● 軽い気持ちで入った訳では無かった。確固たる意思はあった。 とある兄妹の話をしよう。 親が幼いときに亡くなったため、借金や、妹の学費、生活費は兄が必死になってどうにかして生きてきた。妹はいつもそれに感謝しており、それなりに幸せであった。それなりに。 ある日、親譲りの革醒者であった兄に一通の手紙が届く。其処には『来るなら戻れず』という言葉と共に、ある組織の勧誘であった。他に記されていた事といえば『親は組織の人物であった事』。しかしそんな事はどうでも良く、兄が一番輝いて見えた文字は『今ある生活を裕福なものに変えられる』というもの。 住んでいた場所はイタリア、スラム街。 思った――――妹にもっと綺麗な服を着せられる。 望んだ――――妹にもっと美味しいものを食べさせられる。 喜んだ――――妹にもっと良い場所を与えてやれる。 迷いは無かった。それまでは。踏み出した一歩の、なんと軽かった事か。 だが、今は土砂降りの雨の中を走っている。家には帰れない、長電話もできない、ただ闇雲に逃げながら命懸けで掴んだ一つのルートへ言うのだ。 「頼む!! 助けてくれ!! 俺は、妹を残して死ねないんだ!!」 その声に差し伸べた手もまた、天使か悪魔かは解らない。 ● 「皆さん、こんにちは。ヴァチカンからの要請を貰ったので……今から皆さんにイタリアへ飛んで欲しいのです」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へそう言った。突然の海外遠征に、戸惑ったリベリスタ達だが、杏理さえも初めての事に戸惑っている。 「ヴァチカンは知っている通り、最大のリベリスタ組織なのですが……彼等の目を掻い潜って活動するフィクサード組織は勿論あります。その一つとして、イタリアのマフィア。つまりファミリーってやつですかね? その構成員が一人、ヴァチカンに助けを求めて来たのです」 マフィアを模ったフィクサード組織は超秘密主義。名前さえ表に出てこないため『ブイオ(闇)』と呼ばれている。 これまでに何度も構成員であろう人物を捕えようとしてきたが、その前に逃げられたり、自殺されたり、殺されたりと組織の情報が一切表に出ないのだ。 「情報を漏らさない事が彼らの血の掟。己の命よりも組織を護る事が先決。 その事もあってか、今回その組織から抜け出してきた『裏切り者』は、ヴァチカンにとってとても重要な人物なのですよ。これまでにも何度もこういう事はあったのですが、フィクサード組織に裏切り者を殺されて保護失敗したりもあれば、これ以上彼等と関わりたくないようなので、この依頼をアークに回してきた……という事ですね」 杏理はヴァチカンから送られてきた情報を資料に纏めておいたと言う。しかし、これはもしかして。 「そうですね……いつもより情報が少ないのは明白。万華鏡は日本国内専用……イタリアには勿論使えないので、当たり前という話なのですが……だからこそ、皆さんを信用していますよ。不測の事態が起きてしまう事は十分にあるかもしれいません。杏理ができる範囲で調べた情報と、ヴァチカンの情報を足してなんとか凌いでください」 限られた情報の中で、あらゆる事態が起きる事を想定して臨むべきなのだろう。 「保護するのはテオ・アルドという一七歳の少年です。テオの組織はあらゆる組織へのルートを持っているという事なので、どうにかしてヴァチカンに接触する術を見つけたようです。接触方法は電話という手だったのですが……。 彼とヴァチカンは限られた時間の中で一つの約束事をしました。記された日時に、決められた場所へ来る事です。それは資料の中にあります。此処に皆さんも行ってもらいますが……テオが敵を連れて来るであろう事も予想してくださいね。