●一事が万事 霧の都ロンドン。神秘に於いて多くの著名を輩出し、尚深い神秘と銘打たれた霧をかきわけ悪を屠る組織が、『スコットランド・ヤード』。悪として冠たる組織が、『倫敦の蜘蛛の巣』である。 この二者の拮抗はある意味、霧の中を歩くが如くに手探りでの暗闘が続くものとして神秘界隈では理解されていただろうが……それは、たったひとつの要素で呆気無く覆された。 ロンドン警視庁・地下二層。 警戒を続けていた『ヤード』のリベリスタ達の前に、唐突に闇が滑り落ちた。 重い水音を立てて現れたのは、手だ。液体のように流動的な姿をしながら、しかし内包する形状はあらゆる生物の手を模しつつ原形が定まらない。 それがエリューションであること、恐らくは最近巷間を騒がせる『キマイラ』――拮抗に楔を打つ存在――であることも判断出来た。 「ふざけやがって……!」 そう、巫山戯ている。『ヤード』の本拠地に直接、エリューションが攻め入るなど常識的ではない。即座に打倒しなければ、危険は増すばかりだ。 心からの罵倒と共に吐出された銃弾が、エリューションを繰り返し貫通する。射撃力に長けた彼の攻めを受け、無事でいられる筈がない……果たして、それは分離した。 それも、男には織り込み済みだ。不定形ならば分裂・再生の類を想定しないようでは三流のままだろう。つまり、面制圧。分裂した分、各個のリソース量は減少する。 全体攻撃に頼ることで、ある程度の殲滅速度を保つことは可能……で、あるはずだ。 あるはずだった、というべきか。 セオリー通りに動いた彼の判断は、しかし『常識外のごった煮(キマイラ)』の前では何ら意味のない思考であったことを、数分後に思い知らされることとなる。 ●無減増殖 「『エリューション・キマイラ』。君たちの中の多くが、一度ならず接している可能性のある……まあ『六道の姫君』の最高傑作です。倫敦に渡った彼女とその技術は、『どうやってか』さらなる躍進を遂げ、我々の知る以上の精度と能力を獲得しています。結果として、これらは倫敦を闊歩し、神秘事情の均衡を崩している」 モニタに写された情報を元に、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)は説明を続ける。『強化型キマイラ』の引き起こした事件はアークの知るところでもあるし、バロックナイツが背後に関わりがあるなら尚の事、『ヤード』がその手を借り、『キマイラ』の尾をつかもうとするのは当然の流れである。……だが、一手早いのは相手の方だった、という不運が起きただけだ。 「現状はあまりいい状況ではありません。地下鉄、および市街地で戦闘が発生しているのもですが……本拠地であるロンドン警視庁地下への侵攻が同時に発生しています。君たちには本部第二層の迎撃に向かって頂きます。辛うじて『増殖型』エリューションである、ということだけは判明していますが……何分、万華鏡が使えない為情報が少ないです。その中での最善を、期待します。尚、今回は宮実君も同行しますので、よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月21日(土)22:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 充満している。 死の匂い、夜の匂い、闇の匂い、血臭を纏った霧の匂い。 霧の都倫敦は、今正に最悪の状況を迎えつつあった。その都市を守るリベリスタたちの本拠地を含め、だ。 「折角の海外ですのに……」 「観光気分なのはいいが、ヘマはするなよ?」 常ならば、恋人たちを受け容れる観光地としての役割は十二分に果たせようが……要所要所をエリューション・キマイラに占拠された現状は観光に適さないどころか、彼らの尽力を要する状況ですらある。 