●11月4日@Tel(過去) 「蝮原様、お誕生日おめでとうございます!」 『あ? あー。そりゃどーも名古屋。が、俺ぁ三高平にいねぇからな』 「えっ」 それっきり電話は切れた。まぁ、『相模の蝮』なる人物がお誕生日会だとかそういった浮ついた物を好まないのは今に始まった話ではないのだけれど。 「そんな時は時間差のサプライズですよ、名古屋様」 「おぉ流石スタンリー様、サプライズの本場欧州。ではそのプランでいきましょう」 「仰せの儘に。稽古を付けて欲しい、と私からそれとなく蝮原様を呼び出しておきましょう」 「グッドアイデアですな!」 「その方がリベリスタの皆様がお喜びになられるでしょう?」 ●そして今日 「はい。とゆー訳で今日、蝮原様が三高平に来られます。皆々様に課せられたオーダーは……テロ的な蝮原様への誕生日お祝い! 過ぎてますけど気にしたら負け! 皆々様のサプライズ力を蝮原様に見せつけてやりましょうぞー!!」 と、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)はフハハーと笑うのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月28日(木)23:05 |
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■メイン参加者 19人■ | |||||
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●ようこそミスタ アーク本部周辺。重厚な靴音は紛れも無く『相模の蝮』のものだった。 さて、咬兵の誕生日。 椿は考えていた。プレゼントも、手合わせ志望も、色々無理があると言うか。でも祝いの一言以外に『要らん事』がしたくって。 よし。 「蝮さん誕生日おめでとぉ! 肩車して!!」 「……は?」 藪から棒。取り敢えず祝われた事と椿に何故か肩車を所望された事と。もうお祝いでも何でもないが、肩車は純粋に椿がしてほしいだけ。しばしの沈黙。「仕方ねぇな」としゃがんだ咬兵が椿を肩車。慣れた手付きはおそらく雪花にもしていたのだろう。 「おぉ……」 我ながら無茶苦茶だと思っていたが。椿は感嘆の声を漏らす――全ては、先日の依頼で祖父を思い出した事が悪いのだ。 (流石にコレは、蝮さんには内緒やけどな) 一見して和気藹々。 一方で竜一は思う。プレゼントとは自分が素晴らしいと思うモノを贈るべきである。だが、相手のことを考慮しないそれは迷惑でもある。では咬兵が喜びそうなものとは何か。 「……あれか! 葉巻!」 「あ? よう結城」 「せっかくの蝮の誕生日だ! 奮発して高級品買ってきたぜー!」 あれだろ取り敢えずキューバ産でなんか革命家さんが吸ってた的な。お高いけどまぁ良し。 「よし、俺も20歳になったし、葉巻デビューだ! よっしゃー、蝮ー! 吸い方教えてくれー!」 「……。一回だけしか言わねぇぞ」 咬兵の簡単な葉巻講座。の、合間からひょっこり顔を出したのは快だった。 「蝮さん、お誕生日おめでとう! そして誕生日と言えば……酒!」 秋は新酒。色々、諸々、持ってきたと瓶を見せれば咬兵は興味を見せながらも。誕生日祝い。まさか。差し詰め名古屋か。 「誕生日おめでとう、乾杯!」 そんな思考も快の声に掻き消され。 さてさて。快は自覚している。実力ではまだ咬兵には敵わぬ事に。故に。 「……飲み比べて勝負だ!! よもや、『相模の蝮』が若造に挑まれて逃げる、なんてことはないだろう?」 「いいぜ『守護神』。てめぇの肝まで護れるか?」 二つ返事だった。だが快にとって若さはアドバンテージ。勝ち目はある。