● 午前1時23分。 ザ、ザー…………。 『うらのべ? うらのべ! いっちにっの、さーん!! どんどんぱふぱふー!! さー、今夜もやってまいりましたうらのべラジオ! DJはいつものわたし、『びっち☆きゃっと』の死葉ちゃんでおとどけします!』 周波は特殊回線の123。悪ノリのお遊びで、裏野部の構成員にとって知っておきたい情報を隠語で知らせるラジオ番組が此れだ。今日も裏野部一二三の娘である裏野部四八(死葉)の元気な声が響き渡る。 『これから始まる、楽しいパーティーに向けて体調良好? うんうん、聞こえるよ、裏野部モンスターたちの咆哮が! ……さて。今日のメインを伝えるよ。皆死ぬ気で今日のブームに乗らないと駄目なんだよ? 旅路はスマートに決めて、願いを叶えたいのなら! 行先は其々で問題無し、でもマックススピードで皆にはお弁当の材料を調達して欲しいかな。材料は神秘的な母性。誰の計画かって、勿論一二三とーさまのものだよ! 楽しみだなぁ、どんな美味しい料理が出来上がっちゃうんだろうね! それじゃあ、今日はこの辺で! シーユーアゲイン!』 ● 風のよく通る屋上にて、人影が二体座っていた。四本の足の下を支えるものは何も無く、前に体重を落とせば数百メートル下へ落下しては軽く頭を粉砕できるに違いない。二人の右と左の耳を繋ぐのは一つのイヤホンで、それを手荒に外した女は隣の男を見た。 「―――だ、そうですわよ」 「……ああ、いいんじゃないんですか。と、言いますか、アリスさんは知っていた口でしょう? そんな今知った風に言わなくてもいいんですけど、死ね」 ゴスロリ服に豊満な身体のいい女と言えば、いい女か。不死偽・香我美(ふしぎ・かがみ)の目の前に居る少年、神楽・真琴(かぐら・まこと)は彼女の身体を撫でるように見つめていた。 「革醒者の女なら隣に居るんですけどねー」 「私を一二三様に献上しても、なんの冗談だって言われちゃいますわよぉ?」 「そっかー。で、何処まで知ってるわけ? 教えてくれないなら死ぬといいですよ」 「うるさいですわよぉ。貴方一人じゃ大変だと思いまして、土隠を貸したのですからしっかり仕事して貰わないと困るんですのぉ」 イヤホンを外し、立ち上がった真琴。絶壁に背を向け、そして両腕を広げた。 「もう手は数か月前から打ってあるよ。全部殺せるなら楽なのに。任せてよ、楽しい狩りはこれからなんだ、いっぱい死ぬしね」 ―――直後、二人の真下のビルから衝撃と爆発音。真琴はニコっと笑いながら、体重を後ろへ傾けては重力のままに下へ落ちていく。 「上手くできたらおっぱい揉ませてね、アリスさん」 残った香我美は足を組み、冷たくなった夜の空気へ温められた口の中の空気を吐き出した。 「そんなに簡単にできたら、苦労しないんですわよ一二三様」 ちょっとした愚痴と抵抗に、香我美は口を押えて周囲に人がいないか確認したのであった。 ● 「小規模のリベリスタ組織が裏野部に襲撃されます。どうにかして彼等を助けてあげてください」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へそう言った。時刻は夜中、彼等はリベリスタ組織の拠点であるビルを強襲しては殺しを始めるのだ。 「目的は今の所不明です。予想するに、リベリスタ組織の壊滅か、それとも別の何か―――か。ですが、彼等が手荒なのはいつもの事です」 敵は十一名と一体。裏野部フィクサードの中でも、神楽真琴と呼ばれた学ランに刀を持った少年が一番危険であるため注意した方が良いだろう。もう一つ危険があるとすればアザーバイドが混ざっている事か。 「土隠と呼ばれたアザーバイドです。 でもおかしい……このアザーバイドは封印されているはずなのです。今、此の世に出て来る事が異常事態。裏野部が何か動いている気がしてなりませんが……今はまだ、とりあえずはリベリスタ組織を救う事が優先でしょう」 説明は続く。場所は六階建てのビルであるのだが……。 「リベリスタ組織の拠点ビルです。この組織、情報にはかなり気を使っていた様なので此処に拠点があるなんてバレるはずは無いそうなのですが……。