●奴が……帰ってきた! ――それにしても、神がいたのかと思うくらいに男性陣ばっかりだな……もやしっ子やら獣やら褐色やらガチムチやら、選り取り見取りだよ。 ――このメンバーならいける。現世に蔓延る全ての束縛を解き放ち、オレ達は新たなるステージを駆け上がる! ――さあ、龍の戦いを始めよう。 全世界が震撼。 恐怖の宴が再び幕を開ける。 ――ドゥゲヘヘヘ、必死に抵抗するも力及ばずじわじわ溶かされる。やっぱええよなあぁ、喘ぎ声すら逃さんぜよ! ――やめてええええええ、僕の恥ずかしい所演出しないでええええ! とかされる服! ――何故だろうな。おれ達……昨日まで理不尽な生について嘆いていた筈なのに。 ――え、理不尽な性が何? ――おいおい何だこの警官みたいなおっちゃんはよう、俺好みだぜペロペロペロ! ――解き放たれてしまう、俺のニューナンブがビンビン物語してしまうぅー! 崩れゆく理性! ――僕は平均的だ……そうだ……みんな0%なら、僕も0%になるべきなんだ、いや、全人類が……。 ――え、何なの!? フラッシュバンなのこれ、なんか一発ごとにフラッシュするのは何なの、今右上に出てる『●REC』の文字は何なの!? 仲間の裏切り! ――俺は下は穿かない、絶対にだ。 ――嫌じゃ、メガネだけは……メガネだけは死守するんじゃあああああ! ――メルクリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!! 一人また一人とおちていく仲間! ――俺は……何があっても下は穿かない。絶対にだ! あの時、触手エリューション『タコミダラ』は絶滅した……筈だった。 「シュシューゥ。ここから強い触手力(しょくしゅぢから)を感じるシュシュ。だが、まさかあの鎧がこの世界にもあるわけがないでシュ。シュッシュッッシュ……」 深いフードを被った謎の存在が、森の中へと降り立ち、布の切れ端をつまみあげた。 「この世界は触手の耐性が低いでシュ。だからここから始めるでシュゥ。我が触手レジェンドを! シューッシュッシュッシュッシュッ!」 両手を振りかざす。 すると突如として雷鳴が鳴り響き、豪雨が降り注いだ。 嵐にめくれ上がったフードの下は、人とタコを掛け合わせたような異形の姿であった。そして彼の両手は無数の触手でできていたのだ。 彼こそが! 「この触主さまがでシュゥー!」 腕から分離し、蒔き散らかされる小触手。 それらはうごうごとうごめき、やがてタコの化け物へと変化していった。 そして彼らは探すのだ。 次なる獲物……そう! 男の服を溶かすそのためだけに! ●男の服が溶けます 「古来石版時代から続く触手という文化は今も絶えず受け継がれている。そんな触手の世界からやってきたアザーバイド『触主』がこの世界にすまう全男性の服を溶かし尽くすという野望のために動き始めた。よし待て逃げるな」 部屋の出口を背中で押さえ、内側から差し込み鍵でロックをかける『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。 リベリスタたちは知っているのだ。 以前似たようなコンセプトのエリューションが出てきて、対応した男たちが最終的に国道沿いを全裸で走るハメになったことを。 「しかも今回はただの森じゃないぜ。ある無人島をまるまる触手の化け物で占拠しちまった。ここを拠点に各地へ触手モンスターを送り人々を全裸のどん底に落とすつもりだろう」 「全裸のどんぞこってなんだよ」 「倒す手段はただ一つ。島に乗り込み、奴が築き上げたという『触手の塔』を攻略することのみ……」 塔の攻略。 そう聞いてリベリスタたちがまず想像したのは『ここは任せて先に行け展開』である。 「ああ、お察しの通りだ。じっくり全員で安全に攻略している暇はない。急がなければ近隣住民は……くっ!」 目を瞑るNOBU。あまりのいたましさに言葉が詰まったのだ。 「この状況を打破できるのは、俺たち……いや、アークのリベリスタであるお前たちしかいない。頼んだぜ! 絶対だぞ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月18日(月)23:02 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●業の深きが人の情 触手属性。 それは人間の器に満足できなくなった人の業によって生み出された欲望の化身である。 服だけ溶かすスライムに始まりビキニ鎧をはぎ取る触手。それらは人々により深き世界への道を示した。人間の枠から外れたことによって生まれる常識の逸脱と情緒の破壊。 触手。 それは村を襲うオークよりも無情。 