●おでん、でん、でん 「みなさんは、おでんとかお好きですか?」 「あら、いいわね~この時期ならではよね~」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)の問い掛けに、トニオ・ロッソ (nBNE000267)が笑顔で答えた。 「……ってことは、今度は食堂で、皆でおでん食べましょう……とか?」 「あ、いえ。違うんです。テレビとかで見たんですが、あのリヤカーみたいなのの屋台おでん屋さんとか良いな~って思いまして」 「……つまり?」 「今回は、おでんの屋台を用意させて頂きました」 笑顔でリベリスタたちに説明する少女に、ちょっと言葉を詰まらせてから……トニオは集まっていた皆に『これ、ツッコミ入れちゃダメなのよね?』みたいに問い掛ける視線を向けた。 何人かは、うんうんと頷いてみせた。 「で、たくさん用意しましたので、仲の良い人たちと一緒にとか如何でしょうかと。あ、一人で静かにというのが良いという人もいると思うので、もっとたくさん用意させて頂きますね? トニオさんも如何ですか?」 「……え、ああ、そうね? じゃあ、私も一台借りようかしら?」 「はい、お任せください」 マルガレーテは笑顔で頷いてみせた。 「……色々と大変な時期ではありますが、だからこそ、こういうのは良いかなって思いまして」 「そうね……何かこう、初めてだけど懐かしい感じがするわ」 寒空の下で、温かいおでん。 成人している者には、お酒もついて。 「あ、お酒苦手な人や未成年者用に、お茶とかソフトドリンクも用意しておきますので」 「大変そうだけど大丈夫?」 「はい、むしろやり甲斐があります」 そう言ってフォーチュナの少女は、集まっていたリベリスタたちを見回した。 「少しでも気分転換になればなって思いまして……よかったら皆さん、いかがですか?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月05日(日)22:11 |
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■メイン参加者 24人■ | |||||
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●おでんの屋台 「おでん屋台の行列……壮観ですね」 並んでいるおでんの屋台を眺めながら、あばたは呟いた。 (そりゃ多数のリベリスタに同時におでん食わせるとなればこうするよりほかにないんでしょうが……) 「正直イカれてるぞコレ」 ストレートな感想が口から出る。 とはいえイカれてても、おでんはおでん。 何とも言えない雰囲気に、気持ちがなごむのも事実だ。 (出汁の染みたDAICONでもつつきながら酒飲みますか) 一人で静かにと考えながら……そっと暖簾を開けて独り身な屋台が何人いるのかと視認する。 (あっちはカップルあっちは独り身……なんだか個室居酒屋みたいですねこりゃ) 「じゃあそのつもりで、がっつりと飲みますか」 お代はアークのおごりだ。 がんもやハンペン、牛スジにたこ足。 (ああ、これは日本酒が合うのかな……) そんな事を考えながら、あばたは木製の長椅子へと腰を下ろす。 「……いいなぁ。この感じ。なんだか懐かしい」 大根を中心にハンペンや厚揚げを頼みつつ、日本酒で一杯。 おでんと酒と雰囲気を味わいながら、義弘は呟いた。 こういう屋台でおでんを食べる機会というのは、今はもう……すっかり無くなってしまった。 (以前サラリーマンだった頃は同僚と行く機会も多かったが) うまいというのも温かいというのも勿論だが、懐かしいというのも大きいのだ。 「また雰囲気を楽しむのも悪くないな」 せっかくだし色んな人間と、おでんと酒を酌み交わそう。 そう考え義弘は同席した者に色々と話しかける。 こういった機会でもなければ話す事のなかった仲間もいるだろう。 そんな仲間たちと酒を楽しみたい。 楽しい時間を過ごしたい。 