●怠惰な奴ら そこはかつて炭鉱だった。トロッコのレールが走る、暗くて狭くて、埃っぽい坑道だ。金、銀、貴金属、宝石など掘り起こす為に、穴だらけにされた山の中腹に、その入口はある。 入口、と言っても1つではない。都合6つ。坑道へ入る道がある。そのうち、トロッコが走っているのは2つだけだ。あとの4つは、そこまでの広さがないのである。 使われなくなって久しい坑道。落盤の危険もあるため、立ち入り禁止区域となっている。 そこに現れた、数体のEフォースが今回の相手だ。 E・フォース(炭鉱夫)と、Eフォース(スロウス)。フェーズ1の炭鉱夫が8体とフェーズ2のスロウスが1体だ。 炭鉱夫達は皆、道の端に座り込んだり、寝転んだりしてやる気のない表情を浮かべている。 それこそが、スロウス。詰まりは、怠惰の名を持つEフォースの能力だ。 気だるい空気に満ちた坑道。 その場に居るだけで、こちらまで力が抜けていくような感覚に陥る。 ●スロウス 「スロウスの影響下では、全員(弱体)に似た効果を受けるみたい。加えて、やる気が出ない、なんだか気だるい、といった症状に見舞われる場合も……」 なんて、すでに気だる気な様子で『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は皆に告げる。 モニターに映った映像は、暗い坑道に散開している炭鉱夫の姿であった。 「スロウスの影響下にある相手は、非常に防御力が上がっているみたい。一定のダメージを与えれば、スロウスの影響下から解錠される」 それはこちらも同様の事が言える。ダメージを受ければ、スロウスの効果が薄れていくのだ。 そして、それが一番の問題点。 「スロウスの影響下から解除された(炭鉱夫)は、今までとは打って変って、非常に好戦的な性格になるみたい。攻撃力もUPするみたいだから、注意が必要」 さしずめ、我慢の限界が訪れた、と言ったところか。 限界まで怠けた結果が、その豹変ぶりなのだ。 「スロウス自身も同様の性質を備えている。スロウスは、太った老人の姿をしているわ」 現在、何処に居るのかは不明だが、恐らく炭鉱のどこかであろう。 この炭鉱は、言わばスロウスの要塞のようなものである。 「放置しておくわけにもいかないし……。面倒だろうけど、行ってきて」 そう言ってイヴは、小さなあくびを零すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月18日(金)23:31 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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●気だるい坑道 岸壁には無数の穴が空いている。穴から噴き出す気だるい気配は、Eフォース(スロウス)の放つものであろうか。近づくだけで、身体が重たくなってくる。 こんな人気のない場所、放置していても誰にも迷惑がかからない。それならもう、このまま帰ってしまっていいのでないか、という想いがリベリスタ達の脳裏をよぎる。 しかし、そうはいかない。放置してしまうと、世界の崩壊を誘発する結果となってしまう。それを阻むのが仕事なのだ。 仕方ない、と溜め息一つ。 重い身体に鞭打って、7人は坑道へを歩を進める。 ●怠惰な奴らとスロウス 坑道は6つ。リベリスタ達は2班に分かれて、捜査を始める。 それじゃあ、あとで、と声をかけ合い坑道内へ。 「三郎太君かわいいわぁ……」 坑道に入って暫く、溜め息と共に『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)がそんな事を呟いた。前を歩いていた離宮院 三郎太(BNE003381)がビクリと肩を震わせる。 恨みが増しい目で振りかえった三郎太の頬は、僅かに朱を帯びているようにみえた。 「雲野さんは……まったくもう!