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<ハロウィン2013>眠れる古城の舞踏会

●ハロウィンの誘い
 今年もハロウィンがやってくる。
 トリックオアトリートを合い言葉に仮装をしたり、お菓子を貰いに練り歩いたりと、楽しい行事が目白押しだ。ハロウィンを楽しみにするのは何も小さな子供だけではなく――『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)達も、その日が来るのを実に楽しみにしていた。
「へへー、すっごく楽しみなんだぜっ!」
 尻尾を全力で振り、耕太郎は笑みを浮かべる。
 その隣の椅子には『サウンドスケープ』斑鳩・タスク(nBNE000232)が座っており、
「はいはい、楽しみだね」
 と、耕太郎を軽くあしらった。だが、タスクが手にしているのはハロウィンの仮装が特集された雑誌だ。
「なんだよ、冷たいなー! と、思ったらタスクも楽しみにしてんじゃん」
「……まぁ、ね。仮装って楽しそうだし」
 そんな会話をする少年達がいる部屋に、彼らの声を聞き付けた『ブライアローズ』ロザリンド・キャロル (nBNE000261)が入ってくる。
「あら、貴方達もハロウィンに仮装をするのね。それじゃあ、はいこれ」
 嬉しげな笑みを湛えたロザリンドはそういうと、少年達に案内状を手渡した。
 何だこれ、と耕太郎達が首を傾げるが、少女は見てみれば分かると案内状を開くように促す。そうして、少年達が覗き込んだ其処に記されていたのは――。
 『古城の仮装舞踏会』と題されたパーティー開催のお知らせだった。

●仮装舞踏の夜
 ――ハロウィン当日の夜。
 パーティー会場として設定されていたのは『古城』と呼ばれるお城風の洋館だ。この古城は以前にリベリスタがエリューション事件を解決し、アークの管轄物件になった場所である。
 古びた洋館も今は催し用に飾りつけられ、煌びやかな様相になっていた。
 床は赤い絨毯。壁には可愛らしいコウモリやお化け、カボチャの壁面飾り。壁際にはジャック・オ・ランタン風のオブジェがあり、隅に寄せられたテーブルには簡単な軽食やお菓子も用意してあった。
「おー、皆も来たんだな。ハッピハロウィーン!」
 リベリスタ達が大広間に足を踏み入れると、仮装衣装を着た耕太郎達が出迎える。
 耕太郎は海賊帽を被り、赤いスカーフを巻いたパイレーツスタイル。タスクはふさふさの付け耳と尻尾、肉球手袋を装着した狼男の仮装。そして、ロザリンドは魔女帽子と黒のマントを羽織った魔女っ子衣装に身を包んでいる。
「ようこそ、仮装舞踏会へ! 今日はめいっぱい楽しんでいってね」
 今から魔法を掛けるから、と悪戯っぽく笑ったロザリンドは魔女の杖を振った。
 すると、大広間に優雅な音楽が流れはじめる。
 ゆったりとしていて、それでいて賑やかな雰囲気もある音楽は舞踏会のダンスを行うのに丁度良い音色のように思えた。
「今宵の出来事は一夜の夢、なんてね。好きな相手を誘って踊っても良いし、参加者からお菓子をねだるのも良いかもね。君達の自由に過ごしてくれれば良いよ」
 タスクは薄く笑み、良ければ俺と踊ってみる? と冗談めいた視線を送る。
 また、この古城には大広間の他にバルコニーや綺麗に整えられた客室などもある。もし踊り疲れたら静かな場所で休むのも良いだろう。
 そうして、始まりを告げたハロウィンの舞踏会。
 眠らない古城で流れる時間はどのように巡るのか。それはきっと、君達の過ごし方次第。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:犬塚ひなこ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月15日(金)23:27
●概要
 ハロウィンの仮装舞踏会のお誘いです。
 古城と呼ばれる雰囲気のある洋館にて、素敵な夜を過ごしませんか?
