● ――――あなたの好きな色はなんですか? みつけたの。このモノクロームの世界に色彩の種を。この小さな存在達はどんな色をしているんだろう。 『ビジュツカン』で見たいろ? 『カンランシャ』のオレンジ? 『イロエンピツ』と同じ濃淡だったから、きっとこの子達には色があるんだって思ったの。 手の中に収まる小さな存在を握りしめて、白の少女は世界の果てに翼を広げて飛んでいった。 この世界には白の時間と黒の時間がある。逆にその二色しかこの世界には存在しない。 けれど、少女は知っている。 黒の時間から白の時間に変わる瞬間……朝日が昇る瞬間だけ世界の端に色彩が浮かび上がるのを。 ――――本当は近寄っちゃいけない場所なんだけど、その色を見るのが好きでよくあそびに行ってるんだ。 時計ガエルのマルコを連れて。少女の名前はリスティ・メイティ。 一度だけその有色の光の中に飛び込んだ少女は、違う世界(ボトムチャンネル)へ落ちてしまった。 たくさんの色とたくさんの人が少女を迎えて。今でも、彼女の胸に仄かな色を残している。 ――――『桃色の花』はあの木に咲いたのかしら。『ネオン』の灯りは綺麗だったわね。 「リスティ! 今度はどこへ悪戯しにいくんだい? 聖白老様に怒られたばかりなんだよ!?」 「だって、仕方ないじゃない。聖白老様のお庭のルシエトが今にも落ちそうだったんですもの。落ちて潰れるのは勿体無いでしょう? だから、私が代わりに切ってあげたのよ」 「それって、リスティが食べたかっただけだよね?」 「……マルコは要らないのね? この美味しそうなルシエト」 ルシエトはマルコの大好物。果汁がたっぷりで糖度が高い果物。これはあっちの世界では何色なのかな。少女は楽しげに嬉しげに思考する。 相棒を誂いながら、リスティは手の中の子達にもルシエトの身を分けてあげた。 握りこぶし程しかないこの子達を籠バッグに詰め込んで、少女は世界の果てを目指す。 「リスティ、その籠に入ってるのって、この前世界の果てに遊びに行った時に拾ったもの?」 「そうよ。拾った時は小石ぐらいだったのに、今は握りこぶしぐらいの大きさになったのよ」 マルコは籠の中を覗きこんで、小さな存在達を見つめた。 「可愛いでしょ」 「うん! リスティとは大違……いひゃい、いひゃいいい!!!」 少女は相棒の頬を抓りあげて睨みをきかせる。 「ほら着いたわよ」 「本当に行くの? 怒られちゃうよ?」 「……じゃあ、行ってきます」 「あ、ちょ! 待ってよー!」 世界の果てにある有色の中に飛び込んだリスティとマルコ、それに小さな存在達。 「ひょあああ! ……ゲロン!!!」 マルコの悲痛な鳴き声と共に、ボトムチャンネルに落ちてきた少女。 「あら、クッション君ありがと」 「僕はクッションじゃないよ!」 「籠の中の子たちは大丈夫かしら?」 「僕の心配は!?」 お尻で踏んだ相棒から、視線は籠の中の小さな存在へと移る。 「あれ!? 居ないわ!」 「なんだって!? もしかして、落ちた弾みで何処かに飛んで行っちゃったのかい!?」 「どうしましょう」 「どうしよう」 ● じっと、海色の瞳が巨大モニターを見つめていた。小さな存在を『碧色の便り』海音寺 なぎさ(nBNE000244)が凝視している。 「あ! すみません。あまりにも可愛くて」 画面に映しだされているのは、手のひらに収まるふわふわした生き物。 子猫や子兎の丸まった姿やまりもを連想させるそれはフォーチュナの心を鷲掴みにしたようだ。 この光に当たればふんわり暖かくなりそうな丸いフォルムが堪らない。 手に乗せれば極上の肌触りが約束されているだろう。なぎさの指先がぴくりと動く。 年頃の少女というものは往々にしてふわもふしたものが好きなのである。 「えっと、この可愛らしいアザーバイドを探してほしいんです」 「その、白い女の子とカエルっぽいのは?」 リベリスタが画面に映された羽の生えた真っ白の少女と時計ガエルを指さした。 「はい。この二人も一緒に連れて行って下さい。『ふわもふ』がどんな色か知りたいみたいなので」 つまりは、観光やお散歩をしながら小さな存在を見つけるお仕事だ。 彼女たちがボトムチャンネルに与える影響は無いのだという。 「私もお手伝いできれば良かったのですが――」 簡単そうな話ではあるが、戦闘能力を持たないフォーチュナの出撃は危険が大きい。 『ふわもふ』を探した後は、ディメンションホールへとアザーバイドを送って行けば任務完了である。 かくして、リベリスタとアザーバイドの共同戦線が開始された。