イッキ飲みは無粋、時間はあるし飲酒マラソンと言う名の長期戦で――と思っていた時代がありました。 「……くっ、なんだこの人! これだけ呑んでるのにびくともしない……!」 「酒は良いな。美味い酒なら尚更良い」 不敵に笑う無頼が酔う気配は欠片も無いようで。 ●閑話休題「メルクリィさーん!!」 「ルア様~♪」 いつもの様に、飛びついたルアをメルクリィは機械の手で抱き留めると高い高い。むぎゅむぎゅきゃっきゃ。ぐるぐる回ってぽーんと投げればべしゃぁと天井に激突。 「あぁっ大丈夫ですか!」 「だ、だいじょぶ……」 むぎゅぎゅ。きゅう。 そんなルアを一先ず長椅子に寝かせるメルクリィ。の、傍ら、陸駆が彼の腕を引いた。泣きそうになりながらも――泣いちゃ駄目だ。心配させちゃ駄目だ。 「今日は大事な話があるのだ」 「何でございましょうか、陸駆様」 「ご祖母堂の旧知の組織から、ヘルプがきて僕はそこにいくことになったのだ。日本をしばらく離れるだから、貴様に伝えに来た」 日本にはしばらく戻らない。故に、大事な友達に伝えたかった。メルクリィはしゃがんで陸駆と目線を合わせたまま、じっと聴いていた。 「だが、離れても貴様と僕は友達だ。ほら、なんだ、メールとか、ある、から」 じっと見る目をじっと見る。涙が溢れる。今生の別れじゃないのに。でも目を逸らさず、陸駆は言った。 「また、いつか日本に帰ってきたときは、なでるのだ。その頃にはメルクリィより大きくなっているかもしれない。男子三日会わざれば刮目して見よというだろう。 行ってくる、必ずかえってくるからな。だからさよならはいわないのだ」 「――えぇ。では」 ゆびきりげんまん。小指を差し出したメルクリィは優しく微笑んだ。行かないでと言っても行ってしまう。彼女もそうだった。だから待とう。いつまでも。 「「ゆーびきった」」 ●本部前 「とーぅ」 本部前。ふふ、と笑い、空から降り立ったのは亘。 「お久しぶりです蝮原さん。遅れてしまいましたがお誕生日おめでとうございます!」 「よう天風。……はぁ。ありがとよ」 これから散々祝われるんだろうが、逃げるのも癪だった。「で?」と問う咬兵に亘は率直に物申す。 「一つ稽古をつけて頂きたく」 「いいぜ。来いよ」 二つ返事。故に、最大速力。素手で技無し。全てを出し切ろう。挑みかかる。認められたい一心。あれやこれやコンボを考えたのだが――気が付けば空を仰いでいた。真正面から蹴っ飛ばされて地面に転がされたのだ。いやはや。なんとまぁ。 「グフッ」 倒れながら、お礼は酒瓶をプレゼント代わりにゴトンと置いて。 さて行くか。振り返った咬兵、の、視線の先にはルアがいる。 「今日は!! 蝮原さんの誕生日祝いなの!!」 と言って、うさぎのリュックからバーンと取り出したのはシフォンのケーキだ。可愛いラッピングがされている。 「好みとか分からなかったから、エスターテちゃんと一緒に作ったの! はい! どーぞなの!」 親友のパパと咬兵は友達であると、ギリニンジョウなのだと、聞いた。思えば親友とも初対面時は敵だった。でも、今は親友。だから彼とも友達になれる筈。 「ありがとよ」 素っ気無いが礼は込めて。ふわ、とルアの頭に置かれる無骨な手。喜んでくれたら嬉しいな――そう思っていたからこそ、笑顔で「どうしたしまして!」 「咬兵、ハッピーバースデイなのじゃ!」 間髪入れずに今度はレイラインが顔を出す。サプライズとは、あの懐刀もやるじゃないか。乗るしかない、このビッグウェーブに。 「以前葉巻集めが趣味と小耳に挟んだので、プレゼントはこれじゃ! じゃーん! 葉巻セット!!」 「へぇ。中々上質な奴じゃねぇか」 「この間故郷の英国での仕事があったので、その時に買って来たんじゃよ。