● 「ラ・ル・カーナで休暇を過ごさない?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年06月01日(日)22:14 |
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● (ここが世界の中心、そしてあれが) 「……世界樹、か」 キャルが見上げたエクスィスは巨大な、そして立派なものになっていた。 少し前は新芽であったときいていたが、此れが新芽? いやいやこれは立派な世界樹である。 聞いていた事とはかなりちがっていたが、此れも時が過ぎる速さのせいか、それとも世界樹が凄すぎるものなのか。 「君も、R-typeの……」 そうキャルは世界樹の表面を撫でた。ふと、瞳の端の方で何かが光ったため、石かと思って拾ってみたのだが、何かの武器の破片か。 その意味が、此処でかつて大きな戦があったことを知らしめていた。少し悲しみに沈んだキャルの表情だが、すぐに持ち直して小川から汲んだ水を世界樹の足下に流してやった。 「健康そうで何よりだ。これからも、お元気で」 何時の間にか売り切れていた欠片を探しに、疾風はラルカーナを訪れていた。 「以前も石探しで来た事あるけどそれ以来ぶりだなあ。あれから何か変化あったのだろうか」 そう周囲を見回しながら言うのだが、リヤカー、バケツ、スコップ、軍手。かなり完全装備な疾風に不可能はない。 「たくさん見つかれば良いのだけどなあ。前来た時はどの辺りで見つけたっけ」 広げたのは精密な地図。目星をつけるとしたら、やはり小川からの探索か。 歩き出す疾風は、しかし何かに躓いたと思えば其れは欠片であり。成程、こいつ何処にでもあって何処にでも無いとな思い知らされた気がした。 本日は晴天なり。 「お仕事以外で異世界なのですぅ♪」 「こっちに来るのも久しぶりだな」 櫻子が耳と尻尾、そして背筋をピンと伸ばして此方の世界の空気を身体の中へ取り入れつつ、櫻霞は久しぶりに見た此の世界を見回した。 よしよし、今日も此の世界は平和です。ともあれ、事件が頻繁に起きるのも問題だがと櫻霞は自分の考えに苦笑しつつ。 そんな二人の後ろを杏子は遠慮気味に歩いていた。お似合いの二人に着いて来るだんて邪魔なように思えるのだがと少し負い目を感じていた訳だが、、、 ふと、櫻子が振り向いて杏子の瞳を見た。 「そういえば……忘却の石って普通の石と大差ありませんよね? 探そうにもどうしたら良いのかしら……」 腕を組んで考え出した彼女に、櫻霞と杏子は。 「シェルンに聞くか、アークに問うか、適当にそれらしい石を探すかだ」 「とりあえず適当か、若しくはカンでそれっぽい物を片っ端から集めればいいのでは?」 適当な様で正解な答えを言ってみたのだが、矢張り不安は広がるばかり。そもそも忘却の石なのであらば、それなりに力を秘めているとか解り易いとかであらばこんなに苦労しなかったであろう。 杏子は少し溜息混じりに、言う。 「………集めておけば選別はアークがするでしょう」 確かに。 それから三人はかなり真面目に石探しをするのだが、事の発端は何時も櫻子から。 「むぅぅ~……折角の休暇ですのに、石拾いは飽きましたにゃー」 小川のすぐ近く、昼寝には持って来いのような草むらに寝転んだ櫻子。其の隣に杏子も、少し疲れた趣で座り込んでしまう。 子猫が二匹、草むらの上でころんころん。 「ピクニックのノリで気長にやればいいさ」 そんな二人の口に櫻霞はクッキーを入れていく。疲れた時こそ甘いものである、そもそも休暇なのだからそんなに頑張らなくてもいいのであろう。 「そうですよね、休暇なのにお仕事だけなんて勿体ないですわ」 櫻子を杏子と挟んだ状態で櫻霞も座り込んだ。頬を撫でる風が優しく通り過ぎていく。 「はぅぅ、櫻霞様のお手製クッキー美味しいですぅ♪」 「……とは言え、既に櫻子お姉様がぐったりしてますね」 櫻霞に甘えるように甘い声を出す櫻子。其れをみてクスっと苦笑した杏子が溜息混じりに櫻子の頭を撫でた。 「ピクニックなら櫻子も何か作ってくれば良かったですにゃ~」 「次はそうしようか」 少し休んだらまた動くのだろうが、今は此の落ち着いた空間に浸るのも悪くはないのだろう。 ● 「此処が、ラルカーナ……」 まさに異世界か。小雷は緑に囲まれながら、一人其の中を進んでいく。 彼としては、自然に囲まれていた方が落ち着く様で、現に頬を撫でる風が気持ちがいい。もし此処で鍛錬ができるのであらば、それはそれは有意義な時間になるだろう。 「そうだ、川があるなら釣りをしてみるか」 何が釣れるかは解らないが。 食堂があるため、釣った魚はそこで調理してもらえるだろう。ならば善は急げと目的が出来た小雷の足は早くなっていった。 早苗はひたすら石堀にラルカーナを訪れていた。 只、闇雲に探し回っても効率が悪いと、まずは近くのフュリエに石があるらしい場所を聞きこみから開始。 