●人類の宝を守って 「かりめら~」 珍しくハイテンションに挨拶をしたのはアークの子供フォーチュナ『ディディウスモルフォ』シビル・ジンデル(nBNE000265)だ。 「別に、別に羨ましいなんて思ってないんだけど。本当だよ。だって、秋のエーゲ海は海がちょっと荒れるしね。やっぱり行くなら6月って……」 そこまで言って気が付いたのか、シビルは無駄に咳払いをして表情を変えた。 「海外からアークに助けて欲しいってお話が来たのは知ってるよね。それでさっそく『ヴァチカン』からテラ島に行って欲しいって連絡があったんだ。」 場所はエーゲ海に浮かぶ三日月型のリゾートアイランドで正式名称のテラよりもサントリーニの名前が有名な観光地だ。島のあちこちには遺跡あり、ビーチあり、美しい景観あり、と欧州からのリポーターも多い場所だ。日本でもカレンダーの写真やCMの画像などで知っている人も多いだろう。太古に火山活動によって中心部が崩落したという伝承もあり、アトランティス伝説の元になったのではないかとの説もある。 「今回の事、残念ながらボクには視えないから説明は出来ないよ。だから詳しいお話は現地でのブリーフィングで教えてもらえる筈だけど、島の南にあるアクロティリ遺跡で土のエレメントが暴れているみたいなんだ」 アクロティリの遺跡はかなり範囲が広く保存や作業効率のためにほぼ屋根や囲いが施されていてほぼ広大な1つの部屋の様になっている。しかし遺跡は土で出来ているため、土のエリューションエレメントがここで暴走すれば人類の貴重な遺産が失われてしまう。 「島のあちこちに世界遺産があるんだけど、ここの壁画もそうなんだって。こんな大事な物をボク達に守って欲しいなんて『ヴァチカン』も人手不足なのかな? それとも挑戦なのかな? ボク達を試している? 向こうの本当の気持ちはわからないけど、とにかく初めての海外出張…………頑張ってきてね」 凄く羨ましそうな顔をしつつ、シビルは手を振った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月23日(水)00:34 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●壱日目 エーゲ海の宝石、アトランティス伝説と世界遺産の島……テラ。日本ではサントリーニ島とも呼ばれるこの美しいリゾートアイランドの南端近くで世界を崩壊から守ろうとする戦いが人知れず行われていた。 本来、この地を守護する筈の『ヴァチカン』から依託され日本からやってきたアークのリベリスタ達はアクロティリ遺跡へと迫る土のエリューションエレメントの進行を止め、撃破せんとしていた。 「来たわ」 誰よりも早く接近する敵に気が付いたのは千里眼を持つ『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)だった。既に周囲には『不倒の人』ルシュディー サハル アースィム(BNE004550)が強結界を敷き、無関係な人間が戦闘に巻き込まれないよう彼等の意識から排除している。真っ直ぐに遺跡へと向かうエリューションエレメンタルとその進路を阻むリベリスタ達との戦闘はすぐに始まった。もうすぐ日没なのに、空はまだ明るく周囲の視界も良好で街灯なども点く気配がない。日本よりも緯度が高いからなのか。 戦闘時間は限られている。短期決戦を想定して開始から全力で攻撃をする。予想通り敵の防御は堅そうで、戦うにつれリベリスタ達は陣形を変化させ前後から挟撃出来るように少しずつ移動している。 「歌、歌う。絶対に誰も零れ落ちる事ダメ」 そのルシュディーの綺麗な声が深く高く低く強く、魔法を引き出す呪文の様に絶妙な音階を辿り全てのリベリスタ達へと傷を癒す祝福をもたらす。