父様が嗜んでいたから、銘柄を探すのに苦労はしなかったわい」 説明しつつ――やっぱり実家には一度顔を出しておくべきだったかのう、でも今の若い姿で気づいて貰えるんじゃろうか? なんて、うーむと考え込んで。「どうした」と咬兵に声をかけられたので「なんでもない」と顔を上げ。 「そういえばこの前雪花と一緒に悪質ヤクザを潰して来たんじゃが……中々どうして、勇ましい組長っぷりだったぞよ。これなら将来も安心かのう、おとーさん?」 なんての♪悪戯っぽく笑うレイラインの言葉に、咬兵は実際、複雑だぜ。 ●本部 パパーン。鳴り響いたクラッカー。 「ハッピーバースデー、蝮原さん! 時間差だけど」 「……宮代か」 「あ、めんどくせぇ……って顔してるわね……あんまり歳を取るのはハッピーじゃないかしら?」 「別に幸せも不幸せもねぇが」 肩にかかったテープを一払い。まぁまぁ。久嶺は苦笑を浮かべるのだ。 「どうせ祝って貰えるなら楽しんだほうがいいじゃない!」 騒ぐ口実が欲しかった、というのもあるかもしれないが。ふと、咬兵を見上げ思う。去年と、今年。彼の誕生日を祝うのはこれで二回目だ。 「また来年も祝ってあげるわ……いえ、来年と言わず、おじいちゃんになっても祝ってあげるわ。覚悟してね!」 だから。 その。 「……ずっと元気でいなさいよ!」 「ありがとよ」 少女の髪をくしゃりと撫でる、無頼の掌。 「で、トムソン」 そのままくるりと振り返った先には、壁チラ状態のミリィが。ビックリした拍子に構えていたクラッカーぱーん。 「……っ!? や、やっぱり気付かれちゃいましたか。うぅ、オマケにクラッカーも鳴らしちゃいましたし、どっちがサプライズか分からないのですよ……」 例え当日でなかろうと、企画者二人にグッジョブの敬を込めて全力でサプライズお祝いするつもりだったのに。 コホン。取り敢えず咳払いで一区切り。 「蝮原さん、お誕生日おめでとう御座います。その、少し日にちは過ぎちゃっていますけど、気持ちが大事ですから」 プレゼントも、ちゃんと用意していたんですよ?少し困った様な笑みを浮かべ、そろりと差し出すプレゼント一つ。礼と共に受け取った咬兵へそわそわ眼差し。察した彼が包装を開ける。ネクタイだった。ミリィはそわそわ。再び察した彼は、それを着けてくれたそうな。 そして咬兵は演習室へ向かった、が。 「花染抜刀! すまない護り刀! 今日だけは俺を全力でまもってくれ! マジで」 誕生日なら祝わねば。演習室への扉の前にて仁王立つ俊介が、花染を抜き放ちつつ魔陣を展開する。まきこむとかしらん。 「まむっさん、この扉を通りたければ俺を倒すんだな!」 「分かった」 「グフゥ」 腹パン一発。転がる俊介。 「だが通す訳にはいかんのじゃい! 助けて、デウスエクスマキおぶろ!」 腹パン再び。 「ぐふぅ……この拳の重さ、いつしか味わった拳と変わっていない……! てことで誕生日おめでとう!!」 「どーも」 「歳くっても現役! 素敵だな! 一言多い?」 「別に構わねぇよ、んな細かい事」 「おうよ! また遊んでな、依頼とかまむっさんの事情とかあるだろうけど息抜きくらい俺に時間裂いてよ。あ、それから俺紅椿組に出戻ったん」 「あー。じゃ、『また今度』な」 ●演習室 少しいかついその顔の奥は とても優しくて 無骨なその手のひらは とても暖かくて 寂しかったボクの心を慰めてくれた そんな貴方に出会えたのは 貴方がこの世界に生まれてくれたから だからその日を祝いたい おめでとう蝮原さん 今日この日が 貴方にとって素晴らしい日でありますように。 入室した咬兵を一番最初に迎えたのは、アンジェリカの澄んだ歌声だった。薄紅にはにかむ頬と円らな瞳が無頼を見る。 「お誕生日おめでとう。ボクの歌、どうだった……?」 