それは卑猥な催眠術師より凶悪。 それは服を溶かすスライムよりも凶暴。 無機質でありながら生物的な欲望のカタチ。 つまり何が言いたいかというと。 触手エロい。 無人島あらため触手島。 生態系が数日でひっくり返り触手のパラダイスと化したその島に、三隻のボートが上陸した。 船を見たことの無い外来種と判断したぼた餅形の生き物がなめくじのように近づいてくる。 そして身体からカタツムリが目を出すそれと同じように触手を伸ばし――ぐしゃりと踏みつぶされた。 「想像するだに恐ろしいと思っていたが。実際に見るととてつもないな。地球か、ここは?」 『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)は不思議な仮面を顔にかぶせると、身体をゆする勢いで足下のものを踏みにじった。 仮面越しにあらためて島を見る。 海岸線はナマコを二倍くらいに無理矢理膨らませた生き物で占めており、その全てが二本の触手を高く伸ばしてうねうねとくねらせている。 見るに堪えぬと視線を外せば、クラゲの化け物が空を無数に飛び交う光景が見えてくる。それも無視して遠くを見ても、森の木々が全てぶっといツタをうねらせて周辺の触手生物を補食・種づけするさまが見えてしまう。 そんな異世界さながらの光景を象徴づけるように聳え立つうねうねとした形の塔。これぞ触主の塔。この状況を作った敵のアジトである。 「バグったときの世界樹を彷彿とさせるっすねぇ……」 『忘却仕様オーバーホール』ケイティー・アルバーディーナ(BNE004388)は膝のホルスターから銃を引き抜くと、両手の人差し指でくるくると回してから横広に構えた。 キラリと光る目。 「さぁ、ここはうちらに任せて先にくぁwせdrftgyふじこlp……噛んだっす」 「器用な噛み方したな」 「うっかり母国語が出たっす。やべっすよ日本語難しっすわー」 「いや、断言してもいいがフュリエ語はそんなふじこってない」 両手のグローブ裾を引き締め、ベースボールタイプの帽子をつまんで位置を整える『まごころ宅配便』安西 郷(BNE002360)。 すごい関係ない話だが宅急便というのは、1975年にそれまで大企業専属の配達業者だった黒猫さんとこがくっそ早くて確実なゆうパック的なものやった方が儲かるんじゃねと言って始めた事業で開始から二十年ほどで青縞さんやらペリカンさんやらが真似しはじめて現代に根付いたという経緯があるそうだ。現在日本の北から南までまんべんなく事業所があり、警察に通報するよりヤマトさん呼んだ方が早いとか言われていた。まあそんな事情なので宅急便という名前は類似業者が使っちゃわないように商標登録されているが別にこれで商売しないならいいんじゃねというラインが儲けられていて魔女の映画やらも一応セーフなんだそうだ。もっともっと関係ないけど魔女の映画が今度実写化するらしく一部の人たちが頭を抱えて震えている。本当に関係なくて申し訳ない。まあ何が言いたいのかというと、PBW業界の自由度というやつは、ゲー研の鼠部長の存在が許されてる以上推して知るべしである。 「……なあ、俺今グローブと帽子をいじっただけなのに妙に文字数をくった気がしないか」 「さあ、よく見てなかったので」 振り向くと、『鉄壁の艶乙女』大石・きなこ(BNE001812)が小型触手生物(仮名、触手ナマコ)をつついて遊んでいた。本来『きなこ+触手』は『アシュレイ+同人誌』くらいの意味があるのだが、今回はまさかの触手スルーである。 触手生物とまともにたわむれるきなこさんというのも、なかなかレアな光景じゃなかろうか。 また関係ないことを言うが、きなこさんのステータスシートをみながら仕事をしていると『あれ、今エロゲの仕事してんだっけ……?』という錯覚を覚える。PBWにはよくあることである。 「それにしても触手だらけですねー。孤島ショクシューランドとか名付けませんか」 「おとこわり……じゃなくて、お断わりよ」 緩く腕を組んでため息をつく『魔性の腐女子』セレア・アレイン(BNE003170)。 敵が占領した島に上陸したというのに最初の雑魚が特に襲いかかってくるでもなく空に向けてうねうねし続けているだけなので若干拍子抜けしたというのもある。まあ、人間を見たこと無くて反応に困っているともとれるが……さて。 「まあ、これだけ萌えだのエロだのが蔓延した世の中であえて男を選ぶってあたりは認めてあげるけど……どうも半端なのよね」 「あ、やっぱりそれ思いました?」 両手と頭に触手ナマコを乗せて身体ごと振り返るきなこ。 「触手のアクション要素は主に、這う絡む弄る入るの四点なのよ」 「はい……る……?」 