●レッツ・パーティ☆ 「Shall we dance?」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)が髪をアップに纏め上げた赤いドレス姿で集まったリベリスタに言った。 アークに入って初めて貰った給料で新調したものらしい。 まだ友達や知り合いも少ないのでこれを機会にいろんな人と知り合って交流を深めたいなと蘭子は密かに心を躍らせていた。 秋はなにかとイベントが盛りだくさんだ。秋祭りやハロウィンなどたくさんのパーティが開かれてその都度ダンスをする機会もあるだろう。 今回はハロウィンで新調した衣装を披露する意味も込められている。 日頃仲良くしている友人と参加したりこれから新しく交流を結びたいと思っている人たちと出会ってお互いが親睦を深めようと企画された。 「ダンスがうまく踊れないという初心者さんも大丈夫なように簡単な曲と踊りにしてあるから安心してね。これを機にうまくなりたいという人は是非来てみて。もちろん、ダンスがうまい人も大歓迎だわ。その場合は教えてあげてくれると嬉しい。せっかくの年に一度のハロウィンだから秋の素敵な夜を満喫して楽しんで頂戴ね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月09日(土)22:57 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●スリラー・ナイトでもいいじゃない 郊外の高台に建つ廃教会はこの日のためにハロウィン一色に染められた。大きなカボチャを刳り抜いたランプが玄関で出迎える。中に入るときらびやかなテープや紙飾りに装飾されたホールが広がっていた。ステンドグラスの外は三高平の夜景が一望できる。 秋の夜空に星たちが瞬いていた。三高平の街をまるで小さく照らし出す外灯のように輝いている。丘の上から見る展望は絶景だった。すでに教会内にはノクターンが流されている。幻想的な調べと共にリベリスタ達は思い思いに時間を過ごす。 テーブルには秋の味覚が並んでいた。近辺で採れた秋の野菜や魚や肉が一流のシェフに調理されて香ばしい匂いを漂わせている。中にはカボチャを使ったシチューやスープが色よく配置されていた。真っ赤なドレスに身を包んだ今回の企画の提案者でもある蘭子はグラスを片手に秋の夜長を満喫する。髪をアップにした首筋と頬がほんのりと上気していた。 「こんにちは、じゃなくてトリックオアトリートかな」 「あら、新田君じゃない。最初誰だかわからなかったわよ」 快が一人で食べていた蘭子に声をかけた。快はゾンビの仮装をしていておどろおどろしい姿になっていたが近くで見るといつもの快だった。 「素敵なドレスじゃないか。ダンスパーティーに誘ってくるくらいなんだから、伊藤さん、相当踊れるんだろ?」 さぞかし踊れて当然といった態度で問いかける快に対して蘭子はどう答えるか迷う。眉間を寄せて唇に手を当てて少し困った表情を見せる。 「冗談だよ。俺も齧った程度しか知らないから、お互い練習相手ってことでどうかな?」 「もう、新田君たら。それじゃ私でよかったらお相手お願いするわ」 蘭子の差し出された手を快がそっと握り返す。そのまま二人はホールに連れ立って社交ダンスを踊り始めた。すでにホールにはダンスの曲が流れていた。流れるリズムに乗って蘭子と快がステップを刻みながらゆっくりと身体を回転させる。 お互いの身体の重心のバランスを考えながら軽やかにターンしやすいように快は蘭子を上手く誘導した。快の意図に気がついた蘭子も先の動きを読んで合わせてくる。 「伊藤さん、かなり上手いじゃない。踊り慣れてないなんて嘘だろ」 「新田君こそ、さすがだわ。もう練習じゃなくてもいいんじゃない?」 「それじゃ、今度は本番にしようか?」 「あらやだ、それってどういう意味なの?」 蘭子は満更でもないというように笑顔で問い返す。 「ちょっと趣向を変えてさ、こういうのはどうかな?」 快はパチンと指を鳴らした。その途端、ホールの音楽の曲調が変わる。 ”キング・オブ・ポップ”の代表曲、モンスターの仮装をした人たちが一斉にダンスを踊るアレだった。