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<裏野部>鏡あわせの殺戮者


「ああ、今夜はこんなにも月が綺麗。だから殺しましょう」
 廃屋の、天井から見える月を見上げながら、うっとりと、夢見るような口調で少女は呟く。吐き出す言葉は下劣に過ぎたが、ソレを咎めるモノはここにはいない。その手に持つのは赤黒く血塗られた大鎌。身の丈ほどもありそうなソレを器用に操りながら少女は笑う。
「そうだね、莉亜がそうしたいなら」
 そう、とそれに続く少年の言葉も、否定をしない、少女の狂気を肯定する。その言葉に、少年と少女の前に居た哀れな犠牲者達はヒィと悲鳴を上げる。少年の手にあるのもまた大鎌、少女のソレと比べれば幾分新品に近いかのようなソレも、やはり威圧感は変わらない。
 犠牲者がいくら怯え、後ずさり悲鳴を上げようとそれで二人が躊躇するはずもなく、ゆっくりと、歩みで嬲るが如くゆっくりと近づいていく。
 鏡あわせのような双子が微笑んで、死に神が如く大鎌を構えて歩み寄る。その情景は恐怖を覚えずには居られないモノだっただろう。
「そうよ莉緒兄様、だって私は殺したくて殺したくて仕方無いんですもの!」
 少女は終始笑顔で、人を傷つけることが殺すことが心から楽しくて仕方が無いと言った様子であった。そして少年もまた、ソレを見て微笑む。
「莉亜の幸せが僕の幸せだよ。さぁ、速く、殺そうか」
 狂気の双子はフィクサード、哀れな犠牲者は唯の人。子供と大人の差があれど、根本的に、違いに過ぎる。

 ――ああ、哀れな犠牲者は、ただただ無残に、その首を狩られて死んでいく。


 ――小さな頃から自分と兄様以外の全てが気持ち悪かった。存在しているのも嫌、息をするのも不快、視界に写るソレすら不愉快。絶望的に全てが嫌い。
 だから私は小さな頃から虫を潰すのが好きだった、弱くて脆くて、私でも殺せるから。そう、もっと私が強ければ、もっと多くの世界に蔓延る虫を潰せるのに。
 ずっとずっとそう思ってきた。そして神様はその願いを叶えてくれた、私は運命に選ばれた!
 そうだ、だから私は正しいんだ、殺すことを迷わなくて良いんだと嬉しくなった。そうしてその日両親を殺した私は、兄様と二人家を出た、当てなくつてなく。
 たまたまに、人を殺しながらの旅で出会った、裏野部のフィクサード仲間に勧誘されて、裏野部には身を寄せた。
 ただそれだけ、どこでもよかった、その仲間ですら不愉快だったくらいだから。けれど殺せない相手には私は従順だったから、そうして私は裏野部の一員になっっていた。
 いつかそいつも殺したい、そう思って、今日も私は人を殺す、強く強く、全てを殺せるくらいに強くなりたくて。そしてなによりこの気持ち悪さを取り除くために。
 ――ああ、この世界の生き物ってナンデこんなに気持ち悪いんだろう。


「今回の依頼の討伐対象は裏野部のフィクサード、相変わらず不愉快にバイオレンス」
 ブリーフィングルームにむけて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は今回の目標を告げる。
「首魁は双子のフィクサード。配下も居るけれど、最悪でもこの二人だけは、逃がさず仕留めて」
 資料を配り、イヴは対象の姿を確認させる。逃せばまた同じように殺戮劇を繰り広げるのだからと。
「現場は郊外の廃屋、そこに5人の男女が捕まっているわ。その人達も助けて欲しい。戦闘が始まれば巻き込まれかねないから」
 手間を掛けさせるけれど、ソレも、大事な任務だから御願いとイヴは申し訳なさそうにする。
「双子の持っている大鎌はアーティファクト。2つで1つ、持ち主達が近くに居るとき、その力を底上げする、単純だけど、その分堅実で厄介」
 だけど大丈夫、貴方達の力はソレにだって負けないと信じている。そうイヴは微笑んで、リベリスタ達を送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:今宵楪  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月14日(木)23:06
 狂気の双子に断罪を。
 こんばんは、今宵楪と申します。

