●恐怖のアザーバイド、エイリヤン! 突然だが、俺の名前はエイリヤン。 あくまで種族の名前を簡略化したもので、実名に関しては人間が知覚できない次元の言語を用いている。紹介できないのが残念だが、親が流行に乗って不思議な読みの名前をつけたことを知られずにすむのはある意味ありがたい。 今はこの星……いや、このチャンネルに流れ着き、細々と暮らしている。 俺の故郷には人間と似たような種族も存在していたが、ここの世界で言う牛や豚のような……そう、家畜として扱われていた。それも、もっと強靱で悪しき精神を心に宿しているものばかりだ。 里で牧場を経営していた俺にはわかる。 この世界の人間というのはあまりに貧弱で善良なものばかりだ。こんな肉を食べようものならすぐに栄養失調をおこしてしまうだろうし、それ以前に精神臓器が胃もたれをおこしてしまうだろう。 分かりやすく言うならば、俺は『いいひと』を食べられないのだ。 だが仮にもエイリヤンの牧場主。食べられる人間を選別するすべを、俺は早い段階で獲得した。 そのすべというのが、エネミースキャンである。 これを用いることで、この世界に比較的少数存在するという『革醒者』という強靱な肉をもった人間を選別することができる。そして私は元々相手が善良であるか否かを判別できる感覚器官が備わっているのだ。これで私は生きていける。 私はこの星……いやチャンネルで獲得した『バールのようなもの』という農具を用い、今日も自らの飢えをしのぐべく狩りに出るのだった。 「あらいやだわん。排気ガスだらけで空気がまずいじゃないのよぉん。これじゃきっとお水も汚いに違いないわ。よくこんなところで生活できるわね、ぷんすかぷんっ」 説明しておくが、今喋ったのが俺だ。 この星……いやチャンネルの言葉はとても深みがあって気に入っている。『ギンザ』という集落を統治していた性別の分からない人間から教わった特殊言語で、あらゆる種族よりも高い強制力をもっているという。確かに、この言語で語りかけられたものはすぐに茫然自失状態となる。 「おじゃまじゃま~ん♪ こんな所で悪いことしてるコはだーれ? アタシがオ・シ・オ・キ、しちゃうわよん!」 扉を蹴破り、バールを掲げて突入する。 中では善良な人間が毛皮……いや、衣服をはぎ取られ、妙にやわらかい寝具に縛り付けられていた。こいつは後で保護しておこう。食べもしない屠殺ほど無意味なものはない。 その周辺では二次元映像を数十時間程度しか記録できないという貧弱な記録機材を回す人間と、そのた数人。 「あ~らん、おいしそうなボウヤ。食べちゃいたいわぁ~ん!」 その中でも特に悪しき精神をもっていそうな人間をまずバールで一撃。だが強靱な肉体を持つ人間のこと、バールは途中でへし折れてしまった。 「な、なんだこのバケモンは! ぶち殺せえ!」 奥から悪しき精神をもつ人間がぞろぞろと飛び出してくる。 中でも百五十キロ前後はあろうかという横に太人間が、からだをずんずんとゆらしながら他の人間たちに命令を始めた。 「こりゃ珍しいバケモンだねえ。引っ捕らえて見世物にしてやんな!」 「あらやだ、バケモンだなんて失礼しちゃうわねん!」 鞭をしならせて飛びかかってくる太人間。 俺はそれを、素手で迎え撃たねばならなかった。 正直に言おう。 今の私の実力では逃げるのが精一杯だ。 あらためて紹介する。 俺の名前はエイリヤン。 この星……いや、このチャンネルに流れ着き、いつしかフェイトを得たリベリスタのひとりだ。 ●まさかのエイリヤン救出作戦 フォーチュナの説明は以下の通りである。 アザーバイド性リベリスタ『エイリヤン』がフィクサードの集団に襲われているので、それを救出する任務。 関東、さびれたビル街の一角で、エイリヤンはフィクサードの群れから逃げながら必死の抵抗を行なっているそうだ。 今すぐ現地へ飛び、フィクサードたちをたおすのだ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月26日(火)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●タイトルと実物のガッカリ感による二段構えのB級臭 「お客様ぁー! お客様の中に人妻はいませんか! ゆるふわで縦セタの、じゅうななさいのおっぱいおおきい人妻はいませんかあああああ!」 