●大地より生まれるもの 雑草に一面覆われていた平地の一角が、地鳴りのような音共に、ゆっくりとせり上がった。 地面がめくれ上がって剥き出しになり、荒地のようになったその中央に、大型の獣のような姿をした何かが現れる。 逞しい四肢を地面について体を支えたその獣は、太く長い尾を振り回し地面を叩いた。 土埃が周囲に舞い、大地が揺れる。 全身を土と岩で包んだ怪物は、頭部をあげると詰まったような、くぐもった様な唸り声をあげた。 ●E・エレメント、大地の獣 「E・ビーストのようにも見えますが、土や岩によって形成されたE・エレメントになります」 スクリーンに映し出された画像を指し示しながら、マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう説明した。 4本の足と頭部、そして長い尾を持つ獣のような姿をしたエリューションの全身は、土と岩のようなもので覆われたようになっている。 「出現した場所は民間人のいない市街地から離れた平地ですが、強力な個体でフェーズが進行する可能性もあります」 現在のフェーズは2だが、それでも油断できない戦闘力を持つようだ。 「速やかに撃破をお願いします」 そう言ってマルガレーテは、E・エレメントについて詳しく説明し始めた。 E・エレメントの攻撃手段は、尾を振り回して近距離の敵すべてを薙ぎ払う物理攻撃と、体を包む岩や土を爆発させるように弾き飛ばして周囲全ての敵を巻き込む強力な遠距離物理攻撃の2種類である。 「命中性能はあまり良くないようですが、それを本能で理解しているのか充分に狙いを定めて攻撃を行うようです」 近距離の範囲攻撃を基本の攻撃として使い、攻撃範囲内の全員に命中した場合、次の攻撃で遠距離全体攻撃を行うようである。 最初の近接攻撃が1人でも外れれば、一度充分に狙いを付けてから近接攻撃を行うようだ。 「それでも当たらなければ、更に狙う時間を増やしていくようです」 本来なら範囲攻撃など狙われる者が少ない方が良いのだが……今回に限っては、一人でも回避できれば全体攻撃が行われない、というのは考慮すべき事柄と言えるだろう。 「攻撃力は高めですが、耐久力と防御力はそれ以上です……その分というか、動きは遅く攻撃を回避する能力も低いようです」 攻撃を命中させる能力もそれほど高くは無いが、回避力に比べれば高いようだ。 「あともうひとつ、このエリューションは一度受けた状態異常攻撃に対する耐性を得る能力を持つようです」 フォーチュナの少女は難しい顔をして説明した。 例えば麻痺や毒、火炎などの攻撃を受け、その状態から回復すると、それ以降は異常の効果を受け無くなるようだ。 そして異常から回復する能力も決して低くは無い。 「ただ、攻撃を直撃させやすいですし、最初の1回は充分効果を発揮すると思います」 その辺りを上手く行かせるかも勝敗に関わってくるかもしれない。 「独特の能力と戦法を持つ相手だと思います。どうか、充分にお気をつけて」 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちを送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月31日(火)22:39 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●戦場へ (エレメントでここまで考えて動く奴ってのも珍しい気がするわね) 「確かにコレは下手に進化されたら厄介かも」 『薄明』東雲 未明(BNE000340)は少しだけ考え込むような仕草をして、呟いた。 「さっさと、とはいかなそうだけど、やることをやろうか」 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は辺りを見回してから、いつもと変わらぬ……乾いた、何かを籠らせた調子で口にしてから、辺りを見回し付け加える。 