●今度はちょうどいい感じ? ブリーフィングルームに現れた『ディディウスモルフォ』シビル・ジンデル(nBNE000265)はやっぱり困ったような顔をしていた。同時に苦い物を食べた時の様な表情もしている。 「ボク、ちょっと前にアザーバイトにつきあって魔法少女になってくれってお願いしたよね。憶えてる? ううん、忘れちゃってても良いんだけどね」 そして口ごもる。世界を守るために魔法少女になり、大事な物を色々捨てて頑張ったかも知れないリベリスタ達にこんな事を言うなんて……シビルは辛い気持ちで一杯だ。けれど、ブリーフィングルームに足を踏み入れたからには伝えなくてはならないことは覚悟している。 「ごめん、本当にゴメン。この次みんなにこんな恥ずかしいお願いをするのは来年だと思ってたよ。でも、すぐまた来ちゃうんだ。ごめん、もう一回魔法少女になってくれる人はいないかな?」 魔法少女。 ――魔法少女。 ……――(魔法少女)また? 思考停止になってしまっても仕方がない。魔法少女と言う言葉にはそれだけで恐ろしい魔力があるといっても過言ではない。特に少女というカテゴリーに属さない者達にとっては、だ。 「しかも今回は色々ハードルがあがっていてね。ちょっと待って、ちゃんと説明するから」 シビルは必死に視たものを伝えようとする。 つまりハロウィンに合わせて今度も小さなディメンションホールが開きアザーバイトが出現してしまったのだ。 「この前タイミングを間違えたから今度はちゃんと……って、少し遅すぎな気もするけど、まぁ本人的にはOKな範囲みたい。でね、この世界を壊そうって気持ちはないらしいんだけど、やっぱり戦わないと帰れないみたい」 出現したからには魔法少女と戦うという『儀式』をしないと戻れないのはこの前と同じ仕組みだ。 「今度はね。色々条件がうるさいんだよ。えっと、甘ロリじゃなくてはダメで、色は白が80%で残りはパステルカラーなら可。口調は女の子らしい可愛い感じで私、わたし、あたし、わたくし、妾系とボクっこはOKだけど俺やわし、俺様はダメ。アイドルのミニコンサートみたいな雰囲気で歌いながら戦って、観客も必要なんだって。もう、もう……どういう事だかちょっとわからないでしょ?」 普段割年齢よりも大人びているシビルだが、目にした物を言葉にしている間に段々と気持ちが高ぶってきた様だ。しかも、今度の戦闘では黄金のコウモリの能力が高く設定されていて、ごく普通にちゃんと戦わないと負けてしまう可能性もある。 「場所は前回と同じ三高平湖の東岸。サーウィンの領域に入る事が出来るのはみんなだけ。入るとすぐに変身コマンドを叫んで変身しちゃうから覚悟してね」 誰でも、どんな年齢でも性別でも種族でも、全てが魔法少女に変身しサーウィンが差し向けてくる敵と戦うのだ。さすがにコウモリは8体に限定されていて前回の様な癒しの風はない。 「日付が変わってから約10分間。それだけ戦えばサーウィンは帰ってくれる。でも10分戦い続けるのって大変。それに格好もアレだし……だから心がくじけないように甘ロリアイドルを満喫してくれる人、大募集!」 と、シビルは申し訳なさそうに言い、絶対に10分以内に負けないでねと言った……主に心が。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月13日(水)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●エレン、奈落へ堕ちる 頭がガンガンするのは二日酔いせい? フラフラと湖の畔に歩み寄った『黒猫』篠崎 エレン(BNE003269)は途切れた記憶を辿るのを諦めた。強めのお酒を試してみる? って勧められてからブリーフィングルームまでの欠落した記憶が戻るのは多分絶望的だ。 「魔法少女だ~!」 「頑張れ、魔法少女!!」 あちこちからあがる声援はどう解釈すればいいのだろう。ええぃ! もう私は魔法乗除でこれから世界の平和を賭けて敵と戦うのだ。もうそれでいい。 でもたったひとつ、こだわりたいのは年齢設定! 17歳って特別なの……世の中を知らない無垢な子供ではない。でも何もかも知っている訳じゃない。