「……ありがとよ、アンジェリカ。良い歌だ」 表情を綻ばせた少女の頭を一撫でし。 さて。 「まむっさーーーん! ご機嫌麗しゅう?」 大ジャンプでやって来た夏栖斗のトンファー攻撃を躱し。「よう御厨」と挨拶一つ。 「どうよ? 前よりは技にキレがでたとおもわねぇ? なんかアドバイスとかある?」 「喧嘩にグダグダ理論や技巧が必要かよ」 思うようにやれ。攻防。夏栖斗は思う。彼はフィクサードだがこうして胸を貸して貰えるのはありがたい。尤も、リベリスタとフィクサードの差なんて些細なものなんだろうが。 「トンファーキックは正義だ!」 「正義か、嫌いじゃないぜ」 真正面、夏栖斗の蹴りが頬を掠めようがそのまま振りぬかれた拳。ぶっ飛ぶ夏栖斗。転がったままへらりと笑った。 「もっとさ、強くなりたいんだよね。強くなったら、それだけ誰かを助ける手が届くんだって思うからさ」 「応援はしてやるよ。……で、次はお前か高原」 「お誕生日おめでとうございます」 そう返した恵梨香に闘気は無く、差し出すのは花束一つ。それを咬兵が受け取った、瞬間。 「――いつ何時でも敵の襲撃があるか分からないわよ『相模の蝮』!」 翻す攻勢。仕掛ける攻撃。恵梨香も『仲良しパーティー』は苦手故、言葉よりも戦う方がやり易い。「そんな事だろうと思った」と、咬兵も何処か楽しげで。互いに殺意は無いが戦意はある。 全力で。一本取る気で。気合いを込める恵梨香の鋭い回し蹴りを、その細い足首を掴んで受け止めた無頼が腕に力を込めた。ぶん。投げる。びたん。壁。 「……手合わせありがとうございました」 「『プレゼント』ありがとよ」 で。正面の瀬恋へ向き直る。直後に彼女が投げ寄越したのは剃刀――しかも抜き身――だった。指先で受け止めたが少しだけ切れた肌。剃刀にしては露骨なまでに鋭すぎるそれは彼女の悪戯心である。 「あぁ、それアレだから。誕生日プレゼントってヤツ」 「良い剃刀だな。ありがとよ」 「んじゃ、スタンリーの稽古に付きあおうじゃねえか」 なぁ?瀬恋が振り返る先には不本意そうなスタンリー。実は戦う気なんか欠片も無かったのに瀬恋が「まさか今更あれは呼び出す口実でした、なんて言い出しゃしねえよな?」と許してくれなかった。不服気な眼差しに、瀬恋はニヤッと意地悪く笑う。 「折角だからアタシと蝮のオッサン同時に相手にしてみろよ。い~訓練になるぜ?」 「……はい?」 「覚悟を決めろよスタンリー。男の子だろ?」 嫌がらせ程度にボコにしてやる。一杯食わされた礼として咬兵も乗り気である。苦い顔で後ずさるスタンリー。の、肩にポンと手を置きつつ咬兵へ目をやったのは火車だった。 「よぉ呪われてんな47歳。蝮のおっさんも大変だなぁ……」 下手に人の良い所を見せたりするからこんな風に面白半分に付け込m――祝われるのだ。ニヤニヤ。 「どうだ? 居心地悪いか? ん? 言ってみろよ皆に聞こえるようによぉ? 女子供も祝ってくれてるなぁ? んん? えっ100%の好意を?」 「……お前のそう言うところ嫌いじゃないぜ、宮部乃宮」 まぁこの辺で。という訳で。 「さて……約束はちゃんと履行されねぇとなぁ、スタンリー? おっさんに稽古つけて貰えよ みっちりと 心行くまで。折角だしオレも付き合ったろ」 「……え」 じりっ。咬兵と瀬恋と火車がスタンリーににじり寄る。パッと見、不良集団に絡まれているの図。 「ぎゃっはっはっは! 愉快だなぁ! どういう集まりだこりゃあ えぇ? おい!」 「私が聞きたいですよ……!」 やばい武装全部置いてきちゃった。逃げ道を探しているスタンリー。そんな彼に火車は拳を振り上げながら、スタンリーと咬兵を呼んで。 「今度、酒ぇ教えろよ?」 咬兵がむんずっとスタンリーの首根っこを掴んだので遠慮なく腹パンぐーぱんち。 