まあ、あちらもまさか鉄砲玉一人のためにアークを用意するなんて考えていないと思いますし、それでは、宜しくお願いしますね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月24日(木)23:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 息を切らして、あの日決めたあの場所へ。大粒の雨、向かう先―――輝いて見えたのは、何故だったのだろうか。 「海外遠征っていうか、帰省って感じに思えちゃうのよね」 イタリア人とのハーフである『箱舟まぐみら水着部隊!』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)は、大雨を遮る傘を回しながら言った。 「同じく。依頼で帰省する事になるとは思わなかったよ」 同じように『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は大雨により水位の増したルビコン川を横に歩いていく。 水溜りを飛び越えた『クール&マイペース』月姫・彩香(BNE003815)。少し湿気た地図を広げて、方位によって回しながら、決めた場所は―――もう少し先か。 「初の傭兵といっても……こんな雨の日に」 「まあ、雨は仕方ありませんし……任されたのであればやるだけです」 『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)の吐くはすぐに冷たくなっては消えていく。彼の隣に居た『母子手張』秋月・仁身(BNE004092)は、落ちかけた眼鏡を上にあげながら……、 「おや、あれが救出対象っぽい気もしますけど?」 「みたいだなぁ」 仁身は指をさし、その先に見えた人影に晃は頭を振った。 「では、相談通りに」 『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は傘をたたみ、華やかな金髪は雨に濡れていく。段々と身体の熱も雨水に取られていくものの、気にしていられない。 「アンジェリカさん!」 「任せてよ!」 ユーディスは背にアンジェリカを置き彼女の名を呼ぶ。即座に発動した、千里を見通す其れ。息を切らして、速いテンポで足を動かしている彼の後ろに複数の影。 「敵影、不特定多数かぁ―――ま、ボクの眼から逃れられると思わない事だね」 バリン、と咥えたペロペロキャンディーを噛み砕いた『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)。フードの奥から見える瞳が、アンジェリカの言葉に「同感」と訴えていた。ルナこそ、感情探査を敷いていた。だからこそ解る敵の位置。真正面に向いていた瞳が、右にずれては後ろを向く。 「……ちょっと、囲まれてるかなぁ」 そう、敵はテオを追いかけているものの、先回りをしている敵も居たという事か。 「それって、危ねェって事かッ!?」 「まあ、そうだねぇ。でもお姉ちゃんが護るから大丈夫だよ!!」 『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)はルナに問う。しかし己の拳を合わせ、 「それって、逆に言えば強くなれるって事だよなッ!!」 楽しんでいた、この状況を。コヨーテは即座に、テオの下へ、その奥の敵へと駆けだしていく―――。 「お姉ちゃんが護……必要無さそうかな?」 コヨーテの後姿に伸ばした、ルナを右手が空気を掴んだ。 ● 『た、助け!!? あんたらがヴァチカンか!?』 『違うわよ。指定場所とはちょっと離れてるけどあなたを拾いに来た人間よ』 慌てたテオの身体が、リベリスタ達の場所へスライディングするように入り込んで来た。息を切らし、ブレる瞳が訴えたもののソラは冷静に其れを対処。更に彼の身体を掴み後ろの方へ放り投げ、奥より魔術の気配に顔を顰めた。 「ちぇ、戦闘は逃れられないみたいね。