「確か、小川とかにあるって聞いたよね」 「ええ、あとは丘とかにも埋まっているって言ってたわ」 「そうですか……ありがとうございます」 「「頑張って下さいね」」 「ん? あ、ああ、ありがとうございます……」 基本親切なフュリエたちは、快く話を聞いてくれた。中には手伝おうかまで気を使ってくれる子まで発生した程にだ。 具体的な返答を期待していなかった早苗にとってはこれは予想外でもあり。とりあえず目星がついた場所まで歩いてみる事にした。 シエナは一人、ラルカーナの地を訪れていた。 「うん、そう……初めてのラ・ル・カーナ」 ボトムとは違う景色。三高平は建物ばかりに囲まれているが、此処は緑に囲まれていて世界が違う事を改めて実感させれる。 ボトムでは見ない植物に、不思議な形をした実。見れば見る程珍しいものばかり――なのだが、ハッとした。ちゃんと石を探さなくてはと。 「けど、その中でも貴重なもの……忘却の石、ちゃんと探す、よ」 探す、探すのだけど。ちら。ちら。 「というか、おいしそう?」 見てしまった、おいしそうな果実を。蜜柑にも似た、それを。 かなり石探しから脱線したが、マグスメッシスを使ってシエナは其れを切り落とす。手元いっぱいになった果実に満足しながら。 「……わたし、何探してたんだっけ」 石! 石! 異世界に立った一悟は思う。 リベリスタに成る前は異世界なんて踏み込む事さえ無かっただろうと。 彼は治療施設を見学しに来たのだ。海外で受けた心の傷を治して貰おうと、思えば……。 「あんときは死ぬかと思った……普通の人間だったら、死んでるよなああ」 一悟の頭の中には走馬灯のように出来事が繰り返されているのだが、顔を振って何も考えないようにした。 治療施設にはできれば温泉とか冷泉でもいいので無いかと探してみるのだが、如何やらそれらしいものはあるらしい。 というのも、小川の水に足を浸す程度だが。少しだけ汗ばむくらいの気温の今にとっては癒しではあった。 ふと飛んでいるフィアキィが一悟に挨拶して何処かへ飛んでいく。面白い存在だ、あとで長とも会いに行こうと思いつつ一悟は眩しい空に手を伸ばした。 意志をもって忘却を成す。言葉にしてみれば面白い。神秘はなんでもできるのだな。 鎖々女はそう思いながら、お弁当を持ってラルカーナの森林の中を一人歩いていく。小川を辿って、上流へ。時折ボトムでも見かける顔がいるのは、恐らく小川が石があるスポットなのであろう。 一帯は静かで、水音のマイナスイオンに満たされている。其の音が好きだと鎖々女は特に、耳を傾けながら無心に歩いていく。 ふと、小川の中で光る何かが居た。恐らく魚なのだろうと物珍しげに覗き込みながら、されどもなかなか其の姿を捕まえさせてはくれない。 食べたい訳でもなく、安らぐから見ていたのだが。本能で生きる生物は恥ずかしがりやとみた。 ● ラルカーナ、初の来訪。 言裏は歓迎してくれたフュリエに囲まれながら、それと果物に囲まれながら居た。 与えて貰うだけでは無く、言裏自身もボトムから持ち寄った果物をフュリエたちに分け与えつつ。 「やっぱりフュリエって皆処女なの?」 こら。淑女がそんな事聞いちゃいけません。 ともあれ、フュリエが其の処女とはなんなのか、まず其処から解らなかったようで皆一様に頭にハテナを思い浮かべている。 知ったらどんな反応するのかは気になる所だが、されど彼女達の無知が逆に良かったのかもしれない。 「ああうんなんでもないよ」 そう言いながら言裏は果物を口に運んだ。 (んーでも此処の処女はなんか違う気がするんだよねぇ) 言裏は何時もそんな事を考えているのだろうか、そっちのほうが心配。 ホリメである俊介は何故かマグメが好きだ。 対極というか、なんというか。 「マリアちゃんは食べ物、オムライス以外に何が好きなんよ」 「ケーキとかかしら?」 ふーんと、テーブルの上に肘を置いた俊介は、おいしそうに果物を頬張るマリアを見て、少し和む。いかん、此処にも兄妹予備軍がいる。 「でもやっぱり手の込んだものがいいよな、母の味ってやつ」 「ふーん?」 俊介は母親を知らないからか、其の味はもう彼が知る事は無いのかもしれないが。 「な、なあマリアちゃんの羽って布団がいらなさそうだな」 「夏は暑いのよ。良かったらあげるわよ」 「え、俺ノワールオルールだし」 「冗談よ」 まきのんと、べったんのお兄ちゃんです(自称)。かつフュリエたちのお兄ちゃんにもなれるぐらいお兄ちゃんです。 何時もの竜一で安心した。 大きな食堂で竜一は大勢のフュリエや杏理とマリアに囲まれながら、果物を頬張る。 くるしゅうない。 「べったんはフルーツの持ち合わせたクレープがいいよね!」 「食べたいわ!」 「まきのんはアプリコットクレープだよ、杏理だけに!」 「ふふ、竜一さんったら」 上機嫌のままに並べられていくクレープ。成程、何時も優しいお兄ちゃんは気遣いも忘れない。 「よしよし、俺の御膝の上に座るとイイよべったん!」 「それはいらないわ」 「あーんしてあげよう!」 「は、恥ずかしいです……っ」 ひゃっほーいと遊ぶ竜一が、楽しそうで何よりである。 「はい」 「はい!」 悠里が料理の盛られた皿をおけば、マリアが両手でそれを持って何処かへいく。 