いつもそーなんですからっ!」 なんて、とても敵地の真ん中にいるとは思えないやりとりが続く。 三郎太、杏に続き五十川 夜桜(BNE004729)が坑道を進んでいた。肩を落とし、気だるい表情。坑道を進むごとに、この奇妙な倦怠感は増していく。 「うぅ、このなんだかまったりとした空気はなんなんだろ」 恐らく、坑道内の何処かに居るスロウスのせいだ。 その証拠に、3人の眼前にはEフォース(炭鉱夫)が3体、地面に横たわってボーっとしているではないか……。 「うーん、暗い所ってあまり好きじゃないんですが」 拳を握りしめ、すぐにでも殴りかかれる姿勢をとって『荊棘鋼鉄』三島・五月(BNE002662)が坑道を進む。倦怠感を感じているはずだが、戦う気力は充実しているようだ。 「うわー。これって軽くダンジョン入ってますよねー」 拾った棒で壁を叩きながら『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)が五月に続く。眠たそうな顔、あくびを漏らす。 どうしてあくびは伝染するのか。ふわ、と口元を手で覆い『先祖返り』纏向 瑞樹(BNE004308)が小さなあくびを零した。 「っとと……。忘れ去られた炭鉱かぁ。なんだか物悲しさがあるね」 倦怠感、気だるい雰囲気。停滞した空気の流れが、忘れ去られて幾久しいことを否応なく感じさせる。 「怠け者さん達をこらーってしにいくための坑道探検なんだけど……えへへ、探検だって!ワクワクするね!」 暗い道を明るく照らすのは『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)である。首から下げたペンダントが、淡い光を宿しているのだ。 数メートル先の景色が、薄ぼんやりと浮かび上がる。 見えたのは壁。どうやらこのルート、ここで行き止まりのようだ。地面に転がったピッケルやカンテラが、哀愁を感じさせるのだった……。 地面に横たわった炭鉱夫達を、強風が襲う。岩肌を傷つけぬよう細心の注意を放ちながら、杏が空中に急上昇。エアリアルフェザード、というスキルである。 「しかし、けだるくなるっていうのは本当ね。地べたでもいいからゴロゴロしてたいわ……。もちろん三郎太きゅんを抱きかかえてね!」 砂煙を打ち払い、着地する杏。困ったような顔を浮かべる三郎太に「冗談よ冗談」と笑って返す。 晴れた砂煙の向こうには、未だ健在の3体の炭鉱夫の姿。防御力が上昇しているようで、まだまだ怠惰な態度を崩すつもりはないみたいだ。 「一生懸命がんばってきたからちょっと一休みしたい気持ちは分かるけど……怠けちゃったらだめだよね。あの頃の熱い気持ちを思い出して欲しいよ!」 地面を蹴って夜桜が飛び出す。両手で大上段に掲げた大剣を、突進の勢いそのままに炭鉱夫へと叩き付けた。地面が砕けるほどの衝撃。炭鉱夫は地面に倒れた。 「まだまだっ!」 地面に突き刺さった剣を引き抜く夜桜。返す刀で、更に手近な炭鉱夫へと切り掛かる。ここまで接近されて尚、炭鉱夫は動かない。 ただ、1体……。 「あぶないっ!」 地面に倒れた炭鉱夫を除いて……ではあるが。 「えっ!?」 突如立ち上がった炭鉱夫から、先程までとは比べ物にならないほどのオーラが迸る。戦意と闘気、やる気に満ちた強いオーラだ。振りあげられたピッケルが、夜桜の頭めがけ振り下ろされる。 それを受け止めたのは、飛び込んできた三郎太だ。鉄甲とピッケルが衝突。火花が散った。 しかし、一撃では終わらない。大きく振り回されたピッケルが、三郎太と夜桜を吹き飛ばす。砕け散った土石が2人の身体を打ちのめす。 瞬間、2人に降り注ぐ淡い光。暖かなそれは、傷を癒し体力を回復させる。 「回復はボクにお任せくださいっ!皆さんは目の前の敵に集中をっ!!」 三郎太の言葉を受けて、杏は再び空中へと飛び上がった。掻きならすギターのサウンドが、坑道に反響。震わせる。 「身体が重くて動くのもそもそも厄介です……」 眼前に立っていた炭鉱夫を殴り飛ばす五月。