● 倫敦(ろんどん)市内で多発する改造キマイラ事件は、未だ収まる気配を見せていない。 この事件に、表向きこそ否定されていたものの宿敵たる倫敦派――『倫敦の蜘蛛の巣』が関わっている事を確信した『ヤード』は長年の均衡に終止符をうつべく、遂に重い腰を持ち上げた。 倫敦派は、長年抗争を続けてきた『ヤード』ですら全容を解明出来てはいない謎多き存在だ。彼等は、社会の闇の中に紛れ、倫敦を覆う霧の様に掴みどころがない。本拠すらも未だ明らかになっていないのだ。 今までは、互いに想定される被害や状況の悪化などから、危険な駆け引きを続けていた両者であったが、此度のキマイラ事件が、その均衡を崩す切っ掛けとなった。 『ヤード』はこれまでの、アークも含めた戦いから『キマイラ運用』の影に潜む倫敦派を捕捉出来る可能性を見出していた。 その為、彼等に対抗する為の主戦力を積極運用する事による、末端からの戦略情報の取得。更には、現在最も世界でバロックナイツとの交戦経歴があり、かつ撃破せしめた存在たるアークに本格援軍を要請し、アークの上層部もこれを受諾した。 倫敦に立ち込める倫敦派と言う名の霧を払うため、極めて短い期間で『ヤード』は戦力を増強した。 ……というのは、つい最近の話である。 そう、それは現在より少しだけ、過去の話である。 彼等はまだ知らない。 彼等はまだ気付いてはいない。 『ヤード』がそうであるように、宿敵たる倫敦派もまた彼等を紙一重先んじる様に、倫敦の霧の中にその姿を見せようとしていた事に。 ● 『緊急事態だ。説明は手短に、君達にはロンドン警視庁地下――つまり、我々『ヤード』にとっての本拠地に向かうキマイラの迎撃をお願いしたい』 通信機から聞こえる声は、『ヤード』に所属するリベリスタのものだ。 彼等『ヤード』と、そしてアークのりベリスタは現在、先手を打って倫敦で暴れだした倫敦派の対応に追われている。 『本部は無論、我々の手によって守られるべきものだ。が、我々だけでは手が回り切らないのも事実だ』 市内は勿論、地下鉄にも及ぶ改造キマイラの事件は、一つとして放置出来るものではない。 彼等はリベリスタであり……故に、守るべきもの、優先されるべきものは多いのだ。 『君達は、世界で最もバロックナイツとの交戦経験を持ち、彼等を撃破せしめた唯一の存在だ。信じるに値する存在だ。我々の帰るべき場所を、頼んだぞアーク』 遥か遠く島国から駆けつけたリベリスタの同志への激励の言葉とともに、通信が切れる。 「お話は、終わりましたか? 終わったのたら、そこをどいて貰えませんか」 機械で無理やり作り出した様な、男とも女ともつかぬ声がリベリスタ達にかけられる。 そこに立っていたのは、身体が機械と融合した様な歪な猟犬を引き連れた少女だ。 焦点の合わない虚ろな瞳。白人と呼ぶには、あまりにも青白い生気の感じられない肌に、本来両腕があるべき部分に縫い合わせられた様に蠢く触手。 恐らくは……いや、考えるまでもないだろう。 キマイラは、今正にこのロンドン警視庁地下『ヤード』の本拠地を落すべく目の前に現れたのだ。 「やっぱり、戦わないといけないですか? 出来れば、私もこの子達も、無闇に人を殺したくないんです」 何処か、戦わずに済むならばそれが望ましいと言わんばかりの勧告。 だが、無論リベリスタ達はそれに応じる訳にはいかない。 倫敦に立ち込める霧を払う為の、戦いが今始まろうとしていた……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月19日(木)22:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「あひるも、戦わずに済むのなら……そのほうがいいな……!」 ――戦わないといけないですか? そう自らに問うたシルバーソーンへの『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)の返答は嘘偽りのない本心だ。 