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<霧都の蜘蛛>倫敦塔の亡霊

●濃霧の亡霊
 夜が明ける前の早朝の倫敦塔に濃霧が立ち込めていた。まるで雲海の中に呑み込まれてしまったかのように古城は取り残されている。
 近くにはテムズ川に掛るタワーブリッジが霧の間から薄らとぼやけて見える。
 濃霧のせいで川と空と地面の境界線が分からなくなっていた。
 この世かそれともあの世かとつかない幻想的な光景。
 倫敦塔はテムズ川北岸に聳え立つ城塞だった。十一世紀にウィリアム一世が建造したとされる城塞は長い間に渡って国事犯の幽閉場所として使用されてきた。
 かつて日本から留学した夏目漱石が『倫敦塔』で示しているようにこの地で処刑された者は数知れなかった。そのため昔から倫敦塔には幽霊が出るという噂が絶えない。
 早朝に堀周りの道をジョギングしていたジェームズ・エドワーズは不意にその噂を思い出していた。今日のように霧の濃い早朝には何かが起こる。
 あまりの視界の悪さにジェームズはジョギングを取りやめることにした。このままでは視界が塞がれてしまって家に帰れなくなってしまう。
 ジェームズはいつの間にか道に迷ってしまっていた。周りが白い霧に覆われて帰る方向がわからなくなった。いつしかジェームズは木々が生い茂る細い道に迷いこむ。
 周りはちょっとした林になっているところだった。迂闊に林の奥に彷徨えば、下は深い堀の崖になっていて落ちてしまう危険性がある。
 その時だった。林の奥から何やらぼうっとした白い影が現れた。ジェームズは恐怖した。最近また倫敦塔の周辺で亡霊が出るという噂を耳にしていた。
 亡霊は人を見つけると襲いかかる。近頃倫敦塔の周辺で人が忽然として姿を消し去るという事件が起きるという噂が囁かれていた。
 ジェームズは思わず逃げようとして躓いて転んでしまう。足音なくやってくるそいつの顔が徐々に霧の中から露わになるにつれて恐怖が膨らんで行く。
 異形な姿をした人間のような怪物が牙を向けていた。
 次の瞬間、一人の男の絶叫が辺りに木魂して霧の中に消えて行った。

●不気味な倫敦の街
「欧州の『スコットランド・ヤード』から依頼の要請が来ているわ」
 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)が短く用件を切り出した。髪を掻き上げながら集めた資料に真剣に目を凝らす。時折英語の原文に目を通し素早くその場でペンで書き込みながら大事な要点をまとめて話した。
「もう皆情報は伝わっているかもしれないけど、以前日本で観測された『キマイラ』の改良種が倫敦の街に次々に現れているわ。向こうのリベリスタ達もこの事態に頭を悩ませている。そこで今回はアークが協力してそのキマイラの討伐を請け負うことになったの」
 蘭子はブリーフィングルームに集まったリベリスタを見回しながら言った。
バイオ兵器のキマイラといえば六道紫杏が国内で関わった過去の事件が想起される。その改良種が今や海外の倫敦に輸出されて猛威を振っていた。以前にキマイラと対峙したことのあるアークの元へ依頼要請が来るのも何かの縁かもしれない。
 アーク側としてもこれ以上海外の地で六道紫杏絡みの面倒事が拡大していくのを黙って見ているわけにもいかなかった。
 今回倫敦塔の周辺で噂されている亡霊の正体はもちろん、このキマイラに他ならない。キマイラは濃霧に紛れて人に襲いかかりどこかへと連れ去ろうとする。
「例によって万華鏡の力は働かないから注意して。現地のリベリスタのフォーチュナによって提示された数少ない情報を頼りにしなければならない。それにキマイラは改良されてより知性も戦闘能力も向上してるから気を付ける必要がある。今回は、早朝にジョギング中に迷い込んだ一般人がいるみたいだから合わせて救ってきてほしいわ」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月06日(水)23:25
こんにちは、凸一です。