あのびみょう~~~などっちでもあり、どっちでもない感はまさに17歳! 「そういえば毎年『あたし17歳になったの、うふっ』って誕生日に言ってる子が居たっけ」 エレンは覚悟を決めた。領域へと飛び立った身体に黒の重厚で壮麗な総レースのドレスが滑ってひろがってゆく。くるんと空中で回転したエレンは左右の手にショートソードを甘く握り手首をひねる。 「黒猫ウィッチ、マジカル☆エレン、参上にゃん!」 「のぉおおおおおおおおぉぉぉ!」 その瞬間、サーウィンの両手が頭上でクロスし『×』を描く。 「きゃあぁあああ!」 悲鳴があがる。エレンのみ月面の様な浮遊感が消失し自由のない自由落下を始めたのだ。このままでは湖に墜落する。 ●正統派魔法少女、双葉登場 「魔法少女ですかぁ……いいですよね、魔法少女」 有沢 柚那(BNE004688)はうっとりとした口調で湖へと向かう華麗にして可憐な少女達――にはまだ見えない者達もいたが――をぼうっと見つめた。特に『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)の既に清楚にして愛らしい服装と、お姉さんっぽい感じにメロメロだ。 「一生懸命、応援しますね~」 そのありったけの声援が聞こえているのか、双葉はニコッと笑って手を振りその声に応える。 「……魔法少女かぁ」 思わず視線がはるか遠くへ……となるのを止められない。どうしてこうなったのかと聞かれたら、それが使命だからと言うしかない。世界の崩壊を食い止めるため、為すべきは魔法少女なのだ。 「うん、私、頑張る! 頑張ってみる!」 両手を胸の前でギュッと握る。一線さえ越えればそこはアザーバイト、サーウィンの領域だ。軽やかな一歩に双葉の身体が宙に躍る。 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 揺るかに裾の揺れる白いワンピースに白のロッド、そして背を愛らしい短めのマントが翼の様に翻る。 「あ、エレンさんが!」 双葉のすぐ前を急降下してゆくエレンが過ぎる。 「待って、待ってエレンさん!」 双葉はコウモリ達を振り切って自分も真っ逆様に落下するかの速度でエレンを追う。 「エレンさん! 手、手を……」 「た、助け」 もうそこは湖の水面だった。エレンの姿は一瞬で消え、双葉は柔らかい身体を回転させて足で着地すると、水を蹴って空へと舞い戻る。 「エレンさん……」 身体をひねって下を見ても、今蹴った湖の水面に同心円が次々と広がってゆくばかりだ。 ●やりきった者の勝ち! だよね! 大事な大事なこの一瞬を少しも無駄には出来ないと『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)も一歩踏み出す。そこは絶対無敵の魔法少女が活躍する領域だ。そう、誰だってここでは魔法少女になる。 衣装は一瞬で修道女の服をリスペクトしつつ魔法少女に相応しい白とピンク、そして贅沢にフリルとレースでデコレイトした美麗にして愛らしい服装に変わる。そして白い翼の生えたマジカルステッキを振りかざして決めポーズで動きを止め、練りに練った台詞を叫ぶ。 「ラディカルメディカルマジカル海依音! 今日も世界平和のために魔法少女しちゃうZO☆」 ウィンクひとつに歓声があがる。大概は本当に心からの応援で多少の世辞や盛りがあってもアイドルへの歓声として許容の範囲内にある。けれどその中にひとつ、ごく僅かな毒をはらむ絶対に聞き逃せない言葉を海依音は聞き逃さない。 「海依音ちゃんかわいい!まるで『本物の』14歳みたい!」 その『本物の』の声は極端に小さくてとてもサーウィンの領域内にまで届くとは思えなかった。押さえきれない本音をギリギリ小出しにしながら『BBA』葉月・綾乃(BNE003850)が放つ声援にきっちりと海依音が目を合わせてくる。 「ワタシは14歳魔法少女だから! 魔 法 少 女 だ か ら!」 視界一杯に海依音の笑顔が広がるようで綾乃は思わずしゃがみこむ。やっぱり応援よりも戦闘に参加すればよかった……なんて思いながら。 ●白い聖少女、ふたたび 「うわっ……魔法少女14歳って頑張っていますね」 空をゆく可愛さてんこ盛りの海依音を見つめ、感動と感心の2つの気持ちで空を見上げるのは、『エゴ・パワー』毒島・桃次郎(BNE004394)だ。なんとなく視線を逸らしてあげたい気持ちもあるが、それを言えば自分は魔法『少女』失格かもしれないし。 「さてと、この前のは小手調べって言うより、予行演習みたいなもの。今度は本番……」 気持ちを切り替え、桃次郎は元気よくサーウィンの魔法な領域に駆け込んだ。前回もサーウィンを送還する儀式に参加したのだが、今回は前回よりもより儀式への参加条件が厳格になっている。けれど、可愛い自分に変身出来るのは嫌いじゃない……というかもはや嬉しい! 「いっくよ~!」 再び境界を越え浮き上がった桃次郎の身体は淡い月光色に染まる布に抱き留められる。風にひるがえった薄桃色のドレープを黄色い星形の飾りが留めスカートの中はたっぷりレースのパニエが裾からもわずかにのぞき、長くなった髪が揺れる。 「あいとゆうきとむぼうをむねに、プアゾン・ピーチさんじょうだよっ」 少女の甘い声で決めポーズと一緒に名乗りをあげる。サーウィンの判定は勿論『○』で桃次郎が湖水に沈む事はない。 ●お父さんのためならへっちゃら 言葉って恐ろしい。 「魔法少女依頼って聞いてきたんですけど……魔法おばさん依頼でしたか……ごめんなさい間違えました」 サーウィンとの約束の時間が来るほんの少し前、そんな事を言っちゃった女の子がいたんです。やっちまった感半端ないこの言葉で彼女の周囲にいた者達の体感温度が急激に下降したのは言うまでもないが、台風よろしくその中心は無風状態でニコニコしている。 「そういえば、甘ロリってどんな感じなんでしょうか? 某国営放送で薔薇だの百合だの咲かせた挙げ句最終話でお相撲延長くらって録画してた人がクライマックスでぶちっと切れて阿鼻叫喚になったという伝説のアニメ的衣装ですか? それとも映画見に行ったリベリスタが口を揃えて『何言ってもネタバレになる』とか何とも言えない顔をして語る某アニメ的衣装ですか?」 ニコニコしながら語る『健全ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)に多分悪気はない。金銭的に不自由していて国営放送やその話題の映画を観ていなくて、もっぱら他人の風評を聞いてそれを確かめようとしているだけ……なのだろう。社会的他者と良好な関係を築く事が出来るかどうかはわからないが、まだほんの少女であるキンバレイのやることなすこと、それほど目くじらをたてる大人はいないだろう……たぶん。 何故か最後に領域に突入したキンバレイが変身する。コマーシャルで観た映画のキャラクターの中で一番多く画面を占めていた少女の服装に少し似た白っぽくて裾がギザギザして、同じ意匠の手袋もしている。 ●岬、変身! ボクは行くよってアンタレスをギュッと握った。考えてみたら偶然――この世に偶然なんてない! 全ては必然なんだって思う?――アンタレスを受け継いで、世界を侵食するエリューションや世界を玩具の様に扱う理不尽な巨悪と戦うなんてファンタジー。夢物語の絵空事、でも実際にボクは今までアンタレスと一緒に色々な敵と戦ってきた。だから……もう覚悟なんてとっくに決まってる。だからボクは一線を踏み越える。羞恥心を捨てるだけの場数と度胸は備わっている。 踏み越えればそこにあるのは濃密な大気に抱きしめられるような一体感。いつの間にか『ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)の身体は宙を浮き、半身であり盟友でもある武器を空にかざして叫んでいる。 「悲しみの数だけ涙があり、涙の数だけ痛みがある。でもボクがいるよ。いつだってボクが、ボクとアンタレスがハルバートマスターだよ! 来たれ、破滅と再生、絶望と希望の光……ボクのアンタレス!」 眩く紅い光がアンタレスから放たれる。みるからに邪悪そうなハルバートは真っ白に変化し紅の輝きは淡い桃色へと薄らいでゆく。その純白と桃色は交互に螺旋を描いて岬の身体へと舞い戻り、大輪の花が咲くようにポンポンと両肩で花開き、足首、手首、そしてウエストからチュールの様な繊細なレースが花開く。 