攻撃、来るぞー」 ソラは右手を上に、腕に巻き付くような陣を完成させた直後それを放った。ソラの雷の一つが伸びた先、お返しと言わんばかりの血の鎖がリベリスタ、特にテオへ向かって伸びて来たのだ。 『うわああああああああ!!』 「―――ッ!!」 身体を強張らせたテオの正面に立ったユーディス。その腕に血鎖を巻き付け、彼への攻撃を受け止めた。 「ブイオ……ですね? 居場所は全て此方の千里眼でバレています。出てきなさい」 強く、力の入った言葉でユーディスは彼等に言った。草陰、中には濁流の川の中から人が大勢出て来たのだ。その中でも、川沿いを堂々歩いて来た黒服が帽子を上に上げていった。瑠璃の瞳の、凛々しい男であった。 「ヴァチカンには見ねーですが、なんなんです。此方の報復、邪魔するっつーのなら一緒に沈めてやりますですが」 「すげェ! 日本語うめェなッ!!」 其処へ飛び込む、コヨーテの拳。問答無用と言いたいか、炎の巻き付いた拳は向かう、敵の頬へ。 ゴキッ!!という鈍い音が響いたと同時に、灼熱の炎がコヨーテの眼前から先を埋めていった。雨さえも蒸発させ、その場に居た敵を全て飲み込むように。 「あらゆる世界と取引しているんだこの野郎ですよ、日本語くらいできなくてどうするんだ……つか痛ェ!!」 されどその男はすぐに拳を返すようにコヨーテと全く同じスキルを返してきた。コヨーテ含め、リベリスタは炎へ飲み込まれていく―――。 晃が鉄扇で仰ぐ。風が生まれ、炎を掻き消しながら走り出した。 「日本語喋れるなら、良かった良かった」 俺、日本語しか喋れないからな……とぼそっと呟いた晃だったが、それは大雨の音で聞こえなかった。即座、再びマグメイガスの攻撃か、杖を出している黒服は四色の音色を送り込んで来た。其れを扇で切り裂く晃。 「おいおい、武力行使がお前等の言語か?」 「その男を此方に渡してくれるっつーんなら見逃してやろうとも考えてやってもいーですが?」 「できない、交渉だな」 「なら、殺すしかねーですよ」 晃はテオの腕を掴み、彼の傍に立つ。どんな攻撃が来たとしても、テオだけは護るという決心を其処に置いて。 しかしその時。ルナが気配を感じていた、先回りしてきた黒服がテオ目掛けて長剣を振り回してきた。跳躍し、飛びついてきた彼等を咄嗟にユーディスと仁身が蹴り飛ばして近づけさせない。 「囲んで、駆逐するのは頭の良いやり方ですよね」 「今はただひたすらめんどくさいだけだけど」 蹴られ、後ずさったフィクサードだが、再び駆けてきた彼等にユーディスと仁身はスキルで対抗せんとする。ラストクルセイドを放つユーディスの隣、 「生きて虜囚の辱めを受けずですか、日本人よりよっぽどNINJAしてますね」 瞳の細くなった仁身が放つ光は爆発を呼び起こしては、更に敵の進軍を遅らせるのであった。だが三百六十度方位されているリベリスタ達だ、もちろん仁身の後方からも攻撃は飛んでくるのだ。葬送の音色、血鎖の一片を受けてしまった仁身の身体から光が沸いた。 「どれだけ攻撃しようと、ラグナロクの光が私達を護ります! 退きなさい!!」 ユーディスは再三の鎖を腕に巻き付け、胸を貫かれていても倒れる事は無かった。確かに攻撃された分だけ、彼女のラグナロクが敵自身を痛める。されど、瑠璃目の男の奥より回復師のスキルがそれを埋めていたのであった。 「マグメイガス一人に、ホーリーメイガスが一人……あれらが、邪魔だなぁ」 「ね。……回復から先に落すべきかも」 ルナと彩香はほぼ同時に動く事ができる。二人は目線を合わせて、一度だけ頷いた直後。得物を構えて息を合わせる。先に発動したのはルナの攻撃―――傍で、フィアキィが輝いたのだが、咄嗟にフィアキィを両手で捕まえて胸元に隠したルナ。 「ちょっと! せっかく耳隠しているんだから出てきちゃ駄目なんだよ!?」 