●つまり、全員キャスターのついた椅子に座ったまま戦う依頼 一般的なサラリーマン男性二人が、キャスターつきの椅子に座っていた。 両手をお膝の上において、企業面接でも受けてんのかってくらいお行儀良く座っていた。 「課長、ぼく気づいたことがあるんですが」 「君もかね。私もいま気づいたことがある」 二人は同時に地面をキックすると、よく磨かれたであろうタイルの床をすいーっと後ろ向きに滑っていった。 「この椅子、お尻から離れませんね」 「いやビミョーには離れるんだが、やっぱ離れんな」 サラリーマンの名刺代わりとも言われる磨き抜かれた革靴を地面につけ、キュキュッという小気味よい音とともに止まる二人。 更に身体をねじるように地を蹴ると、二人同時にくるくると回り始めた。 「ときに佐藤くん、私ら以外にも同じような連中がいないかい」 「課長もお気づきになりましたか。実はぼくもずっと気になっていて」 キュッと停止する二人。 ついでに椅子の前後を反転させるような、なんかお馬さんっぽい座りかたに変えてみる。安定性はあがるんだけど速度が出ずらそうな体勢だった。 「あれ、どう見てもお化けだよね」 「そう見えますか課長。実はぼくもうすうす……」 そんな二人の前の前には、トゲつきの肩パッドをしたモヒカンの男たちがずらりと並んでいた。 手に斧だの火炎放射器だのという世紀末的な武器を持ち、白目をむかんばかりにテンションをあげはじめる。 「「ヒャッハー、椅子ダアアアア!」」 ●そういえばキャスター椅子で素早く坂を下りきるという競技が世界のどっかにありましたね 「みんなみてみてこうするとすっごく早――ぎゃ!?」 キャスターつきの椅子に跨がったアイワ ナビ子(nBNE000228)が、目の前を高速ですいーっと横切った。 横切って、段差に躓いてすっころんだ。 顔からいった。 白目を剥いて動かなくなった。 ……いつもの光景だった。 なんかナビ子が説明するにゃ、入った者は椅子から立ち上がれなくなるという地味なアーティファクトができちまったらしい。地味は地味なんだが、馬鹿にしてると今のナビ子みたいになるのが丸わかりなので、ここは真剣に聞いておきたいリベリスタである。 「キャスターの接続部分に蝋ぬるじゃないですかー。めっちゃすべるじゃないですかー。重心ズレて余裕でコケるじゃないですかー。あれ痛くないですかー?」 真面目に聞いて損したと思ったリベリスタである。 まあこのアーティファクト自体は簡単に壊せるんだけれども、問題は住人のほうだ。 なんでも最近ブイブイ言わせ始めたフィクサード集団『出巣却巣汰阿』が根城にしちゃってるらしく、彼らを倒さんことにはしょーがないのだ。 「じゃあ、後は任せますんで! よろしくですんで! うぃっす! ちょりっす!」 というわけで。 ナビ子は椅子ごと横転したまま、みなを送り出したのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年12月16日(月)22:49 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●二頭身にデフォルメされたリベリスタたちが椅子でくるくるしながら通り過ぎていくOPムービーを考えたので誰か作ってくれませんか。 「ヒャッハー!」 「ヒャッハー!」 「「ヒャーッハー!」」 トゲ付き肩パッドを装備した世紀末仕様の軍団『出巣却巣汰阿』。 彼らが元気に国道沿いを椅子でシャーってやりにいこうとしたその時! 「クリスマス、プレゼントは……」 いかがわしいコスプレショップに売ってそうなナース服を身に纏い。 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)が丸椅子に腰掛けたまますいーっと滑り込んできた。 足を組み、ギターを抱え、フォークソングでも歌うように口ずさむ。 「LPが……イイナ!」 がらがらと音を立てて運ばれてくる大型ディスプレイ。 右上に『ビデヲ』を表示されてるとこからして中国製くさいがまあいいとして。 それを運んできた赤いスーツの業者さんが眼鏡をくいってやりながら言った。 「杏さんから追加発注あったんですけど、今回の描写両をすべてそちらにさく形でいいですか。