下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






総てを砕く、殲滅砲台

●総てを貫く光の槍
 いつから存在していたのか。
 それは誰にも分からない。
 ずっと昔という事はないだろうけれど、昨日今日という事もないだろう。
 いつからか、それはそこにあった。
 けれど、誰もその事に気付かなかった。
 それは多くの者達から存在そのものを認識される事が無かったし、そもそもそこに殆んどの者達が近付こうとしなかった。
 それらは全て、それの力だった。
 認識されない事。
 けれど、それの本当の力はそれではなかった。
 認識した者が現れた時、そしてその者がそれの力を確かめようとした時……それは本来の力を使用した。
 放たれた光は一瞬にして空間を貫き、近づこうとした何かを……消滅させた。

●皆の力、ひとつに合わせて
 ブリーフィングルームの画面に映し出されたのは、なだらかな丘陵地帯だった。
 放置され続けていたのか、自然に任せたようなその一帯は住む者も働く者の姿もない。
 農地もなく、自然の中に点在する不自然に規則正しい木々が、かつて林業でも行われていたのだろうかと思わせるかも知れない。
 危険などありそうもない穏やかで平和な風景だった。
 そんな風景の上に、CGで作成された画像が貼り付けでもしたかの様に表示される。
「これが今回のエリューション。一般人だけじゃなく、カメラとかそういう物に対してもステルス性を持ってるみたいだから、画像は偵察を基にして作成された物になってる」
『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)はそう言って集まったリベリスタ達を見回してから、コンソールを操作した。
 表示されていたCGの横に、正面や側面、上から見下ろした様なエリューションの外見が表示され、数字や文字が表示されていく。
「エリューション・ゴーレムのフェイズ2。巨大な砲台型をしていて、見た目通り接近してくる敵を射撃で攻撃する習性がある」
 結界的なものを展開しているらしく、今まで周囲に近付く者はいなかった。
 近づいたとしても幻影に似た能力を持っている以上、一般人は気付く事はできなかっただろう。
 そして機械類による周囲を纏めて撮影する等の行為に対してもステルス性を持っていたので、発見される事もなかった。
 移動する事ができなかったというのも大きな理由の一つだろう。
「以前風力発電の計画が挙がっていた地域だから、もしかしたら実験とか試運転とかで設置されかけていた風力原動機とかが放置されたままで変化したのかも知れない」
 少なくとも、今まで人的被害が出た事はない。
「……けど、いつまでもそうとは限らない」
 イヴは言った。
 フェーズが進めば動けるようになる可能性もある。部下等を作成できるようになれば、本体が動けずとも周囲に被害が発生する可能性は充分だ。
「射程だってもっと伸びるかも知れない」
 もっとという部分に反応したリベリスタの一人は、そのデータを確認して言葉を失った。
「この砲台型E・ゴーレムの攻撃射程は500m」
 その範囲内に侵入してきた者を、電撃のような光によって排除する。
「攻撃力もかなり高い。耐久力に劣る者、未熟な者なら一撃で戦闘不能にされるレベルの破壊力」
 加えて命中精度も高い。回避能力に優れた者でも完全に回避する事は不可能な程の精密射撃。行動予測等も確実に行われていく事だろう。
 また、敵がある程度固まって行動している場合は目標とその周辺に拡散する電撃を放つ事もできるようだ。
 こちらは攻撃力は半減するが、命中精度は更に高くなる。実質回避不可能な攻撃だ。
もっとも、どちらの攻撃も直撃かそうでないかで受けるダメージは大きく変化する以上、回避能力は極めて重要と言える。
 勿論、耐久力と防御能力も。
「……でも、今回一番大事なのは『どうやって近付くか?』だと思う」
 射程距離に入ればゴーレムは攻撃を開始する。どんなに耐久力に自信があっても、ただ無策に距離を詰めるだけでは攻撃可能な距離まで近付く前に力尽きる事だろう。
「E・ゴーレムは射程内で最も自分に接近している対象を攻撃目標にする。ただ、一度攻撃した対象は行動不能になるまで攻撃し続けるみたい」
 一度攻撃した目標が健在である限りは、対象以上に接近した敵が居ても攻撃途中の対象の撃破を優先するようだ。
 もちろん、対象が攻撃射程の圏外に出てしまった場合は攻撃目標を変更する。
 エリューションの存在する周囲は、開けた丘陵地帯だ。
 遮蔽物になりそうな物はない。少々の木々や茂み、草むら等では諸共薙ぎ払われてしまう事だろう。
 地面の方は舗装された道路のようにはいかないが、走って移動する分には不便は無さそうなのが救いといえば救いかも知れない。
「とにかく近付ければ、必ず勝てる」
 イヴは言った。E・ゴーレムの弱点は、その射程を得る為の構造だと。
「超射程を得る為の長い砲身と巨体のせいで、このエリューションは自分に近づいた敵の攻撃が出来ない」
 20m内まで接近する事が出来れば、攻撃を受ける心配はない。
 巨体故に耐久力はあるだろう。防御力もそれなりにはあるかも知れない。
 だが、攻撃の手段はなく移動する事もできない相手ならば、リベリスタ達に敗北はない。
 1人でも辿り着ければ良いのだ。
 砲台は動く敵が射程範囲内にいる限りは、戦闘不能になった対象は攻撃しようとはしない。
 接近し過ぎて攻撃できない相手であっても、照準を合わせようとし続ける。
「だから、ひとりでも辿り着ければ他の皆は大丈夫だと思う」
 全てを言い終えてから小さく息を吐いて……オッドアイの少女はその場の全員を見回した。
「……皆ならきっと大丈夫と思う。気を付けて」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年08月01日(月)23:09
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は長射程を誇る砲台型のE・ゴーレムとの戦闘となります。