「アルシャンパる」 「それな」 「でもこの触手のアクションが這うと弄るの二点しか無いのが問題なのよ。これだとスライム属性まで落ちるのよね」 「でも男だけなんですよね。つまり……」 「つまり? ハッ、ミルク搾――」 「おいそれ以上はやめろ」 「子供だってみてるんだぞ!」 「職場で昼休みに見てる人だっているんすよ!」 同時にばばっと手を翳す冥真たち。 横からスライドインしてくる『怪力乱神』霧島・神那(BNE000009)。 「むっははは、無人島リゾートにやってキター! いえー! 早速塔を目指すのね~ん!」 触手を掴んで頭上でぐるぐる回していた。カウボーイが縄を投げる前にやるアレに似ていた。 ビッと敬礼のまねごとをする『幼い心に大きなおっぱい』ティオ・ココナ(BNE002829)。 ムタンガだった。 「それじゃあここはよろしくね!」 ビッと敬礼のまねごとをする『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)。 ムタンガだった。 「わしらがきっちり触手を楽しんだるからな」 「おい誰だこいつらをボスに仕向けた奴は」 「えっ、俺? 俺じゃないよ、違うよ!」 『破邪の魔術師』霧島 俊介(BNE000082)が、『Radical Heart』蘭・羽音(BNE001477)を抱きかかえて言った。 もっと正確に述べると、パラサイトメイルを着込んだ羽音を抱えて言った。 目を瞑って震える羽音。 「はっ、ぁぁぅ……まだいらないなら、これ脱いでちゃだめ?」 「だめ」 「なにその鎧えろい」 急に素みたいなトーンで振り返る神那である。 などと言いながら、彼らはケーティの開いた道を駆け抜けていったのだった。 そして道中。 『おいでよ触手の森』を駆け抜け、彼らは塔の前へとやってきた。 両開きの扉をがつんとなぐる神那。 それだけで巨大な扉が砕け散った。 神那のパワーが強すぎるのか扉がもろすぎるのか。その中間くらいだろうと思われる。 「ところでさぁ、なんか触手が思ったほどくっついてこないんだけどー?」 「た、たぶん……は……ぁ……この鎧の、影響かな……」 背を丸め、両腕で胸元をおさえて小刻みにけいれんする羽音。 ティオはその周りをくるくる回りながら細部を観察していた。 「これってパラサイトメイルだよね。『大体ひたちのせい』でおなじみの」 「そのなじみ方は知らないけど、そうだね」 触手ゴリラにお姫様抱っこされた俊介が冷静に頷いた。 もう一回言おうか? 触手ゴリラにお姫様抱っこされた俊介が冷静に頷いた。 あと全裸だった。 「もういるぅー!?」 「既に脱げてるぅー!?」 「お前の担当は俺だろうがぁー!」 触手ゴリラに郷のきりもみ両足キックが炸裂した。 うごーとか言いながらバウンドして転がる触手ゴリラ。 しかし相手は触手の塔を守る番人。器用に腕だけで起き上がると屈強な拳でもって反撃をしかけてきた。 間に割り込むきなこさん。 触手依頼に来たとは思えないフルアーマーモードで防御姿勢をとると、ゴリラの拳を真っ向から受け止める。 ほぼノーダメージ。 しかし戦闘の気配を察した仲間が集まり、彼らは触手ゴリラに囲まれてしまった。 進む道はもはや塔の入り口しかない。 「ここは食い止めます。先へ行ってください!」 「任せるのね~ん!」 神那はひらひらと手を振ると、塔の中へと駆け込んでいった。 それに続く仁太たち。 妙に間に合わせっぽい作りの一階フロアを抜け、がらんとした螺旋階段を走って上り始める。 その途中で仁太は顎を撫でながら言った。 「さっきの話を戻すで。話を聞くに触主の世界には『触手鎧』というそれは楽しいアイテムがあったそうや。それと同じ性能(性的な能力)をもつのがパラサイトメイル……と考えてええんやな?」 「そうなんだ。かつてフィクサードが製造したパラサイトアーマー。それに本当の意味で適合した四人のリベリスタが所有してる。羽音はそのひとりだよ」 触手植物に逆さ吊りにされた俊介が冷静に頷いた。 もう一回言った方がいいかな。 触手植物に逆さづりにされた俊介が冷静に頷いた。 あとメイド服だった。 「もう出てきとるぅー!」 「あとなんか着てるぅー!」 「うん、俊介はメイド服着ても可愛いよね。えへ」 「着せたんだ……」 頬に手を当ててくねくねする羽音。 ヘヘヘカマトトぶってても心は正直だなみたいなシーンである。 「私はもう少し見てたい……じゃなくて、俊介が心配だからここに残るね」 「さよか」 こっくり頷く仁太。 その後ろで大胆なポーズをとる神那。 「触主が野に放たれたらきっと大変なことになると思うんだ。だから、頼んだよ」 「まかせて!」 にっこり笑うティオ。 