その効果は歌にどれだけの力を込められたかに掛かっていて不安に思う気持ちもあったけれど、大ダメージを被る者はまだいない。エリューションエレメンタルの力がそれほど圧倒的ではないのか、それとも今ここにいるリベリスタ達がただ強いからなのか。 「ギャロップじゃ効果薄いね。しょうがないな、せっかくここまで来たんだからとっておきの見せてあげるよ」 ルシュディーとの距離、敵との距離を考えつつ挟撃の形に陣形を変化させた『本屋』六・七(BNE003009)が前に出る。土埃を巻き上げるエリューションエレメンタルの周囲に幾枚ものカードが嵐の様に巻きあがる。その逃れられない死の運命がリアルな衝撃となって敵の身体に突き刺さってゆく。 「おっと、ここにいたら巻き添えになるか」 七は引き込もうとするような敵の風に抗い後退する。すぐにエリューションエレメンタルが攻勢に出た。狙ったのは七のいる方ではなく、遺跡がある進行方向へ風と土の混ざった砂嵐を放射する様な攻撃を放つ。小さいけれど消して無視できない深く不快な傷がリベリスタ達を苛んでゆく。 「全ての遺跡はボクの大事なダンジョンだよ。君みたいな土のお化けなんかに破壊させたりしないんだからね!」 遺跡といえばダンジョン、ダンジョンと言えば勇者の経験値稼ぎと昔から決まっているのだから『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)には立派にここを守る義務と権利が発生している。 「いっくよ~!」 光の無垢なる強い魂が淡く儚い存在へと祈りの言葉を紡ぎ、癒しの風が仲間達の傷と、毒の様にじわじわと広がる痛みを消し去っていく。 「絶対に見極めるよ」 互角以上の戦いを続ける仲間達のお陰で四条・理央(BNE000319)は行動の自由を得られている。今回の様なエリューションエレメンタルの討伐は日本国内ならば特段珍しい任務ではない。ただ、ここではフォーチュナー達の目が届かないため圧倒的に情報が不足している。それをなんとか補いたい、少しでも良いから敵の情報をこの目で見極めたい……と、理央はエーゲ海の様に美しい瞳をひたと敵へと向ける。 「……」 低く短い詠唱で恵梨香の周囲の空間に複雑で精緻な魔方陣が展開し、そこから発せられる弾丸が土くれのエリューションの身体を貫く。 「近接攻撃は地面スレスレには届かない。遠隔攻撃時は斜度の微調整に時間をロスするよ。防御力は強いけど、圧倒的な強さじゃない……この程度なら力ずくで破壊出来るよ」 理央はこれまでの戦闘で見極めた情報を皆に伝える。僅かでも情報は力になのだ。 「今こそワールドワイドに俺の破壊神っぷりを披露してやるぜ。たぎれ! 俺の全身!」 立ち上る湯気と闘気をはらんだ『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)の肉体がど派手にパンプアップ! そしてそのまま美しい青の刃と呪を織り込んだ剣が大地の精に炸裂する。どれほど防御力に優れていようとも、それを凌駕する攻撃を放てば問題ない。 「さあ、踊って……くれる? 今宵のパートナーは私だよ」 彫像の様に美しい決めポーズの竜一、その背後から無秩序に隆起した岩場を足がかりに 『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が跳び越える。回転する敵の風圧で飛び散るつぶてを脅威の身体能力で回避し、オーラで創った剣呑な武器を植え付け、その反動で逆側へと宙に舞う。その直後、敵の土塊で出来た身体が炸裂し、新たな生じたイレギュラーな暴風が凶器となって斜め横へと吹き出してゆく。偶然の産物は、だが真っ直ぐに後方にいた恵梨香を直撃しようと迫る。 