「大丈夫かな、マリアちゃん。あ、ごめんね、二人共。手伝って貰っちゃって」 「いいんですよ」 杏理がそう笑顔で言った刹那、マリアが皿を割った音が後ろで響いた。 悠里は食堂で料理を作っていた。石探しをする皆に差し入れする為のものなのだ。果物よりかはもっとボトム向けのものも必要と思って。 「お礼にあとで二人が好きな料理を作って上げるよ。好きな食べ物って何?」 「オムライスがいいわ!」 「ら、らーめん……」 ともあれ、悠里はそれをメモしながら杏理に耳打ちする。 「そういえば杏里ちゃん、この前の事件で目から血が出てたけどもう大丈夫なの?」 「杏理は平気ですよ、ありがとうございます。お優しいのですね」 ● 恵梨香はフュリエ村のスーパー耕されている畑の上で、黙々と石を探していた。 己の手は敵を滅ぼす事だけしか考えていないのだが、これが何かを産み、育めるのだろうか、なんて難しい事を考えながら。 だからか、作業するも恵梨香の顔は強張っていた。 「大丈夫? どうしたの?」 「いえ……私らしくな事を考えていました」 「そ、そう……?」 ラルカーナは亜婆羅にとっては初めての場所だ。恵梨香に案内をお願いしたが、何時の間にか石広いにチェンジ。 骨を集めるのなら喜んでやるのだが、いくら似た硬いような石でも乗り気では無いのは恵梨香にバレてしまっただろうか。 「此の後、フュリエさんに野菜を分けて貰ってとっておきのスープでも作るわ。難しい話はそれからでもいいんじゃない?」 「そう……ですね、私も其の料理には興味がありますので」 それじゃあ約束。此の後の予定を亜婆羅と恵梨香は指切りした。其の手、再び恵梨香を視れば、再びこんな事を思ってしまう。 ―――自分も戦士以外の生活を送れるのだろうか。 今は幻想に過ぎないものでも、もしかすれば何時か叶う夢になるかもしれない。 少しだけ緩んだ表情に亜婆羅は満足気な顔を向けながら。 「あ、石ってこれかしら?」 「それですね」 着々と石は集まっていくのであった。 シエルは上空からラルカーナの景色を楽しんでいた。 先程まではきちんと石を探していたのだが、中々見つからずに翼を広げて気分転換。 されど彼女にはもう一つやるべき事があって。此の、ラルカーナのスーパー耕されている畑なのだが、他のリベリスタを協力して作っているのだが、撒いた種が芽吹いている様。 (一心不乱に耕して、水まきばかりしていたせいで、どの程度成長しているのかじっくり確認したことなかったんです。だから……) 成果を上から見ていくのも悪くはないと。 「さて……この畑でどれだけの生命が芽吹き、育っているのでしょう?」 手に取ったメモとペンにそれらを記録するのが彼女の役目である。 其の下では雷慈慟が土の感触を確かめていた。此処の荒れ果てていた土地も、今では新しい命を育む栄養の高い土に成り。成果を眼に見えて知れた事に、嬉しさは込み上げる。 だがまだ此れで終わりとは言えない。 雷慈慟にしてみれば、まだまだ農地拡大を推進するのだという。 「それにしても……都度話に上がるが。気候や土壌等、農業に向きか不向きか解りかねる所だな」 顎に手を置き思考する。あくまで異世界の土地に撒いたボトムの種が奇形も何も無く育つのか……はやってみなくては解らない。 近いうちに水路を引いて、田にも着手する事を頭の隅で決定付けつつ、大地に鍬を入れる。 「……このまま過ごせれば、幸いなのだがな」 シンシアは畑の様子を見に来ていた。先程まで誰かが居たのか、少し前見たよりかは整備されている。 ところでこの畑、何の植物が植えてあるのだろうか。シンシアにしてみれば、ボトムの植物である事に気づくのは少し先の話になるのかもしれないが。 「ラルカーナの種も、ボトムで育つのかな……?」 それはちょっと崩壊とか怖いので駄目かもしれないが、折角だからと今度は人が居る時にボトムの畑の作り方を教えて貰おうとシンシアは心に決めたのであった。 アルシェイラにとっては故郷のラルカーナ。 彼女も畑の様子が気になって見に来たのだが、スーパー耕されているというのは事実か。整備もされていた。 ボトムの皆がやったのかな……と、正解を弾き出しながら考えてみる。 そうだ、肥料とか持ってくれば役にたてたのかもしれない。次はそれを用意しようと思いつつ、ボトムの植物をラルカーナで品種改良できないかも検討つけてみたのであった。 ● 氷璃はマリアの手を引きながら、振り返る。ついて来るメリッサは異世界が初めてなのだとか。 案内をすると氷璃は連れて来たのだが、マリアはメリッサを物珍しく見ていた。 「宵咲様とは依頼でご一緒しましたが、マリアさんは初めてですね。よろしくお願いします」 「ええ、宜しく」 初めての人が少し怖いのか、マリアは氷璃の影に隠れながら自己紹介を交えた。メリッサの瞳には、氷璃とマリアは姉妹の様に見えて微笑ましく思えた。 暫くして、湖の畔でティータイム。あーんしたマリアの口にクッキーを落しながら、ふと思い出したように氷璃は言う。 「所で、様は止めて頂戴。氷璃で良いわ」 少し、間が空いてから。 