●成功条件
・フィクサード須佐・莉亜、須佐・莉緒の撃破

●アーティファクト『双鎌恋情』
2つで一組の大鎌のアーティファクト。莉亜と莉緒のそれぞれが所持しており、両者が健在時に両者をそれぞれ強化する。莉亜のソレは多くの犠牲者の血で赤黒く濡れている。


●場所
 都市部郊外にある元は倉庫であった廃屋。入り口付近に配下のフィクサード、その先に莉亜と莉緒、そして一般人達がとらえられています。一般人達は縛られたりはしていませんが、恐怖で自分達から逃げ出すことが出来ない状態にあります。
 また時間は夜であり、灯りがないと視界に苦労するでしょう。

フィクサード
『全物嫌悪』須佐・莉亜
 ヴァンパイアのダークナイト
 この世の全てを嫌悪する、狂気に濡れた双子の妹。人を殺すのが快感で仕方無い、人殺しに特化した異常者。向かってくる相手が居るならばそちらと楽しむでしょう。
 相手が中々死なず、不快になればEXをぶっ放す危険人物です。

・主に中級までのダークナイトのスキルを使用
・EX 私は嫌悪する(神遠全)
 
『単物執着』須佐・莉緒
 ヴァンパイアのクロスイージス
 妹の幸せを望むだけのそれ以外が空虚に過ぎる双子の兄。人殺しも、裏野部に所属するのも妹のため。それ故に妹に危機が迫れば庇うことを優先するでしょう
 
・主に中級までのクロスイージス・ホーリーメイガスのスキルを使用

 その他配下×8
 ジョブはデュランダル2、クロスイージス2、マグメイガス2、ホーリーメイガス2
 能力的にはそこそこ


情報は以上です。それでは皆様の物語を彩るプレイングをお待ちしております
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
プロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ソードミラージュ
鹿毛・E・ロウ(BNE004035)
ナイトクリーク
纏向 瑞樹(BNE004308)
ソードミラージュ
月凪 宝珠(BNE004665)
ホーリーメイガス
月凪・錐(BNE004666)


 夜を駆ける人の姿が8つ。人を狩る悪童を狩るために走る。
「何かに理由をつけたい年頃なのかしら」
『薄明』東雲 未明(BNE000340)の言葉に対する言葉を持つ者はリベリスタ達の中にも居ない。殺すことに意味を求めるのか、そうでないのか、きっとそれは本人達にしか分からない。
「あぁ、何と言えば良いのでしょう……。本当に見るに耐えません……」
 そう呟く『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)自身もまた双子。だからこそ、片割れが人を殺めることをよしとすることその物に溜息をつく。自分がまともな精神であれば、止めるだろう、と。
 そして双子というならこの場にはもう一組、双子が居た。どちらが上とも下とも分からぬ『ふたりぼっち』月凪 宝珠(BNE004665)と『ツーピース』月凪・錐(BNE004666)の二人である。
「僕は君達の在り方は否定しない」
 兄に到っては共感すら覚える、気持ち悪いことだが、そう錐は吐き捨てる。もやもやとした、親近感とも同族嫌悪とも付かない感情を抱いて。されど彼にとって宝珠の、片割れ以外のことは全て些事、故に仕事をこなすだけとぶれはしない。
「莉亜はこの世界全てが嫌いなのか。解らないな! この世界が嫌いなのに生きてるん?」
 気持ち悪いなら、嫌なら死んでしまえばいいんじゃないかって思うんだぜ。そう宝珠は疑問を持つ。それもまた一種の世界から離脱法だと思うんだがと。ソレなのに何故生き続けるのかと。
「不快なら、生命から外れた空の果て、宇宙の彼方に逃げればいいものを。解放感が気持ちいいのか? 性癖に興味はないが」
 そう観察し、考察し、そして宝珠と同じように断ずるのは『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)という自称一般人の少女。そう、不快であれば自分が逃げれば良いだけ。
「ほんと、世界の全てが嫌い、なんて言いながら、いつまでもこの世界にいるんだね」
 この世界が嫌いならD・ホールに飛び込むとか、方法はあるはずだと『先祖返り』
纏向 瑞樹(BNE004308)もまた糾弾する。ソレなのに結局世界にしがみついていると。
「もっと私が強ければ、もっと多くの虫を潰せるのに」
それに全力で同意するのは『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)、ただ彼が今回の標的たる少女と違うのは、潰したい虫が神秘全般だと言う事。少女も、兄も、そしてロウ自身さえも含んで。
 そうして八人の狩人は駆ける、六道が一派のフィクサードを狩るために。


