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<アーク傭兵隊>ファラオの呪いと白銀の聖杯

●灼熱の砂嵐
 カイロ郊外にあるギザ台地は灼熱の太陽に晒されていた。
炎天下の高温に時折巻き起こる砂嵐はこの地方独特なものだ。そんな一面に広がる砂漠の向こうにはひときわ大きな三つのピラミッドが聳え立つ。
 カフラー王のピラミッドの近くには大スフィンクス像が出迎える。アラビア語で「畏怖の父」と呼ばれるその像は古代ギリシャやエジプト神話に見られる神である。
 そんなギザに近い砂漠のある発掘現場で新たな遺跡が発見された。砂漠に埋まった遺跡は比較的小規模なものですでに棺室にまで辿りつくことに成功していた。
 発掘されたミイラには黄金のマスクが被されている。形状は異なるもののツタンカーメンを思わせるミイラの発見に現場の発掘調査隊は色めきたった。
 だが、発掘調査隊員がそれからまもなくして原因不明の高熱に犯された。次々に倒れて意識を失って倒れてしまう隊員達に誰もが恐怖した。
「まるでツタンカーメンの呪いだ。このミイラの主が墓場を荒らされて怒っているにちがいない。早く逃げないと俺たちもファラオの餌食にされるぞ」
 現場を指揮していた男がいうや否や隊員たちは一目散に出口へと逃げ出す。その時、棺室で眠っていたはずの黄金の仮面を纏ったミイラがゆっくりと立ちあがった。
「うわあああああ、助けてくれ!」
 あまりに突然の出来事にパニックになる。隊員たちは狭い道を上へと駆けのぼりながらなんとかファラオから逃げ出そうとする。だが、後少しで入口だと思った時だった。
「前を見ろ! スフィンクスだ! 俺達に向かって襲い掛かってくるぞ」
 発掘現場の入り口の上空にはスフィンクス像が飛翔していた。
 ライオンの身体に人間の顔をもつ生き物。背中に羽をはやして自由に空を飛びまわりながら出てきた隊員達に容赦なく襲いかかかる。あの大スフィンクス程ではないが悠に十メートルを超える巨大な怪物の出現に隊員たちは今度こそ絶望した。

●ファラオの呪い
「集まってくれてありがとう。これで全員かしらね? みんなも知っているとは思うけど、アークは今、世界のリベリスタから依頼要請を受けているわ。今回は、欧州の『オルクス・パラスト』から受けた依頼の解決に向かって欲しいの」
 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)が髪を掻き上げながら集めた資料を元にしてブリーフィングルームのリベリスタ達に状況を説明した。
 事件はエジプトのカイロ郊外にある砂漠地帯の遺跡発掘現場で起きた。発掘の最中に隊員たちが原因不明の高熱に次々に犯された。さらに黄金のマスクを被ったミイラとスフィンクス像が隊員達を次々に襲いかかって殺した。
 原因不明の高熱はどうやらアーティファクトの仕業によるものだった。棺の中に入っていた白銀の聖杯がミイラを守護し辺りに毒ガスを撒き散らしている。そのガスを吸ったものが高熱に犯されて次々に命を奪われた。さらに現場には死んだ隊員たちのE・アンデッドやE・ビーストのサソリやコウモリなどが湧いて出てきもしていた。
「以上の情報は依頼先のフォーチュナや組織によって提示されたものよ。もちろん海外の仕事だから国内だけを対象にしている万華鏡の力は及ばない。現地で手に入れた数少ない情報を頼りに行動しなければならないからいつも以上に気を付ける必要があるわ」
 蘭子は海外で任務をする注意事項を述べる。実際に不測の事態が起こるかどうかは別として国内の任務よりも厳しい依頼になるのは無理もないことだった。
 欧州に地理的にも歴史的にも縁のあるエジプトには特筆するほど有力なリベリスタ組織がなく、代わりに欧州の『オルクス・パラスト』などが赴いて事件の解決に当たっている状況だった。今回は他の懸案などで満足に手がさけない『オルクス・パラスト』の代わりにアークが要請を受けて赴くことになった。
「現地は日本の気候とは違って厳しいからくれぐれも注意して。無事に任務を成功させて日本に帰って来れることを祈って待ってるわ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月27日(日)23:02
こんにちは、凸一です。