■戦場
多くは草原のなだらかな丘陵地帯。所々に林が点在しています。
E・ゴーレムの姿は敵の射程に入る前に確認出来ます。
地面は少々荒れていますが、リベリスタ達の移動に不便はありません。
回避行動等に関しても不利な修正等はありません。

■E・ゴーレム『殲滅砲台』
砲台のような外見をした大型E・ゴーレム。
最大射程は500m。逆に20m圏内への攻撃は出来ません。
攻撃1:ビーム砲(神・超遠・単) 命中:高 攻撃力:超高
攻撃2:拡散型ビーム砲(神・超遠・特殊) 命中:超高 攻撃力:高
(特殊:目標+周囲20mが攻撃対象となります)
射程内で最も自分と距離の近い対象を攻撃目標とし、攻撃後は撃破するまで同じ目標を攻撃し続けます。
攻撃は基本1、対象含め3体以上を巻き込める場合2での攻撃となります。
(攻撃2の場合でも目標は敵となります。地点を狙って多くを巻き込むという判断力はありません)
一度攻撃を開始した目標には、撃破(戦闘不能)するか射程圏外に出られるまで攻撃を行います。
射程圏外の敵に対しても発見次第警戒しています。
イーグルアイ、千里眼、熱感知、集音装置、幻想殺し等に似た力を用いて索敵を行っている様です。
耐久力も極めて高く、防御力、速度もそれなりに高めです。
反面、回避は実質ありません。ファンブルしない限り命中すると考えて問題ないレベルです。



E・ゴーレムを撃破出来れば依頼成功となります。
イヴの言うように1人でもゴーレムの20m内に到達出来れば、勝利は揺るぎません。
その為に……参加の皆様は如何なさるのか?
それでは、興味を持って頂けたら宜しくお願い致します。




参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)
ソードミラージュ
アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
ソードミラージュ
ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)
デュランダル
神守 零六(BNE002500)
覇界闘士
シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)
■サポート参加者 4人■
マグメイガス
ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)


