●其は蟲の王 ブブブ、と響く耳触りな音。キリキリキリと甲高い鳴き声。小さな影が視界を横切る。 それは虫の羽音や鳴き声である。 『あぁまったく、退屈なことこのうえないねぇ。暇だものねぇ。やってらんないねぇ……』 やれやれ、と溜め息を零すその女性の手は、先が鍵爪のように割れていた。額から伸びた2本の触覚。ドレスに似た衣装の背は大きく開いていて、そこから透明な羽が4本、伸びていた。大きな瞳はまるでトンボの複眼のようだ。人と虫と足して作ったかのような外見。異世界からやってきた彼女は、蟲の王だ。 正確には女王、と言うべきか。自身の生み出した虫達を自在に操る能力を持つ。 怪物じみた外見の彼女。畳敷きの床に寝そべって、のんびりと寛いでいた。 ゆらゆらと揺れる。彼女が居るのは川の真ん中に浮いた屋形船の中である。船の内外を、小さな蟲が飛びまわる。蜂や蝉、蟋蟀、蜻蛉などの蟲だ。しかしそのどれもが、少しずつ、この世界のそれらとは違っていた。 それだけではない。彼女が寝そべり、もたれかかっているのは大きな繭だ。どくんどくんと鼓動を刻むように鳴動を繰り返す。 『退屈。待っているだけってすごく退屈。だけど、そうだねぇ。孵化するまでは、守ってないとねぇ』 ふぁぁ、と欠伸を漏らす。口が裂け、顎が広がる。その顔は、どうみても昆虫のそれだ。しかしその身体の外見は、人に似ている。 『さてさてそれじゃあ、私の子供が孵化するまで……。ちょっと遊んでいようかねぇ』 ついでに食糧も確保したい。そう考え、キリキリと鳴き声を上げた。 その声に反応し、屋形船の真下で何かが蠢き始めた。川の水が波打って、船を大きく揺らす。盛大な水飛沫を上げ水中から飛びだして来たのは、巨大な蜻蛉だった。 『お前には羽がある。好きに飛んで、遊んで、喰らってきなさい』 そう呟く女王に対し、巨大な蜻蛉は悲鳴染みた鳴き声で答える。大きく翼をはためかせ、まるで矢のように、蜻蛉は屋形船の周囲を高速で飛びまわり始めた。 ●蠢 「彼女は蟲を統べる女王。名前は(クイーン)。蟲を操る能力を持っているみたいね。屋形船の周囲を飛んでいる虫達は、彼女の僕」 何億匹いるのか分からないが、遠目に見た虫達の群れはまるで黒い雲のようだ。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は僅かに繭をしかめて見せた。 「クイーンの目的は、自身の後継者の誕生。安全な場を求めて、この世界に来たようね」 Dホールは、どうやら川の底にあるらしい。この世界に来てすぐ、屋形船を発見し乗っ取った。それを巣にして、繭をそこに運び込んだのである。周囲を護衛する蟲たちは、監視役だ。それと共に、クイーンの攻撃手段でもある。中には毒を持つ虫もいるだろう。 「繭から孵化するものの情報はない。恐らく蟲ではあるはずだけど、能力など不明。現在、クイーンが教育中みたい。冬に生まれることにより、冷気に耐性を持っていることが考えられるよ」 つまり、これから孵化までの間にクイーンが経験する事柄、行動、抱く感情によって生まれる蟲の性格は変わるのだ。 「クイーンと繭は屋形船からさほど動くつもりがないみたい。だけど、クイーンの配下である大蜻蛉(オニヤンマ)が獲物を探して移動を開始している。クイーン、オニヤンマ共々非常に眼がいいから、気を付けて欲しい」 オニヤンマの体長を3メートルを超える。最高速度もそれに伴い、非常に高速である。鋭い牙と凶暴な気性。それが人を襲うとなると、厄介な相手だ。 「川の近くには繁華街もある。時刻は夜。人が多くなる時間帯ね」 オニヤンマの撃破。クイーンの送還、或いは撃破が依頼の成功条件となる。 繭から孵化した蟲が、この場に留まるとも限らない。 孵化にかかる時間は不明だが、そう長い時間を必要とするものでもないだろう。 「迅速な解決を心がけて欲しい。危険の芽は、早い段階で摘んでしまいたいから」 そう言って、イヴは仲間達を送り出す。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月28日(土)22:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●退屈な蟲姫様 屋形船の中で、のんびりとまどろんでいたその姫君は、しかしその瞬間、異様な気配を感じて身を起こした。異質な、ある種の力を持った者達の気配だ。 『こちらに向かってきているのか? ……。まぁ、いい。