●昔々ある所に 幸野愛理という革醒者がいた。 彼女の性格を一言で示すなら『豪快』だろう。名乗りを上げて派手に登場し、弾丸や燃料などすべての財を使って戦い、勝利こそすれど大赤字を出す。 生きていれば九十を超える老婆として……変わらず銃を手に暴れていただろうと彼女を知る者は口をそろえて言う。 彼女の革醒者としての仕事は『賊』だ。リベリスタやフィクサード、エリューションやアザーバイド。とにかく神秘の存在に戦いを挑み、そして何かを強奪していく。装備している者や宝物、角やら牙やらとにかく強奪。そんな分かりやすい強盗団だ。多くのものを狩ったが、それでも神秘の外にあるものには手を出さなかったと言われている。 そんな彼女だが、ある時点からその活動が途絶えていた。一説には誰かに暗殺されたともあるが確たる証拠は無い。 『神秘狩』とよばれた革醒者が消えて数年後、霧崎真人というフィクサードが静かに裏社会に根を下ろす。この二つを結びつける者は誰もいない。半世紀近く、両者の関係は明るみに出ることは無かったのだ。 ●現在 ここはフィクサード組織『恐山』の隠れ蓑である旅行代理店。その社員はすべて恐山の配下である。とはいえ、革醒しているのはわずか四名。その四人が会議室に集まり話をしていた。 彼らは霧崎真人と呼ばれるフィクサードの部下である。だが上司の行動に不安を抱き、独自に調査を行っていた。 斬った物を数十秒のみ革醒させる『ナイフ』と、願った相手の魂を吸い込む願望器『W/END』。これらを用いて霧崎が何かをしようとしているのだ。そして『W/END』の元々の持ち主であり、当時病魔に侵されていた霧崎を『W/END』の力で治した人物の情報を得た。 その名前こそ、幸野愛理。 「つまり、私達の大大大先輩だったわけよ」 「はー、ワイルドな方だったんですね、亜実お姉さま。そういう人は私の好みじゃないのでどうでもいいです」 「お前の趣味こそどうでもいい。で、その幸野が『W/END』で霧崎の病気を治したのはどういう経緯で?」 「気まぐれか、彼女の信念か。『W/END』を持っていたのが幸野なら、その出所を探れば……現役時代の彼女のアジトが探れればいいのですが」 「それはあっさり見つかったわ。隠蔽とかそんなことを考えるタイプじゃないみたい。……ただ少し問題が」 「どうしやした? まさか霧崎が感ずいて、とか?」 「私達の動きは当に察知されてるわ。その上で泳がされてるのよ。 問題なのはその場所。当時は幸野愛理の所有物件だったんだろうけど、今そこになにがあると思う?」 「「「「………げ」」」 ●アーク 「イチハチマルマル。ブリーフィングを開始します」 録音機にスイッチを入れて、資料を開く。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタたちの顔を見ながら、これから起こるであろう神秘の説明を始めた。 「革醒者・幸野愛理の遺品を強奪してください」 強奪。日常において聞きなれない単語を聞いて、リベリスタの顔は怪訝に歪んだ。 「恐山フィクサード、霧島真人がある街にお金を集め、そこに兵を集めています。彼は『W/END』と呼ばれる願望器を用い、何かをするようです」 「何かって……何をするのか分かっていないのか?」 「はい。そもそも『W/END』についてわかっているのは『願望者の魂を代償に願いをかなえるアーティファクト』ということだけです。誰が作ったのかも不明。効果のほどは当の霧崎自身が実証していますが……」 「霧崎に話を聞きに行くわけにもいかない、か」 『W/END』を使って何かをしようとしている霧崎に直接聞いて、素直に教えてくれるはずも無い。となればそれを元々持っていた人間に聞くのが一番だが、 「霧崎の完治を願った幸野愛理はその魂を願望器に囚われています。故に彼女が生前残した記録をたどるしかありません。 そして彼女の生前の住処はすぐに判明しました。ただいまそこは『裏野部』の事務所になっています」 「はぁ!?」 「元々フィクサードよりの幸野の部下が継いだ場所だったのか、ただの偶然かは分かりません。幸野の記録はそこの倉庫にあるのですが、裏野部のフィクサードは簡単にそれを譲り渡そうとはしません。価値あるものと知れば高値を吹っかけるか、あるいは燃やしてしまうでしょう」 裏野部。七派フィクサードの中でも悪辣非道で知られる組織。倫理観念は薄く、自らのためには仲間すら売りかねない組織だ。アークとの中は、悪いと言ってもいい。 「事実、同盟関係にある『恐山』のフィクサードが接触し、口論の末に暴力沙汰になったそうです」 「……ああ、その恐山フィクサードが彼らか」 モニターに写る四人の男女を見て、リベリスタたちは嘆息をつく。彼らは確か霧崎の部下だが、霧崎の動向に不満を持っているとか。敵の認識で問題はないが、交渉ぐらいはできそうだ。 「裏野部は恐山との抗争で殺気だっています。下手をすると『遺品』が燃やされるかもしれません」 「つまり、殺気だっている裏野部がトチ狂う前にどうにか『遺品』を回収しろということか」 「なお数日後に近くのリベリスタ組織を襲撃する予定があったらしく、大量の火器類が用意されています。可能であればそちらも止めてください。」 「……そっちはそっちで重要だよなぁ」 ため息一つ。 形はどうあれ、暴走しようとする裏野部を止めることと恐山の策謀の情報を得ることは重要だ。 屋敷の地図と裏野部の構成のリストを得て、リベリスタたちはブリーフィングルームを出た。 ●恐山 「……マズったわねー。連中本気で怒ったわよ。馬鹿を怒らせて得することなんてあまり無いんだから」 「仕方ないですよ。あの人たちズボン脱ぎながら『一晩オレと部下達を満足させることができたら、考えてやってもいいぜ』とかいうんですよ。お姉さまも仕方ないなぁ、って顔して服脱ぎかけたし!」 「今回に関してはお前の暴走が正しい。よくやった」 「いえーい!」 「あえて何も言わないけど、状況は悪化したのは事実ね。計画全てがおじゃんよ」 「……力押しで押し切れない数ではありませんが、どうします?」 「パス。ごり押しすれば『遺品』が燃やされるわ。連中を一箇所に集めてその隙に強奪よ。さくっと奪ってさくっと逃げる。OK?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月07日(木)23:33 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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