「……あっ」 精緻に計算され尽くした結果なら動じる事のない恵梨香だが、この不意打ちでの高速度な攻撃に両手で身体を庇うしか出来ない。けれど、衝撃は1つとしてなかった。伏せた顔をあげるとそこに『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)の広く逞しい背がある。後方に位置していたランディが恵梨香へ向かってきた風と土の衝撃を全て受け止めていた。 「ダメージは?」 声も普段と変わらない。 「アタシは大丈夫よ」 それだけ聞くとランディは全ての力を歴戦を共に駆け抜けてきた両手斧へと集約させる。戦場の汚濁にまみれてなお清雅な光厳を持ち続ける刃から空間を引き裂く科のような濃密で巨大なエネルギーが炸裂する。アースエレメントの風の防御を吹き飛ばし、エネルギーが巨大な岩の身体を粉砕し遥か後方にまで貫通してゆく。しゅるるっと敵の身体が小さく細く変化してゆき、地面に吸い込まれるように姿を消した。 「日没だね」 まだ赤く明るい西の空は沈んだばかりの太陽の残り火が黄金色に輝き、美しかった。 ●弐日目 「え? 今日は戦いはないですか?」 「そうだよ」 七はのんびりと言った。 「日本を出てから昨日の日没まで強行軍だったからね。今日はゆっくり休んで明日、決着をつけよう」 心配そうだった光の表情はぱぁっと明るくなる。 「そう、そうですよね! わかりました。ボク、ちゃんと休養をとって万全の体勢で明日の戦いに備えますね!」 気合いややる気と言った華やかなオーラが花の様に咲き乱れ、光の笑顔がまぶしい程だ。 「でも、七さんはどこかに行くんですか?」 休養と言いながらもどこかに出掛けるような外衣を手にした七の姿に光は『?』いっぱいの顔になった。まったく、一瞬たりとも滞る事のなく変化する光の表情に七はクスッと笑みを浮かべた。 「野暮用……かな?」 「明日はこの辺りに出現する筈、だよね」 天乃は『ヴァチカン』のたった1人しかいない現地駐留員を案内役として、昨日戦った場所よりも少し遺跡よりの地点にいた。 「……」 冴えない小柄で初老の男は天乃の言葉に肩をすくめる。日本語も天乃の意図も理解しようという気がないのだろう。 「それにしても……貴方って全然強そうには見えない、よ」 澄んだ美しい瞳に突如浮かんだ剣呑な光に、さすがの男も驚いて大きく跳んで後退する。 「その程度には感じる、のね」 言葉の通じない事は逆に男の恐怖を煽るのか、用事の半分も終わらない内に男は逃げるように帰ってしまった。 「彼、どうかしたのですか?」 帰ってしまった『ヴァチカン』の駐留員とすれ違うように姿を現したのはルシュディーだった。 「明日の下見?」 天乃の聞かれるとルシュディーはこくりとうなずく。 「戦う場所の足場や、この辺りの様子、壊してはいけない建物があるかどうか、気をつけておかなければならないことを把握しておこうと思いました」 ルシュディーは隠さず言い、それからそっと天乃に耳打ちをした。 「あの、近くにこちらを見ている人がいるんですが……僕達が回りから浮いているのでしょうか?」 心配そうに言われて天乃が周囲を確認すると、なるほど10代なかばぐらいの娘が物陰からガン見している。 「あの……」 ルシュディーが日本語で声を掛けると娘は驚いた様な顔をして逃げてしまった。 「ほんとだ……マジ、リゾートアイランドだ」 竜一は極狭い砂浜にひしめく観光客を茫然と少し高い場所から見下ろしていた。日本の様に日焼けを忌避しないのか、老若男女誰もが肌を露わにし降り注ぐ日差しを浴びて寝転がっている。その姿はまるで……アザラシの群? 「いやいやいや。エーゲ海リゾートはこんなモンじゃない! やっぱりクルーズっしょ! ヨットっしょ!」 