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喰い、食われて、また喰われる


「報復だ。女ァ、貰って行くぞ」
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!!」
 ゲラゲラゲラゲラゲラ――――――――笑い声の後、扉は閉まって沈黙。其処で意識はぷつりと切れた。


 十一月の風が起こしてくれたのだろう。自分の身体を抱けば傷に指が触れて、初めて其処で満身創痍である事を思い出した。何時間前の事かなんて時計を見なければ分からないが、突然押し入ってきたフィクサードがこの家を荒らして妹を攫っていった事も思い出した。親がいなかったのは幸運か、不運か、答えは見えない。
「あぁ……そういう………」
 数日前の事だったが思い出してみれば、しょうもない力を駆使して銀行強盗していた数人のフィクサードを捕まえた事があった。おそらく其れの報復なのだろう。
「分かりやすいフィクサード共め……痛っ」
 胸に刺さっていたナイフを抜いて、其の侭投げて。空になった拳を硝子の破片だらけのフローリングに叩きつけた。何度も、何度でも。

「くぅぅぅぅぅッそおおーーーーーーーーーっ!!」

 何がいけなかったか。
 フィクサードを捕まえた自分が悪いのか、こうなる事を予測できなかった事が悪いのか、妹を護れなかった自分が悪いのか、こっちの世界に関わっている事が悪いのか。
 殴り続けて更に粉々になった硝子を、今度は踏みしめた。足の裏に刺さろうが、どうでもいいのだ。もはや痛みなんて感じないくらいにキレているのだから。
 扉を開いて、よろりと潜れば騒ぎで通報されたか、駆けつけた警察が居た。純粋に良かったと思った。騒ぎが起きてる最中に来てしまっていたら、どうなっていたかワカラナイ。
「きみ、キミ! 大丈夫かい、何があったのかな?」
「……いや、いいです。俺一人でどうにかするんで……」
「キミ!?」
 肩を掴んだ警官を振り切って――――自転車に飛び乗って必死にペダルを漕いだ。
 妹の手掛かりは、あの日捕まえたフィクサードが帰ろうとしていた場所だけ。


「皆さんこんにちは、今日も依頼をよろしくお願いします」
 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へそう切り出した。今回の依頼の相手はフィクサード組織。とはいえ、弱小の名も無き組織なので純粋戦闘すれば負ける事は無いだろう。其の組織を壊滅させて欲しいというもので、やり方は捕縛でも全滅でもそれは任せるのだという。
「ただし……彼等はどうやら人質を持っていまして、革醒もしていない十二歳の女の子が捕まっているのです。
 用途はおそらくバラして売るのでしょうが……まあ、彼女も一緒に救って欲しいのです」
 何故関わりも無さそうな女の子が捕まっているのか。
 それは彼女の兄が此のフィクサード組織の末端を捕まえて、強盗したお金を取り返していた……というのが発端であり、それに対して報復したフィクサードが捕えて来たというのが経緯である。
「彼女の兄が、この組織のある場所を弾き出して私達より先に乗り込むのですが、まあ、力はあれど数には勝てないといいますか。元々体力が無かった事もあって、リベリスタさんたちが手を加えないと、おそらくノーフェイス化します」
 組織を壊滅させる他に、やれる事はあるのかもしれない。
「場所は使われていない倉庫で中は暗いです。入口は正面と裏手に、窓からの侵入もできますので、色々考えて見て下さい。女の子はフィクサード組織のリーダー格のすぐ近くに、大型の動物でもいれる感じの檻の中で泣いています。それでは、よろしくお願いしますね」
 杏理は深々と、頭を下げた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月27日(水)22:23
 夕影です 以下詳細

●成功条件:フィクサード組織の壊滅と、一般人の救助。出現した場合、全エリューションの討伐

●フィクサード組織
・拝田・裕次郎(ジーニアス×デュランダル)という名前の大男がリーダーであるフィクサード組織です。
 裕次郎の身長は2m超え。威力を極めたRANK1のスキルのみ使用します。それなりに強いです

 配下の人数は24人で、PCより遥かにスペックが低いです
 ジョブは雑多で、近接が15人、後衛が6人、回復が3人です
 基本的にリーダーが生存している場合は逃げようとしませんが、リーダーが死亡した場合統率が乱れ、パニック状態になり、何をするか分かりません

●リベリスタ:九凪・了(ヴァンパイア×スターサジタリー)
・何処にでもいそうな性格の17歳の少年です
 レベルは26程度で、フェイトは限りなく0に近いです
 暗視と千里眼を活性化しています