あひるとて出来る事なら戦いたくはない。 けれど、倫敦を覆う今の状況は、其れを許してはくれないのだともあひるやリベリスタ達は理解していた。 「ここから先に行こうとするのなら……全力で、止める。街の人達だって沢山……命に変えても、守らなきゃ」 「そう、悪いけど……君らが何者だろうと、道を譲るわけにはいかないよ。アークの一員としてね」 彼女に――キマイラ達に道を譲る訳にはいかない。 この道の先にあるものは、『鏡の中の魂』ユーグ・マクシム・グザヴィエ(BNE004796)達にとって守るべき『ヤード』の本部なのだから。 自分達を信じて、この場を任せてくれた『ヤード』のリベリスタ達の為にも、決して譲れない。 「この場で、終わらせましょう。シルバーソーン、あひる達がお相手だよ……!」 「残念、です……」 あひるの決意が篭った言葉を受けしゅん、とシルバーソーンが悲しげに目を伏せた。 男とも女ともつかぬ歪な音が青白くなった唇から発せられるや否や、彼女に付き従う様に寄り添っていた六匹のソニックドッグが臨戦態勢を取る。 「解って貰えないのなら――」 「死んでくれ、とでも言うつもりか? ……ふん。所詮は口だけか。本当に、人殺しが嫌なら自らの意思で今すぐ辞めればいいだけの話だろう……もっとも、自分の意思で動いているのならだがな」 人殺しは嫌だ、と公言しながら結局の所それを辞める気配は無い。 彼女がキマイラである以上、もしかすると何らかの思考を強制するスイッチの様なものが組み込まれているのかもしれないなと考えるのはリオン・リーベン(BNE003779)。 もし、そうだとすれば其れを命じた何者かへの興味がリオンにはあったが……直ぐに、今此処で命を断つ者へ興味を持ちすぎだと思考を切り替える。 「ちょっと待った! 周りの一般人を避難させるのを先に……はやっぱ無理か? デメリットはそんなにねぇと思うんだけどよ、どうだ?」 可能な限り一般人は傷つけたくないんだろう、と。 『幼少女愛』黒松 雪緒(BNE004630)がそんな提案を持ちかけた。 が、数瞬戸惑った後に、結局首を縦には振ろうとしないシルバーソーンを見てその提案は受け入れられなかった事を雪緒が悟る。 「……僕が強結界で何とかしましょう。そうすれば一般の方が紛れ込む事は無いはずです」 そんな、雪緒の傍で離宮院 三郎太(BNE003381)が強結界を発動する。 (ふぅっ、これで一先ずは依頼に集中できますっ) 避難させる時間こそ与えられはしなかったが、これで少なくともこの戦場に、一般人が紛れ込む可能性はほぼ無いだろうと三郎太が安堵した。 「解ったぜ、悲しいけど敵なんだから仕方ないよな……だったら可愛い子には我が手で引導を引き渡す!」 「ええ。早めに片付ければその分、周囲への被害も広がらない筈です」 避けられない戦いならば、せめて早くおわらせれるようにしましょうと雪緒と三郎太が互いに決意する。 「初めてのイギリス、折角来たんだからお洋服とか色々見たいしなぁ」 まさか初めて訪れたイギリス旅行が、改造キマイラ退治になるなんて、と『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)が心の中でほんの少しため息をついた。 だが、アークとして此処を訪れた以上は其れも致し方ない事だろう。 「本当に、初の海外遠征がこんな面倒な戦いだなんてな」 やれやれ、と真独楽の隣で戦闘の準備を始めながら『双刃飛閃』喜連川 秋火(BNE003597)が自分の運の無さに呆れ果てていた。 「ボクもよくよく運がないらしいが……ま、仕方ない。 やる以上は負けは嫌だからな。全力で行かせてもらおうか」 「うんうん! 悪いヤツらはしっかりやっつけて、ロンドンと世界の平和守っちゃおう!」 その後は観光ね♪と笑顔で張り切る真独楽に秋火や仲間たちが頷く。 ● 余りに見るに忍びない、というのが初めて其れを目にした時の翔 小雷(BNE004728)の感想であった。 青白い少女の肌には、あまりに似つかわしくない対の触手。 かつてはヒトであったであろう存在に手を加え、人為的に奇怪な化け物を生み出す。 神をも畏れぬ所業とは、正にこの事だと小雷は思う。 「ハロー、あいむあリベリスタ。あいきるゆー!」 戦闘が始まるや否や、ソニックドッグの不可視の衝撃波をすんでの所で躱した真独楽が、彼等の奥に立つシルバーソーンに肉薄する。 風の様に素早くスタートダッシュを決めた真独楽。 その腕には三本のピンクの刃が愛らしい雰囲気を漂わせるクロ―。 『Pink Dustdevil M』と名付けられた其れは、デコストーンや彫刻が真独楽の女の子らしさを強調させる。 「死ね、ない……任務を果たさなきゃいけない、から!」 デッドリー・ギャロップ――ふわり、と真独楽のクロ―から伸びた神秘の糸が霧に触れてキラキラと煌めく。 その幻想的な雰囲気にシルバーソーンが思われ見とれ―― 刹那、気糸は意思を持つかのようにシルバーソーンに絡みつき、哀れな人形の如く締め上げる! が、死なないと言う言葉を体現するかのように直ぐに見た目からは想像もつかないほどのすさまじい力で糸が引き裂かれた。 主人を傷つけられたからか、即座にソニックドッグの一体が真独楽に向けて衝撃波を放つ。 「っ……! ダイジョブ! まこたちは、異世界のモンスターやアザーバイド……もっとワケわかんない敵と戦ったコトもあるもん」 直ぐ傍から放たれた衝撃に、身体が大きく揺らぐもその場に踏みとどまる真独楽。 「おっと、真独楽はやらせないからな?」 その、真独楽を攻撃したソニックドッグに、今度は秋火が神速の斬撃を見舞う。 二本の小太刀から繰り出されるは、多重残幻剣。 多数の幻影と共に、ソニックドッグ達を翻弄し次々と斬り刻む。 「邪魔を……しないでッ!」 絞り出す様に、シルバーソーンが声を上げる。 両腕の触手が、まるで大地に根を張る様に肥大化しながら周囲のリベリスタ達全員を締めあげ、或いは鞭の様な触手を叩きつける。 そのまま倒れこんでしまいそうな死毒が、痛みが、リベリスタ達に等しく重石の様に伸し掛かった。 「直ぐに傷を癒やさないと……」 自身を含め、無傷の人間がいない以上、あひるに出し惜しみをしている余裕は無い。 『絵本 みにくいアヒルの子』――みにくいアヒルの子が飛び出すその絵本は、あひるにとって大事な大事な絵本であり、力を発動させるものだ。 聖神の息吹、希薄な高位存在の意思を読み取ったあひる後からが息吹となって仲間の傷を癒すが。 ズキリ……! (身体の中の毒は、まだ残ってる……でも!) 傷を癒やしたとて、その全てが癒えるとは限らない。が……それでも、癒しの力は断じて無意味なものではない。 一連の回復動作を見ていたソニックドッグ達が、あひるに向けて三匹続けて衝撃波を放ったからだ。 もしも、回復がなければあひる自身が落とされていたかもしれない。 「翡翠さん!」 衝撃波を受け、身体が麻痺したかの様に地に片膝をついたあひるを見て即座に今度は三郎太が聖神の息吹を使用する。 体力の回復を行う要であるあひるを、麻痺させる訳には行かない。 三郎太の想いが届く様に、身体に巣食っていた毒ごと、あひるを苦しめていた麻痺が癒される。 ● 「歴史に名高いジェームズ・モリアーティも案外粗雑なものだ……このような獣を嗾けるだけで監査役もいないとはな。だが、確かに油断ならない相手だ」 的確に、狙うべき相手を定め連携して襲いかかる。 其れにシルバーソーンに関しても厄介だ。 真独楽一人で、抑えられるかどうか……。 (最悪の場合、俺が翡翠や他の者を庇う手も想定しておくべきだな) ディフェンサードクトリンやオフェンサードクトリンで仲間達に、リベリスタ流の的確な連携を見せつけながらリオンはそんな事を考える。 