島をぐるりと巡ればきっと何処かにヨットハーバーもあるはずだ。足取りも軽く歩き出した竜一の脳裏に様々なパニック映画のシーンがよぎる。 「……あ、でも、映画だとよくヨットはサメとかに襲われてたわ」 となれば、本場(?)のここで聞き込みをすればそんな話が沢山聞けるに違いない。そう、出来れば博識のギリシャ美人と仲良くなって……と、その時、竜一は誰かに見られている様な気がした。戦意はない、けれど友好的でもない。 「ま、いっか。内気なギリシャの美少女にでも一目惚れされちゃったか?」 今度こそ竜一は歩き出した。 昼までぐっすりと眠った光は宿の近くでお昼ご飯を食べた。タラモサラダと屋台のシシカバブだ。 「おいし~! やっぱり行列の出来てる屋台って正解だよね!」 「こーんな遺跡、どうして寄って来たがるのかな?」 アクロティリ遺跡は屋根や壁があり、ほぼ屋内型の広大な施設だ。内部に入ると発掘中の遺跡そのものを見る事が出来る。だいたいは順路に従い進んでいくが、見所はたくさんあって小一時間などすぐに過ぎてしまう。遺跡に入る前は気乗りしない様子であった恵梨香もすっかりアクロティリの浪漫に魅了されている。けれど、単純に観光として楽しむために来たわけではない。 「どうしてここを目指してくるの? 何か理由があるのなら、それは何?」 古代の町並みが再現されつつあるようなこの素晴らしい遺跡の中で、恵梨香は一瞬感じた迷子になったような心細さを押し殺し、ひとつひとつの建物、側溝、道具に至るまで丁寧に探していく。その時、急に誰かが恵梨香の方へと倒れかかってきた。足もとの段差によろけた様だったが、苦もなく回避したためにバランスを崩してすっころがった。まだ若い、恵梨香とそれほど年齢差のない女は恥ずかしそうに顔を赤くして無言で立ち去っていった。 恵梨香とは別行動をとっていた理央も遺跡の中を調査していた。理由は恵梨香とほぼ同じだ。何故、エリューションエレメンタルはアクロティリ遺跡を目指すのか。それには何か論理的な理由があってしかるべきだ。もし、ここが日本国内であったなら、アークの誇るフォーチュナー達が意図も容易く解明し、最初から謎などない状態で送りだしてくれただろう。しかしここは遥か遠い異国の地だ。受け取れない万華鏡の恩恵は自らの目と耳と足で集めるしかない。 「あれ?」 沢山いる観光客の中でなんとなく気になる者がいた。理央とさして年の変わらない娘だったが観光客ではなさそうだ。単独行動で何かを探しているようだ。 「ギリシャ人かな? こんな時、ギリシャ語が出来たらよかったんだけど……えっと、ヘロー、カリメーロ」 ガイドブックで仕入れた程度の理央の言葉にその娘は激しい動作で振り返った。明らかに動揺していてそれが表情に表れている。緊張しまくった顔に一筋、冷や汗が伝わってゆく。 「ひ、ひやああぁぁぁ!」 お化けにでもあったかのように盛大な悲鳴をあげると、脱兎の如く逃げ出していった。 お腹が一杯になった光は宿の窓辺でうたた寝をしている。 情報を求めて外に出たリベリスタ達が多い中、ランディは宿の部屋から出ていかなかった。ここは『ヴァチカン』が指定してきた民宿の様な小さな施設であったが、各部屋にインターネットを閲覧出来るノートパソコンが備えられている。 「仕方ねぇ……視ておくか」 探すという行為はリアルでも目を使う。そのためなのか、リンクした後の感覚もやはり視覚を使うようなイメージとなる。これ以上ないくらい雑多で膨大なデータが整理整頓されず無秩序に散らばるインターネットの世界。その中から欲しい情報だけを検索して絞り込んでゆく。昨日戦ったエリューションエレメンタルに似た様な存在が別の場所でも報告されていないかと、デマや嘘、歪曲されたものをふるい落としてゆく。 