 当戦場で戦闘不能した場合、ノーフェイスになり妹を助けようとします
・ゲーセンのコインを指で弾いて攻撃しますが、装備は整っていないので脆いです
 また、リベリスタ到着時の体力は3分の1程度です

●一般人:九凪・未央
・檻にいれられ、泣きながら小さくなっております
 お腹をすかせ、防寒具もないまま放置されているので弱っています

●場所:倉庫
・視界劣悪、広さと足場に問題はありません
・侵入経度は正面入り口と裏口。窓が側面に均等についています

それではよろしくお願いします
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ソードミラージュ
閑古鳥 比翼子(BNE000587)
マグメイガス
★MVP
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)
覇界闘士
片霧 焔(BNE004174)
スターサジタリー
鴻上 聖(BNE004512)
プロアデプト
椎名 真昼(BNE004591)


「幼女どうします」
「どうもこうもバラして売り飛ばす、だ。それまでは好きにしろよ」
「マジっすか!」
「お前らあああああああああ!!!」
 挑発の言葉に怒った九凪了に、げらげらげらと笑い声とリンチが包んだ。無力な兄に、ただ虚ろな瞳で一滴ずつ涙を流すしかない妹を見て『Le Penseur』椎名 真昼(BNE004591)が我慢できないと地面に拳を当てた。
「……あいつら殺したい、全部殺したい」
「お、落ち着こうか」
「殺す」
「落ち着け」
 ――絶対に、許さないと。
 彼に何が見えているかなんて、声を聞いていれば容易く想像可能だ。『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)は逆毛立つ真昼の肩を掴んで、しかし言葉は何もかけず。
「大丈夫です。きっとハッピーエンドを見つけられますよ」
 代わりに『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)がそう二人へ声をかけたのであった。その言葉に二人は同時に頷いた。



「幼女の穴は小さいから入るかな。全員でマワして調べてみてもいいな」
 なんて下衆な用語が飛び交う中、突っ伏した了の遥か後方―――光が差すのにそう時間はかからない。開かれた扉から五つの影が一斉に中を掻き乱すのだ。
「そんな暗い所で何をしてるのでござる? 殺し合いでござったら混ぜろでござる。今マワすっつったでござる?」
「は? 誰だよ。殺すぞ」
「ござぁ……」
 こんなに響かない殺すという言葉は今までにあっただろうか。顔を横に振った『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は不敵な笑みを浮かべながら、一直線に拝田・裕次郎へ向かっていく。
「お前らはあたしが相手してやるよ! かかってきな雑魚ども!」
 『D-ブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)は虎鐵より前へ出て、見える限り、当てられる限りの敵へ挑発する。羽毛に覆われている手だが、中指を立てているに違いない。
 一斉に比翼子へと向かう配下に、集め過ぎただろうかと冷や汗が垂れるものの。比翼子の肩をぽんと叩いてウィンクしたのは
「ナイス収集!」
 『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)だ。彼女が比翼子の前に立っては腕を横に振り上げた。皆一斉に燃えてしまえばいい、なぎ払う腕に乗った炎は駆けて来たフィクサードを焦がしていく。焔の目や髪の色同然になっていく景色に少しだけ口端が上に吊り上がった。
「殴り込みに来たフィクサードか?!」
「いえ、違います。アークのリベリスタです、貴方方の討伐に伺いました」
「あ? どこだよ」
 駄目だ、伝わっていない。
 『黒犬』鴻上 聖(BNE004512)は頭を押さえてこれ以上無い溜息を吐き出した。
 アークも知らないフィクサード組織か。例え此処に夏栖斗を放り出したとしても「誰?」と言えるのであろう。聖的には驚きを通り越してあきれ果てる事態だ。
 それならば尚更、さっさと壊してやると神罰を手に神秘を纏う。どうせ自分たちが一番だとか思っている組織であろう、胃の中の蛙と言うべきか――。
「無知は、罪なんですよ」
 その間、『揺蕩う想い』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)は数歩進んで回復の陣を生み出した。力尽きそうでもある了はそれまで微動だにもせず、だったものの、彼女の回復に気づいて身体を起こそうと足掻いている。
 起きたら、おそらく、妹を救うためにまた前へ行くのだろう。それは、それだけ、困るのだ。焦ったシュスタイナは声を荒げた。
「いったん下がりなさい! 体勢を立て直すのが先でしょう」
「……アーク、だっけ」
 ――なら、信用できそうかな。
 振り向いた了の瞳にシュスタイナが入った。すかさず手招きし、此方へ―――と誘導するのだ。