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:もみじ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月26日(火)22:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 緩やかな日差しとアクア・ティントの薄い青空が少女の視界いっぱいに広がっていた。 眼下を見下ろすと煤けた色の町並みが広がっている。その中には緑も沢山あって様々な色彩の中でこの世界の人々は暮らしているのだ。 少女は見たことのある色に目を引かれた。灰色の羽と薄い青紫の髪が冷たい風に揺られている。 リスティ・メイティの白亜の瞳に写ったのは『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)だった。 「シエル、お久しぶりね」 「リスティ様とマルコ様。またおいでになられたのですね。嬉しゅうございます」 「私もよ」 にっこりと笑った少女をシエルは美術館へと誘う。中に展示されているのは様々な行相を描いた絵画。悟りを開いた高僧を描写したものらしい。 「この絵は地獄に堕ちた人達を助けようとしてるんです」 一つの絵の前に止まったシエルを少女はじっと覗き込んだ。 ――もっとも……私はその救いの手に縋ろうとは思いませんが 捻くれて居る訳ではない。しかし、自身を庇って旅立った人々に対しての立つ瀬、背負い込んだ業で三途の渡し船も沈んでしまう。 「それはそれで面白いかも……」 「シエル?」 シエルのラセット・ブラウンの瞳に一瞬暗黒が見えた気がしたが気のせいだろうか。 ともあれ地獄という場所に救いがあるのなら、充分苦しんだ人から救われて欲しいと彼女は思うのだ。 「地獄に堕ちる前に予習しておくのも一興というもの」 後に苦しみが待つのなら死ぬ迄は己の幸せを追求すると。 「あ、こんな所におられましたか」 美術館の裏庭、へにょっとしたモニュメントの中にふわもふが隠れていた。 「これは、何色かしら?」 「そうですね、きっとここから良く見える雨上がりの花の色でしょうか」 シエルが指さした美術館の中の展示。 灰色の雲の隙間から射した太陽の光を浴びて、小さな雫が輝く青紫の綺麗な花の絵画。 『アスター/雨上がりの紫苑』とプレートが掛けられていた。 「お久しぶりです、白黒の国のおてんば姫様」 シエルの次はやはり彼女の恋人である『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)の出番であろう。 「シエルと光介は仲が良いのね。この間はシエルが公園に光介がビジュツカンに連れて行ってくれたでしょう? 今度は反対の場所に連れて行ってくれる。通じあっている証拠ね」 この世界で会った人々の事を忘れるはずがない。二色世界で過ごす日々の中で、リスティの心の内には色彩と記憶がとどまっていたのだから。 光介の差し出した手を取って、公園へと到着する2人と1匹。 「あれから、向こうの世界でも、色を思い浮かべたりしていらっしゃいますか?」 「もちろん! 夢にまで見たわ」 光介と同じように彼女もまた昨日の事のように色の『想像』を思い出せる。父親の言葉を彼が記憶しているように。 「そうだ。今日もちょっとだけ、色を想うことを楽しんでみませんか?」 ベンチへと腰を落ち着ける光介と少女。そこから見えるのは絵画ではない、何も無い日常。 「でも、人の心や表情にも、実は色ってある気がするんです」 ホリゾン・ブルーの瞳が公園で遊ぶ子供達を追いかける。この世界の『人々』の風景。 「たとえば、あそこでかけっこしてる子供たち」 元気な声と笑顔と、そこに見える軌跡はオレンジを象っている。向こうのベンチで寄り添う恋人達を縁取るのは淡いオーロラ・ピンクだ。 人の色。心の色。そこに在る生き物の色合いを想像することができる。 「リスティさんにはどう見えますか?」 言われて、少女は目の前の少年を見た。真っ白な瞳には彼の心の色がゆっくりと形作られて行く。 それは、きっと――。 「おや? あんな所にふわもふさんがいましたよ」 リスティが光介に連れられて手にした小さな存在は彼と同じ色をしていた。 天と地を分ける境界線の空の色――――ホリゾン・ブルーという名の光介の色。 光介から連絡を受けたのは『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)だった。