●暗 「……正義の味方って」 「ん? どったん黒たん。お前から兄ちゃんに話しかけるなんてめっずらし~いコリャ雨か霰が降るかしらん? ああうんえーっと、んで正義の味方が大変だよねって話だっけ?」 「……うん」 「『俺達が今から人殺しすっぞ! 止めてみたけりゃ以下の地図に記した場所に来やがれ!』ってゆーチャチィ嘘の脅迫文でホイホイ大漁だもんにぇ~。なんか胡散臭ぁ~くてもキッチリしないといけないのが正義の味方の大変な所だよね! 漫画やアニメとは違うね! 三次元は苦労ばっかしだ!」 「……」 「唆聞ちゃんもそ~思うでっしょでしょ?」 「ねむい」 「んも~黒たんはコミュ障で口下手で無口っ子だし唆聞ちゃんは『ねむい』『だるい』しか言わないしぃ! ここにはロクにお喋りできる相手はいないんですかっ! もー! 白ちゃん激オコーっ」 「……」 「……」 「……」 「……兄、さん」 「なんだい黒たん兄さんなら今沈黙に押し潰されて死にそうでしたが」 「さ、唆聞さん、が。……『獲物が来る』って」 「方舟かしら、どうかしら」 「だと、いいな」 「頑張って一二三様に褒めて貰おうぜ~っ。俺ちゃん一二三様だいすき!」 「……うん」 機械の顔が二つ、洞穴の出口へと向く。その更に奥、洞穴の壁に凭れて座る『人の形をした異形』がゆるりと口角を吊り上げる。その口唇の合間から、不気味な牙が闇に光った。 ●暗、から少し遡り 夜の山道を八人が駆ける。その通信機から聞こえる声は、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)のものだ。 「聞こえますか、リベリスタの皆々様。私ですぞ。移動中ですが時間が押しておりますので手短に説明させて頂きます。 今回、皆々様に行って頂く任務は『友軍リベリスタの救出』。彼等は地方リベリスタ組織の一員でしてね、……裏野部フィクサードより送り付けられた脅迫文によって、皆々様が向かっている先にある洞穴に呼び出されました。 しかしその脅迫文は嘘――まぁ裏野部の事ですから来なければ本当に暴れたのでしょうが――彼等フィクサードの狙いはどうやらリベリスタ達を誘き出す事にあった様です」 結果、彼等は『罠』に嵌まり壊滅状態。けれど不可解な点が数点ある、とメルクリィは続けた。 「裏野部フィクサードですが。誘き出したリベリスタを殺すのではなく『生け捕り』にしているのですよ。それも、全員ではなくメンバーの一部のみ。何か理由があるのでしょうが現時点では不明です。 それからもう一点……洞穴には、強力なアザーバイドが居ます。『まつろわぬ民』。遥か昔のリベリスタに敗れて封印されたアザーバイドで、『土隠』とも呼ばれている存在です。 封印されていた筈の『まつろわぬ民』が出現した事も謎ですが……裏野部フィクサードと共に居る以上は何らかの協力関係にあるようですな」 情報には不明が多く、油断は禁物だとメルクリィは念を押した。 「目標地点は近いですぞ、皆々様。……では、お気を付けて……!」 開けた藪、開けた視界、その先に見える洞穴。 それはケダモノのアギトの如く、暗い口を開いていて―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月19日(火)22:54 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●其処の底 湿った土の臭い。微かに鉄臭さも混じっている。 時間はあまりない。迅速に足を動かし、けれどその中で『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)は思う。裏野部の、その不穏な動きについてだ。 「殺害ではなく生け捕り……敵の目的はなんでしょう」 「本当に、ね。