涙を流し、『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)は叫んだ。 ふわふわカールの金髪女性がゆっくりと振り返る。 「それはつまり……アタシのことだね?」 カバとクロコダイルとMデラックスを足して3をかけたような女だった。 「あたしのバストサイズ、フーミンの倍はあるわよ」 「そんなおっぱいは求めてねええええええええええうわああああああああああん!」 血の涙を流して崩れ落ちるSHOGOであった。 完全な余談だが、シナリオの雰囲気次第でSHOGOと翔護で表記を使い分けることにしているが、今回どっちなの? SHOGOでいいの? ……さておき。 エイリヤンさんは突如現われて勝手に崩れ落ちたSHOGOを前に、はたと足を止めていた。 「あらやだこの子、全然美味しそうじゃないわ珍しい」 「えいりやん!」 シャッとスライドインしてくる『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)。 「わたし! ともだち! なのです!」 初めてケニアの人に出会った日本人のごとく、全力のボディーランゲージをはかるイーリスである。 「あらやだ。この子もおいしさゼロパーセントじゃない。どんな育ち方したのかしら、いやねえ……」 手の中でバールのようなもの(実際にはネイルハンマーを簡略化したもの)をくるくるもてあそびながらエイリヤンは言った。ちゅーても途中で折れてるので、かなりタイトな鉄の棒になっていたが。 そうこうしている間にも、追いついてきたワルなやつらが周りを囲み始めていた。 「おいおいそのバケモンは俺らの獲物だぜェ、ハァッ!」 「新しい企画モノの素材にするんだぜぇ、ヒャーハー!」 ささっと間に割り込む『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)と『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)。 エイリヤンに背中を向けつつ、ちらりとだけ振り返って言った。 「どうも、特務機関アークより、助勢に参りました」 「あらあら、摘発屋さん?」 「というより、神秘を使いすぎるひとをやっつける仕事してます。利害は一致してると思うんですけど……えっと、ミスター・トミー?」 「だあれそれ」 「とにかく!」 いつのまにか割り込んでいた『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)がナイフを交差させて凄んだ。 「変態なことに一般人を利用するなんてダメ! エイリヤンさんも捕まってるひとも助けるよ! ね、紗夜さん! ……紗夜さん? どこ?」 「ココダヨ!」 立て看板に『さーや』と書かれた何かがゴトゴトいいながら運ばれてきた。『偽悪守護者』雪城 紗夜(BNE001622)だと思って頂きたい。 それを片手で支える『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)。 「紗夜はうっかり白紙やっちゃったのでアレだが……戦闘にはちゃんと参加しているんだ。描写が無いだけでここにいるんだ。本当なんだ」 「誰に言ってるの? なんのために言ってるの?」 「とにかく!」 手刀を交差させて凄む郷。 「やいやいフィクサード、ここは異文化交流だろ。余裕もとうぜ余裕。な、靖邦」 「いい臭いのする、それでいて深夜のエロアニメを思わせる人妻は……え? ああうんバルスバルス」 「「あぁら……よく見るとイイオトコ」」 同時に頬へ手を当てる人妻(人妻だよ!)とエイリヤン。 かなり後ろのほうでぶんわか飛んでいた『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)が、乾いた目で遠い空を見上げた。 「センスフラグ……積んどいてよかったね」 そして、人妻たちが出てきたであろう建物をちらりと見やって、素朴な……それでいて結構重要なことを呟いた。 「ところで、あそこでナニしてたのかしら。っていうか、誰がいたのかしら……?」 ● そのうち大変なシーンばかりになるはずなので、今のうちに綺麗な戦闘シーン見といてネ! 「行くよ、避けて!」 風よりも早く駆けたルア。 ウェーブの髪が大きく靡き、花弁の如く氷雪が散った。 「こんな所でまけてられない。この足は、守るべき人のためにあるんだから!」 両手のナイフがまるで白鳥の羽先のように空を切り、彼女はくるんと旋回してみせた。 花が散り、鳥が舞い、男たちが一斉になぎ倒されたがしかし、ルアのやったことと言えば飛び込んでくるりとつま先で回ったにすぎない。 それだけの美しさと鮮やかさが、彼女にはあったのだ。 「まだ守れる命が、あるなら――!」 あ、綺麗なシーンここまでです。 「ダアアアラッシャイオラアアア!」 「ぐンぬぬぬぬぬぬぬぬ!」 人妻がバイデンさんもかくやという形相でパイプ椅子をガンッガン叩き付けてくる。 腕をクロスさせた郷はそれを歯ぁ食いしばって耐えていた。 「須賀さんはエイリヤンを! 俺は雲野を庇う! 誰も奥へはいかせないぜ!」 「ゴタクはいいのよ、さっさとイッちまいなあ! オラァ!」 暫くごすごす叩いた後、人妻は郷の顎を掴んで引っ張り上げた。 地面から郷のつま先が離れる。片手だというのに。 「それともアンタがアタイをイかせてくれんのかぁい!? エェ?」 「ぐ、だれが……」 「その人をはなすのです! いーりすすまっしゃー!」 ミサイルの如く突っ込んできたイーリスが、人妻の横っ腹に頭からぶつかった。後のイーリストマホークである。 「ほぐぅお!?」 ふぐ毒を間違えて喰っちゃったMデラックスさんを彷彿とさせる顔で腹をおさえる人妻。 げほげほいう郷を片手で庇いつつ、イーリスはスピアをびしっと突きだして見せた。 「この人妻、意外と前に出てくるのです!」 「雑魚に梅雨払いさせるって発想はないのか」 「オトコの力だけをアテにしてるようじゃ人妻は勤まらないんだよボウヤ!」 フゥンッといって繰り出されたパイプ椅子を、イーリスがスピアで受け止める。 「お、重いのです! 体重がのってるのです!」 「イーリスさん伏せて伏せて!」 「はい宇宙のかたもご一緒に、キャッシュからの~!」 ライフルをしっかりと構えるユウ。 銃を横向きにして構えるSHOGO。 「「パニーッシュ!」」 一瞬の連係プレイである。 ユウとSHOGOが打てる限りの弾を思いっきりぶっ放す。直前に郷が屈み体勢からの腹蹴りを繰り出し、人妻が若干のけぞった隙にイーリスが『なんとー!』とか言いながら横転。 イーリスのすぐ横を通り過ぎた弾丸が人妻の胸にめり込み、追い打ちとばかりにエイリヤンのバールもどきが叩き込まれた。 よたよたと後退する人妻。 「よくもアタイの身体にキズをつけてくれたね……アンタたち、やっちまいな!」 「「ヘイサァ!」」 バタフライナイフや釘バットを持った男たちがここぞとばかりに飛びかかる。 が、しかし。SHOGOたちの背後から飛び立った杏がそれを迎撃した。 具体的にはどうかって? ギターのネックを野球バットみたいに構えるじゃん? 腰ひねって振り上げるじゃん? ストライクゾーンに火球生み出すじゃん? 「バッター一球、打ちましたァ!」 フルスイングするじゃん。火球めっちゃ分散して飛ぶじゃん。男たちの顔面にジャストミートじゃん。落ちるじゃん。その際杏さんのおっぱいすげえ揺れるじゃん。みんなそれに釘付けじゃん。みんな戦いのこととか忘れるじゃん。つまり世界平和じゃん? 「ア、アンタたち……!」 「隙だらけだ」 体勢をやや低くする義衛郎。前髪が一本垂れるその間に、彼は風と化していた。 刀に手をかける時には既に柄を握り込んでおり、柄を握り込む時には既に鯉口を切っている。鯉口が切れた時には既に刀身が全て抜刀されており、抜刀しきった時には既に刀は収まっていた。 それら全てが終わったときには、義衛郎は人妻の背後に立っていた。 背筋を伸ばし、垂れかけた前髪を指でなおす。 「ぐ、ぐふぅ……!」 膝から崩れ落ちる人妻。 近くでスタンバってた部下の一人が、人妻を素早く台車に乗せた。 「ちくしょう! 覚えていやがれ!」 一晩は練習したんだろうなっていうキレキレの決め文句を吐くと、彼はアジトらしき奥の建物へとダッシュで逃げ帰ったのだった。 ● さて、エイリヤンさんも助けてめでたしめでたしかと言えばそうではない。 