(舞台の古城について、気になる方は犬塚の過去リプレイをご参照ください。知らなくても特に問題はありません)

 パーティーのお約束は『必ず仮装してくること』と『出来るだけお菓子を持ってくること』と『人に迷惑をかけないこと』です。後はご自由に、皆様の思うままお過ごしください。

●ご注意
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオなので全員の描写は確約できませんが、出来る限り力を尽くします。
・やりたいことを一本に絞って書くと描写率も上がります。
・公序良俗に反した行為や趣旨に著しく反するものなどは描写出来ませんので、ご了承ください。
・誰かと一緒に参加する場合はお相手さんのフルネームとIDを、グループで参加する場合はグループ名を【】で括ってプレイング冒頭に記載して下さい。

●NPC
『ジュニアサジタリー』犬塚 耕太郎(nBNE000012)
『サウンドスケープ』斑鳩・タスク(nBNE000232)
『ブライアローズ』ロザリンド・キャロル (nBNE000261)が同行しています。
 ダンスのお誘いは勿論、お話相手としてのお誘いも歓迎致します。お気軽にお声掛けください。
参加NPC
犬塚 耕太郎 (nBNE000012)
 
参加NPC
斑鳩・タスク (nBNE000232)
参加NPC
ロザリンド・キャロル (nBNE000261)


■メイン参加者 32人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
ナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
マグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
プロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
ナイトクリーク
六・七(BNE003009)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
プロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
ダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
レイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
ダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
クリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ソードミラージュ
桃村 雪佳(BNE004233)
ホーリーメイガス
雛宮 ひより(BNE004270)
ナイトクリーク
纏向 瑞樹(BNE004308)
覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)


 優雅で軽やかな音楽と共に、パーティーは始まってゆく。
 古城でこうして対面するとなると、まるで姫君を迎えにきた王子のような心境だ。
 白いドレスに身を包んだ包まれた瑞樹は、まるで深雪のように鮮やかだ。彼女に目を奪われつつも、炎の魔人の仮装をした優希は手を差し伸べる。それは勿論、彼女をエスコートする為だ。
「今日は折角の舞踏会! さ、踊ろう!」
「ああ、今日は楽しむとしよう」
 早速ダンスに興じる瑞樹に合わせ、優希ゆるやかに流れるひとときに身を委ねる。
「古城でダンスパーティだなんて、なんだか童話とか映画みたい」
 ふわふわすると話す瑞樹の頬は仄かに上気していた。優希もまた、現実感の無い心地良さを感じている。
「夢のような一時だな。確かに、魔法の世界に入り込んだようだ」
 だが、握る手の温かさが確かな現実を実感させてくれた。
「あはは。暖かくて、なんだかとけてしまいそう」
「暖かいのならば、それは瑞樹の心が俺を溶かしたからなのだろう」
 決してとけて消えてしまわないよう、優希は瑞樹の手を確りと握りしめて見つめた。