「事前情報通り、十分入り口周辺から双子までアッパーユアハートが届きそうです」
 イヴから廃屋の大きさを聞き、自身の千里眼で実際の状況も確認した『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が周囲と一人救出のために背後に回るロウにAFを通じて告げる。
「小さな翼を皆様のお背中に…」
 そして櫻子は倉庫外の足場が少々悪いのを見て取り、皆に翼の加護を授ける。そうして準備が整ったところで作戦は開始される。
「まったく、顔無しなり異常者の同類から殺せば手間が省けたモノを。さて遊ぼうか非常識共?」
 一気に倉庫の扉を開け放ち、真っ先に声を上げる二丁拳銃を掲げたユーヌの言葉、ソレは唯の言葉ではなく、怒りをその脳髄へと刻みつける呪詛の言葉。
「非常識?非常識非常識非常識?私が非常識?私は、異常?そんな不愉快な言葉、許せない!殺しましょう!殺しましょう!」
 その言葉は莉亜にとっても効果は覿面で一気に距離を詰め、ユーヌへとその鎌を振り下ろす。精神ごと切り裂くような一撃に一瞬ユーヌも顔をしかめるが、それでもその攻撃はある意味彼女とは相性がイイ。チャージする能力を持つ彼女だからこそMアタック付きの口撃を受けても比較的傷は浅い。
「こんばんは、毎度馴染アークよ。先にこちらを相手してもらいましょうか」
 そんな先制攻撃を受けても怯まず、未明は手近な相手に自身に会うように刀身も柄も長く手を加えた刃を持って全力を込めた破壊の一撃を放つ。
「アークか、まぁ誰でも同じ莉亜の邪魔をする敵は僕の敵で僕らの敵。お前達、とっととそいつらを迎え撃つんだ」
 莉緒の一言で怒りを受けていなかったフィクサード達も武器を手にアークの面々へと襲い掛かる。
「わたしもあなたほどではありませんが、エリューションが殺したいほど嫌いです。
噛み締めてください。恐らくこれが最初で最後。あなたが嫌う我々とわたしが嫌うあなたとの、対等に見下し合う殺し合いだ!」
 デュランダルの一撃を受けながらも、あばたは二丁拳銃の神速の抜き打ちをもって多数のフィクサードの手元を撃ち抜いていく。ソレ一発で使い物になることはなくとも、確かに痛みを与える一撃。
 そうしてユーヌのはなつ怒りから逸れた相手にも瑞樹がはなつ気糸が絡みつき、やはり怒りを刻み込む全ては敵を誘い出すため。
そしてその動きは成功する。もとより敵の多くは近接攻撃を得意とし、怒りを付与されれば愚直にユーヌに向かって行き、そうで無い相手もリベリスタ達が下がり気味になればソレを追いかけねば攻撃でき無い。加えて、追いかけねば、味方足る双子からナニをされるか分からないというのも、フィクサード達にとっては驚異であったから。
「良い加減兄妹離れしなさい。お互いいい年でしょ」
 そう言い放ち未明はエネルギーの弾を込めた一撃で莉亜の傍に控えていた莉緒を吹き飛ばす。
「僕たちの絆を勝手に離させるな! 僕たちはいつでも一緒なんだ!」
 吹き飛ばされ、それでも莉亜の傍に戻ろうとする莉緒との間には宝珠が割って入り赤く染まった銃弾を撃ち込みそばに寄らせない。
「甘やかすのは良くないんだぜ。嫌われたくないからそうしてる。唯の絆の崩壊を畏れてるだけだぜ」
 それでも良いなら良いけどさ、妹をああにしたのはお前のせいだって気付いた方がいいんだぜー。そう飄々と莉緒に言い放つ。そう、引き戻せるはずの所もあったはずなのに、ソレをせず唯傍にいるだけだったのはお前だと。断罪するように。
「さてでは死ぬと良い。君達を葬って俺たちが残る。今宵の演奏は少し熱が入りそうだ」
 そういいながら錐はバイオリンを奏でる彼の指揮は演奏を持って奏でられる。味方の士気を上げるように、葬送のための曲は奏でられる。
 そうしてフィクサード達はみな倉庫の外までおびき出され、リベリスタ達の作戦は成功する、そこにいない【もう一人】の活躍のために。
「鹿毛さん、こっちの準備は上々だよ」
 そうしてできあがったことを、赤い月を産み出し、敵の目を引きつけながら瑞樹は告げる。