焦ったルナだったが、フィアキィは親指をたててサムズアップしながら答えた。もう…‥と溜息をついたルナ。胸元がフィアキィ色に光っているのは最早仕方ない所か 気を取り直して放った爆炎により、吹き飛ばされた黒服たち。直後彩香はパチンを指を鳴らした。未だルナの爆発の余韻があるのだが、更に増して光は放たれる。それは後衛職を抑えるには十分な威力を持っていた。 「あぁれー、なんか見たことない技が見えた気がするんですけど」 瑠璃目がルナを見据えた。 「何もの?」 「教えない。君よりはずっとお姉ちゃんだって事だけは教えてあげるね!」 ● 「余所見は駄目だぜッ!!」 「うわーもう、オマエ超しつこいな!!」 振り上げたコヨーテの拳。精神力がガリガリ削れている事も知らずと言うように、飛び込んだのは瑠璃目の懐。彼の胸に叩きつけた手の平から炎が漏れ出すと同時に、瑠璃目はその腕を掴んで放り投げて回避した。 「つれねェなッ!!」 「仕事中なんですよ……もう!!」 しかしコヨーテ、放り投げられたもののきちんと両足で着地した。刹那、コヨーテと瑠璃目は同時に濡れている地面を蹴り、お互いの頬を穿つ形で爆炎が起きた。 燃え上がった炎に熱せられた鉄扇が熱い。ジュ……と指先が焼けた感覚に奥歯を噛んだ晃。されど、せめて背中の命くらいは護らなければならない。 『あっち!!』 「ッ!!」 突如指をさしたテオ―――その先から三人の黒服が短剣や大剣を構えて振り払ってきた。ノックBでテオから離れそうになった身体に鞭打って、泥を蹴ってテオを背へと隠した晃はその攻撃の全てを受け持った。 右腕が千切れかけ、肩が外れかけ、横腹が抉れた晃だったが、それでもなお、立ち上がる。 『お、おい、大丈夫か!?』 「―――何言ってるか、解らんが、一応イエスって言っておく!! 」 光が漏れた晃の身体。されど、笑って、晃はテオを心配させまいとした。その傍で、デュランダルの一人を雷の纏う槍で振り払ったユーディス。 「なんだか、デュランダルが異常に多いですね」 「一気に殺すっていうのは伊達じゃあないって事か……」 ユーディスと晃が振り払った雨には、血も混じっていた。 「たかが一人に大げさな人数よね」 嘆くソラは再びの雷撃を放ち、その光がまだ収まらない中アンジェリカはテオへ振り向いた。 「Piacere(初めまして)」 にこっと笑ったのは安心しろという意味と、絶対に護るからという気持ちが一緒になったためか。言葉ではたったのそれだけしか言わなかったものの、伝わったものは多く。 『すまない、すまない……っ。ありがとう』 晃は解っていた。テオの身体が震えていた事を。 テオにとって妹が大事なように、きっと妹もテオが大事だろう。アンジェリカにも同じように思う人が居たからか、彼の気持ちが痛い程よく解っていた。ただ、彼と違ったのは其処にお金が無くとも、裕福な暮らしができなくとも幸せは掴めると解っていた事で。 「―――だから」 ギリと鳴ったのはアンジェリカの奥歯。 「帰すんだ」 妹さんの元へ。両手の腕で作り出した、バロックナイトの禍々しい偽月が赤黒い光を放ったのであった。その光線は前方全ての敵を射抜いていく。 「ヴァチカンの要請で極東のアークに属する者だ。私は、ツキヒメだ。ヴァチカンまで君を送ろう」 彩香の声、頷いたテオもそうだったが瑠璃目の男も「ふーん」と呟いた。 「貴様等、『あのアーク』か……なら、話が変わるですなクソが」 「それ、どういう意味よ」 彩香オートマチックから放たれる援護射撃に頬を掠めた瑠璃目。彼が放つ壱式の雷撃が地を駆けた時、コヨーテの炎が彼の拳に纏わり着き、その拳を受け止めた瑠璃目。 「楽しくヤろうぜッ!! なッ!? オマエが幹部って奴かッ」 「うるせーです。極東の空白地帯の使徒が。その箱舟様に目ェつけられる訳にはいかねーですよ……でもなァ、舐められたくないのもありましてですネ」 奥の手とでも言いたいのか。 