「ハルバードエンジェル・マスターミッキー! このハルバードの目が真っ赤な間は特別てんこ盛りで戦っちゃうぞ!」 胸に輝く紅の瞳を指さしニコッと笑うと、岬はドームの内壁を蹴ってコウモリ達へと空を駆ける。 ●大人って大変なんだね! 「また来たんだね! 今度もお洋服を着替えて遊んであげたらいいのかな? たのしみだなぁー」 無邪気に笑う『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)は領域を形成するサーウィンへと手を振る。その様子にサーウィンもなんとなく手を振り返しているが、カボチャランタン風の身体では身体の手前で手を左右に動かしているだけにしか見えない。 「うーん、甘ロリってよくわからないけど、きっとなるようになると思うんだ! 衣装が前より変わるのは『大人の事情』だって聞いたけど、大人って大変だよね! でも子供だって大変だから頑張るよ! えい!」 よくわからないながらも意気込みを語り華乃は領域に踏み込んだ。 「ドレスアップ、チェーンジ!」 コマンドワードが変身を促す。前回同様、純白とピンクが愛らしさと上品さをぎりぎり共存させる柔らかなプリンセスドレスが華乃の身体を包み、淡いレースのベール越しに足もとが見える。角と耳、尾も今は露わとし魔力障壁装置は周囲を星の様にとりまいている。 「マジカルフィジカル、篠塚華乃!さんじょー!」 2色のリボンがひるがえる槍をバトンの様に巧みに回して切っ先を敵へと向けて決めポーズを取る。 「マジカルフィジカル、篠塚華乃! 2度目のさんじょー! おー、これが甘ロリなんだね! 可愛い……けど、どこが前回と違うのかなぁ?」 華乃は愛らしい魔法少女のコスチュームでその場でくるりと一回転する。裾が少々長くて胸元にキラキラする宝石の飾りがついたとか、バトンのリボンが1本多いとか、細かい変更があるのだが、パッと見にはわからない。 「えへへ、でもやっぱりこういうお洋服は可愛いよね」 華乃は笑顔のリミットオフ状態でニコッと笑う。 ●越えられない壁なんてないよね サーウィンの領域を前に明覚 すず(BNE004811)腕組みをした。やはり最初にコンセプトは完璧に作り上げていたほうがいい。 「実は武器が関節技メインですとか、魔法少女だと思ったら魔砲少女でした、むしろ冥王みたいに敵を薙ぎ払ってました、ってのもオツではあるんやけど……まあ、正当派魔法少女をご希望みたいやし、基本的にそのフォーマットで行こうかね? 性格はちょっと素直になれない、主人公のライバル的なポジションでもある仲間やろか。所謂ツンデレだけど、男の子向けツンデレキャラよりはもう少しマイルドな感じで、やね」 外見年齢は14歳ぐらい。やはり魔法少女というからにはそれぐらいの年齢が相応ではないかとすずは思う。 「それやったら、行くとしようかね」 ポンと大地を蹴って領域に入った瞬間、すずの身体がキララと輝く。 「アニマル・パワー・チェンジ!」 声と共にしなやかで小柄な獣のシルエットがすずと重なり、吸い込まれてゆく。その直後にまばゆい光がすずから放たれ、一瞬で変身が完成する。 つややかな茶色の髪は背中を覆い、服は明るい水色の和装をイメージした襟があり袴の丈が短くてミニのキュロットスカートの様になっている。長い振り袖は胴の部分とは分かれていて、両肩のまろみが露出している。足下は少し高い下駄の様になっている。最後に狐の耳と尾が愛らしさを強調させ、14歳らしい笑顔を浮かべる。 「ぶぶっー!」 しかしサーウィン的にはすずは甘ロリ魔法少女ではなかったらしい。短い手を必死に伸ばして『×』を作るとすずの身体は急降下し、あっと言う間に水没する。 遠目からはやや敵と味方の数が少ないような気もするが、サーウィンの領域……その半円形ドーム型の空間で、魔法少女達とコウモリ達との空中戦が繰り広げられる。 「始まったみたいですね。こちらも頑張りましょう」 雪白 桐(BNE000185)の合図で観客席にいたアークの職員有志でのバンドが演奏を始める。なんてたっって今回の魔法少女は『アイドル』だ。当然、歌って踊るのだから、演奏だって必要になる。