おそらく彼等の中に裏野部と繋がっていた人が居たのでしょうね」 今回はかなり計画的な犯行のようで、裏野部に容赦が見えない。それを思わせる様に彼等は非戦スキルを用意した上で、ビルの階を行き来する術をほぼ爆破させて壊し、リベリスタを一点に集めている。 「非常階段があるのですが、それだけは残っております。ですがやはり其処に階を行き来するリベリスタが殺到していると万華鏡では見えました」 その事も踏まえて、対処した方が良いだろう。 「皆さんが到着した頃には、既に中では戦闘が始まっております。さっきも言ったように、情報には気を使っていた組織なので、彼方への伝達手段が無く、アークから事前に彼等に事を伝える事は難しいのです。今から行けば、まだ間に合いますので、よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月01日(金)23:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 今宵は仮面携え、踊れ、踊れ舞え、狂いの前。 現場は混乱の渦。切羽詰まった状況だけが支配していた。叫び声に、耳を背けたい状況だけれど目は背けられず、身体は救え!と前へ出ていた。 駆けあがる、九十度の道。 女を掴む裏野部らしき男の頬に回し蹴りを放ち、女を背に隠した『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)。 「え!? 君って!!」 「うん。アークの御厨だ。カレイドに君達の危機が予測されたんだ。武器を持ってくる時間は稼ぐから!」 刃を差し込んで来た腕を止め、そいつの胴に膝を蹴りあげて叫んだ。 「防衛準備を!! あと、女の子には気をつけてあげて! 奴らの狙いは女の子だ」 「―――っだりーな、死ねよもう」 夏栖斗の見上げた先、背に月を光を浴びた神楽・真琴が抜刀していた。 「首領に喧嘩売る糞ウゼー奴はっけーん」 「行かせるかよ!!」 夏栖斗と真琴の間に『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)は身体を入れ、真琴が丁度入るように放ったフラッシュバンの光。 目を覆った真琴が、琥珀の手前で止まった。其れには琥珀もほっとした所だった―――はずだが。 「俺の方が……速ェんだよ」 速攻で消えた彼の姿。はっとした琥珀は上を見上げた。 「上!?」 「遅いっつってんだよ、死ね偽善者共!!」 振り回した刀は時を止め――そして氷の陣が夏栖斗と琥珀を包んだ。だが、氷で縛られるまでには行かないのは二人の意地でもあっただろう。 五階。 「アークのトップオブリベリスタ・御厨夏栖斗が助けに来たぞ! カズトを信じて、指示通りに動いてくれ!」 『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は……ちょっと君、人の偉業を借りるんじゃない。自分の立派なものがあるでしょう。 「5階6階にいるみんなは、5階に集合して籠城をしてほしい。他の階にも司馬やツァインがいる! だから信じて、犠牲を出さぬように耐えてくれ!」 「あ、あぁ!」 竜一の言葉一字一句を飲み込むリベリスタ。竜一程の人物が来たのであれば素直に従うリベリスタだが、既にその場は四人の囲まれている。 「吹き飛ばされたい奴から前に出て来いよぉ!!」 二階階段途中。 非常階段の横幅は狭い。其処に数十人の人が集まれば其れが自然と壁になってしまいなかなか前に進めないもの。 「あの……落ち着いて、下さい、痛ッ」 『荊棘鋼鉄』三島・五月(BNE002662)はその壁に丁度阻まれ、前に進めないでいた。隣の男の肘が頬にぶつかり、痛む場所を擦っていた時だった。しゅるんと巻き付いた糸――ハッとした時には遅かった。そのまま引かれていき、そして少年?の腕に抱かれたのであった。 「あ、れ……? 男のニンゲンですか?」 「男ですね」 「えっ、ああ、其れはとても失礼しました。