●思い出の形 品良く調度された屋敷の一室で、ボーンチャイナのティーカップから立ち上る菩提樹の香りが、若い女の鼻腔をくすぐる。 女――藤谷レイは、シックなカーテンから覗く陽光に目を細めて呟いた。 「貴方が淹れてくれる紅茶は本当に美味しいわ、チャールズ」 すがすがしい夏風が吹き抜ける広い室内で、チャールズと呼ばれた白人の男が、レイの肩に手の平をかける。 「ねえ」 ティーカップを皿に戻したレイが振り返り、男女のはにかむような視線が交差する。 「あの時はダメだったけれど、今度はきっと大丈夫よね」 男は何も答えない。 言葉を失ったかのように、ただ静かに笑顔を貼り付けたまま佇んでいる。 「覚えてる? イギリスと日本を結ぶから、紅茶にインドの菩提樹を混ぜたって」 レイは、肩に乗せられた逞しい手の平に、自身の細い指を重ねる。 「もともとダージリンなのに、気づかない貴方」 レイはくすくすと笑い、テーブルの上の新聞を手繰り寄せた。 好戦ムードを煽り立てる記事は、あまりに古めかしい。 「今度はちゃんと私達が戦争をとめるの、素敵でしょ?」 彼は、なおも答えない。 「日本の軍隊も、アメリカも、イギリスも、この魔法の鏡があれば大丈夫」 レイが目を閉じる。 「邪魔者は、みんなやっつけましょ」 だから―― 「もう二度と、あなたを殺させはしない」 レイは小さな手鏡を握り締めた。 ●夢と現 薄ぼけたモニターの映像は途絶え、代わりに映し出されたのは鮮明な老婆の写真。 「藤谷レイは、小さなアパートの一室で、静かに眠りについているはず」 事象を曖昧に、そして淡々と告げる『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の言葉にリベリスタ達は眉をひそめた。 「94歳の独居老人。家族は居ない」 暖かなブリーフィングルームで、リベリスタが質問を投げる。 「で、今のはいつの話?」 「昨日」 イヴの即答。ますます分からない。 「あの手鏡、グラス・オブ・スーヴェニールは、使用者が夢に見た懐かしい光景をこの世界に具現化させてしまうアーティファクト。 より具体的には、使用者の思念を媒体にエリューション・フォースを発生させる力を持っている。 代償として、使用者は深い眠りに落ちる。どちらにせよ、同じような夢を見ているはずだけど。 アパートの室内に入れば、そこにはさっきの映像のような空間が広がっている」 分かったような、分からないような。 「今はただ、彼等は思い出をめぐっているだけ」 でも? 「そのうち、このおばあちゃんの夢からつくられた素敵な彼氏が夢のサーベルやピストルを振り回して、現実の人がたくさん死ぬことになる」 なるほど。 「お願いしたい任務はふたつ。一つは、発生したエリューション・フォースの撃破」 「若い頃のおばあちゃんと、彼氏?」 「そう。もう一つはグラス・オブ・スーヴェニールの奪取、もしくは破壊」 イヴが続ける。 「彼女を守る夢のスーパーヒーローに気をつけること」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:pipi | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月31日(日)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● この日、山の手の洋館は清涼な風に包まれていた。 アンティークを思わせる暖炉には火が灯っていない。 それもそのはず、今は夏であり七月も終わろうとしているのだから。 物言わぬ英国軍人が、そっとティーポットを傾ける。午後四時少し前のティータイムだった。 白いカップを満たす爽やかな橙の色彩は、その葉がダージリンであることを告げている。 レイがカップを持ち上げると、リンデンとダージリンの柔らかな香りが広がる。 