「氷璃さん、ですね」 メリッサは慣れないような口調で、そう呟いた。そういえばと、先程姉妹の様に思えた事をメリッサは氷璃に伝える。 ほら今もマリアの口についたクッキーの欠片を取ってあげているのが微笑ましくて。 「私達は姉妹よ。マリアは私の大切な妹だもの。血の繋がりより、もっと強い絆で結ばれているわ」 刹那。 マリアはなんの話をしているのか知らないのだろう、湖にダイブした音が響いた。 「あの子ったら……」 「でも、水遊びもいいかもしれませんね」 再び暫くして、湖に足を浸ける氷璃やマリアと一緒に水の掛け合いをするメリッサの姿が目撃された。 更に時間を進めれば、其の侭キャミソールとドロワ姿で身を寄せて。服が乾くまで待つ三人の光景が出来上がるのだが。 妹とでかけるのは随分と久しぶりであるかもしれない。 真昼の手前には影時が居た。ラルカーナで兄と妹で休暇中。 「兄さんはなんの食べ物が好きなんだい?」 異世界の面白い果物を口に入れながら、ふと影時が今まさに疑問に思った事を口にした。もっと普段から興味を持ってもらいたいレベルだが。 「好きな食べ物は手早く食べれるカロリーメイ……、じゃなくて目玉焼きとか好きだよ。大分前に影時が作ってくれたよね」 そうだったかと。影時が顔をこてんと斜めにしながら思い出してみる。 兄としては、影時が家を飛び出る前の話をしていたのだが、もしかしたら影時の中では思い出せないくらい昔の話であったのかもしれない。 「あ、これ酸っぱくて美味しいな」 ていうか聞いてなかった。何時もの影時で良かったと真昼は内心そう思った。 「兄さんも食べる? むいてあげるね」 熟練を使って鋏で果物を剥きだした影時。そんな彼女は何時もより優しい気がするのを真昼は感じていた。 彼女のためなら、彼女を守るためなら、目が合った敵は全部殺す。 物騒な事を思いながら妹が切ってくれた果物を口に運ぶ。其の味は普通より3割増しくらい美味しく思えた。 「真昼お兄ちゃん……なんちゃって」 徐に呟いた影時の言葉が真昼の耳の中で何度もエコーした。 席を立ち、妹を抱きしめる其の両腕には確かに愛が籠っていたのだろう。だって、大事な妹だもの。 葬識の後ろを魅零は足跡をなぞる様にして歩いていく。 が。 「うーん、石探し。飽きちゃった」 「え」 幻聴かなっておもったけど、ほら出た。 葬識が気分で動いているのは今更言う事でも無いが、流石に遠路遥々異世界まで着いて来た魅零にとっては文句の一つや二つがあったが口に出す事は無く。 「黄桜後輩ちゃん、せっかくの異世界だし、石探しなんてやめて遊ぼ☆」 前言撤回。 「何しに来たんですか!!?」 矢張り此処は怒るべき所である。されど葬識は何時もの笑顔が悪戯色に染まり、 「んー、石探しなんてただの口実でたまには異世界に君と来たかった」 なんて言い訳は如何と顔を斜めに愛らしく。 それが魅零には効果が抜群であったようで、勿論葬識にとっては計算内であったかもれない。 魅零は顔を真っ赤に染めて見せるのだが直ぐに顔を振って、 「葬識先輩にとって黄桜ってなんなのですかぁ。黄桜は便利なアイテムじゃないんですからーぁ」 二つ目の不満を吐いた、刹那。葬識の足下、枝がひとつパキンと割れた。瞬間、頭上の鳥のような生物が一斉に羽ばたいて消える。 空気が、変わった。 「あのさ、黄桜後輩ちゃんはその関係性に名前がついてないと不安?」 「え」 「俺様ちゃんは、名前のないこの関係が心地いいんだけど。黄桜後輩ちゃんは違うの?」 あ、先輩機嫌が悪いんすね。 慌てた様に魅零は困った顔をしたのだが、五秒くらい考えて答えを弾き出す。 「お言葉ですが先輩! 女の子はお砂糖とスパイス、それと素敵なものでできているんですよ」 だから『素敵な関係』が欲しいなんて口が裂けても言えないのだが。 「本気を示したいならもう言葉は要らないという事ですね!」 それもそれで曲解で。魅零は石探しに葬識の背中を押したのであった。 ● 義衛郎は周囲のフュリエに助けてもらいつつ、かなり真面目に採掘をしていた。 掘りだし担当の彼に、分別担当のフュリエ。数人ついてきてくれたフュリエが、あれでも無いこれでも無いと石を見ながら話し合っている姿は何処となく眼福である。 されど掘り出して数時間経った時であった。 「どうしようね」 フュリエの子と一緒に地面を見る。なんだか大きな岩が邪魔して、其の先が掘り起こせないようなのだ。 義衛郎は周囲を見回した。こんな場所にこんなタイミングで力を持ったリベリスタが通りかかる訳―― 「通り掛かりのベルーシュさん。これ、吹き飛ばせませんか」 「いやよ」 ――居た。けど、即答。 「なんでマリアがそんな事」 「報酬はマドレーヌ詰め合わせ三人前」 「やらせていただくわ」 あ、ちょろい。そう義衛郎は石を葬送曲で木端にしていくマリアを見てそう思った。 されどその後ろではせおりが彼の後ろを尾行していた。 全身迷彩柄の服はさておき、その特大の段ボールに隠れているのは。スネーク、それはバレる。 「うーん、自分のナゾ記憶に居る人だし、お兄ちゃんかお父さんか、はたまた生き別れの親戚か……どう思うマリアちゃん」 「うーん、マリアにはわかんない!」 