女のニンゲンの様に綺麗でしたので」 「よく言われます……」 その時、いつの間にか飛び込んで来た『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)の刃が、土隠の顔を右から左へ裂いた。その衝撃に離された五月を鷲祐は抱え、そして壁を蹴って三階階段へと移る。 「ナチュラルに捕まってるんじゃない」 「はぁ、すみません」 ビリビリと。鷲祐は五月に絡んだ糸を掴んでは引いて、破る。 一階。 「アークだッ! 助けに来た! すぐ降りれる奴は合流! 下から立て直していくぞ!」 ツァイン・ウォーレス(BNE001520)は叫んだ。しかし目の前で女の子のフィクサードが捕縛されかけていた。 「あっ!? 間に合いそうにねーや、頼んだ!!」 「承りました」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)はスローイングダガーを滑らせて、女の子を掴んでいる男の頬を殴って離れさせた。吹き飛んだ先で、男はお見舞いとついでの意味を込めてツァインの光輝く刃を胸に突き刺される。 彼女の精密さなら人を一人飛ばすくらい、赤子の手を捻るくらいに容易いものだった。弱いと睨んだレイチェルの瞳に映された裏野部が怒りに任せて舌打ちした。 「んのやろう!!」 「野郎ではありません。海外に出張中の日本国内を襲う……裏野部にしては随分頭の良い考えですね?」 もう一度と、レイチェルは指を前に出した。其処から放たれる神の閃光に倒れる男を見ずに、女の子に駆け寄ったツァインはすぐさま事を伝えるように早口でいった。 「連絡手段あるか? リーダー経験者指示伝えて!」 「は、はひ!?」 同じく一階。 「アークのリベリスタ、衣通姫の霧音。介入させて貰うわ」 衣通姫・霧音(BNE004298)は左手に鞘を、右手に柄を持ちそれらを反対方向へと引っ張り合って抜刀。その瞬間、彼女の周囲を包むのは精神力が具現化した刃の群か。 嗚呼、久しぶりの七派との交戦だ。景気付けに大盤振る舞いしたとしても許されるだろう。 「舞え、我が仇花」 刃を天高く掲げた瞬間―――刃の群は裏野部のフィクサードを突き刺していく。 ● 壁に、垂直に立つのは夏栖斗と真琴。 「ご機嫌麗しゅう! 裏野部の皆さん。相変わらず卑怯だね。武器持ってるリベリスタにはかなわないんでちゅかー?」 「予知夢で先手を取らなければ何もできない箱舟さんに、卑劣と言われるとはね。死にたいの?」 また何かを企んでいるのだろうと、拳を握る腕にいつも以上に力が入っていた夏栖斗。多重の幻影が切り込んで来たのを一つ一つ流しながら、そしてその質量を持った本人の刃を掴んで止めた夏栖斗。二人の顔は吐息が掛かる程近い。 「まつろわぬ民ってなにさ、って聞いても末端の君じゃわかんないよね。あー、ごめん。聞いた僕のミスだよ」 「その末端に、女を取られる気分はどうか教えて欲しいものだよ」 ピタリ、夏栖斗は止まった。そういえばAFからの声が五月蠅い――― ―――例え己が身一つでも。救えるものは逃しはしない。漆黒の瞳が月明かりに煌めいていた。 しかし、最上階は最も苦戦していたと言えるだろう。十二人居たリベリスタの内、三人程残ってしまったこの階。四人のフィクサードがきっちり一人が一人を抑えて進めないのだ。それも抑えられているリベリスタは女――。 「お前等の狙い、わっかりやすいな……」 けれど竜一の身一つでは到底。 「――あっ、やだっ」 「八重!?」 捕縛された八重と呼ばれた少女が一人居た。気付いた竜一は後ろ手に得物を回して疾風を放つが、大ダメージを与えられるもののそれだけで、それが足止めになる事は無い。 「おい!! 誰か上に……夏栖斗ォ、琥珀!!」 『ご……ごめんりゅーちゃん!! 行きたいけど、神楽が邪魔!!』 『こっちも抑えられてて進めないんだ悪い!!』 「あっあっ、やだっ!! いやだあああああああああああああああ!!」 手を伸ばした八重は抱えられて消えていく―――手を伸ばした竜一、遅い、遅すぎた。後ろから「余所見は駄目だろ」と突き刺された剣が胸を貫通して血を吐くが、振り向き直って、懇親の怒りと力を込めた。ビリビリと張り裂ける服と、限界を超えて千切れる筋肉と血管。 