霧の都、倫敦で不気味な影が動き始めました。
敵は倫敦塔の亡霊ならぬキマイラです。

それでは、以下は詳細です。
宜しくお願いします。


●任務達成条件
キマイラの討伐
一般人の救出または無事


●場所
倫敦のテムズ川近くに聳える倫敦塔の傍の細い通り。周りは街路樹の木々に囲まれていてちょっとした林のようになっている。林の奥には倫敦塔の深い堀と外壁が見える。
早朝で暗く深い霧が立ち込めており3メートル先が見えない状況。また林の中は霧と木々によって視界がとても悪くうっかりすると堀に堕ちる危険性がある。また、足場も藪に覆われていて動きにくい。周りにはジョギング中に迷い込んだ一般人が5人いる。


●敵詳細/バイオ兵器『キマイラ』
共通のスキル情報:熱と音を全く出さないステルス機能を持つ。さらに霧や暗闇の中でも熱と音を感知するセンサーで敵の位置を正確に感知し情報を仲間で伝達し合う。

・バイオ兵器キマイラ『クロウソード』×2
頭は烏で甲冑に身を包んだ人型のキマイラ。大きな翼を持っており自由に飛行する。
上空から素早く一撃必殺の剣で襲いかかって離脱する戦法を取る。さらに敵の自付をブレイクし怒りを同時に付与する光線を赤い目から放つことができる。

・バイオ兵器キマイラ『ターミネイト』
殺人ロボットの形をしたキマイラ。戦闘のプロ。遠距離からマシンガンを全体にぶっ放してノックバックさせる。重装甲で持久力と体力を供えており脚も身軽に動く。陰に潜んで身を隠すことができるほか物質透過のように敵の背後にも回り込むことができる。
近距離では破壊力にものを言わせた格闘戦で近づく敵を真っ直ぐにぶっ飛ばす。

・バイオ兵器キマイラ『レッドシャーク』
頭がサメで身体は人間の形をしたキマイラ。尾ビレとエラがついており水中でも陸でも自由に動き回ることができる。鋭い牙で敵を噛み殺して大量出血と毒を付与し麻痺させる。遠距離からは鋭く尖った刺の鞭を放ち、敵を呪縛して水中に引きずり込もうとする。

・バイオ兵器キマイラ『ドリルマン』
頭がドリルで身体はモグラと人間を合わせたようなキマイラ。ドリルを回転させながら敵に遠距離から飛びかかって敵を突き殺す。ドリルを掘って地面に穴をあけて自由自在に地中を動きながら飛び出して敵に奇襲攻撃をしかける。また回復の電波を発して味方を援護するほか、その電波によって敵のAF通信を妨害する。

●その他補足
すでに一般人のジェームズ・エドワーズ(32)は『クロウソード』の一体に囚われている。しかし他の4人については万華鏡がきかないため、現在のところ敵に捕まっているのかそれとも襲われる前なのかは不明である。『レッドシャーク』に関しては堀の水の中に潜んでいるが、他の敵については林の中に隠れておりどこから襲ってくるか不明である。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
ホーリーメイガス
神谷 小夜(BNE001462)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
クリミナルスタア
藤倉 隆明(BNE003933)
プロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)