仕事を終えて、不思議な段ボールに話しかけられたマリアは顔を斜めに、とりあえず段ボールの中身を確認した。 「あっ、マリアちゃんだめだよ段ボールあけないで! さっきフルーツ拾ったから、これあげるから!」 「キャハハ、食べ物? 食べる食べる! でも逆に目立つわよそれ」 マリアは割とストレートで容赦無かった。そうこうしている間にせおりの前から、彼が消える。 何をしていたか一瞬思い出せなかったが、慌てた様に再び彼を探していく段ボール。 拓真は超直観を駆使して石を拾いに来ていた。だがそう上手く出てきてくれるものでも無く、特に一人という点では他のリベリスタよりは苦労しているかもしれない。 「……ヒントでもあれば探し出せる気がするんだが、そこまでは望めないか」 矢張り、現実は甘くないと見える。ならば仕方ないと切り替えて探すのだが、そういえば此の世界はよく自分たちを受け入れてくれていると感心した。 あのバイデンが居た事を思えば――うん、色々あったなあと思い返せる。今では酒の席での、笑い話にもなる程に。 そういえばマリアは今何処で何をしているか。随分逢っていないから心配だ。 「後であいに行ってやるか……」 そう呟いた拓真の頭上、マリアが拓真を見つけて落下して来ていた。 比較的危険の無い依頼を探していたら、異世界とは。蘭は初めての異世界に足を降ろしていた。 此処まで来たのであらば、折角だ。 (新たな幻の糧になるよう、この目を皿のようにして観察と研究に励もうじゃないか) 前向きに効率よく、蘭は再び歩き始める。ついでに忘却の石も探すことにより一石二鳥か。 精密な地図を広げながら、予め石があるという場所を調べて来た蘭に隙は無い。概ね此処だろうと判断して進めば、自ずと忘却の石は発掘できた。 あんまりにも簡単に見つけられるとそれはそれで面白味が無いと苦笑できるのだが。まだあるはずだと、見逃さないように蘭は歩く。 凛こそ、初めての異世界に瞳が輝く。見れば見る程に、珍しいものばかりだ。 「なんとも不思議な場所だな……のんびり石探しも悪くない」 ふと、凛はとある施設を見つけた。傷跡が深い、武器や壁やら、そういったものを。 「ああ、何処の世界も戦いの爪痕は消えないものか。取り壊すわけにもいかないんだろうか……」 そう凛は少し悲しい顔をして言うのだが、後々、壊されるそうです。物理的に。 ふと、凛の表情の手前に赤色のフィアキィが飛んできた。見上げた顔に、フュリエの少女が顔を斜めにした。 「本当に出会えるとはね……初めまして、アークの新米リベリスタだ」 「……人間? どうも、こんにちは」 彼女こそ人に慣れていないらしい。遠慮気味に顔を倒したフュリエの少女は、それから物珍しく凛を見ていた。 ● 「えりえり、どっちがいっぱい忘却の石みつけれるか競争しようぜ」 「仕方ないですねえ、寂しいならそう言えばいいのです」 「寂しいちゃちゃちゃちゃうわ!」 夏栖斗がエリエリの手を引いて、ボトムからラルカーナへの穴を潜ってきた。ひさしぶりにみた世界は相変わらず綺麗は緑に囲まれている様だ。 「足元とか気をつけるんだぜ、転んだら怪我するからな」 まるで兄妹の様に突き進んでいく二人。探すべきは忘却の石だが、二人はきちんと『目星』をつけて此の場にやってきた。 エリエリは目を瞑り、記憶を辿った。腕を組み、まるで探偵のように「フフフ」を笑みながら。 「森で拾うか、小川の底石に多いのです」 そう、其れがエリエリのパーフェクトプラン。ではあったのだが、近くで水しぶきが一つ。 「えりえり、みっけたー? 水んなか気持ちいいぜ! っと一個みーっけ。ほら、めっちゃ綺麗」 「てもうカズトさん進んでるー!!!?」 才気あふれる邪悪ロリを演出してみるつもりが先を越されていた。なんてこった、アークトップリベリスタの嗅覚は恐るべきものである。 負けていられないとざぶんざぶん、エリエリも小川の中を突き進んでいくのだが、此処でお約束。 「まってくぎゃー!!」 「あ、……っと」 あって良かった、ハイバランサー。エリエリの小さな身体を受け止めた夏栖斗は、すぐ傍で咲いていた綺麗な花をエリエリの髪に飾ってやった。 「ちょっと馴れ馴れしかった? 似合うかなって思ってさ!」 「なんというか、誰にでも優しいのはキケンですよ」 ハーレムの香り(ダメなにおい)がした、一瞬の出来事であった。 「冷たい……」 糾華の細く透き通るような白い肌の足が、小川に浸かる。岩場に座りながら、涼しい風を頬で感じて。近くではAFである蝶が、彼女を守るようにして舞っていた。 ふと岩場の上で仰向けになってみる。 「良い天気……世界は違ってても空の青さは同じなのよね」 伸ばしてみる、空に届かせるには小さすぎる腕を。ふと、一瞬だけ其の腕から血が溢れだす幻覚が見えた。 「ちょっと、殺し、過ぎたわね」 思えば、其の数を何時から数えなくなった事か。 一般人を。守るべき世界の礎を。『異物』に歪められた哀れな犠牲者たちを。 「理解っていたはずなんだけれど……」 此の手を紅く染める覚悟は出来ていた。