 きっと、これが幸せというものなのだろう。
 夢見心地でもこの出来事は本当のこと。夢ではないならば、ずっと醒めることもないはず――。
 仮装ダンスパーティーに馳せる思いは大きく、広く。
 三郎太は楽しみな気持ちを押し隠せぬまま、広間へと踏み入った。とはいっても、実はまだ自分の仮装が決まっておらず、少年は悩んでいた。
「ボクは……うーん、困りました。オーソドックスにドラキュラ伯爵? それともミイラ男?」
「おー、ハッピハロウィーン! 悩んでるなら、これなんてどうだ?」
「わっ! 耕太郎さん!?」
 そんな三郎太の前に現れたのは大きなカボチャを持った耕太郎だった。尻尾をぱたりと振った少年は三郎太に半ば無理やりカボチャの被り物を被せ、満足気に胸を張る。
「これも……うん、良いですね。えと、ハッピーハロウィンですっ」
 しかし、三郎太もそれを気に入ったらしい。
 カボチャの中で笑みを湛えた少年は、始まったパーティの楽しさを感じ始めていた。
 賑やかなハロウィンの催しの中、共に歩くのは可愛らしいアリスの少女とハートの女王。
「舞踏会は、ちょっとドキドキしますね」
 アリスな壱和が傍らの女王、シュスタイナに語りかければ彼女もまた小さく頷く。二人ともちゃんとしたダンスの経験はないが、楽しみたい気持ちは十二分に持っていた。
「踊ってみましょうよ。きっと何とかなるわ?」
「まずはチャレンジ、ですね。一緒ならきっと大丈夫です」
 壱和とシュスタイナは手を取り合い、流れる軽快な音楽に耳を澄ます。音色に乗ってステップを踏み、一歩ずつ踏み出してゆく。それはぎこちなかったけれど、お互いに合わせていることがよく分かる動きだ。
 あっという間に一曲が終わり、二人は柔らかく微笑みあう。
 休もうかとシュスタイナが問い掛けるが、壱和は首を振って答えた。
「もう一曲行きましょう♪ 次はボクがリードしますから」
「面白そうね。じゃあ宜しくお願いするわね」
 そうして手を取り合った彼女達は、もう一度輪の中へ進む。
 楽しい時間をもう少しだけ続けたい。きっと、またひとつ新しい思い出が増えるから。
 ハロウィンの宴は楽しさに満ち、胸の鼓動も不思議と高鳴る。
 しかし、赤い着物をきたユーヌは何故かちょこんと箱の中に収まっていた。そんなとき。
「よっと」
「おや?」
 そこに現れ、彼女をひょいと持ち上げた魔女姿の木蓮だ。
「へへー、今日のオレ様は魔女だ! 魔法は使えないが、こうして連れ出すことくらいは出来るぜ?」
 凸凹コンビみたいな身長差だけれど、今宵は気儘に、心ゆくまで踊ろう。
「それでは一曲踊ろうか」
 手を取り合う姿も不思議とおかしくて、何だか喜劇のようだ。だが、それもまた悪くはない。
 くるりとターンする木蓮の力で、ユーヌは或る意味での浮遊状態。足が付かずに振り回されてしまうことになっても、二人の間に満ちるのは楽しさばかり。
「ユーヌはほんっと軽いなぁ」
「そうか? しかし、いつもの彼との凸凹が逆になったみたいだな」
 身長差のことならば、木蓮はいつも身に染みて分かっている。だから今日は逆で新鮮な感じなのだと、彼女は楽しそうに笑った。
「ハッピーハロウィン、ロザリンドさん。一曲お相手願えるかな?」
 ゾンビだけど、と冗談っぽく告げる快はその言葉通りにハロウィンらしい仮装をしている。こちらこそ、誘いに応えた少女はおかしそうに笑み、魔女帽子を揺らして快の手を取った。
「あら、じゃあ魔女である私はゾンビを従えられるってことかしら」
 素敵だと笑んだロザリンドは、快と共に曲の音色に合わせて踊る。その最中、ふと快が口を開いた。
「そういえば、もうすぐ誕生日だよね。何か、欲しいものとか無いの?」
 踊りながらも、快いは問い掛けた。二十歳の誕生日だったのならば地下のワインセラーから彼女の誕生年のワインを贈れるのだが、生憎まだ一年ばかり早い。
 そんな中でロザリンドは暫し考えてから、悪戯っぽい口調で答える。
「そうね……じゃあ、今夜の貴方の時間が欲しいわ。もっとたくさんダンスしましょ!」
 ね、と笑んだ少女に快は答える。
 楽しい時間が過ごせるならば幾らでも、と。


 手を取って良いかと問われ、糾華は静かに頷く。
「その仮装かわいいね。お姫様」
「名探偵と並ぶと少しちぐはぐかしら? エスコート、お願いね。王子様」
