●世界の肺のど真ん中 案内役の者に導かれ、ジャングルの中を進みに進みに進みに進んで、ようやっと辿り着いたそこは小さな集落。まるで『現代』からは格別された、古めかしい部族の村。テレビで希によく見かけるが、まさしくそれだ。 「おぉ……良く来た箱なる舟の民、歓迎する。感謝する」 そんなリベリスタを出迎えたのは、大量に呪術的装飾を身に纏った男。一言で表すならばシャーマン。謎の生物の頭骨を被っており顔は見えないが、友好的に笑っているようだ。 ――ここはアマゾン熱帯雨林。 アークリベリスタが『傭兵』としてやって来た場所は、代々森の平和を護ってきた革醒者部族『緑の民』の集落だ。彼等はオルクス・パラクトとは同盟を組んでおり、その関係でアークの事を伝え聞いたという。なんでも若者が町に出てしまったり高齢化が進んだりと、かなり勢力は小さくなっているらしい。その上、最近はエリューション事件が頻発して手が回らない状態で、傭兵として派遣されたアークリベリスタは正に天の恵みと言ったところか。 因みに目の前のシャーマンの名はルピタロッタ。見た目は若いが、実際年齢は村一番。緑の民唯一のフォーチュナにして族長だという。 「箱なる民。頼みがある。我々困ってる。大きな『恐怖』が森にいる。動物暴れる。恐怖の所為だ。最近、森物騒。我々少ない。手が回らない。助けて欲しい。恐怖倒して欲しい。 恐怖、恐怖に染まった動物を三つ連れてる。一つはビリビリ、一つは命を貪り、一つは力持ち。 彼らは森の闇に潜んでる。後ろから噛まれるな。歩きながら気を付けろ。恐怖の牙には毒がある。気を付けろ、気を付けろ」 だが、とルピタロッタは言葉を切った。 「空と海を森を越えてきただろう箱なる民よ、身体の芯までクタクタだろう。今日の太陽が死ぬまで休め。明日の太陽が生まれたら、力一杯頑張れ。任せた、頼んだ、箱なる民よ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月25日(金)23:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●事前準備、緑の民の集落にて 「アマゾン! オレ、トモダチ助ケル!」 「大丈夫、言葉わかる」 「あ、はい」 友好的に接してくれる人には友好で返すのが俺の流儀だ!因みにシャーマンは女性が良かった。と言う訳で『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は女性陣を中心に聞き込み調査。見た目と年齢が適合してないとかそれは置いといて。 同様に、ルピタロッタの前には『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)と『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)。鷲祐は言語理解を諦めた顔をしていたが、取り敢えず言葉に苦労はないとの事で気を取り直し。 「――というのがこちらの編成だ。安心しろ、仕事は果たす。それで、1つ質問があるのだが。物騒になったのは、いつ頃からだ?」 「去年程からだ、箱なる舟の民よ」 「私からも数点程、ご教示頂けませんか?」 控えめに挙手して、『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)。敢えて昔からの在り方を良しとする緑の民が、彼女には好ましかった。 勿論、と頷くルピタロッタがリベリスタと話しこむ一方で―― 「あ、之は御土産の焼酎です、今後ともアークをYOROSHIKU」 そんな言葉と共にお土産を渡しつつ、『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)。さてと冗談はここまでとして――必死に護ってきた物を他所に任せるってのは其れだけの決意があるんだろう。 「任せろ、託された想いは必ず果たす。で、一つ訊いて良いか?」 そう言う訳で、リベリスタの調査の結果。 手渡された地図には、胡乱な目撃情報のあった場所に印が付けられた。 バグホールやその類の情報はない。 戦闘があまりにも長引けば、ひょっとしたらEビーストが増えるかもしれない。 