茶葉に菩提樹の葉と花を混ぜたのだろう。 仮に紅茶を日常的に嗜む者から見れば、そこで使われている茶葉は余りにありふれているかもしれない。 上質なダージリンを特徴付けるマスカテル香とて、よほど注意深くなければ感じ取ることも出来ない。 ただダージリンであるという特徴だけを印象付ける。そんな茶葉である。 だが彼女等にとっては、ひどく高価なものだった。 それは、なぜか。 「ねえ、チャールズ。もうすぐ日本の兵隊が踏み込んで来るわ」 レイがそっとつぶやき、古めかしい時計の針音が重くかつんと響く。 アンティーク趣味があれば、洒落た時計だと述べるかもしれない。 だが彼女等にしてみれば、『ハイカラ』と言ったほうが馴染み深い言葉だった。 彼女等が感じ取っている時は、遠く過去のものである。 「私には未来が分かるわ」 だが、過去と現在、夢と現は、どこか薄らぼやけていた。 英国軍人――チャールズは何も語らない。 最早彼女はチャールズの声を思い出すことが出来ないから。 「この魔法の鏡があるから」 だから鏡によって、実在する夢となった彼は何も話さない。 今、この空間にエリューションとして具現化している己自身さえ、老婆――藤谷レイの回想の産物であるという事実にも気づいていない。 老婆は、そして老婆に生み出されたレイは、この日、この時間、この部屋に特別高等警察が踏み込んでくる事を知っていた。 そして老婆の思い出の中のチャールズは、それを知らない。 なぜならば、在りし日の彼がそれを知らなかったから。 そして警察達は、抵抗した最愛の恋人チャールズを拳銃で射殺するのだ。 若き日のレイは顎を上げ、リンデンの香りにマドレーヌを浸す。 (だけど今回は違う。私達には拳銃とサーベル、そして魔法の鏡がある) たった二人で世界に立ち向かう姿に、悲壮さは微塵もない。 レイは立ち上がった。チェアのバリーシュガーツイスト脚が、深い絨毯に軌跡を残す。 そして。カチャリ――ドアノブが音を立てた。 ● 開け放たれた扉に穿たれた弾痕は、女性型のエリューションフォースであるレイが刻み付けたものだ。 たった今弾丸を射出したはずの銃口から硝煙がたなびくことはない。 扉から飛び出した二名のリベリスタ雪白 桐(BNE000185)と『首輪付きの黒狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が真っ直ぐに駆け抜ける。 「おっと」 先の一撃は咄嗟のもの。今度こそ狙いをつけて二発目の引き金を引こうとした直後、ライフルを構える『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)の銃口から弾丸が放たれる。 「夢の中とは言え素人に早撃ちで負けられないんでね」 いつ狙いを定めたのかすら読み取れないすさまじい早撃ちは、レイが手に持つピストルを大きく吹き飛ばした。 レイは一瞬だけ口を開きかけるものの、そのまま瀬恋の黒い瞳を睨みつける。 さらに五名のリベリスタ達が部屋に突入する。 「わらわは恋乃本伯爵家の桜姫。お初にお目に掛かるのじゃ」 「無くしたものは取り戻せないのです。不幸が溢れてしまう前に、止めさせてもらいますね」 次々とリベリスタ達の激が飛ぶ。 「さあ、あたしは貴方達が大ッ嫌いなロシア人よ、精々狙うといいわ」 男性型エリューションフォース――チャールズを狙うために走る二名に続き『Kryl'ya angela』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)の指先から、気糸の網が放たれる。 「チャールズッ!」 レイが金切り声を上げると同時に、彼女は気糸の直撃で強かに縛り付けられる。 悲鳴を聞いたチャールズが、いつの間にか抜き放たれている軍刀で桐と吾郎を迎え撃つ。大振りの一閃だ。 