エジプト、ファラオの呪いは恐ろしいですね。
といっても今回は、アーティファクトの回収ですが、
探検家になったつもりで白銀の聖杯の秘宝を取って来てください。

それでは、以下は詳細です。
宜しくお願いします。


●任務達成条件
アーティファクトの回収または破壊
E・アンデッド&E・ビースト&E・ゴーレムの討伐


●場所
エジプト・カイロ郊外にある砂漠地帯の遺跡発掘現場。砂漠に埋もれた遺跡の入り口が地面にあって狭い道を下って中に入る。地下一階の棺室からなっており、中は毒ガスが充満しており、何も対策がないと1分で倒れてしまう。さらに中は五十度を超す高温であり、何も対策がないと暑さで三分もしないうちに倒れてしまう。灯りはなく闇が広がり足場も劣悪。


●敵詳細
・アーティファクト「白銀の聖杯」
黄金の仮面を纏ったミイラおよび遺跡の墓を守護する役割をもち、オフェンサードクトリンやディフェンサードクトリンのようなもので味方を支援する。さらに毒ガスに似たものを辺りに撒き散らして周りにいる生物を死に至らせてエリューション化させる。

・黄金の仮面のミイラ
「白銀の聖杯」の力を得て動いているこの遺跡の墓の主。剣術使いで盾を効果的に使いながら狭い棺室内を縦横無尽に一瞬にして敵に迫り複数をまとめて一気に斬撃する。

・スフィンクス像
 頭部は人間の形をして身体はライオンの姿で羽が生えており自由に飛翔できる。全長十メートルあって口から範囲の火炎弾によるノックバック攻撃および、さらに回復の吐息で仲間を支援する。砂嵐を巻き起こして敵の視界を遮る方法をよく使う。

・吸血コウモリ及び毒サソリ×5
途中の階段や道に住みついており、物影や地面の砂の中に隠れ潜んで奇襲攻撃を仕掛ける。吸血コウモリは吸血によって敵の体力を急激に奪う。また毒サソリに刺されると毒が回って、さらに身体が麻痺して動けなくなる。

E・アンデッドの隊員たち×10
遺跡の入り口を警備している。ライフル銃とアーミーナイフを所持しており、スフィンクス像やミイラの支援をしながら自ら盾になることもする。

●その他補足
遺跡の入り口には5人のE・アンデッドが厳重に警備をし、上空にはスフィンクス像が飛び回る。入口を入って地下一階に行く道の途中には吸血コウモリや毒サソリが潜む。地下一階の棺室には黄金のミイラが待ちかまえており、5人のE・アンデッドが強力にミイラをサポートする。白銀の聖杯はミイラの着る衣装のポケットに入っている。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ホーリーメイガス
神谷 小夜(BNE001462)
覇界闘士
三島・五月(BNE002662)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ミステラン
風宮 紫月(BNE003411)
デュランダル
柳生・麗香(BNE004588)