最近頻発してる事件は、何に繋がっていくのかな」 応えたのは、広げた翼で宙を行く『尽きせぬ想い』アリステア・ショーゼット(BNE000313)。言葉の後に「ううん」と小さく首を振る。 「……繋げちゃいけないんだ。相手の思い通りにはさせない」 疑問を抱くだけでは駄目だ。疑問に思うならば行動せねばならぬ。『助けられる人を助けたい』。今日も、それが、アリステアの全て。 「いつかのお面兄弟が相手か」 搗ち合う斧の記憶は未だ生々しい。隊列の先頭を油断無く駆ける『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)は独り言つ。気になるのはそれだけではない。『まつろわぬ民』。何処かの土蜘蛛伝説が脳裏を過ぎる。 「ここで仕留めたい所だが……生憎そんな状況じゃあねぇか」 「『仕留める』? そりゃ~コッチの台詞ってもんだぜ『赤い墓堀』よぅ!」 視線の先にて返ってきた馬鹿笑い。白鏡面。そこは洞穴の奥底。最奥にだらりと座した唆聞、チンピラ然と白鏡面、それが召喚したEエレメント、黙し佇む黒鏡面、そして、ズタボロになった地方リベリスタ達。 「ぎゃはははは! どーもどーもウチの弟がお世話になってますわー。もーここ無口っこばっかで好い加減死にそうだったわ」 「そのまま死んどきゃいいものを」 フィクサードの減らず口に吐き捨てたのは『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)。拳をゴキリと鳴らしながら。 「よぉ黒豆野郎に卵野郎。罠にかかったスカタン助けるなんてつまんねぇ仕事だと思ってたけどお前らがいるなら話は別だ」 「豆と卵ってどんだけタンパク質やねんさかもっつぁんよぉ! 180秒クッキングか! 甘辛く炊いたろか!」 「っとにうるせぇなぁぶち壊してやるよ!」 「上等だっちゅーの!」 罵声で火蓋は落とされて。 戦闘が、始まった。 「アークです。助けにきたよっ!」 願い事は助ける事。アリステアのその思いは魔法となって具現化し、癒しとなって吹き抜ける。それは今にも倒れそうになっていた地方リベリスタの二人を包み込み、傷を癒す。 「仲間、助けたいよね? わたし達はその為に来たの。一緒にがんばろ?」 助ける為には、彼らにも動いて貰わねば。動けるならば大切な戦力。アリステアの激励の言葉に、そしてアークリベリスタ――その名声を轟かせている者ばかりだ――到着という心強い状況に、諦めが浮かんでいた彼等の表情に活力が満ちる。 「二人には、わたしの傍に運ばれてくる人達を外に連れ出して貰いたいの。お願い」 「分かった。感謝する!」 アリステアの言葉に頷く二人。後衛である彼女の付近でも行動なら敵の凶手も易々とは届かぬだろうと。 では主目標である救出を。倒れた友軍を救うべく踏み出す佐里だが、その行く手をEエレメントが阻んだ。 「退きなさい。目障りです」 瞳に浮かべるは鋭き戦意。左手で振り上げる剣の名は閃赤敷設刻印。全てが深い赤のそれが繰出す斬撃を形容するならば『状況最善手』。刃向かいし愚かな敵の動きを完全に解析した剣閃。振り払い、その彼方、裏野部を名乗るフィクサードを睨め付ける。 「貴方達の目的は?」 「世界征服だっちゃ!」 即答した白鏡面がふざけきっているのは火を見るよりも明らかだった。尤も、素直に訊いて答えてくれるなど期待してはいなかったが。敵に目的を易々と話す。それは自分が同じ立場でも、多分きっとやらない事だ。 「裏野部一二三に褒めてもらう? 残念ですが、お叱りを受けてもらわないと。本当は、叱られる事も出来ないよう、ここで叩いておきたいところですが」 「サディスティックなお嬢ちゃんだわねぇ~君を裸にひん剥いて可愛いお尻の皮膚がズルムケになるまで鞭で叩きたいっすわマジでクソワロ」 悪趣味で下衆な台詞。返すのも面倒だ。冷ややかに眉根を寄せた佐里はそれ以上白鏡面に構わず、倒れていた友軍を一人抱き上げる。