● 死人と踊る聖なる夜に 土気色の肌に、冷たい体。血の気はなく、その身は死人のそれである。けれど、白銀の髪と整った顔立ちは美しく、見るものの目を惹き付け離さない。 アザーバイド、不死者の女王。名を(クラリモンド)という。その本性は,白骨なれば血の気が通わないのも当然と言えよう。偽りの肉体を纏うのは、骨の体を人前に晒す事を好まないからだ。 「ずいぶんと寒いわ。快適ね。それに、楽しそう」 どんよりとした目で見渡す先には大型のレジャー施設。ショッピングモールやアトラクション、展望台など存在している。一際目立つ大きな観覧車がシンボルらしい。クリスマスシーズンのみ通常よりも遅くまで施設を解放しているようで、未だ施設内は多くの人で賑わっていた。 あるカップルはイルミネーションを施された観覧車や植林を眺める。 ある家族連れはレストランで豪華な食事を楽しんでいる。 広場の片隅に立つ男は、緊張した面持ちで人を待っているようだ。その手に握られているのは指輪のケースだろうか。 シチュエーションはどうあれ、施設に集う人々は皆、楽しそうな顔をしている。冷たい空気も気にせず、皆笑顔だ。 それがクラリモンドには気に食わない。彼女の住む不死者の世界は常にどんよりと薄暗く、暗い雰囲気と空気に満ち満ちているからだ。 「面白くないわ……」 そう呟いて、クラリモンドは右手を数回開閉させる。黒いオーラがその手に集中し、渦を巻く。擬似的なDホールを発生させたのである。 どうやら、自分の配下を異世界から呼び寄せようというつもりなのだろう。 しかし、Dホールの大きさが足りない。 「恐怖心を集めなきゃ……。ちょっと、ねえ、あなた達暴れてきなさいな」 自分の背後に声をかける。影から滲むように姿を現したのは2人の怪人であった。赤いローブを着込み、大鎌を手にした骸骨と、無骨な西洋甲冑を着込んだ巨漢である。 「ムエルテ。貴方、ちょっと行って楽しそうにしている連中を脅かしてきなさいよ」 赤いローブの骸骨(サンタ・ムエルテ)は何か言いたそうな顔で、しかし何も言わずに頭を垂れ、その場を立ち去る。 「私たちは、場所取りと行きましょう。ゲートを開くに丁度いい場所を探すの」 亡霊騎士を引き連れ、クラリモンドは踵を返す。彼女達、不死者がこの世界で活動できるのは深夜0時までだ。帰還のタイムリミットは1時間半ほどだろうか。 ゲートを開くまでにかかる時間は30分ほど。それまでにクラリモンドを止めねば、施設は大混乱の渦にたたき落とされることだろう。 「楽しそうにしちゃって……。羨ましいったらないわ」 そう囁いて、クラリモンドはひとまず展望台を目指すのだった。 ● 冷えた空気は骸に快適 「冷たい空気に引かれて彼女達はやって来たみたい。寒いのが好きなのね」 その身がすでに死体であるなら、それも当然と言えるだろうか。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はやれやれとため息を零す。 「クラリモンドは、人を驚かせ恐怖を与えることを趣味としているみたい。今回は、異世界から自分の配下を呼び寄せるつもりね」 施設のどこかに、クラリモンド達の潜ってきたDホールが開いているのだろうが、彼女はそれを利用せず、もっと大きなDホールを自力で開くつもりらしい。 「まずはクラリモンドを止める事。それから、施設内をうろついている(サンタ・ムエルテ)の確保も必要」 派手な演出を好むのか、現在クラリモンドもムエルテも、大勢の前に姿を現すようなことはしていない。おそらく、不死の軍勢を呼び寄せた後、一気に驚かすつもりなのだろう。 なので現在、ムエルテが探しているのは孤立している客、ということになる。 「ムエルテは、クラリモンドの行動に関してあまりいい印象は抱いていないみたいね。クラリモンドの身を心配しているわ」 それでも、主の命令だ。従わないわけにはいかないのだろう。 