瀬恋の早撃ちのようなものとは違う何かが、そこにはあった。 「成る程。夢の中とは、厄介なものじゃ」 呟く『伯爵家の桜姫』恋乃本 桜姫 鬼子(BNE001972)は敵をしっかりと視界に捉えていたはずである。であるにも関わらず、そのサーベルはいつの間にか出現していたのだ。 走りながら速度を増した吾郎は、その一撃を俊敏な足捌きと長剣でいなす。 初撃は捌ききったものの、吾郎の拳は剣の振動に痺れている。強烈な打撃ではあったが、この程度なら凌ぎきることが出来るだろう。 レイの夢を模したこの空間が、不条理な特性を持つことは織り込み済みである。 ただそれが具体的にどのような効果をもたらすのかまでは、検討がつかない。 そんな空間で、偽者のレイが偽者のチャールズを愛するその様子は、どこか痛々しい気配を孕んでいた。 ただ偽者というだけではない、そのどちらも現実を生きるレイ自身が生み出したものなのだ。 お墓の中のチャールズは嘆いているのではなかろうか。 『墓守』アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)が、リベリスタ達に守りの結界を展開する。 「うん、夢の中でもちゃんと僕達の能力は発揮出来るみたいだね」 吾郎がいなした一撃を、リベリスタ達は横目に捉えている。そんな攻撃が度重なれば何が起こるかわからない。 だがこの術の発動により、着実に軽減してゆくことが可能だろう。 「なんなのッ!? あなた達! 特高でも兵隊でもない!」 悲鳴にも似たヒステリックな叫びを浴びせられたのは、現実を生きるリベリスタ達である。 彼女等が恐れる警察でも、兵隊でもない。そんなものは、ありもしないのだ。 「夢は夢で終わらせましょう」 そう、ここは老女の夢が具現化した世界である。 「どう足掻いても歴史は変えられませんし、本物のチャールズさんは帰ってきません」 ならば老婆が現実を見据えることになれば、何らかの効果を生むかもしれないとリベリスタ達は考えた。 何よりもこれは偽りの夢である。残された美しい思い出を穢すことになるのではないか。 そう思わせることが出来ればいいと『ネフィリムの祝福を』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は思った。 だが、突然の事態に錯乱しているのだろうか。金切り声をあげるばかりのレイにヴィンセントは首を振り、散弾銃を構える。 エレオノーラが放った気糸にもがく彼女ではあったが、動き出すのは遅かれ早かれ時間の問題だろう。 突入寸前に闘気を爆発させていた桐が、大振りの両手剣を横なぎに振るう。 素晴らしい膂力に裏打ちされた暴風が吹き荒れ、チャールズは振られた剣と同じ速度のまま背後の壁に激突した。 二体のエリューションフォース達を引き剥がす作戦は、順調に展開されつつあるようだ。 そうしておいてレイを狙う。そうそう夢のヒーローであるチャールズへの支援を展開されてもらってはたまらないからだ。 左手に長剣を握る『贖罪の修道女』クライア・エクルース(BNE002407)もレイの元へと走る。 彼女は珍しく本調子ではないようだったが、リベリスタ全体を見渡せば、徐々に展開されてゆく戦況は今の所安定していた。 「夢を見るのは自由だがな……どんな夢だろうと」 チャールズと相対し、一気に集中を高めた吾郎の剣から、音速の刃が放たれる。 「現実に影響したら良くねぇな」 その刃はチャールズの胸を一直線に貫き、その後ろの壁紙さえもずたずたに引き裂いた。確かな手ごたえは、間違いなく痛打を与えたはずである。 さらに、桐の細い腕に握られた両手剣が振りかぶられる。長大な剣とは思えぬほどの速度で、チャールズが切り刻まれていく。 この程度の動きをするフィクサード等であれば、チャールズはここで沈むはずだった。 だが。 