オニヤンマに任せておけばいいでしょう』 高速飛行が可能なオニヤンマには、偵察を兼ねて周囲を飛ばせてある。好戦的で頭の悪い配下ではあるが、頼りになる。 傍らの繭に目をやって、蟲姫はゆったりと畳の上に寝転んだ。 ●異界蟲 水面ギリギリを飛行する雪白 桐(BNE000185)は、異変を察して急停止。翼の加護で得た羽を使って、素早く横にステップを踏んだ。 「オニヤンマ接近中! 来ます!」 桐が叫んだその直後、水面が大きく波打ち小さな水柱を幾つも巻き上げる。衝撃波が、桐の左腕を打つ。バランスを崩し水中に落下する桐。 「蟲が孵化するには季節外れな気もしますけど……。出来れば穏便に帰っていただきたいですね」 翼の加護をブレイクされた桐に向け『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)は、再度翼の加護を使用する。その間も、周囲への注意は切らさない。甲高い、飛行機にも似た羽音が鼓膜を震わせる。 高速で接近してくるオニヤンマ。正面から迎え討つのは『魔性の腐女子』セレア・アレイン(BNE003170)だ。す、っと正面に指を向ける。エナジースティール。オニヤンマの速度が僅かに鈍る。 「落ちろ、ガトンボ!」 碧い本を片手に、セレアは告げる。 しかし、オニヤンマの飛行速度は未だ高速の域。衝撃波がセレアの身体を弾き飛ばす。 水面を何度もバウンドし、セレアの身体は岸へと打ち上げられた。 「三郎太、参ります!」 金の髪を風に靡かせ、離宮院 三郎太(BNE003381)は拳を突き出す。放たれた無数の気糸が、オニヤンマの翅を貫いた。空中での高速戦闘は、僅かなベクトルの変化でも大きく影響を受けることになる。バランスを崩したオニヤンマの速度が更に減退。 それでも前へ、リベリスタ達へ向かって襲いかかるのは、それが姫の命令だからだろうか? 「迷惑だ、と言って通じる相手ではないでしょうが」 一閃。水無瀬・佳恋(BNE003740)の長刀が振るわれる。オニヤンマと佳恋が交差した瞬間、オニヤンマの頭部から鮮血が散った。鮮血を飛び散らせながらも、しかしオニヤンマは停止しない。 それどころか、その全身は瞬時に真っ赤な炎で包まれた。 炎の弾丸となって、オニヤンマは急旋回。佳恋と小夜は炎に巻かれて水面に叩きつけられた。 周囲を囲んでいたリベリスタを振り払い、その場から離脱しようとするオニヤンマの前に『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が立ちはだかった。拳銃とピストルを両手に構え、それをオニヤンマの額に突きつける。 「それでは行きます」 銃声が2発。1発は回避され、もう1発はオニヤンマの片顎を射抜く。炎の塊となって特攻してきたオニヤンマに、あばたは咄嗟にしがみついた。皮膚の焦げる臭いが漂う。 「オニヤンマは私達でブロックします」 あばたと共に、オニヤンマを追うのは『桜楼の斧』ルイリス・ストロフィア(BNE004848)だ。翅を傷つけられ、よろけながら飛びまわるオニヤンマに向け、大斧を振り下ろす。 風圧を敏感に感じ取ったのだろう。或いは、無数の複眼による視界の広さが要因か。 ふらり、と風にゆられるように、オニヤンマはルイリスの斧を回避した。 「あまり研究の参考にはならないけれど、実戦経験にはなりそう」 す、っと湖の中央に浮いた屋形船を見つめ『大樹の枝葉』ティオ・アンス(BNE004725)はそう呟いた。いつの間にか、屋形船の周囲は黒い靄のようなもので包まれていた。 否、靄ではない。耳に届くのは、ブブブ、という不快な翅音。靄の正体は、多種多様な大量の蟲である。 寒い時期にも関わらず、クイーンの呼び声に応じて集まったものだろう。飛びまわり、竜巻のように旋回を始める蟲の群れ。 ティオがそっと杖を構える。展開される4つの魔方陣が怪しく輝く。 蟲の群れが動き始めた。まるで黒い津波のようだ。解き放たれた4色の魔光が蟲達を迎え討つ。 一瞬にして、多くの蟲が焼き払われた。 しかしそれでも、一向に蟲の数は減る気配がない……。 「纏わり付く蟲は気持ちいいものじゃないですけどね」 まんぼうに似た奇妙な形状の剣を振り回しながら、桐は言う。黒い津波のただ中を、桐たちはまっす屋形船目指して突っ切っている最中だ。 相手が小さな蟲ということもあり、いくら剣を振るっても、一時的に追い払う程度の役にしか立っていない。 前衛の仲間に次いで、小夜は低空飛行で後を追う。