「邪魔だっつってんだろ!!」 得物を上から下へ打ち落とせば、骨に脳を砕くのは軽い事であった。 「一人頂き、ご馳走様だね。まだ狩れそうだから上には行かせないよ? 死んどけば?」 神楽が面白すぎると笑っていた。歯をガチンと噛みしめ、ナイトバロン特有の闇のオーラが無意識に漏れ出した夏栖斗。だが焦ったのは何も彼だけでは無く、その場で別のフィクサードに抑えられていた琥珀も同じ事。 上と正面を交互に見た。しかし上の階は下からの壁ではよく見えない。上へ応戦に行きたい気持ちは琥珀にもあった。けれど目の前のブロックも捨てる訳にはいかないのだ。 突如思考の濁流が琥珀を弾き飛ばして、壁から足が離れていく。 「くっそおおお!!!」 だが意地で手を壁に着けて『落ちる』を踏みとどまった琥珀は、その手の皮が摩擦で無残にも千切れて破れて赤い線を壁に敷いた。反対の手でやり返しの攻撃―――光の彩、幾重にも重なって敵の行動を奪うのだ! ―――ふわり、甘い花の香りがするよう。 「今晩和、良い夜ね」 壁を蹴って此処まで上がってきた霧音が、淫らに着物を乱して露出した太腿を魅せながら跳躍していた。場所は目を抑えている真琴のすぐ後方。振り返った彼、手の間から見える瞳に霧音が映る。 「私は貴方の眼鏡に適う女かしら?」 「大和撫子? 割りと好きかな」 「ふふ、そう?」 くるりと回る霧音の身体。そうすれば刀は自然と風を纏い、その風は鎌鼬として真琴を切り刻んだ。ぎょっとしたのは、その妖刀の力か、風を従わせる其れ。 「なんだ、それ……いってぇな」 「面白いでしょ?」 切り傷から血が漏れる真琴の指はいつの間にか霧音の顎を持ち上げていた。 「面白いから、おまえごと頂戴よ」 「―――っ」 霧音が血を吐けば、染まったのは真琴の顔面。ずぶりと、霧音の胸に刺さる真琴の刃―――それは背中から刃が出る程深く、深く。 「もちろん、首領に献上用だけど? きっとイっちゃう程、楽しい人形になれるよ」 「霧音から」 抜かれた刃――胸に咲いた赤色の染み。 「離れろ!!!」 夏栖斗の拳は真琴の頬を穿ち、そのまま真琴は壁から足が離れて落ちて行った。 「アークの救援だ! お前らの得物はどこだ」 内部では鷲祐がリベリスタ達を護りながら走っていた。 「二階の、武器庫に……っ」 額から血を流していた少年がそう答え、其処までの間は鷲祐がサポートする形になっている。だが上の階から下がってきたフィクサードは二人。 「上は、何してるんだ……ッ!」 大鎌を持った裏野部の攻撃をナイフで弾き返し――しかしその隣を駆けて行く両手にナイフを持った裏野部。手を伸ばして止めたいものの、追撃の大鎌を再び抑えた事により動けない。 駆けた裏野部のダンシングリッパーが華やかな鮮血を齎した。背中で感じる、跳ねた血の温かさ――気持ち悪い。 「それくらい、如何にかしてみせろ!!」 つい、吼えたその一言。勿論、武器は無くともリベリスタである者達だ―――たった一回の攻撃に首が跳ねる事は無いのだ。 鷲祐の入った入口を背に、五月が仁王立ちで構えて裏野部の中への侵入を拒んでいた。 「此処から先には行かせませんよ」 五月の目の前には下の階から上がってきたのだろう、二人のフィクサードが居た。一人は先程にレイチェルとツァインの二激をくらっているからか、少し土塗れか。 問答無用と言いたいのか、迫ってきたその二人。前衛のようで振り上げた大剣と刀を武器に五月に振り落すのだが。 「やれやれ。言葉が通じないのは嫌ですね」 顔を振った。腕には業炎を巻き付けて、左から右へなぎ払った腕から業炎が五月の目の前で燃え上がった。一気に温度が上昇したその場、燃え尽きたのは、一人。一人は炎塗れに飛び出して五月の肩を刃で噛んだ。 「一人なら私一人でも、抑えられますしね」 五月の、細くなった目は次の獲物の刃を薙ぎ払い、その拳を敵の頬へ穿った。 飛び出した糸が巻き付いて、レイチェルの行動を奪っていた。 「危ない人……そんな精密な攻撃……やめてあげてくださいよぉ……」 「貴方が土隠ですか? やめて欲しいのであれば、まずは其方が止めるべきでしょうね」 むすっとした土隠。