●殲滅砲台確認、作戦開始
「とんでもない能力のE・ゴーレムですね」
『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)の言葉は驚きの成分を含んではいたものの、続いた言葉は客観的だった。
「ある意味スターサジタリーの究極に近い形を具現化しているようです」
 ただ、固定砲台である事と懐に飛び込まれたらお仕舞いというのがこちらとしては付け込む隙があるというものです。
 冷静にそう口にして幻想纏い等の確認を行うその姿には、驚きよりも落ち着きの成分の方が多く漂っている様に見える。
 市街地から離れた人気の無いなだらかな丘陵地帯にリベリスタ達の姿はあった。
 その一行の視線の先に、ハッキリと確認出来る巨大な砲台が存在している。
 もっとも、それを確認出来るのはリベリスタ達だけだ。
「丘陵に現れた砲台ね、ひどく傍迷惑なこと」
『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)は誰に言うでもなく呟いてみせた。
(良いわ、意地でもなんでも打ち崩してみせるから)
「私たち12人、一人でも砲台にたどり着いたら勝ち。わかりやすいわね。嫌いじゃないわ」
 自分たち12名全員で、意地でも一撃を食らわせてみせる。
「殲滅砲台、ね。面白ェじゃねェか」
『雷帝』アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)も不敵な表情で口にした。
 てめえが俺らを殲滅する方が先か、俺らがてめえを殲滅する方が先か?
(速さ比べで、この俺様が、負ける訳にゃいかねェんだよ!)
 呟き、或いは言葉を交わしながら一行は準備を進めていく。
 一行はスクーターやオフロード用の自転車等での接近を考え様々な実験を試みたが、結局それらは有効ではないとの結論に到達した。
 起伏もそうだが、丘陵の多くを占める草原が特に、車輪を持つ乗り物には厳しそうだった。
 人類は様々な移動手段を開発したが、汎用性……走破力というものに関しては人間の二足歩行を超える物は発明されなかったという事なのかも知れない。
 勿論、空を飛ぶ等の地上を移動しないものは除外して。
 翼を持ち、飛行を可能とする者の一人、『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)は一行から離れ砲台の上空付近へと移動している最中だった。
 位置する場所は砲台の上空。勿論敵の射程圏外。正確な距離の確認が出来ない以上、ギリギリを狙うのは危険過ぎる為、ある程度余裕を持って位置を取る。
「そうそう、私このお仕事が終わったらケーキバイキングに行くんだ」
 天を往く同胞から視線を外すと『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)は、ごく普通な態度を装って口にした。
 不安がないと言えば嘘になる。それでも、自分にできる事をするだけだ。
(それに、超射程の砲台に正面から突撃とか超カッコよくない?)
 そんな風に自分に言い聞かせれば、不思議と緊張がほぐれた気もした。
「最悪誰でも1人がたどり着けば何とかできるわけです」
 自分に言い聞かせるかのように小鳥遊・茉莉(BNE002647)も口にする。
 一方で『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は皆の様子を確認しながら、いつでも行動を開始できるようにと待機していた。
「この一戦、守護の担い手としては負けられないのであります」
『イージスの盾』ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)は、巨大なエリューションへと視線を向けながら言葉を発する。
(私は盾。万夫不当を防ぎ切る、世に響きしイージスの盾)
「殲滅砲台、相手にとって不足無し、であります!」
 内にて誓い言い放てば、装備の確認を終えた『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)も頷き口にした。
「すべては滅びるもの。だが、早々には滅びないものが在る事を、教えよう」
 視線を同じようにゴーレムへと向ける。
 そんな二人を見ながら、『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)は強く拳を握りしめた。
(今回の私の策は「味方を信じる」「己を信じる」これだけだ)
 私たちならば砲台まで到達できるはずだ。
 総てを砕く砲台を、私の拳で砕く。相手の攻撃は囮を引き受ける人間に任せる。
「私はそれを信じて戦場を駆け抜けるのみ」