その後ろでシャープなポーズをとる神那。 「それじゃあイクで。愛しの触主がまっとるんや」 「みんなここはよろしくねー!」 仁太とティオは最上階目指して走り出す。 その後ろでダイナミックなポーズをとる神那。 「……誰も触れてこないのねーん!」 螺旋階段の先には『触主さまのへや。ノックしてね☆』と書かれた扉があった。 黙って前に立つ仁太とティオ。 「ここがボスの部屋や。ここからは本気……いや本気のカラダがものをいうんや。わかるやろお嬢ちゃん」 「うん、とりあえず燃やすね!」 「……まあそれでええ」 二人は扉を軽くノックし、『いーでシュよー』という返事を聞いてからそっと最上階の部屋へと入っていった。 沿岸部、一階層触手の森、二階層螺旋階段、最上階触主部屋。 四つの熾烈なバトルが繰り広げられる。 彼らの戦いを見逃すな。 ……つづく! ●真面目な人ほど暗黒面に落ちたときが楽しそうな法則 「あばばばばばばあばばあばばばあばばばばああばあばあばあばばばばあばばばばばばばあああばばあばばばばあばばば」 半裸の冥真が両腕をぐねぐねふりまわしながら海岸線を元気に走り回っていた。 「あ゛~っ、あ゛っ、あ゛あ゛あ゛~! あ゛~!」 たしか数十秒前までは『触手には絶対負けない』みたいなことを言っていた気がする。 正確には『ケイティーさんには指一本触れさせないぞ』だったと思う。 「アッ、アーッ!」 触手ナマコが足首に絡みつき、仰向けに転倒する冥真。 起き上がろうと腕をつけるが、たちまち触手が両手首に絡みついてしまった。丁度後ろ手を縛られた状態である。それでも諦めること無く足で触手ナマコを蹴り飛ばす。 一匹、二匹、三匹。 しかし蹴り飛ばすたびに新たなナマコが這いずってくるのだ。一匹蹴飛ばす間に三匹が詰め寄ってくる。やがて、彼の周囲を触手ナマコの群れがびっしりと埋めるようになっていた。 時が止まる。 冥真は、自分の呼吸が喉と鼻を通っていく音を鮮明に聞いた。 続いて大気のうねる音。 自分を中心に波紋を広げているかのように波打つ触手ナマコの群れ。 沈み、隆起し、跳ねる。 外側から見れば、ナマコたちが冥真に向かって飛びかかっていることが分かったろう。 しかし冥真本人からは世界が黒く埋まったようにしか見えなかった。 一点だけ覗く空の光。 スローモーションで影が覆い包むなか、彼は光を見ていた。 「あ……」 そして触手ナマコの群れは無防備になった冥真の肉体を――この先からは有料となります。 嘘です。 「ハッ、いつのまにか救慈さんがピンチっす! 本当にいつのまにか! いつのまにかっす! 全然気づかなかったっす!」 目の前を普通にスルーしていくナマコをぺちぺち銃撃していたケイティーは、冥真に背を向けつつ……たまにチラッチラ様子を見ていた。 「ほ……ほほぅ……」 折角なので彼女の視点から冥真の様子を見てみよう。 砂浜で両足を投げ出して座るような、そんな姿勢だった。 下半身に布はあまり残っていない。触手の溶解粘液が半端に塗りつけられているためか所々に布の切れ端が張り付いているばかりである。 元々細身というか、あまり筋肉をつけていなかった冥真の身体は比較的女性寄りのシルエットをしていた。男性にしては髪が長いというのも、そんな印象に拍車をかけていた。 らるかな生まれのふゅりえ育ちでフィアキィ使う奴はみんな友達だったケイティーからすれば、それほど珍しいシルエットでもない。 しかしよく見れば、男女の違いというものがハッキリしてくるのだ。 まずは肩だ。触手が直接絡みつき、地面に押さえつけようとするナマコたちにあらがいたいのか、必死に身体をゆすっては触手を千切ろうとする冥真。その肩はどこか骨張っていて、女性のように細い腕でありながら節々に堅さや太さを残していた。 ゆっくりと垂れ落ちる溶解粘液が彼のシルエットをよりリアルに掘り出してくれる。 そして次は胸だ。 フュリエにも真っ平らな胸のやつぁ沢山いたし、男性の平らな胸も大体同じようなものだと思っていたが、その考えを今改めた。 冥真の胸もやはり平らだが、うっすらと乳房が存在している筈の場所にそれはなく、代わりにしっかりと整えられた筋肉があった。 ナマコが彼の股を這いずり、徐々に腹へと登っていく。うねりうねりと這いずるたび、彼の胸は上下にけいれんしていた。それが柔らかい肉の揺れなどではなく、断固とした筋肉の躍動であることがその小刻みな上下運動から知ることが出来る。 やせ形の彼ですらこうなのだ。筋肉のがっしりついた男になればどうなってしまうのだろう。 バイデンのワイルドな胸板を頭の隅に描きながら、冥真の後ろ側へとすり足で回り込んでみる。 すると骨張った背中がまず目に入った。 