建物の中には今も一般人? と思われる人が取り残されている状況だった。 まあこのまま帰ってもダメじゃあないが、それじゃあ収まりがつかないってえもんである。 「みんな、行こう! とらわれのひとを助けるよ!」 ルアがすごい綺麗な顔で言った。 そういえばそういう話だった気もする、という顔でこっくり頷くユウ。 入り口前にはなんちゃらビルと書いてあったが、看板が朽ちていてよく読めない。テナントビルであることは間違いなさそうだ。 中へ入るとさっそく部下っぽい男二人組が出迎えてくれた。 丁度上階への階段を塞ぐ形である。 「大歓迎ですね」 「好意的、じゃあないな」 男たちがダァラッシャテメェみたいなことを言いかけた時点で、義衛郎は既に斬りかかっていた。 反射的に鉄パイプを翳す男。外の雑魚とはやはりひと味違うようで、義衛郎の刀はがちりと受け止められていた。 「なぁにすっちゃかテメェ! 挨拶くれぇせんといかんが!」 「んだんだ!」 脅すつもりなのか義衛郎の襟首に掴みかかる。だがそれがいけなかった。掴んだ手だけ残し、男は手首からすっぱり切断されているではないか。 「なぁぁぁにいいいいいい!?」 手首の断面を見て絶叫する男。 義衛郎は目を光らせると、くいっと首だけ傾けた。 彼の髪を少しだけ切って銃弾弾が後方より通過。男の額にめり込んで止まった。 「はう、あ……」 白目を剥いて崩れ落ちる男。義衛郎の後ろには、銃のマガジンを素早く交換するSHOGOの姿があった。。 「そろそろかな。それじゃあキャッパニよろしく!」 「ちくしょーサブゥ! 兄貴ぃ、奴らですぅ!」 男の呼びかけにこたえてか、上階からぞろぞろと男たちがわき出してきた。みんなおそろのジャージ姿である。 「ここまで乗り込んできて、タダですむとおも――はうあ!?」 すこーんと額にナイフが突き刺さり、男は倒れ込んだ。ごろごろ階段を転げ落ち、それをルアが足でとめた。額からナイフを引っこ抜く。 「立ち止まってちゃだめだよ!」 そのまま駆け出すルア。 消火栓を抱えた男たちがカカッテコイヤオラァと言って立ち塞がった。 「てーっ!」 そこへドロップキックで飛び込むイーリス。 おもむろに蹴倒した男の枕元で、スピアをゴルフクラブのようにぐいっと振り上げた。 「なんと! いーりす! すまっしゃー!」 いちにっさんのリズムで男の頭をすこーんとかっ飛ばす。 飛んでいった頭を抱えた別の男がうひゃあと言って腰を抜かした。 すかさず延髄蹴りでノックアウトさせる郷。 「さあ、どんどん出てこい! 俺が相手だ!」 「こいつらの自身はなんなんだ!?」 「構うこたねえべ! 相手は六人。まだ数じゃまけてねえべさ!」 「せやかて卯藤!」 「なんぞ泣き言ゆーとや!? あげな子供っこに俺らが負けるわけなか!」 「んだんだ!」 「せやろか須藤!?」 「こつのいうとおりたい! おらたちの力を見せっけちゃおう!」 「ダーッシャー!」 ……一方その頃。 「あたし、なぁーんかヤな予感してんのよね。こう、場の雰囲気っていうの? 全体的にムサいじゃない?」 「あっ、雲野さんもそう思いました? 私もなんとなくですけど、建物前で靖邦さんの目が死んでたのを見てもしかして……と」 杏とユウはテナントビルを壁沿いに回り込みつつ、現場とみられる三階のロッカールーム前までやってきていた。無論飛行してである。もっというとアドリブである。 そっと『さーや』の立て看板を取り出すユウ。 「一応これ持ってきたけど、使います?」 「これもルールよ、残念だけどしまっときなさい」 「はい……」 二人はゆっくりと壁沿いに飛び、大きな窓の縁へとつかまった。いつまでも翼をばっさばっさしてると音で気づかれそうというのもあるが、こっそり中を覗くためというのもある。 おそるおそる部屋の中を覗き込む。 20台後半ほどの髭をたくわえた大柄な男が、自信に満ちためでそこにいた。 ちなみに腕と足をベッドに縛り付けられていた。 ちなみに三脚にのったカメラがジーっと彼を撮影していた。 「くっ、隙にするがいい! しかし吾輩の心までは奪えぬと知れい!」 とらわれの一般人さんだった。 窓から顔を外す杏とユウ。 「帰っていい?」 「だめです」 「ソーヨネー」 にっこりと笑いあう二人。 とその瞬間、窓を破り二本の腕が飛び出してきた。 