『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)の感傷も尤もだが、恋人のそれを十全に受け止めてやれない点も『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)には存在する。 現状は逼迫している。倫敦の混乱以上に、彼らアークのリベリスタにとっての切り札たる万華鏡が通用しない海外というのは、それだけで十分な対策を練られないことと同一であるからだ。 厄介であるが、前例が無いわけではない。 「いつも思うんだけど、フィクサードってエリューション引き連れてなんとも思わないのかなっ」 自分は絶対嫌であると嘯く『アメジスト・ワーク』エフェメラ・ノイン(BNE004345)を始めとする異界の住人を受け容れるにあたり発生した一連の出来事も、万華鏡の補助は殆ど期待できない場であったことは事実である。ゆえに、彼らはその厄介さを十分に理解している。した上で、戦いに挑むのだ。 「さぁ、どうだかな。『俺たちとは関係ない』んだから答える義務もない」 彼らに、しかし多くの思慮を割かせるほどの余裕はこの戦場には存在しなかった。あったとして、それを切り離す程度には、銃声ひとつは大きな状況変化だ。 理由は明白、油断なくリベリスタ達に銃口を向け、或いは刃を握るフィクサードの存在と、その間に割って入る様にして存在するおどろおどろしいキマイラの存在が……それに対する感情が、それを許さないからだ。 「『倫敦の蜘蛛の巣』…………!」 「落ち着いて、さっきの指示通り動いて。ボク達がちゃんとやるから」 歯ぎしりと共に杖を強く握り、親の仇を殺さんとする勢いで憎悪を満たす『Rainy Dawn』兵藤 宮実(nBNE000255)の言葉を遮るように前に出たのは、『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)。“ストライカースーツ”に身を包んだシルエットはその性差を感じさせないものだが、キマイラが一体へ向けられた戦意と自らを包む速度の加護は、その程度が些末事であると言わんばかり。そして、いつも通りであった言葉が宮実の血を一瞬で平時のそれまで冷まし、正しい判断へと導いたのも事実である。 「ハードルは高い方が、達成した時の気分は最高ってもんだよなぁ」 同じく前に進み、不可視の翼を背に素早くキマイラの一撃を受け流した『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)の表情は異常なまでの喜色を湛えている。 戦うことに自らの多くを割いて来た彼にとって、先の見えない戦いも、正体がはっきりしない、加えて低からぬ能力を持ちうる相手との戦いは自らを高めるスパイスでしかないことは明らかだ。 目の前のキマイラの能力は立ち会っただけで理解できる。容易な相手ではない、ということが。だがそれが如何ばかりか。倒せば同じことなのである。 「情報処理速度向上、超頭脳演算開始……皆様、指揮はお任せください」 「霧の都を騒がせる逆徒『倫敦の蜘蛛の巣』よ……我が自らの手で、貴様達の格を見極めてやろう」 「箱舟の連中は態度がでけぇでけぇと聞いてたがマジだぜこりゃ。飯が美味え連中は自尊心に栄養が行くのかね?」 「そういう貴様等は頭が高いぞ」 後方で指揮を兼ね、状況判断に注力することを選択した『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)を視界の端に収めた『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)は、眼前のキマイラの攻撃を凌ぎながらも、視線は迷いなくフィクサードに向けられている。 当然、その視線は彼らにとって見れば不遜であり一定の脅威……刃紅郎から発せられる過剰なまでの威圧と“皇錫・獅天降武”の為せるところだろうか。 