ごつごつしている。女性に比べて肉が少ないのだ。 特に昔は座り仕事が多かったであろう冥真のこと、贅肉や筋肉は最小限に留まり、あくまで骨と白い肌によるボディを保っていた。 だからか汗と粘液の混じった液体が鎖骨へ流れ込むとき、ちょっとしたくぼみができあがり、そこに汗が僅かにたまっているのが見えたのだ。 世の中には鎖骨フェチという言葉があるが、その中でも人気が高いのが冥真のようにぐっと浮き上がった鎖骨である。だからか腰も、のけぞればあばらが浮き上がったりする。 そんなでこぼことしたラインを粘液が流れ落ちるたび、てらてらと光るのだ。 人によっては涎がマーライオンしてもおかしくない光景である。 暫く全角度から眺めたあと、正面に回り込んで体勢を低くするケイティー。 四つん這いで『雷門』した冥真の正面に近づき、強制的にセイクリッドしたアローを至近距離で観察する。 「うーん……これが標準的な大きさなんすかねえ。ああくそ邪魔っす、どくっす触手!」 「標準とはやや異なるわね、今は異常な状況下に置かれてるから確かじゃ無いけど、細身清楚型……あまり頻繁に使用した様子はないわ。装備の様子からしてペルソナデウス被ってるのかと思ったけど、そういうわけでもないのよね。サイズ測りたいんだけどメジャー持ってる?」 「持ってるわけな……っていつからそこに!」 セレアが同じ位置で冥真を観察していた。あと撮影していた。 「それにしても物足りないわね。群集モノなら確実にやらなきゃいけない絵ってものがあるでしょうに。そこの触手とって。全身の穴という穴にアルシャンパるから」 「えっ、大丈夫なんすか!?」 「自分は突っ込む側だと思ってる存在を数の暴力で組み伏せて突っ込まれることにおぼれさせる。触手モノの群タイプは基本これなのよ。さ、はやく」 「うっす!」 「あ、あば!? あばばばば! あっ、アーッ! アアアアアーッ!」 その日、冥真は触手面に堕ちた。 ●虎、大亀、ゴリラ、ハシビロコウ。これが四聖獣だって誰かが言ってた。 触手ゴリラ。 黒く毛深い人型の化け物で全長は3mほど。 力は強く身体は硬い。戦闘力も高く、群れをなす上に賢いため殲滅は困難を極める。 最も警戒すべきは腕力。 腕や足を掴まれれば戦闘不能に追い込むでもないかぎり解放は絶望的とみられ、一度体勢を固定させられたら四方八方からの十字砲火を浴びせられる。 欲張って一体を倒そうとすれば、手負いの一体を囮にした袋叩きに追い込まれる。唯一救いがあるとすれば回復手段を持っていないため地道に反撃を狙い続けていけば最終的には生き残ることが可能。そのためには高い防御もしくは回避性能を必要とし、集中力をきらしたが最後あっというまに落とされる危険がある。 ……と、ここまでがきなこが戦いの中で得た情報である。 今も尚、うっかり手を出してしまったゴリラに腕をロックされ、四方からの集中パンチを受けているところだ。 高い防御力にものをいわせ、歯を食いしばって耐えているが、たまにいいパンチを貰って地味に体力が削られていく。徐々に体力に余裕はあるが、こみ上げてくる焦りは否定できない。 「な、仲間には……手出しさせませんよ!」 倒すことが勝利ではない。耐えきりさえすれば勝利だ。 触手ゴリラ。 口や腹から触手を生やす化け物。 抜群のフットワークとチームワークで取り囲み、下手に動こうものなら触手でとらえて拘束してしまうため逃避は困難を極める。 最も警戒すべきは腹の触手。 これに掴まれてしまえば不能になるまで離脱は難しく、一度肉体を拘束されたら四方八方からの十字触手を浴びせられる。 怖じ気づいて一体から逃げようとすれば、追っての一体を猟犬にして袋小路に追い込まれる。唯一救いがあるとすれば挿入手段をもっていないため地道に耐え続けていれば最終的には生き残ることが可能。そのためには高い自制心もしくは薬品が必要とされ、集中力をきらしたが最後あっというまに堕とされる危険がある。 ……と、ここまでが郷が戦いの中で得た情報である。 今も尚、うっかり足を出してしまったゴリラに両足をオープンさせられ、四方から集中触手まさぐりを受けているところだ。 高い俊敏性にものをいわせてかわしているが、たまにいいモノを貰って地味に精神が揺さぶられていく。心に余裕はあるが、こみあげてくる感覚は否定できない。 「な、なかなかきついか……!」 耐えることが勝利ではない。死にさえしなければ勝利だ。 というような事態が、触手の塔一階で巻き起こっていた。 もしこれがアドベンチャーゲーム的なアレだったなら、きなこさんルートと郷ちんルートを選択してそれぞれのイベントCGを堪能して頂きたいところだが、悲しいかなワンチャンのシナリオである。