 よろり、と動き出した了を支援するように、比翼子は彼からなるべく離れた方へと敵を移動させていく。
 どうした事か、うっかり一八人のフィクサードが釣れてくれている状況は良かったと言えるか。だが一八回の攻撃を一斉に受けてしまうのは良い状況とは言えないか。しかし比翼子と焔の協力体制は変わらない。速度やBSの関係も上手く重なり、コンボは完成していくか。
「火を放て!!」
「おうよー!!」
 一緒に動いてきてくれた焔は二度目の炎をフィクサード達へ放った。焦がれた臭いが鼻につくほどに、早くも体力の無い数人が倒れただろうそんな音さえ聞こえる。
 続く攻撃に、横殴りの刃の雨がフィクサード達へ降り注いだ。聖の片腕の神罰が、制限ありませんと言わんばかりに増えては投げられていくのだ。
「あと何本くらいあれば全滅できますかね」
「百本くらい?」
 入れ替わり、シュスタイナの二度目の回復が了を、そして仲間を包んだ。シュスタイナから見える了の顔色も段々と血色を帯びてきているのが解る。
 辿り着いたシュスタイナと聖の下。了はひとつお礼をいいかけ。
「……アークって言いましたよね。お願いします、妹を……」
「貴方の妹さんは、私達がちゃんと助けるわ。勿論貴方も。いい? 勇敢と無謀は違うの。貴方が倒れたら、妹さんはどうするの? しっかりなさい」
「す、すいません……」
 傍で母親のように説教しているシュスタイナと小さくなっていく了を見て、聖はくすっと笑った。気付いたシュスタイナは少しムっとした表情で聖の顔を覗きこむ。
「何よ、鴻上さん」
「いえいえ……災難ですね、了さんも」
「何よ」

「ひ……」
 じわりと追い込んでいくのは壁にか。虎鐵はホーリーメイガスらしき男の前に大きな影として立ちはだかった。
「傷つけても傷つけられる覚悟もないでござるか」
「ひ、ひっ」
 斬魔・獅子護兼久の刃に、たった一筋だけさしていた星の明りが反射したか。一瞬だけ見えた彼の顔は鬼の形相であっただろう。
「子供がこっちの世界ででけぇ顔してんじゃねえよ」
 上から、下に。得物を振り落せば、いとも簡単に右と左に別れた人の身体。突然の血臭に鼻を抑えつつ、虎鐵の瞳は次を探した。

 裏手側。
「合図で行くか。扉ゆっくり開ければ気づかれないんじゃないかな? どう?」
「そうですね、そうしましょうか。合図はじゃあ、セラフィーナさん決めてください」
「私ですか?! それでは、いちにのさん!でどうですか?」
「裏野部っぽいから全力却下で、僕は絶対に認めない、絶対にだ。例えこの世界のミラーミスがオッケーを出しても僕は抗う事を止めない」
「なんだかすいません……」
「じゃあ夏栖斗さん決めてください」
「いっせーのせ!!」
「えっ、扉ゆっくり開けるのに叫んじゃうんですか!?」
「いっせーのせ……」
 裏手より夏栖斗、セラフィーナ、真昼が駆けだした。流石の速度か、セラフィーナが一番に未央の檻へ辿り着いては中の未央の手を握った。
 ―――冷たい。
「あ?」
「……あ」
 ふと、声に見上げたセラフィーナと裕次郎の目があった。まあそりゃ気づかれるよね。裕次郎の斧が振りあがった、2m級の大男だ。セラフィーナから見れば若干の脅威に見えた事は確かだろう。
 セラフィーナは檻に身体を覆い被せ、被弾したとしても未央に被害が行かないように庇った―――のだが。
「ごきげんうるわしゅう! 仕返しするのに大人数? カッコ悪いね」
 飛び込んで来た夏栖斗の蹴りから放たれた撃が、斧を掴む腕に直撃してセラフィーナと檻を大きく逸れた場所に斧は着地した。同時に真昼の気糸が裕次郎の腕を縛り、動かすまいとする。
 斧が回避された事にセラフィーナはもう一度未央の手を握った。
「未央さんですね。私達は正義の味方です。貴方とお兄さんを助けに来ました!」
 反応が無い。
「貴方もお兄さんも、必ず守ります。私達を信じてください!」
 ほんの少し、頭が動いた気がする。生存確認ができただけでも上々か、セラフィーナは檻の鍵と裕次郎が持つ鍵を交互に見た。だがここを離れれば攻撃を庇う者がいなくなる。かといって、真昼は裕次郎を気糸で縛っており動けない。
「夏栖斗さん!」
「ほいさっさ!」
 駆け寄ってきた彼も鍵を見る前に、上着を檻の中の未央へかけた。気休めだろうが――きっと無いよりはマシだ。
「未央ちゃん、だよね。よく頑張ったね」
 檻の構成している棒と棒を夏栖斗は持った。セラフィーナと真昼は一瞬、何しているんだろうかという目線で見ていた訳だが。
「鍵が……」
「ちょっとだけ待っててね、すぐ助ける……ふん!!」
 ぐにゃーっと曲がった、棒と棒。丁度人が一人行き来できそうな程度の円ができた。
「マジですか」
「マジですか」
 驚いたセラフィーナと真昼。だが鍵を奪うより、断然檻を壊した方が早いと踏んでいたアイディア賞か。
 円から未央を抱き寄せたセラフィーナだったが、直後真昼の気糸がぷつんと切れては裕次郎が再び動き出したのだ――斧は、未央へと向かう。