亡霊騎士の方は、クラリモンドに絶対の忠誠を誓っているようで、彼女の命令に従う事に、何一つ疑問を抱いていないように見受けられる。 ムエルテは鋭い斬激を、亡霊騎士は力強い攻撃をそれぞれ得意としているようだ。それに対し、クラリモンドは戦闘に不向きであるらしい。 代わりに、戦闘指揮に似た能力を有する。 「それじゃあ、我がまま女王様を追い返してきて」 そう言ってイヴは、仲間達を送り出す。モニターに映る施設の空には、分厚い雲が覆いかかっていた……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月27日(金)22:36 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●傍迷惑な来訪者 『賑やかねぇ……。妬ましくなっちゃう。もっと静かに、どんよりした空気が好みよ、わたし』 なんて呟くのは、死体の身体を持つ不死の姫君であった。傍らに控えた亡霊騎士が、同意するように大きく1度頷いた。 不死の姫君(クラリモンド)の視線の先には、楽しげな顔で行き交う人々。 クラリモンドは、詰まらない、と再度呟く。 すぐ近くまで、アークのリベリスタ達が来ていることなど、彼女は知らないのだろう。 ●サンタを探せ、死者と踊れ 夜も遅い時間だと言うのに、施設は活気に満ちていた。イルミネーションに彩られた観覧車やゲームセンター、展望台。家族連れやカップルの姿が多い。 クリスマスシーズンから年末にかけて、この国はどこも浮ついた空気に包まれる。 「さて……」 展望台を見上げる『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は展望台へと足を向けた。向かうは管制室。施設内の監視カメラを掌握する心算である。 キリエだけではない。他の仲間達も施設内に散開し、クラリモンドやサンタムエルテの姿を捜索している。被害が出る前にアザーバイドを発見すること。 それが最も、重要なのだ。 背中の羽を隠すこともなく、『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は広場を進む。当然目立ちはするのだが、クリスマスシーズンということもあり「ちょっと浮かれ過ぎた人」くらいの目立ち方に留まっている。 「えぇと、ムエルテさんは……」 視線を左右に泳がせるイスタルテ。千里眼を用いて、クラリモンドの配下を捜索しているのである。 そんなイスタルテの隣では『魔性の腐女子』セレア・アレイン(BNE003170)が道行く人に声を駆けて回っている。 「店内連絡用の無線が壊れちゃって困ってるんです、どこかで甲冑や骸骨見ませんでした?仲間と連絡取れなくて」 緑のサンタ衣装に身を包んだセレアは、施設のスタッフを装ってクラリモンド達を探していた。しかし、相手も身を隠すように移動していることもあり成果は今のところ出ていない。 指輪の入った箱を片手に、そわそわしている男性がいる。 人を待っているのだろう。喧騒から幾らか外れた隅の方に立ち、落ち着かない様子。プロポーズでもするつもりなのか。そんな男性のすぐ近くで1人の少女と少年が並んで立っていた。『きゅうけつおやさい』チコーリア・プンタレッラ(BNE004832)と離宮院 三郎太(BNE003381)である。 「チコは指輪を持ってるお兄さんを見張っているのだ」 そう言ってチコーリアは、横目で男性の動向を追いかける。離宮院は「えぇ」と頷き、チコーリアとは別方向を警戒。AF片手に、他の仲間とすぐに連絡が取れるようにする。 と、その時だ。三郎太のAFに連絡が入る。イスタルテからの通信だ。 どうやらターゲットを発見したらしい。 『ムエルテ、見つけました!』 その連絡を受けフィティ・フローリー(BNE004826)は施設内を駆ける。ムエルテとの距離が最も近かったのが彼女だった。イスタルテの指示通りに移動していると、階段の影に怪しい影を発見する。