五千文字ほどあるんですけど」 「いや、いいわけないだろ」 同じく丸いすに腰掛けてすいーっと滑り込んでくる『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)。 「杏の願望はリクエスト制度が実装されるまでとっておくとして、今はこいつらだ! くらえハイスピードクロスアタック!」 説明しよう! ハイスピ以下略とは郷が丸いすの上で仰向けになり頭上で腕を交差させることにより天空ペケ事件を再現するという恐ろしい必殺技なのだ! 椅子の上でそっと前屈みになっていた男たちにはきついおしおきとなるだろう! 「おおっと今日は調子がいい。コンボを繋がせてもらうぜ! 新必殺ハイスピードトルネードアタック!」 説明せねばなるまい! ハイス以下略トルネ略とはクロスなんちゃらの最中に横回転をかけることでベイブレードさながらの回転アタックを繰り出すことができるという恐ろしい必殺技なのだ! ベイブレードがアニメ終盤には星を破壊する威力をもつことからも分かるとおり、この技の破壊力はとてつもなく高い! 具体的には……! 「オッ、ヲゥエ……うぷ……めっちゃくちゃ、酔う……」 壁によりかかって死んだ目をする郷。 「ったーく普段から回り慣れてねーやつはこれだから困るぜ。見てな!」 ノーマルな椅子でシャーっと飛び込んでくる緋塚・陽子(BNE003359)。 構えた鎌もそのままに、『出巣却巣汰阿』たちの間をひゅんひゅんと駆け抜ける。 その際に激しい横回転をかけることも忘れない! まるでオフィス内を椅子に座ったまま縦横無尽に駆け回るOLのごとく! 「ヒャッハー! まさか俺たち以外にもキャストレーイサーがいるとは思わなかったぜえ!」 「んぬう、これは思わぬ収穫。恐らく椅子も上物に違いあるまい。貴様らの屍からはぎ取ってくれようぞ!」 「「ヒャーハー!」」 中でも特にいかつい男が陽子の鎌を斧でもって受け止める。 自らも激しい回転とキック力をつけているからか、勢いはぶつかり、互いに大きく距離を離した。 生まれるエアポケット。 突如降り注ぐスポットライト。 不思議と開く床のハッチ。 そしてせり上がる『勤倶雄武却巣汰阿』降魔 刃紅郎(BNE002093)。 デンドンデンドンデンドンデン(パーッパラーパーッパラーパーッパラー)というBGMと共に現われた刃紅郎……いやさ刃紅郎様は黄金の玉座に腰掛けていた。しかもキャスター付きである。 「……我、君臨」 「ヒャッハー、見かけだけ派手でも意味ねーぜ!」 ここぞとばかりに周囲を取り囲む『出巣却巣汰阿』火炎部隊。ちゃんと描写してないけど、こいつらの連携機動洗練されすぎだろ。全部でひとつの生物かってくらいだ。 「丸焼きにしてやるぅ!」 刃紅郎様へ吹き付けられる大量の炎。 登場してから数百文字でログアウトしてしまうのか!? BGMまでつけたのに!? だがそこは百獣の王刃紅郎様。焼けてはがれた黄金の外装の内側より、黒い椅子が現われた。 「あっ、あれは!」 「知っているのか『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)!」 「っていうかサラっと混じってきたなこの人!」 椅子をがたがたさせながら身を乗り出すユウ。 「人間工学をもとに作られた最強のシステムチェア――『焔菩禰』! そのお値段は二十五万三千九百円!」 「ナァニィ!?」 「ヤッチマッタナァ!」 刃紅郎様へと殴りかかる二人組の男たち。 「男は黙ってぇ!」 「ニトリの椅子!」 「ふうむ……」 それを柔軟なリクライニング機能で優雅にかわす刃紅郎様! 「おっと、つい腰の動きを堪能してしまった。長時間椅子に座ると足がむくむと利くが、それは斯様な感覚なのだろうな」 「オ、オノレェイ……!」 ギリギリと歯ぎしりする男に、すぱーんとワンショットキルかますユウ。 炎タンクに引火したのか知らんが男は爆発を起こしてひっくりかえった。 その間ユウは椅子にお馬さんみたくまたがり、背もたれに銃を乗せることでバランスをとっていた。これ、カメラとかでやるとすごく安定するのよね。水平移動する動画とかにはかなり便利なテクなのよ。 「『出巣却巣汰阿』……公道を椅子で爆走兄弟レッツアンドゴゥするとは不届きな人たちですね。