 目の前の夏栖斗が扮するのは探偵。対する糾華は和装とは釣り合わないかと小さく笑った。けれど今日はハロウィン。冗談交じりに姫と王子と呼びあった二人は曲に合わせ、軽やかなステップを刻んでゆく。
「あざっちゃんさぁ、初めて会った頃に比べて綺麗になったね」
「え?」
 踊りながら、夏栖斗が告げた言葉に糾華は驚く。可愛いじゃなくて綺麗だという彼は更に続けた。
「最初は小さな女の子っておもってたけど、今はもう女性、だね」
「えっと……ちょ、何恥ずかしい事言ってるのよ。女の子はいつも少しずつ成長してるのよ」
 照れながらも胸を張ってみせた糾華は思う。
 ――今の私があるのは、前を見て良いよ、笑っても良いよと教えてくれた人達のお陰。
 そして、一緒に踊れるようになったのは『お兄ちゃん』達のお陰。
「だから、本当に感謝してるのよ、お兄ちゃん?」
「そっか。それじゃ、そんなお姫様と踊れる僕はしあわせだな」
 糾華の笑みに夏栖斗もつられて微笑む。気障な台詞だって、いまなら素直に言える。
 きっとこれも、ハロウィンの魔力なのかもしれない。
 片や、正統派仮装のヴァンパイア。片や、ハバネロから生まれたハバネ郎。
「コヨーテくんの仮装……ハバネロ? うんうん、赤くて可愛いねえ」
 可愛らしさから感じるおかしさを押し込め、七はコヨーテの仮装に目を細める。七の仮装も決まっていると返すコヨーテは、ふとダンスホールの方を見遣った。
「オレ、ダンス初めてなンだよなァ」
「わたしもダンスなんて初めてだよ。うん、初めて同士頑張ろうか……!」
 すると、七も実は初心者なのだと明かす。
 結局、二人の共通意見は適当に楽しもうと言うこと。ステップがよく分からなくても、体を動かしているだけで何だか楽しい気分になれる。
「不恰好でも笑うなよォ? 次はもっと上手くやるぜッ!」
「笑ったりしないよー、頑張ってるコヨーテくん可愛……格好良いからね」
 意気込む彼をもう一度可愛いと言いそうになり、七はさっと言い直す。
 ダンスが終われば、お待ちかねのお菓子交換が待っているわけで。そんななかでコヨーテが持ってきたブルーベリーキャンディは、きらきらして見えた。
「ふふ、宝石みたいに綺麗だねぇ」
「だろ? 今の時間もすっげェきらきらしてるよなァ!」
 楽しさと嬉しさが満ち、自然と笑みが零れる。
 宝石のようにきらきらした時間はまだまだ、夜が明けるまで続いていくのだろう。
 ヴァンパイアと狼男。物語の中ならば敵対する二人も、今夜はハロウィンの宴の中。
「ハッピーハロウィンですタスク。ふふ、その仮装とても似合ってて可愛いですよ」
「可愛いじゃなくて格好良いを目指したんだけどな……」
 亘の褒め言葉に素直に喜べないタスクは、溜息を吐く。そんな少年に悪戯をしてしまいたくなる衝動を抑え、亘はそっと青い鳥のクッキーと緑の子犬のクッキーが入った包みを渡す。
「そうだ、良ければ後で食べて下さい」
「……お菓子。うん、甘い物なら大歓迎だよ」
 かすかに笑んだ友人の姿を見ることができ、亘も満足気だ。そして、彼はタスクをダンスに誘う。流れる曲目は緩やかに、かつ明るく奏でられてゆく。
「最初はワルツでも踊りましょうか。熱いのがお好みなら自分そっちもいけますよ?」
「冗談。俺が踊れると思ってる?」
 なんて話を交わしながら少年達は笑い合う。今日という日を思いっきり、楽しむために――。
 踊ろう、と誘われ腕を引かれる先は音楽の流れる大広間。
「俺様ちゃんそんなの踊ったことないから知らないよ?」
「俺も踊りなんて知らないけど、適当でいいんだぜ! なっ!」
 海賊衣装に身を包んだ俊介は葬識に満面の笑みを向けて中央へと踏み出す。
 言葉通り、踊りの作法なんて知らない。それでも彼の手を握って、適当にくるくる回るだけでもそれなりに様になるというものだ。
 今夜はきっと、辛い事も悲しい事も忘れて、誰もが幸せになれる一夜。
「これが霧島ちゃんのエスコート? こんな風にくるくるするのがダンスなの?」
「男にエスコートする訳無いだろ。勢いだけのノリ重視!」
 首を傾げる葬識に対し、俊介は明るく適当なことを言う。だが、其処に感じているのは友人へのちいさな思いだ。自分にとっての大事な友達をどんな時でも護るから。