「だいぶ寒いけど、辺りにひとがいないのはいいことね」 「現状、民間人が迷い込む可能性が無さそうなのは幸いだ」 同じように辺りを見渡してから、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)も同意するように頷いてみせた。 「大地から文字通り生まれたエレメント……何だか漫画やアニメに出てきそうだね」 どこか実感を伴わぬという様子で『ロストワン』常盤・青(BNE004763)が自分の感想を口にする。 『デストロイヤー』双樹 沙羅(BNE004205)の態度はそれと比べると正反対という感じだった。 「久しぶりの依頼だね、腕がなるね、なんでもいいから殺したくて仕方ない」 ごく普通の事を言うように、楽しげに、少年はこれから始まる戦いに想いを馳せる。 「敵が土なら尚更いいね、地球が相手みたいだね面白い」 大地の獣、とても良い響き。 「なんだかほら、強そうだし獣の本能って侮れないからね」 待ち遠しい、待ち切れない。そんな様子で少年は身体に不似合いな大鎌を軽々と振り回してみせる。 「大きな被害が出る前になんとかしないとね」 一方で、『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)はフォーチュナからの情報を思い返しながら、警戒した態度で口にした。 目的はE・エレメントの退治。 フェーズ2が1体ではあるが、それでもこの人数で掛からなければならない相手である。 油断はできない。 (放置して市街地に進行されるような事になれば人的被害や神秘秘匿の面で不味いな) 「独特な能力を持った相手の様だがここで食い止めるぞ!」 そう口にする疾風に頷いて、智夫は仲間たちへと翼の加護を施した。 足場の悪さを警戒して安全靴を用意していた青は、そのまま翼を羽ばたかせて足が地面に付かないようにと僅かに身体を浮かび上がらせる。 仲間との情報共有を行い易いようにとアクセスファンタズムの通信機能を稼働させると、疾風は周囲の地形やE・エレメントの様子を確認した。 足場を確認した後、念の為に低空飛行状態を保つように注意して高度を取る。 これで準備は整った。 あとは、戦うだけである。 視線を交わすと6人は一斉に、E・エレメントへ向かって動き出した。 ●互いの一閃 「大地の獣か。土や岩が獣の様に形作るとは神秘は何時でも常識を裏切ってくるが……何が相手でも倒す事に変わりはない。行くぞ、変身ッ!」 疾風は距離を詰めながら幻想纏いを起動させ、装備を纏う。 (此方の構成も力押しって感じだしね、楽しみだね) 「期待してるよー愉快な仲間たちー」 そう言ってから、沙羅はE・エレメントへと視線を向けた。 「あー……とりあえずまあ、死のっか?」 言いながら大鎌を握る手に力を篭め、速度を上げる。 涼子は仲間たちと手分けをする感じで、獣のような姿をしたエリューションを包囲するように移動した。 彼女自身はE・エレメント、大地の獣の頭部付近へと位置を取る。 他の者が側面や後方から隙を突きやすそうというのもあるが、頭側にいれば尾による攻撃を避けやすいのではと考えての事だった。 そのまま彼女はアクターを変形させながらセフティーを外し、早撃ちで獣の尾の付け根を狙う。 後衛に位置した智夫は、先ずはとエネミースキャンを使用して大地の獣を観察した。 多くの事は事前の情報で得た通りである。 防御力は高く、耐久力は圧倒的だ。 攻撃力は高いし、攻撃を命中させる能力も決して低くは無さそうである。 それらを声に出して智夫は仲間たちへと連絡する。 疾風は足に気を集中させながら一瞬だけ地面を蹴り、距離を一気に詰めた。 未明も低く飛びながら、E・エレメントへと接近する。 「危険の芽は早い内に摘んでおくに限るわ」 これがもし、もっと行動を考えて動くようになったら洒落にならない。 