他人を強引にでも振り向かせ、注目させる圧力はそれだけで戦場を支配する徒花だ。無視できるものではない。 加えて、嶺の存在が大きい。『上位種』の多くは、外見によってその種族特性の進化を見破るのは容易ではないことがざらにある。が、彼女に関してはその翼こそが上位種たる証拠であり、威嚇材料となる。 限界を超えた状態は、それだけで既に脅威となろう。 そんなものを擁する時点で論外だが、そういう意味に於いてならこの場の全員がそれ相応であるし、加えて何より。 「ひょっとしてこういう特性の敵には泣きを見るタイプと思いました?」 「……厄介だぜ、こいつぁ」 自己強化を施したフィクサードの一人、恐らくはリーダー格であろう男が息を呑む。事実、彼は詳しいのだろう。リベリスタ側の実力とその名について。『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)という個人について。 彼女のみを想定したわけではないにしろ、この戦場に放たれたキマイラの特性は、対多数戦に特化した革醒者を対策の対象としているのは事実である。 数がいようと増えるたびに潰されたのでは意味がなく、後衛を守りきれぬ状況にさえすれば彼らは自ずと陣容にほころびが生まれる。それを想定したし、そのせいで第二層の『ヤード』は壊滅同然に追い込まれた。 だが、この人物の捉え方はまるで違う。全て狙うことに注力しないだけ、マシ。まとめて倒すという原則ではなく、僅かでも狙えていれば問題ないという例外に至った現状を何より優位と考えるこの思考は、戦場において至極合理的ではあったのだ。 「……イタダキマス、キマイラさん」 真咲の声のトーンが下がる。 明白な戦闘を期した彼らの前進を、しかし倫敦の悪意は額面通りに受け取らない。 覚悟をして対策をして行動に移したのだ。逃げるには、まだ早い。 ● 「ふふっ、櫻霞様から頂いた新しい弓のお披露目ですわ」 「……気を抜くな」 “シュヴァルツァーフォーゲル”を手に笑みを浮かべた櫻子の戦意は高い。 だが同時に、彼女自身がその役割を失念しているわけではない。攻めに転じる気構えはあるが、それ以上に戦線を維持することが自分にとっての挟持であり、櫻霞に対する思いの発露であるとも言えるだろう。 それは櫻霞も理解しているが、やはり楽観的とも取れる恋人の言葉は何処と無くやきもきさせられても致し方ないだろう。尤も、彼女がそこまで容易に倒れる手合であれば、過保護にするか側に置かないか、その何れかだったろうが。 両手に構えた“ナイトホーク”“ブライトネスフェザー”の二挺からあらん限りの弾丸を吐き出しつつ、櫻霞はフィクサードの同行を注視する。キマイラを引き連れ、撤退を重点に置いた上で動く彼らだが、本部に乗り込んだ以上、与し易い相手ではあるまい。 その意思が届いたか、否か。モニカと櫻霞が放つのが銃弾の驟雨であれば、あちらが仕掛けたのは銃弾による火炎弾の如き全体火力。総合力がどうあれ、単体の火力としては油断できるものではない。 爆炎と銃撃が僅かながらに第二階層を照らす中、刃紅郎は自らに肉薄する剣士を視界に収める。自らの存在に圧されながら突貫する姿は猪武者のそれであるが、さりとて彼は慢心も油断もしない。皇錫を振るって放たれたエネルギーの奔流と男の渾身の一撃はほぼ同時に放たれ、両者を大きく弾き飛ばした。 威力の差は明白であり、実力差が如実に現れる結果となるが……それでも、男の口元には笑みが浮かぶ。 「狂え、お前は『そういう』役割じゃないだろうが……!」 「邪魔者なりの挟持か」 男の言葉を待ってか否か。急激にその全長を伸ばした腕はエフェメラの腕に絡みつき、その弓へと届かんとする。 射ることよりは呪力の拡張を主眼に置いたそれが奪われることは、彼女の戦力を大きく削ぐには充分だ。届かずとも、その能力に多少の瑕疵を与えることが目的であれば、それで十分とも言える。 ……だが、狙うならば相手が悪い。 