というかCGとかないので、イラストで見たいかたは是非挿絵ピンを……あっ、きなこさんのはもう大量にあるわ。 では郷のほうから見ていこう。 「くっ、まるでゴリラのようだぜ……だがただゴリ(ただのゴリラの略)じゃねえ、幾度となくゴリラと戦ってきた俺だから分かる。で、できるだけ服をもたせ……ふっ、ぐああ!」 両腕を触手によって固定され、大の字の状態で固定させられた郷。ここで一気に触手をぶっかけてしまえばたちまち全裸まっさかりになれるのだが、触手ゴリラたちはあえてそれをしなかった。 口から一本だけ触手を出すと、文字通りなめ回すようにつま先から髪の先までを観察していった。 「くっ、なにを……!」 郷の身体で最も特筆すべきは腰回りの堅さである。 運送業を営めば自ずと足腰を使い、重いものを持ち続けるため肩と腰に強い負担がかかる。 それゆえスポーツマンよりも重く、格闘家よりも細く、がっちりとしてそれでいて細いという絶妙なボディラインが形成されていた。 そんな肉体を前に、触手ゴリラは数十センチの距離まで顔を近づけ、足の親指から順に触手を這わせていく。 手足の拘束を解こうと暴れる郷だが、触手が膝の内側に達した所で顎を上げた。 触手ゴリラは暫くその反応を観察した後、下腹部から太い触手を生やし、郷の腰を両手で固定した。 下腹部の触手から更に細い触手が生えいづるのを見て、郷は首を振って叫んだ。 「だ、だめっ……だ! それだけは、それだけは超えてはならないラインのはずだ! このおはなしは全年齢対象のはずだ!」 「そう。つまり描写が無ければ何をしてもセーフ、ということ」 木の陰から顔を半分だけ覗かせるセレア。 「いつからそこに!?」 「触手のあるところ、あたしはいるのよ」 「無茶言うな!」 厳密な話、この界隈は女性なら割と素通りできてしまうので行き来自体は結構楽だった。 郷の腰付近まで近寄り、かがんだ姿勢でカメラを回すセレア。 「まさか『逆挿入』を生で見れる日が来るとは思わなかったわ。男がアルシャンパられる時は後ろからというのが通説だけど、あたしら玄人からするとむしろ『穴だったら前にもあるじゃないか……』という精神が」 「何度も言わせるな! このおはなしは全年齢対象だ! たすっ、助けてくれ! たのむ!」 「わかりました、私に任せてください!」 郷の悲鳴を聞きつけてか、きなこが触手ゴリラにタックルを仕掛けた。 うごーと言って倒れるゴリラ。 そして郷の前に陣取ると、びしりと防御の姿勢をとってみせる。 「心は無理でも、傷ついた身体を癒やすことは出来るのです。そして守ることも……」 ギラリと光るきなこさんの瞳。 「さあ来なさい! わたしには触手なんてご褒美……いや触手なんて通用しないということを教えてあげます!」 触手ゴリラはうごおと言いながら触手をはやし、じりじりと近づいてくる。 しかも器用なことに退路を完全に塞ぎこんでいるではないか。 口を開けるゴリラ。素早く伸びる触手。 小さくガッツポーズをとるきなこ。 木の上に移動してカメラを回すセレア。 そしてついに……! 「あっ、うあああああああっ!」 郷が大量の触手にわっしょいわっしょいされた。 ガン無視されたきなこの目からハイライトが消える。 頭上で繰り広げられるだんじり祭をよそに、きなこは世にも乾いた笑いを浮かべたのだった。 ●微エロ程度でもアンダーグラウンドだった頃を知っている人間としては現在の萌え文化というやつがダムの決壊か何かにみえてならぬ。そのように申していた友も今やフィギュアをペロペロしている始末。ああ世は無情無情。 パラサイトメイル、というものがある。 詳しい説明はあえて避けるが、存在自体がなんかの間違いと言われるほどのぶっ飛んだ装備で、その激しい特殊性から現所有者たちがそれぞれ触手属性に引っ張られる不具合を起こしていると言われることもある。どこで言われてんのかは知らん。 人によっては幾度となく改造を施し、またはカスタマイズに励み、いくところによっては触手研究に余念が無くなり色々と大変な痴態……あいや事態にハッテン……いやさ発展していると聞いている。誰から聞いたかは知らん。 そんなパラサイトメイラーたちのなかにありながら、キャラ性なのか倫理性なのかやたら「パラメは着ないんだからね」とフリみたいなことを言う子が蘭・羽音である。 ただでさえ、(PLが)上手に扱わないとただのあえぎ声発生装置になる装備なので、一定の距離を置いておくのはある意味正しい判断なのだが、事ここに至っては話が別である。 「いっそのこと所有者四人全員来ていたら楽だったかもねん」 「以外と来ないもんですねえ」 「今の赤い人誰?」 