「テオには可愛い妹がいるんですよ。それを俺等が確保した……ま、交換だ」 さあ、どうしたものか。 「最低」 ぼそっと、彩香はそう呟いたのであった。 ● 予想外の出来事は起こる事はあり得ていた。ともあれ、この場でテオを渡す訳にはいかない。一旦拳を引いたコヨーテはリベリスタ達の元へ下がった。まだ戦いたい気はあったものの、これ以上刺激してはテオの妹の命が危険だろうと考えはつく。 「予想以上にゲスい組織だよね。その情報を証拠も無いまま信用しろと?」 「任せるです」 「罠かもしれない策に、頭を縦に振れと?」 「任せるでーす」 彩香の問にも、瑠璃目は一定の答えしか返さなかった。扱いによってはテオが暴走する事もあり得るだろう。何より日本語を理解しないテオだったからこそ、日本語での会話によって情報が洩れないのは幸であったか。 『お、おい、ど、どうしたんだ?』 『えと……』 テオの問に、ソラは口を塞いだ。今は言えないのだ、ソラは咄嗟にそう結論を弾きだした。暴走されては―――困るのだから。 「残念だけど、こっちはそれに、応じれないんだよね」 彩香は言う。結論として、妹は見捨てるのではない、ただ―――今はそれしか言える事が無いのだ。おそらくヴァチカンも妹の命よりも情報を優先するだろう。こんなところでアークに汚名と残す事はできない。 「了解。ではそれで今回は手を打ちます。こっちとしてもアークに関わるのは御免なので……」 バロックナイトを倒している組織に喧嘩を売るのは流石にハイリスクであったか。瑠璃目の男は手をあげ、部下は再び大雨の霧の中へと消えていく。これで戦闘が終わればいいものを、されど相手は相手。リベリスタ達の警戒は解く事ができない。 「ブイオは暗黙の存在。その男が何を喋るかは知らねーですが、末端が知っている情報なんて怖くねーですし」 「情報を漏らさない貴方達が、末端だろうと情報は漏らすハメになったこの状況は、貴方達の負けなのよ?」 「……くそが」 置き土産の言葉に、反撃をしたソラ。舌打ちした瑠璃目の男は、一番最後に霧へと消えていく。 「――――……存在は感じないかな」 「うん、もうかなり遠くへと行ったかと思うよ。もう平気かなって」 揺れる、テオを送り届けるための車内。 ルナとアンジェリカが敵を探索した結果を報告し合った所で、やっと警戒を解いたリベリスタ達。その雰囲気に勘づいたテオこそ、大きな溜息を吐いた。 『あ……ありがとうな』 『あ、えと……いや……』 妹の事をどう伝えようかアンジェリカは考えたが、思い浮かばず。此れはヴァチカンに後は任せるべきなのか―――それとも。 『クレモナ出身なんだけど君の出身は?』 『え!? えと……』 話題を切り替えたアンジェリカだったが、その問に顔を赤らめて俯いたテオ。スラムの生まれ育ちだなんて恥ずかしくて言えなかったようだ。 「にしても結構あっさり引いたね」 アンジェリカは変わる景色を見ながらそう呟いた。返事を返した晃は何処か面白く無さそうにしており。 「アークに関わりたくないか……むしろ、ヴァチカンはこうなると思ったから俺達に頼んだとしたら嫌な組織だな」 見えて来たヴァチカンとの決められた場所。まだ大雨の止まない場所で、ヴァチカンの使いらしき女が手を振っていた。 「嫌な、組織かぁ……」 フードを脱いだルナは、窓に頭を擦りつけて雨音だけを聞いていた。けれどふと思い出して、テオの方を見る。 「ね、アークに来ない!? ……って翻訳して誰か!!」 後日。テオの身柄がアークに引き渡されたのは、ヴァチカンがブイオと関わりたくないという意志の表れなのだろうか。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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