「ボクを狙ったって、無駄だよっ!」 何故ならば。 彼女の役割は攻撃や回復などよりも優先して――『味方の戦力強化』が主体であるからだ。 エフェメラから猛へ、『キィ』を通じて神秘の加護が注ぎ込まれていく。眼前のキマイラの一撃を威力の観点で無に帰し、より前に出ることを許容する加護。正面切って戦う彼には、うってつけといえるだろう。 「生憎とそこはギリギリ俺の脚の届く範囲でなぁ! 足癖は悪いぜ、俺はよお!」 「テメ、この……」 「不用意に動けばどうなるかなんて、考えるまでもないでしょう? 警戒なさっているにしては軽率ではないです?」 刃紅郎と打ち合った剣士が踏みとどまるところへ、猛の遠間からの一撃が叩き込まれる。悪態をつく間も、自己回復に意識を回す間も与えられないのは、嶺の“夜行遊女”が一紡ぎが彼の芯を貫き、明確な阻害を行っていたことに尽きる。 当然、それは彼一人を照準したものではなく、他のフィクサードをも巻き込むことを狙ったもの。キマイラの行動を適正化することと観測を主眼に置くであろう彼らを御すことは、事実としてリベリスタ側にとってそう難しいことではない。「彼らだけならば」。 「高みの見物、なんて許す訳ないでしょ?」 「そりゃぁ、そうだろうよ。俺達だって動きを止めてハイ終わり、じゃ済ます気は無ぇけどよ」 一人ひとり、一秒でも早く戦闘不能ないし撤退に追い込むためには各個撃破が最善である。故に、真咲が先の剣士を狙うことは必然であった。最後衛を務める男が、リベリスタ側の射程圏にありながら遮蔽物にすら身を隠さず不動であったのは無根拠な自信ゆえか。或いは、キマイラに対する信頼あってのことか。 彼の言葉の意味を真咲が理解するより早く、ブロックしていたキマイラが腕を伸ばし、後衛へと襲いかかる。 猛が対応しているキマイラに関しても、同じく。正面の敵の戦いぶりから学んだ訳ではなかろうが、行動原理が僅かに切り替わったようにも思われた。 「皆さんっ!」 焦りを交えた声は宮実のもの。しかし、彼女も照準されている以上他人の世話などしている暇は無い。櫻子の放つ回復に合わせるように、自らも癒やしを届けなければならない。 「そう易々とやらせてたまるか」 「やられてくれるたァ思ってねえよ。だけど、お前らの足を止めることくらいワケねえだろ、ってなァ……?」 リーダー格の男が杖を振るい、癒やしを運ぶ。ギリギリの際で倒れずに居た男が、僅かながら息を吹き返す。後方に散開したフィクサード達に、負傷は多いが油断は無い。 「気合充分なようで非常に面倒ですね、実に面倒くさい……ところで」 “殲滅式自動砲”を構えたモニカの目が細くなる。視界の中心にとらえたのはフィクサード。視界の端、僅かに写すのみにとどめたキマイラは二の次だ。 「キマイラで節約した分より全体攻撃が向けられるのは誰でしょう?」 「だから手前は厄介なんだよ、くそっ」 モニカの腕とて、キマイラの一撃を受けなかった訳ではない。掴む手に影響があり、動きを鈍らせたのは事実だ。だがそれが如何程のものか。能力が多少影響を受けたところで、やることなど変わらないではないか。 「立ち尽くすしか能が無いなら去れ。格を見極めるには不足もいいところだ」 「言ってくれるぜこの御大将は……こっちだって精一杯だってのによォ!」 互いを弾き飛ばし、距離が空いたところで絶対的な火力と射程の利は明らかに刃紅郎に軍配が上がる。男の目的が積極的な撹乱である以上、初動で大きな混乱を狙わなければ意味が無い。再びの一撃を受け止める度量は、その男には無く。 倫敦派の一団の行動は、どこまでも『中途半端』であったことは決して否めないだろう。 同時に、彼らの撃退の遅延に効果的に作用する筈だったキマイラは……一定の戦果を上げているのは事実だ。事実だが、それ以上にリベリスタ達が上手であるだけのことだ。 「鶴は熊すら穿って殺す鳥。この程度の異形で墜とせると思いましたか?」 