そう考えながら、彼女は他の前衛と近付き過ぎないように注意しつつ近距離攻撃が届かない5mほどの位置で前進を一旦止めると、そこから地面を蹴って大地の獣を強襲した。 一撃を見舞うと岩と土で出来た獣の巨体を足場にして跳躍し、距離を取って構え直す。 「さあ、遊ぼうよ大地の獣さん」 強襲を受け混乱した様子の獣の後方から、沙羅は武器を手に接近した。 (ボクはまだひ弱だけど、だからこそ君を乗り越えなくてはならないんだ) 「デストロイヤーが自ら断頭しに来てあげたんだから覚悟してよ」 言いながら少年は、大鎌に自身のオーラを注ぎ込んだ。 「君が死ぬまで殴るのはやめてあーげないからねー☆」 刃を包んだオーラが雷へと変換され、空気中に拡散しようと光を発する。 沙羅はその大鎌を振り被ると、獣の体に向けて叩き込んだ。 斬撃と雷撃を受けながら、獣が籠ったような唸り声をあげる。 青は獣の動きを窺おうと、構えを取ったままその場で待機した。 E・エレメントは僅かに前足を浮かせると、そこから勢いよく地面を踏みしめるように踏み込み、長く太い岩土の尾で周囲を薙ぎ払う。 その攻撃を4人は回避した。 空気を薙ぐような一撃が振るわれた後で、青は獣へと距離を詰める。 包囲の一角を担うように前進すると、少年は大鎌を振るって獣の体に死の刻印を刻み込んだ。 斬撃による傷は消えはしないものの……流し込まれた毒はすぐに消滅し、混乱していた様子の獣の動きが再び落ち着きを取り戻す。 獣は改めてリベリスタたちを確認するように、その頭部を左右に動かし唸り声をあげた。 ●壊れぬモノ 狙いを定めたE・エレメントの尾による薙ぎ払いが沙羅と青を傷付ける。 疾風は僅かに浮遊しつつ随所で機を計るように地を蹴ることで獣の攻撃を回避した。 四肢の一つでも砕ければ動きが鈍るかも知れない。 そう考えた彼は羅刹の如き闘気を身に纏い、獣の身体を支える足のひとつへと蹴りと打撃を連続で叩き込んでゆく。 行動不能系の状態異常攻撃は後半を凌ぐために温存するというのがリベリスタたちの作戦だった。 涼子は獣が薙ぎ払い攻撃で複数を狙い難いようにと、飛行能力を活かして仲間たちと上下の位置をずらせるようにと高度を調整する。 もちろん、高く飛行しバランスを崩さないようにという注意は忘れない。 早撃ちで獣の尾を狙いながら、彼女は仲間たちの動きも確認した。 味方は回避できているのか? 敵は狙いを定める動作を何度しているか? 智夫も後方からそれらに注意し、仲間たちへと声を掛ける。 敵のスキャンを行った後に鴉の符でE・エレメントを攻撃して……彼はその後、仲間たちの回復を開始した。 「決まった行動を繰り返すだけなら、何も考えてないにまだ等しいわ」 同じように敵の攻撃の結果を確認しながら、未明は短く距離を取りつつの一撃離脱を繰り返す。 敵の耐久力と攻撃を考えれば、長引いた分だけ不利になるという認識で間違いないだろう。 (余裕を吐ける内に終わらせたいもの) そう考えはするものの……E・エレメントの様子は戦闘が始まったころと全く変わらなかった。 ダメージは確実に通り、蓄積している筈だが……痛覚のようなものが鈍いのか、あるいは存在しないという事なのかもしれない。 狙いを定める時間を増やし始めたのを確認して、未明は距離を取った際に遮蔽物として幻想纏いから車を取り出し設置した。 痛覚を遮断した沙羅は獣の攻撃を気にせず、自身のバランス感覚を頼りに動き回り、武器に注いだ闘気を雷へと変換して直死の大鎌を振るい続ける。 青も敵と味方の動き、足場のコンディションを気にしながら、相手の防御の甘い部分を狙えるように挙動を窺い続けた。 青と沙羅の動きは幾つかの部分で共通している。 一見無謀に見える動きで、防御を掻い潜るように攻撃を繰り出したり紙一重で獣の尾を完全に回避したりするかと思えば、その無防備な状態で攻撃を受ける……という部分、動きが共にあるのだ。 