サンタ・ムエルテだ。 ムエルテの背後で足を止める。ゆっくりと振り返るムエルテ。大きな鎌と骸骨の顔。間違いない。不死の軍勢の1人、サンタ・ムエルテだ。 『……』 無言のまま、ムエルテは鎌を掲げる。自分の姿を見ても、ちっとも動じないフィティに困惑しているようだ。首を傾げ、こちらのリアクションを窺っている。 「あー、突然悪いんだけど、君達の主に、少し面白いことを提案したい、という仲間が居るから。そこまで案内してくれないかな」 言葉は通じているのか、いないのか。 仲間が来るまでまだ時間がかかるだろう。フィティの提案を受け、ムエルテは再度、訝しげに首を傾げるのだった。 『姫に会わせろ、と? お前が何者か知らないが、それは出来ない。姫の命令なのでな。そこをどけ。私にはやることがある』 今回の騒動に乗り気ではないムエルテだが、それでも主の命令だ。従わないわけにはいかないのだろう。ムエルテの全身から禍々しいオーラが溢れだす。 それを受け、フィティも槍を構える。 「交渉が決裂したら、戦うしかないんだけど……」 『私も乗り気ではないのだ。しかし、悪いな。邪魔をするなら仕方ない』 タン、と軽いステップでムエルテが跳ぶ。素早くフィティの懐に潜り込むと、まるで踊るような動作で鎌を振り下ろす。自然で、無駄のない優雅な動き。 フィティはそれを、咄嗟に槍で受け止めた。 イスタルテから連絡を受け、キリエは管制室の監視カメラの映像を切り替える。電子の妖精でカメラはすでに掌握している。カメラの映像には、戦闘を開始したムエルテとフィティの姿があった。自分もその場に急ごうと、椅子から腰を浮かせたその時、別のカメラに気になる姿を発見。展望台内部のカメラに、一瞬だけだがクラリモンドと亡霊騎士の姿が映った。 「皆が来るまで、様子を窺っておくべきだろうか……」 カメラの向きを変えてみるが、既にクラリモンドの姿は見当たらない。 クラリモンドを探すべく、キリエは管制室を飛び出した。 「あまり大きな騒動は起こさず帰って欲しかったんですけど」 困ったような顔をして、戦闘の最中に跳び込むイスタルテ。その背後で、セレアは慌てて陣地作成の体勢に入る。 戦場と外を切り離し、一般人に被害が出ないようにするためだ。 「いや……駄目。クラリモンド達がいないし」 サンタ・ムエルテだけを陣地に閉じ込めても仕方ない。しかし、一般人を戦闘に巻き込むわけにもいかない。 舌打ちを1つ。セレアは、近くに一般人が入って来ないよう戦場の警護に当たることにした。 その間に、三郎太とチコーリアも現場に到着。次々と増える珍客に、ムエルテは戸惑っているようだ。 『何事なのだ、これは』 ムエルテのステップが加速する。フィティ、イスタルテ、三郎太、チコーリアの間を縫うように跳んで、鎌を振るう。咄嗟に槍でガードするフィティ。火花が散った。回避が間に合わず、イスタルテと三郎太の身体に裂傷が走る。飛び散る鮮血を身に浴びて、ムエルテは小さく『すまないな』と呟いた。 咄嗟に三郎太がガードしたため、チコーリアは無傷だ。一旦動作の止まったムエルテの、その眼前に駆け足で跳び込んだ。 「サンタさんは大事な姫がケガしてもいいですか?」 そう訊ねるチコーリアの瞳は真剣そのものだった。ムエルテが唸る。彼とて、クラリモンドの身を案じていないわけではないのだ。 フィティが、イスタルテが、セレアがそれぞれの武器を構え、臨戦態勢を整える。数の上では5対1。ムエルテとて負けるつもりはないが、それでも無傷とはいかないだろう。ましてや彼の主は、戦闘は不得意。 『しかし、姫の命令なのだ……。これは』 「姫様は前もこの世界に来ているの。こっちの世界に来るのも1回目じゃないし、アークも超本気モードで対処することになるのだ」 小さく呻いて、ムエルテの動きが止まる。それでも鎌を降ろさないのは、忠誠心が邪魔をしているのだろう。 「信じてくださいっ! ボク達の…チコの言葉に嘘はないのですからっ!」 