 だからこそ、少しずつ色んな感情を知ってもらいたい。
 そんな俊介の思いを肌で感じ取り、葬識もまた思う。
「……変な感じ。とりまトリトリ」
 友達という感情が自分の中にあるのなら、きっと今現在のコレがそうなんだろう。 人の気持ちはわからないけれど、居心地は悪くない。そして、葬識は飴を差し出し――。
「お、甘いものくれんの? Trick but Treat……ごふっ!」
 笑う俊介にそれを突っ込み、めいっぱいの悪戯で今日の楽しさを現した。


 仮装と幻想が入り混じる今宵。
 或る意味で悪鬼蔓延る舞台に現れたのは【BOZ】達! ハロウィンということもあり、今日のメンバーの装いは一風変わっている。
 竜一はフツことBuddhaの装い、フツは竜一ことDragonの格好。
 そして雷慈慟は伊吹ことSeraphの出で立ち、伊吹は雷慈慟ことLの装いで訪れていた。
「仮装とは楽しげな趣向だ。さて、誰が最初に気付くかな」
 顔を隠している伊吹達は、一見すれば普段のBOZと変わりないように見える。だが、やはりそれぞれの行動はいつも通りであり――。
「どうだろう、自分の子を宿してはくれないだろうか」
 伊吹の装いで近くの女性に声を掛ける雷慈慟。ひそひそと噂され白い目で見られる伊吹、もといL。
 それに各自が担当する楽器も違うものであり、彼らの演奏はどことなくいつもと違っていた。カボチャかぶりものを装備したフツはギターを片手に、場内の音楽を盛り上げてゆく。
「結城のようには弾けないが、うむ」
「なかなかだ、フツ。じゃなかった今日はそっちがDragonか」
 袈裟を着てマイクを持つ竜一は明るく笑い、マイクを手にしたままパフォーマンスを行う。
 臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!  と、九字切りをやってみせる彼は精一杯フツらしさを演出する。徳の高さは表現しきれないと自分でも思うのだが、楽しむ竜一達の姿は実に輝いていた。
 音楽は次々と奏でられているが、周囲の者達は違和感に気付き始める。
 その間にも、雷慈慟によるベース――ではなく木魚が奏でられ、息吹の鳴らすスネアドラムが響く。竜一とフツ達は集った観客にせんべいをばら撒き、ハロウィンの菓子として振る舞った。
「それぞれ書かれたお経が違うから、食べる前に近くの人と見せあおう! Dragonとの約束だ!」
 竜一っぽい声で語るフツに合わせ、竜一もフツ風に決めて見せる。
「一人で全ての経は揃えられないが、皆で手を取り合えばそれが可能になるんだぜ!」
 盛り上がる会場。重なる歓声。
 変わった趣向も悪くは無いが、やはり使いなれた楽器が一番だ。そう感じたメンバー達は互いに目配せを交わしあう。刹那、タイミングを合わせた竜一がマイクを、フツがギターを交換。更に雷慈慟がドラムの前へと移動し、伊吹がベースを手に取った。
「うむ、馴染む」
 やはりBOZはこうでなくては。息吹は満足気に頷き、弦に指を乗せる。
 それと同時に彼等は被り物を天井高くに放り投げ、雷慈慟がドラムを高らかに叩いた。
「……救世を開始する」
 彼の声が紡がれた次の週間、BOZの楽曲が流れはじめる。
 舞踏会は熱く、幻想と熱狂の渦に包まれ――楽しい夜はまだこれからなのだと感じさせてくれた。
 ハロウィンの夜、それぞれの仮装は実に様々。
「今年はメイド服にしてみました。前に余り興味がないということでしたが、如何ですか?」
「似合ってるスよ。着るのは興味ないッスけど、凛子さんのは別ッス」
 ドラキュラ伯爵の衣装に身を包むリルは、目の前の凛子の姿に惚れ惚れしていた。それも無理はない、くるりと回ってメイド服姿を披露する彼女がとても綺麗だと思えたからだ。
「リルさんが喜んでくれて嬉しいです」
 素直な感謝を凛子が告げると、リルは恭しく一礼してから彼女のエスコートする。
「正式なやり方とかは知らないッスけど、こういうのは気分が大事ッスよね」
 音楽に合わせ、ステップを踏むリルは凛子をリードしてゆく。慣れていなくても、二人の息が合っているのならばそれで良い。要は楽しんだ者勝ちだ。
「こんなに近いとドキドキしてるのがリルさんに聞こえそうですね」
 不意に凛子がお互いの近さを意識し、胸の鼓動が高鳴っているのだと話す。するとリルも同様に、胸に手を当ててはにかみながら伝える。
