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つぎはぎ。或いは、造られて捨てられて……。

● 生まれてそして逃げ出して
 生まれてすぐに、ソイツは自分の能力を知った。それと同時に、自分は誰かに作られた存在だということも知った。
 そして、自分が失敗作であるということと、廃棄されようとしているということを理解した。だからソイツは逃げ出したのだ。自分の能力で、ソイツはソイツを作った男の知識を得た。
 その知識に従って山を下る。途中で見つけた何かの死体から、ソイツは強靭な脚と、力強い豪腕を手に入れた。
 得た知識によると、別の世界へ行く方法が存在するらしい。
 数日間探しまわって、ソイツはやっと廃墟の壁に開いた別世界へ繋がる穴を発見。追い回されるのに疲れたソイツは、すぐさまその穴に飛び込んだ。
 願わくば……。
 その世界では、誰かに必要とされたいと。
 人に避けられ、追い回されることのないように、と。
 そんなことを思いながら、ソイツはDホールを潜る。
 
 新しい世界は光で溢れ返っていた。暖かい光に、冷たい風。灰色の地面は堅く、色とりどりの看板があちこちに散らばっている。
 Dホールを離れ、人を探す。慎重に、隠れるようにしながらソイツは進む。
 人の気配は少ないが、0ではない。視界に映った通行人の姿を見て、ソイツは自分の失敗を悟る。
 道ゆく男の姿と、ガラスに映った自分の姿はとてもよく似ていて、だけで致命的に違っていた。
 この世界でも、自分はやはり異質なままだ。
 ソイツの顔は縫い痕だらけ。
 ソイツの脚は、肉食獣のそれである。
 右腕は太い鬼の腕だ。
 左腕は異様に長い。複数の腕を縫い合わせ、長くされている。
 形だけなら道ゆく者達と同じ。
 しかし、それを構成するパーツが致命的に違う。
 ソイツは深く落ち込んで、それからある結論に達してしまう。
 違うのなら、奪えば良い。
 同じになるように、奪ってしまえばいいではないか。
 それがソイツの能力だった。

● つぎはぎだらけの人造人間
「アザーバイド(ナナシ)は、異世界で作られた人造生命体。失敗作らしく、廃棄されそうになったのでこの世界へ逃げてきたみたい」
 視線を伏せて『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001はそう言った。モニターを操作し、ナナシの姿を画面に映す。暗い部屋に踞ったまま動かないナナシがモニターに映った。
「ナナシの体は、他人や他の生き物の知識、部品をつなぎ合わせて出来ている。知識はナナシを作った男、左腕は鬼で、下半身は獣。右腕や体は複数の人間。そこまでして尚、彼は失敗作みたい」
 ナナシを作った男は、一体なにを作りたかったのか。何故、ナナシが失敗作なのか。知る由もないし、知る必要もないことだ。
 気になるという想いは、止められないが……。
「ナナシの能力は、他者の体の一部を真似る、というもの。死体などからは直接奪って自分に接合することもあるみたい」
 自分の体の一部を、他者の体の一部に作りかえる。或いは、他者の死体から体の一部を奪い、自分に接合する。
 それをくり返し、ナナシは今の姿になった。
「直接奪った方が簡単で、機能を十全に発揮できるみたいね。真似た部分の機能は、本家よりも少し劣化するみたい」
 ナナシの体のパーツの中で、獣の脚と鬼の腕は死体からとったものだ。
 知識は制作者のそれを真似たものである。
 現在ナナシは、海辺の灯台に逃げ込んだまま、じっと動かない。
 果たして、何を待っているのか。
「このまま放置というわけにも行かないし。まずは現地に行ってきて。Dホールの破壊も忘れないでね」
 そういってイヴは、仲間達を送り出す。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月14日(木)23:08
お疲れ様です。みなさん、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、異世界から来た人造人間を送り返す仕事です。
以下詳細。

● 場所
昼下がりの海辺。砂浜、船着き場の中間地点にある灯台。
すでに使用されていない廃墟のような場所。その中にナナシが潜伏している。
船着き場、砂浜までそれぞれ数十メートル。Dホールが開いている町中まで数百メートル程。
足場、視界に問題はない。