この状況で敵と正面切ってぶつかる余裕は無い。戦いには来たが殺しに来たのではない。救いにきたのだ。救う事こそ、己の最優先事項。 「余所見たぁいい度胸じゃねえかクソボケが!」 一方の同刻。俺の奴隷を拳で蹴りで弾丸であらゆる暴力で薙ぎ払い、白鏡面へと瀬恋が迫る。また一歩。また一歩。ぶつかる視線。 「何度目だ? いい加減テメェの面白みのねぇツラも見飽きたんだよ」 「それでも会いに来てくれたなんて、もっつぁんはツンデレだなぁ萌え萌えキュン」 言葉と共にガトリング。回る砲身。精神を削る精神の弾丸。弾幕二枚。瀬恋の肩を撃ち抜いて、身体にあちこち弾痕で。あー。ああ。ムカツク。マジで腹立つ。無頼少女は舌打ち一つ。何が腹立つって、何度もコイツら逃した自分に腹が立つ。 本当なら戦闘に専念したいけれど――救助もキチンと行わないとコイツ等が喜ぶ羽目になる。それも腹立つ。進軍の最中に倒れていた友軍を一人抱え上げると力任せに後方へとぶん投げた。死にゃしねぇだろ。拳をガツンと撃ち合わせ、一歩。 「ボッコボコのハンサム面にしてやるよ!」 「惚れて恋に落ちても知らないわよ~っ?」 誇りに懸けて、その身に結ぶ血の掟。臨戦、射撃体勢を取りて迎撃の構え。拳と弾丸。 怒涛なる音。 それは、斧と斧がぶつかり合う音でもある。 毀す者、グレイヴディガー・ドライ。鏖す者、孤独の破軍。至近距離。ギリギリと交じる刃を真ん中に、ランディと黒鏡面の視線もまた、火花を上げて。 「うォら゛ァ゛アッ!!」 ケダモノの如く咆哮。振り払うと同時に瘴気を纏った赤黒き刃より破滅の気弾を繰出した。派手な音。孤独の破軍を構えた黒鏡面が勢いのまま押し遣られる。そのままバックステップ、次の攻撃は黒鏡面の番。振り抜いた攻撃は――全てを全てを薙ぎ払う。 赤、血。刻まれた傷に、しかしランディは口角を吊り上げて低く嗤うのだ。 「ったく、戦いてぇこんな七面倒くせぇ事やらずとも付き合ってやるぜ、少なくとも俺はな!」 「……ふふ。僕、……き 君の事、きらいじゃな、いよ」 何だかんだ言って戦いが好きだ。暴力と暴力のぶつけ合いが。破壊衝動の生々しい露呈が。斧を構える。血に飢えてギラギラ輝くその刃を。 ランディは孤独の破軍へ目をやった。元はグレイヴディガーと同様の両刃だったそれは今、片刃。目立った外傷は見受けられない、が。ただ、ただ、一心不乱に、いつだって、墓堀は『毀す』のみ。 「相変わらずいい得物だが、今度はどっちが上か比べてみるかよ?」 「……うん」 黒鏡面は嬉しそうに応えた。嬉しいのだろう。力一杯振り上げる。ランディもそれに応えて力の限り振り上げた。苛烈に、熾烈。交差、暴力、極限を超えろ。 「はい頑張ってねー」 そんなフィクサードをだらだらと、活毒で支援するのは最奥の唆聞。あまり積極的に攻撃に出る気はなさそうで、まるで余興を見るかのように戦いを眺めている。『だった』。それまでは。 「さて。土の中は心地良かったかい」 徐に伸ばした両手。が、『唆聞のすぐ傍の地面と壁』から飛び出してきた『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)と『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)の顔面を鷲掴みにした。物質透過、それは気配まで完全に消す代物ではない。そして唆聞は人ならざる者、通常の人間とは知覚能力は異なっている。 メキリ。握力。頭蓋圧迫。歪む。そのまま地面に叩き付けた。バウンド、転がり、されど二人は素早く体勢を立て直す。 またあの兄弟。こんな異形と組んで何をするつもりだ? 掴まれた拍子に打った鼻から血を流しながら、アンジェリカは巨鎌La regina infernaleを振り上げる。だがその切っ先は唆聞ではなく、彼の周りに転がされていた繭状態の友軍リベリスタ。ざくり、糸を切り裂けば意識を失った若い女が。 (やっぱり……) それはアンジェリカの予想通りだった。彼女を救うべく抱き上げる――瞬間、少女の身体を蜘蛛の糸の様なものが呪縛する。引き寄せられる。 「君はここにいて貰おうねぇ」 間近で嗤う異形の顔があった。伸ばされた人差し指が少女の顎を持ち上げる。アンジェリカはきっと睨め付けた。全く、張り手の一つでもかましてやりたい気分だ。 「どういうつもりであの兄弟とつるんでるのか知らないけど、これだけは言っておくよ。どんな理由があるにしろ女性を無力化して拘束するなんて男のする事じゃないよ! 例え悪でも美学の無い奴なんてただの屑だよ!」 「あぁ、そう」 心底どうでも良さそう、というより9割聞いていない感じだった。が。その動きが、止まる。 「ん? おろ?」 それは最高級なる魔性の一撃。意識すらも絡め取る『支配』。 「残念だが、我らはここで捕縛される訳にはいかんのでな」 裂けた唇が血で赤い。妖艶な笑みを浮かべ、意識の自由を奪われたアザーバイドの頭部に靴裏を乗せた男の名はオーウェン。 「……戦闘行動を行わなければ回復できる。……それは即ち、戦闘行動を強制すれば回復を遅らせられると言う事である」 「あ~君のこと忘れてたわ……次からは気をつけんと」 「させんさ」 鼻で笑う声。操られて飛ばされる糸。俺の奴隷が藁人形が縛られる。その間にアンジェリカは糸を振り払い、立ち上がり。お気に入りのドレスが汚れてしまった。嗚呼。 「……この事は赦さないから」 鉄より冷たく、言い放つ。 ●インアウトアウト 「好きには、させない……!」 振るわれた軌跡は赤い色をしていた。佐里の持つ刃の切っ先から鮮血の如く迸ったのは赤い気糸。一直線。笑いながら銃弾を撒き散らしまくっていた白鏡面の肩口を貫く。血の赤。 「いっ……でぇんだろうとは思うけど唆聞ちゃんのお陰で全く痛くない不思議ィイイイイ!」 捲くし立てる白鏡面が銃口と意識を佐里に向けた。けたたましい銃声、かつ銃声。次々と肌を穿つそれらに、佐里は防御姿勢を取りながらもしっかと双眸で敵を戦場を見澄ましていた。 逃げない。 自分達の安全を考えれば、『必要最低限』の仲間を救って他を見捨てる選択肢もあるけれど。 逃げない。 決して。決して、逃げない。 「――私達は、精一杯を尽くしましょう」 それは己の運命を焼いて捨てて崩して無くして失くして亡くしても、構いやしないという心積もり。本当の『奇跡』は起きるに至らなかったけれども、彼女の覚悟は想いは誰だろうと何だろうと穢せない。気高き、赤。痛みなら引き連れてゆけば良い。 その遥か向こう側。交差する。唆聞が放つ神経麻痺の糸と、拘束されたリベリスタを救わんと奮闘するアンジェリカの鎌と、オーウェンが繰出す鋭い気糸と。薄気味悪いアザーバイドの能力は未知数だが、彼等が恐れ怯む事は万が一にも無い。血塗られようと、懸命に己の成すべき事をと奮闘する。 洞穴内は物騒なまでにけたたましい。止まない銃声。斧が叫ぶ声は最初から最期の様に激しい音色。死合うランディと黒鏡面を表現するのに今更言葉が必要だろうか。彼等が語るべき言葉は全て、唸りを上げる斧の刃が物語っている。美化も何も必要ないほどの、壮絶。 抑えなんざ洒落くせえ。 「戦るときゃあ殺る気でやってやらァアアッ!!」 ごりごりごりごり精神力を削られようと。最大火力は惜しまない。反動も辞さぬ瀬恋の一撃が、最悪して災厄なる砲撃が、白鏡面を襲う。俺の奴隷はもう居ない。徹底的。ガハハと白い顔が笑う。真似してやろう、零距離で突き付ける銃、銃、銃。執拗な処刑人。処刑できるまでしつこくしつこく行われ続ける無慈悲な攻撃。 が、瀬恋を踏み止まらせるのは血の誇り。赤に染まる。だから、赤に染まれ。ぶち込んでやる、と血を吐く口唇で吼える様に怒鳴った。 血の色。 唆聞は敵陣最奥にいる。唯一の回復手たるアリステアは味方陣最奥にいる。