「リルもドキドキッスよ?」
「一緒ですね」
 こうして過ごすときにドキドキしない訳がない。
 同じ気持ちを同じ大きさで感じて、二人は心ゆくまでハロウィンの時間を楽しんでいった。
 少しだけ、一緒に居て欲しい。
 そう告げた魅零とタスクは今、バルコニーに出て夜風を受けていた。
 全身包帯のマミー姿の魅零と狼姿の少年は視線を交わしあう。彼女からのクッキーを受け取ったタスクは「寒くない?」と問い、毛皮のコートを魅零に掛けてやった。
「ありがと。でも、本当はお菓子あげないで悪戯されたい……」
「何か言った?」
「な、なななんでもない! あと、今度、話したい事あるから何処か一緒に行きたいな……なんて」
 火照った頬を押さえ、魅零は思うことを告げる。
「わかった、じゃあ約束。それから……」
 タスクは快く答えた後、不意に魅零の手を取った。そして、彼は彼女の手の甲に口付けを落とす。
「!?」
「クッキーのお礼。もしくはトリックアンドトリート、ってね」
 実は先程の言葉は聞こえていたらしい。
 悪戯っぽく口許を緩める少年は、途端に真っ赤になる魅零をおかしげに見つめていた。
 黒の海賊船長たる雪佳が今宵に出逢ったのは、海の魔女であるローレライ――ひよりだ。
「お菓子くれないと沈めちゃうぞー、がおー」
 パステルブルーのドレスに身を包み、懸命にローレライらしさを演出する少女。その愛らしさに口元が緩みそうになるも、雪佳も海賊らしいと思われる言葉を口にしてゆく。
「おや、これは可憐なローレライだ。だが、船を沈められてはたまった物じゃない」
 ――だから、沈められる前に君を奪ってしまおう。
 紡いだ言葉は海賊らしさを追求したものであり、深い意味は無かった。だが、色々なことを想像してしまったひよりは途端に真っ赤になってうろたえてしまう。
「えっ。わたしをうばう? 望むところだけど、な、なんかダメなの!」
 柱の影に逃げ込んだひよりだったが、雪佳が気になってちらちらと柱の向こうを確認する。
「俺から逃げられると思うな。狙った獲物は必ず奪うのだ」
 しかし、そんな様子ではすぐに見つかってしまう。結局、とてとてと楽しい逃避行を繰り返した彼女達は、バルコニーまで辿り着くことになる。
「待って、この宝箱をあげるから許してほしいの」
 そういってひよりはマドレーヌで作った王冠や財宝の形をした南瓜クッキーが入った宝箱を渡した。
「これは……素晴らしい。ローレライの財宝だな」
「えへへ、はっぴーはろうぃーんなの♪」
「ん、ハッピーハロウィンだ」
 受け取った宝石箱を片手に、雪佳はもう片手でひよりの頭を撫でて微笑む。
 これで今夜の物語はハッピーエンド。海賊船長とローレライは仲良くお菓子を食べたのでした――なんてことが語れそうなほど、ほのぼのとした一幕が過ぎてゆく。


 それぞれの海賊衣装に身を包み、涼とアリステアは手を取り合う。
「……お嬢さん、ではないか。今日の所は相棒かな」
「うん、今日は相棒だねっ。あ、そうだ。おかしら……でもいいよっ」
 重ねた掌の温もりに冗談めいた言葉を乗せ、二人は一緒にフロアへと踏み出した。こうしてエスコートされるのはとてもどきどきして、胸が高鳴る。
「上手とは言えないけど、許してね?」
「それでも構わないよ。一曲お相手願えますか?」
 アリステアが告げると涼は優しく笑んだ。そして二人は音楽に身を委ね、ステップを刻む。
 思い返せばこの古城には以前に掃除に来たところだったか。
「そういえば、前にここにお掃除に来て……そのあと私、客室で眠っちゃったんだよね」
 涼の肩を借り、眠ってしまったことが懐かしい。
 幾許かの時が流れても、あのとき思ったこと――いっしょにいたい、と思った気持ちは変わらない。
 願ったことが変わらず、今もこうして一緒に居ることができる。そうして、また此処に来れたことがとても嬉しいと思う。
「まァ、月並みだけどキミと言う宝物を見つけた、てところか」
「え、そんな……恥ずかしいよぅ。涼だって、わたしにとっては宝物、だもん……」
 消え入りそうな声で返すアリステアの様子が愛らしく、涼は重ねた手をより強く握った。
 想いも気持ちも、今宵は軽やかな音色に乗せて。二人の夜は巡り、続いてゆく。