● ターゲット
アザーバイド(ナナシ)
異世界で作られた人造人間。死体なパーツを自分に接合したり、自分の体の一部を他人のそれに組み替える能力を持つ。
どういった目的で作られた存在なのかは不明だが、失敗作らしく廃棄されそうになっていた。
そのため、他人に対して不信感を抱いている。
獣の脚を持つため動きは素早く、鬼の腕を持つため力が強い。
左腕は異様に長い。数人分の腕をつないで作っている為だ。
【人体コピー】
自分の体の一部を、他人(今回はリベリスタ)の体の一部に作り替える能力。
本家よりも劣化した性能になるが、瞬時に作り替える事が可能。
【つぎはぎ】→神遠単[呪縛][隙]
気糸をのばし相手をその場に縫い付ける。自分の体や傷口を縫うのにも使う。
【鬼の腕】→物近範[ブレイク][ノックB][致命]
鬼の腕による力強い打撃。
【生命の光】→神近ラ[雷陣][圧倒][隙]
生命力を電気に変えた放電による攻撃。



以上になります。
みなさんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
クリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
ダークナイト
亞門 一戒(BNE004219)

●灯台
 薄暗い部屋の中。コンクリートの床に座ったまま、暗い目で虚空を見つめる影1つ。つぎはぎだらけの身体は砂に塗れ、薄汚れている。
 じっとりした空気。淀んだ空気。僅かに混ざる死臭。
 死臭の主は、座りこんだ影である。異世界で作られた人造人間。名前を(ナナシ)と言う。名前を付けられる前に破棄されそうになったから、ナナシ。
 失敗作で、逃亡者。行くあても無く、彼が辿り着いたのがこの公園だった。
 これからどうしようか、なんて考えるだけ無駄だ、と彼は思っていた。
 行く充てはない。行きたい所もない。誰からも必要とされず、自分が誰かも分からない。あるのは1つ、怪物じみた肉体だけだ。
 そんなナナシの耳に、数名分の足音が聞こえてきた。足音の主は、まっすぐ灯台へと向かってくる。聞き慣れた足音。追手の足音。危険を告げる警鐘の音。
 人の気配を感じながら、ナナシは小さく、震えていた。

●ナナシ
 灯台を中心に、結界が展開された。異空間へ断絶されたような感覚に、ナナシは違和感を覚える。それと同時に、不信感も、だ。灯台の外にいる者達は、どうやら自分に用があるらしい。
 そう考えると、思い出すのは追手に追われ、破棄されそうになった記憶。自分に用がある相手は、今までずっと敵意や悪意、害を成そうとする者ばかりであったからだ。
 それならいっそ。
 ナナシは強く、鬼の腕を握りしめた。

「ぼくはあまり近づかないようにします。誰にだって役割……ありますよね」
 ナナシの境遇を思ってか、七布施・三千(BNE000346)の口調は寂しげだった。眼鏡を押し上げ、周囲への警戒を最優先として行動する。
「事が穏便に済むなら、それに越したことはないのだけど」
 出来ることなら交渉だけで事を済ませたい。しかし、そう上手くいくだろうか。もし戦闘になった場合に備え『鋼脚のマスケティア』ミュゼ―ヌ・三条寺(BNE000589)はマスケット銃を肩に担いだ。
「神秘の秘匿は確実に……です」
 それはつまり、この場に一般人を近寄らせない、ナナシを逃がさない、と言う事だ。胸の前で手を握りしめ、ナナシとの交渉を待つのは『紫苑』シエル・ハルモ二ア・若月(BNE000650)だった。
 結界の展開を確認し『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)と『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)が灯台へと近づく。灯台内から感じる緊張の気配が強くなった。
 どうやら相手も、こちらの接近に気が付いているらしい。
「こんにちは、異世界から来た方。敵意はありません、少しお話してもいいですか?」
 タワー・オブ・バベルを使用して、灯台内のナナシへと語りかけたのはキリエである。交渉スタート。今後の展開如何によって、こちらの行動も変わってくる。
「私はイスタルテといいます。こちらの攻撃の意思はありません。お話を聞いてもらえますか?」
 そう問いかけたのは、イスタルテだった。数秒待ってみるが、しかし灯台内から返事はない。
 会話が行えない、ということは無い筈だ。知識を有しているのも知っている。それでも返事がないのは、こちらへ警戒を解いていないからだろう。
「人造人間か。これも命ある作品の一つなのだろうか。もとが生物であったのか、命から作られたのか……」
 思う所があるのか『鈍色』亞門 一戒(BNE004219)がそう呟いた。
 出来るだけ穏便に。そう考えるが、油断は出来ない。元々別の世界から来た存在だ。こちらの予想とはまるで違う行動原理を持っていても不思議ではない。
 考えても仕方ないか、と溜め息を零し一戒はその身を緊張の渦へと浸していく。