水分補給はしっかりと。 街で売っている様な虫よけスプレーでも振れば虫さされに悩まされないんじゃないかなぁ。 一先ず革醒者の体力膂力ならば森で早々へばる事はないだろう。 よし。纏められた情報に『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は頷き、緑の民へ向き直る。 「わたしたちは、ただの猟犬。それを森に放った狩人は、あなたたち緑の民」 猟犬が獲物を屠ったとすれば、その功績は狩人のもの。にこりと微笑み、感謝と共に。 「この森を守ったのはアークじゃない。誇り高き緑の民です」 「おぉ……感謝する、箱なる舟の民。無事で戻って来い。諸君は猟犬ではない、我々の同胞だ」 握手を交わし、太陽が沈み、昇って、リベリスタ達はアマゾンの深い森へと出発する。 ●ミラクルディスカバリ 何処も彼処も緑色。自然の楽園とは正に、である。 「アマゾンでござる!」 「アマゾンだよーーーーーーー!! やっほーーーーー!!」 テンション上げずにはいられない、『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)と『骸』黄桜 魅零(BNE003845)。特に後者は嬉しそ~にメカ尻尾をふんふんしている。はしゃぎまくりである。 「ひぃー! 海外だ!! 海外かぁ初めてだなぁ、日本の島から出たことないよ! 英語しゃべれないけど大丈夫かなぁ!? お土産は何がいいのかなぁ? うおー! 日本とは違う空気だよ!! 空気が美味しい!! 気がする……」 あ、はい、仕事します。 リベリスタは隊列を組み、事前調査に従って歩を進めていた。 先頭は鷲祐、二列目に舞姫、最後列には喜平、その他が真ん中を固める。用心深く、周囲を見渡し警戒は怠らない。 「な! ……なんだツタか、驚かせやがってよ」 喜平は初めてのジャングル探索に緊張と興奮の綯交ぜになった気分を覚えつつ、熱感知の力で警戒しつつ己の闘気を解き放つ。 「私、生まれが南国故、暑さには強いのですが……さすがアマゾン……蒸し暑うございます」 水は命の源とは良く言ったものですね、とハンカチで汗を拭うシエルはしみじみ呟きつつ、ペットボトルの水で水分補給。勿論仲間にも提供。 最中、さくりさくりと蜥蜴の脚で土を踏み締め鷲祐は獣の感性を研ぎ澄ませる。 「……こんな漁があった気がするな……」 「釣りみたいなもんさ! がんばれ、ルアー! これぞ、名付けて『トカゲの尻尾切り作戦』!」 そんな相変わらずの竜一の言葉にふっと笑みを漏らし。 「さて、活きのいい蜥蜴はお気に召すかね」 斯くして。 舞姫と魅零は妙に騒いでいる動物達の気配で。喜平は温度で。他の者もあらゆる感覚で。 見付けた。 「……そこか」 鷲祐の呟きと、向こうがこちらに気付いたのはほぼ同時。現在地は木々の間隙、少し開けた所。調査のお陰で戦い易い場所にて敵と遭遇出来たのは僥倖か。 ケダモノの唸り声。葉擦れの音。 それを聴きつ、それらより速く、リベリスタ陣より飛び出だした影二つ。鷲祐、その後方に舞姫。稲妻を纏い、刃を鋭く抜き放ちながら。 「狩りには手を抜かない」 そう言ったのは『何十人もの鷲祐』。電気ウナギを取り囲み、刹那をも超える速度で繰り出すのは百など生温い斬劇の嵐。絶影繚乱。捉える事すら不可能だろう。 それを視界の端、舞姫の眼前には恐怖の闇。何とも形容し難い黒が蠢き、立ちはだかる舞姫に不気味な声を漏らしながら牙を剥いた。喰らい裂かんを襲い掛かる。バチン。けれど、恐怖の闇のアギトが捉えたのは彼女の残像。金の髪が、流星の如く靡く。 「貴方の相手は、わたしです」 挑戦的に、睨ね付ける隻眼。蒼。 「ちょっとだけ涼しくしますね……魔風よ在れ!」 そんな二人を追いかける様に、シエルの灰羽が羽ばたいた。生み出す魔力の風の渦がEビースト達に襲い掛かる。シエルは非常に優れた癒し手だ。それはそれだけ魔力が高い事を表している。そして、普段は強力な回復に使用するその高い魔力を攻撃に転用すれば――『強力無比』となるのは、自明の理。 先手は上々。それに続けと、デュランダル達は己の力を解き放つ。破壊、ただただそれを突き詰めた闘争本能。止めれるものなら止めてみろ。 