続編における初代チームのしょぼさを考えたことはないんでしょうか……投石で方向転換て……」 「所で、部位狙いで戦闘状況が変わるってことになるとプレイングに必要な内容が無限に増殖していって最終的には完全なプレイングつぶしになるから、実は演出以上の効果は出しづらいらしいよ」 エチケット袋を抱えた郷がすいーっと寄ってきた。 「え、そうなんですか? じゃあ銃ハネられた時の対処とかって……」 「書かなくても一緒だったよね。場合によってはその部分白紙にしたのと同じ効果が得られちゃうよね」 そのまますいーっと通り過ぎていく郷。 話題がズレ気がしたが、それはまあよし。 「おおっと、もう始まっちゃってんの? この僕を抜きにして……キャスターバトルは語れないっていうのにね」 別方向のシャッターががらがらと開き、逆光を浴びながらあの男がやってくる。 F1的なミュージックを背に、肘掛けのついたリクライニングチェアーで現われた彼の名は! ZAKIOKA――岡崎 時生(BNE004545)! 「かつて峠のウルフと呼ばれ今ではオフィスのデスクワークをこなすこの僕に椅子をシャーすることで勝負を挑むとは……フゥッ、命が惜しくないのかなァ?」 とかいいつつ椅子の上で背もたれぎっしぎっしさせるだけで特に動かないザキオカである。 「さあ、オフェクリディフェクリからの、当たる気のしないアッパーユアハートをくらいな!」 「うわああこの人仕事しないディレクターの鏡みたいな奴だ!」 「はい3カメ僕からパンして二人にドーン!」 「カメラの動き操作すんな!」 大きく振り返ったカメラが写したものは、腕組みして並ぶ二人の少女であった。 かたやニトリで打ってる安い椅子。『究極健全ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)。 かたや小学校にある四つ足チェアー。アメリア・アルカディア(BNE004168)。 「ナァニィ!?」 「あんな椅子でどうやってシャーするっていうんでい! ニトリ椅子なんですぐに壊れるのがオチだぜ!」 「おとーさんが買った、三千円くらいの中国製チェアなんですけどね、大体一年で壊れるんです。この前半年で壊れて、保険期間だからって業者を呼んだんですけど、椅子一台直すのに二人も来たんです。絶対人件費赤字喰ってますよね。もう一人のひとって何しにきたんです。撮影?」 「そんなことは聞いていない。まあ動くならそれで……いや、それよりうぬはどうしたことだ。シャーどころか動くことすらままならんぞ!」 視線を向けられたアメリアは、黙って椅子の両端を手でつかむと、お馬さんに乗ってるときみたく前後に身体をがったがった揺すり始めた。 するとどうしたことか、とんでもねー速さで突っ込んでくるではないか! 「ヒィッ! なんだてめえは!」 「ただの小学生だ! 小学生ならこのくらい……みんな出来るぞ!」 とは言いつつも二人のやることってのはものすごい勢いで近づいてB弾幕とマジックアロー連射するっていうシューターのスコア稼ぎみたいな技だった。 「ひゃっはー、雑魚は挽肉なのですよー!」 でもって、そうやって倒した敵をキンバレイが光の無い目でめちめち踏み続けるという悪逆非道なプレイである。 焦りを顔に出すボスっぽい男。 「ええい、野郎ども! こんな奴らに後れを取るな! 血祭りにあげてやるのだ!」 「「ヒャッハー!」」 で、どうなったかというと。 「おべばぁ!?」 刃紅郎様のハードキャスターブレイクが炸裂し、モヒカン男は思いっきり転倒した。 「ちくしょう、椅子が……」 「自慢の椅子が壊れてしまったようだな。なに、保証期間があろう。何年だ?」 「ククク聞いて驚けメーカー保証に乗せて家具店特別会員特典で四年間の保証が付いてるんだぜェ!? こんな傷無償で直してテメェなんざ」 「12年だ」 「ヒョッ!?」 「我の保証期間は、12年だ」 「ひ、ひいいい!?」 破壊された椅子から転げ落ちるモヒカン。 「どうした、汗をかいているぞ。背中の汗にはメッシュ素材……いや、我の場合はファブリック素材であったわ!」 「ら、らめええええええ!?」 首ブリッジ姿勢で失禁するモヒカン。 椅子がすごいからなのか。 椅子から下りたが故のペナルティなのか。 それはわからんが。 「いい椅子は健康を変え。健康は人生を変える。