全身を血で濡らしながら、三郎太が叫ぶ。 世界も違う、種族も違う。しかし本気の言葉は、想いは伝わるものだ。 暫しの沈黙の後、ムエルテはゆっくり鎌を降ろす。 『分かった。姫の元へ案内しよう。……だが、そこまでだ。後は任せるぞ』 その一言で、張り詰めていた緊張の糸が切れる。 その瞬間だ。 キリエから『クラリモンドを発見した』という連絡が入ったのは。 キリエとムエルテに誘導される形で、5人は展望台へと向かう。道中、結界を使用しながら人払いも忘れない。元々、クラリモンドと亡霊騎士の居場所が展望台の中でも、人気の少ない区画であったため、この作業は比較的楽なものだった。 今頃、ムエルテの集めて来る『恐怖』の感情を、身を潜めて待っている頃だろう。 最も、それを阻むために、リベリスタ達はこの場へはせ参じたのだが……。 『退屈だわ』 ふぅ、と温度のない溜め息を零し、クラリモンドは窓の外を見降ろす。亡霊騎士がそれに続く。何かよからぬことをたくらんでいるのかもしれない。クスリ、と笑って片手を上げるクラリモンド。 その指示に従い、亡霊騎士が動き始めた。 その時だ。 「待って」 物影から姿を現したキリエが、声をかける。キリエを視界に捉え、クラリモンドは驚いたような顔をする。 『あら? あなた誰かしら?』 「私は柚木 キリエ。良かったら、今夜はこちらの楽しみ方で遊んでみない?新しい遊びも、きっと楽しいよ」 片手に構えた銃を掲げ、キリエは言う。それを見て、クラリモンドはにやりと笑った。無言のまま、上げた指先をキリエへと振り下ろす。瞬間、弾丸のような速度で亡霊騎士が飛び出した。剣を大上段へ振りあげ、力任せに振り下ろす。 「おっと……!?」 素早く回避。キリエの頬と肩が切り裂かれ、鮮血が跳んだ。交差するように鎧の隙間に弾丸を撃ち込む。ギシ、と軋んだ音。鎧の中の骨の音だ。 亡霊騎士に大きな隙が生まれる。その隙に、キリエはクラリモンドの方へと駆け抜ける。すぐに仲間が駆け付ける、と判断して亡霊騎士のブロックを解除した。 「私も一人は寂しくて、誘いに来たんだ。だってそうでしょう?他人が遊んでいるのを、遠くから見ているだけなんて誰だってつまらないもの。だから、貴女が一緒に遊んでくれたら嬉しいな」 引き金に指をかけ、その銃口をクラリモンドへ突きつける。 キリエが弾丸を放つと同時、クラリモンドの全身から禍々しいオーラが噴き出した。溢れるオーラが弾丸を飲み込む。バックステップで逃れようとしたキリエの肩を、亡霊騎士が掴んだ。 逃げられない。 そう思った、その時だった。 「満足するまで遊んでさしあげます」 眩い閃光が瞬いた。声の主はイスタルテだ。神気閃光が、クラリモンドのオーラと相殺。 さらに、フィティの放った渾身の突きが亡霊騎士の兜へ命中。大きくよろけ、キリエを開放する。 『次から次に……。この世界は、退屈しないわ』 ふふん、と小さく鼻で笑って。 クラリモンドは、異世界の客人を迎え入れる。 ●踊ろう不死の姫君と 「みんなを楽しませるのも姫さまのお仕事だとチコは思うのだけど、どう思いますか?」 戦闘に入る前に、先ずは交渉からである。クラリモンドに対し、チコーリアはそう提案した。 しかしクラリモンドは、分かっていない、とでも言うように首を横に振る。 『わたしたちは不死の民に、貴女たちの言う楽しみが分かると思う? たぶんね、常識とか物の考え方が違うのだわ』 相容れない、とクラリモンドはその提案を一蹴する。 「そんな……。出来る限りのおもてなしはさせていただきますよ。きっと楽しい事はいくつあってもいいのですからっ!」 三郎太は言う。 それを聞いて、クラリモンドはにやり、と笑った。口角が上がって、三日月のようになっている。 『わたしが好きなのは、混乱と恐怖。それなら、あなた、楽しみましょう。幸せそうなのは、妬ましいわ』 再度、クラリモンドの全身から禍々しいオーラが噴き出した。す、っと手を泳がせ亡霊騎士に指示を飛ばす。