●現代の遣欧使節団
 灼熱の太陽光線に浴びた砂漠が地平線の彼方まで続いている。時折やってくる砂嵐を避けるようにリベリスタ達は現地の案内人を先頭にしてラクダで移動する。
 ギザの三大ピラミッドと大スフィンクスを横目に目的地へと向かっていた。和装が多い今回のメンバーはまるで幕末に日本から訪れた遣欧使節団を思わせる。
「うぬ……これが噂に聞くスフィンクス」
 『うっちゃり系の女』柳生・麗香(BNE004588)は呟いた。ナポレオンがエジプト遠征時に大砲で狙ったというスフィンクスの鼻がへこんでいた。皆が話しているのを聞いて思わずうなり声をあげる。『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)も珍しそうにエジプトの遺跡群を見回した。巫女装束の『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)もエジプトの民にとっては異様な格好に映る。三人の和装はまさに現代の遣欧使節団といえるかもしれない。案内人も片言の日本語でそう褒め称えた。
その当時は皆髷に着物に帯刀した侍の集団だった。『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)は昔の武士が同じ場所に訪れてスフィンクスをこうやって眺めていたのかと思うと感慨深い気持ちになった。『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)も海外の任務に対して気合いを持って臨んでいる。当時の武士たちと違って自分たちは戦いに来たことを思い出す。
「熱いのは苦手ですが――まあ、さっさと仕事を片付けましょう」
 『荊棘鋼鉄』三島・五月(BNE002662)の言葉に『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)も頷いた。ユーヌも紫月と一緒にエジプトの王侯貴族を偲んだ。だが、それが神秘によって害をなすのならば容赦はしないと心に誓う。
 今回のメンバーで一番和装から外れているのは他ならぬ『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)だ。現地の案内人がエーデルワイスを最初見るなり面白い変な頭の女だと非常にウケていた。
 エーデルワイスの帽子を興味深そうに何度も引っ張っては遊んでいた。この案内人にとっては和装の他のメンバーよりもサーカスのようなエーデルワイスの奇抜な格好の方が物珍しく思われたのである。エジプト人の思考がよくわからないとエーデルワイスは思わず愚痴をこぼして言った。
 今回の案内人は数少ない現地のリベリスタの一人であった。祖先が墓の守一族でありエジプトを長期に渡って見守ってきた。だが、近代に入って欧州の侵攻などに伴い墓の守一族は数を減らして現代にはあまり残っていないとのことである。
「海外とかはじめてですし、語学も全然自信がないのですが……」
 小夜は不安そうに言ったが、今の所なんとか意思疎通はできていた。
 案内人も『オルクス・パラスト』に日本からやってきたリベリスタを案内するように雇われた者だった。若い頃に日本に留学したことがあり片言の日本語なら意思疎通ができる。
 影継は早速その案内人に気温の下がる夜に行こうと提案した。だが、案内人は気温が遺跡内部で高くなっているのは毒ガスが高温だからと説明した。それに一刻も早くエリューションを討伐しなければ漏れ出た毒ガスによってさらにE・ビーストが増えるという。
 毒ガスは未だに侵入したサソリやコウモリなど小動物に対してさえも毒ガスを定期的に吐き続けているらしい。
「どうやら万華鏡が利かないために細かいところで事前の情報にはなかった事態がおきているようですね。これは心してかからないといけません」
 小夜が言うように万華鏡により精細な情報がえられないために事態が日本を立った頃に比べて変化している可能性も十分にあった。必ずしも『オルクス・パラスト』側も厳密に調査ができていたわけではない。だから事前に影継が質問したことはとても有意義なことだった。不測の事態があるかもしれないと思って挑むのかそうでないかは全く異なる。発掘隊の調査記録を案内人に渡して貰い影継は玄室までの順路や中の戦闘での死角などを念入りにチェックした。海外任務の難しさを改めて認識して影継は身を引き締める。