椅子に金をかけずば、デスクワークの勝利にあらず!」 これだけは、確かなことかもわからんね。 「みろー、これが不滅のコントラ魂だー! こんなの絶対ゲリラ戦じゃないよー!」 うわーと言いながらすごい勢いでぐるぐる回るユウ。 インドラの矢をぶっぱしてる最中なので、見た目ちょっぴりパンジャンドラム(鼠花火のお化けみたいな旧イギリス兵器)みたいだった。 時折エアリアルフェザードかましてるので余計そう見えた。 そこへ火炎放射器で応戦するモヒカンたち。 「炎だったら負けねえぜ!」 「ヒーホー!」 「それ逆の人だヒホ!」 「ガタガタ言ってんじゃねー!」 高速回転しながら男たちを次々と切り落としていく陽子。 ぴぎゃーと言いながら倒れる男たちに、アメリアが無慈悲なトドメをさして回っていた。 椅子ガッタガッタさせながらである。 「よしよし、動くと撃つぞ! いや、撃つと動くぞ! あたしが!」 「ならばこれならどうだ小娘ェ!」 ヒョーゥとか言いながら斧を叩き付けてくる屈強な男。その名もボス! 名前まんまである! 「はうあ!」 案の定横からの衝撃に弱いガタガタ走法! アメリアは空中に放り出された……が、しかし。 「ドラマ復活!」 てやーと声をかけるやいなや、普通のキャスター椅子を召喚。すとんと座ると、地面を蹴ってボスから距離をとりつつ銃を思い切り乱射してやった。 「ぐぬう、小癪な……! 次こそひねり潰してくれるわ!」 「その前にあんたが潰れなさい。アタシのガーターベルトとその奥に、何の興味も示さないだなんてホモでしょアナタ」 「あの世界の男どもは大体ホモだ馬鹿め!」 「黙りなさい。ザキオカ、あれの準備を!」 「はい『スカイデブハリケーン』どーん!」 説明しよう! スイカデブなんちゃらとはザキオカが思いっきりリクライニングすることで自らを発射台として仲間を打ち出す捨て身の合体技である! 扱いとしては一応オフェクリにあたる! ちなみに当時サッカー部員たちが真似たスカイラブなんちゃらはうっかり外すと股間にスパイク靴が直撃する悲劇に発展することから今では禁止技とされているぞ! 子供にまねとかさせるなよ!? 「さあいくんだ杏く――ほんみょんぼ!?」 「すまんザキオカ借りるぜ!」 遠くからしゅぱーんと飛び込んできた郷がザキオカを台にしてジャンプ。 その際見事に股間をキャスターが通過していった。 「ちょ、ごめ、ポジ直すから待っ――ちゃんどんご!?」 「玉潰してやるわホモ野郎!」 続いて杏がジャンプ。轢殺されるザキオカジュニア。 「あ、あひい、だめなのお、ざきおか女の子になっちゃ――ぺよんじゅ!?」 「今夜は人肉ハンバーグですよー!」 ここぞとばかりに便乗するキンバレイ。 キンパレイ・ジャンプ。 ザキオカ・フランクフルト・クラッシュ。 完全に真っ白になったザキオカを背に、三人の男女がボスへと殺到した。 「なぬう!? 空中からの攻撃だとう!?」 郷キック。杏ギター。そしてキンバレイスタンプのジェットストリーム椅子アタックを食らって生きているものなどいない。 ボスは血を吐いてぶっ倒れたのだった。 くたばったボスをキャッキャしながら挽きつぶしてあそぶキンバレイを背に、杏たちは椅子をシャーってやりながらザキオカのもとへと駆け寄った。 「やったな、いい合体プレイだったぜ!」 「あんな手があるなら教えてくださいよ。私もやったのに」 両肩をぽんと叩く陽子とユウ。 そして。 「……し、死んでる!」 そう、ザキオカは真っ白になって涎をだらーんしていたのだった。 股間をじっと観察する刃紅郎様。 「うむ、命に別状はない。だが玉は……諦めるのだな」 「ザキオカ……」 「ザキオカ……」 うっと目頭を押さえる郷。 彼(のジュニア)にすがりつき、慟哭の声をあげたのだった。 「ザキオカアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 沈みゆく夕日。 椅子をがったがったさせるアメリアの影が、どこまでも伸びていた。 長く、長く。 どこまでも長く。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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