魔法少女の眷属よろしく桐も職員達も上着をばっと脱ぎ捨て、揃いの白い布をたっぷりと使った服装に変わる。 「ファイトですっ! 皆さん応援してますっ!」 離宮院 三郎太(BNE003381)はアークの職員達を見よう見まねに応援を続けていた。アイドルの追っかけ経験も、劇場でノリノリで応援した経験もない三郎太にはどうすれば魔法少女達にこの胸の思いを伝えられるのかわからない。ただただ、全身を使い、精一杯の声で、元気欲精一杯応援するしかない。熱意はきっと伝わるはずっ! 「がんばれっ!!」 三郎太は元気欲情一杯(大事そうだったのでもう一度思ってみた)込めて声援する。 ●その頃、奈落……じゃなくて湖水の中では 暗い水の中、大きな2つのシャボン玉の様な淡い虹色の球の中に2人の魔法少女達がそれぞれ閉じこめられていた。彼女たちはアザーバイトによって『甘ロリ魔法少女』と認められなかったエレンとすずだ。 「もう! 一体どういうことなのよ!」 「そうや。こないないけず、説明してもらわな!」 ゆらゆら揺れる2つのシャボン玉の中から2人が声高に文句を言う。 「……あま~くて、かわいい? ゴスロリも和ゴスも……だめ、だめ!」 遠く湖の上の方から声が響く。見上げれば戦う魔法少女達の光が煌めいては消え、そしてまた違う場所で輝き消える。あの場所へ……こんな暗い水の中ではない光差す場所で戦ってこそ魔法少女ではないか。 「しょうがないわね」 「せやなぁ」 2人は肩をすくめた後で微笑んだ。そうやって微笑むたびに黒は白へ、和は洋へと変化しシュガーピンクとフリルとレースが2人を作り替えてゆく。 ●ダイジェストでお送りします 魔法少女とコウモリ達、6体6の戦いはもう随分続いている。 「皆、応援ありがとー!」 空を駆ける双葉は声援を送ってくれる皆に手を振り、空中に器用に身体をひねってコウモリ達に向き直る。 「魔を以って法と成し法を以って陣と成す。描く陣にて敵を打ち倒さん!」 双葉は複数の紋様を描き、その背後から跳ぶ海依音の右手が天を示す。 「みんなー! 悪の魔法使いを倒すにはみんなの力が必要なの! ワタシ達の願い! 想い! 一つに!」 まばゆい光に包まれた海依音から放たれる聖なる光がコウモリ達の身体を焼く。 「わたしがみんなを守ってあげるよ!」 キンバレイの放つ聖なる息吹は魔法少女達の甘く愛らしいコスチュームの裾を揺らすが、絶対にその中身を露出させることはない……絶対に! だ。 「あ、そうだ。ボク、これを忘れていたよ」 岬の身体から解き放たれた漆黒の闇……それが結んだ髪に集まり凝り、髪飾りのリボンの様に変化する。 「ぶぶーっ!」 その途端、岬の身体が急降下し湖の下に消えていった。サーウィンが唇をとがらせ腕で『×』を作っている。このアザーバイト、なかなかに基準がうるさい。 「あ、岬さんが! でもボク達は負けられない。今度はごっこじゃないんだよ」 どんなに扮装が可愛くても……やっぱりこれは世界を破滅から守るための戦いだ。海依音の放った攻撃に一瞬動きが止まったコウモリ達へと桃次郎は領域の内側を蹴る。 「援護射撃! いっくよぉ~~!」 素早い連射が命中し、回避しようとしたコウモリ達の動きが隙となる。 「女の子には優しくしなくちゃ!」 槍をマイクスタンドの様に抱え、歌うように声を張る華乃の周囲で星の紋様が光輝く。 「とどめの一撃♪ あなたのハートにDOA!」 歌声が攻撃となる。その強烈な一撃にコウモリが射抜かれキラキラと金色の粉になって空に舞う。 5人になった魔法少女達はVの字を描きながら空を舞い、最後のコウモリが粉々に砕け散るとサーウィンは満足したかのように腕で『○』を作って次元の向こうに帰っていった。 「納得できない! 黒系だめなの? なんでー」 「黒猫の立場は……」 「ここは日本やで?」 ずぶ濡れの魔法少女達の悲しい悲鳴は、応援ありがとうと手を振る甘ロリ魔法少女達の声にかき消されそうであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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