「ちったぁ錯乱してくれりゃ可愛げあるってのによ……ホント洒落にならねえぜ、嬢ちゃん方は」 よろめくように一歩引き、その足を影に埋めようとリーダー格の男が動く。エフェメラの火炎弾を始めとする面制圧が『キマイラをも狙いながら』放たれるが、彼を捉えるには僅かに、遅い。 他の三名が或いは息絶え、或いは立つことも出来ぬままの状態であることなど構うこと無く、キマイラ達は枷を外されたかのように、ずぶりと音を立てて増殖を開始した。 ● 「今の今までよくまあやってくれたもんだが……此処からはしっかり反撃させて貰うぜ!」 猛の“白銀の篭手”が唸りを上げてキマイラへと叩き込まれる。一撃一撃の動作は一見して雑、動きに規則性など無いようにみえる。だが、その動きが次第にキマイラの挙動を制限し、反撃の暇を与えず仕掛けられているのは明らかだ。 最後の一撃を受けたそれがべちゃりと地に落ち、分裂を開始するが彼はそんなものを気にも留めない。 「結局の所、ダメージを喰らうほど攻撃が強力になっていく。……それだけでしょ?」 「幾つに増えようが、言葉そのまま『手数が増えた』程度に過ぎん」 「俺の攻撃が届く範囲に居る奴は、全部ブッ飛ばす!」 真咲、刃紅郎ら前衛の言葉が彼らの総意の代弁である。数が増え、受ける攻撃量が増え、ダメージが蓄積する。そんなものは基本、どの戦いでもありえることだ。 癒し手が居なければ問題は大きかったろうが、こと此処に至って優秀な癒し手が一人、補助となる者が二人いる現状で何を躊躇うことがあろうか。 「まあどれだけ増えようと問題はないが、目障りだからさっさと落ちろ」 (櫻霞様に枷を与えるようなことは、許されませんわ……ですから) 櫻霞を、櫻子を、宮実をモニカを毒手が襲う。前衛で対処しきれない程に溢れたそれらは執拗に全体を痛めつけるが、それが却って櫻子の戦意を高揚させているなどという冗談は無い。 仲間に、いや、櫻霞に枷を嵌め優位に戦おうとするなど許せない。枷を外し、癒やしを届けるのが自分の役割なのだ。 「全部に撃っときゃ一発ぐらいはクリーンヒットが出るでしょう」 対して、モニカなどは気楽なものだ。数多のサイを振り、出目が高ければ儲けもの。振り直しなど幾らでも利く状況で、悲観的になる理由など存在しない。彼女にとって、寧ろこの状況はある種の安堵と共に語られる可能性すら、存在する。 「ジェームス・モリアーティって人が凄い人なのかもしれないけど、力押しでくるなら負けはしないよっ!」 エフェメラも、然り。 仲間達の全力を信頼した上で、彼女の神秘は戦局を僅かずつ押し返す糧となる。動きを封じ、或いは鈍らせるキマイラの術だが、痛撃は愚かその攻撃の一部を無効化してしまうようであれば、それだけでリベリスタの優位は大きくなる。リソース差を覆すほどに、だ。 真咲の『ありったけ』が宙を駆ける。慮外の得物から放たれたとは思えない光芒が第二階層を照らした時、そこに残されたのはキマイラではなく、リベリスタ達の勝ち誇った姿だった。 「ふふ、ゴチソウサマ」 ● 「お仕事は終わりましたですぅ~……」 仕事は終わった。つまり、櫻子にとってはこれから仕事以外のことがあるべきだ、ということを暗に伝えている。だが、恋人はそうではない。捉えたフィクサードを逃さぬよう、また逃れた一人が再襲撃をしかけぬよう警戒するのみだ。 「遠征で旅行気分なのはいいが、もうちょっと緊張感を持てお前は」 鼻をつままれた彼女がどのような反応を示すかは定かではないが、彼は、そして刃紅郎は明確に、この戦場の厳しさを垣間見た。 『万華鏡がない戦い』は、これほどまでに……戦力差をものともしないほど、面倒なものか、と。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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