決して己が何時でも善であるなんて思ってもいないのだが、願わくば、背負った総ての咎が巡り報われん事を。 再び伸ばした手に、もう少しだけ此の世界の風を感じていようと思えた。 そんな糾華が今何処で何をしているのか解らないが、同じくラルカーナを訪れていたリンシード。 偶には彼女も一人考えたい事があるのだろうと察し、己は 「マリアさん、こんにちは……新しいお洋服可愛いですね……」 「そろそろ時期的に長袖は暑いわ。でもありがとうだわ」 マリアと一緒に居た。 マリアの格好はまるでふわふわの天使。悪魔の笑顔を携えた―――おっと此れ以上は攻撃が飛んでくるとリンシードは察した。 「マリアさんは石、探さないんですか……? よければ、どちらが先に石を見つけられるか勝負するのも楽しいかな、なんて……」 「いいわよ。じゃあ勝った方が何かあると楽しいわね」 勝った時の条件を考えるのだが、二人とも思い浮かばなかったのか頭から煙が出る程考えてみた。 「まぁ、石拾いなんざやるわきゃねぇけどな」 「何しに来たのよ」 瀬恋、マリアを小脇に抱えながらラルカーナの路を往く。 がっちりホールドされているらしく、マリアも頑張って抵抗するのだがビクともしない腕には逆に感心さえ覚える。 という訳でやるのは、狩りである。 ぶーと膨れたマリアの頬。遊びたいと駄々こねようと思ったのだが、瀬恋の鋭い目線が怖い様で今日は静か。 「良いか? さっき言った通りにやれよ? 守れなかったらメシ抜きだからな?」 「わ、わかったわよぅ」 「あと堕天落としすんなよ? 獲物が石になっちまったんじゃあ食えねえからな」 「そもそも動物なんているのかしらね」 「バイデンが上手く扱ってたあれらがまだいんじゃね?」 「見ないけど」 「こまけぇこたあいんだよ」 「此処までの話のノリって一体!!?」 ● 「此処がラルカーナか……なんかこう、恐竜とか出そうだな」 アベリオンの名を冠するものなら、ラルカーナと接点がないのは当たり前か。 華は特殊部隊の退院を引き連れて、此の異世界の地を踏んでいた。ともあれ、恐竜とか出そうだと思うのは、それは確かにと言うしかない此の緑(ジャングル)。 「なるほど、風光明媚な地であるのだな。とはいえ、ちらほらとかつての戦いの名残も残っているのだな」 アズマはチラっと見たのはリベリスタが建築したらしきものや、作ったと思える武具。かつて起こった戦いは、激しいものであったのか、それらに残っている傷跡も痛々しい。 「わーい !異世界! 異世界の土ですっ!! うひゃー!」 くるくる回りながら異世界を楽しんでいるアイリーンの姿がムードメーカーの様。 質の良い草むらを転げまわりながら笑顔で遊ぶ……のだが、アズマがアイリーンの首根っこを掴んで立たせた。 「さて、遊びより先に仕事だ。あいつを見習え」 「やー……」 一足先に着ていたユーンが、両手にピッケルを装備しつつ掘る掘る掘る。 ユーン個人としては協調性というものは無いらしく、確かに他の仲間を差し置いて、一人作業をする姿は一匹狼か。 ともあれ、ユーンにかかれば世界の土をひっくり返す勢いで地面が抉れていく。 「ユーン殿? 張り切るのはいいが落ち着かれよ」 冷静なアズマがそれなりに自然破壊はいけないと問うのだが。 「華からも何か……華殿?」 「可愛いなあ」 しかし其の頃、華はフュリエの子の愛らしさに完全に心を奪われていた。笑顔で手を振ってくれるフュリエにいくらか鼻の下を伸ばしている彼は最早この世界に何をしに来たか忘れている。 「華さんしっかり!!」 アイリーンが華を揺さぶりながら、それでやっと華の心が現実に戻って来た。 「あ、ああ。掘るんだったか。めんどくさいな、ヴォルケーノで一気にやるか」 「……えッ、ヴ、ヴォルケーノは最終手段ってことで!」 華の足下からチリっと火花が散ったのだが、其の手の中にあるピッケルの意味を問う。 アズマはアズマで更地にするのは宜しくないとユーンを捕まえて言うのだが、何故だろう、凄くこの男匂うよ。 聞けば、此の異世界に来るまでずっと一人で飲み明かしていたようだ。 「はっはっは、もうすっかり回ってて潰れそう いやしかし石の一つや二つ見つけなければ仲間と来たかいがないだろう? 負けないさ ユーンは自分に負けはしない!」 「更地にするなと言っている」 ユーンからピッケルを取り上げたアズマが、ユーンの後頭部をピッケルで殴った。ユーンは酒が回り、其の侭自ら戦闘不能。 「やむを得ん、こちらは任されよ。何とか監督しよう」 「悪いなぁ」 「あ! それならやりやすいかもですね。あっ、華さん華さん見てください! 面白い形の石がありました!!」 「お、アイリーンが一番乗りだな偉いぞ」 輝かしいくらいの笑顔で、両手で石を掲げたアイリーンの頭を華は優しく撫でた。 ともあれ、アズマがいなければ纏まりが無かった三人を思えば恐ろしい部隊である。 ● ウラジミールが先行し、其の後ろをシュスタイナとフランシスカが着いていく。 