● 笑い声がする。 最初は小さく。遠くで。嗚呼いやすぐ近くで。まるで鼓膜を劈くように。 幾つも幾つもいくつもいくつも。 笑い声がする。笑っている。冷たい手が触れる。ひとつふたつみっつよっつ。一緒においでとでも言うように。 何も見えなかった。出口はない。入口も分からない。 自分の手さえ見えないそこにはけれど明らかに温度を持つ肉の塊が幾つも共に存在している。 くすくす、と耳元で笑い声。 ごろり、と足元に転がったのは一体何であったのだろうか。 ● 『――聞こえる? 不測の事態よ、ってまぁあんたらが一番わかってると思うけど。その地点に特殊なアザーバイドが出現しているわ』 鼓膜を叩くノイズ音。通信機越しの『導唄』月隠・響希 (nBNE000225)の声は酷く硬かった。 「そりゃあ随分と運の悪い事で。で、如何しろって?」 溜息交じりに肩を竦めて。暗闇の中で目を眇めた『銀煌アガスティーア』向坂・伊月 (nBNE000251) の声に紙を捲る音で答えた予見者は、酷く困ったように倒して、と告げた。 『まぁ、正確には遅行性の毒みたいなものだけど。手短に済ませるわ。今、そこに現れたアザーバイドは識別名『ティアマト』。まぁ早い話が化け鯨。 そのアザーバイドは非常に此方の世界との相性が悪い。こいつらは下位チャンネルの生物を捕食するの。その捕食方法は非常に特殊。 彼らは丸飲みにした餌を消化する為に、己の中で痛めつけるわ。まぁ人間でいうところの胃液が、このアザーバイドの場合生命体なのよ。生命体に痛めつけさせて吸収しやすくなった餌を食べてるって訳。 で、人間とは違って、彼らは『胃液』を作り出せない。もしも体内のそれが破壊されれば――遠からず死に至るの』 此処まで言えば分かる? 一層ノイズの増す声。暗く、重たい空気に満たされているこの空間はまさか。 『あんたらの現在地はティアマトの体内。……こいつ胃袋二つ持ってるんで、分断されてるみたいね。 敵はおそらく4ずつ。人間のなりそこないみたいな敵だけど……実力はそれなり。回復できる奴もいるみたいだから注意を払って。 あと、危ないと思ったら必ず逃げなさい。このアザーバイドは現状、『胃液』の破壊以外に討伐方法がない。でも、あんたらの実力ならそこから出ることは可能だから。 討伐出来なくてもアザーバイドは自分のチャンネルに帰る。だから、引き際は見極めて』 各班半数の被害で撤退しろ。短く告げた予見者の気をつけて、の声はけれどノイズでかき消される。地鳴りのような音と共に、暗闇の中で何かがうごめく気配と、笑い声がした。 「ま、要するにぶん殴って黙らせろってことだろ? 精々死なねえ程度に叩きのめそうぜ」 食われるなんて御免だ、と肩を竦めた青年の魔本が軽い音を立てて開かれた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 7人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月24日(木)23:47 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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