他愛ない雑談を楽しみながら、その中に日常を感じながら。 義弘はおでんを味わい、酒器を傾ける。 ちくわ、ウインナー、さつま揚げ、ロールキャベツ。 「熱々のおでんにキンキンに冷えたビールが最高ね」 杏も屋台の一角に腰を下ろして、湯気を昇らすおでんと凍りそうに冷えているビールを楽しんでいた。 熱いおでんがあるからこそ、冬でも冷たいビールがうまい。 涼子も1人で一台は寒そうだからと、何人かが集まっている屋台へともぐりこんだ。 うるさいとかそういうのは気にならない方だ。 「……さむい。冬って、こんなにさむいんだっけ?」 そんな事を呟きながら、さっそく具を注文し始める。 明日のぶんまで食べて帰るくらいの気持ちはあるのだ。 「だいこんとこんにゃくがたくさんあるとうれしい。あと、玉子ね」 (……昔は、玉子ばっかり何個も食べるなって言われたものだけど) そんな事を考えながら取り分けられた皿を受け取ると、涼子はアツアツのおでんに箸を伸ばした。 ●ちくわぶ(竹輪麩) 「いや、ホントちくわぶは全国区だと疑ってなかったわけよ。数年前まで」 覆面の上から捻りはちまち。 持ち込んだラジカセからはレトロな曲を響かせて。 烏はおでん屋台のひとつを切り盛りしていた。 関西風、関東風と出汁は其々分ける形にして皆によそりつつ、自分もおでんを適当に抓んでいく。 「大根、がんも、たまご、ちくわぶ辺りが鉄板よな」 酒は枡付きのコップ酒。 「並々とコップに注いで溢れさせて、枡の中にも酒が注がれるのが乙なわけだ」 (これで、一服もすれば一時の贅沢ってやつさな) 「なんでこう、寒い夜空で食うおでんってのは旨いのかねぇ」 室内で食うのも悪くはないが、こうして味わうと言葉通り……しみ込んでくるような気分になるのだ。 「よう大将。アチ燗に大根、他にお薦めがありゃそいつをもらえるかい」 いつもはぬる癇だが、冷え込む夜には火傷しそうな熱さが良いよ。 「これで芯から暖まるのさ」 小烏はそう言って徳利を傾けた。 団体さんの邪魔はせんようにと幾つか回った処で烏の屋台に紛れ込んだのである。 「そういやよ、自分はちくわぶってのを食った事がないのさ。西の人間なものでね」 (良い機会だしひとつ試してみようか) そう思い注文すれば、幾つかの具と共に竹輪麩がひとつ、小烏の取り皿へとのせられた。 「出汁が染みてて良さそうじゃないか」 さっそく小烏は件のちくわぶへと箸を伸ばす。 「すっかり冷えるようになっちまったね。こういう時は熱い酒に熱い料理が染みるよ」 流れてくる歌を耳にチビチビやりつつ、小烏は他にどんな具があるだろうかと捩り鉢巻の烏と雑談混じりの会話を楽しむ。 「これもまた冬の風物詩だよね」 縮こまりながら安酒の熱燗で暖を取りおでんをつついていた快は、見かけたフォーチュナの少女とおでんについてちょっと話してから……ふと浮かんだ問いを、彼女に発してみた。 「ところでマルガレーテさんは『ちくわぶ』を食べたことはあるかい?」 「ちくわぶですか?」 「そう、俺はちくわぶはおでんにおける陰の主役だと思ってる」 「……多分食べた事は無いと思うんですが、もしかしたら知らずに食べてたかもしれません……」 記憶を遡るようにしながらそう答えた少女に、なら一緒に食べようと青年は提案する。 「小麦粉を塩と水で練り込んだだけのシンプルな食材だからこそ、おでんのあらゆる種から生まれる出汁と旨味を総てその身に染み込ませることが出来る」 太陽の光を受け月が輝く様に。 「うん、国産の小麦粉を少なめの水で練ることで、もちもちとした食感と小麦の甘みを引き出し、十分に出汁が染み込んだ最高のタイミングで引き上げてある」 「……深いんですね、ちくわぶは」 感心した様子で快の話を聞きながら、マルガレーテはちくわぶをほお張った。 ●たくさんのいろんな具を 「ふぉー! おでんうでん! うでんおどん!」 嬉しそうに興奮したようすのミーノを見ながら……リュミエールは考え込んだ。 (おでんとは鍋物デイイノダロウカ……) 「鍋ダヨナ一応……煮物?」 首を傾げる彼女をしり目に、ミーノはさっそくおでんを食べ始める。 