「どうもちょっと変わった街のお掃除屋さんです」
 そういってロウは背後のカベよりぬっと一般人の傍へと歩み出る。物質透過、その力で。一般人はぎょっとするも、あくまでロウは冷静に状況を分析する。そして倉庫の壁が一瞬で人が通れるほど容易くは破壊できないことを見て取ると、そのまま一般人の前に歩みで、倉庫の扉を閉鎖しにかかる。
 それをみて戻ろうとするフィクサードも当然出てくるが、ソレをさせないのも作戦のうち。彼の主足るあばたが後から精密射撃で足下を撃ち抜きたどり着かせない。
「人質使う余裕なんか与えねーぞ!」
 そうして扉は閉じられ、一般人は隔離される。リベリスタ達の一般人を守るための敵を引きつけ、ロウが後から突入するという策はこうして万全に為された。
 そうして余裕を持ってからロウは壁を破壊し、一般人達を安全なところまで退避させるだろう。
「莉亜、獲物が!」
「今はそんな奴らどうでも良いの、こいつらの方が気持ち悪いの!」
「くっそれ……なら」
 しかしフィクサード側もソレを容認する、【どうでも良い一般人】よりも【向かってくる奴ら】の方が、莉亜にとって気持ちが悪いから。彼らにとって最も優先されるのは莉亜の意志。
 それ故に愚策と分かっていても一般人を人質にすることも出来ずそのまま戦い続けるしかない。
 ユーヌの怒りを付与する言葉によって行動を乱され、満足に回復補助もままならず、かといってユーヌや怒りを逸れて櫻子や他の相手に対する攻撃を行っても櫻子の手厚い回復によって倒しきれない。そうやって戦戦が硬直していく。
 状況はそうやってリベリスタにとって優位に傾く、人数の不利以上に、戦術の有利で、不利を覆す、ソレがリベリスタ達の戦い方。