 灯台の外に集まった数人分の気配の目的はやはり自分だったらしい。そう判断し、緊張を強くするナナシの耳に、ある瞬間から意味の通じる言葉が飛び込んできた。聞こえている言葉は彼の知らない言語だ。しかしどういうわけか、何を言っているのか、その意味は通じる。
 今まで幾らか、この世界の住人達を見た事があるが、そのうち誰の言葉もナナシには分からなかった。
 今自分がどういう立場にあるのか。相手に対し、どういうリアクションをとったらいいのか、彼の持つ知識では理解できない。
 一体どういう連中なのか。その姿を確認したくなった彼は、音を立てずに階段を登っていった。

「返事はありませんね」
 そう呟いて、三千は更に数歩後ろへ後退した。灯台全体を視界に納める為、そして万が一に備えて戦場を俯瞰するためだ。
 一方で、交渉役のキリエとイスタルテは灯台へと接近する。
 言葉を投げかけて返答がないのなら、行動に移すだけだ。
「この世界にフェイトを得ていない貴方がいると、世界の崩界が進むので、出来れば元の世界に帰っていただきたいのですが……」
 イスタルテの言葉を、キリエが通訳。ナナシへと伝達する。
 2人はまだ気付いていない。ナナシが既に、一階にはいないということに。言葉は届いているのだが、それよりも警戒心の方が増しているのだ。音を立てずに最上階へ上がったナナシは、物影に隠れて砂浜の様子を窺っている。
 その事に気付いたのは、ミュゼ―ヌだった。狙撃手ならではの目の良さ。物影からこちらを覗きこむナナシと、ミュゼ―ヌの視線が交差する。
 左右で色と大きさの違うナナシの瞳。顔中に走る縫合痕。肌の色は青ざめていて、死体のそれである。
「私のこの脚ですら、公にはひた隠しにしているのよ。ヒトは自らとは違う異質な存在を嫌悪し、恐怖し、憎悪するの」
 ミュゼ―ヌが言葉を投げかける。それをキリエが通訳。
 ナナシの脳裏に、嫌な記憶が蘇る。この世界へ来る以前、彼は自分を作った者が放った追手によって何度も命の危険にさらされた。その度に、追手を退け、時にはその死体からパーツを回収することもあった。
 生きる為に、だ。
「貴方の存在だって公に知られたら、間違いなく大勢から追われるわ。。……私達はそれを迅速に、かつ内密に解決する為、この人数で来たの」
 身に覚えがある。ナナシに向けて放たれた追手たちも、其のほとんどが複数人で編成されたチームであった。甘い言葉で近づいて、隙を見て殺しにかかる。そんなこともあった。
 ギリ、と拳を握りしめる。思わず身体が強張った。力を込め過ぎたのか、ナナシの足元に罅が入る。
 油断はしない……。自らにそう言い聞かせ、ナナシは眼下に集まった6人を眺める。たった今こちらに話しかけてきたミュゼ―ヌの脚を見て、彼はそれを真似ることにした。