仲間が一定以上のダメージを受けると、即座に回復術を使用する。彼女の周囲には、淡い燐光が常に瞬いていた。 回復と並行して、翼の加護での支援も忘れない。後方支援。それが小夜の役割だ。 「翼の加護は切らしませんよ」 水上での戦闘だ。翼を持たない仲間が多い今、移動手段は小夜の使用する翼の加護に頼っている。 しかし、このままでは押し切られる。クイーンの攻撃は全て、配下の蟲を介して行われるようだ。そして、その蟲の数を減らせないでいるのが現状。 少しずつ船に接近しているが、果たしてこの調子ならどれだけの時間がかかるか分からない。結界を張ってはいるが、あまり時間をかけるとクイーンの守っている繭が孵化する可能性も出て来る。 「当たらない……」 佳恋の腕が無数の蟲に埋め尽くされる。ドロドロとその手から、否、全身至るところから血が流れている。刀による斬撃は、小さい相手を狙うのに向いていないようだ。ジャガーノートの効果により、BSは受けないでいるが、それでも蓄積されるダメージはどうにもならない。 塵も積もれば……ということだ。 「当たらないなら当たる状況を作り出すのみ、ですっ!」 三郎太は両手を大きく広げて見せる。手甲に覆われたその両腕から無数の気糸が解き放たれた。気糸の束は、大きく左右に展開。蟲を取り囲むようにその範囲を広げていく。 気糸に押され、蟲達が中央へと追い込まれていく。ティオはその隙を逃さない。 カンテラに照らしだされた彼女の表情。す、っと瞳が細められる。集中を重ねているようだ。 「蟲の群れなら、視界はほぼ全方位だと思ったほうがいいわねー」 関係ないけど、と呟いてティオは杖を振り下ろした。杖の先端が鮮烈に輝く。解き放たれたのは炎であった。水面を走り、三郎太が集めた蟲の群れを焼いていく。気糸を逃れ、炎を回避した蟲も少なからず存在するが、ひとまず蟲の津波は食い止めることができたようだ。 その隙に、桐は蟲の真下を駆け抜け屋形船へと飛び乗った。クイーンへの道が開いたのを確認し、ティオはほっと溜め息を零す。瞬間、彼女の肩に僅かな痛み。 「これは……蜂?」 視線を下げると、彼女の肩には1匹の蜂が止まっていた。毒が彼女の身体を侵す。じくり、とした痛みが全身に走る。熱を伴う激痛だ。 「すぐに治療します」 小夜が、よろけたティオを背後から支える。 新たな蟲が来ない隙に、小夜は仲間の治療を行う。 背中に走る痛みに呻く。全身を強く打ちつけたせいで、少し身体を動かすだけでも痛みが走る。 傍らに落ちていた自分の魔導書を拾い上げ、セレアは数度頭を振って意識を覚醒させる。 ふと、耳鳴りに気付き顔をあげると、数メートル先に炎に包まれた巨大な蜻蛉の姿があった。 「ひっ!?」 悲鳴を上げたのはセレアではない。セレアの背後には1人の老婆の姿があった。どうしてこんな所に迷い込んでいるのか、一般人のようだ。 「危ないっ!」 咄嗟に老婆を突き飛ばす。セレアの背中をオニヤンマの炎が焼いた。痛みと熱に顔をしかめながらも、セレアは老婆のガードに徹底する。全身が痛い。身体が熱い。腕の中に庇った老婆は、すでに気を失っているようだ。 退くわけにはいかない。自分が庇い続けなければ、無関係の一般人が命を散らす事になる。 しかし、蓄積したダメージのせいか、意識が朦朧としはじめてきたのも事実。限界が近い。自分を敵だと認識しているのだろう、オニヤンマは執拗にセレアを攻撃し続ける。鋭い顎で喰らいつくオニヤンマ。肩の肉を食いちぎられても、セレアはその場を離脱できない。 と、その時だ。 「swat。大文字で書けばSpecial Weapons And Tactics、特殊火器戦術部隊の略ですが、動詞として虫を潰すという意味もあります」 静かな声。次いで銃声。オニヤンマの片目を弾丸が撃ち抜く。飛び散るオニヤンマの体液を浴びながら、セレアはゆっくり顔をあげた。 いつの間にそこに居たのか。全身びしょぬれのあばたが立っている。 気配遮断で近づいたのだろう。 「出来れば殺さずに済むと良いなって思ってましたけど……」 巨大な斧がオニヤンマの尾を切り落とす。翼の加護はブレイクされてしまったのだろう。先ほどまで水中に沈んでいたのか、ルイリスの唇は紫色だ。12月の水中は、さぞ冷たかったことだろう。怒りをぶつけるように、再度、返す刀で斧を振りあげる。 2度、3度と斧による連撃がオニヤンマを襲う。 「い、今のうちに……」 これ以上一般人を巻き込まないように、陣地作成の準備をしながらセレアは駆ける。 