グラビアアイドルみたいなポーズで映り込んできた神那。その横で羽音は小刻みに震えていた。窓の外で知らん人がうわーと言いながら触手植物に振り回されている。 その一方で全裸の俊介が部屋の真ん中で宙づりになったままくるくる回っていた。 巨大な花からだくだくとローション状のなんかがはき出され、俊介の服を布きれ一つ残さず溶かしていったのだ。おかげで今はてっかてかのぬるぬるである。そしてぐーるぐるである。 ここに至るまでに執事の服とかチャイナ服とか無理矢理着せていた羽音だが、着せたそばから溶けるので途中から諦めた節があった。 一方で俊介は。 「ごばば、ごばごぼぼっ、ごばばばー! ごばぁー!」 口んなかローションだらけで分からんが、たぶん日本語に翻訳すると『羽音たんのパラメぺろぺろしたいでござぁ』みたいなことを言っている筈だ。もっと正確に訳すと、パラサイトメイルでくねくねしてるレアな羽音を干渉してハアハアしたいというようなことを言っている。あんま変わらないなあ……。 その様子を、触手植物は1カメ2カメ3カメくらいの各種アングルから撮影していた。 「そのビデオカメラで私のWPBL(ダブルピースビデオレター)を作る気なのね! AVみたいに! AVみたいに!」 膝立ち姿勢から身体をぐっとのけぞらせて髪を垂らすポーズでカメラに割り込む神那。 それを冷静によけつつ俊介のぬるぬるぐーるぐるを撮影する触手植物。 とても冷静に考えるなら、このまま俊介を電気のヒモにつける飾りみたいにくるくるさせてるだけで時間が稼げる気もしないでも無いが、うっかり奴らが飽きちゃって別の階層に行っちゃったら大惨事である。まあ既に大惨事だが、これ以上はいけない。 「この私を、屈服させられるかな!?」 四つん這いの姿勢から親指を噛んで振り返る神那。 それをそっと避けて撮影を続ける触手植物。 「俊介を『●REC』なんてさせな……はうっ」 チェーンソーを抱える羽音だったが、一歩踏み出した時点で腰をくねっとさせた。 触手植物たちはこれに手を出したら負けな気がするとばかりに避けていくし、手近なツタからずばずば斬っていくけどその倍くらいのスピードで再生するので始末におけない。 しょうがないので別の階層に行きそうになったところを斬りつつ、たまに俊介に服を着せてうふふするに留まっていた。 そんな中、カメラを無理矢理掴んで自分に向かせる神那。 自分の顔をアップ映しにすると、カッと目を見開いた。 「もっとこっち見ろよ! 私可愛いだろ!? なんで 襲わないのねーん!」 えーでもメスとか興味ないですしみたいな反応をする触手植物をぐりぐりねじりつつ、神那は自分をかなりいいアングルから撮影させた。 「くっ……皆がいじめられないようにするには、私が犠牲になるしか……!」 無駄に乙女座りして胸元を掴む神那。尚カメラは片手手固定している模様。 肩越しに映った俊介が全裸でデウスエクスマキナしていた。 ●触手世界人の蹂躙に対して地球人の意地を見せつける話なのかなって思ったけどどう考えても違うよねこれ。 「気持ちよくなろうや」 吐息多めの声色で、仁太は言った。 BL系ドラマCDでよく聞くかんじの声色だった。 てらそままさき的な何かだった。 「おっと、溶かして終わりっちゅうわけないよあろな? もっと楽しもうやあ、お互いになあ!」 「シュー! シュシュー!」 声だけでは状況が分からない。そうお思いだろうか? しかし今、声色以外は何を描写してもアウトになりそうな状況なのだ。なので脳内に凄まじくでかいモザイクか何かを描きながらご覧頂きたい。 「離さんぜよ、わしのほうから絡んだる……そうやあ、わし自身が触手になるんや。触手に撫でられるんやない、触手を撫でまわすんや。ひとつになろうやあ、なあ」 「シュー! シュシュッッシュー!」 ……というような、巨大なモザイクが展開されている。 その横でティオは集めた触手を串に刺し、肉焼き器の上でくるくる回していた。 「ふれあばーすとー。ついでに四重奏だよー」 「シュシュー!」 「どこを見とるんや。尻なんぞどうでもええ、もっとわしを見るんや! 目で、肌で、心で見るんやあああああ!」 「シュシュシュー!」 ボス部屋はティオのせいでそこらじゅう火の海となり、肝心の触主は尻だか背だかに魔法をぼこすか叩き込まれていた。 その間ずっと仁太がとてもではないが詳しく述べるわけにはいかない動きで触主を釘付けにしているので、なんていうかこう……かなり一方的な削りゲーと化していた。触主も触主で手下を産み出す余裕も無くなってきたらしく、ターン制RPGでいうところの決定ボタンを押し続けるだけの簡単な作業になりつつあった。 