「たとえ情報が不確かでも負ける訳にはいかないのでござる」 カレイド無くとも勝てる事を証明してみせる。漆黒の刀、斬魔・獅子護兼久を抜き放った虎鐡は筋骨隆々ナマケモノの前に立ちはだかった。その丸太の様に太い腕が、その先でギラつく爪が、虎鐡目掛けて振り下ろされる。が、虎鐡は獅子護兼久で受け止める。重い重い力。ず、と足裏が地面に沈むのを感じる。ぎりぎりぎり。拮抗。純粋な力押し、か。いいだろう! 「受けて立つでござる!」 力比べは、嫌いじゃない。好戦的に歯列を剥いて、力尽くでナマケモノの腕を跳ね上げる。その勢いのまま刃にのせるは青白い電光、光り輝く黒の刀身にて一閃。あらゆる物を破壊するだけに特化された刃は、虎鐡の圧倒的な力に乗ってナマケモノを叩きのめす。 一方。拓真の前には、化物の様に巨大なチスイコウモリ。滑空。躱すが、腕に掠る。ほんの僅かだったのに、ざくりと斬れていた。されど拓真に動揺はない。極めて冷静に、油断はなく、いつも通りに――この『正しさ』を、貫き成すのみ。 「例え、どの様な相手であろうと負ける心算は無い。障害となるなら、打ち砕く!」 凛然と言い放ち、ガンブレード『Broken Justice』をその手に構えた。壊れた正義。捩じた想い。誰が為か。何の為。たとえそれが『そう』だとしても。発砲。放つ弾丸は苛烈に熾烈にEビーストと恐怖の闇に降り注ぐ。鋼鉄の暴雨。己が正しいのだと証明する為の暴力の嵐。 そこからほど遠くない所で鳴り響いたのは竜一が火を点けた花火が爆ぜる音である。この爆音で非革醒生物を追い払い、これ以上敵が増え無くする為の作戦だ。実際、鳥が飛び立ち羽ばたきが遠退いて行く音が聞こえた。 「ハッハァーーー! 一気に潰すぜ!」 冴え冴えと輝く蒼の宝刀、『愛』の加護を受けた武骨な西洋剣。両手にそれを携えて、100%中の100%。全力中の全力。蒸気を発する程に筋肉が膨れ上がり、電気ウナギへ叩きつける一撃を形容するならば『最強』。最強は最も強い。強いから強い。一番強い。そこに理屈や理論は無い。 怒涛の攻勢を見せる前衛。一方の後衛では喜平が打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を構えていた。装填するのは持てる全力。それは破滅の光と成って、発射。究極の砲撃。轟と唸るエネルギー弾が、電気ウナギに抵抗の暇も与えず骨の髄まで消し飛ばした。 「さー次にケシ炭になりたいのは何処のどいつかな?」 見遣る、その先。舞姫の刃に切り裂かれた恐怖の闇の咆哮が轟き、集約された禍々しい闇が毒液を撒き散らしながらそこいら中へ発射される。リベリスタの肌を焼き、毒で蝕み、痛みを刻む。 「あいっててててて……」 じゅうううう。シエルを庇い、痛みに魅零は口角を歪める。肌が肉が神経が。痛いのは生きてる証拠。ああわたしいきてるわ。超生きてる。未だ生きてる。故に唇を歪めて笑う。ウケケケケ。 「任せてね、ホリメを護る騎士くらい、きちんとこなしてみせるんだからね! 攻撃されても全部反射してやるんだから!!」 喰らった傷は痛みを返し、じわじわ治り。何だろうがどんとこい。どんなに違ったって、全部中身は骨と肉。故に殺せない訳が無い。 シエルはそんな彼女に礼を述べて。練り上げてゆくは、癒しの呪文。 「凡ゆる神秘を抱きしめて皆様のお怪我、只管癒しましょう。――癒しの息吹よ……」 他者を支える事こそ、シエルにとっては存在意義の確認。ただただ頼れる仲間のその為に、『癒し尽くす』と云う一念の下。吹き抜ける癒しの風が戦場を優しく包み、リベリスタ達の傷を悉く消し去ってゆく。 「うぉらァアアッ!!」 満ちる力。虎鐡は今一度その力を雷に変えて、力の儘にナマケモノを一閃する。両の腕を刎ね飛ばされ、大きくタタラを踏んだケダモノへ。光よりも速く死角より間合いを詰めたのは集中を重ねた鷲祐。 「――燃やしていい木などないッ!!」 周りへの被害は最低限に、敵への被害は最大限に。減速を知らない速度を以て繰り広げるは斬撃の殺陣。音速の刃。ズルッと崩れたナマケモノの身体がそのまま崩れ、崩れ、挽肉と成って頽れる。 「ヒャッハーー! 次はお前だーーー!!」 100%を超える力を解放した竜一が飛び掛かるそこには、拓真と相対するチスイコウモリ。