炎を纏った彼女の拳が、炭鉱夫の顔面に突き刺さる。 先ほどとは別の坑道で、入るなり速効、1体の炭鉱夫を発見したのだ。先制攻撃、とばかりに飛び出したのが五月であった。炎に巻かれながら、炭鉱夫の怠惰が解除される。一瞬前とは打って変って、俊敏かつ攻撃的な動作。壁に突き刺さっていたピッケルを引き抜き、渾身の力で五月を叩く。 「っぐ……!?」 咄嗟に防御するものの、五月の腕が軋んだ悲鳴をあげた。数歩後退。追いかけて来る炭鉱夫を、禍々しいオーラを放つ弾丸が撃ち抜いた。崩れ落ちる炭鉱夫。弾丸を放ったのはユウである。くわぁ、と大きなあくびを零し、慌てて口を押さえる。 「はっ! いけないいけない、これが敵の能力ですかね? それとも私本来のゆるゆるセンス?」 両手をだらん、と力なく垂らしそんなことをのたまう。気だるい空気は未だ健在だ。 落盤の気配がないか確かめ、4人は再び坑道奥へと歩を進める。 小さな坑道は、比較的短く、また分かれ道も少ないようだ。反面、非常に狭く十全に暴れる事は出来ない、という欠点もある。 2つ目の坑道も、捜索開始からさして時間もかからないうちに終点へと辿り着いた。 ただ1点、先ほどとは違う点がある。 「もう! 怠けてるぐらいなら、最初から出てこなければいいのに!」 瑞樹が叫ぶ。坑道の最奥部、僅かに開けたその場所に、3体の炭鉱夫が横たわっていたのだった。チラ、と炭鉱夫達はこちらを見やる。ゆっくりと立ち上がる炭鉱夫。だが、闘気のようなものは感じられない。 瑞樹の影が蠢き、大蛇へと姿を変えた。五月は、拳を構え飛び出す。 最も早くアクションを起こしたのはユウだった。小脇に抱えた小銃が火を吹く。連続して放たれた弾丸が、炭鉱夫達の胸を撃ち抜いた。 防御力が上昇しているためだろうか、大したリアクションも見せず炭鉱夫はその場に立ったまま。 その隙に、大蛇を従えた瑞樹が駆ける。短刀を閃かせ、炭鉱夫を切るつけた。 業火を纏った五月の拳が、3体の炭鉱夫を纏めて殴り飛ばす。 「いけないんだー。あんまり怠けてたら、偉い人に怒られちゃうんだよ?」 2人から僅かに遅れ、華乃が槍を突き出した。オーラを纏った槍による鋭い刺突。風を切り裂き、炭鉱夫の身体に風穴を開ける。 怠惰から解除された炭鉱夫が、雰囲気一変、怒りに任せピッケルを振りあげるが、間に合わない。それより早く、その首下を華乃の槍が貫いた。 ガクン、と炭鉱夫が膝から崩れ落ちる。 だが、しかし……。 『あぁぁぁぁぁぁあ!!!!』 怒号と共に、残る2体がピッケルを旋回させる。土石が飛び散り、前衛3人を巻き込み、弾き飛ばすのだった。 ぜぇはぁ、と荒い呼吸が木霊する。杏、三郎太、夜桜のチームは炭鉱夫との戦闘を終え、別の坑道へと足を踏み入れていた。外に出ると、すでに1つ、小さな坑道にはチェックが付いていた。もう片方の班が探索済みなのだろう。 疲労感と、身体の重さを覚えながらも3人は隣の坑道へ。 「いやいや、こんなんじゃいけない、あたしが燃えないで誰が燃えるの!」 拳を振りあげ、自身を鼓舞する夜桜である。しかし、いかんともし難い身体のだるさはどうしたことか。坑道に入って以降、更に気ダルさが増した気がした。 坑道を進むこと暫く、最奥に到着した所で3人はトロッコを発見。どうやら、大きな坑道へと繋がっているようだ。 「……さ、行きましょ」 真っ先にトロッコに乗り込んだのは杏だった。三郎太を引っ張り込み、抱えるようにして自分の前に座らせる。 「うぅ……。道も悪いので十分気をつけてくださいね」 溜め息一つ。身体のだるさが、杏に対する文句を上回ったのか。されるがままの状態で、トロッコを発進させる。ギシギシという錆ついた音が鳴り響く。 のろのろと発進したトロッコだったが、数秒後には加速した。どうやら坑道内は傾斜になっているらしい。 ガタガタと煩い。振動も大きく、視界がぶれる。次第に道が広くなっていくのは、坑道の入口が近づいている証拠だろうか。 