「ソニックドッグ、厄介な相手だ」 だが、回避ならばこちらにも分がある、と流水を思わせる動きでソニックドッグの衝撃波を小雷が躱す。 「其れに、そういう技はお前達だけのものではないぞ」 斬風脚。 風を裂く小雷の鋭い蹴撃が、ソニックドッグにお返しと言わんばかりに叩きこまれた。 「俺はまだ新米でバロックナイツと戦った経験は無い。 でも、ここに来たからには自分の役割くらい果たしてみせる!」 自らの出来る最大限の役割を果たす。 ユーグの力が、仲間達に小さな翼の加護を授ける。 「可愛い顔して、エゲツねぇ……」 雪緒の脳裏に浮かぶのは、シルバーソーンの攻撃だ。 まるで、周囲の全てを飲み干す大樹の様に自らに這いより締め付けた触手は恐ろしい力を持っていた。 「でも、どんなに見た目が人間離れしてたって俺ぁお前のことを倒すぜ。そンでかわいいって何回でも言ってやる! あ、シルバーソーンたんだからシルたんって呼んでもい……わっと!?」 自らに襲いかかるソニックドッグに、魔落の鉄槌を叩き込みながらそんな事を雪緒が呟く。 キャウン、と子犬の様な鳴き声を上げたソニックドッグの一匹。 そのままピクピクと小刻みに震え、やがて動かなくなる。 「可愛くなんて、ありません……こんな、姿……」 人間として、余りに歪な……異形。 「怖く、ないのですか?」 「全然こわくなんかない! アナタだって、ヒトが作ってモノなんだから」 どんなに強くても、畏れは無い。 何度も何度も引きちぎられながら、真独楽がシルバーソーンを呪縛すべく気糸を放つ。 縛り上げる気糸……否、真独楽の絶対に負けないという意思がシルバーソーンの動きを呪縛する。 「サンキュ真独楽! 此処が攻め時だ!」 ニッ、と勝ち気に笑う秋火が多数の残像と共に、傷ついたソニックドッグを屠る。 「やめて……! そんなに、戦いが楽しいんですか?」 「違う! シルバーソーン、君は無闇に人を殺すのはしたくないと言ったな? ボクもそれには同感だ。無闇に人を殺したくは無い、だが!」 真独楽の気糸による呪縛で動けぬままに仲間を一匹、二匹……と葬られたシルバーソーンに小太刀を向け、秋火が言い放つ。 「君達がこのまま生きていたらどの道その『無闇な殺生』が行われるのだろうな。それは君達も望まないのだろう?」 だから、此処で消す事にすると。 それはまるで、秋火自身に言い聞かせる様だった。 「この子達はあなたのペットかしら? ちょっと、凶暴すぎるんじゃない? 良く訓練されてるみたいだけど……怪我させちゃう子は、よくないんだぞ」 シルバーソーンは抑えたものの、依然続くソニックドッグの猛攻で傷つく仲間達を癒やす為にあひるが聖神の息吹を使う。 そんなあひるを狙った攻撃は、彼女を庇う様に割り込むリオンによって防がれた。 「俺の事は良い……それより、攻撃の手を緩めるな」 「ええ、その機動力……削がせて貰いますよ。プロアデプト三郎太、参りますっ!」 複数のソニックドッグへ三郎太が気糸を放つ。 (狙うは、彼等の脚部!) 全ての気糸が、三郎太の頭脳と演算能力によって正確にソニックドッグへの脚部に叩きこまれ致命的な一撃を与える。 一体一体にトドメを刺すのではない。 全体的に敵の力を削ぐ事によって味方がより有利に戦える状況を作り出す。 それこそが、プロアデプトたる三郎太の戦い方だ。 「ボクも出来る限り足止めをしますっその間にみなさんでっ!!」 三郎太に頷く様に飛び出した小雷と雪緒が、同時に魔落の鉄槌と業炎撃を動きが鈍ったソニックドッグに撃ち込む。 「俺もイージスの端くれだ。そう簡単に倒れるつもりはない……!」 戦闘を続行するよりも、本部へ向かう事を重視すべきと判断したのか駆け出したソニックドッグの前に立ちふさがったユーグが至近距離で、衝撃波を食らう。 「ここから先は、通さないし誰も殺させない……必ず、だ」 積み重なった傷と、衝撃波で限界寸前だった身体が崩れ落ちそうになる。 