もちろん個々の差はあるものの、2人共に何らかの主義的なものを戦いの中に介入させているようだった。 対して大地の獣は坦々と、リベリスタたちの動きを観察するように狙いを定め、巨大な尾を振るい攻撃し続ける。 精度を増した攻撃は、ついに涼子にも命中した。 青の負傷を見て回復を行い始めていた智夫は、そのままほぼ回復に専念する形となる。 獣の尾による範囲攻撃が、彼の癒しの力を大きく上回っていた為である。 直撃した場合、その一撃分のダメージを回復させるために智夫は幾度も力を消耗し、詠唱を用いて癒しの力を生み出さねばならなかった。 それでも、狙いを定める為に費やされる時も利用して彼は皆が戦い続けられるようにと癒しの福音で仲間たちを包み込む。 一方で涼子は敵の集中時間の増加を確認して、自分の次の動きを皆へ伝えるべく声を発した。 疾風と未明が巻き込まれないように動くのを確認しつつ、咄嗟に三次元的な動きを加えて、彼女は獣の巨体すら包み込むほどの巨大な黒のオーラで大地の獣を薙ぎ払う。 絶対者としての力を身に宿した沙羅はそのまま、すべてを敵の殲滅に費やすべく直死の大鎌に雷気を纏わせた。 未明も限界を超えた力で自身への負荷を省みずに鶏鳴を振るい、疾風は間合いを無視した投げ技で獣の巨体を大地に叩き付ける。 大地の獣はリベリスタたちの攻撃を受けて一時的に動きを止めはしたものの、呪縛を振り解き、狙いを定めるための集中を再開した。 リベリスタたちの攻撃を耐え抜き放たれた攻撃を、疾風は何とか回避する。 それを確認して更に長い集中に入ろうとするE・エレメントと対峙しながら、青年は再び全身の気を制御し足元へと集中させた。 縮地法は気を制御し続ける為に常に力を消耗し続ける技ではあるが、彼は自身の内で気を練り上げることで、その消耗を打ち消し戦い続ける。 能力を使用する事による消耗という点では、未明や沙羅らが反動によって傷を負ってはいたものの、こちらは智夫の力によって癒されていた。 とはいえ攻撃による負傷の方は回復が完全に追い付いていないという状況である。 回復の合間に自身の力を無理に引き延ばすように一時的に回復させる。 それに加えて仲間たちに再度、翼の加護を施す。 智夫は自身の役割を果たそうと全力を尽くしたものの……皆の負傷の蓄積は加速していくという状況である。 そんな状況下で……次の攻撃は疾風ですら避けられないと判断した彼は、既に運命の加護で窮地を凌いでいる青を庇うようにして前進した。 ●壊し尽すモノ 庇ったのち即座に後退しながら、智夫は大地の獣の様子をエネミースキャンを用いて観察した。 今までとは異なる行動を起こそうとしているのは間違いない。 集中を開始した獣から距離を取りながら智夫は皆に呼びかけた。 智夫以外の全員の攻撃を受け巨体を徐々に削り減らしながらも、獣に怯む様子は無い。 充分に狙いを定めて行われるのは強力な全体攻撃だ。 それを阻止する為に青は力を振り絞った。 タイミングは、敵がその攻撃を行う直前だ。 少年が全身から放った気の糸が土と岩で造られた獣の体に絡みつき、その動きを一時的に封じ込める。 とはいえその束縛も、ほんの一時しか持たなかった。 気の糸を引き千切るようにして自由を取り戻した獣が、その巨体を震わせる。 回避できない、そう判断した疾風は身を固くし守りの姿勢を取った。 智夫、未明、沙羅たち3人は、未明が用意していた遮蔽物の陰に身を飛び込ませる。 直後、爆発と共に無数の岩の塊が弾け飛び、周囲を薙ぎ払った。 破壊の衝撃波は遮蔽物となった金属塊を貫通するようにして3人を傷付け、他の3人にも襲いかかる。 それを2人で留めるように、涼子は青を庇うように守りの姿勢を取り続けた。 「まだ、だいじょうぶ」 それだけ言って、彼女はナックル状に変形させたアクターを構え直す。 痛みを遮断している沙羅も、怪我を気にせぬ動きで再び武器を構え距離を詰めた。 遮蔽物はダメージを完全に防ぐことは出来なかったが、僅かに威力を削ぎはしたようである。 