●目標まで500m
 500mの射程。理不尽。
 凄い命中率。ソレも不条理。
 世界は今日も、不条理と理不尽に溢れている。
「素敵だね」
 幾つもの言葉の後、『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)は呟いた。
(ルカは、このせかいが大好き。だから、理不尽はルカの手で叩きつぶすよ)
「ね、ルカが、あそこまでたどり着いて見せる」
 その言葉に応えたのか、或いは独り言か。
「途中で力尽きる気なんざ更々ねぇよ」
『人間魚雷』神守 零六(BNE002500)は言い放った。
 最初から最後まで、ターゲットになった状態で生き残る。
「そうすりゃ、誰もが俺を主人公と認めるだろ?」
 サングラスの奥の瞳で殲滅砲台を睨みながら。
(どれだけ高い威力でも当たらなけりゃ意味が無いって事を見せてやるぜ)
 全員の時計は既に合わせ終えている。用意したトランシーバーを、通信を確認して。
 準備を終えたリベリスタ達は、すぐに動きだせる態勢を取った。
 時間を確認した零六が、砲台向かって走り出す。
 それが作戦開始の合図だった。
 続くように、残った全員が範囲攻撃に曝されぬ様に距離を開け砲台に向けて全力疾走を開始した。
 囮役になる者達が最も砲台に近くなる様に、待機等で行動順を遅らせたりしながら調整する。
 E・ゴーレムが砲身を自分へと向けるのを確認しながら、零六は防御の態勢を取った。
 ルカルカに言ったように零六には到達を諦める気はなかった。
 全力で、行けるところまで行ってやる!
「主人公は遅れてやってくるもんだからな! 先に行って待っててやがれ!」
 砲身の先端が光った瞬間、射線から逃れるように移動しようとする。
 次の瞬間、放たれた光がメタルフレームの青年の半身を抉るように貫いた。
 それは圧倒的な破壊力を持っていた。衝撃が、そして熱が、零六の身体を破壊し、焼き尽くそうとする。
 それを何とか堪えた零六に第2射が襲い掛かる。
「くそ……何で、避けきれねぇ……」
 力尽き、倒れそうになった時、前を走っている仲間達の姿が目に映る。
 ライバルの姿も。
「まだだ……倒れるわけには行かねぇだろッ! 主人公がよ!」
 強引に運命を手繰り寄せ耐え忍んだ彼に、第3射が襲い掛かった。
 膝を折りながら零六はトランシーバーの向こうの仲間達に、ライバルに呼びかけた。
「悪……ぃ……頼んだぜ、ぶっ倒してやれ」
 かろうじて声を絞り出すと、メタルフレームの青年は崩れ落ちる。
「御見事でした、神守殿」
 短い言葉を仲間へと贈ると、アラストールは傍らを駆けていたラインハルトに告げた。
「私が止める。しばし待て」
 皆にも連絡し、最も前へと出ると速度をやや落としながら全力防御の態勢を取る。
 砲身が自身の方へと向きを調整するのを確認しながら盾を構える。相手の攻撃を少しでも逸らせるように。
 直後、アラストールに向かって巨大な光の槍が放たれた。
 ほんの少しだけ逸らした事で直撃は免れたものの、それでも強力なエネルギーの塊が騎士の身を襲う。
 その命中精度は若者の想像を上回っていたが、破壊力そのものは推測したものに近かった。
 それでも、圧倒的な破壊力である事に違いはない。
 直前に自身に施した癒しの力が発動するものの、破壊力に比べてそれはあまりに儚かった。
 それでも、癒しの力は結果的に大きな効果をもたらした。
 3射目を受けたアラストールが限界ギリギリで倒れる事なく盾を支えに立ち続けられたのは、ひとえにその僅かな癒しの蓄積の結果だった。
 最後の力を振り絞り、殆んど盾に寄り掛かるようにして4撃目を堪え歯を食いしばる。
 騎士は信じていた。仲間達の力を。
 5射目の直撃を受け、ついに力尽きるその瞬間も、その後も、欠片も疑いはしなかった。
 そして……2人が倒れたその間に、仲間達は150mの距離を走破していた。