見通しの良い場所で待つスーツ姿の青年はきっと少女の心をくすぐったのであろう。 「初めまして、須賀義衛郎です。少しの間ですが、よろしくどうぞ」 「あ、はじめまいっ……」 「やーい! 噛んだ噛んだ! ちょっとカッコイイ人が現れるとすぐこれ……グボァッ!!!」 鈍い効果音とマルコの悶絶するうめき声が聞こえてくる。 「君の事はどう、呼んだら良いかな?」 「私、リスティ・メイティ。リスティでいいよ。これはマルコ」 「では、行きましょうか。リスティさん」 チェーンでぶら下がった時計ガエルを引きずりながら、義衛郎とリスティは博物館へと足を踏み入れた。 「義衛郎、これは、何? 鳥(カナトゥ)かしら?」 リスティが足を止めたのは木製のケースに入れられた標本の前。ガラス張りされたそれを凝視する少女。 「これは、蝶ですね。ミヤマカラスアゲハという種類のようです」 「蝶……。とても綺麗」 見る角度によって色彩が緑から青へと変色していく。こういう移りゆく色彩を構造色という原理だと義衛郎は解説した。他には宝石のオパール、鳥のカワセミ等がそれを備えているのだ。 夢中で次から次へと展示の間をすり抜けていく白の少女から目を離さないように追いかける義衛郎。 ふと、展示室の片隅に置かれた綺麗な青銅器が目には入った。ふんわりとした毛がはみ出している。 「リスティさん、ちょっと来て下さい」 「どうしたの?」 義衛郎とリスティが青銅器をのぞき込むと其処には同化するようにふわもふの姿があった。 「あら、義衛郎の色にそっくりだわ」 「私の色ですか?」 「ええ、人には色があるのよ!」 ドヤァと自慢気に笑顔を見せるリスティ。 「さっき光介に教えて貰っただけじゃん」 ドゴォとマルコに鉄拳を入れるリスティ。 ふわもふの色は――――ヴェルディグリ。彼のマントと同じ緑と青と白を混ぜた自然な色。 「あら、貴女も来てくれたのね」 リスティが動物園の前で声を掛けたのは『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)であった。以前、植物園で沢山の花を一緒に見て回った事がある。 「大丈夫よ、必ず見つけるわ」 「ありがとう。淑子」 淑子は動物たちに話しかける。彼女の前には動物、異世界の住人であろうが言葉の隔たりは存在しない。 「ふわふわしたこんな、……まるい生き物を見かけなかった? どちらへ行ったのか、教えて頂けないかしら」 あっちと指差す動物に淑子はお礼の言葉を伝えてから他の檻へと回っていく。 その間に隣の白の少女へと質問を投げかけた。彼女たちの世界の事を。 二色だけの色彩が許されたモノクロームの世界。植物も動物も存在し、聖白老と聖黒老という二人の神官によって統治されている。 「僕はそんな二人の老に作ってもらったんだよ。凄いだろう?」 「そんな凄さなんての淑子には分からないし、関係無いじゃない。ここは色彩の世界なんだから」 世界が違えば価値観や本質が違うことをこの白の少女は理解しているのだろう。 「わたしも其方へ遊びに行けたら良いのに」 冗談の様にぽつりともらした淑子の言葉にリスティの瞳が輝きを帯びる。 「本当!? 淑子のくれたマーガレット、花が咲いたんだけどやっぱり色は分からなかったわ。でも、押し花にしたから今度、見に来て!」 「ふふ、是非行ってみたいわ」 動物の声に導かれて少女達がやってきたのは白兎やヤギが居るふれあい広場。 混ざるように太陽の光りに照らされて小さな存在がそこに埋もれていた。少し青味が強い真っ白な色。 「……こんなところにいらっしゃったのね。さあ、お迎えよ。一緒に帰りましょう?」 手に飛び乗ったふわもふは腕を伝い淑子の肩へと擦り寄っていく。彼女の髪と同化して優しい色合いに。 「ふふ、ふわふわ。可愛らしいわ」 頬に触れる――――スノウ・ライラックの暖かな丸みが心地いい。 「リスティさんに、マルコ君かな。今日はこの娘達を食べれば良いんですか? うん、とっても美味しそうですね」 『残念な』山田・珍粘(BNE002078)那由他・エカテリーナが三日月の唇でリスティ達を出迎えた。 震え上がる二人に禍々しい殺気や狂気が迸るのを抑えながら「ふふ、冗談ですよー」と言ってのける那由他。プルプルと目の前の二人が首を横に振っている。 「ふわもふちゃんを私達と一緒に捜しましょうね?」 プルプルと目の前の二人が首を縦に降っていた。逆らってはダメだと本能がそう告げている。 ふと、那由他のAFが電子音を放った。