もっとも今回に限っては、疾風や涼子らの防御姿勢と大きな差は無さそうだった。 攻撃を行った大地の獣は……体を構成している岩や土を震わせながら、再度の破壊をもたらすべくリベリスタ達の動きを観察し始める。 その行動が終わる前にと智夫を除く全員が攻撃を行い続けたが……体を削り取られ一部を失いながらも獣は攻撃に耐え、リベリスタたちの動きを観察し続けた。 E・エレメントの高い耐久力あっての事ではあるが、消耗した事で本来の力を発揮できなくなった者もいたというのも大きな理由のひとつと言える。 智夫はそれについても懸念し仲間たちの消耗した力の回復を考えてはいたのだが、皆の受けたダメージを考え、悩んだ結果……仲間たちが出来るだけ倒されない事を優先し、自分の力を最低限回復させる以外は癒しの力を揮って皆を回復させる事に専念していた。 それでも……皆の負傷を回復させるには至らないのである。 再び行われた全体攻撃を受け、青が力尽き戦線離脱する。 涼子は唯、意地のみで身体を動かし、未明、疾風、沙羅は運命の加護で岩石弾の嵐を耐え抜いた。 そして、耐え抜いた事が決定打となった。 振り絞った僅かな力を全身に巡らせ、疾風は再び羅刹の如き連続攻撃を大地の獣へと繰り出したのである。 涼子は只管、変えることなく真っ直ぐに、愚直に……獣の身に己の拳を、一撃を叩き込む。 未明は智夫を庇えるように位置を取りながら、そこから一撃離脱の強襲攻撃を繰り出し続けた。 倒れた青を後方の智夫に任せてから、沙羅も大鎌を手に獣の後背を取る。 「聞かせてよ、君の断末魔。おいしそうだよね君の命」 仲間たちの攻撃で半壊した獣を眺めながら、少年は大鎌を振りかぶり大地の獣へと踏み出した。 「ありがとう、楽しかった。でも君は此処で終わりだね」 オーラで刃を包み込み、それを雷気へと変換する。 (死んでいいよ、殺してあげる) 雷を纏った刃が獣を捉え……唸るような鳴き声と共に、土砂崩れに似た音を立てながら、獣は形を失い始めた。 その姿を見ながら、沙羅は獣に語りかけた。 「おやすみ、獣さん。死んで黄泉で吼えててよ」 そのうちボクもそっちいくだろうしさ。 ●ひとつ神秘の消滅 痛みを堪えて崩れてゆく獣を眺めながら……青は、その光景を通して自分の内側の噛み合わない何かを眺めていた。 アークに来てから二カ月が過ぎたけれど……未だに今の自分に違和感がある。 非現実じみた力で、非現実じみた敵と戦う。 ゲームでもしているような、乏しいリアリティ。 (現実から逃避したいから戦っているのかもしれない) 少年は改めてそのことを実感した。 自分は現実を、今を……フィルターにしているのだ。 痛みも、何かの命を奪うという事も……たったひとつの現実を、過去を、霞ませる為に使っているのだ。 両親がいなくなったという事実を、一時だけでも霞ませる為に……自分は…… 長い思考のようで、実際には短い時間で……獣は完全に形を失って崩れ落ちる。 後には唯、岩と土が残るだけだ。 戦いが終わった平原に響くのは、過ぎ去る風が奏でる冷たい音色だけである。 「倒れた姿がそのまま墓になりそうね」 拡がった土の中に残った幾つかの岩。 その中の大きなひとつを眺めながら、未明が呟く。 まるでそれに応えるように、冷たい風が音を立てながら……皆の間を翔け抜けた。 身を切るような冷たさと静寂。 けれどそれは、世界を壊す神秘が壊れ、現実が取り戻されたという証でもある。 地面が剥き出しになった大地も、数箇月もすれば……ふたたび雑草が覆い尽くす事だろう。 何事も無いことを確認すると、傷付いた者に手や肩を貸して。 6人は戦場に背を向けた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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