老婆を安全な場所へ避難させるため、全身から血を流しながら湖に背を向けた。 オニヤンマの全身が再度炎に包まれた。 「あつっ」 斧を握った手を焼かれ、ルイリスは数歩後じ去った。その隙に、オニヤンマは最高速度で空上昇。戦場を離脱するつもりだろう。 「川の中にドボンは避けたかったのですけどね」 そう呟いたのはあばたであった。飛び去るオニヤンマを視線で追いかける。 「に、逃げられてしまいますよ!?」 焦った声をあげるルイリス。「大丈夫」とあばたは答える。その直後、オニヤンマの動きが止まった。訝しげな表情のルイリス。よく見ると、オニヤンマの全身に無数の気糸が絡みついていた。 「トラップネスト」 対象の動きを封じるスキルだ。翅を封じられたオニヤンマがゆっくりと落下してくる。 まっすぐに、地面へ。 しかしその手前には、斧を振りあげたルイリスの姿がある。 オニヤンマの落下に合わせ、ルイリスは斧を振り抜いた。 ●彼女はクイーン 屋形船から、甲高い鳴き声が響く。それに呼応するように蟲の群れも一斉に鳴き始めた。高音同士が反響し合い、空気を振動させる。超音波。水面が大きく波打つ。水面だけではない。リベリスタ達の全身、特に内臓を衝撃波が叩く。 「っぐ……」 呻き声をあげるリベリスタ達目がけ、大量の蟲が殺到する。焼き払おうとティオが杖を掲げるが集中力が乱れて上手くいかない。 「う……神の愛を」 「ボクも回復できますっ! 皆さんは全力で攻撃をっ!」 一斉に飛び散る淡い燐光。傷ついた仲間を癒す聖なる光だ。小夜と三郎太による治療によって、佳恋とティオの傷が回復。 ティオは杖を掲げ、魔方陣を展開。炎を喚び出す。 一方、佳恋は素早く船へ飛び乗った。 「この世界は安全じゃないのよ」 炎で蟲を焼きながら、ティオは一言、そう呟いた。 屋形船に跳び込んだ佳恋が見たのは、激しく打ち合うクイーンと桐の戦闘風景だった。鍵爪鋭いクイーンの腕が振り下ろされ、桐の頬から首筋までを引き裂いた。 『何者なのだ、お前達は……』 忌々しげにクイーンが唸る。クイーンの片腕は、既に切られて存在しない。体液が畳を汚す。 「さて、貴女の天敵ですよ」 そう答え、桐は剣を振り回す。竜巻染みた大旋回。屋形船の内部はすでにボロボロだ。接近戦は不得意なのか、クイーンは押されている。それでも引かないのは、繭の存在のせいだろう。 「あれは……」 佳恋は見た。繭に小さな切れ目が走る。その中から、赤い目が覗く。 『おぉ……。やっと孵るか』 クイーンが囁く。片腕は失い、身体中傷だらけ。クイーンの命は長くないだろう。 しかし、それでいい。 生まれて来る子に、後は託せばそれでいいのだ。 「そうはさせない」 佳恋が駆ける。 『邪魔はさせない』 クイーンが腕を振り回す。クイーンが呼び込んだものか、船の中には無数の蜂が飛び回っている。鍵爪が佳恋の脇腹を引き裂いた。飛び散る鮮血。全身にとまった蜂が、毒針を突き刺す。痛みと熱が佳恋の思考をかき乱す。 「纏めて切り裂きます」 ダン、と大きく船が揺れた。力強い踏み込みが船を揺らしたのだ。下段に構えた大剣を、渾身の力でもって振りあげる。衝撃波が屋形船の屋根と壁を砕く。蜂の群れを薙ぎ払い、剣はクイーンの胴へ。 『ぐ……の』 ザクン、とクイーンの胴が切り裂かれる。着物の破片が舞い散る中、クイーンはその場に倒れ込んだ。胴の位置で真っ二つに切り裂かれながらも、まだ息がある。残った腕を繭へと伸ばす。それに応えるように、繭の中から赤い腕が突き出した。鋭い、剣にような爪を持つ腕だ。 『私の……怒り、を』 そう呟いて、クイーンは息絶える。 繭の中から、腕がもう1本、突き出した。クイーンの死を確認し、佳恋は繭へと近づいていく。 「申しわけありません」 これは誰に対しての詫びだったろうか。荒い息を吐きながら、ゆっくりと刀を引き抜いた。意識が朦朧としているのか、佳恋の視線は左右に泳いでいる。 だが、これで最後だ。震える手で刀を握り、それをゆっくり突き出した。 トス、と微かな音をたて。 佳恋の長刀が繭に突き刺さる。ビクリと大きく赤い腕が跳ねる。 それっきり、腕は動かない。繭に真っ赤な血が滲む。 異世界から来た蟲達は、この地で静かに命を散らした……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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