●目標まで350m
 仲間達と連絡を取り合いながら一直線に殲滅砲台へと駆けていたラインハルトは、アラストールが倒れた事を知ると速度を上げ最前列へと進んだ。
「来なさい、殲滅を冠する究極の矛。されど私達は決して折れはしない。盾は、貫かせない!」
 何発防ぎ切れるか分からない。自分の役割は、あくまで時間稼ぎ。可能な限り耐え抜き、少しでも仲間達を進ませる為に。
 盾を構えた直後、砲台の放った光が襲来し彼女の全身を焼き尽くすかのように貫いた。
 傷付いた彼女をウェスティアの歌が癒す。
 その援護を受けて、ラインハルトは何とか2撃目を耐え抜いた。
 ただ護り、ただ耐える。そして、3射目を受け崩れ落ちかけた身体を何とか、運命の祝福によって繋ぎとめる。
「……まだ。まだ、私は折れて居ない……イージスの盾は、壊れない」
 意地であり、我侭であり。されど人は……時に其を、矜持と呼ぶ。
 少女は自身の内にあるものを、想いを……守り抜き、貫き、昇華させた。
 4度、光の槍で全身を焼かれ、貫かれ、力尽き倒れたその時も。
 満身創痍になろうとも、心だけは折られずに。苦しげな様など見せるものかと痛みを堪え。
「後は、お任せ致します。御無礼!」
 駆ける戦友達の背に最後の力を振り絞って、少女は激励を投げかける。
 その頃、上空で戦況を確認していたクリスは仲間達が中間地点付近を通過したのを確認し行動を開始した。
 唯、ひたすら距離を詰める為に防御も回避も捨て、落下速度すら利用する。
 光の槍の直撃、その圧倒的な破壊の力を彼女はただ運命だけに頼って堪え抜き、体勢を崩しながらもそのまま超高速で降下する。
 仲間達には見えたかもしれない。
 大地から天へと向かって放たれた雷に打たれた彼女が、そのまま流れ星のように空を駆け、砲台へと直撃した姿が。
 それを確認したブリュンヒルデが囮となる為に速度をあげた。
 限界近くまで高めたスピードを活かし、フェイントを織り交ぜた動きで砲台からの攻撃の回避を試みる。
 かすめるだけでその周囲を焼き尽くすような破壊力の光が少女を傷つけ、力を奪っていく。
 それでも、直撃を避ける事が出来た為に自身に課した時を彼女は充分に稼ぐ事ができた。
「後は……お願い、します……」
 わたしはここで倒れても、敵を打ち倒す意志は仲間と共に。
 薄れる視界の中で、少女は駆ける仲間達の背へと声を発する。
 タイミングを調整してハイスピード状態を維持していたアッシュは、現在地と視界を遮る障害、樹木の位置関係を素早く確認した。
 効果があるかは分からないが、試す事のできる距離ではある。
 舌打ちしながら速度を上げた彼は、そのまま機敏に向きを変えると木々の繁る地点へと突入した。
 光の槍が最も接近した彼を狙って放たれる。
 かろうじて直撃を避けたアッシュは、そこで移動を諦めると防御態勢に入った。
 もっとも、機敏さを活かして直撃を避けるのは忘れない。
 続く砲撃で力を失いかけた膝に無理矢理力を篭め直して何とか堪えた彼は、そのまま囮を遂行し……3度の攻撃を引きつけ、打ち倒された。
「はっ……この俺様が、囮なんぞやってやったんだ。てめえら、負けたら……承知……しねェぞ」
 更に4人が倒れる。だがリベリスタ達は230mの距離を、合わせて380mの距離を走破していた。

●目標まで120m
 既に6人のリベリスタが倒れた。
 だが、それによって残りのリベリスタ達は既に7割以上の距離を走破していた。
 星龍は軽く息を吐く。状況は確認できた。つまりは何とかしなければならないという事である。
 速度を上げれば、砲台が自分の方へと狙いを定めるのを確認できた。
 直撃だけは何とか避けるようにと速度をやや落とし、防御を重視した態勢を取る。
 そして……自身の計算を少々修正しつつ、数度の砲撃を受けた青年は膝を折った。
 唇は微かに動いたようにも見えたが、言葉はそこから発されなかった。
 表情は痛みに歪みはしたものの、サングラスに隠れた瞳にどのような色が浮かんだのかを知るすべはない。
 託したのか、信じたのか、すべては憶測の域を出ない。
 ハッキリしているのは、彼は30秒という時間をその身を張って作り出し、仲間達に50mという距離を与える事に成功したという事だ。
 標的を撃破した殲滅砲台は、次の目標へと砲身を向ける。
 自身が標的にされた事を確認した糾華は、直撃を避けるべく移動より回避に重点を置いて接近しようとした。
 その時だった。
 足に絡みついた草にほんの一瞬だけ気を取られる。気付いた時には既に光が目の前に迫っていた。
 衝撃が、膨大な熱量が、不運に見舞われた少女を直撃する。
 崩れ落ちそうになる体を何とか運命を手繰り寄せる事で堪えた直後、次の攻撃が襲い掛かった。
 避け切れない。そう思いながらもふらつく足に力を篭め横に飛ぼうとした時だった。
 地面に吸いつくように踏み出せた足が微かな起伏にしっかりと喰いつき、反発するかのように鋭く跳躍させる。
 髪の毛を数本巻き込まれながらも転がるように回避した彼女の前を、仲間達が駆けていく。
(この戦い、最後の一人が立っていれば、それで勝ちだもの)
 3度目の攻撃を受け崩れ落ちた少女は、それでも安堵する様な、不敵な笑みを浮かべてみせた。
 そう、私が倒れても、それで負けじゃない。
「ふふ、ざまあ見なさい」
 彼女が狙い撃たれたその間に、残ったリベリスタ達は砲台への接敵に成功していた。
「接近してしまえばただの鉄の塊だな」
 距離を詰めたシャルローネが、そう言って大きく振り被るように身体をしならせる。
「どれだけ頑丈でも、私の拳に砕けぬものはないっ!」
 叩き込まれた一撃に、E・ゴーレムの身体が鈍い音を立てて歪んだ。
 範囲攻撃を避ける為に飛行状態で接近していた茉莉も20m内に侵入できた事を確認すると、詠唱によって高めた魔力で属性の異なる四色の魔光をエリューションに向かって解き放った。
 ラインハルトの回復の為にやや後方を飛んでいたウェスティアも、到着後ただちに攻撃に移る。
 真っ先に接敵していたルカルカは、澱みのない連続攻撃を続けていた。
 絶え間なく繰り返される攻撃にゴーレムの装甲は歪み、砕かれていく。
 疲労も消耗も委細気に止めず少女は攻撃を繰り返した。
 意地でも砲台を潰すと決めたのだ。
 まかせといて、主人公。ルカがライバルらしくあそこまで、いくよ。
 零六が倒れた時に、そう言ったのだ。トランシーバーの向こうの、ライバルに。
「主人公が絶対に倒せっていったもんね。なら、その理不尽なお願、聞くのがルカじゃない?」
 だから、一気に叩き切る。
 辿り着いたリベリスタ達の圧倒的な攻撃の前に、巨大なゴーレムは呆気なく砕け、壊れていく。
「近づかれちゃえばおしまい。今度はキミが理不尽を味わう時間」
 不条理のなかできえちゃえ。
 ミシミシと歪むような音を立て、やがて悲鳴のような音を響かせながら、圧倒的な破壊を振り撒いたエリュージョンは残骸となって丘陵の草原へと転がった。

