。けれど、あの日あの場所に居なければこのアイスドームに二人は来なかったのかもしれない。また、思い出を辿りに行ってみるのも悪くない。 デザートを頂いた後にアリステアがそっと差し出したのは涼へのクリスマスプレゼント。 「メリークリスマス、なのです。……受け取って貰えたら嬉しいな」 ――――大好きという言葉を込めて。 恋人が頬を染めながらプレゼントを渡してくる様は、なんとも愛らしく。 「ありがとう。この先、キミだと思ってずっと大事にするよ」 「まずはこれを、と」 フツが差し込んだ魔法の氷はあひる思い描いたアイシクル・ピンク。あひるの楽しげな気分を表すようにふわふわと優しく揺れている。 「さて、メニューすげーな。どれから食べるか迷っちまうぜ。こういうときはデザートから決めておくといいって聞いたことがあるな。オレはこれにしようかね。あひるは何にする?」 「折角だしケーキがいいね……あっ、でもシャーベットも美味しそうっ。お肉沢山ある……! はっ、お野菜も頂くよ……! 三汁七菜、です!」 和やかな二人の会話をターキー・レッドは怖い顔で見つめていた。否、彼はこれでも笑顔である。 並べられた料理はオリジナルのディナーコース。お口いっぱいに頬張ったあひるは美味しさのあまりほっぺたをとろけさせた。 「フツと一緒に食べれたら、何を食べても美味しいけどね……っ!」 お腹が膨れたら、お待ちかねのデザートタイム。 フツの前にはチョコレート・ブラウンのクリスマスプティング。クリームの上に乗ったセイヨウヒイラギが彩りを添えている。あひるの前にはハートの形をしたフォンダンショコラがあった。 「おお、これは確かにクリスマスって感じするな。このクリームが多いところ、あひるにあげるヨ。ほら、あーん」 「フツのはボリューミーね! わーい、いただきっ。あひるのもどうぞ。あーんでおかえし……!」 とろけるショコラの香りがアイスドームの中に広がった。 ●Winter sky 「クリスマスに素敵な魔法を届けてくださりありがとうございます」 和泉は怖い顔のアザーバイドに向かって挨拶をした。目を細めたターキー・レッドは怖い。 けれど、実は彼は今、照れ笑いを浮かべていたのだ。 魔法の氷を受け取った和泉は澄み渡る空のような綺麗なスカイブルーを思い描く。 手の中に広がった『空』をアイスドームの天井に。 「うわ~! こんな豪華な食べ物、おうちじゃ出てこないのですぅ……!」 ロッテがきらめく白雪姫ルックで可愛らしい声を上げた。対するはクリスマス仕様のメニュー表。 それに、顔が怖いターキー・レッド。彼は笑顔である。そうは見えないだけで。 「ひぇぇ……メインディッシュが一番高そうですぅ……ここ、このローストビーフっての、頂くのです!」 「かしこまりました」 「高級な生焼け肉、美味しそうですぅ……!」 暖かな厚切りのローストビーフにたっぷりのグレイビーソース、ホースラディッシュとクレソンを添えて。かぶりつくロースト・ピンクの肉は蕩ける様な舌触りでロッテの頬を緩ませる。 「ふっふっふ……。いちごとごちそうをたらふくうばいにきてやったのです」 不敵な笑いと共に現れた怪盗苺がマントを靡かせながらアイスドームの中へ入っていく。 広めのかまくらは既に先客が居た様で、料理がテーブルいっぱいに並べられていた。 其の中には彼女の好きな苺もある。出始めの物だ。もちろん、ローストビーフもカルパッチョもハンバーグもだ。 「つうじょうの3ばい、すっごいことをしてやるのです」 柔らかなソファに座って料理に手を付け始めた苺お嬢様を千堂は見やる。 ――壱子お嬢様はどうせ苺貪ってるのがお似合いだし。僕としてはこうなってしまった以上は折角の場を楽しんだ方がバランスがいいよね。 「お、千堂さんお疲れさん! ご令嬢のエスコートなんて、大変だね個人事業主も」 入り口の人影に気づいた快が手を上げて千堂を呼びつけた。 バランス良く適当に相手をするために、丁度真正面に腰掛ける千堂。横から見ればテーブルを挟んで快と千堂の完璧なシンメトリーである。 専ら栄養バランスが完璧になるようにあれこれ飲み食いする千堂と、質の良い逸品を手に取る快。 「色々食べたいものがある時のお酒は、やっぱりビールがいいよね」 快の前には既に空になったフルーティなブラウン・エールや麦芽の効いたピルスナーのイングリッシュ・アイビー色の瓶が並んでいた。ジャーキープレートはビーフにポーク。後は意外な所でタコとは。4種のソーセージが乗ったプレートは粗挽き、レモンハーブ、ガーリックにチーズイン。バーニャカウダの皿横でくつくつと煮立つディップソースの匂いも堪らない。 「……んー、アヒージョはあるかな。じゃこのアヒージョ」 「それは……」 「この季節が一番美味しいよね」 出てきたのは牡蠣のアヒージョ。ぷりぷり濃厚な牡蠣がニンニクとオリーブオイルの香りに乗って口の中を滑っていく。 「あ、そうだ。俺内定決まって来年から時村物産なんで。名刺できたら東京の事務所にご挨拶に伺いますから。お茶くらい出してくれるよね?」 和泉のスカイブルーとロッテのホワイトクリスマスの光がオーロラの様に混ざって揺れていた。 帆立貝のクラムチャウダーとコーンとラビットのパイシチューを美味しそうに食べていた和泉は隣に居たロッテがガバっと顔を上げたのに少しだけ驚きの表情をみせる。 「おかわり貰うのです! ……ハッ!」 ロッテは気がついたのだ。食べるのに夢中で気付かなかった彼の存在に。 ――あの身長と骨格と筋肉の付き方……そして、ぷりっとしたおしり!!! あれは、千堂!!! ここで出会うなんてまさに運命なのですぅ! 神様ありがとう! 「カクテルをあちらの超絶イケメンバランス男に……サンタムールをお願いするのですぅ! 聖なる愛って意味なのです!」 「かしこまりました」 千堂の前にシューっとカクテルが滑りこんで来る。赤ワインをベースにオレンジとアーモンドの香り立つアマレットを加えたもの。ジンジャーとクローブも入っている。少し肌寒いアイスドームにぴったりのホットカクテルである。おまけにハートのオレンジピールが浮かんでいた。 バチバチと視線を感じた先にロッテが居る。 「ありがとう。遠慮無くいただくとするよ。その方がバランスがいいからね」 「キャー! はじゅかしいのですぅ! わたしってば大胆っ!」 ――彼女の髪型はむやみにバランスが良くてお正月にもおめでたい感じだからね。 お正月? 今は確かクリスマスのはずだけど、ああ除夜の鐘の幻聴がきこえるんだ。 「あ、お料理残ってたら詰めてもらっていい?」 快は余った料理を詰めてもらって嬉しげに風呂敷を手に帰路へつくのだ。 リベリスタ(+α)が去ったアイスドームの中。ゆらゆらと揺れるスカイブルーとホワイトクリスマスの光に照らされて、『いちごのへた』がぽつんと置かれていたのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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