おもちのはいった巾着に牛筋串。 厚揚げに竹輪、ウィンナーにコンニャク。 「がんもどきと、つくねくすと~あ! ロールキャベツもおいしいっ><*」 全種類制覇する勢いで、彼女はおでんを平らげてゆく。 (厚揚げと巾着ハマァ無難なチョイスダヨナ……ロールキャベツは……おでん……ナノカ?) 「一回ずつ食べ終わってからクエ……別に売り切れトカガアルワケジャアルマイシ」 卵とコンニャクを食べながら、リュミエールはミーノに声をかけた。 「ガッツクナヨドウセ火傷スル羽目になるんだから」 そう彼女が言った傍から。 「いっただっきまーーーっ!? @#*!あちちっ><*」 「イワンコッチャネエ……どれ口の中火傷したか?」 悲鳴を聞いたリュミエールは、やれやれという仕草をしながらミーノを自分の方に向かせる。 「全く……ほらフーフーしてヤッカラ……」 それで少し落ち着くか、と思いきや…… 「ぷはー! やっぱりおでんにはおれんじじゅーす! マスターもういっぱい!」 ……(オデンにオレンジジュースは……あうあ……ネーワー) 口の中が冷えたのか、再びミーノは元気に別の具を頼み始める。 呆れたのと、やけどにならなかった安心が半々くらいの感じで……リュミエールは嬉しそうなミーノを眺めながら、少し冷め始めた卵をほお張った。 ●おでんとふたり 「いいわね、寒い夜に囲む什器から沸き立つ湯気……ロマンだわ」 (こういう物は大切な人と一緒に囲んでこそと思っていたけれど……) 「まさかおにーさんとおでんを囲めるなんて、とても幸せ」 どこか感慨深げにスピカが呟く。 「自分じゃなかなか作らんものこそ、美味しくたくさん頂きたいもんだな」 そう言ってから。 「おでんはセクシーだ」 と……鷲祐は言葉を続けた。 「良い素材を丹念に整え、出汁で一緒くたに美しくする」 しかしその化粧はそれぞれの良さを更に引き出すべく全く違う味わい。 「それは堪らなくつやめかしい」 「おにーさんの例えは相変わらずポエミーで……」 鷲祐の紡いだ言葉に、ちょっと気恥ずかしさのようなものを感じはしたものの…… でもそうね、と……スピカも何か納得して頷いた。 生まれも育ちも違う子同士が手を取り合って、こんなに素敵に生まれ変われる。 (まるで魔法みたいだわ) 「不思議よね、おでんって」 「……というわけで、わた子、食べるぞ」 「ふふ、では冷めないうちに頂きましょっか!」 湯気をあげるたくさんの具に視線を向けて。 「どこから攻めようか……」 「うふふ、わたしはんぺんは大好物……」 「お、ご所望のかまくらはんぺんあったぞ。これってサメらしいな」 「えっ!? これサメから出来ているの!? 怖!」 「ほーれサメ食えサメ」 じゃれ合うように楽しげに、2人は皿に好みの具を取り分ける。 「さて、酒と一緒にやるとしようか」 「……と、宜しければ、お酌させてもらえないかしら?」 酒器に手を伸ばそうとした鷲祐に、スピカはそう提案した。 「ん? 酌をしてくれるのか……大きくなったもんだなお前も」 「二人でお食事を囲めるなんて、またとない機会ですもの」 そう言って笑顔を見せる少女に頷いて。 (……まぁ、連れてきた手前) 「それじゃ、頂こうか」 そう言って鷲祐は手に持った猪口を差し出した。 ●おでんと出会い 「ちーっす、寒いね。おでん一緒にたべない?」 「……あ、アリガトございま、す?」 柚架は警戒心全開で、声を掛けていた青年に視線を向けた。 声をかけた夏栖斗としては新人らしきリベリスタに声をかけたというだけなのだが、もちろんそんな事情は柚架の方には分からない。 夏栖斗の方はというと、そういった彼女の心中は気にしない様子で色々な具を手早くお皿に盛って差し出した。 「さー、たべれ」 「え、あ……ありがとうございます」 「っと自己紹介まだだったね。御厨夏栖斗18歳。すきなものはおっぱいです」 「あ、柚架は御さ……」 (拝啓センパイ、事件です。この人ヘンタイさんです!) そんな彼女の心の声を聞かずとも態度で、夏栖斗は彼女が如何感じたか瞬時に理解できた。 (うわ! ひかれた! 路線変更しないと?!) この場合、引かれたというよりは寧ろ夏栖斗が突き飛ばしたとでも表現した方が正しいのかも知れないが、その正誤に関しては今は問題ではないだろう。 とにかく、精神的だけでなく物理的な距離も開きかけはしたものの、そこで柚架は何か引っかかるものがあって踏み止まった。 「……あれ、でも御厨さんはおナマエは聞いたことあるような?」 「いや、そうじゃなくて、えっと……うん、アークへいらっしゃい」 一方で、夏栖斗は何とかしようと言葉を投げかける。 「大歓迎するよ……えっとユズって呼んでいい?」 にっこり笑ってそう尋ねる青年に、ここはオトナの対応ですと柚架も一応笑顔で応えた。 「はい、どうぞですよー。よろしくお願いしますね、御厨さん」 (よし! これでなんとかなったはずだ!) 「おでん何が好き?」 胸を撫で下ろしつつ今度こそ、夏栖斗は普通っぽい話題を振る。 「おでんは……こんにゃく、デス!」 第一印象だけで決めるのは良くないからと、柚架も色々と話し始めた。 もしかしたら自分の恩人を知っているかも知れない。 「いろいろ大変なこともあるけど、助けられたんだっけ? 能力者に」 君も誰かを助けれるようになったらいいよね? 夏栖斗がそう言えば、少女は元気に力強く頷いた。 「ハイっ、センパイみたいに誰かを助けて、いきたいです!」 ●ふたりの時間 「冬にオデンは美味しいですよね♪」 そう言って櫻子は無邪気な笑顔を櫻霞へと向ける。 二人で一つの屋台を貸切にしてもらって。 「櫻霞様のお好きな具はどれですの?」 並ぶように腰を下ろした櫻子はしっぽを振りながら問い掛け、聞いた具を皿へと取り分けた。 「櫻子、練り物が大好きですにゃ~♪」 そう言いながら自身は、はんぺんとさつま揚げを皿に取る。 もっとも、そのまま直ぐに……という訳にはいかない。 「……オデンは冷まさないとですぅ……」 しょんぼりという感じで猫耳をぺたりと倒しつつ……猫舌の彼女は具を冷まそうと一生懸命に扇子で扇ぐ。 充分に冷めたのを確認してから、待っていてくれた櫻霞と一緒におでんを味わう。 お酒は一口だけで、飲み物は以降、烏龍茶に替えて。 「た、たまには酔っ払わないで居ようと思いますっ」 キリッとしつつも嬉しそうに、櫻子は櫻霞の杯へと酒器を傾けた。 ●ふたり酒 「なんだか宮部乃宮さんからって珍しいですねえ」 (どちらかといえば大歓迎ですが!) そんな黎子の言葉に。 「……たまにはな」 火車は短くそう答えた。 何時も呼ばれてばっかな気がするし。家押しかけて来る事もなくなったし。 偶には……そう思ったのだ。 「屋台でおでん食べるなんて初めてですねえ」 呟く黎子を見ながら、色々と考えながら……少人数で静かに飲んでる屋台へと訪いを入れる。 程好く人が居るのが心地良い。 「ん~適当に見繕って……あー大根と薩摩揚げは入れといてくれ」 「じゃあ私もお任せでー。玉子が好きです」 あと燗つけでと、火車は日本酒を追加した。 「酒は結局良く解らんが、まぁこんなモンじゃね? って……雰囲気?」 「二十歳にしては分かりすぎてるくらいですよ!」 「まぁなんだ? 今日もお寒いしよ。温いの頂くってのが良かろ。厚揚げ追加で」 「冬は食べ物が美味しいです。するとお酒も美味しい。寒いのも中々悪く無いですねえ」 言いながら黎子も頼んだ熱燗を猪口に注ぎ…… 「おお……随分いけるようになったのですねえ」 杯を開ける火車を見て、感心したような声を出す。 「……そう、酒にも随分慣れてきた! ココ半年は暇があれば飲み耽ったからなフフフ」 「まるで成人するまでを取り戻すような飲みっぷり」 「けど、日本酒って強くれ……? あえ、そーれもない? がんも追加ー」 「……呂律回らなくなってきてますよ? あ、私餅巾着でー」 「やー何ってこっちゃねぇけろも。また酒れも付き合えぇ」 「え? あー」 黎子が解読しようとする間に、火車は舟をこぎ始める。 黎子は苦笑しつつ、こんな事もあろうかと用意していた毛布を幻想纏いから取り出した。 ●トニオさんの屋台へ突撃だ! そのあとは…… 「酒強そーな……晩酌いかが?」 持参の酒をくいっとやって、カインはトニオに声をかけた。 「あら、アリガト♪ それじゃお言葉に甘えちゃおうカ・シ・ラ?」 お礼を言いながら青年はウインクしてみせる。 「お酒は……これがホッピー? 初めて飲むなあ」 (ビールっぽい感じだが、これがそうなのか……) そんな事を考えながら、ラシャはカインの持ってきた日本酒にも手を伸ばした。 (やはりおでんと酒は合う) 先ずはと取り分けられた具材を味わいながら、杯を傾ける。 「玉子なら煮玉子だろう! 中が半熟だと最高!」 ラシャにそう言いながら、カインはトニオに煮玉子とモチ巾着を注文した。 「あと変り種、頂戴!」 「はいは~い、じゃあ鶏つくねとか……あ、お野菜とかの方が良いかしら? ロールキャベツとか」 取り分けながら尋ねるトニオを眺めながら。 「煮卵いいな煮卵。周りの色が醤油色っぽく煮えた奴」 ラシャは先の言葉に頷きながら、カインに呼びかけた。 「姉よ、私ももち巾着食べたいぞ!」 「仕方ないな~と入れてあげよう」 そう言いながらカインは取り皿から一つ、餅巾着をラシャの皿に移す。 「あとはどれにしよう。大根とはんぺんと……」 彼女が幾つかの具を頼んで味わっている間に、同じように堪能して…… それを終えると、カインは妹に声をかけた。 「屋台借りっか、ラシャ」 「お、姉屋台借りるの?」 カインはさっそく下拵えした玉子とモチ巾着をガンガン入れ始め、手伝おうとしたラシャは慌ててそれを止める。 「姉はもち巾着と玉子ばかり入れすぎっ! まずは煮えにくい大根とかから入れていかないと」 出汁は鰹で取って、味付けは味噌にして。 具の方は、カインは玉子にこだわる感じで、半熟玉子、ゆで玉子、固茹で玉子の3種をそれぞれ普通のと煮玉子で用意する。 もち巾着はヒジキ入りとチーズ入りの2種を用意、あとコンニャクも少し具に入れる。 ラシャの方はハンペンとゴボウ巻きを選び、変わり種ならロールキャベツを用意。 「味噌味おでん、美味しいかな?」 ふたりで協力したおでんが、良い香りを漂わせ始める。 「さぁ召し上がれ♪」 その香りを味わいながら、カインは笑顔で声をかけた。 ●夜の屋台で おでんは、大根と卵を基本。 そこから、よくしみた練り物にカラシをつけて攻める。 昆布巻きをアクセントにして、すじを食いながら、熱燗をクイッ。 「聞いてくれよトニオ」 トニオの屋台で酒とおでんを味わいながら、竜一はマルガレーテたんの事なんだけどさ~と切り出した。 マルガレーテの方をチラ見しつつである。 苦笑しつつ、トニオはうんうんと話を聞く。 「マルたんが俺の事を、お兄ちゃん、って呼んでくれないけど反抗期なのかな?」 チラッ。 「そろそろお兄ちゃんに心を開いてくれてもいい頃だと思うけど、どうなのかな?」 チラッ。 「もしかして恥ずかしがってるだけなのかな?」 チラッ。 「……それ見なければ、もうちょっと反応違うんでしょうけど……まあ半分真面目に 答えれば、彼女ってば後輩属性はあっても妹属性は無いんじゃないかしら?」 「はぁぁぁぁ~、マルたん、かわいい」 アルコールの雰囲気を漂わせながら二本目を空けた竜一は、トニオに話しかけながらそのまま酔い潰れた。 「おでんを食うと酒が進むぜ……」 ぶつぶつ言いながら突っ伏した青年に、苦笑しつつ何か呟きながら少女が毛布を掛ける。 「ふふ、御機嫌ようマルさん。お久しぶりです……最近は冷えますし良ければこのコートをどうぞ」 「あ、どうも。亘先輩」 「健康で元気な笑顔が見れて一安心ですよ」 そう言ってマルガレーテに微笑んでから、宜しければ一緒におでんを食べませんかと亘は切り出した。 OKをもらうと手早くバンダナを巻く。 今回は作りながら食べるスタイル。 定番の大根、ちくわぶ、巾着。 後は用意しておいたハンペンと鰯のつみれに昆布と続く。 「良くあるのは関西風ですが、これは関東風の濃い口出汁に浸しといたんです」 マルさんもどうですかと勧め、頷いた少女の皿に順に具材を取り分けてゆく。 