白黒鏡面の背後であり精神力が削られたり孤独の破軍の脅威に晒される事はないが、唆聞のすぐ傍に居るアンジェリカとオーウェンにアリステアの祈りは届かない。削られていく。無慈悲な程に。そして状態異常とは撃てば入るものではない。相手はその辺のフィクサードならまだしもアザーバイドだ。 ばぢん。 凶悪に響いた音は唆聞の口から伸びた毒顎が鋏の様に閉じる音。毒に満ちたそれがオーウェンとアンジェリカの身体を引き裂き、血に染める。鮮血の華。冷たい地面に倒れ付す。 だが、二人の健闘で唆聞の気は彼等に集中し、アザーバイドによる被害が広がる事は最小限に防がれただろう。繭状にされていたリベリスタも一人だけだが、フェイトを燃やしてでも喰らい付いたアンジェリカが執念で救出した。救出難易度の高いであろう彼女を救えたのは正に賞賛されるべき驚異である。 リベリスタはそれぞれが懸命に努力した。ランディは黒鏡面を、瀬恋は白鏡面を抑え続け。佐里は救い続け、アリステアは癒し続け。されども撤退せねばならぬ。定めたラインは今、破られたのだ。 チッ。舌打ち一つ。踏み込む瀬恋がアンジェリカとオーウェンを掴み取り、後方へ投げた。それはそれぞれアリステアと佐里が受け止める。動ける地元リベリスタも仲間が抱え上げる。救えるだけ救う。その為に走った。 その中で。アリステアは両手を組む。祈りを捧げて。 「かみさま、かみさま、……どうか、わたし達を助けて」 その声は、その祈りは、確かなる奇跡を齎す。機械仕掛けの神の御業。カチリと作動。伸ばされた腕。何処までも平等な救いの腕。 包まれる大いなる癒し。その中で、ふわりと銀の髪を揺蕩わせ、アリステアは振り返った先の『敵』に問う。 「何が目的なの?」 「世界征服って言ってるでしょぉん!」 ふざけた即答は白鏡面。追う事は無く牽制射撃と共にして。代わりに追いかけてきたのは黒鏡面。走る。けれど。 「簡単に通すかよ」 ざん。殿はランディ。壁。振るうは八つ裂きの暴風。睨む赤。見返す黒。帰らないでよ。小さな声と唸る破軍。一切を切り裂いて。 逃げる地元リベリスタの一人にもそれは襲い掛かる。悲鳴は無く、代わりに吹き上がるのは血飛沫で。だって、首を刎ねられた。ころころ転がっていくそれに目をやっている暇なんて無かった。ずるっと崩れた体。けれど抱えられていた者は無事だった。脳の無くなった肉体から、瀬恋は生きた人間を代わりに受け取る。盛大に舌打ちをしたい気分だ。 (アンタは連れて行けない。恨むならアイツらを恨みな) 死体を抱えている暇まではなかった。けれど、その者が護った者だけはせめてもの手向けだ、護ってやろう。救出者数を確認する。このまま無事に脱出できれば、任務自体は成功できる。 走る。駆ける。リベリスタ。フィクサード。距離は開いてゆく。のは、白鏡面は走っていないから。そのまま問うのは背後にて『何もしていない』アザーバイドへだ。 「俺が言うのもなんだけどぉ~~唆聞ちゃんはおっかけないのん?」 「だるい。3人いるからいいだろ」 繭状にされたのと、倒れてた中から一人こっちに引き寄せたのと。欠伸と一緒に言われた言葉に、白いフィクサードは「はいはい」と肩を竦めた。 「オーケィオーケィ。それじゃ黒ちゃんマッハで戻っておいで~」 戦いでしかコミュニケーションが出来ない弟と違って兄は強かだった。不必要な傷は負わない主義。その一声で、黒鏡面の動きが止まる。跳び下がる。だがじっとリベリスタを見ていた。その顔面に表情は無い。けれど。声無く口角を吊り上げ歯列を剥き出し笑っている様に、感じられた。 洞窟の外には間も無く。 胡乱な気配は尚消えず。 不気味な予兆は、始まったばかり―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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