 振り下がった斧の下では夏栖斗が未央を抱き寄せ庇っていた。だが血が飛ぶより先に金属が奏でる轟音が響いたのだ。更にそこに真昼の気糸が絡みつく。行動を奪い、そして真昼の意地がそこにあった。妹がいるのは彼も同じか、だからこその思いか妹が奪われる了の思いがよく解る。全身で怒っていると言わんばかりに、気糸に込めた力はすさまじいものだったであろう。
「貴方は、一々オレの逆鱗に触れてくれる!!」
 更にふわりと舞ったセラフィーナが裕次郎の顔へ横に切り傷を付けた。光が飛沫となって舞って、魅了するには容易いか。
「どうしました? 無力な少女は襲えても、刀を持った私は怖いんですか。とんだ意気地なしですね」
 気糸と、魅了の呪いの中でもがく―――。
「よぉ、拙者と同じタイプの奴でござるな? ……しかし、拙者の方が数段上手でござろうがな!!」
 虎鐵の得物が斧を寸前で受け止めていた。そう、受け止めた斧に威力と言う名の重みが無い。こんなのは虎鐵にとって攻撃と呼ばせるには笑ってしまう程か。
 彼の得物は既に幾人もの血を吸っていて、その血がぽたりと夏栖斗へと落ちていく。
「妹を守るのは兄の役目でござろうが、……息子を守るのは父親の役目なんだよ」
 ぼそりと呟いた言葉は誰にも聞こえなかっただろうが。斧を弾き、その弾いた勢いで後ろへよろけた裕次郎へ虎鐵は重い一撃をお見舞いすれば、片腕が千切れてポーンと飛んだ。
「あ? あああ? ああああああああ?!!」
 叫ぶ声に、不安になったのは部下の方であったか。

「うわああああああリーダーの腕が飛んできたああああああ!!」
「おい、落ち着けよお!! う、うわ、ああああああ!!」
 頂点が崩れるよりも早く、部下達の心が崩壊しかけていた。というのも、この圧倒的な戦力差を魅せられている中で頂点が限りなく死に近づいているこの状況、仕方も無いか。パンパン、と手を鳴らす比翼子。
「はー? でも一人も逃がさねーよ。全員今日が終末だぜー?」
「うるさあああああい!!」
 比翼子は男達にも解るくらいの動作で溜息を吐いて見せた。
「超うるさくしてないのに、状況判断もできねーのかよー」
 ナイフを振り回した、つまりダンシングリッパーを受けて頬から血を流した比翼子だったが怯まない。常にアッパー、誰一人逃がさないままに。
「まあ、それまでだったってこった」
 追撃、ナイフとダガーに力を込め、幾重にも。多重の比翼子が同じ動きで集めたフィクサード達へ得物を突き刺し、切り裂き、命さえ、フェイトさえ奪っていく。
 混乱したままに仲間まで攻撃し出すフィクサード達を見て、
「もうこれ、組織壊滅したって見てもいいわよね」
 なんて焔は溜息をついた。
 トン、と跳躍し。弧を描きつつ振りまいた炎に哀れなフィクサード達を火葬しましょう――その先。着地した焔は其の侭裕次郎の下へと走った。
 続く攻撃に、聖は神罰を両腕に持つ。
 神事服をなぞる様に十字を描いて、鎮魂を願いつつ。容赦の無い断罪という名の刃の雨を降り注がせた。
 隣で聖の行動を見て、己もコインを投げて攻撃していた姿に重ねてか、ちょっとした感心を覚えているのか目が煌めいている。ともあれ見ている光景は、はっきり言えば人殺しの光景だ。目を輝かせている事は、良くないと言えば良くないのだろうか。
 それとも復讐心から、復讐に力を貸しているから相手が崩れていく様が楽しいのか――どっちにしろ。
「胸糞悪い連中ですが、命を奪うという事は相応の覚悟は必要ですよ。ましてや戦わない事を選択している貴方に」
「……そ、そうですね」
 ある意味、神父としてストッパーたる役目は果たしておいた方がいいのだろう。