●Made in Japan
 薄暗い濃霧が倫敦塔を覆い隠している。テムズ川の向こうに掛るタワーブリッジがわずかに覗いていたがすでに靄の底に見えなくなってしまった。
 倫敦塔は林の黒い影に遮られていた。静謐に包まれた古城はまるで化け物の棲家のような異様な雰囲気を周囲に醸し出す。時折不気味な烏の鳴き声が奥から響き渡る。
「この奥に潜んでいるようですね。皆さん気を付けてください」
 露で濡れた林の道を『History of a New HAREM』雪白 桐(BNE000185)が慎重な足取りで前に進む。シャギーでアップにした白い髪が緩やかに揺れる。薄く濡れた唇を固く結んでいた。真っ直ぐに伸びた綺麗な脚が一歩ずつ前に進むたびに短いスカートがはためく。
 桐は先頭に立ちながら仲間のリベリスタを守るように位置を取る。
「こっちはまだ異常はないみたい……」
 すぐ傍らで『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が頬に落ちた雫を手で優雅に払いのける。ゴシックに纏った豪奢な装いがわずかに露で湿っている。大きな切れ長の瞳を周囲に向けて全神経を集中させた。筋の通った可愛らしい鼻を敏感に小刻みに動かして気配をさぐる。緊張ですでに頬がわずかに赤く上気していた。
「にしてもキマイラねぇ……六道の姫さんを囲ってるのは蜘蛛の巣だったか……あぁ、嫌な感じだぜ。アウェーでの戦いはやり辛くてならねぇ」
 同じく鼻に神経を漲らせるのは『乳狩童子』藤倉 隆明(BNE003933)だった。アンジェリカと共に分担しながら敵の情報をいち早く掴もうと試みる。手に握った拳が冷たい露に濡れて堅くなっている。隆明は赤くなった両手を何度も摺り合せた。見えない敵に嫌な予感がさっきから強くなってきていた。万華鏡の偉大さを嫌というほど痛感する。
「お堀なのにサメ地獄!! 悪い冗談みたいですねえ。久方ぶりの里帰りだってのに、いやはや」
 『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)は仲間の後ろから顔だけだして辺りを警戒していた。林の奥には倫敦塔の堀がある。間違っても知らない間に足を踏み込んでしまわないように仲間の後ろにしっかりと付いていく。
「ロンドン、観光旅行なら面白そうですけど……敵がキマイラというと、なんといいますか。基礎技術がMADE IN JAPANなのは事実ですから、どうしても、げんなりしちゃいます……」
 巫女装束の『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)が思わず呟いた。アークの名声が高まったのはいいことだが、今回の事件の元凶が他ならぬ日本発の物である事実に小夜はどうしても口が重くなる。
「敵は姿を消しつつ一方的にこちらを補足する。……これ欲しい。バラして間白室長に押し付けますか。ステルス防具なんて、如何にも夢があるでしょう。というわけで、一匹残らずバラさせてもらいます」
 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は不安が漂う仲間達を鼓舞するように言った。愛用のシュレーディンガーとマクスウェルをすでに構えながらいつでも戦闘が出来る体勢を整えている。
 ユウは人が散歩や通行に使いそうな道路を見つけると入念にチェックした。逃げ遅れた人や迷い込んだ人がいないかを確かめつつ前へと急ぐ。
 濃霧と闇に遮られた道をリベリスタは慎重にお互いの死角を埋めるようにしながら進んで行く。隆明とアンジェリカがその時何かの臭いを嗅ぎつけた。
 人間臭い血の匂いが前方から漂ってくる。男性の叫び声が霧の奥から木魂してきた。小夜がすぐに翼の加護を仲間に付与する。リベリスタは急いで声のする方へと全速力で向かった。