しかし彼はレイチェルを引き寄せる事はしない。その代わりに、置き土産とでも言うのだろうか。 「成程、其れが本当の姿という事ですか」 彼の身体から生えて来た蜘蛛らしい足という足。顎は大きな牙を持ち、されど人の姿を半分保つ土隠の姿はどことなく哀れにも見えた。 牙がレイチェルの身体を挟み、強い毒の刺激に唾液がレイチェルの口端から漏れ出ていく。しかし倒れまいと踏み留まった彼女は糸を切り、放つトラップネストにより麻痺を返したのであった。 「貴方たち、一体なんなんですか。これから何をしようと」 「別に……一族のためならニンゲンの言いなりくらいやるし……」 「よし、武器を確保したな」 裏野部の二つの死体を足で蹴りながら、鷲祐はこくりと頷いたリベリスタ達の人数を数えた。先よりも減っていない、そして完全武装の裏野部を戦闘不能に追いこめた力はあったのだ。 「よくやった。此処からが本番だな」 鷲祐がそう言った時だったが。目の端で何かが見えて、聞こえた。 「こっちだよ、零ちゃん!」 「えっ、何処行くの?」 「こっちは敵が少ないよ! 千里眼持ちの俺を信じなよー!」 「う、うん? 信じてるよ?」 手を繋いだ男女の、姿。カップルか、はたまた仲が良いのか。 指示に従わないのは男の方か―――階下へ降りていく男の瞳と鷲祐の瞳が重なった。男の目が「どうも」と笑った。嫌な予感が、全身に走った鷲祐は彼等の姿を追った――しかし、其処にはもはや跡形は無い。警戒しろとは言った、だがそれだけでは信頼しきった内輪を崩すには至らなかった事が欠点か。 「……すまない、裏切り者がすぐ近くに居た……。一人、持っていかれたかもしれない」 『……っ。解った。武器を持ったリベリスタ達と合流したい!』 「……あぁ」 ツァインの言葉に走り出した鷲祐は向かう、外へと。 「今から上に武器を届ける、余力がある奴一緒に来てくれ!」 大声で叫ぶツァイン。武器を確保したリベリスタ達を従えて、されど其処に来たのは真琴であった。 「これあげるよ」 「!?」 ツァインの近接に吹き飛んできた真琴は、ツァインの両手に何かを置いた。ボール? かと思いきや、其れは恐怖に歪んだリベリスタの顔『だけ』のもの。 「武器確保とかめんどくさい事しやがって。お陰様で一人しか殺せない。良かったね、リベリスタ、沢山護れてさぁ!!」 其の侭、真琴は階下へ落ちて消えていく。叫んだリベリスタ達の声を心地よいものとして。 「あんにゃろ……ッ!!」 怒りを覚えたツァインだが、今は下より上だ。生首を丁寧に下に置いて、AFに耳を寄せた。 「竜一、そっちの状況は? 何処にいる? 動けるかっ?」 『割とマズイ。二人持ってかれたわ……』 「マジかよ!?」 戦況的には非常にリベリスタ達が非常に有利であった。それなりにリベリスタも殺されていないためか、定められた一定の条件は十分に超えていた。 『あれ? 裏野部フィクサード退いてったわ』 けれど、けれど―――奴等の狙いは完全に成し遂げられていて。 「神楽……逃げやがったのかよ」 もはや裏野部は、戦況的に圧倒的に有利に立ったリベリスタを相手にする事は無かった。 勝ったのは、負けたのは、一体どちらなのか解らないまま。 リベリスタの犠牲は、たったの一人。 ● 「この前の話は本当かよ? なんで殺せないのに裏野部なんかに……!」 「あら? ツァイン様。裏野部が好きだから裏野部に居るでは駄目です?」 屋上で一人座っていた女へ、ツァインは辿り着いた。ゴスロリの背中に語り掛ける、其れは――前回の出来事の延長線。 「殺せない訳ではありませんわ。効率の問題ですの」 立ち上がった女。ツァインはその背中へ向かって駆け出し手を出すが―――飛び降りた彼女。 「食材は三つ程頂きましてよ? 精々、一二三様のシナリオに転がされてしまえばいいですわぁ!」 ツァインの空ぶった腕が、ぴくりと動いて、それだけ。 第一の項目―――完了? |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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