だが、不屈の心が運命に愛されたユーグを奮い立たせる。 ● 「許さない、皆を……許さない!」 仲間を次々と葬られ、激昂したシルバーソーンが呪縛を引き千切り両の触手でリベリスタ達を絡め取る。 「皆……皆、私の家族なのに……こんな非道い事、許さない!」 凄まじい力が込められた触手がリベリスタ達を締めあげ、コンクリートの地面に叩きつける。 「かはッ……!」 クリーンヒット。 叩きつけられた衝撃で、小雷の意識がそのまま闇の中に沈んでいく。 「くそっ、小雷!?」 途絶えかけた意識。 だが、運命を掴みとり寸前で踏みとどまった秋火が隣で気絶している小雷に駆け寄ろうとする。 「気絶しているだけだ。それより、早く残っている者に回復を回せ!」 小雷を心配する仲間達に、自身はあひるを庇える様に位置取りながらリオンが指示を送る。 「みんな、戦ってるんだ……あひるだって、やれるんだって……信じたい! たくさんのものを、守る為……! 絶対絶対、負けないから! だからみんな、立って!」 「ボクは、いや……みんな、まだまだ寝ているわけにはいかないのですっ」 直ぐに、あひるや三郎太が聖神の息吹を以って残った仲間達の傷を癒やす。 「家族が殺されて怒れるんなら、そもそもこんな事すんな!」 残像達と共に、今度はシルバーソーンごと残ったソニックドッグへ傷ついた身のままに秋火が斬りかかる。 即座に迎撃するかの様に放たれた衝撃波に秋火の分身がかき消されていく。 が、残った分身と共に全てのソニックドッグを纏めて斬り刻む。 全てのソニックドッグが倒れ、残ったのはシルバーソーンただ一体! 「悪い子は、まこがお仕置きだよ!」 更に、もう一度行動を制限すべく真独楽が気糸を放つ。 が、家族と呼んだ者を殺された怒りからか、直ぐに難なく引き千切られ呪縛は叶わない。 それでも、ダメージは確かに蓄積している。 「悪いけど、俺は迷わないよ……やらなきゃ、やられるのは俺達だから」 ユーグが渾身の力と共に、ヘビースマッシュをシルバーソーンに叩きこむ。 「そいつ等、家族だったんだな……悪ぃ」 ユーグに続く様に、シルバーソーンの間合いに滑り込んだ雪緒がバツが悪そうに、呟いた。 謝った所で、何かが変わる訳ではない事は雪緒とて、理解っている。 「その姿、その声、俺がしっかり記憶しとくから安心しろよシルたん!!」 手に構えたブロードソードとスモールシールドを宙へ投げ捨て、飛び掛かる。 放られた武器。 其れに目を奪われたシルバーソーンの目にしかし映ったのは、雪緒が大上段から放った神聖なる一撃。 「ッ……」 グラリ、と雪緒の魔落の鉄槌をその身に受けたシルバーソーンの華奢な身体が揺れ……何かを呟きながら、その場に崩れ落ちた。 ――ごめんなさい。 「なあシルたん、お前……やっぱこんな事、しなきゃ良かったんじゃないのか」 凡そ、声とは程遠い小さな小さなシルバーソーンの最後の言葉を間近で聞いた気がした雪緒が、もう動かなくなった其れの髪を優しく撫でる。 (約束したもんな。お前の姿も、声も、俺がしっかり記憶しておくから) だから、安心して眠れよと雪緒が心の中でシルバーソーンに思いを馳せた。 「さようなら、人ならざるものよ」 満身創痍の身体を引きずりながら、秋火は別れの言葉を告げる。 ユーグもまた、心のなかで出会ってしまった哀しい敵達への黙祷を静かに捧げていた。 けれども、何時迄も立ち止まっている暇はない。 この戦場における戦いは、リベリスタ達の勝利に終わったが他もそうとは限らない。 倫敦を覆う霧が、晴れるか否か。 別の戦場で戦う仲間達の安否を祈りながら、リベリスタ達はその場を後にしたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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