分かれ道を何度も視界の隅に捉えながら、3人はトロッコで坑道を走る。 と、その時だ……。 「見つけた!」 トロッコから身を乗り出し、三郎太が叫ぶ。指さした先は、坑道の分かれ道。休憩所か何かだろうか。木で仕切られた壁のようなものと、テーブルが見える。 そのテーブルの向こう、太った老人が座っていた。 それだけではない。老人の傍には3体の炭鉱夫も……。 「一度放置? どうする?」 そう問いかける杏に対し、夜桜は拳を突き出し応じて見せた。 「怠け者はクセになっちゃうって言うし、がんばろう!」 「……決まりね」 翼を広げ、杏が飛び出す。両手で三郎太と夜桜を抱え、そのまま(スロウス)目がけて加速した。 影の大蛇が、炭鉱夫を締めあげる。動きの止まった2体の炭鉱夫の頭部を打ち抜いたのは、業火を纏った五月の拳だ。崩れ落ちる炭鉱夫。 ふぅ、と溜め息を1つ。ユウはそっと銃を降ろした。 「おや?」 首を傾げるのは華乃である。壁に耳を押しつけ、訝しげな表情。 「壁の向こうから、ゴトゴトと音が……」 落盤の危険もある。一同は急ぎ足で、坑道から脱出を始める。 「この程度攻撃力落とされたってどうって事無いわね」 大きく翼を羽ばたかせ、魔力を帯びた暴風を巻き起こす杏。炭鉱夫諸共、スロウスを攻撃する。老人は、穏やかな表情を浮かべたまま暴風を浴びている。皮膚が裂け、帽子が飛んでも動かない。のんびりと、やる気のない顔でこちらを見るだけだ。 ひどく気味が悪い。老人と視線が交差した瞬間、杏は倦怠感が増したのを感じる。思わずその場に座り込みそうになって、それを辛うじて耐え抜いた。ギターの弦に添えた指先から力が抜ける。 脱力感を感じながら、三郎太と夜桜も前へ駆けた。通り抜けざまに炭鉱夫を殴り飛ばし、切り裂いて、そのままスロウスへ跳びかかる。 三郎太の拳が、スロウスの顎を打ち抜いた。真上を向いたスロウスが見たのは、大上段から振り下ろされる夜桜の剣だ。 『ほほ……』 薄笑いを浮かべ、老人は夜桜の剣を受けた。老人の頭部が地面に叩きつけられる。地面に罅が入るほどの衝撃。しかし、夜桜の剣は老人に傷を付けられない。 それほどまでの防御力、ということだろうか。 地面に倒れた老人目がけ、4色の魔光が撃ち落とされた。にやり、と笑う杏である。 砂煙が舞い上がる。轟音に反応して、炭鉱夫たちがスロウスの方へ視線を向ける。 ふぅ、と杏は一息吐いた。 その瞬間……。 『ほっほっほ……』 静かな笑い声。ピクリ、と視線を上げた杏の眼前に不気味な影が迫っていた。スロウスと同じ姿をしたその影は、スロウスの放ったオーラの化身であった。 「う……ぁぁ!?」 怠惰の化身に飲み込まれ、杏は壁に叩きつけられた。 ●怠惰の果てに…… 『休憩はここまで』 スロウスの声が響く。杏は地面に倒れたまま動かない。戦闘不能か、意識がないようだ。 飛び出した化身は、そのまま旋回。ボーっとしていた炭鉱夫に襲いかかる。弾き飛ばされ、壁にぶつかる炭鉱夫。 「? ………あ!?」 一瞬、何事か、と首を傾げた三郎太であったが、すぐに事態を察知。慌てて夜桜の手を引き、砂煙の中から飛びだした。 だが、間に合わない。 「うぁぅ!」 悲鳴を上げる夜桜。その足に突き刺さるピッケルの先端。噴き出す鮮血。地面を濡らす。砂煙の中から駆け出して来たのは、3体の炭鉱夫であった。やる気に満ちたその表情。盛り上がった筋肉と、溢れる活力はまさしく炭鉱夫の本懐といったところか。 「やる気ですね。いいでしょう。仕事は……一生懸命やるから達成感もやりがいもでるんですっ!!」 「あなたたちに恨みはないけど、これも平和のためだからがんばらなくっちゃ!」 襲い掛かってくる炭鉱夫を迎え打つ三郎太と夜桜。砂煙が晴れ、凶暴な笑みを浮かべたスロウスが姿を現した。飛びまわっていた化身がスロウスの身体を包む。まるで影の鎧のようだ。化身を纏ったスロウスは、影の弾丸で三郎太達を攻撃する。接近したくとも、炭鉱夫が邪魔で近寄れない。