 そうやって遅々とした戦いの中で一人、また一人とホーリーメイガス達も倒れ、フィクサード達にとって一層不利になる。そんな中で少女の引き金は引かれる。
「ああ、なんでなんでなんで死なないの!気持ち悪い気持ち悪いいいい!」
 戦闘が長引くこと、死なないこと、ソレがトリガー。彼女の憎悪と嫌悪が戦場を覆い尽くす。鎌を振るえば、無数に分裂した幻影の刃が敵も見方も関係無く、蹂躙する。
 その一撃で敵の攻撃を引き受け続けてきたユーヌや戦場を駆けていた宝珠が一瞬膝をつくも、運命の加護で持ち直す。
「錐の前で負ける訳にはいかねーからよ!」
 宝珠はそう言い持ち直したままデュランダルへ銃弾を撃ち込んでいく。
 そして宝珠の代わりに莉緒を引きつけ続ける未明もまたデュランダルへ戦場を駆け、多角的な一撃を打ち込み倒していく。刹那の瞬劇、莉緒から目を切らさせず、それでも遠くへと一撃を見舞う。
「良い加減邪魔を、するな! 莉亜の傍には僕が居るべきなんだ」
「だから妹離れしなさいっていってるでしょ!」
 莉緒の輝きを纏った鎌の一撃を受けても未明も倒れはしない。櫻子からの回復もある、何より負けない意志がある。リベリスタ業にいい感情は持っていなくても、それでも殺してきた者達への責任があるから、どんな相手でも手は引かない。
「不運だな? 幼稚な癇癪に付き合わされて」
 文字通り幼稚な癇癪でその身すら傷つけられたフィクサード達へどこか憐れみの籠もった声でユーヌは呟く。さりとて攻撃の手は抜かず、不運がもたらす不吉な影でフィクサードを襲う。皮肉気なその言い回しも彼女らしい言い回しであるが故。不運を呪う攻撃はどこか似合うモノであった。
「ああああ気持ち悪い! なんで死なないの! 私は神様に選ばれたんだ、殺す権利があるんだ!」
「受け入れてるのは自分と双子のみ、貴方はさ、世界の全てが嫌いなんじゃない。自分と違う全てが怖いだけなんだよ、臆病者」
「なん、ですって……!」
 血塗れた鎌を振り回し、再びに斬撃を周囲へとまき散らすそれは体力の少なくなっていた錐を未明を捕らえるが、それでもまだ運命はかの者達を立ち上がらせる
「お前達双子にレクイエムを捧げるまでは、途中で倒れたりはしない」
 そう錐は立ち上がる。在り方を否定はしない、そのくらいは許されるだろうと、その上で、屍として踏み越えると。プロとして仕事はやり遂げると。宝珠の前で出し惜しみはしないと。
そしてそんな莉亜へ向けて呟いたのは瑞樹。影の大蛇を従えた彼女は淡々と怒りを込めたような言葉を叩き付ける。逃げ出すことも出来ない臆病者と。託し、託され、歩み続ける、自分自身のアイデンティティを得た彼女にとって、唯逃げ続ける少女の姿はきっと不快だったから。
「そうさ、気持ち悪いなら死んでしまえばいいのにソレが出来ないならこの世界に未練アリって感じ。人を殺すのが好きって感情もこの世界がないと味わえない感情で、捨てたモノじゃないぜ」
 あんまりこの脆いボトムをいじめてやんなさ、そう宝珠も続ける。
「この世界も俺も嫌いだろうけど、少なくとも子の世界と俺は莉亜のことが好きだぜ」
 ――だからこの世界のためにもお前のためにも、コレまでに死んだ奴らのためにも。
「お前ら二人を殺してやろうじゃんか!」
「ふざけるな、莉亜を殺させるものか、莉亜は、莉亜は僕の全てだ!」
「最初に言っただろ、我々と貴方との対等に見下し合う殺し合いだって、死ぬ覚悟もないのに殺そうとするなよ」
 激昂する莉緒にあびせるのはフィクサード達を抜き打つあばたの一撃。それでぐらつくこともないほどだが、それでもその言葉は莉緒の心をとらえる。
「莉亜の楽しみを、彼女の在り方を否定させはしない、彼女にとって僕以外がないように、僕にとっても彼女しか居ないんだ、退け、退けぇ!」
 そうがむしゃらに大上段から武器を振り下ろし、自らと莉亜を遠ざける未明を打ち倒そうとする莉緒だが、そのアーティファクトによって強化された一撃も全力で防御に回った未明にとっては耐えきれない攻撃ではなかった。それでも必死に退けようとその刃は振り下ろされる。
 なぜならもはやリベリスタ達の攻撃は莉亜へと集中し始めていたから。その身は傷ついていく。片割れが傷つく様に必死で、狂乱する。