●This is a Monster
 異形な烏の頭をしたキマイラが男性を鋭い鍵爪で捉えていた。激しい威嚇の声を発しながら黒い大きな翼を羽ばたかせて宙に浮いていた。
 異形の姿に思わずリベリスタは息を飲む。かつて日本国内で見かけたキマイラよりもはるかに獰猛な姿に成長していた。
一瞬、怯みそうになったが、躊躇している暇は全くなかった。
「Help me! Help me!」
 下では逃げ惑う女性と男性の二人の姿があった。ちょうどもう一匹のクロウソードが今にも二人に飛びかかろうと剣を突きつけている。
 その後ろにはジョギングをしてきた若い男性が腰を抜かしていた。
「This is a Monster! Run away at once!!」
 桐はすぐに腰を抜かしている男性に流暢な英語で叫んだ。桐の忠告を聞いて驚いたようにその男性は元来た道を急いで逃げて行く。
 さらに桐は迷い込んだ散歩中の老人の姿を見つけた。状況がよく飲み込めずに老人は桐の姿を見つけて喜んで近づいてくる。
「Excuse me. Tell me the way to the exit. I lost my way」
「Here is blind alley. Exit is over there. Turn back right away!」
「Oh! Thanks. I will back」
老人は桐にこっちは行き止まりであることを伝えた。それを聞いた老人は安堵の笑みを浮かべて喜んで引き返そうとする。
 クロウソードの目が赤く光った。獲物を逃がすまいとスピードを上げて逃げる老人の後ろを追い駆ける。アンジェリカはすぐに飛んだ。クロウソードが老人に追いつくよりも早く背中に跳躍する。フリルのスカートが舞った。腕を高く真上に掲げて巨大な斧を突きつける。蝙蝠の羽を宿した刃が容赦なく異形を切り裂く。
 敵が怯んだ隙にユウが老人の元に駆けつけた。怯えて動けない老人を背負ってリベリスタが円陣を組んでいる中に入れて安全を確保する。
「気をつけろ! 向こうと地面から何か来るぜ!!」
 隆明は仲間に注意した。林の奥から草叢を分ける音がした。さらに地下から地面を突き進む別の音をキャッチする。素早くリベリスタたちが移動するとそこから地面を割ってキマイラが顔を出す。
 頭にドリルのついた男が現れていた。まるでモグラのように跳躍するとあばたに向かってそのドリルを突き刺してくる。
 林の奥から現れたのは装甲に包まれた殺人兵器のキマイラだった。異形な二つの伸びた腕をこちらに向けて一斉にマシンガンをぶっ放してくる。
 アンジェリカと桐が確保した老人を庇って必死に防御した。だが、その隙に地面から現れたドリルマンが下から突き刺しにかかる。
「こっちだ! 早く!」
 あばたがユウに向かって叫んだ。
 その瞬間、ユウの手から放たれた業火がターミネイトたちに襲いかかる。
 激しい火炎弾に巻き込まれてドリルマンとクロウソードは去って行く。ジェームズを抱えたクロウソードが怯んだところをあばたが腕を狙い澄まして撃つ。
 軌道を描いた弾丸はクロウソードの腕に吸い込まれた。
 クロウソードは雄叫びをあげる。そこに隆明が髪を振り乱しながらまるで疾風のごとく真っ直ぐに突っ込んで行った。
 跳躍して勢いよく腕を振り被る。己の最大限の力を拳に注ぎ込んだ。髪を振り乱して大きく上体を捻ると頭から突っ込むように懐に飛び込んだ。
「うるおおおおぁああ!!」
 敵の顔面に拳は深くめり込んだ。骨が砕ける音がしてクロウソードは地面に墜落する。ジェームズが離されて地面に叩きつけられそうになったところを間一髪で小夜が確保することに成功した。急いで仲間の元へ連れ戻す。
 アンジェリカと桐はターミネイトのマシンガンの銃弾を受けて消耗していた。すぐに小夜が回復の息吹で二人を包み込む。
「まだ敵はかなり残っています。気を付けてください」
 小夜は必死に看護しながら味方のリベリスタを励ます。続いて確保した老人とジェームズの傷の手当てを施した。二人とも怪我を負っていて意識を失っているが、命に別条はない。小夜も盾になってキマイラ達の次なる攻撃に備える。
 とくに地面からドリルマンが現れないか警戒した。足の裏を刺されるのだけは避けなければならない。低空飛行しながら気を配って行動する。
 リベリスタ達は固まって円陣を組んだ。敵が死角からやってくるのを見張るのと同時に戦力がばらけて味方同士の連携を失わないようにする。
 ドリルマンはすでにAF妨害電波を発していた。傷ついたクロウソードたちに回復の電波を同時に施して形勢を立て直してくる。
「水の音と悲鳴が聞こえました!」
 小夜がなにかに気が付いて叫んだ。
 向こう側で誰か別の人間の悲鳴が響き渡った。水音ともにサメの牙を持つレッドシャークが一般人の誰かに食いついたようだった。
 あばたは千里眼でその様子を何とか捉えることに成功した。すぐに助けるために林の奥に駆け込んで行く。レッドシャークは一般人の女性を捉えてそのまま堀の中に逃げ込もうとしていた。すぐに照準を腕に合わせてレッドシャークの腕を狙い撃つ。怯んだところを追いかけた隆明が迫る。
 だが、先程と同じ攻撃に学習した敵も空からもう一匹のクロウソードが襲ってきた。あばたが叫んでそちらにユウが業火を放つが間に合わない。
 隆明は目の前の救助対象に気を取られて攻撃の回避が遅れた。何とか直撃を免れたもののクロウソードの太刀に右半身を容赦なく切られてしまう。
「また地中からだ!」
 さらにドリルマンが下から突き上げてきた。間一髪のところで避けたが敵の息のあった連係攻撃にリベリスタ達はうまく反撃する機会を得られないまま後退する。
 レッドシャークは隆明の身体に噛みついて抉った。
 隆明は歯を食いしばって耐えたが、その間にレッドシャークは堀の中に一般人を吸いこんでそのまま見えなくなってしまった。