 ナナシの異変に気付いたのは、一戒だった。でしゃばることを良しとせず、事の成り行きを眺めていた彼女は真っ先に灯台の異変を察知した。
 ミシ、と何処からか軋んだ音がする。灯台の壁面が軋んでいるのだ。灯台壁面から、パラパラと塵芥が零れ落ちる。
「なるべく穏便に事を済ませたいというのに……」
 一戒が飛び出すのと同時。最上階の壁が砕け散った。

 先手必勝。殺られる前に殺る。この世界に来るまでの間に、ナナシが学んだ唯一の事柄。
 油断させて襲うのが、隙を見て攻撃するのが、追手達の常套手段であったのだ。
 壁を砕き、瓦礫に紛れて急降下。獣の脚に、鋼を纏い、ナナシは壁と瓦礫を蹴って弾丸のような速度で宙を駆ける。
 通訳の為に先頭に立っていたキリエ目がけ、襲いかかる。鬼の腕を振りあげそれを力任せに叩き付けた。
「……っぐ!」
 目を見開いたキリエの前に、一戒が割り込む。鬼の腕による1撃を代わりに受けて一戒の腕が悲鳴を上げる。身に纏った闇が拡散し、ナナシを突き刺す。
 砂を巻き上げ、一戒の身体が地面に激突。一方のナナシは、攻撃の反動を利用し大きく後退。灯台の壁面に張り付いた。
「……っごほっ」
 血を吐き、呻く一戒。瞬時にシエルが翼を広げた。残りのメンバーは一斉に展開。ナナシを取り囲み、戦闘体勢に入る。
「この世界に居る為に他者の何かを奪うという考えを捨てきれないのなら……、強制的にお帰り頂くしかないかもしれませんね」
 飛び散る燐光。淡い光が降り注ぐ。蛍のように光は舞って、傷ついた一戒の身体を包む。その傷を癒し、回復させる治療術。
 シエルの翼を、ナナシはじっと見つめていた。

 駆け出すミュゼ―ヌ。構えた銃の銃口に、エネルギーが集中する。降り注ぐ瓦礫をすり抜け、ナナシへと急接近。その胸に、銃口を押しつけ、引き金を引いた。
「これだけ説明しても分かって頂けないなら……仕方ないわね。貴方には悪いけど、この世界から強制退去とさせて頂くわ」
 炸裂するエネルギーの弾丸。咄嗟に身を捻って、ナナシはそれを回避する。避けきれずに、肩の一部が大きく抉れた。血は出ない。その身は死体で出来ている。
 瞬間、ナナシの背に大きな翼が展開された。ミュゼ―ヌの身体を獣の脚で蹴り飛ばし、ナナシは空へと舞い上がる。
「あれは……」
 ナナシの背にある翼は、シエルのそれと同じものだ。奪われた、と察した時にはもう遅い。
「殺さぬ事を最優先、次に仲間を倒されぬ事を優先し行動です」
 まっすぐ真摯な眼差しでもって、イスタルテはナナシを見やる。イスタルテを中心に、仲間達の元へ魔方陣が展開。その背に小さな羽を付与する。
 ナナシが翼を得たのなら、こちらも同じ事をすればよい。
 翼の加護。疑似的な翼と一時的な飛行能力を付与するスキルだ。翼を手に入れたキリエが素早く空へと舞い上がる。
「前衛はお任せします」
 三千の声が、キリエの耳に届いた。キリエの全身を、オーラが包む。三千の使用したクロスジハード。防御力を付与するスキルだ。
 安心感が全身を覆う。翼を羽ばたかせ速度を増した。降り注ぐ瓦礫を掻い潜り、キリエはナナシの眼前へ。
「攻撃、来ます!」
 三千の声に反応し、急旋回。振り下ろされた鬼の腕を掻い潜り、ナナシの背後へ回り込んだ。
 手にした魔力銃で、ナナシの背を撃ち抜く。片方の翼を傷つけられ、ナナシは地面へと落下していく。
 しかし、ナナシは瞬時に気糸で翼を縫合。それだけではない。伸ばされた気糸が、キリエの身体を貫いた。痛みは少ないが、身体が思うように動かない。
「うっ……わ!?」
 翼を縫われたキリエが、ナナシと共に落下する。
 2人の違いは、仲間の有無だ。落下するキリエの真下へ、シエルが飛んだ。両手を広げ、その身をキャッチ。2人纏めて、砂浜に倒れ込む。
 砂塗れになってしまったが、キリエもシエルも無事である。糸で囚われたキリエの元へ、三千が駆け寄る。
 キリエの呪縛を治療するべく、三千は再度魔方陣を展開するのであった。