「ちょっとやりすぎたかしら」
 範囲の技が多かったからだろうか。半数さえ倒せれば、と作戦を組んでみていたものの、焔の炎が消えた時、残っている数は四人と裕次郎。その四人という四人はもう戦いたくないと端に固まっている程だ。その男達へ刃を向け、敵意が無いか確認するセラフィーナ。
「貴方達は……」
 四人の方を見て、セラフィーナが投降を呼びかければ首を縦に振るを容易い。
「それで、残ったのは貴方一人だけれど?」
 シュスタイナの回復が再度仲間を包んだ。もはや精神力は別の話だが、体力こそ全員が完全に近い状態だ。
「ぐ、ぐぐぐぐ……」
「私、少女を拉致して~ってこういうの嫌いなのよね」
 例え、投降すると意思表示された所で許せる状況か。それはシュスタイナこそ解らないけれど、おそらくこの男は――
「どうせ、投降もしないんでしょ?」
「するわきゃねええだろ!!」
「そ」
 なら―――死んじゃいなさいよ。
「そういう事だ。じゃあな」
「うるせえええええええええ!!!」
 辛辣な言葉が並べられた直後、裕次郎の片手が斧を持ち虎鐵……では無く夏栖斗へと投げられた。他のフィクサードの様に逃げたり泣いたりしなかったあたり、この裕次郎という男を褒めてやっても良かっただろうが大きすぎる地雷を踏み過ぎたか。
 ぷつん、と虎鐵の何かが切れたとき、彼の得物――それが裕次郎の心臓部に飲み込まれていく。
 少女が一人、誘拐されて死にかけて。取り戻そうとした兄も死にかけて。家族を奪われる苦しみが、如何に地獄かを知れ。
 飲み込んだ刃に、口から血を吐いた裕次郎。更にその刃はぐるりと回され、もはや彼の心臓というものはミンチになったに違い無い。抜き取り、返り血を浴びつつ大男は足から崩れた。
 真っ赤に染まった顔で虎鐵の瞳は平行していく――四人のフィクサードへと。
「次何かして見ろ……おぬしらの血肉……飛散させてやるでござるよ?」
 無言で頷く者、気絶した者、泡を吹いた者。そんな組織は潰れるのに容易いと言えば、このアークの面子では容易かっただろう。
「夏栖斗さん大丈夫ですか?」
「……生きてるよ」
 未央を腕の中に、斧の突き刺さった背にシュスタイナは回復を施し、最後に聖が十字を切って終わった―――。

 死体の傍で、了は立つ。
 できれば自分でトドメを刺したかったけど――それができたかは解らない。


 敵対する存在は全て抹殺する。家族を安全な場所に越させる。貴方が家を出る。方法はなんであれ、これからどうするのかと了に聖は問う。
「どの方法であれ、リスクとハードルは存在しています。
 ……別にお前がリベリスタ止めたって誰も責めねーよ。ただ、続けるんなら相応に覚悟は必要ってこった。どれを選ぶのも自由だが……後悔だけはしないようにな」
「俺は……」
 リベリスタ皆が差し出してくれた防寒服に包まれて、食料を漁る未央の隣で了は考え込んでいた。
「妹が安心して暮らせる場所を探します。三高平がそうだと言うのなら、そこに。ともあれ、助けて下さってありがとうございました。ほら、未央もお礼しろよ」
「もぐもぐもぐもぐもぐ」
「まだ飯あるよー」
 未央を撫でながら焔はそんな事を言っていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした
結果は上記の通りになりましたが、如何でしたでしょうか
MVPはシュスタイナさんへ
貴女の言葉が無ければ確かに了は回復直後に裕次郎へ突っ込んでいました
了のノーフェイス化させる分岐を消した行動を評価したいと思います
それではまた違う依頼でお会いしましょう