●Sacrifice for Khimaira
 桐とアンジェリカは何とか円陣から離れずに迫るターミネイトを相手に奮闘していた。激しい弾幕を浴びせつつ敵は一歩一歩着実に迫ってくる。あばたや隆明が林の奥で救助しているためその間は何としても持ちこたえなければならない。
 アンジェリカはキマイラ達と激しくやりあいながらふと考える。
(以前より強力だと言うこのキマイラ達を作る為に、今度は一体どれだけの人や動物を犠牲にしたんだろう)
 かつて日本で対峙した時もそうだった。皆望んでこんな姿になったわけではない。元になった烏やサメやそして人間たちは皆無理やり殺されてこのような異形の姿にされてしまったのだろう。彼らは生きていたらどう思うのか。
 アンジェリカは彼らのことを思って心が締めつけられた。
 まだ六道紫杏には会ったことはないが、命を弄ぶようなこんな研究を、アンジェリカは絶対には許すことができなかった。
「せめてボクの手で終わりにしてみせる。もう二度と苦しまないように」
 アンジェリカはターミネイトの懐に飛び込んだ。
 ターミネイトは殴りかかってくる。アンジェリカの鳩尾にめりこんで一瞬目の前が真っ白になった。それでも意識を確かに保ってオーラーで作った死の爆弾を爆発させた。ターミネイトは堪らず後ろに転がった。
 それでも敵は反撃の体勢を整えてさらにマシンガンを至近距離からぶっ放してきた。アンジェリカと桐が猛攻に巻き込まれる。
 アンジェリカはエナジースティールで攻撃して自己回復を試みながら戦う。
 ターミネイトが物質透過を使用してリベリスタの後ろに回り込んだ。アンジェリカのすぐ後ろに現れて桐が何とか守るように剣を突きつける。殴りかかってくる敵に対して桐は剣を振り下ろしてその強靭な敵を食い止めた。
「意地でもこれ以上後ろには通させません」
 力強いターミネイトの押しに桐はじりじりと後退しそうになる。それでも桐は咄嗟の判断で剣に込めていた力を一瞬だけ緩めた。
 その途端にターミネイトはバランスを崩して前のめりになる。桐はこの瞬間を狙っていた。ガラ空きの背中に向けて剣を真上から振り被る。
 全身の体重を乗せて剣を逆さに持つとそのまま勢いよく突き刺した。
 ターミネイトは遠吠えをあげた。強烈な攻撃を受けてそのまま逃げ出そうとする。そこへ林の奥から戻ってきたあばたが気糸を張り巡らして動きを封じる。
「今だ! トドメをやってしまえ!」
 ユウがあばたの声を受けて業火の矢を放った。強烈な弾丸のような矢が次々に敵に襲いかかった。集中放火されてターミネイトはもう逃げられない。
 ユウは最後まで攻撃の手を緩めなかった。必死の思いで敵をせん滅することだけを考えて両手を掲げ続ける。手が痛いほど痺れてきたがそれでも放ち続けた。
 燃え盛る炎に巻き込まれてついにターミネイトは崩れ落ちる。だが、その間にも地面からドリルマンが円陣の下から狙いを澄まして突き刺してきた。
 リベリスタ達はドリルマンを警戒して低空飛行していた。そのお陰でドリルの直撃を避けることが出来たが、下にいる一般人はそうではなかった。
「Ahhhhhhhhhhh!」
 老人の絶叫が辺りに響いた。下から突き刺されてしまった老人は血を噴き出しながらぐったりとして動かなくなった。さらにもう一度地面に潜り込んで今度はジェームズの方を狙ってくる。桐は何とか地面の盛り上がりからそれを察知した。
「しまった。早く助けないと!」
 桐が気づいてジェームズと老人を庇いに入る。だが、代わりに突き刺されてしまって桐は苦痛に顔を歪めた。すぐに小夜が回復の吐息をもたらす。
 その間にもドリルマンはジェームズを脇に抱えて地面に潜ろうとした。
「てめぇ、顔がきめぇくせに何しやがる! 趣味が悪いなあ、オィ!」
 隆明は小夜を痛めつけたドリルマンの頭めがけて渾身の拳を叩き下ろした。強烈な一発がドリルの頭に炸裂した。頭が半分に割れてドリルマンは息を止める。
 その隙に桐が何とかジェームズを再び確保していた。
 だが、生き残ったクロウソードやレッドシャークはそれ以上、リベリスタに攻撃をすることはなかった。まるで逃げるように濃霧の中へと消えて行く。
「これ以上深追いは危険ですね。ここはジェームズさんの命を大事に」
 ユウは仕方なく味方にそう告げた。