腕はそれぞぞれ杏とユウの頭を鷲づかみにし、室内へと無理矢理引っ張り込む。 あまりの強引さに、二人は抵抗する暇すらなくベッドの上に放り投げられた。 「おっと、その男には手を出すんじゃないよ。アタシの獲物だからねえ!」 その時ユウは、振り向く女の影を見た。 そう、人妻である! 割られた窓から吹き込む風に、髪がライオンのように広がっていた。元からバケモンみたいなのに、ここまでくるとバケモンそのものである。 入り口で義衛郎が倒したはずだが……どうやらフェイト削ってでも復活したらしい。 「ケッ、メスばっかりじゃないのさ! 男を連れてきな男を! 二十代後半の、油乗ったヤツをねえ!」 耳の通信機に手を当てる杏。 「呼ばれてるわよSHOGO」 「え、安西さんじゃなくてですか?」 『『嫌だあああああああああ!』』 階下から聞こえてくる悲鳴。 それを遮るように、人妻は両手で持ったパイプ椅子を全力で叩き付けてきた。 咄嗟に防御するユウだが、あまりのパワーにベッドの向こうまで転がされた。 「っつう、今ので狙いが……」 頭を押さえ、膝をつくユウ。どうやらブレイクをくらったらしい。 「こンの――アタシの期待を返しなさい!」 低姿勢のまま翼を羽ばたかせ鋭い真空刃を生み出す杏。 「なんの話かわかんないねえ! 死になァ!」 対して人妻は、手元にあった着火済みの葉巻きをおもむろに頬張り、弾丸のように火の粉を飛ばしてきた。 激しい弾幕。その中を、一発のライフル弾がすれ違った。 それは人妻の肩をかすり、背後の壁へとめりこんだ。だれあろうユウの放った弾である。 「今です」 「しゃーないわね!」 杏は、とらわれの二十代男性を抱え上げると、入ってきた窓から思い切って飛び出した。 「その男は縛り付けていたはず……ハッ、まさかさっきの真空刃で切れたのかい!?」 オノレエエエエと言いながら窓から這い出す人妻。 杏は三階から落下したが、男を掴んだまま地面スレスレでカーブ。地面で鼻をこする寸前の所で落下の衝撃を逃がすと、そのまま地面をごろごろと転がった。 真後ろにズドンと落ちてくる人妻。 鼻から血を流しつつも、人妻はずんずんと迫ってきた。 「にがさないよォ! アタシは狙った男は必ずモノにする! どんな手を使ってでもねえ!」 「そういう話は聞いてないし知らない――のです!」 「あ痛った!」 二階の窓を突き破って飛び出してくるイーリス。そのままずどんと人妻に落下タックルをしかけると、鞠のように弾んですちゃっと足から着地した。 「人質! きゅうしゅちゅ! かくにん!」 「今噛んだわよね」 「てったい!」 頭を抱えてわーっと逃げ出すイーリス。その後に続いて杏も撤退を始めた。上空ではユウがビル群の上を飛んで逃げていく。 人妻が振り向けば、ビルの出口から義衛郎たちが飛び出してくるところが見えた。 「悪いが、こっちは救出だけが目的でな。さっさと撤収させてもらうぜ」 「そうは問屋が――」 「遅いよ!」 人妻の頭上にすこーんと着地するルア。そのまま宙返りで地面に着地すると、一目散に逃げ出した。 頭を押さえてうずくまる人妻。 「オノレェ……顔覚えたからね! 絶対、絶ッ対ッ……モノにしてやるからねえええええええ!」 恐ろしい叫びに耳を塞ぐ二十代後半男性二人。ザッツ郷アンド翔護。 「俺は何も聞いていないし聞こえない」 「ところでアナタ」 エイリヤンが横並びになって言った。 見た目、プレデなんちゃらとエイリなんちゃらを足して二で割ったフォルムなのでめちゃくちゃ恐いが、オネエ口調のおかげで意外と接しやすかった。今更な情報である。 「アタシこれからギンザに帰るんだけど、どぉお、寄ってかない? サービスするわよん!」 「いえ結構です」 「それより紹介したいトコがあるんだが……」 郷は他人の名刺を取り出し、エイリヤンに渡した。 「ふぅん、あらそう。こういうヒトとお友達なの……」 エイリヤンはこっくり頷いた。 それからはみな、前を向いて走り続けた。 どこまでも遠い夕日を目指して。 人妻キャラへの希望を、涙と共に捨てながら。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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