「嫌だ嫌だ、痛い痛い痛い、嫌だ、私に傷つけるな、嫌ぁ!」
 莉亜は絶叫する。ユーヌの不吉な影が、あばたの抜き打ちが、瑞樹の映す赤き月が宝珠の放つ赤き弾丸がその身を傷つけていく。自身の鎌が如く血濡れていく身に狂乱する。運命に愛されてしまったが故に、対上がって、それでも血濡れたままに叫びを上げる。
「気持ち悪い、嫌悪、嫌悪、嫌悪ぉ! 私から、離れろ、どっかに行っちゃえ、死んじゃえええ!」
 まさに子供の慟哭、何度目か分からない彼女の絶技、神秘なる刃の乱舞。それは宝珠と錐の双子を捕らえて倒れさせる。それでも、まだリベリスタ達が全員倒れたわけではない。
「うちの生業は掃除屋、先祖代々掃除やさんですってな」
 そういってあばたの打ち込んだ弾丸で莉亜の体はぐらりと倒れ込む。そしてその頭に間髪入れず打ち込まれたのはユーヌの呪符で構成された小型のハンドガンの一撃。確実なる絶命を旨とする、そのための死の宣告の一撃。
「あ、あ、あ、ああああ莉亜あああああああああああああああああ!」
 その様を目の前で見せ付けられた莉緒は目は血走り慟哭する。己の片割れを、己の全てを、たった一つの、自分自身よりも大切なモノを失った独りぼっちの少年が、叫ぶ。
「片割れ欠けて世界でぼっちか、なに、すぐに会える。クレームは受け付けないが」
 とどめを刺したユーヌは淡々と告げる、そこに慈悲はなく、唯合理的な処理をしただけ、彼女にとって、心動かされる事象ではない。
「あたし達、双子以外見逃しても良いと言われてるのよね」
 そして未明もまたフィクサード達へ残酷な言葉をかける。片割れも欠け、後は一人の双子をのこすだけ、邪魔をしないなら見逃すのだと。そしてそれはフィクサード達を見限らせるには十分な言葉、味方すら巻き込む双子と、ソレを何とも思わない双子への仲間意識は当然高くはなかったのだから。
「おい、お前達、ナニしてる、莉亜を殺したこいつらを殺せ、殺せ! どうして逃げる、お前らも殺してやろうかぁ!」
 莉緒は狂乱する、されど一端逃げ出したフィクサード達はちりぢりになり、すぐに見えなくなる。そしてリベリスタ達も追いかけはしない、標的は、もう一人だけなのだから。
「皆様に回復を……」
 そうして櫻子は呟きふたたび神の息吹をもって傷を癒す。残っている莉緒にとって絶望的なほど、櫻子の回復の力は高く、なによりもはや彼の持っていたアーティファクトも片割れが欠けたことで唯の鎌へと成り下がっている。
「どこまでも、邪魔だ、邪魔だ、お前ら、一人でも良い、殺してやる!」
「妹だけが大事だったそうね。抵抗しなければすぐ後を追えるわよ」
 必死な莉緒の攻撃を受け止め、全力以上の全力の破壊力を持って未明は防御ごと莉緒を撃ち抜く。そんな言い方は好きではないけれど、それでも、少しの慈悲を込めて。
「げほっそんなに、そんなに軽いモノか、そんなに軽い気持ちじゃないんだ、全てを奪ったんだ!」
 そう賢明に立ち上がる莉緒の手元を瑞樹の気糸が貫く。臆病者の片割れに、終わりを告げるために。
「さてすぐ会えると言ったな、サヨナラ、だ」
 そしてユーヌの不吉の影が、莉緒を飲み込んで、戦いは終幕する。


 戦いが終わってすぐに負傷した味方へと櫻子は精神の異武器を持って回復し、足早にその場を立ち去っていく。
「仕事は終わりましたね……では、私はコレで」
 また、ロクからも無事一般人を送り届けたとの報告を受け、一同も解散していく。
 ――後に残るのは墓標も無き二つの鎌と二人ぼっち。
 この世を嫌いながら、逃げ出すことも出来なかった臆病者達は、この世を必死に生きるリベリスタ達に打ち倒され、唯屍と化したのであった。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加して下さった方々ありがとうございます。そしてお疲れ様です。

やはりアッパユアハートは苦手デス、嫌デスヤメテ下サイ(カタカタ
冗談です、シンプルながら一般人と隔離し、人質にさせない作戦、狙う相手を絞った戦い方は有用でした。
また未明さんのフィクサードを見逃す宣告も、仲間意識が低いというのを見事に見抜いていて、良い作戦でした。
よってこんかいは東雲未明さんにMVPを。

それではまた、機会がありましたらよろしくお願いします。