●謎かけをしない貧相な獣
 案内人が指した方向に空を飛びまわるスフィンクスがいた。その下にはすでにこの世のものではなくなった哀れな発掘隊員達が銃を持って警戒している。
 ここから先は危険なので案内人はここで帰りを待つという。拓真はここまで案内してきてもらった礼を述べて必ず帰ってくると返答した。その言葉を合図としてリベリスタたちは慣れない砂漠に足をもつらせながら戦場へと急ぐ。
 小夜が早速仲間に翼の加護を施した。スフィンクスが低空飛行で接近してくるリベリスタに気がついてすぐに威嚇の声をあげた。
 羽を広げて砂嵐を作りだす。一気に視界が狭くなって満足に動くことができなくなる。そのすきにスフィンクスは後ろに回って後衛陣に襲いかかった。
 口から炎を吐いて五月と小夜が巻き込まれる。何とか仲間を助けようと影継はスフィンクスに物資透過で迫った。いきなりスフィンクスの背後に現れた影継は暗黒の瘴気を放って叩きつける。さらにユーヌがアッパーを放って引きつける。スフィンクスが唸り声を上げたところで五月と小夜がその隙に窮地を脱することが出来た。
 隊員達も気がついてすぐに一斉に銃をぶっ放してくる。拓真がガンブレードを突きつけて銃を構わず辺りに乱射した。激しい銃撃戦が繰り広げられる。隊員達も拓真の銃撃に気を取られてそれ以上前進することができない。
 紫月がフィアキィを伴って前に躍り出る。飛び交う銃弾の雨に当たって顔しかめたが、それでも両手を懸命に構えて魔力の炎を作りだす。
「てっきり、スフィンクスと言うのだから謎かけでもして来るのかと思いましたけど……」
 上空を旋回するスフィンクスを警戒しながらもまずは目の前の隊員達に向かって両手を大きく振り上げて火炎弾を叩きこむ。
 隊員たちが怯んだ隙にユーヌが銃撃戦の合間を縫って進む。閃光弾を後ろから放って一気に敵の動きを封じ込めにかかった。
「動くと雰囲気ぶち壊しだな。まるで貧相な獣だ。ああ、知性の欠片もない獣以下の能なしか」
 短く言い捨てて怯んだ敵にユーヌは不吉な占いを告げる。現実に現れた漆黒の影に襲われた隊員が叫びながら砂漠の上に突っ伏して倒れた。
 アンタッチャブルを自付したエーデルワイスは隊員達の横から素早い動きで迫って神速の連射で持って次々に撃ち殺した。頭を撃ち抜かれた隊員たちは砂の上に血しぶきを撒き散らしながら絶命していく。
 麗香も得物を高速で振り回しながら隊員達を激しい烈風の中に叩きこむ。
 残った隊員たちがスフィンクスを援護しようと盾に向かった。そうはさせまいと颯爽と拓真は立ちはだかる。ガンブレードを持ちかえて今度は刃先を向けた拓真はそのまま敵の中に突っ込むと渾身の剣さばきで敵に振り被る。
「我が前に立ち塞がる障害は、打ち砕く……!」
 首元を裂かれた隊員は膝から下に崩れ落ちた。残る敵はスフィンクス一体のみとなった。強靭な体力を生かして影継に体当たりをかます。
 弾き飛ばされそうになったがすんでの所で踏みとどまった。逆に尻尾に取りすがってそれ以上自由に行動はさせないと必死に掴む。
 五月が影継を援護しようと正面から氷の拳を叩きつけた。鳩尾に拳がめりこんだスフィンクスは顔を苦痛に顰める。影継は斧を振りかぶって翼目がけて渾身の一撃で振り下ろした。翼が捥がれたスフィンクスが回転しながら地面に急降下したところを麗香が横から剣を繰り出して真っ二つに切り裂いた。