 着地と同時に、ナナシは地面を蹴飛ばした。盛大に砂を巻き上げ、前へと疾駆。矢のような速度で飛んだ先には、ミュゼ―ヌとイスタルテの姿がある。
 銃を構えたミュゼ―ヌ。イスタルテの手元には光が収束していく。
 しかし、それに呼応するようにナナシは全身から雷を放出し、雷光となって速度を上げた。バチバチという放電音。視界が白く塗りつぶされる。
「ミュゼ―ヌさん!」
 三千が叫ぶ。間に合わない。ナナシの身体に蓄積していた雷が、一気に解き放たれた。地面を焦がし、空気を焼いて暴れまわる。
「……君もまた命ある武器の1つ」
 攻撃の間に割って入った黒い影。闇が広がる。それは闇を纏った一戒であった。イスタルテとミュゼ―ヌを突き飛ばし、彼女は全身で雷を浴びる。
 地面が揺れるほどの衝撃。焦げくさい臭いが周囲に漂う。
「う……。彼らは甘い。敵わぬとみれば降参すれば攻撃の手は止まるだろう。此処も、争い絶えぬ世界だよ」
 全身に火傷を負いながら、一戒はナナシに告げる。動くほどの力は残っていないのか、地面に横たわったまま、か細い呼吸を繰り返す。
 一戒の言葉は、しかしナナシに届かない。鬼の腕を振りあげ、トドメを刺すべく拳を握った。
 次の瞬間、眩い閃光が辺りを覆う。
「異質な姿に疎外感を抱いちゃう気持ち、ちょっと判ります」
 イスタルテの声。閃光に目を焼かれ、ナナシの動きは鈍くなる。
「悪いけど、この世界は決して安住の地ではないわ」
 続いて、今度はミュゼ―ヌの声だ。敵意はない。殺意もない。ただ。攻撃の意思だけがナナシに伝わる。
 この世界に自分は居るべきではない。そうナナシが思ったその瞬間、彼の腹を弾丸が撃ち抜いた。

●作られた命
「大いなる癒しを……此処に……」
 淡い燐光が飛び散っていく。傷ついた仲間を癒すシエルのスキル。
 ナナシはその光景を眺め、ほう、と大きく溜め息を吐いた。キリエの通訳で提案された回復を断り、ナナシは今も傷だらけのままだ。
 ゆっくりと立ち上がり、ナナシは海へ向けて歩いていく。
 これが、ナナシの選んだ選択だった。ナナシの命は長くない。先の戦闘のせいではない。初めから、作られたナナシの命は、欠陥を抱えていた。
 だからこその失敗作。命を繋いでいたのは体内に蓄積された雷だったが、それも全て解き放ってしまった。あとはただ、静かにその生を終えるのみ。
 そして、ナナシはそれを良しとした。
『……めい、わくを……かけた』
 それだけ言い残し、ナナシは海へ。波を掻き分け、歩いていく。
 やがてナナシの姿は、海に沈んで見えなくなった。最後にこちらを振り返ったその瞳は、どこか悲しげだったように思う。
 彼の遺体は、後ほど回収し元の世界へ送ることになるだろう。
 そんなことを想いながら、三千はAFからトラックを取り出した。ナナシの遺体を輸送する為のトラックだ。
 秋の風が、彼の頬を撫でる。せめて最後は安らかに。そう願わずにはいられなかった。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。
ナナシは静かにその生を終えることを選択しました。依頼は成功です。
異世界から来た人造人間とのやり取り、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。

それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。
このたびはご参加、ありがとうございました。