亡霊騎士の鎧が砕け、中から現れたのは巨大な骸骨であった。 盾を投げ捨て、剣を両手が掲げる亡霊騎士。 振り下ろされたその剣は、衝撃波だけでフィティとキリエを纏めて弾き飛ばした。 「ちっ……。ブロックさせてもらうよ」 槍を地面に突き立て、フィティはその場に留まった。血を流すフィティとキリエ。その全身を淡い燐光が包み込んだ。2人の傷が消えていく。受けたダメージを癒すのはイスタルテだ。 「トドメはさしませんよ」 念を押すようにイスタルテは言う。しかしもとより、クラリモンドとその配下に死という概念はないのである。現状では、戦闘不能にするだけが限度だろう。 キリエの弾丸が、フィティの槍が、イスタルテの放った閃光が、その場に亡霊騎士を食い止める。 『あら? 以外とやるわ。ムエルテはどこでなにをやっているのかしら?』 戦闘が不得意なクラリモンドは、もう1人の配下の姿を探す。しかし、サンタ・ムエルテはこの場にいない。 「クリスマスにいい思い出はないけど、それでもぶち壊させるわけにはいかないの」 ドロリ、とセレアの手首から血が溢れる。流れた血は、黒い鎖へと変貌。大量の黒鎖はうねりながらクラリモンドへと襲い掛かる。鎖の濁流に目を見開くクラリモンド。圧倒的な物量を前に、クラリモンドも不吉なオーラを解放することで対抗する。 オーラと濁流が衝突。衝撃波が吹き荒れ、展望台のガラスを砕いた。砕け散る窓ガラスの破片に混ざって、三郎太が駆け抜けた。 「元の世界に戻ってくれないですか? 出来る限りの「おもてなし」をさせてもらいますよ」 『あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない』 クスクスと笑うクラリモンド。しかし、その態度とは反対に、その表情には余裕がなかった。引きつったような笑みを浮かべている。 肉薄されたことによる焦りだ。接近戦は得意ではない。普段なら傍に配下を従えているのだが、今回はそれがいない。頼りの亡霊騎士も他のリベリスタにブロックされてしまっている。 三郎太を避け、後退するクラリモンド。三郎太はそれを無理に追いかけはしない。 逃げた先には、チコーリアが居た。 「本当は遊んだりしたかったけど、大人しく帰ってくれないならDホールからおかえり頂くのだ」 手にした杖に光が宿る。チコーリアの足元に、白い炎が喚び出された。回避は間に合わない。クラリモンドが「しまった」と呻く。 炎がその勢いを増し、クラリモンドに襲いかかる。 その直前だ。 『お待ちください!』 炎からクラリモンドを守るように、サンタ・ムエルテが割り込んできたのは……。 『ムエルテ……。お前』 『姫よ。これ以上戦っても、分が悪い。今回は撤退しましょう』 不満気なクラリモンドに対し、ムエルテはそう進言する。すぐ近くでは、亡霊騎士が戦っているが、3対1では向こうも善戦とは言い難い状況だ。 『い、いたしかたないわね』 下準備に時間をかけ過ぎた。不死の軍勢を呼び出すためのゲートを開くのにも時間がかかる。 暫しの瞬準。仕方ない、と再度呟いてクラリモンドは戦闘体勢を解いた。 クラリモンドに習って、チコーリアも杖を下げる。 『分かったわ……。今回は引いてあげる』 クラリモンドが指を鳴らす。戦闘中だった亡霊騎士が、その合図で即座に戦闘を停止。クラリモンドに従順なのだ。 ムエルテと騎士を引き連れ、帰還しようとするクラリモンド。そんな彼女の前に、チコーリアが立ちはだかる。 『まだ何か御用?』 つまらなそうに姫は言う。そんな姫に対し、チコーリアは笑顔で告げた。 「みんなでジェラート食べませんか?」 呆気にとられたように、クラリモンドは目を丸くする。それを見て、チコーリアは満足そうに笑うのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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