足下に危険が無いか、ウラジミールは留意しながら進むのであるがよくよく考えてみれば、少女二人は翼がある為か、そもそも足場の悪い場所では飛んでいた事に気づくまでもう少し時間はかかりそうだ。 ともあれ彼女達が怪我をしないようにサポートするのは、彼なりのやさしさであった。 「ふー、良い天気ね」 「そうだねえ」 見上げれば、晴天。それだけを見ればなんらボトムと変わりなんて無い。 「多めに持ってきてよかったわ。あとで如何?」 シュスタイナが持ってきたのは紅茶で、氷で冷たくなっている。他にも甘いクッキーが入った籠を見せながら。 「ん? お菓子? いいねー」 歩き疲れて休む時には持って来いであろう。 暫くして、三人はお昼の休憩に入った。戦いよりかは幾らかマシな任務だが、休暇にやれとは時村も中々ブラックだとフランシスカは嘆きながら。 「あ、そだ。シュスタイナさぁ、あの姉もうちょっと大人っぽくなるように躾けてよ」 「馬鹿姉? あー見えても、大人っぽい所……あったらいいわね」 思い出したかのように、ウラジミールからパンを受け取ったフランシスカがシュスタイナの耳に声をかけた。 だがシュスタイナ、此れを華麗にそっぽを向いて我関せず。フランシスカ的にはほわほわと笑う彼女の純な瞳が如何にも慣れない様で、気づけば頭をぐりぐりしたくなるとかなんとか。 そんな女の子二人の会話を聞きながらウラジミールは紅茶を口に運んだ。 颯爽と話題を変えようとシュスタイナは明後日を見ていたが、くるんと向き直った表情は何処か真剣で。 「私、ここで何があったかよく知らないのよね。二人は?」 「あー、ここで? わたしは存分に戦ってたわ。面白い奴等だったよ。ほんと」 思い出すのは、バイデンが居た頃のラルカーナ。ミラーミスだのRタイプだの、あの頃は大変だったと今では笑話なのだが。 二人の話を無言で聞き続けたウラジミールに、シュスタイナが彼女なりの気配りを見せた。 「おじさまは、お子さま相手でつまんなくない? 大丈夫?」 「こんなに可愛いレディと一緒でつまらないなどという男はいないよ」 シュスタイナの頭に置かれたウラジミールの手は優しさを孕んでいた。ともあれ、たまにはこうやってゆっくりいくのは悪くないと。 草むらに寝転んだフランシスカが空に手を伸ばした。 休暇というのは建前で、やっぱり仕事。 彩歌はジャージ姿でラルカーナの地に立っていた。本来なら石を掘る場合、地質調査から開始して効率よく進めていきたい所なのだが。 「此処は掘っても平気よね」 「おそらく……」 一緒に着いてきてくれたフュリエに確認しながら、丁寧に掘り進めていく。しかし心中、ボーリングがしたいと嘆く彩歌はやはり休暇を求めていた。 「ベルさぁぁぁん、お久しぶりです自分です!」 「きゃああああ!!」 「やっと、やっと……約360日ぶりに会えましたぁぁぁ!」 「そんなに間が空いていたかしら!?」 亘、久しぶりに会ったマリアに涙目で全力で飛び込み、小さなマリアの身体をすっぽり抱きしめたままカウンターの堕天落としの餌食になっていく。 気を取り直して。 小川の畔にクッションや、ラルカーナの果物であしらった盛り合わせを置かれたマリアがホイホイ釣れたのは言うまでも無く。 ぱくぱくと食べて行くマリアの姿を見ると更に心が洗われるような癒しを感じていた。 「最近は如何です、マリアさん」 こぽこぽつがれる、紅茶の音が響く。 「お友達が増えたかしら。亘も友達なのよ」 ● 見上げた、新緑は何時の間にか成長をしていて新しい命を育んでいて。悠月はマリアの手を引きながら、エクスィスを訪ねていた。 「此れが見たいだなんて、悠月らしいわよね」 「気になるじゃあないですか。世界樹……ベルはちゃんと見た事がありましたっけ」 「アレの時なら」 |゜p・| ↑アレ 「世界樹も……R-TYPEの、犠牲者」 「大変だったのね、悠月。大変だったわね、悠月」 なんとなくか、マリアの小さな手が悠月の頭を撫でた。 今は、見えたものは世界樹の元気な姿。ほっとした悠月、ラルカーナも此れで平和は保たれているようなもの。 「――さて。そろそろ戻りましょうか」 「悠月はこれからどうするの?」 「石探しです」 「えー」 同じように、ツァインは世界樹を見に来ていた。 一年前の新芽を想いだし、まるで我が子の成長を確かめにいくように 「って、さすが世界樹」 うん、予想していたのは子供が木登りするには持って来いくらいの大きさであったのだが、見上げてみれば先が見えない程の巨木がひとつ。 なんてこった、流石ラルカーナだ。ミラーミスを舐めていた。 其の木の体表にふれながら、バイデンでもいいから生み出さないかと問いかける。返事は無いものの、新しく生まれてくる命は歓迎したい。 しかし刹那、ツァインのお腹の蟲が空気を読まずに高らかに鳴いたのであった。 計都と三郎太は一緒にラルカーナを訪れていた。 「それにしても……異世界なんですよね。なんだか不思議な気持ちです」 三郎太が踏みしめる大地も、見上げる空も、ボトムとはなんら変わりがないように見えるのだが。 「さておき、石ッスよ、石!たっぷり持って帰って、オクに流せば大もうけッス!ヒャッハー!!」 