●任務、完了
 響いてきた激しい音に何とか顔だけ動かしたアラストールの瞳に飛びこんできたのは、仲間達の攻撃を受け打ち砕かれていく巨大な砲台の姿だった。
 信じていた。仲間達の事を。それでも……こうして見届ければ、自然と喜びがこみ上げてくる。
 総てを守り抜いた騎士は……笑みを浮かべ、そのまま目を閉じた。
 同じく仲間達の成し遂げた事をラインハルトも、疲れ果てたその顔に笑みを浮かべた。
 痛みを表情に出さぬようにと堪えようとしながら動かそうとした口は、しかし何も言葉を発せない。
 それでも少女は懸命に口を動かし、戦友達に言葉を贈った。
(信じておりました。御見事でございます)
 それで力を使い果たし、仲間達を守り抜いたもう一つの盾も眠りに付く。
「はっ……この俺様が、囮なんぞやってやったんだ。当然……だぜ……」
 アッシュも破壊されるエリューションを遠目に確認しながら呟いた。
 嘲るように叫んでやりたい処だが、満身創痍の身体ではそうもいかない。
(殲滅完了、ってな)
 吐き捨てるように小声で口にする。
 星龍は、負傷と痛みで不自由な体を動かし煙草を取り出した。
 一本咥え、同じくらい苦労して、火を付ける。
 一口目を吹いてから吸い込めば、口の中に様々なものが入り混じった様な、何ともいえぬ味が広がった。
 様々なものが混じり合った雑味。だが……悪くないと思える味わい。
 青年は静かに息を吸い込むと、白い煙を空へと吹かす。
 疲れた身体を草原の上に横たえた糾華も、空を見上げなら息を整えていた。
「ふぅ、いい風、いい陽気……ふふ、勝てたのね、良かった」
 傷の具合を確かめるように、小さくガッツポーズを取ってみせる。
(もう、これ以上賭ける命なんて、無いんだもの)
 微笑にも苦笑いにも見える微かな笑みを浮かべて、少女は空を見上げた。
 鮮やかな一面青色の空間を、白い雲がゆっくりと流れていく。
 気が付けば、辺りから五月蠅いくらいに感じられる元気なセミ達の鳴き声が響き始めていた。
 明日も、暑くなりそうだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼、お疲れさまでした。
お見事です。
イヴが言っていたように一人でも突破できれば勝ちでしたが、4人もの方が突破する事に成功しました。
其々のスタイルで、互いに信じ、託し合った結果だと思います。

MVPはリベリスタ個人としての実力、自身の長所を理解しそれらを堅実に確りと活かす行動。
そして、囮の中で最も長い時間を耐え抜いた方という事で選ばせて頂きました。

御参加ありがとうございました。
あと、こんな事を言うのはわざとらしいかも知れませんが言わせて下さい。

すごくカッコ良かったです、皆さん。