 義衛郎が纏うのは死神を思わせる黒の外套。
 フードを目深に被って髑髏の仮面を装着した彼に対し、真白なドレスと黒髪、青白い化粧で自らを飾っているのは嶺だ。神話に登場する、水死の妖精と不死身の骨の衣装で合わせた二人の姿は会場でも異彩を放ち――それと同時に、実に今宵に相応しい出で立ちだった。
 そんな二人が美味しいクッキーや生キャラメルを配るものだから、ハロウィンの夜は妖しくも楽しく盛り上がる。耕太郎などは「お代わり!」と嶺に二度もねだりに行ったほどだ。
 そうして、義衛郎達は会場に流れる音楽に耳を傾ける。
「さて、それじゃあしばしお付き合い願えますかね」
 折角だから踊ろうか、と手を差し伸べる義衛郎。嶺は仮装に見合う妖艶な笑みを湛えた。
「ええ。でも、ルサールカの踊りには気をつけてくださいね」
 踊りはじめた二人は音色に乗り、大胆にステップを踏んでゆく。
 兎に角、れーちゃんの足を踏まないように。義衛郎はその一点に細心の注意を払っているゆえにステップが崩れることはなかった。
「ハロウィンですし、ちょっとトチってもそれもイタズラ、ですよね」
 嶺もおかしげに双眸を緩め、更なる舞踏に身を委ねる。
 魔女と幻影は今宵、水死の妖精と不死身の骨王となって――愉しい刻は続いてゆく。
 カボチャの騎士と、尊大な王。今夜の二人の装いはお互いにとても似合っていた。
 ミュゼーヌは役柄に入り込み、王子様のように凛々しく高貴に語りかける。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。どうか今宵、私めと一曲踊って頂けないでしょうか?」
 彼女が片膝を付き、旭の前に跪く。そっと差し出された手を取り、旭はふふん、と笑って見せた。
「今宵は宴。良い、無礼講だ。余興に付き合ってやろう」
「では陛下、私めにお任せを……。身を委ねて下さいませ」
 嬉しげに口許を緩め、ミュゼーヌは旭をダンスフロアへとエスコートしてゆく。流れる音楽に耳を傾け、踏み出した円舞曲は流麗に。舞うようにしてステップが刻まれてゆく。
「ふむ、余に女役をせよと言うか」
 尊大な態度をとってみても、旭の心の中はあたたかさでいっぱい。ミュゼーヌの凛々しさに見惚れそうになりながらも、旭は自分の王としての役を頑張ろうと心に決める。
 とは言っても、ミュゼーヌも男性側のダンスは流石に不慣れだ。ほんの少し躓きそうになりつつも、彼女は旭に支えられて何とか均衡を保つ。
「不敬も甚だしい事は重々承知ですが……陛下の可憐さに目を奪われ、足元を掬われてしまいました」
 悪戯っぽく笑いかければ、旭も目を細めた。
「戯言を」
 なんてことを返しながらも、笑顔は心からのもの。
 ひとときの逢瀬と過ぎゆく時間の楽しさ。今日という夜もきっと、素敵な思い出になるはず。
「ひろさんの衣装ステキ。ひげも似合うわね」
 隣の青年の装いに目を向け、祥子は小さく微笑む。それぞれ美女と野獣に扮した彼女達は会場内でも実に様になる二人だった。付け角に触れ、義弘は礼を告げる。
 そうして彼は祥子の手を取り、広間へと歩きはじめた。
「行こうか、祥子」
 クラシックな舞踏は踊れないけれど、今夜は作法など気にしなくても良い。見よう見まねでも踊れるものなのだと感じ、義弘は祥子をエスコートしてゆく。
 手を握って、背中に腕を回して、彼の顔を見上げながら刻むのはステップだけではない。
 鼓動がいつもより早くなっていることを感じ、祥子は穏やかな時間に身を委ねる。
 柔らかく笑む彼女の瞳には今、義弘しか映っていない。
「ねえ、ひろさん」
「ん?」
 彼を呼んだ祥子は何かを耳打ちするふりをして、近付いた顔をそっと見つめる。そして、ごく自然な流れでさりげなくキスした。
「ひろさんの唇、お砂糖の甘い味がするわ」
「…………。ああ、言い忘れていた。きれいだぞ、祥子。似合っている」
 一瞬は面食らった義弘だったが、すぐに笑みを湛えて告げる。
 二人だけのひととき。それはきっと――どんなお菓子や砂糖よりも甘くて幸せなものに違いない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ハロウィン仮装の舞踏会、お楽しみ頂けたなら幸いです。
ご参加、どうもありがとうございました!