快が得意げな表情で蘭子に向かって言った。 「スリラー・ナイトでもいいじゃない。ハロウィンなんだからね!」 快の一言でホールにモンスターの仮装をしたアークの職員たちが出てきた。快が真ん中に位置を取って軽やかなステップを刻む。 今宵の楽しい宴が幕をあげた――。 ●たべくらべきょうそう テーブルの料理の前にじっとミーノは張り付いて考えていた。色とりどりの秋の味覚がミーノの五感をフルに刺激してくる。すでに先に手が動きそうになっていたが、そこはじっと我慢して様々な料理を見比べていた。 「むむむ……どのりょうりからたべていくといちばんおいしくたべれるのかをぶんせきっ」 マスターファイブを使って分析を始める。食いしん坊のミーノはただ食べるだけが能ではなかった。きちんと順番を考えた上でより美味しく量が食べれることを目指す。 さっそくパンプキンスープを始めに食べることを決意した。そっと鼻を近づけると何とも言えない香ばしい匂いがしてくる。ミーノの耳がぴくぴくと動いた。 「うわあ~! お、おいしいっ~! ミーノ、もっともっとたべる」 次から次へとミーノは料理に手を付けて行った。傍らで礼装した三郎太もテーブルを回りながらカボチャ料理を中心に口に運んでいる。 「うん……どれもとても美味しいですねっ」 「ミーノときょーそーしよ?」 「どちらが一杯食べれるかですか。望むところです」 「よーいどん!」 「あっ、先にズルイです! 負けませんよ」 三郎太もミーノに負けじと料理を堪能する。お腹がちょうど膨れてきたところでようやく最後にとっておいたパンプキンプリンとパイに手を伸ばす。 「ほふーおなかいっぱい!」 ミーノも一杯食べたと宣言して同じくデザートのプリンとパイを取った。 「あっ、ミーノさん、これボクの……」 三郎太の前でミーノが美味しそうにデザートを食する。最後に大事にとっておいたデザートを取られて三郎太は悲しくなった。しばらく落ち込んでいたが、すぐにシェフが次なるデザートを補充してようやく三郎太は口にできる。 「ハンプキンパイにパンプキンプリン……ん~~……美味しいっ」 三郎太はゆっくりとデザートを味わいながら幸せに浸った。ほどなくして隣で食べていたミーノが「しゃるうぃーだんす!」と言って立ち上がる。 「ミーノさん、よかったらボクと踊りませんか?」 「かろりーしょうひ!」 三郎太がにこやかに言うとミーノもキリッとして頷いた。二人はテーブルから離れて一緒にダンスを踊りにホールの真ん中へと出て行く。 ●大きなキノコ 蘭子は快と社交ダンスを終えて再び料理のテーブルに戻って来ていた。ホールでミーノと三郎太がくるくると楽しそうに踊っているのを微笑ましく見ながら休憩する。 「やほー! 蘭子ちゃん、食べてるー? わたし、ここの料理全種類食べるー! ちょっとずつね!」 そこへアラビアンナイトの姫の衣装を纏った壱也が蘭子を見つけて走り寄ってきた。 「わあ! いっちー。食べてるわよ。それよりその衣装すごくかわいい! 似合ってる」 蘭子と壱也は互いに手を取り合ってぶんぶんと振った。二人ともブリーフィングルームで何度か顔を合わせていたが蘭子がアークに来てからこういう緩やかな場で二人で話すのは久しぶりだった。蘭子も他ならぬ壱也と話せることがすごく嬉しくて仕方がなかった。最近のお互いの近況についてしばし仲良く語り合う。 「そういえば最近どこのカップルがおすすめかな? ここにいれば新刊のネタつきないでしょー? いいところだよね」 蘭子は壱也の耳元に近づいてぼそぼそと話題作について情報を交換した。それを聞いた壱也の表情があからさまに不気味な笑みに変わる。何度も頷きながら「蘭子ちゃんもやっぱそっちだったか……。わたしはどっちかいうと○○で××……」 壱也と蘭子がとても人前で喋れないことを談義している。怪しいオーラーが二人の空間を漂い始めていた。そこへファントム姿の竜一が興味深そうに二人の元へ近づいてくる。 「あ、噂をすれば竜一くん!」 「何の話を二人でしていたんだろう……」 竜一は一抹の不安を覚えた。だが、気を取り直して蘭子と壱也を誘った。三人で仲良くドンペリで乾杯してさっそく竜一が二人の分の料理を取り分ける。 