●古代王の部屋
 入口の敵を全て倒したリベリスタは暗がりに気をつけながら遺跡の中に歩みを進める。暗視やゴーグルや灯りを元に慎重に前へと進んだ。
「日が差さない地下なのに暑い……すでに毒ガスが漏れているのか?」
 階段の中ほどから急に蒸し暑さが漂い始めていた。おそらく毒ガスが玄室の中からいくばくか洩れ出てきているのだろう。小夜は不測の事態に備えて同行のリベリスタ達に警戒するように伝えた。すでにガスマスクを着用し始める。
「気をつけろ! その陰になにかいるぞ!」
 影継は透視で物陰に潜んでいる何かの正体を察知した。程なくして天井から吸血コウモリの群れがばらばらに襲いかかってくる。さらに地面の砂場から大きなサソリが現れて足元から毒針を突き刺してきた。
 上空と足元からの同時攻撃にリベリスタ達は手を焼く。狭い空間において逃げ場がないために必然的に格闘戦にならざるをえない。噛みつかれながらユーヌはなんとかしようとアッパーですべての敵を引きつけに掛る。
 敵を引きつけたところを五月がかまいたちの足技でまずコウモリの一体確実に切り裂いた。さらに麗香が剣を構えてサソリの背に思いっきり叩き下ろした。吹き飛ばされたサソリは液体を撒き散らして息絶える。
 麗香はベルトライトの灯りを頼りに襲いかかるコウモリの群れを次々に叩きのめした。ようやくすべてのサソリとコウモリを倒した時は息が上がっていた。
 玄室のミイラを相手にする前に一行はいったん外へと出る。集団で襲いかかられたためにすでに身体中に無数の小さくない傷を負っている。
 小夜が中心になって回復を施してインターバルを置いた。
「みなさん、あと少しですからしっかりしてくださいね。いつものように私が後ろで回復を受け持つので心置きなく戦ってください」
 小夜の言葉を合図に再びリベリスタ達は遺跡の中に侵入する。階段の下の方はすでに毒ガスが漏れてきて溜まっている状態だった。すぐにガスマスクを付けて万が一の事態に備える。さらに影継が保冷剤を特に対策していないエーデルワイスや拓真に手渡して服の内側や額に巻くように促す。できるだけ服を露出させないように注意しながら玄室の入り口へと向かう。
 ユーヌが少し離れた所から影人を作りだして先に中に潜行させる。酸素ボンベをもたして中の毒ガスを外にあぶり出す作戦だった。
 だが、すぐに毒ガスが廊下に溢れだしてきて深刻な状態になりそうだった。拓真はすぐに作戦を中止するように合図する。このままではユーヌや自分たちの帰り路まで影響が出てしまいかねなかった。拓真のお陰で何とか被害を最小限に食い止めることができた。
 気を取り直してリベリスタ達は一気に玄室の中に突き進んだ。中は彩色に富んだ象形文字が切り刻まれた豪華な玄室だ。思わず麗香が感嘆の声を上げる。
「ふっ、さすがボスというべき威容の部屋ですねえ」
 目の前には黄金の仮面を被ったミイラが無表情で剣を構えていた。訪れた侵入者にむかってゆっくりと歩み寄って剣を突きつける。