仲間からの着信を知らせているのだ。 「はいはい。……なるほど、分かりました。ありがとうございます」 「ねぇ、今の魔法(ルルーカ)なの? 遠くの人と会話できるって凄い」 突然中空に向かって独り言を言い始めた那由他の行動を相手との通話として認識する辺り、少女は聡明なのだろう。 「これは、電話と言いまして……まぁ魔法みたいなものです」 「すごい!」 「ふふふー可愛い子とショッピングですよー。これって、ひょっとしてデートですかー。照れちゃいますねー」 那由他がリスティを連れて行ったのは服や花が並んだ店舗の並び。 少女に可愛い服や帽子を被せて喜び、その姿を見て那由他はエメラルドの瞳を細めた。 「まさに、お互いに良い関係です!」 ワイワイと穏やかな時間が流れていく。覗いた服屋の中、黒いマフラーにそれはくっついていた。まるでマフラーの先にボンボンが付いているかのように。 那由他は真っ黒のふわもふをそっと手の中に包み込み、可愛い可愛いと頬ずりをした。 それはかつてご主人様を求めた黒猫にしたように。ポケットの中にしまった黒い欠片の思い出。 グラファイトの黒――――彼女が好きな深淵と混沌の色。 高台の展望台から市街地を見つめているのは『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)だ。 サングラスの奥から見据える瞳は、真っ黒な雫を一滴落としたような墨色。 市街地の地図と現物の施設を交互に見ながら、千里眼で視線を穿って行く。丁度見えたのはショッピングセンターの服屋の中だ。その近くに居るのは那由他だろう。 「おーい。山……じゃなかった。なゆなゆ、少し歩いたら右手に服屋が見えるから、其の中にふわもふがいるぜ!」 それにしても、今日は朝からこの場所に立って能力を使い続けているが、この広い市街地から手のひらサイズの小さな存在を見つけ出すのは容易ではないのだと実感した。 けれども、何故だろう。肌寒い風が吹いているのにフツのさっぱりした頭は心なしか暖かかった。 陽の光を浴びて頭皮が温まったのだろう。フツはそう思い千里眼でふわもふを探し続ける。 「ム。あれは……シエルと光介か」 ちらりと見えたクリーム・ホワイトの巻き毛と紫苑の長く綺麗な髪。仲睦まじそうに歩く二人の側にはそれぞれのふわもふが居ることが分かった。これ以上の覗き見は野暮であろう。 丸っこいアザーバイドの所在が分かればそれでいい。フツはうんうん。と頷きながら次へと視線を写す。 フツから連絡を貰った『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は遊園地へと向かう。 ――小さな可愛いふわもふ君達、バラバラになって寂しがってるかもしれないね。早く見つけてあげないと。それにリスティさんにもこの世界の色、沢山見せてあげられたらいいな。 優しい彼女はゆっくりと歩を進めながら、イーグルアイで遠目に見えてきたヒーローショーに視線を投げる。 そこへ合流したリスティとマルコに紡ぐ言葉は作戦事項だ。 「どうやら、ふわもふ君はあの人達のマントの裏にくっついているみたいなんだ」 アンジェリカが指差す方向は舞台上の戦隊ヒーロー。今年は恐竜がモチーフだ。 ショーの後に行われる握手会の時に気配遮断で後ろから近づき、ふわもふを奪取する作戦。 「リスティさんは握手会に参加したら?」 彩りどりのヒーローを間近で見られるチャンスだからだ。 ショーが終るまでの時間はリスティとの語らいのひととき。ポケットから小さな赤い欠片を取り出したアンジェリカ。同じ色の瞳で手のひらの欠片を見つめながら呟く。 「ボクはね、赤い色が好きなんだ」 まだ神父と出会う前、養父母に手酷い仕打ちを受けていた彼女への罵詈雑言の一つ。 アンジェリカの赤い瞳を血のようで気味悪いと言い放った養父母たち。全てを否定され、その自分の瞳を呪った。否、それすらも疲弊し感情の起伏は表層に表せなくなっていた。 しかし、命を救ってくれた神父は違った。彼女の瞳をルビーの様な綺麗な瞳だと。 そしてアンジェリカに愛し愛される事を、子供らしい感情を育てる環境を与えてくれた。 それから、彼女は自身の瞳の色を好きになる事ができた。自分を肯定できた。嬉しかった。 「この欠片はふわもふ君のようにこの世界に落ちてきた子猫を助けた時に貰った物」 真っ黒の子猫は彼女の綺麗な歌に感動して、魔法の欠片を落としていったのだ。 「だからアンジェリカの色はその石の色にそっくりなのね」 「ボクの色?」 「そう、さっき光介が教えてくれたわ。