一緒に食べながら、美味しそうに食べる彼女の笑顔を写そうと狙って、ちょっと怒った風にするマルガレーテに謝って、一緒に食べて、また狙って…… 「お腹一杯幸せ一杯……ご馳走様でした」 最後は、出汁を活かした雑炊風のご飯も平らげて。 丁寧に手を合わせる亘をまねするように、マルガレーテも手を合わせた。 「おでん? 屋台?」 (ふむ……このまま帰るのも何だからな) 「ひとつ、寄ってみるか」 仕事の都合で偶々訪れていた結唯は、短く呟くと屋台のひとつを選んだ。 牛すじと玉子、こんにゃく、がんもどき、餅巾着。 注文している最中に知っている顔を見かけ、声を掛ける。 「……マルガレーテか。久しく会ってなかったが元気だったか?」 「あ、はい。お久しぶりです」 「まあ、座れ」 少女が腰を下ろすと、結唯はそのまま仕事の事やアークの事について幾つか話した。 「そういえばお前の戦う理由を聞いていなかったな。お前の矜恃を聞かせてみろ」 「……矜持と言うほど立派なものではありませんが……皆さんが全力を尽くせるように、自分に見えるもの全てから目を逸らさずにいられるようにと思っています」 「……そうか」 結唯はそれに対して、是とも非とも言わなかった。 唯、静かに一言。彼女に向けた。 「……これからのお前の活躍を期待している」 ●年の瀬に 「おでんの屋台を借りるのなんて初めてなのだ」 そう言いながら笑顔で、雷音は湯気を立ち昇らせる具材を取り分けた。 仲良く四人で年の瀬を過ごせる。 それが嬉しく温かく感じられるのだ。 「寒い夜にはやっぱり、おでんに限るな」 おいもにたまごに、餅巾着にお大根。 「どれも美味しくてほくほくなのだ」 あつつ、となりながらも笑顔の雷音の傍らで。 「あたし、猫舌だから熱くてなかなか食べられないのです」 そあらはお皿に取った具を冷ましながら、残念そうに呟いた。 「ヤミィさん、猫舌が治るお薬とかないです?」 「ん~猫舌を治すのは難しいですけど、火傷をし難くするなら以前みたいにE・エレメントの力を……」 「……いや、そこまでするとフィクサード過ぎて……みたいな?」 そあらの言葉にヤミィが考え込み、マルガレーテが不安げな顔で注意する。 そんな光景を微笑ましく見守りながら。 「みんなはどんな具が好きなのかな?」 「あたしはやっぱり大根が一番好きなのです」 そあらは雷音の問い掛けに笑顔で答えた。 大根に勝るものはないのです。 「でもコンビニで全品70円セールやってても5円しかお徳にならなくてちょっぴりさみしい具材でもあるのです」 その言葉にマルガレーテが、あぁ確かにと同意し、ヤミィは悩んで考え込みながら、色々といくつも具材を挙げてゆく。 (今年もいろいろあったのです) 皆と話しながら、そあらはふと……そんな事を考えた。 アークは海外にまで遠征し、皆が忙しい日々を送っている。 「今年もいろいろあったのだ」 雷音が呟いた。 「いろいろ、あったのだ」 悲しいこと、つらいこと、嬉しいこと、いろいろあった。 (それでもボク達は生きていく) 来年がよきものになるとは限らない。もっと苦しいことがあるかもしれない。 それでも、明日を生きて笑顔でいれるなら…… (きっとそれは、幸せなことなのだとおもう) 周りにいる、いてくれる皆を見ながら……そう思う。 心に浮かぶ人たちがいるから、そう思える。 そんな彼女を見ながら。 (らいよんちゃんは色々ありすぎて、ちょっと大人の顔になった気がするです) 親友の瞳を見ながら、そあらは思った。 不安が無いと言ったら、嘘になる。 でも、きっと。 (仲間がいるから一緒に頑張れると思うです) 「来年もよろしくですよ」 そう声をかければ雷音はそあらを見て、頷くような仕草をしてから。 みなを見回し、微笑んだ。 「来年も、よろしくだぞ」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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