「か、かっけェ、すげェ強そォ……」 いや実際強い。咬兵の姿にコヨーテは武者震う。 「ンじゃちょっくら行ってくンぜッ! 決まってンだろォ……47歳なりたての咬兵と手合せよッ! ッてなワケなンでオナシャス!」 「あっ良い所に 後は頼みます」 スタンリーに身代わりにされました。でも、ボコボコにされ床に転がされてもコヨーテは嬉しそうで。 「……やっぱすっげェ強ェなァ……」 「皆生き生きしてるなあ」 言葉と共に、応援していたしのぎがコヨーテと咬兵へタオルを手渡した。しのぎさんも男の子に生まれたかったなあ、なんて思いながら。 「サンキューしのぎッ! へへッ、さすが女のコだなッ! 気ィ利くなッ!」 「うん、お疲れ様。ねね、まむたんまむたん。まむたんにとって強いって何かな。戦う意味って、何かな。……別に深い意味はないのだけれど、今後迷った時の指標にご教授願えないかなって」 「強さ……オレもそれすっげェ気になってたッ! 咬兵ホントかっけェなッ! ななッ、何したらそォなったんだッ? 筋トレかッ? 食いモンかッ?」 向けられる視線。「そうだな」と無頼。 「強さなんざ人それぞれだろ。戦いに意味もクソもあるか、戦わなきゃならねぇから戦うんだ。戦ってりゃ嫌でも強くなるさ」 「んー、成る程。勉強になったよ……あ! 忘れるところだった」 ゴソゴソ。しのぎが鞄より取り出したのはラッピングされた包みである。それを咬兵へはいどうぞ。 「お誕生日おめでとう! これ、プレゼントだよ。これから寒くなるから着てね。きっと似合うし、雪ちゃんにも見せてあげてね」 「ありがとよ」 礼を言ったものの後に中身が『黒猫のきぐるみ型ルームウェア』である事を知り、咬兵がそっと包みを閉じたのはまた別のお話。 一方、コヨーテはプレゼントを用意していなかった事にハッと気が付く。ならば。 「ンじゃもっかい殴り合おうぜッ! 魂込めたパンチッてのは……ダメですかね。気ィきかねェ男の子でマジすンませン」 「いいぜ、来いよ」 そんな感じ、何だかんだで賑やかに。 烏は紫煙を吹かして観戦していた。同業者の戦いは参考にもなるし、見応えもある。 「まぁ、47にもなって誕生会というのがくすぐったいという気持ちは良く判るがねぇ」 もてる男は大変だな、蝮の旦那。一段落したらしい咬兵へ、見物料代わりの飲み物を差し入れながらそんな風に冷やかして。思えば、昨年の今頃も全く同じ事を言った気もする。 「で、蝮の旦那には同じ47歳の中年からのお誕生日プレゼントという嫌がらせを一つだな」 取り寄せが出来たのでね。手渡す最高級シガーに「へぇ」と興味を示したらしい咬兵に一つ微笑んだ。 「ま、気が向いたら吸ってくれ」 ●さよなら前に 咬兵が帰る前に、虎鐵が呼び出した場所は食堂だった。並べられていたのはご飯、味噌汁、肉じゃが――『洒落た店の味』ではなく、ごく普通な、けれどきっちり時間をかけて作った『家庭の味』。こういったのに飢えてるかも、と思ったから。 「誕生日プレゼントは渡したでござるが祝ってはないでござるから」とニッコリ笑う。 「ささ、できたでござるよ! お誕生日おめでとうでござる。全部食べていいでござるよ……口に合えばでござるがな」 「……。仕方ねぇな」 動いた後で腹減ってたし。溜息一つと着席と。虎鐵は黙々と食べる彼の姿を見守っている。美味しいかどうか訊くのも今更だった。 (偶にはこういう手料理を振舞うのもいいでござるな) そして、今日という日は更けてゆく。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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