●さらば考古学的遺産
「古代の浪漫も実害があってタネが分かってると台無しだな」
 影継はミイラの横から襲いかかった。狙いは着ている衣装のポケットが膨らんでいる部分だ。あの中に今回の目的の白銀の聖杯が入っているに違いない。アーティファクトによって中は毒ガスで高温になっていたが今の所ガスマスクと保冷剤は有効に働いているようだった。物質透過で敵の裏をかいて迫る。
 拓真も同じ気持ちだ。墓を暴いている時点で譲り受けるとは言わない。ならば戦利品として貰い受けるのみ。ハイテレパスを使用してミイラに訴える。
 黄金のミイラは拓真の言葉がわかったのか真っ直ぐに剣を振りかぶって迫ってきた。それを合図にして周りの隊員達も一斉に身構える。
 紫月はフィアキィの氷精を踊らす。迫りくる隊員たちに向かって足止めして凍りつかせようと試みた。その効果によって辺りの気温を幾ばくか下げることに成功する。エネミースキャンで敵の素早さや威力の程を知った麗香も気迫でミイラをブロックした。絶対に後衛陣に攻撃させないと剣をぶつけて食い止める。
 隊員たちは陰からいきなり五月に襲いかかる。激しい銃撃を食らって後ろに引きさがるがなんとか小夜が回復を施してもう一度奮い立たせた。
「聖杯の守護か。薄紙のようだな。乾いて鄙びて朽ちかけか?」
 ユーヌが入り口から閃光弾を全ての敵に叩きこんだ。怯んだ所をすばやくエーデルワイスが次々に隊員達を狙い撃って行く。
 黄金のミイラを麗香がブロックしているうちにエーデルワイスはポケットの衣装に狙いを澄まして弾丸を放った。ミイラは何とか避けようとしたが、不意にポケットが破れて白銀の聖杯が地面に堕ちてしまう。
 そこをユーヌの影人が手を伸ばして拾った。詰め寄ってきた隊員達をさらに別の影人が攻撃しているその隙に白銀の聖杯を外へと運び出す。
 黄金のミイラは怒り狂って剣を縦横無尽に切り裂いた。麗香はこれ以上たえきれなくなって傷を負いながら後退する。毒ガスが次第に皮膚を通して身体にもダメージを与え始めていた。次第にリベリスタ達は困憊してくる。一度影継は物質透過で入口の外に出た後ふたたび中に入ってミイラに奇襲を試みた。
 拓真と黄金のミイラは激しい剣撃を繰り広げていた。無表情で感情に乏しく何を考えているのかわからないため先読みが出来ない。
 人間とは違う動きをするミイラの太刀筋に拓真はいつしか全身に斬り傷を増やして行った。ガスマスクを切られ拓真は毒を吸って苦しくなる。
 影継が拓真の反対側から迫ってようやく玄室の隅で挟み撃ちにした。ミイラは天井のほうへ跳躍して逃げようとする。そこへ先回りしていた影継が斧を構えた。
「さらば考古学的遺産!」
 思いっきり振りかぶった斧が黄金のミイラの身体に叩きつけられる。うめき声をあげたミイラの鎧が砕け散った。無防備に晒された貧弱な身体に拓真は双剣を構えて一気に重心を低くして迫った。敵の剣筋を身体を捻って交しながら、その遠心力を使ってまるで回転するように身体に勢いをつけて二刀を繰り出す。
 黄金のマスクに双剣が矢のように襲いかかって切り裂いた。仮面を割られたミイラはそのまま壁に激突して身体を粉砕させた。
 その瞬間、遺跡の天井が衝撃で崩れ落ちてくる。小夜が皆に叫んで逃げるように促した。その瞬間に目の前に土石が落ちてくる。
「ダメだ! 逃げるぞ」
 エーデルワイスは黄金のマスクを取りに行こうとして拓真に制せられた。今行っては帰れなくなる恐れがある。急いで拓真は皆を引き連れて階段を駆け上った。
 後ろから次々に天井から崩落してくる土石を交す。もうすこしで追いつかれるというところで列の最後にいたエーデルワイスが間一髪で地上に出た。
「みんな無事ですか?」
 五月の言葉にリベリスタは頷いた。肝心の白銀の聖杯はどうなったのか、それを麗香が尋ねると先に避難していたユーヌがそれを取り出して見せた。
「聖杯というより邪杯だな、こりゃ」
 影継は思わず呟いた。飲み口の欠けた土埃に塗れた薄汚れた杯。古代の王侯が使っていた威厳のある代物には到底見えない。影継はそれでもすぐにアタッシュケースを取り出して完全に密封した。すでに毒ガスを噴射していなかったが、用心するにこしたことはない。ようやく初の海外任務を終えて一息ついた。エーデルワイスは黄金のマスクを取れなくて残念がっていたが、代わりに外で待っていた案内人のオジサンに手厚い抱擁をうけた。無事でよかったと労われる。
「墓を暴いてる事には謝罪しますが、これもまた必要な事。古代エジプトの王よ、安らかに――」
 紫月は崩れ落ちた遺跡に向かって呟いた。遺跡を調査すれば他の発見が出来るかもしれないと思っていた。だが、黄金のミイラは再びまた地面の中に埋もれて行ってしまった。もしかしたら彼らにとってはこれでよかったのかもしれない。
 吹きつける風に髪を掻き上げて紫月はそっと祈りを捧げた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
海外任務お疲れさまでした。
無事に白銀の聖杯を回収することに成功しました。
エジプトの地で見事にアークのリベリスタとして任務を達成できましたね。

事前に準備をきちんとして、なにか起きても慌てず対処することが出来ていたと思います。今回はとくに大きな不測の事態はおこりませんでしたが、今後万華鏡が利かない海外任務においてはこのような姿勢がとくに重要になってくるでしょう。

それでは、またの機会に。