三郎太の目線の先、計都が楽しげにガッツポーズ。 「……み、見ないで、三郎太くんっ! そんな穢れのない瞳で、汚れた大人のあたしを見ないで!?」 いやんと自分抱きした計都。だが三郎太は一切気にしていないようで、むしろ頭の上にはハテナのマークが浮かんでいた。 気を取り直して、三郎太と計都は石探し競争を開始。 「じゃぁどちらがたくさん見つけるか競争ですっ!」 なんて三郎太がいうものだから、つい計都も本気になって、 「ファミリアの猫と式神の鴉を総動員ッス! ズルじゃないッスよ?」 式神が一斉に石らしきものを探しに行くのだが、計都や三郎太は目視でも探していく。ちら、ちらりと計都は三郎太を気にしつつ。 「あ、あそこに落ちてるのって……!」 「あ、そうかもしれないですね!」 なんて、あれ? 何時の間にか一緒に石を探してしまっている気がしなくもない。 暫くして、 「たくさん見つかりましたねっ。これできっと皆さんのお役に立てますっ」 だなんて満面の笑みでいうものだから、計都の胸の奥がきゅんと高鳴って 「こんなときまで、皆のことを考えて……もー、ホントに三郎太くんは良い子ッスね! ぎゅーってしていい?」 結唯は石探しはついでに、観光をメインに来ていた。 訪れたのは、ラルカーナのフュリエ村で。されどもシェルンは今留守なのだとか。名前も知らないフュリエがそう言っていた。 仕方なく食堂に来た結唯は杏理を捕まえて 「これ、食べてみろ。美味いぞ」 「わあ、本当ですか! ありがとうございます……酸っぱい」 結唯さんは酸っぱいのがお好きなのかなと杏理は思ってみたのだが、どうも結唯はそれを食べたことが無かったようで。 「美味いなら私も食べてみるか」 「もー、結唯さんったら」 杏理は一瞬だけ結唯の悪戯に頬を膨らませてみせた。 ● カルラは地面を掘り、堀り……石を探す。 「……たまには、こういう日もあっていい」 無心に、何も考えず。壊す訳では無く、誰かを傷つける訳でもなく。ただひたすら、石を掘る。 「今日くらいは、他の事は忘れよう……」 ボトムの出来事や、一般的に辛いと思える現実から離れ。今は何も考えない時間を過ごすのだ。 とはいえ、カルラの手際は良い。此処まで準備をしてきたという事もあるのだが、運がいいのかぽこぽこ石が見つかる。 帰還の時間はまだ先だが、地道に重ねた作業は誰かの為になる事を願って。 「みんな、久しぶりーっ♪」 エフェメラは久しぶりの故郷と、久しぶりの友人に囲まれていた。 おかえりとか、ボトムはどう?とか、まるで其処一帯が女子高生が沢山いるかのようなはしゃぎっぷりに、懐かしささえ覚える。 「あ、そうだ。みんなー、一緒にご飯食べようー♪」 ボトムでの話をするのもそうだが、矢張り此処は久しぶりの故郷の料理を食べなくては。 だが長いことボトムに身を置くエフェメラの料理はどこかボトムナイズされているのだが。食事や文化を教えるのも、また一興かもしれない。 暫くして賑やかな食堂の一帯、フュリエが続々と集まってはエフェメラの帰還を歓迎していたのであった。 ――もう、ここにはフュリエの敵は、バイデンは居ない。 という事で、あの日使った歴戦の施設はもう不要であろう。あるだけ、ラルカーナの外観を損ねているのもあるが。もう、必要が無いのが一番の理由か。 快と椿は罠や発射台、ウォールスパイクの手前に立った。 「マリアも手伝ってくれるんな、ありがとな」 「着いて来ただけよ」 「マリアさん。壊すのはいけど、残骸あんまり散らかさないでね!」 「着いて来ただけだもの!!」 大丈夫だ、どうせマリアは其の内自ら進んで手伝い始める。 快は発射台を器用に解体して部品ごとに並べていくのだが、大して椿とマリアは過激的だ。 あんまりスキルを使うのは好ましくないと椿の頭の中では何度もそう考えたのだが、しかし結局気づけば利き手がウォールスパイクを貫通していた。 「流石、組長だね」 「快さんやめて!? 違うん、今のは出来心やったん!!」 「キャハハハハハ!」 続いたマリアがフレアバーストで罠を燃やし尽くしていく。成程、罠を発動させてしまうよりかは幾らか現実的な除去方法か。 「うーん、一日がかりって所かな」 「せやなあ、なかなか終わりが見えへんからな」 三人で作業開始してもまだまだ、罠やら何やらは残っている。あの日の俺達頑張り過ぎだろうと苦笑しながら。 そう、ここには、もう、フュリエの敵は、いない。俺達が選び、滅ぼしたのだから。 「マリア、後で一緒にお弁当食べよな」 「椿の手作り?」 「うんうん、快さんの分もきちんとあるからな」 「ラルカーナで飯を食うのはバイデンが持ってきた食事ぶりだったかなぁ……」 戦乱に塗れたラルカーナ。 だが今ではこんなにも平和を感じられるもの。 ボトムでも何時か、そうなればいいと。誰しもがきっとそう願ったに違いない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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