「わ、何、とってくれるの? ありがとー やけにきのこ多い気がするけど……なんか、おっきい」 壱也と蘭子の皿に大きなキノコが乗せられていた。箸で持ちあげた壱也が思わず声をあげる。隣で蘭子も困惑気味にキノコを箸で突いていた。 「このキノコ、やけに太くて堅い……食べれるのかしら?」 「さあ、遠慮なく。二人とも俺のキノコをいっぱい頬張って」 竜一はやけに「俺の」キノコを連発させて二人を気味悪がらせる。そして二人がキノコを触っている間にいつしか視線が胸元に吸い寄せられていた。 (……しかし、うん、蘭子たんはいつみてもナイスな胸だ。 それに比べて、誰かさんは……)としみじみに頷きながら考え込む。 同じ腐女子なのにどうしてここまで格差が広がったのか竜一には何度考えてもわからない。単純に年齢の差かとも思ったが、いっちーが将来的にこの戦力を身に付けられるとも思えなかった……慢心、環境の違い……。 「で? 竜一くんはどこ見てんのかな、また余計なこと考えてるでしょ。 声に出さなくてもわかるし!!」 「いや、ぜんぜん胸なんて見てないよ」 竜一が壱也の殺気につい口を零してしまう。 「わたしだってそのうち……許さないぞ」 壱也が怒って竜一の料理を片付け始める。意図に気がついた蘭子も壱也に協力して料理を回収した。そして二人で竜一の口元に一番大きなキノコをねじ込む。 「竜一くんもこっちの世界においで! さあ遠慮しないでさ! ひひっひ」 「ぐああああ!! 俺にその趣味はないんだあああっ!!」 ハイ、キーノーコ! 壱也と蘭子が仲良く竜一に大きなキノコを突っ込んでいるところを、快がチーズならぬキノコの掛け声で写真を撮った。 その瞬間、皆のどっとした笑い声がホールに木魂する。 ●慣れないステップ 「よう、蘭子さん楽しんでるか?」 蘭子が休憩している所に隆明がやってきた。いつもとは違う隆明のきちんとした礼服姿に蘭子も思わず何度も目を瞬かせる。 「藤倉君……どうしたの? そんなにかしこまっちゃって」 蘭子が優しく微笑みかける。隆明は対して若干緊張していた。 いつもなら隆明はこういう場では飲み食いだけだった。だが、たまには違うこともしていいという気分になっていた。あまりこういうフォーマルな格好は自分でも似合っていないとは思うが今日は神士に振舞うつもりでいた。 「んじゃあ一曲どうよ? アレだ、Shall we dance? ってヤツだ」 隆明はようやくその一言を口にした。 「いいわよ、それじゃさっそく踊りましょう」 蘭子が隆明の手をとってホールへと二人で向かう。すでに蘭子は踊っていたためにステップも軽やかだった。対して隆明は緊張で何とか足を踏まないように気を付ける。 ゆっくりと踊りながら何とか余裕のあるところを見せようと顔を向けると蘭子の顔がすぐそばにある。髪をアップにしてアクセサリーが耳元で煌めいていた。真っ赤なドレスに身を纏った蘭子が至近距離で隆明を見上げてくる。 「あー、そのドレス、似合ってるぜ蘭子さん」 隆明は緊張していることを隠すようにぶっきらぼうに言った。いつもとは印象の異なる蘭子の姿に隆明は正直照れていた。 蘭子も隆明に合わせてゆっくりとステップを踏む。時折足を踏み間違えそうになる隆明をさりげなく誘導してなんとか一曲踊りきって見せた。 「今日の藤倉君はいつもより格好良く見えたわ」 「あ、ありがとよ。上手く踊れてたらよかったんだけどよ」 「大丈夫よ。踊りやすかったわ。それに意外と……藤倉君って背が高いのね。また機会があったら一緒に踊りましょう」 蘭子は壱也や快たちに呼ばれていた。隆明に挨拶して赤いドレスの裾を翻してテーブル席に戻って行く。隆明は、今度またダンスの練習でもしておくか、と心の中で呟いた。その時ちょうど腹の虫が鳴いた。やはりらしくないことをすると腹が減る。 「藤倉君も一緒に食べましょう!」 蘭子が呼んでいた。隆明は苦笑しながら皆が待つテーブル席へと歩み寄って行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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