このままでは、じわじわと体力が削られていくだけだ。 3体の炭鉱夫と、スロウス。合わせて4体を凌ぎきるのは、弱体化している2人ではなかなかにキツイものがある……。 ピッケルが三郎太の胴を薙ぎ払う。怠惰の化身が夜桜を飲み込む。地面に倒れた2人目がけて、炭鉱夫が駆け寄っていく。大上段に振りあげたピッケルに、力が充填されていくのが分かる。それを受けては、大ダメージ必至だろう。 バタバタという足音。その足音に混ざって、何処かで聞いたゴトゴトという音を三郎太は聞いた。霞む視界に映ったのは、接近してくるトロッコだ。 ゴトゴトという音は、先ほど聞いたトロッコの音だ。 「はは……。帰って来た」 そう呟いたのは、よろよろと立ち上がる杏であった。 「それにしても、嫌な敵ですねえ。この鉱山、コイツのせいで閉じちゃったんですかね」 ユウの小銃が火を吹いた。文字通り、火を……。インドラの矢。弾丸の代わりに、火炎弾が放たれ、拡散。空中で爆ぜ、炭鉱夫達を打ち落とす。 停止したトロッコから、銃を構えたユウ以外のメンバーが飛び降りた。仲間の進路を切り開くのは、援護射撃を行うユウだ。火炎で作られたルートにそって、五月、瑞樹、華乃が駆ける。 「こっちは貴方達のせいで身体が重いのを我慢してるんだからね!」 大蛇が飛び出す。継いで瑞樹が短刀を振りかざし、炭鉱夫に接近。大蛇によって炭鉱夫は地面に押しつけられた。その首筋目がけ、瑞樹の短刀が閃く。 「こっちは崩れちゃう心配はないみたいだし、思いっきり戦うよ!」 瑞樹だけではない。華乃もまた、連続して槍を繰り出す。ピッケルで応戦する炭鉱夫だが、華乃を援護するように炭鉱夫の足元を夜桜が薙ぎ払う。 「やっぱり、怠けちゃったら駄目だよね!」 バランスを崩す炭鉱夫。その胸を、華乃の槍が貫いた。 ふらりと立ち上がる杏。翼を広げて飛び上がる。そんな杏に迫るピッケルの一撃。地上から振りあげられた炭鉱夫の狂気。それを受け止めたのは、三郎太だった。 「三郎太きゅん……」 「行ってください!」 鉄甲だ軋む。受け止めたピッケルを弾き飛ばし、三郎太は拳を突き出す。正確に、三郎太の拳は炭鉱夫の眉間を叩く。 炭鉱夫を食い止める三郎太を尻目に、杏は飛んだ。そんな彼女を先導するように五月が走る。風を斬り、砂煙を掻き分けて、掌をまっすぐ腰に構える。 「防御力が高かろうと関係ないですからね」 怠惰の化身を身に纏ったスロウス目がけ、五月が肉薄。スロウスの拳が五月の胴に突き刺さるのと、五月の掌打がスロウスの胸を叩くのはほぼ同時だった。 ゴブ、とくぐもった呻き声。五月の口から血が零れる。 一拍遅れて、スロウスの身体を包んでいた化身が消え去った。 『ほほ!? ……あ?』 驚愕。目を見開くスロウス。老人の顔が苦痛に歪む。グラリ、と傾き五月は地面に膝をついた。再び老人は化身を繰りだそうと、オーラを放つ。 「っと……。アタシだってだらけたいけど、働かなきゃ明日の生活がままならないのよ!」 その頭部に、オーラで出来た鎌が突き刺さった。ビリビリと鳴り響くギターサウンド。五月の影から飛びだしたのは、杏であった。 鋭く旋回するオーラの鎌。スロウスの首を切り裂いた。 『あぁ……。眠たい』 す、っと目を閉じるスロウス。まるで眠るように、穏やかに……それでいて、気だるい様子で、スロウスはそっと消え去った。 その瞬間、皆の身体を包んでいた倦怠感が嘘みたいに晴れる。 炭鉱夫も、スロウスも、坑道にいた全てが消えて辺りはシンと静まりかえった。 誰からも必要とされなくなった炭鉱から、怠惰な奴らは消えていった。 倦怠感は消えて、しかし、それでも誰からも必要とされなくなった寂しさだけは、今もなお、炭鉱全体を包んでいる……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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