●Requiem for all victims
「折角の海外だったからいいとこ見せたかったが……情けねぇ」
 隆明は地面に拳を叩きつけた。すでに夜が明けて辺りは明るくなってきていた。すでに生き残っていたキマイラ達の姿はどこにもない。
 目的を果たしたからかまたはそれ以上は攻撃できないと判断したのかはわからないが、キマイラ達はどうやら撤退したようだった。
「くそっ、一匹残らずバラす予定だったのに」
 あばたが戦いを振り返って嘆く。
 予想以上に連携を取ってくるキマイラ達に最後まで苦戦した。空中と地中と水中から縦横無尽に同時に襲ってくる敵に対して個別の対策を充分にできずに、結果として一般人の何人かを犠牲にしてしまった。
 索敵によって何とかキマイラ達を補足して攻撃できたが、最後は防御に精一杯で濃霧に消えていくキマイラ達を留めるまでには至らなかった。
「どうやら無事のようですね。よかったです」
 それでもジェームズは救うことが出来た。小夜に抱きかかえられて目を閉じて寝込んでいる。まだ時間はかかるだろうが直に目が覚めるに違いない。
「どうして……こんなことを。ボクは絶対に許せないよ……」
 アンジェリカは死んだ老人の亡きがらや他に死んだキマイラ達を見て抑えきれい感情が溢れだした。小さな胸に手を当てそっと目を閉じて彼らの為に祈る。
 倫敦の地でアンジェリカの澄み渡った歌声が響いた。
 六道紫杏やそのバックにいるであろう彼らを必ずいつか必ず倒して見せる。
 アンジェリカは誓いを込めて全ての犠牲者のためにレクイエムを口ずさむ。
 濃霧が徐々に晴れて古城が再び顔を露わにしていた。
 闇が明けて振い倫敦の街に光が戻ってくる。
 朝焼けに照らし出された倫敦塔。穏やかな朝の冷たい風に乗って少女の祈りの鎮魂歌が高く澄み渡った青空に鳴り響いた。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
みなさま、お疲れさまでした。

残念ながら任務を達成することは叶いませんでした。
索敵は上手く行きましたが、そのあと特にレッドシャークなどの個別のキマイラの対策がうまくできずに結果として取り逃がしてしまいました。
敵の連携が味方を上回り一般人にも犠牲が出てしまったと思います。

それにしても、キマイラは実際に見るととても気持ち悪そうですね。
ドリルマンの漫画とかあればぜひ私も読んでみたいですw

それでは、またの機会に。