「え……」 五月雨のように突きこまれた剣の嵐が止んだ直後、出合った時と変わらぬ笑顔を貼り付けたままのチャールズがゆっくりと起き上がる。 「どういう、こと?」 チャールズの身は、吾郎が放った音速剣の振動によって痺れをきたしていることは確かだ。 なのに傷一つ無い。そう見える。ここにきて初めて、リベリスタ達に戦慄が走った。 ● それでもリベリスタ達はチャールズを押さえ込み、レイの行動を封じながら成果が目視出来ぬ打撃を着実に与え続けている。 二体のエリューションフォースには、一方的と言っても良いほどの攻撃が注ぎ込まれ続けていた。 攻防の回数は既に四順を数えている。 桐と吾郎は、チャールズを切り裂き続けている。 アンデッタの鴉がレイに直撃し、ヴィンセントの弾丸が胸の中心に吸い込まれる。 「今は昭和ではなく平成じゃ。大東亜戦争は既に終わったのじゃ」 レイに……その元となった老婆に語りかけるように、鬼子が声を上げる。 「そちのやっている事は、かつてのそちと同じ境遇の者を増やすだけじゃ」 可憐に舞うような脚から放たれる烈風が、レイに直撃した。 しかし敵の損耗が見えない。 これが幻影であれば、貫いたスラッグ弾が壁にこじ開ける穴は、遥かに大きなものになっているはずだ。 鴉が持つエネルギーは、確実に破壊の力へと転じられている。 なによりも、接近しているエレオノーラは大きな手ごたえすら感じているのだ。 それならこれは実体かといえば、それもまた確証が持てない。敵はそういう相手だった。 その手ごたえある一撃を身に浴びて、身体の痺れに身動き出来ぬはずのレイの腕には、いつの間にか拳銃が握られていた。 ならばと瀬恋は、再びライフルを構える。その一撃は狙い違わずレイの目を射抜いた。さらにレイの頭部を貫いた弾丸によって背後の壁が大きく穿たれる。 常人ならば。いや、並みのフィクサードであろうとも、この状態であれば即死……頭部すら形を残して居まい。 手ごたえはある。それも大きく。なのにレイは身体の痺れを打ち払い、健在な両目でアンデッタに狙いを定める。 夢の弾丸は結界を貫き、威力を幾分弱めながらも彼女に突き刺さった。 稀に動きを許すこともあるが、怒りの付与により強化の暇は与えていない。 この時まで、リベリスタ達は二体の動きを完全に封じきっていた。 だが、度重なれば不運もある。 「助けて、チャールズ!」 この綻びは、誰が悪いわけでもない。 レイの叫びによって、チャールズの動きが格段に早まる。 吾郎と桐に、刃の暴風が降りかかる。今までの攻撃も重く鋭いものであったが、今度の一撃は桁が違う。 これまで二人は、チャールズの痛打を避け続け、状態はかすり傷といっても良かった。 しかしそれまでとは大きく異なる凄まじい一撃は、吾郎と桐を大きく切り裂いた。 リベリスタ達はめげずに猛攻を加え続ける。 しかし、これまたいつの間にか握られているレイの手鏡が輝き、チャールズを包み込んだ。 唐突に訪れた厳しすぎる状況だった。 「うん。分かったよ」 絶望的な状況の中で、戦場を俯瞰していたアンデッタが小さく呟く。 レイがチャールズを癒したということは、彼には癒しが必要だったということである。 そして鬼子が切り裂いたレイの胸元からは、僅かに、ほんの僅かに細く煙のようなものが噴出している。 これはなにかと、ヴィンセントが目を細める。 人の身に当てはめるなら、血を流しているのではないか。 ならば――エリューションフォース達は、既に大きく傷ついているのではないか? 「なるほどね」 瀬恋が鋭い瞳を細める。 彼女も気づいた。彼女の一撃によって取り落としたはずの拳銃も。潰したはずの目も。なるほどそういうことだったのか。 「ならば、さっさとお仕事片付けましょうか」 三名が何かに気づくと同時に、チャールズの身体からエネルギーの奔流が迸る。 強烈な閃光が室内を荒れ狂い、チェアがへし折れ、重厚なテーブルが吹き飛んだ。 