唯一難があるとすれば触主が妙に硬いせいでダメージがちまちまとしか入らないことなのだが、ティオ一人で削りきれないほどというわけでもないのでなんというかヌルヌルゲ……じゃなかったヌルゲーに見えなくも無い。 ついにはその辺のソファに腰掛け、手首だけクイックイさせて魔法をうちはじめるティオである。 例によって仁太さんの様子は見せられないので、ソファへ横向きにこしかけるムタンガ装備のティオでも眺めて居て頂きたい。ほら水着だよー。巨乳だよー。ロリ顔だよー。 「そういえば、触手に襲われることは沢山あったけど、スルーされるのはなかったよね。外からじっくり眺めるのって、もしかして初めてかも」 「そうやあ、もっと見せつけるんや! わしらは今日だけの関係やで。だから今日を……今日を永遠に引き延ばすくらいに感じつくすんやああ!」 飛び散る粘液。 ぽやーっとするティオ。 「これ観察してたら、新しいわざとか思いつかないかなー」 思いついちゃだめだろ、と突っ込んでくれる人は居ない。別の意味で突っ込んでる人は今目の前に居るが。 「でも触手側が受けっていうのは珍しいわよね。新しいってほどじゃないけど」 ポッキー喰いながら録画するセレア。 「ほぉれ、カメラに向かって言うんや。素直な気持ち言うてみいやあ! なあ、なあ!」 「シュ、シュシュー! 触主の触手がピンポイント・スペシャリティでシュー!」 モザイクの向こう側でダブルピースする触主さん。 ティオは片手で四重奏ぽいぽいしつつ、その辺に置いてあるタンスや箱を開け始めた。 「塔ってことはダンジョンだよねー。テレビゲームみたいにごーかな景品おいてないかなー」 てれってー。 ティオはピンク色の生物をみつけた。 「なんだろうこれ震動する」 「やめるでシュー! それはペットのバターちゃんでシュー!」 「捨てなさいそんなもの」 「えー、なんだかボクに似合う気がするんだけど……しょーがいなー」 変な生物を箱にしまいなおすティオ。 そうこうしていると、モザイクの向こう側で触主がヘブン状態になっていた。 虹色の背景を出しつつシュシューとかいう感じである。虹色の光に包まれて消えてゆく触主。彼に作られた触手生物たちも次々と消滅を始めた。 そんななかで、全裸のまま立ち尽くす仁太。 「忘れへんで、ずっとずっと……」 手の中で消えゆく触手の残骸を見下ろし、仁太はほろ苦く笑ったのだった。 ●触手好きには三つのパターンがある。ひとつは触手シーンを眺めるのが好きな奴、ふたつめは触手に責められたい奴。みっつめは触手になりたい奴だ。みっつめはもはや地球人の発想じゃないぞ、気をつけろ! 触主を倒した仁太たちはその足で(全裸のまま)二階へと下りた。 粘液まみれの俊介が判別不能なしゃべり方で『羽音を御姫ざま抱っこして触手たちに投げつけてやるんだえへへ』と言ったようなことを呻いていた。羽音は羽音で次は何を着せようかとかいいながらAFから耳付きカチューシャを取り出す始末。神那に至っては残ったビデオカメラを三脚に乗せて『私にいやらしいことする気なのねん! 同人誌みたいに! エロ同人みたいに!』と一人芸を繰り出していた。 とりあえず全裸の俊介にねっとりとしたまなざしを注ぎつつ担ぎ上げ、一階へと向かう。 そこでは大の字になった郷が太陽の日差しを浴びていた。全裸だった。 目からは何か大事な光が消えていたが、仁太がまたもねっとりとしたまなざしで担ぎ上げた。 その場にいたきなこさんは、触手依頼にしては異例の露出度ゼロ%で立っていた。いわゆるフルフェイスの全身甲冑である。なので表情は分からなかったが、心なしか押して貰えなかった上島竜兵みたいな顔をしていたように見えた。ちなみに終始無言である。 そんな彼女たちと一緒に海岸までやってくると、妙にほっこりしたケイティーとセレアがお互いのメモリーカードやらなにやらを交換していた。 一緒にここを守っていた冥真は虚空を見上げて『ワレクラマ、モンダイナシ。ニンムセイコウセリ。メデタシ』とオウムみたいな声で喋っていた。あるものは顔を覆ったが、仁太はやっぱりねっとりした目つきで彼を抱えた。 静かに船に乗り込む一同。 島を離れ、海へとこぎ出す船。 振り返れば、塔が崩れていくのが見えた。 もうこの島が触手だらけ粘液だらけになることはないだろう。 だが、あんな連中がうようよいる世界がトップチャンネルにはある。 ならばいつの日か。 そういつの日か。 「会える日が、くるんやな……」 仁太の目はここではない空を見上げていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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