増援を認めた拓真はBroken Justiceを射撃から斬撃に切り替え、構える。 「合わせて行くぞ、竜一!」 「おうよぉ!」 タイミングを合わせて、挟撃。飛び掛かるのは二人、構える刃は4本、振り抜く力は計り知れず。精鋭デュランダル二人の猛攻を受けたチスイコウモリが生存できる確率など万が一にも有り得ない。 「残るは貴方だけ……覚悟は、宜しいですか?」 最後衛より戦況を見守っていたシエルの視線の先には、舞姫が抑え続けていた恐怖の闇。敵と呼べるものは最早、それだけ。舞姫が抑えに奮闘した為に恐怖の影が周囲に齎した被害は少ない。更に彼女の刃と拓真の弾丸が攻撃を加え続けていた為にそれは無傷ではなく、シエルの回復支援により戦闘不能者は零。運命を代価にした者もいない。特にシエルは魅零が徹底的に護り傷一つない。状況はリベリスタの圧倒的優勢。 で、あるからこそ。 最後まで決して、気を抜かない。 虎鐡、竜一、拓真、3人のデュランダル。鷲祐、舞姫、二人のソードミラージュ。5人のリベリスタが不気味な影を取り囲む。 と、一際大きく咆哮を上げた恐怖の闇がその黒い爪を荒々しく振り回す。毒の滴るそれが暴力と共に襲い掛かる――けれど、止まらぬ戦意を纏う虎鐡が猛毒に冒される事はない。 「ふむ……そんな闇払ってやるでござる!」 振り上げる刃は何処までも破壊的でいながら、何処か美しい。暗いならば照らせば良い。ぶすぶすと肌が焼けようが構うものか、それ以上の攻撃を敵に加えれば問題無い。暴れ狂う恐怖の闇へと大きく間合いを詰める――それは拓真と同時、行うのは同じ技。ギガクラッシュ。煌めく刃の雷霆の一撃が迸り、その雷光の狭間より喜平が構えた打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」が唸りを上げて光球を発射する。全ての果てに、墓標と成れ。 例えるならば巨大な鋼鉄の壁に叩き付けられたかの様な。大きく押し遣られた恐怖の闇。 「逃しはしない」 矢の如く飛び出したのは鷲祐。時間は待ってはくれない。だからこそ、追い越すのみ。正面からは竜一を始めとしたデュランダル勢。ならば己は背後から。巨木を蹴り、それを足場にその勢い。 攻撃。攻撃。攻撃の手を緩めてはならぬ。 戦闘を長引かせる理由もメリットもない。 敵性エリューションならば、退治するしかない。 恐怖の闇の非革醒生物を狂わせる力。自分も解らなくなってしまうそれが――自分達にも及ぶかもしれない、と考えると、魅零はゾッとしたものを背骨に覚える。 故に、だ。 「此処で全部、駆逐するんだ。これ以上、犠牲が出ないように、増えないように!」 魅零の指先から代価の血が滴る。それは抜き放った大業物の刃を伝い、黒く黒く無限の悪意に染まってゆく。振り抜いた。それは恐怖の闇よりなお昏い色を湛えた絶望の闇。着弾の衝撃。 ぐらっと恐怖の闇の状態が揺らいだ。そこへ、鋭く飛び込んだのは舞姫。黒曜の刃が木漏れ日にキラリと煌めいた。その光が舞い踊る様に――繰り出すのは鮮やかにして艶やかなる刺突の舞踊。光り煌めく。闇を祓う。 「これで、」 ダブルアクション、もう一度。戦姫の眼差しからは、逃げられぬ。 「――終わりです」 恐怖の闇の喉元に深く、深く深く深く突き刺した一尺二寸。黒に沈む黒。 そして、静寂。 ●家に帰るまでがアマゾン 「……って感じで、任務は無事成功だよ!」 緑の民の村に戻り、魅零は彼等に報告を行った。返って来る感謝の言葉がこそばゆい。 因みに後処理等は緑の民の方で行うようだ。シエルは帰還の前に周囲にバグホール等がないか探してみたが、その類は見受けられなかった。 ともあれ任務は完了、あとは日本に帰るのみ――だがその前に。 「……共通言語があったぞ……! おいルピタ。お前、酒はいけるか?」 鷲祐のその言葉。虎鐵も帰る前に共に食事でも、と誘いかけ。顔を見合わせるのは緑の民。そういえばさっき、喜平から焼酎も貰った事だ。 斯くして、その日の夜は楽しげな宴の音がアマゾンの森に響いたそうな―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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