「戦争を無くしたい気持ちは解ります。ですが」 光を身に浴びながらも、桐は宙に吹き飛ぶ卓を器用に蹴りつけて跳ぶ。 「もう終わっているのは理解されているのでしょう?」 中空から放たれた強烈な斬撃はチャールズを再び壁に叩き付けた。 ここはレイが思い描いた空間ではある。だがあくまで、発生したものはエリューションフォースだった。 その能力は文字通りの神秘であり、不可思議な空間まで発生させ得るものではある。 そんな中で確かな確証があったわけではない。証拠もなければ、証明も出来ない。 だが彼女がこれまで観察してきた戦場の成り行きは、全て彼女の推測を示唆していた。 敵は、確かに傷つき続けているのだ。その身体は思念体である。そうは見えないだけだ。 その手のピストルも、唐突に現れた鏡も、全てが見た目だけのもの。そこに居るのはあくまでエリューションフォースなのだ。 ならば本物の鏡はどこかと新たな疑問も生じるが、彼女の推測が確かならば、ここで攻撃の手を緩める訳にはいかない。 だからアンデッタは叫んだ。 「大丈夫! このまま攻め続ければ、勝てるよッ!」 少女の叫びに吾郎が獣の口元をゆがめ、剛毛に覆われた頬に流れる血を逞しい手の甲で拭った。 チャールズの一撃により体力を大きく削がれたリベリスタ達であったが、これまでの確かな戦術により、未だ倒れた者は居なかった。 ――反撃が始まる。 ● 「何なの、あなた達ッ!」 レイが叫ぶ。 「どうしたもこうしたもないね。恥ずかしい婆さんだな」 瀬恋が、今度はレイの胸の中心を正確に打ち抜く。 長銃を使っての目にも留まらぬ早撃ちは、彼女でなければなすことが出来ぬ一撃だった。 「そんなに愛しの彼に会いたいならさっさと往生したらどうなんだい?」 「だめよ! 私は、今度こそッ!」 「残念だわ、非常に残念」 「兵隊が!」 声を張り上げるレイに、エレオノーラが鉤棒を構える。 来るはずがない。レイは唯それが来ると思い込んでいるだけだ。 「戦争を止めたい人はどの時代にも居るわ。でも止められた人なんて居ない」 絨毯を真二つに切り裂きながら走る剣圧は、今度こそレイの全身を粉々に打ち砕いた。 「これでよかった」 ヒーローが倒される姿を、レイは見ずに済んだのだ。 偽善かもしれないと、散弾銃を構えるヴィンセントの頬に苦い笑みが浮かぶ。 この姿はレイの偶像なのであろうが、こんな力で戦争の趨勢を変えられるとは思えない。 無邪気な夢ではあるが、その脅威は今しがた目の当たりにした所である。 スラッグ弾が飛び出す。その一撃はチャールズの逞しい胸を、人であれば心臓を強かに打ち抜く。 チャールズは倒れない。傷つきもしないが、レイの消滅を目にした後である。十分な手ごたえを感じただけ、気は楽だった。 「あんた、婆さんの何なんだろうな」 残されたチャールズに、剣を構える吾郎が語りかける。 「恋人って所か? あんたに言っても仕方ねぇ事だけどさ」 チャールズは、その微笑を貼り付けたまま軍刀を掲げた。 「それなりの仲だったなら、止めてほしい時もあるぜ」 もしかしたら、当時であれば、あるいは良かったのかもしれないと彼は思った。 だが、ここは現代であり、当時の彼等はもう居ない。 今はもう遅すぎるのだ。戦争は終わって時間が流れた。 居るのは、いずことも知れぬ年老いた老婆と、摩訶不思議な手鏡。そして生み出された二体のエリューションフォースだけだ。 狼の俊敏で吾郎が駆ける。逞しい腕に握られた長剣が唸りを上げる。 次々と繰り出されるリベリスタ達の連撃に、最早彼に打つ手はなく。 それでも再び軍刀を大きく振り上げたチャールズは―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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