「ちっ……結構手間がかかるじゃねぇか」 朝飯前とはいかないようだとランディはリアルとヴァーチャルで舌打ちした。 アクロティリ遺跡から北へ道なき道を七は1人で辿っていた。時折、風で小石や岩が吹き飛ばされて綺麗な地面が続いている場所に行き当たる。 「これがエリューションエレメンタルの出現地点だね。で、10分間南に移動すると消失するから地面の様子も他と同じになるって事かな」 けれど、規則正しい筈の地面の様子は歩き続けていくとある疑問が沸いてくる。 「この綺麗な地面の距離……少しずつ小さくなっている気がするなぁ。面積もかな? う~ん、ちゃんと測ってみようかな?」 毎日出現していたエリューションエレメンタルだが、その威力は毎日少しずつ弱まっているのかも知れない。まるで日本に近づくにつれて勢力を弱めてゆく台風の様に。 「メジャー、巻き尺? この際紐みたいなものならなんでもいい。とにかくここを測らなくっちゃ」 七は鞄やポケットをあちこち探った。 その頃、光はベッドで幸せそうに寝息をたてていた。 ●参日目 リベリスタ達がギリシャに遠征してきて3日目の夕暮れ。その日没までにエリューションエレメンタルを倒す。多くの情報を入手し、休養もたっぷりと取ったリベリスタ達に死角はない。 「護符……日本のお守りみたいなものかもしれないけど、みんなを守って下さい」 ルシュディーの祈りにも似た願いは仲間達全てに十字の加護を分け与え、守りたいという戦いの意志を強く高めてくれる。 味方全員に十字の加護を与え、戦いに赴くその意志力を極限にまで高めます。』 七から放たれた気糸が逆巻く風をまとうエリューションエレメンタルにがっちりと食い込んだ。 「ね、わかるよね。こいつは日を追う事に力が弱くなってるんだよ。日本に近づく台風みたいにね」 昨日は弾かれた七の気糸が今日は綺麗に敵を締め付けている。 「元気はつらつ! みなぎる勇気! 勇者光いっきま~~~す!」 身体の隅々にまで活力がみなぎる光の力はまばゆいばかりの紋様を描き、魔法の弾丸を繰り出してゆく。 「後少しだよ!」 理央の力は皆の背に小さな羽を授けふわりと僅かに地面から浮き上がり、恵梨香の魔方陣が鮮やかに虚空に光って弾丸を発射する。 「しぶとい」 しかしまだエリューションエレメンタルの身体は崩壊には至らない。 「此処が勝負所だ、一気に行くぜ!」 「末期の踊りを私に見せて!」 ランディの全力を込めた凄まじい破壊の力がエネルギー弾となり、天乃が神の如き速さで斬りつけ敵の身体をズタズタに引き裂いた場所を直撃する。 「そこを撃つ!」 気合いのこもる声を共に竜一の身体が限界を超えて膨張する。全身全霊全ての力を込めた一撃がエリューションエレメンタルを粉砕した。文字通り、粉微塵になって散らばる土塊の中、全く別の方向から小さな光の弾丸がリベリスタ達を攻撃した。恵梨香と光に命中したが、ごく浅手だ。 「誰?」 七が光弾が放たれた方へと誰何する。それは昨日、あちこちに出没した若い娘だった。笑ったら可愛いだろうに、今の表情は険しく決死の形相だ。 「帰れ! 『ヴァチカン』を騙してブリテンと同じ災厄をギリシャで起こすつもりだろうけど、我らデロス同盟が絶対に許さない!」 娘はクルリと背を向けすごい勢いで走ってゆく。 「おぼえてろ~」 小悪党の様な捨てぜりふを吐き遺跡とは逆の方へと消えていった。一瞬の沈黙……なぜだか知らないけれどあの子に盛大に誤解されていることだけはハッキリ判る。けれど、今はどうしようもない。 「……とりあえず、報告するね」 恵梨香は美しい色を湛えるアクセス・ファンタズムを手にギュッと握った。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|