人にも色があるって。私にはそれが見えるようになった。そしてそれは……」 ショーが終わり握手会が始まった。アンジェリカが奪取したふわもふを包んだ手をそっと開くと、其処には赤を称える宝石の様に綺麗な――――フェアリー・ローズ。愛情豊かな赤色の歌声。 「リスティちゃん、マルコ君いらっしゃーい☆ いい季節に来たね☆ 今はちょっと寒いけど、紅葉が凄く綺麗だよ☆」 白の少女と相棒を迎えたのは『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)のテンション高い声音。 「ふわもふさん達の事は大丈夫☆ すぐ見つかるよ☆」 服装の見た目と笑顔とのギャップが激しいが、優しい言葉に少女達は親愛の意を示す。 寒いからとリスティの首にマフラーを巻く終。 「ありがとう」 少女に色彩があれば、頬が赤くなった所を見ることができたであろう。 終がリスティ達を連れて歩くのは、銀杏の葉っぱが舞い散る並木道。クローム・イエローの絨毯が道いっぱいに広がっているのだ。 子供達の声がきゃっきゃと辺りに響いている。ここならふわもふが居そうである。 終は目を凝らして観察した。どんなものでも見通せる魔法の様な瞳で。 黄色の中に混ざった紅葉の葉の様な鮮やかな色が木の幹にくっついているのを発見。 「かくれんぼしてるのだ~れだ☆ リスティちゃんのところへ帰ろう☆」 ふわりとつまみ上げたふわもふ。暴れること無く終にくっついて肩の上に載せられてしまう。 紅葉の様に鮮やかな――――エンバー・ラスト。人を暖める為に命を燃やす残り火の色。 探索が終われば、少しばかりの黄昏を刻もう。ショコラティエのホットチョコレートを飲みながら、アザーバイド達にこの国の四季のことを語る。 「春の初めに咲く花々の香りや色、夏の緑と輝く太陽の眩しさ、秋の鮮やかさ、雪に包まれた冬は君たちの世界に似ているかもしれないね。それでも澄んだ空気の中で見る空の青さは格別なものがあるよ☆」 「この世界には雪にすら色があるものね。青い雪をみたことがあるわ」 窓から見える銀杏と夕焼け空、チョコレートと終の色。アザーバイド達にとって新鮮な感覚。 日も暮れて、リベリスタ達は一度展望台に集まることとなった。しかし、1匹がまだ見つかっていない。 「オウ、おつかれさん」 皆を迎え入れたのは此処でずっと千里眼を使っていたフツである。 仲間の視線が彼のさっぱりとした頭部に集中していた。そこにあったのは、ふわもふだった。 しかも、灰紺に輝くアフロ……否、アザーバイドである。 「フツさん、頭! 頭!」 「ム? おお! こんな所に居たのか。どうりで今日は頭が暖かいと思ったぜ」 皆で笑い合いほんわかした時間が流れていく。 ふわもふの色でリボンを巻いていくアンジェリカ。これを見て思い出せるように。 フツはアフロをつんつんと突いている。この感触が堪らない。 那由他と光介は写真を沢山撮っていた。2人共、碧の少女に上げるためのものだ。好きそうだから、喜んで欲しいから。笑顔も心の闇も見てみたいから。全部見せてほしいから。 淑子はリスティの手のひらに兎のキーホルダーを載せる。 ……わたし、おうちの外に出て外のひとと触れ合うようになってから。出来たお友達は、みんな異世界へ帰ってしまう方ばかりで再会出来たことなんて、なかったから。 「ほんとうに、うれしかったの。あの……ね。また、お会い出来るかしら……?」 遠慮がちにフィエスタ・ローズの瞳の瞳をリスティに向ける淑子。白の少女はその手をぎゅっと握った。 「淑子、私はこの世界が大好きなの。だから、絶対にまた会えるわ」 「本当?」 「ええ、約束よ。それに、私とマルコにも世界音楽の楽譜が配られたみたいよ?」 「え? あ!」 白の少女を包み込む運命の五線譜、その旋律がリベリスタにははっきりと見て取れた。 リベリスタとの逢瀬で二色世界の少女は色彩の世界の音符を手に入れる事が出来たのだ。 ダークヴァイオレットの光が収束してゲートが閉まっていく。 「何時でも遊びに来てくださいね」 義衛郎とシエルが頭を下げて、終がバイバイと手を振る。 「さようなら。またお会い出来る日までどうか、お元気で」 淑子は友達と初めての約束をした。それは、二色と色彩の世界を繋ぐ小さな指先。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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